「スリーマイル島原子力発電所事故」の版間の差分

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 ここでは、TMI-2事故後の原子炉内部調査とデブリ取り出しの進捗、調査・取り出し過程で採取されたデブリサンプルの分析、それらから推定された事故シナリオとデブリふるまい、についてまとめる。ここで整理した知見・データは、1Fでの内部調査や燃料取り出し方法の検討、サンプル分析方法や事故シナリオ推定の参考情報として有用と考えられる。特に、どのような内部調査が計画され、どのようなサンプルが採集・分析され、得られた知見がどのようにデブリ取り出し方法や事故シナリオの推定に反映されたのか、という観点で、時系列的に記述した。
 ここでは、TMI-2事故後の原子炉内部調査とデブリ取り出しの進捗、調査・取り出し過程で採取されたデブリサンプルの分析、それらから推定された事故シナリオとデブリふるまい、についてまとめる。どのような内部調査が計画され、どのようなサンプルが採集・分析され、得られた知見がどのようにデブリ取り出し方法や事故シナリオの推定に反映されたのか、という観点で、時系列的に記述した。


 以下の項目では、参考文献[1,2]、及びDOEの年次レポートなどを参照して、TMI-2事故炉の概要、内部調査とデブリ取り出しのおよその時系列についてとりまとめた。
== 事故対応の概要、時系列 ==
 <span style="color:blue">'''EPRI'''</span>と<span style="color:blue">'''NRC'''</span>がそれぞれとりまとめた事故対応の概要レポート[1,2]、及び<span style="color:blue">'''DOEの年次レポート'''</span>を参照して、TMI-2事故炉の概要、内部調査とデブリ取り出しのおよその時系列についてとりまとめた。


 また、廃棄物取り扱い、現場対応、環境影響も含む、TMI-2事故対応については、Nucl.Technol.誌の1989年特集号にまとめらている。
 廃棄物取り扱い、環境影響評価、なども含む、TMI-2事故対応については、<span style="color:blue">'''Nucl.Technol.誌の1989年特集号'''</span>にまとめらており、その概要を整理した。


*[[TMI-2事故炉の状態まとめ|'''TMI-2事故炉の状態まとめ''']]、(令和7年11月に更新)
*[[TMI-2事故炉の状態まとめ|'''TMI-2事故炉の状態まとめ''']]、(令和6年11月に更新)


*[[TMI-2での内部調査、デブリ取り出しの概要|'''内部調査、デブリ取り出しの概要''']]、(令和7年10月に更新) (安全評価について調査中、追記予定)
*[[TMI-2での内部調査、デブリ取り出しの概要|'''内部調査、デブリ取り出しの概要''']]、(令和6年10月に更新) (安全評価について調査中、追記予定)


*[[TMI-2の内部調査とデブリ取り出しの時系列|'''TMI-2の内部調査とデブリ取り出しの時系列''']]、(令和7年11月に更新)
*[[TMI-2の内部調査とデブリ取り出しの時系列|'''TMI-2の内部調査とデブリ取り出しの時系列''']]、(令和6年11月に更新)


*[[DOE年次レポートの概要|'''DOE年次レポートの概要''']]、<span style="color:red">'''(令和7年7月に更新)、New!'''</span>
*[[DOE年次レポートの概要|'''DOE年次レポートの概要''']]、<span style="color:red">'''(令和7年7月に更新)、New!'''</span>
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*[[事故前の炉心インベントリ|事故前の炉心インベントリ]]、作成中
*[[事故前の炉心インベントリ|事故前の炉心インベントリ]]、作成中


 以下の項目では、参考文献[3]などを参照して、TMI-2廃炉において重要な判断ポイントとなった、'''<u>1984年12月時点</u>'''での情報をとりまとめた。この時点までに、圧力容器ヘッド内(プレナム構造物、等)と炉心上部の内部調査およびサンプル分析が進められた。その結果を受けて、'''<u>1984年5月</u>'''に、圧力容器ヘッドとプレナム構造物の撤去を大気中で実施(<span style="color:blue">'''Dirty-Lift'''</span>)すること、および、燃料移送Canalは最深部以外は水没させず、ヘッドとプレナム構造物を撤去した後の圧力容器上部からの、作業員による長尺ツールを用いた手作業で燃料と炉心デブリの取り出しを行う方針が決定された。この段階で、ロボットによる遠隔自動方式でのデブリ取り出し工法は採用されないこととなった。重要な判断要因は、'''<u>作業の信頼性と汚染範囲・汚染水処理量の抑制</u>'''と記述されている。1984年7月に、ヘッド撤去と建屋内の貯蔵スタンドへの移動が完了し、1984年12月には、<span style="color:blue">'''プレナム構造物の初期リフト'''</span>(圧力容器内でのジャッキアップ)まで進捗した。ジャッキアップ位置で、上部格子板に固着しぶら下がっていた燃料集合体上部や上部端栓の除去や付着デブリのフラッシングが行われ、大気中でのプレナム構造物撤去が可能かどうかの最終判断がなされた。1985年5月に、上部プレナム構造物の撤去が行われ、同時に、圧力容器上に改良型のIIF(<span style="color:blue">'''Internal Indexing Fixture'''</span>)を設置して圧力容器内の冷却水水位をあげ、改良IIFの上に<span style="color:blue">'''遮蔽付きの作業プラットフォーム(SWP: Shielded Working Platform)'''</span>が設置されることとなった。また、初期の取り出し手順も提示された。(1) まず、崩落している上部端栓などの大型瓦礫を専用コンテナに回収あるいは炉心周辺部に移動させて、炉心炉心中央に作業スペースが形成された。(2) 次に、真空吸引方式で粒子状のデブリを、Pick-and-place方式で瓦礫状のデブリを、それぞれ収納缶に回収する。(3) 炉心中央で形成される空間で、大型デブリや炉心周辺の残留燃料集合体などを切断・破砕して、収納缶に回収する。燃料デブリを入れた収納缶は、圧力容器上部で、その表面をフラッシングしてから遮蔽キャスクで覆い、本来設置されていた燃料集合体移送システムの代わりに設置された<span style="color:blue">'''収納缶移送システム'''</span>を用いて、水没させた<span style="color:blue">'''Canal最深部'''</span>に移送されることとなった。さらに、デブリ収納缶は、隣接する燃料取り扱い建屋の使用済み燃料貯蔵プールに一時貯蔵された後、構外輸送キャスクでINELに移送されることとなった。1985年10月に上部端栓等の回収作業が、1985年12月からは本格的な燃料デブリ取り出し作業が開始された。
== 取り出し工法決定時点までの知見 ==
*[[圧力容器ヘッド取り外し計画の概要|'''圧力容器ヘッド取り外し''']]、(令和7年1月に更新)<span style="color:red">'''(令和7年7月に記述を一部修正)、New!'''</span>
 DOEの年次レポートや参考文献[3]などを参照して、TMI-2廃炉において重要な判断ポイントとなった、'''<u>1984年12月時点</u>'''までの情報をとりまとめた。この時点までに、原子炉建屋からの放射性ガス(Kr-85)の排気を経て(〇)、建屋内のエントリーが開始され、様々なクリーンアップ作業と内部調査、および採集されたサンプルの分析が行われた。
 
 主な作業としては、まず、建屋内の空間線量と放射性微粒子の発生を抑制し、人工吸気装置を使用せずに原子炉建屋内での作業ができるようにするために、〇年に、総合除染試験が行われた。局所にはDFで2桁程度の除染効果が得られたものの、建屋全体としては再汚染が発生し、また、高線量のため作業員が立ち入ることができなかった地階(滞留水、コンクリート)からの線量のドーム天井などでのシャイン効果により、全体としては数分の1程度の線量低減に留まった。さらに、〇年夏に、原子炉建屋内の空間線量が増加するイベントが発生した。これらのことから、除染は優先順位をつけて中長期的な課題として実施し、当面の作業に向けては遮蔽と不用品の撤去が優先されることとなった。また、建屋内調査の過程で、圧力容器ヘッド周辺の燃料移送Canal浅瀬部分の空間線量が比較的小さいことが明らかになった。これは、天井ドームからのシャインの効果が小さいこと、および、この付近の構造物はSSでライナーされていたため、再汚染しにくく、除染効果が大きかったためであった。
 
 


*[[上部プレナム構造物取り外し計画の概要|'''上部プレナム構造物取り外し''']]、(令和7年2月に更新)


圧力容器ヘッド内(プレナム構造物、等)と炉心上部の内部調査およびサンプル分析が進められた。その結果を受けて、'''<u>1984年5月</u>'''に、圧力容器ヘッドとプレナム構造物の撤去を大気中で実施(<span style="color:blue">'''Dirty-Lift'''</span>)すること、および、燃料移送Canalは最深部以外は水没させず、ヘッドとプレナム構造物を撤去した後の圧力容器上部からの、作業員による長尺ツールを用いた手作業で燃料と炉心デブリの取り出しを行う方針が決定された。この段階で、ロボットによる遠隔自動方式でのデブリ取り出し工法は採用されないこととなった。重要な判断要因は、'''<u>作業の信頼性と汚染範囲・汚染水処理量の抑制</u>'''と記述されている。1984年7月に、ヘッド撤去と建屋内の貯蔵スタンドへの移動が完了し、1984年12月には、<span style="color:blue">'''プレナム構造物の初期リフト'''</span>(圧力容器内でのジャッキアップ)まで進捗した。ジャッキアップ位置で、上部格子板に固着しぶら下がっていた燃料集合体上部や上部端栓の除去や付着デブリのフラッシングが行われ、大気中でのプレナム構造物撤去が可能かどうかの最終判断がなされた。1985年5月に、上部プレナム構造物の撤去が行われ、同時に、圧力容器上に改良型のIIF(<span style="color:blue">'''Internal Indexing Fixture'''</span>)を設置して圧力容器内の冷却水水位をあげ、改良IIFの上に<span style="color:blue">'''遮蔽付きの作業プラットフォーム(SWP: Shielded Working Platform)'''</span>が設置されることとなった。また、初期の取り出し手順も提示された。(1) まず、崩落している上部端栓などの大型瓦礫を専用コンテナに回収あるいは炉心周辺部に移動させて、炉心炉心中央に作業スペースが形成された。(2) 次に、真空吸引方式で粒子状のデブリを、Pick-and-place方式で瓦礫状のデブリを、それぞれ収納缶に回収する。(3) 炉心中央で形成される空間で、大型デブリや炉心周辺の残留燃料集合体などを切断・破砕して、収納缶に回収する。燃料デブリを入れた収納缶は、圧力容器上部で、その表面をフラッシングしてから遮蔽キャスクで覆い、本来設置されていた燃料集合体移送システムの代わりに設置された<span style="color:blue">'''収納缶移送システム'''</span>を用いて、水没させた<span style="color:blue">'''Canal最深部'''</span>に移送されることとなった。さらに、デブリ収納缶は、隣接する燃料取り扱い建屋の使用済み燃料貯蔵プールに一時貯蔵された後、構外輸送キャスクでINELに移送されることとなった。1985年10月に上部端栓等の回収作業が、1985年12月からは本格的な燃料デブリ取り出し作業が開始された。
*[[デブリ取り出し工法の変遷|'''デブリ取り出し工法の変遷''']]、(令和7年1月に更新)
*[[デブリ取り出しツール|'''デブリ取り出しツール''']]、<span style="color:red">'''(令和7年7月令和7年7月にコアボーリングマシンについて記述更新、調査継続中)、New!'''</span>
*総合除染試験、(調査中)
*内部調査とサンプル分析に関するニーズ整理(Quick Look調査以前)、(調査中)
* 内部調査とサンプル分析に関するニーズ整理(Quick Look後)、(調査中)
*[[APSR(軸方向出力調整棒)挿入試験|'''APSR挿入試験''']]、(令和6年12月に更新)
*[[APSR(軸方向出力調整棒)挿入試験|'''APSR挿入試験''']]、(令和6年12月に更新)


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*[[Reactor Core Topography計画|'''Core Topography''']]、(令和6年11月に更新)
*[[Reactor Core Topography計画|'''Core Topography''']]、(令和6年11月に更新)


*[[デブリ取り出し工法の変遷|'''デブリ取り出し工法の変遷''']]、(令和7年1月に更新)
*[[圧力容器ヘッド取り外し計画の概要|'''圧力容器ヘッド取り外し''']]、(令和7年1月に更新)<span style="color:red">'''(令和7年7月に記述を一部修正)、New!'''</span>
 
*[[上部プレナム構造物取り外し計画の概要|'''上部プレナム構造物取り外し''']]、(令和7年2月に更新)


*[[ヘッド取り外しのデザインエンジニアリングと安全評価|'''ヘッド取り外しのデザインエンジニアリングと安全評価''']]、(令7年1月に更新)
*[[ヘッド取り外しのデザインエンジニアリングと安全評価|'''ヘッド取り外しのデザインエンジニアリングと安全評価''']]、(令7年1月に更新)
* [[デブリ取り出しツール|'''デブリ取り出しツール''']]、<span style="color:red">'''(令和7年7月令和7年7月にコアボーリングマシンについて記述更新、調査継続中)、New!'''</span>
* <span style="color:blue">'''炉心下部構造物(LCSA)の解体作業'''</span>、<span style="color:red">'''(DOE年次レポートの項目に記載)、New!'''</span>
* <span style="color:blue">'''炉心下部構造物(LCSA)の解体作業'''</span>、<span style="color:red">'''(DOE年次レポートの項目に記載)、New!'''</span>
* 内部調査とサンプル分析に関するニーズ整理(Quick Look調査以前)、(調査中)
* 内部調査とサンプル分析に関するニーズ整理(Quick Look後)、(調査中)


*以下、調査中
*以下、調査中

2025年7月28日 (月) 09:25時点における版

 ここでは、TMI-2事故後の原子炉内部調査とデブリ取り出しの進捗、調査・取り出し過程で採取されたデブリサンプルの分析、それらから推定された事故シナリオとデブリふるまい、についてまとめる。どのような内部調査が計画され、どのようなサンプルが採集・分析され、得られた知見がどのようにデブリ取り出し方法や事故シナリオの推定に反映されたのか、という観点で、時系列的に記述した。

事故対応の概要、時系列

 EPRINRCがそれぞれとりまとめた事故対応の概要レポート[1,2]、及びDOEの年次レポートを参照して、TMI-2事故炉の概要、内部調査とデブリ取り出しのおよその時系列についてとりまとめた。

 廃棄物取り扱い、環境影響評価、なども含む、TMI-2事故対応については、Nucl.Technol.誌の1989年特集号にまとめらており、その概要を整理した。

  • Nucl.Technol.誌のTMI-2特集号の概要(事故時の対応、デブリ取り出しの進捗、汚染・被ばく、サンプル分析、事故シナリオ、デブリ/FPふるまい解析、等についてまとめられている)、(令和7年7月に更新)、New!

取り出し工法決定時点までの知見

 DOEの年次レポートや参考文献[3]などを参照して、TMI-2廃炉において重要な判断ポイントとなった、1984年12月時点までの情報をとりまとめた。この時点までに、原子炉建屋からの放射性ガス(Kr-85)の排気を経て(〇)、建屋内のエントリーが開始され、様々なクリーンアップ作業と内部調査、および採集されたサンプルの分析が行われた。

 主な作業としては、まず、建屋内の空間線量と放射性微粒子の発生を抑制し、人工吸気装置を使用せずに原子炉建屋内での作業ができるようにするために、〇年に、総合除染試験が行われた。局所にはDFで2桁程度の除染効果が得られたものの、建屋全体としては再汚染が発生し、また、高線量のため作業員が立ち入ることができなかった地階(滞留水、コンクリート)からの線量のドーム天井などでのシャイン効果により、全体としては数分の1程度の線量低減に留まった。さらに、〇年夏に、原子炉建屋内の空間線量が増加するイベントが発生した。これらのことから、除染は優先順位をつけて中長期的な課題として実施し、当面の作業に向けては遮蔽と不用品の撤去が優先されることとなった。また、建屋内調査の過程で、圧力容器ヘッド周辺の燃料移送Canal浅瀬部分の空間線量が比較的小さいことが明らかになった。これは、天井ドームからのシャインの効果が小さいこと、および、この付近の構造物はSSでライナーされていたため、再汚染しにくく、除染効果が大きかったためであった。

 


圧力容器ヘッド内(プレナム構造物、等)と炉心上部の内部調査およびサンプル分析が進められた。その結果を受けて、1984年5月に、圧力容器ヘッドとプレナム構造物の撤去を大気中で実施(Dirty-Lift)すること、および、燃料移送Canalは最深部以外は水没させず、ヘッドとプレナム構造物を撤去した後の圧力容器上部からの、作業員による長尺ツールを用いた手作業で燃料と炉心デブリの取り出しを行う方針が決定された。この段階で、ロボットによる遠隔自動方式でのデブリ取り出し工法は採用されないこととなった。重要な判断要因は、作業の信頼性と汚染範囲・汚染水処理量の抑制と記述されている。1984年7月に、ヘッド撤去と建屋内の貯蔵スタンドへの移動が完了し、1984年12月には、プレナム構造物の初期リフト(圧力容器内でのジャッキアップ)まで進捗した。ジャッキアップ位置で、上部格子板に固着しぶら下がっていた燃料集合体上部や上部端栓の除去や付着デブリのフラッシングが行われ、大気中でのプレナム構造物撤去が可能かどうかの最終判断がなされた。1985年5月に、上部プレナム構造物の撤去が行われ、同時に、圧力容器上に改良型のIIF(Internal Indexing Fixture)を設置して圧力容器内の冷却水水位をあげ、改良IIFの上に遮蔽付きの作業プラットフォーム(SWP: Shielded Working Platform)が設置されることとなった。また、初期の取り出し手順も提示された。(1) まず、崩落している上部端栓などの大型瓦礫を専用コンテナに回収あるいは炉心周辺部に移動させて、炉心炉心中央に作業スペースが形成された。(2) 次に、真空吸引方式で粒子状のデブリを、Pick-and-place方式で瓦礫状のデブリを、それぞれ収納缶に回収する。(3) 炉心中央で形成される空間で、大型デブリや炉心周辺の残留燃料集合体などを切断・破砕して、収納缶に回収する。燃料デブリを入れた収納缶は、圧力容器上部で、その表面をフラッシングしてから遮蔽キャスクで覆い、本来設置されていた燃料集合体移送システムの代わりに設置された収納缶移送システムを用いて、水没させたCanal最深部に移送されることとなった。さらに、デブリ収納缶は、隣接する燃料取り扱い建屋の使用済み燃料貯蔵プールに一時貯蔵された後、構外輸送キャスクでINELに移送されることとなった。1985年10月に上部端栓等の回収作業が、1985年12月からは本格的な燃料デブリ取り出し作業が開始された。

  • デブリ取り出し工法の変遷、(令和7年1月に更新)
  • デブリ取り出しツール(令和7年7月令和7年7月にコアボーリングマシンについて記述更新、調査継続中)、New!
  • 総合除染試験、(調査中)
  • 内部調査とサンプル分析に関するニーズ整理(Quick Look調査以前)、(調査中)
  • 内部調査とサンプル分析に関するニーズ整理(Quick Look後)、(調査中)
  • APSR挿入試験、(令和6年12月に更新)
  • 以下、調査中

 以下の項目では、初期のデブリ取り出し過程で得られた知見、炉心中央から炉心下部に残留していた溶融凝固層や切り株燃料のボーリング調査下部プレナムの調査、および、これらの結果を反映した燃料デブリ取り出しの進捗についてまとめる。1984年5月時点での燃料・炉心デブリ取り出し方針の決定を受けて、炉心中央から下の領域の調査方法が具体化された。炉心下部については、コアボーリング法が採用されることとなった。下部プレナムについては、上部プレナム構造物撤去後に利用可能となる遮蔽体と圧力容器槽の円環状の隙間を利用して、長尺ツールでCCTVを吊り降ろす方式が選定された。一方で、1985年12月の燃料デブリ取り出し開始後に、微生物の大量繁殖による水質悪化が発生した。これは、事故対応の際に一次系に注入した河川水の中に存在していた微生物が、デブリ取り出しツールの油圧媒体を餌にして繁殖したためと考えられた。繁殖に適した水温やデブリ取り出し作業のための光源も微生物の繁殖を促進したと記述されている。1986年2月にはほとんど透明度が失われた。ブラインド作業でデブリ回収を進めつつ、殺生物剤(過酸化水素)や微生物の死骸の凝固剤が投入され、水質改善策がとられた。1986年5月ごろには、水質が若干改善し、炉心下部のボーリング調査の準備が行われた。5回に分けて実施された下部プレナム調査とボーリング調査により、炉心下部から下部プレナムにかけての燃料と炉心デブリの成層化状態や下部プレナムでのデブリ堆積状態が解明された。これを受けて、炉心中央に存在していた溶融凝固物相に対しては、ボーリング装置を利用した破砕作業が行われた。破砕されたデブリは、真空吸引方式と、Pick-and-place方式で回収された。その後、切り株燃料集合体のPick-and-place方式による回収が行われた。これらの燃料・炉心デブリの取り出し過程で、炉心周辺に残留していた燃料集合体の1層内側に、破損燃料棒などの凝集物からなる馬蹄形リング構造が存在していることが明らかになった。これは、事故進展シナリオ推定の重要知見となった。また、バッフル板の一部に大きな破損孔が形成されていたことが明らかになった。ここを経由して、溶融デブリがコアフォーマ領域や下部プレナムに移行したことが明らかになった。切り株燃料取り出し後に、LCSA(Lower Core Support Assembly)の解体と取り出しが、アークプラズマ装置によって行われた。ポスト部の解体にはコアボーリング装置が併用された。ついで、下部プレナムルースデブリが真空吸引方式とPick-and-place方式で回収された。下部プレナムハードデブリはスライドハンマーによる破砕処理を行った後で回収された。並行して、UCLA(Upper Core Support Assembly)の解体・取り出しと付着デブリの除去作業が行われた。これらの過程で、インコアモニター案内管の一部が損傷し、圧力容器下部ヘッド内面の一部にクラックが存在していることが明らかになった。そこで、全ての構造物とデブリ取り出し後に、案内管と下部ヘッドサンプルの採集が行われた。圧力容器内からの燃料取り出し作業は、1989年12月に終了し、1990年上期に最終検査とフラッシング作業が行われた

  • コアフォーマ領域の調査(DOE年次レポートの項目で記載)、New!
  • ex-vesselデブリの調査(調査中)

 以下の項目では、参考文献[4]などを参照して、圧力容器内から回収された様々なサンプルの分析結果をまとめる。

 以下の項目では、事故時のプラントデータ、圧力容器内部調査、様々なデブリサンプルの分析結果などから推定された、事故時のデブリふるまいについてまとめる。

参考文献

[1] The Cleanup of Three Mile Island Unit 2, A Technical History: 1979 to 1990, EPRI NP-6931, 1990.

[2] Three Mile Island Accident of 1979 Knowledge Management Digest, NUREG/KM-0001, Supplement 1, 2 and 3, USNRC, 2020.

[3] H.M. Burton and R.L. Freemerman, Reactor Disassembly Activities at Three Mile Island Unit 2, Progress in Nucl. Eng. 17 (1986) 141-174.

[4] R.K. McCardell, M. L. Russell, D.W. Akers, C.S. Olsen, Summary of TMI-2 core sample examination, Nucl. Eng. Des. 118 (1990) 441-449.


関連項目

既往知見