一部形状を残していた燃料集合体の詳細分析データ

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図1 上部格子から取り外した残留燃料集合体の部位 [1]
図2 ホットセルで分析された2体の集合体上部サンプル [1]
図3 燃料棒仮置きラック [1]
図4 炉心上部に残留した燃料集合体サンプル(D-141-3)からのサンプル採集位置 [1]
図5 燃料棒と制御棒サンプルからの、破壊分析サンプルの切り出し [1]

炉心でのサンプル採集位置とサンプルの外観

 図1に、INELで分析された燃料集合体上部サンプルの回部部位(C7,B8)を示す[1]。これらは、それぞれ、D-141-3D-153-9というIDが振り付けられた。

 図2に、それぞれの外観写真を示す[1]。D-141-3では、インコネル製の上部スペーサーグリッドから制御棒スパイダーの上部までが、ほぼ無傷で残留していた。さらに、燃料棒と制御棒は、スペーサーグリッドの下まで残留していた。これらの燃料棒や制御棒は、分析のために引き抜きあるいは切断して回収された。ステンレス製の制御棒被覆管は途中で溶融し、それより下の部分が失われていた。一方で、ジルカロイ製の燃料棒被覆管は、溶融でなく脆性破壊で切断された痕跡が観察された。これらの脱落は、事故進展時あるいは、ルースデブリ上にいったん落として収納缶に回収した作業の途中で発生したと推定された。制御棒のステンレス被覆管が残留(一部で溶融の痕跡)していたことから、このあたりでの事故時ピーク温度は1673K程度と推定された(表1参照)。スペーサーグリッドが溶融せずに残留していた部分では、ピーク温度が1533K以下であったと推定された(表1参照)。D-153-9では、上部スペーサーグリッドとタイプレートが一部で溶融破損し、一部では残留していた。図中の北西側領域では、エプロンの一部も溶融していた。一方で、南東側領域では、燃料棒や制御棒が、上部スペーサーグリッドの20-25cm下まで残留していた。これらの残留状態から、北西側領域でのピーク温度は>1673Kと推定された。南東側領域では>1533Kと推定された。同じ集合体内で軸方向と径方向に大きな温度勾配が発生していたと推定された。

燃料棒/制御棒/案内管サンプルの採集位置

 D-141-3集合体サンプルから、119本の燃料棒と、16本の制御棒+案内管サンプルが採集された。さらに、同じ収納缶内にあったD-141-11サンプルから、11本の燃料棒サンプルを採集された。これらは、いったん燃料棒ラックに仮置きされた(図3)[1]。燃料棒ラックは、ロッドサンプルの重量測定にも使用された。重量測定により、被覆管内の残留物の重量が評価され、詳細化学分析・微細構造分析のサンプル選定の参考とされた。さらに、D-141-3から、15本の燃料棒と7本の制御棒+案内管サンプルが、D-141-11から、7本の燃料棒サンプルが分取され、ロッド全長のガンマ線と中性子計測が行われた。これらの結果に基づいて、微細組織分析と放射化学分析の部位が選定された。

 図4に、D-141-3の見取り図と、詳細分析に供された燃料棒・制御棒のサンプル番号を示す[1]。図5には、採集した燃料棒・制御棒サンプルの破壊分析用の切り出し部位を示す[1]。

  • 3-30:燃料棒サンプル。燃料バンドルの外周側から採集、制御棒に隣接。全長は約40cm。
  • 3-42:燃料棒サンプル。燃料バンドルの中央近くから採集、制御棒に隣接していない。全長約28cm。
  • 3-1C:制御棒サンプル。3-30燃料棒に隣接。案内管と分離して回収。全長約40cm。
  • 3-1G:案内管サンプル。3-30燃料棒に隣接。制御棒と分離して回収。全長約40cm。
  • 3-14C/G:制御棒と案内管の固着サンプル。全長約25cm。

 破壊分析サンプルのうち、Mでナンバリングされたサンプルは、断面を研磨後に、微細組織観察(光学顕微鏡、断面金相、など)に供され、SEでナンバリングされたサンプルは、溶融処理後に化学・放射化学分析(ICP、γ分光、など)に供された。また、サンプルの全長について、中性子計測とγ分光分析が行われた。

分析手順・方法

全長γ分光分析

 採集した燃料棒と制御棒を、個別にアルミナ管に装荷し、サンプルの全長について、γ分光分析が行われた。また、3cm間隔で、特定のγ線源について定量分析が行われた。

微細組織観察

 燃料ペレットと燃料被覆管の酸化程度、結晶粒のサイズ、空孔の状態、Zry案内管とSS製の制御棒被覆管などの炉心構成材料間の反応、などを調査し、事故時のピーク温度を推定するために、微細組織観察が行われた。上述したサンプル部位を切り出し(図2参照)、軸方向あるいは径方向に断面が研磨された。また、結晶サイズを調べるために、いくつかのサンプルでは研磨断面のエッチングが行われた。光学顕微鏡の倍率としては、500Xが多用されている。

研磨手順:

  1. SiC潤滑剤使用し、120グリッドのペーパーで、粗く回転研磨(grinding)
  2. 240~400グリッドのペーパーでさらに研磨(ペーパーのサイズを変えるたびに、表面を水洗)
  3. 600グリッドの ペーパーで仕上げ研磨
  4. 6μmのオイルタイプのダイアモンドペーストで粗磨き(polishing)、回転研磨機の固いペーパー上で
  5. 3μmのダイアモンドペーストで仕上げ磨き。起毛ナイロン上で

エッチング溶液:

  • 酸化物用:85%過酸化水素+15%硫酸(酸化物相の主成分がUO2であることから選定)
  • 金属用:酪酸55%、硝酸19%、水19%、フッ酸7%(金属相の主成分がZryかAg-In-Cdであることから選定)

化学・放射化学分析

 全長γ分光分析の後に、注目箇所13個の被覆管サンプルを切断して分取し、内外表面への、FPと主要な炉心構成物質の付着分布が定量分析された。燃料ペレットについては、回収された領域では、あまり高温に達しておらず、ほとんど事故前の状態を維持していると推定されたため、化学分析は行われなかった(#一部溶融して放射化学分析によるFP分析のみ実施)。

溶液調製と分光分析の手順:

  1. 燃料棒サンプルから燃料ペレットを取り外し、その一部を、閉鎖系で5M硝酸で溶融。溶融処理時に、放出されるI-129を水酸化ナトリウムトラップで回収。溶融処理前に、トレーサーとしてI-131とSr-93を添加することで、溶融処理時の溶液中への残留とトラップへの移行の割合を評価。
  2. 被覆管サンプルは、被覆管外面と内面で別々に溶解処理を実施。被覆管セグメントを約1.3cm間隔で切断し、切断面にガラス製のキャップをつけエポキシ樹脂で隙間を封入。その後、被覆管の外表面を6M塩酸で2-4時間浸出処理。次に、ガラス管を外し、被覆管の内面を浸出処理。いくつかのサンプルでは、被覆管が封じ切れていなかったため、内外表面を同時に浸出処理。
  3. 回収した溶液にI-131とSr-85をトレーサーとして添加。
  4. 溶液を60mlにメスアップし、分析Aliquotを調製。
  5. γ線分光分析では、ゲルマ検出器で定量分析。測定誤差はおよそ20%。Eu-155などのγ線エネルギーの弱い核種では30%。
  6. 核物質分析では、Aliquotから一部を分取してATRで照射し、アクティブ中性子/遅発中性子の分析。サンプル中に中性子吸収物質(B,Ag,In,Cd)が存在しない場合、測定誤差10%。中性子吸収物質が存在する場合には、別途ICP分析を実施。
  7. Sr-90分析では、液体シンチレーターを使用。分析前にSr-90をトレーサーとともに沈殿させて分析。分析誤差10-20%。
  8. I-129分析では、I-131をトレーサーとして添加し、溶融処理中の蒸発量を評価。有機分離法で、調製した溶液と水酸化ナトリウムトラップ溶液から、I-129とI-131を回収。ATRで照射し、I-129が放射化して形成されるI-130を定量。測定誤差10-15%。
  9. ICP分析では、主要な17個の炉心構成物質(Ag,Al,B,Cd,Co,Cr,Fe,Gd,In,Mn,Mo,Ni,Nb,Si,Sn,U,Zr)の定量分析を行った。測定誤差約10%。

分析結果

切断面の観察

 図6(a)に、燃料棒の切断面の拡大を示す。ペレットには溶融の痕跡はほぼ見られず、内部にクラックが入っているのが見える。その周囲の燃料被覆管は脆性破断したように崩落していることがわかる。この崩落メカニズムでは、崩落断面の温度は高々2000~2200K程度と推定された。図6(b)に、制御棒の崩落断面の拡大を示す。内部が中空で、中性子吸収剤(Ag-In-Cd)がおそらく溶落して消失していることがわかる。また、ステンレス製の制御棒被覆管とジルカロイ製の案内管の間で共晶溶融が発生していることがわかる。図6(c)には、別の制御棒の下部の様子を示す。Ag-In-Cdが溶融凝固して押し出され、先端が曲がっていることがわかる。これは、上部集合体サンプルが、デブリベッドの上に落下した際に形成された曲りと推定された。これらのことから、炉心上部での事故時の制御棒ピーク温度は1073-1673Kであり、軸方向に大きな温度勾配があったと推定された。

図6 燃料棒と制御棒の破断・切断部の拡大 [1] (a) 燃料棒、(b) 制御棒と案内管、(c) 制御棒破断面にAg-In-Cd材が残留

微細組織観察

制御棒サンプルの微細組織

 制御棒サンプルでは、Ag-In-Cd相とSS製の被覆管の間には、相互作用した痕跡は見られなかった。図7(1)(2)に、Ag-In-Cd部位の断面金相を示す[1]。図7(a)は燃料棒の上端から約26cm下、(b)は同じく約13cm下のスプリング近傍、にそれぞれ対応する。(a)(b)いずれもデンドライト構造が観測され、Ag-In-Cd相が溶融・凝固したことを示している。一方で、SS製の被覆管に溶融の痕跡が見られないことから、制御棒上部の事故時ピーク温度は、1073~1673K程度と推定された。また、わずか13cmしか離れていない箇所での微細組織がかなり異なっていることがわかる。比較的下の方では、結晶粒が相対的に大きく徐冷したことを示している。一方で、スプリング近傍では、デンドライト構造が微細で、急冷したと推定された。事故途中にAg-In-Cdが溶融した時点では、圧力容器は高圧で維持されていたことから、Ag-In-Cdの溶融によって制御棒被覆管が内側に押しつぶされ、溶融Ag-In-Cdの一部がスプリングの位置まで押し上げられ、そこで急冷したと推定された。逆に炉心の下の方に押し下げられた溶融Ag-In-Cdは、溶融状態のまま維持され、さらに温度が上昇して、被覆管が破損した時点で制御棒の外部に放出されたと推定された。

 Zry製の制御棒案内管については、3-14C/Gサンプル中で、水素化の痕跡が観測された(図7(3))[1]。水素化の状態は、案内管内の径方向の角度や軸方向の位置によって大きく異なっていた。一方で、同じ高さレベルでの燃料被覆管では酸化が進み、水素化の痕跡は見られなかった。これらのことから、事故時の、制御棒周辺の水蒸気流量と水素濃度、および温度が局所的に大きく異なっていたと推定された。案内管の外側表面では、数μm厚さの酸化膜が形成されていた。一方で内側では、数μmのα-Zr(O)層のみが検出され、一様な酸化膜層の形成は見られなかった。バルクのZryについては、β転移は見られなかった。これらのことから、Zry製案内管のピーク温度は<1133Kと推定された。

図7(5) 燃料棒サンプルの被覆管の酸化 (a)3-42サンプルM-7部位、(b)3-42サンプルM-5部位南側、(c)3-42サンプルM-5部位北側 [1]

燃料棒サンプルの微細組織

 燃料棒サンプルでは、燃料ペレットについて、結晶成長や酸化の様子は観測されなかった(図7(4))[1]。事故進展のどこかの段階でクラックが形成されたと推定されている。Zry被覆管については、外周部に酸化皮膜が形成されていた。皮膜の厚さは、数cm~数10cmの位置の違いや径方向の向きで大きく異なり、最大で数100μmに到達していた(図7(5))[1]。被覆管の内側にも数μm厚さの酸化皮膜が形成されていた。このことから、燃料被覆管が破損した後に、被覆管の内側で酸化が継続したと推定された。酸化が進んでいたM-5部位のZryでは、未酸化部分でβ変態が観測された(>1133K)。一方で、酸化が進んでいなかったM-7部位では、β変態は見られなかった(<1133K)。これらのことから、燃料棒についても、軸方向・径方向に大きな温度勾配と、水蒸気/水素比の変化があったことが示唆された。

表1 構成材料の融点、共晶温度など(文献[9,10]などに基づき作成]
主な炉心物質 融点・相変態温度(K)
304 type-SS(上部金具、エプロン、グリル、など)融点 1673
718-Inconel(スペーサーグリッド)融点 1533
X-750 Inconel(スプリング)融点 1666
Ag-In-Cd(中性子吸収剤)融点 1073~1100
Zircaloyの、α→β遷移 1245
Zircaloy(燃料棒被覆管、制御棒案内管、計装案内管)融点 2030
UO2(燃料ペレット)融点 3120
(U,Zr)O2 (燃料棒の溶融生成物)融点(U:Zrモル比1:1) 2810
Al2O3-B4C(可燃性毒物)融点 2300
Ni-Zr, Fe-ZrのZrリッチ側共晶溶融(金属部材の界面反応生成物) 1200
Ni-Zr, Fe-ZrのNi,Feリッチ側の共晶溶融(同上) 1500~1600

全長γ分光分析

 図8(a)~(e)に、図5に示したロッド状サンプルの全長γスキャンの結果を示す[1]。

燃料棒サンプル:3-30

 図8(a)に、3-20サンプルの分析結果を示す。3-20は、C7集合体のN11ポジションから回収(図4参照)された。制御棒の隣、燃料バンドル外周から2.9cm内側に存在しており、サンプル全長40.4cmであった。そのうち、上部の11.5cmは304SS製のスプリングがある部位に相当していた。その下に上部スペーサーグリッドとギャップ(3.5cm)領域があり、その下に燃料ペレットが19.4cm分残留、さらにその下の約6cmは中空の被覆管のみが残留していた。

  • 上端から0-14cmの領域:γ線のカウントピークが存在。上端から2.5cm位置でのγ線同位体分析で、Ce-144を検出。燃料成分の粉末が燃料被覆管の外面に付着していた可能性。上端から10cm位置で、Co-60を検出。スプリングの放射化由来と推定。上端から10cm位置では、Ce-144は検出されず、Cs-137を検出。揮発性FPが燃料棒から放出され、被覆管外表面に付着したと推定。また、Sb-125を検出したが、Snの放射化由来かFP由来かは判別できず。
  • 上端から12-15cmの領域:燃料被覆管内のボイドとZry製のスペーサーが存在する領域に対応。γ線のカウント数がいったん減少。
  • 上端から15-35cmの領域:燃料ペレットが残留。下に行くにつれてγ線線量が増加する理由は、燃料棒の下の方でより中性子束が大きく照射量が大きいことに対応。γ線同位体分析で、燃料由来のFP成分と放射化由来のCo-60を検出。
  • 上端から35-40cmの領域:ボイド。燃料由来のFP線量は、それより上の領域に比べて一桁以上減少。燃料デブリ粉末が付着していたと推定。一方で、Co-60線量が増加し、Sb-125は30%しか減っていない。ボイド部分でCo-60線量が増加した理由は、被覆管内が空になったため、被覆管裏面側のCo-60も検出したためと推定。Sb-125の検出量があまり減らなかった理由は、Zry中のSnの放射化由来の寄与が大きいと推定。
  • Ce-144は、上端から10cmの部位のみで検出⇒デブリ粒子付着由来と推定。
  • Cs-137は広く表面に付着。燃料由来であり、事故進展中および冷却水中に約6年間放置されていた最中に、被覆管の外表面に吸着されたと推定。
  • Co-60は燃料由来でなく、SS材の放射化由来と推定。Sb-125は、大半がSnの放射化由来と推定。

燃料棒サンプル:3-42

 図8(b)に、3-42サンプルの分析結果を示す。3-42は、C7集合体のF8ポジションから回収(図4参照)された。燃料バンドル領域に存在し、周囲を燃料棒に覆われている。サンプル全長は28.1cmであった。そのうち、上部の11.5cmは304SS製のスプリングがある部位に相当していた。その下に上部スペーサーグリッドとギャップ(3.5cm)領域があり、その下に燃料ペレットが12.1cm分残留、さらにその下の約1cmは中空の被覆管のみが残留していた。

  • 上端から0-14cmの領域:γ線のカウントピークが存在。3-30サンプルと同様に、スプリングの放射化由来と推定。制御棒が隣接していた3-30に比べて、中性子束が大きく、放射化量が大きかったと推定。全長にわたってCe-144とRu-106が検出されず、燃料由来粒子の付着がなかったと推定。
  • 上端から15-27cmの領域:線量が次第に増加。これは、燃料集合体上部での中性子束の増加と整合。
  • 上端から30cmの部位:γ線同位体分析で、Cs-137,Sb-125,Co-60を検出。Cs-137は燃料粉末の一部が被覆管内に付着と推定。Sb-125とCo-60は放射化由来。

制御棒/案内管サンプル:3-1Cと3-1G

 図8(c)(d)に、3-1Cと3-1Gサンプルの分析結果を示す。3-1C/Gは、C7集合体のN10ポジションから回収(図4参照)された。燃料棒サンプル3-30に隣接しており、制御棒部分は全長37cmであった。そのうち、31cm分に制御材が残留していた。サンプルの上端にはスプリングが存在し、そのすきまに溶融凝固した制御材が侵入していた。案内管部分は全長36cmであった。制御棒/案内管サンプルは、燃料棒サンプルに比べて、全体的にγ線量が低い。FPの検出量も相対的に小さい。

  • 上端から0-8cmの領域(3-1C):燃料棒サンプルで見られたようなスプリングの放射化による線量ピークは検出されず。
  • 上端から約35cmの領域(3-1C):主にSb-125による線量ピークを検出。3-1CはSS主成分であり、Snの放射化由来によるとは考えられない。FP成分の付着の可能性。一方で、Cs-137の分布にはほとんどピークが見られなかった。このピークの理由は同定されていない。Sb-125が燃料ペレットから分離されるなんらかのメカニズムが存在する可能性、あるいは、放射化されたSn由来のSb-125が燃料棒被覆管から分離されて、制御棒被覆管の外表面に付着した可能性、などが考えうる。
  • 3-1G:全長にわたり、次第に線量増加。線源はCs-137,Co-60,Sb-125。Cs-137はほぼ均質に分布。Co-60とSb-125は次第に線量増加。FeとSnの放射化由来と推定。

制御棒/案内管サンプル:3-14C/G

 図8(e)に、3-14C/Gサンプルの分析結果を示す。3-14C/Gは、C7集合体のC6ポジションから回収(図4参照)された。制御棒被覆管と案内管は機械的に分離できなかった(全長17.8cm)。全体的に線量分布が平坦しており、線源はCs-137,Co-60,Sb-125であった。

化学分析(ICP分析)

 分析データは、燃料棒成分(U,Zr,Sn)、制御材成分(Ag,In,Cd)、可燃性毒物棒由来成分(Al,B,Gd)、構造材成分(Fe,Cr,Mn,Mo,Co,Ni,Nb,Si)、およびFPに分けて整理された。また、FPについては、低揮発性(Ce-144)、中揮発性(Eu-154,Eu-155,Sr-90,Ru-106,Sb-125)、高揮発性(Cs-137,I-129)に分け[2]、かつ、ORIGEN-IIの計算結果[3]と比較して分析データの検討が行われた。

 表2~表4に、図5に示したロッド状サンプルから切断して採集した各種被覆管サンプルの浸出液のICP分析データを単位表面積当たりの検出量(μg/cm2)に換算して示す[1]。なお、分析部位は、図中にSEを付記して示している。さらに表5に、燃料棒、制御棒、案内管それぞれのセグメントサンプル浸出液の分析値の平均値と、そこから事故前の炉心上部1/3にあった構造物表面積に外挿して評価した、炉心上部構造物全体への付着物量、の推定値を示す[1]。付着量については、不確かさの大きい評価結果となっているが、およその傾向と物量を概略理解することはできる。ZrとSnを除いて、付着量はkg以下のオーダーであり、炉心の本来物量に比べて極めて少量と評価された。なお、Quick Look調査により、炉心上部には空洞が広がっていたことが確認されたため、ここでの付着量の見積もりは、おそらく過大評価になっていると指摘されている。上部空洞の容積を考慮すると、炉心上部の残留構造物の表面積は本来炉心の約20%と考えられる。

燃料棒成分(U,Zr,Sn)について

 UとZrについては、燃料棒被覆管、制御棒被覆管と案内管の内外表面に広く検出された。Zryに含有されているマイナー成分のSnは、Zrが比較的高濃度で検出された各種被覆管の外側表面で、Zrに同伴して検出された。

 Uについては、ロッドサンプルの全長γスキャン(上述)で、燃料棒被覆管外表面の上の方に、Uが付着していた領域が検出された。これは、燃料粉末の付着と推定された。また、燃料棒サンプルの外表面でのU検出量が内表面より一桁以上大きかった(表2)。また、制御棒/案内管サンプルの外表面でのU検出量は、燃料棒サンプル表面の数分の1だった(表3,4)。Uは、本来燃料棒の内側にあったはずで、燃料棒サンプル外表面での検出量が大きかった原因は不明とされた。可能性としては、棒状サンプルを切断した際のコンタミが指摘された。U検出量は場所によってかなりばらついていたが、その単純平均値をとって、炉心上部1/3の燃料集合体の全表面積への付着量に外挿すると、高々1kgと評価された(表5,不確かさの大きい値であるが、炉心全体の物量に対して軽微な値であると評価された)。形状を一部維持した燃料集合体は、冷却水中に約6年放置されていたことから、その外表面にU付着していることは合理的と考えられる。検出量がばらついた理由は、おそらくデブリサンプル回収時の取り扱い時の操作による。

 Zrについては、制御棒サンプル表面で比較的高いZr濃度を検出したが、そのメカニズムは同定されなかった。SS表面にZrが吸着されるメカニズムが存在する可能性があると指摘された。燃料棒サンプルと案内管サンプルでは、Zry主成分であるため付着量の評価はされていない。Snについては、本来のZry被覆管中のZr/Sn比(61.2)に比べて、付着物中でSnが濃化していたという分析結果が得られた(Zry表面でZr/Sn=1~8、SS表面ではさらに大きい値)。そのメカニズムとしては、Zryの選択酸化で残留したSnが金属あるいは酸化されてSnO2の形態で放出され表面付着した可能性が指摘されたが、今後の検討が必要とされた。

制御材成分(Ag-In-Cd)について

 被覆管内に残留していた制御材の溶融凝固サンプルの分析(SE-11,SE-16、表3備考)では、装荷時の組成(80%Ag-15%In-5%Cd)がほぼ維持されていたという分析結果が得られた。被覆管/案内管サンプルの浸出液からは、燃料棒サンプルの内表面以外ですべて検出された(表2~4)。また、分析値の幅がほかの元素に比べて比較的小さい傾向があり、また、燃料棒と制御棒の外表面での付着傾向に顕著な差は見られない(表5)。これらのことから、エアロゾル付着は起きておらず、室温に低下した後で、表面付着が起きた可能性が推定された。いずれにしろAg-In-Cdの表面付着は軽微であると評価された。

 一方で、浸出液の分析値中のAg/In,Ag/Cd,In/Cdの比は、本来の制御材中の値と異なっていた。Ag/Inの比からは、Inが約4倍濃化していたと評価された。このことからは、制御棒から放出された制御材が直接、各種被覆管や案内管の外表面に付着したのではなく、事故時に発生した何らかの高温反応、あるいは、事故後6年間冷却水中に放置された際に発生した二次的な反応で、制御材成分が付着したと示唆された。これらの成分が冷却水中にかなりの濃度で溶解するとは考えにくいため、事故時の高温環境での蒸発・凝縮のプロセスで付着した可能性が高い。Ag/Cdは、本来組成よりかなり大きい。また、CdデータはAg,Inに比べ測定値の幅が大きい。おそらく、Cdの沸点がAg,Inに比べて低く、蒸発しやすいためと推定される。In/Cd比も、本来組成よりかなり大きい。表面付着物中にInが濃化するメカニズムが存在していたと推定された。

可燃性毒物棒の成分(Al,B,Gd)について

 Gdは、B8,H4,H12,N8集合体の燃料ペレット中にのみ装荷されており、炉心全体での装荷量はわずか13kgであった。Al,Bは、可燃性毒物棒の主成分として炉心に均質装荷されていた。

 AlとBは燃料棒/制御棒/案内管サンプルの外表面で検出広く検出されたのに対し、Gdは3-1C制御棒サンプルの外表面でのみ有意な値として検出された(表2~4)。AlとBの検出濃度の平均値は、それぞれ11,31μg/cm2で、測定値の幅はAlで3倍以内、Bは14倍以内であった(表5)。Alは、おそらく装荷されていたAl2O3が事故進展中にZrによって還元され金属Alを形成し、それが外部に放出されて各種被覆管の外表面に付着したと推定された。Bについては、広く検出されたが、可燃性毒物棒ではなく冷却水中のホウ酸に由来すると考えられた。Gdについては、SS被覆管表面でなんらかの相互作用が発生していた可能性が示唆された。分析に供した集合体には、本来Gdは装荷されておらず、最も近いGdの由来は隣接していたC7集合体であり、全量がわずか13kgしかないGdをこのサンプルで検出したのは驚きであると記載されている。ただし、分析値から外挿した、上部炉心全体でのGd付着量は<0.04kgしかない。

構造材成分(Fe,Ni,Cr,Mn,Mo,Co,Nb,Si)について

 構造材由来の付着物(副成分)の推定値は約1.2kgと評価された(表5)。構造材については、本来のSSやInconel材と付着物の差を同定することは困難である。特に濃化していた元素は検出されていない。

表2 燃料棒被覆管セグメントの内外表面からの浸出溶液の分析結果(μg/cm2)[1]
燃料棒サンプル3-30のSE-2部位

(上端から約34cm)

燃料棒サンプル3-30のSE-4部位

(上端から約20cm)

燃料棒サンプル3-42のSE-6部位

(上端から約23cm)

燃料棒サンプル3-42のSE-8部位

(上端から約13cm)

元素 外表面 内表面 外表面 内表面 外表面 内表面 外表面 内表面
燃料棒由来
U 5.86 x 102 2.88 x 101 4.82 x 100 <5.14 x 100 1.92 x 102 7.41 x 100 1.05 x 102 1.59 x 101
Zr 1.50 x 102 1.39 x 102 1.54 x 101 9.51 x 101 8.71 x 101 5.53 x 101 3.59 x 102 1.46 x 102
Sn 2.82 x 101 <2.06 x 101 <1.93 x 101 7.71 x 100 3.21 x 101 8.55 x 100 3.45 x 102 <2.12 x 101
制御材由来
Ag 4.67 x 101 1.18 x 101 4.80 x 10-1 <0.51 x 100 9.39 x 101 <5.70 x 10-1 6.33 x 101 <5.29 x 10-1
In 5.68 x 10-1 <1.03 x 10-1 <9.64 x 100 <1.03 x 101 6.76 x 101 <1.14 x 101 6.56 x 101 <1.06 x 101
Cd 5.73 x 100 <1.03 x 100 <9.64 x 10-1 <1.03 x 100 4.38 x 100 <1.14 x 100 5.88 x 100 <1.06 x 100
可燃性毒物由来
Al 8.37 x 100 <2.06 x 100 5.78 x 100 <2.06 x 100 1.22 x 101 <5.13 x 100 1.45 x 101 <2.12 x 100
B 1.63 x 101 <4.11 x 100 <3.86 x 100 <4.11 x 100 3.41 x 101 <4.56 x 100 1.29 x 102 <3.70 x 100
Gd <1.32 x 100 <1.54 x 100 <1.45 x 100 <1.54 x 100 <1.46 x 100 <1.71 x 100 <1.36 x 100 <1.59 x 100
構造材成分由来
Fe 1.59 x 101 2.06 x 100 4.80 x 10-1 <1.03 x 100 4.62 x 101 1.71 x 100 1.09 x 103 6.35 x 100
Ni 7.93 x 100 <1.03 x 101 <9.64 x 100 <1/03 x 101 3.55 x 101 <1.14 x 101 1.56 x 102 <1.06 x 101
Cr 3.08 x 100 <3.60 x 100 <3.37 x 100 <3.60 x 100 <3.41 x 100 <3.99 x 100 3.45 x 102 <3.70 x 100
Mn 8.80 x 10-1 5.10 x 10-1 4.80 x 10-1 5.10 x 1021 1.46 x 100 5.70 x 10-1 1.40 x 101 1.06 x 100
Mo <3.52 x 100 4.11 x 100 <3.86 x 100 <4.11 x 100 <3.89 x 100 <4.56 x 100 4.52 x 100 <4.23 x 100
Co 3.52 x 100 1.03 x 100 1.45 x 100 1.03 x 100 3.41 x 100 1.14 x 100 3.17 x 101 2.12 x 100
Si 2.64 x 100 <2.06 x 100 <1.93 x 100 <2.06 x 100 7.30 x 100 <2.28 x 100 1.18 x 101 <2.12 x 100
Nb 1.76 x 100 2.57 x 100 2.41 x 100 2.06 x 100 2.43 x 100 2.85 x 100 2.26 x 100 2.565 x 100

#Siの分析値は、溶融処理時に用いたガラス材などからのコンタミの影響を受けていると考えられる。

#ZrとSnの分析値は、Zry被覆管から直接溶融した量を含む。

表3 制御棒/案内管セグメントからの浸出溶液の分析結果(μg/cm2)[1]
制御棒サンプル3-1CのSE-9部位

(上端から約33cm)

制御棒サンプル3-1CのSE-1部位

(上端から約18cm)

制御棒/案内管サンプル3-14C/GのSE-11部位

(上端から約20cm)

制御棒/案内管サンプル3-14C/GのSE-16部位

(上端から約2cm)

元素 外表面 内表面 外表面のみ 内外表面とも 内表面 外表面
燃料棒由来
U 1.01 x 102 2.16 x 101 8.42 x 101 3.37 x 101 3.16 x 101 <4.13 x 100
Zr 2.58 x 103 6.12 x 102 2.54 x 101 7.37 x 102 1.42 x 101 1.11 x 101
Sn 9.40 x 103 3.49 x 103 1.62 x 104 3.37 x 101 3.24 x 101 6.88 x 100
制御材由来
Ag 1.48 x 102 1.84 x 102 7.85 x 101 3.60 x 101 5.98 x 101 <4.13 x 100
In 1.62 x 102 2.37 x 101 2.94 x 102 3.86 x 101 4.88 x 10-1 <8.26 x 100
Cd 5.13 x 101 6.33 x 100 2.20 x 101 5.71 x 100 1.09 x 101 <9.17 x 10-1
可燃性毒物由来
Al 1.62 x 101 2.11 x 100 7.66 x 100 1.14 x 101 1.52 x 101 <1.83 x 100
B 1.39 x 102 1.43 x 101 2.06 x 101 4.26 x 101 2.99 x 10-1 <3.68 x 100
Gd 3.33 x 100 <1.58 x 100 6.70 x 100 <8.57 x 10-1 <1.26 x 100 <9.17 x 10-1
構造材成分由来
Fe 2.22 x 104 1.02 x 104 6.04 x 104 5.51 x 101 9.43 x 101 3.53 x 101
Ni 3.95 x 103 1.56 x 103 7.38 x 101 2.17 x 101 3.03 x 101 <9.17 x 100
Cr 5.32 x 103 3.11 x 103 1.23 x 104 6.29 x 100 1.01 x 101 1.28 x 10-1
Mn 7.22 x 102 2.56 x 102 1.34 x 103 8.57 x 10-1 1.68 x 100 4.59 x 10-1
Mo 6.41 x 101 4.33 x 101 1.43 x 102 <2.29 x 100 <3.37 x 100 <3.68 x 100
Co 4.85 x 101 2.16 x 101 9.09 x 101 2.00 x 100 8.42 x 10-1 4.59 x 10-1
Si 2.09 x 102 8.97 x 101 3.13 x 102 4.29 x 100 5.47 x 100 <1.83 x 100
Nb 3.80 x 101 1.85 x 101 1.72 x 101 8.57 x 10-1 8.42 x 10-1 <9.17 x 10-1

#SE-11とSE-16サンプルについては、ロッド内に残留していたAg-In-Cdの相対濃度の分析をあわせて実施した。その結果、SE-11サンプルでは、Ag(80.0wt%)-In(15.1wt%)-Cd(5.0wt%)、SE-16サンプルでは、Ag76.4wt%)-In(18.6wt%)-Cd(5.0wt%)、という分析結果が得られた。

#Siの分析値は、溶融処理時に用いたガラス材などからのコンタミの影響を受けていると考えられる。

#ZrとSnの分析値は、Zry案内管から直接溶融した量を含む。

#Fe,Ni,Cr,Mn,Siの分析値は、SS被覆管やインコネルから直接溶融した量を含む。

表4 案内管セグメントからの浸出溶液の分析結果(μg/cm2)[1]
案内管サンプル3-1GのSE-17部位

(上端から約3cm)

制御棒サンプル3-1CのSE-1部位

(上端から約18cm)

案内管サンプル3-1GのSE-19部位

(上端から約29cm)

案内管サンプル3-1GのSE-20部位

(上端から約2cm)

元素 外表面のみ 内表面 外表面 内表面 外表面 内外表面とも
燃料棒由来
U 2.83 x 101 1.31 x 101 5.25 x 100 1.08 x 101 1.11 x 101 2.37 x 101
Zr 2.20 x 102 1.97 x 102 1.71 x 102 2.00 x 102 9.57 x 101 1.68 x 102
Sn 2.87 x 101 4.76 x 101 6.06 x 100 2.37 x 101 <1.59 x 101 3.23 x 101
制御材由来
Ag 8.64 x 101 7.64 x 101 2.42 x 100 4.09 x 101 1.40 x 101 5.15 x 101
In 4.16 x 101 6.63 x 101 8.48 x 100 2.40 x 101 7.95 x 100 3.47 x 101
Cd 3.14 x 100 3.00 x 100 1.62 x 100 8.77 x 10-1 4.45 x 100 6.09 x 100
可燃性毒物由来
Al 9.43 x 100 8.24 x 100 4.04 x 100 9.06 x 100 7.95 x 100 1.18 x 101
B 2.28 x 101 1.42 x 101 4.85 x 100 9.36 x 100 1.49 x 101 9.55 x 10-1
Gd <1.18 x 100 <1.12 x 100 <1.21 x 100 <8.77 x 10-1 <9.54 x 10-1 <3.97 x 10-1
構造材成分由来
Fe 4.79 x 101 6.40 x 101 2.18 x 101 1.75 x 101 4.23 x 101 5.34 x 101
Ni 1.96 x 101 4.12 x 101 1.17 x 101 1.70 x 101 2.07 x 101 2.78 x 101
Cr 7.07 x 100 5.99 x 100 6.46 x 100 4.68 x 100 5.09 x 100 3.71 x 100
Mn 1.18 x 100 1.12 x 100 8.08 x 10-1 8.77 x 10-1 6.36 x 10-1 7.95 x 10-1
Mo <3.14 x 100 <3.00 x 100 <3.23 x 100 <2.34 x 100 <2.54 x 100 <1.06 x 100
Co 1.18 x 100 1.50 x 100 1.21 x 100 1.17 x 100 1.25 x 100 1.06 x 100
Si 6.29 x 100 2.25 x 100 2.02 x 100 6.43 x 100 3.82 x 100 3.97 x 100
Nb 1.18 x 100 1.12 x 100 8.08 x 10-1 8.77 x 10-1 6.36 x 10-1 3.97 x 10-1

#Siの分析値は、溶融処理時に用いたガラス材などからのコンタミの影響を受けていると考えられる。

#ZrとSnの分析値は、Zry案内管から直接溶融した量を含む。

表5 燃料棒被覆管と制御棒被覆管/案内管セグメントからの浸出溶液の分析結果(平均値と評価幅)[1]
元素 (a)燃料棒セグメント

浸出液分析の平均値 (μg/cm2

(b)燃料棒サンプル分析値を

本来炉心の上部1/3 の表面積への付着量に 外挿(kg)

(c)制御棒セグメント

浸出液分析の平均値 (μg/cm2

(d)制御棒サンプル分析値を

本来炉心の上部1/3 の表面積への付着量に 外挿(kg)

(e)案内管セグメント

浸出液分析の平均値 (μg/cm2

(f)案内管サンプル分析値を

本来炉心の上部1/3 の表面積への付着量に 外挿(kg)

(b)(d)(f)の

単純平均 (kg)

(a)(c)(e)

分析値の幅 (μg/cm2

燃料棒由来
U 2.21 x 102 2.0 9.3 x 101 0.8 1.1 x 101 0.1 1.0 11~586
Zr 1.53 x 102 Zry主成分のため評価できない 1.30 x 103 12.0 9.3 x 101 Zry主成分のため評価できない 12.0 15~737
Sn 1.0 x 102 Zry副成分のため評価できない 1.28 x 104 115.0 4.3 x 100 Zry副成分のため評価できない 115.0 24~345
制御材由来
Ag 5.1 x 101 0.5 1.1 x 101 0.10 5.5 x 100 0.05 0.2 36~94
In 3.3 x 101 0.3 2.3 x 102 2.1 5.5 x 100 0.05 0.8 24~68
Cd 4.0 x 100 0.04 3.6 x 101 0.3 2.0 x 100 0.02 0.1 0.9~11
可燃性毒物由来
Al 1.0 x 101 0.09 1.2 x 101 0.1 4.0 x 100 0.04 0.08 5.8~16
B 4.5 x 101 0.40 8.0 x 101 0.7 6.6 x 100 0.06 0.4 9.4~129
Gd ND -- 5.0 x 100 0.04 ND -- 0.04 3.3~6.7
構造材成分由来
Fe 2.88 x 102 SS主成分のため評価できない 4.13 x 104 SS主成分のため評価できない 3.3 x 101 SS主成分のため評価できない -- 0.48~1100
Ni 5.0 x 101 Inconel主成分のため評価できない 2.01 x 103 Inconel主成分のため評価できない 1.3 x 101 Inconel主成分のため評価できない -- 7.9~156
Cr 8.7 x 101 0.78 8.81 x 103 SS主成分のため評価できない 3.9 x 100 0.04 0.4 3.0~345
Mn 4.2 x 100 0.04 1.03 x 103 SS副成分のため評価できない 6.3 x 10-1 0.01 0.04 0.48~14
Mo 1.1 x 100 0.01 1.03 x 102 0.9 ND -- 0.3 検出濃度が小さく評価できない
Co 1.0 x 101 0.09 6.9 x 101 0.6 9.7 x 10-1 0.01 0.35 0.8~31.7
Si 5.4 x 100 0.05 2.61vx 102 2.3 3.0 x 100 0.03 0.8 コンタミのため評価できない
Nb 2.2 x 100 0.02 2.8 x 101 0.25 6.6 x 10-1 0.01 0.09 0.88~2.4

#不確かさの大きい評価値となっているが、おそらく過大評価と推定されている。本評価では、本来炉心の上部1/3の燃料集合体などの構造物の全表面に対して外挿したが、実際には炉心上部は空洞が広がっており、本来炉心に比べ、構造物の表面積は約20%と評価されている。

#Siの分析値は、溶融処理時に用いたガラス材などからのコンタミの影響を受けていると考えられる。

#ZrとSnの分析値は、Zry被覆管から直接溶融した量を含む。

#Fe,Ni,Cr,Mn,Siの分析値は、SS被覆管やインコネルから直接溶融した量を含む。

放射化学分析

燃料ペレットについて

 表6に、図5に示したロッド状サンプルから採集した燃料ペレットサンプル(採集位置SE-2,SE-21)溶融液のγ分光分析の結果を示す[1]。U-235については、この部位に本来装荷されていたペレット中の富化度を示す。表7に、ORIGEN-IIでの計算結果(燃焼度1863Mwd/t-U、U-235富化度1.98%[3])をU-235について規格化し、放射化学分析データをU-235について規格化した値と比較して示す。評価された保持率にかなりの差がみられる。全体的な傾向として、恥部核種を除き30~60%程度の値となっている。また、低揮発性FPのCe-144についても低い値となっている。この評価は、以下の計算式を用いて実施された。

       放射性物資の分析値(mCi/g-U) / ORIGEN-II解析値(mCi/g-U) x 100 = FP残留割合(%)   (1)

 さらに、表8に、FP残留割合をCe-144で規格化した値を示す。規格化後の値についても、核種ごとにばらつきが大きくなっている。特に、Sb-125,Cs-134,Eu-154,Eu-155などで小さい値が産出され、評価に不確かさが大きい可能性がある。これらの核種は、直接核分裂で形成されず、FPと中性子の反応で二次的に形成されるため、ORIGEN-II解析値の不確かさが大きいのは考えうると指摘されている。

表6 燃料ペレットサンプルの放射化学分析データ(μCi/g-U)[1]
核種 揮発性 3-30燃料棒のSe-4サンプル 3-42燃料棒のSE-21サンプル
Ce-144 6.09 ± 0.22 x 101 6.40 ± 0.15 x 101
Sr-90 1.43 ± 0.14 x 103 1.77 ± 0.18 x 103
Eu-154 2.34 ± 0.28 x 100 3.44 ± 0.35 x 100
Eu-155 2.44 ± 0.08 x 101 2.24 ± 0.09 x 101
Ru-106 3.35 ± 0.13 x 101 3.41 ± 0.15 x 101
Sb-125 2.09 ± 0.01 x 101 2.40 ± 0.15 x 101
Cs-137 2.16 ± 0.01 x 103 2.22 ± 0.01 x 103
Cs-134 1.12 ± 0.03 x 101 1.27 ± 0.03 x 101
I-129 5.5 ± 0.6 x 10-4 5.7 ± 0.6 x 10-4
U-235 1.88 ± 0.19 %# 1.92 ± 0.19 %#

#放射線の測定値は、1987.8.1時点に補正

#溶液サンプルを2分割し、測定値を平均

#U-235の値は、燃料ペレット中の富化量として示す。

表7 炉心上部の無傷の燃料ペレット中に保持されていたFPの割合 [1]
核種 揮発性 ORIGEN-II解析値

(μCi/g)[2]

SE-2ペレット分析値

に基づくFP保持率(%) (燃料棒上端から34cm) (1)式による

SE-21ペレット分析値

に基づくFP保持率(%) (燃料棒上端から22cm) (1)式による

Ce-144 1.25 x 102 55 58
Sr-90 4.34 x 103 37 46
Eu-154 2.17 x 101 12 18
Eu-155 7.95 x 101 35 32
Ru-106 9.30 x 101 41 42
Sb-125 1.28 x 102 18 21
Cs-137 4.96 x 103 49 51
Cs-134 5.86 x 101 21 25
I-129 1.62 x 10-3 38 39

#表5に記載した分析値(μCi/g-U)を、ORIGEN-II解析値(μCi/g-UO2)に換算するため、13%大きい値を用いて評価した。

表8 炉心上部の無傷の燃料ペレット中に保持されていたFPの割合(Ce-144で規格化) [1]
核種 揮発性 Ce-144で規格化した燃料ペレット中のFP保持率(%)
Sr-90 66-82
Eu-154 22-32
Eu-155 56-62
Ru-106 72-74
Sb-125 32-38
Cs-137 86-90
Cs-134 38-44
I-129 68-70

#表5に記載した分析値(μCi/g-U)を、ORIGEN-II解析値(μCi/g-UO2)に換算するため、13%大きい値を用いて評価した。

被覆管/案内管付着物について

 表9~11に、図5に示したロッド状サンプルから切断して採集した各種被覆管サンプルの浸出液のγ分光分析データを示す[1]。なお、分析部位は、図2中にSEを付記して示している。さらに表12に、燃料棒、制御棒、案内管それぞれのセグメントサンプル浸出液の分析値の平均値とデータのばらつきを示した[1]。付着量については、不確かさの大きい評価結果となっているが、およその傾向と物量を概略理解することはできる。

低揮発性FP

 TMI-2の放射化学分析では、低揮発性FPとしてCe-144のみが分析されている。また、比較検討のためU-235が分析されている。Ce-144は、燃料棒サンプルについては、2個(SE-2,SE-6)の外表面からのみ検出された。U-235の検出個所と一致しており、同伴性が確認された。制御棒/案内管サンプルについても、外表面でU-235と同伴して検出された。いずれも内表面ではほとんど検出されていない。このことから、Ce-144は燃料デブリ粉末が被覆管外表面に付着していたと推定された。サンプル切断時の切削くずではないかと考えられている。

中揮発性FP

 中揮発性FPのカテゴリーでは、Eu-154,Eu-155,Sr-90,Ru-106,Sb-125が分析された。

 Eu-154,Eu-155の検出量は相対的に少ないが、Ce-144との同伴性が見られた。燃料成分由来と推察された。

 Sr-90は、測定部位ごとのデータのばらつきが大きかった。被覆管の外表面サンプルで、相対的に検出量が大きい傾向が見られた(2-10倍)。Uとの同伴性は見られなかった。Sr-90については、冷却水中でのなんらかの吸着反応が発生していたと推定された。内表面での検出量が小さいことは、外表面は新たな冷却水に常にさらされていたのに対し、内表面は滞留水にさらされていたためと推察された。Sr-90は、事故時に燃料棒から放出され、圧力容器の内表面にいったん吸着されると考えられている。圧力容器表面に吸着したSr-90が、冷却水中を移行し、構造材の表面に広く吸着したと考えるのが合理的とされた。

 Ru-106は、燃料棒被覆管の表面サンプルでのみ検出され、U-235と同伴性が見られた。本分析で検出されたRu-106は燃料粉末由来と推定された。

 Sb-125は、Zry中の副成分であるSnの放射化でも形成されるため、由来を推定することは困難である。おそらく、その分析値は、調製した溶液サンプル中への構造材母材としてのZryの溶融に強く影響されている。外表面サンプルでの検出量は、内表面サンプルより、1-2桁大きい値であった。しかし、燃料成分に同伴して付着しているSb-125も考慮する必要があり、Sb-125のふるまいについては、明確な結論が得られていない。

高揮発性FP

 高揮発性FPとしては、Cs-137とI-129が主に分析された。両核種とも測定したサンプルごとに分析値に大きな差(1~3桁近く)が見られた。

 Cs-137については、全体的な傾向として、外表面サンプルで内表面サンプルに比べて1-2桁大きい値で検出された。U-235との同伴性は見られなかった。

 I-129では、燃料棒サンプルの内表面からは検出されなかった。

 これらの核種については、事故時の蒸発・凝縮プロセスで、主に被覆管の外表面に吸着したと推定された。一方で、冷却水中での移行・凝縮も考慮する必要があると指摘された。

表9 燃料棒被覆管セグメントの内外表面からの浸出溶液の分析結果(μCi/cm2)[1]
燃料棒サンプル3-30のSE-2部位

(上端から約34cm)

燃料棒サンプル3-30のSE-4部位

(上端から約20cm)

燃料棒サンプル3-42のSE-6部位

(上端から約23cm)

燃料棒サンプル3-42のSE-8部位

(上端から約13cm)

元素 外表面

(4.54 cm2

内表面

(3.89 cm2

外表面#

(4.15 cm2

内表面

(3.89 cm2

外表面

(4.11 cm2

内表面

(3.51 cm2

外表面(1回目)

(4.42 cm2

外表面(2回目)

(4.42 cm2

内表面

(3.78 cm2

低揮発性
Ce-144 1.85 ± 0.09 x 10-1 -- -- -- 2.75 ± 0.28 x 10-2 -- -- -- --
中揮発性
Sr-90 7.53 ± 1.13 x 100 7.15 ± 1.07 x 10-1 1.55 ± 0.23 x 10-1 6.84 ± 1.03 x 10-2 1.57 ± 0.24 x 100 1.69 ± 0.25 x 10-1 2.22 ± 0.33 x 100 -- 1.49 ± 0.22 x 10-1
Eu-154 1.91 ± 0.15 x 10-2 -- -- -- -- -- -- -- --
Eu-155 7.44 ± 0.30 x 10-2 -- -- -- 1.13 ± 0.10 x 10-2 -- -- -- --
Ru-106 1.54 ± 0.12 x 10-1 6.80 ± 2.00 x 10-3 3.30 ± 0.12 x 10-2 3.82 ± 0.69 x 10-3 3.53 ± 0.43 x 10-2 -- -- -- --
Sb-125 1.56 ± 0.01 x 100 6.37 ± 0.12 x 10-2 3.30 ± 0.57 x 10-1 7.50 ± 0.08 x 10-2 3.11 ± 0.03 x 10-1 2.17 ± 0.12 x 10-2 3.31 ± 0.07 x 10-1 3.19 ± 0.08 x 10-1 <1.00 x 10-2
高揮発性
Cs-134 1.29 ± 0.02 x 10-2 7.48 ± 0.23 x 10-3 2.27 ± 0.11 x 10-3 1.49 ± 0.10 x 10-3 5.52 ± 0.06 x 10-2 2.68 ± 0.13 x 10-3 6.29 ± 0.26 x 10-2 6.49 ± 0.32 x 10-2 <2.02 x 10-3
Cs-137 9.05 ± 0.12 x 100 4.72 ± 0.02 x 10-2 1.07 ± 0.03 x 10-1 6.89 ± 0.06 x 10-2 2.01 ± 0.01 x 100 1.44 ± 0.01 x 10-1 3.00 ± 0.02 x 100 2.84 ± 0.02 x 100 <1.09 x 10-1
I-129 5.80 ± 0.08 x 10-6 <5.57 x 10-7 <1.50 x 10-7 <2.40 x 10-7 4.14 ± 0.07 x 10-6 <3.36 x 10-7 1.61 ± 0.06 x 10-6 -- <2.82 x 10-7
放射化物質
Co-60 7.86 ± 0.14 x 10-2 3.12 ± 0.18 x 10-3 1.05 ± 0.07 x 10-3 4.30 ± 0.45 x 10-4 7.59 ± 0.11 x 10-2 7.52 ± 0.33 x 101 5.65 ± 0.04 x 100 5.21 ± 0.02 x 100 7.10 ± 0.07 x 10-2
燃料物質
U-235 2.17 ± 4.34 x 101 6.07 ± 1.21 x 10-1 3.45 ± 0.69 x 10-2 4.88 ± 0.93 x 10-2 3.89 ± 0.78 x 100 1.45 ± 0.29 x 10-1 2.24 ± 0.45 x 100 -- 3.07 ± 0.61 x 10-1

#1987年8月1日の放射線量に換算。

#SE-4サンプルでは、取り扱い中に、相当量の表面付着物が除去された可能性。

表10 制御棒/案内管セグメントの内外表面からの浸出溶液の分析結果(μCi/cm2)[1]
制御棒サンプル3-1CのSE-9部位

(上端から約33cm)

制御棒サンプル3-1CのSE-11部位

(上端から約18cm)

制御棒/案内管サンプル3-14C/Gの

SE-14部位(上端から約20cm)

案内管サンプル3-14C/Gの

SE-16部位(上端から約2cm)

元素 外表面

(4.21 cm2

内表面

(3.79 cm2

外表面のみ

(4.18 cm2

内外表面合計

(~7.00 cm2

外表面

(4.75 cm2

内表面

(4.36 cm2

低揮発性
Ce-144 -- -- -- 1.17 ± 0.16 x 10-2 -- --
中揮発性
Sr-90 7.44 ± 0.11 x 10-1 2.02 ± 0.30 x 10-2 3.61 ± 0.54 x 10-1 1.18 ± 0.18 x 100 2.27 ± 0.34 x 100 9.79 ± 1.47 x 10-2
Eu-154 -- -- -- -- -- --
Eu-155 -- -- -- -- -- --
Ru-106 -- -- -- 1.52 ± 0.38 x 10-2 -- --
Sb-125 1.30 ± 0.06 x 10-1 9.70 ± 0.20 x 10-2 -- 1.90 ± 0.02 x 10-1 1.52 ± 0.03 x 10-1 9.19 ± 0.57 x 10-3
高揮発性
Cs-134 2.25 ± 0.02 x 10-2 2.07 ± 0.07 x 10-2 3.61 ± 0.03 x 10-1 3.19 ± 0.05 x 10-2 9.31 ± 0.11 x 10-2 1.44 ± 0.07 x 10-3
Cs-137 1.07 ± 0.01 x 10-1 9.82 ± 0.03 x 10-1 1.51 ± 0.01 x 100 1.48 ± 0.01 x 100 4.19 ± 0.01 x 100 7.25 ± 0.06 x 10-2
I-129 9.68 ± 0.08 x 10-6 <1,85 x 10-7 <3.10 x 10-7 6.33 ± 0.07 x 10-6 5.53 ± 0.77 x 10-7 <1.84 x 10-7
放射化物質
Co-60 4.79 ± 0.12 x 10-2 8.85 ± 0.32 x 10-3 4.36 ± 0.13 x 10-2 9.86 ± 0.10 x 10-2 8.12 ± 0.11 x 10-2 4.50 ± 0.45 x 10-4
燃料物質
U-235 1.21 ± 0.24 x 100 9.50 ± 1.90 x 10-2 6.27 ± 1.25 x 10-2 8.63 ± 1.73 x 10-1 8.83 ± 0.16 x 10-1 2.48 ± 0.50 x 10-2

#1987年8月1日の放射線量に換算。

表11 案内管セグメントの内外表面からの浸出溶液の分析結果(μCi/cm2)[1]
案内管サンプル3-1GのSE-17部位

(上端から約3cm)

案内管サンプル3-1GのSE-18部位

(上端から約18cm)

案内管サンプル3-1GのSE-19部位

(上端から約29cm)

案内管サンプル3-1GのSE-20部位

(上端から約31cm)

元素 外表面

(5.09 cm2

内表面

(4.75 cm2

外表面

(5.34 cm2

内表面

(4.95 cm2

外表面

(6.84 cm2

内表面

(6.29 cm2

内外表面

(~15.00 cm2

低揮発性
Ce-144 -- 5.91 ± 0.77 x 10-3 -- -- -- 3.92 ± 1.94 x 10-3 8.39 ± 1.80 x 10-3
中揮発性
Sr-90 9.63 ± 0.14 x 10-1 1.52 ± 0.23 x 100 1.34 ± 0.20 x 100 5.39 ± 0.81 x 10-1 4.09 ± 0.61 x 10-1 2.81 ± 0.42 x 10-1 1.15 ± 0.17 x 100
Eu-154 -- -- -- -- -- 4.44 ± 0.22 x 10-4 1.04 ± 0.23 x 10-1
Eu-155 -- -- -- -- -- 1.76 ± 0.27 x 10-3 4.80 ± 1.20 x 10-3
Ru-106 -- -- -- -- -- 5.1 ± 1.6 x 10-3 --
Sb-125 2.52 ± 0.02 x 10-1 5.15 ± 0.08 x 10-2 4.44 ± 0.03 x 10-1 5.13 ± 0.08 x 10-2 -- 7.14 ± 0.07 x 10-2 3.72 ± 0.02 x 10-1
高揮発性
Cs-134 3.02 ± 0.05 x 10-2 7.45 ± 0.22 x 10-3 4.22 ± 0.08 x 10-2 7.09 ± 0.15 x 10-3 1.31 ± 0.02 x 10-2 8.59 ± 0.21 x 10-3 3.57 ± 0.05 x 10-2
Cs-137 1.40 ± 0.01 x 100 3.52 ± 0.03 x 10-1 1.94 ± 0.01 x 100 3.31 ± 0.01 x 10-1 6.12 ± 0.02 x 10-1 3.92 ± 0.02 x 10-1 1.64 ± 0.01 x 100
I-129 6.14 ± 0.07 x 10-6 1.59 ± 0.73 x 10-7 4.55 ± 0.05 x 10-6 <1.68 x 10-7 2.08 ± 0.03 x 10-6 2.86 ± 0.57 x 10-7 2.78 ± 0.03 x 10-6
放射化物質
Co-60 5.26 ± 0.09 x 10-2 4.08 ± 0.05 x 10-2 9.80 ± 0.08 x 10-2 2.70 ± 0.03 x 10-2 4.20 ± 0.05 x 10-2 9.49 ± 0.07 x 10-2 1.41 ± 0.01 x 10-1
燃料物質
U-235 6.68 ± 1.34 x 10-1 7.28 ± 1.46 x 10-1 3.24 ± 0.65 x 10-1 1.42 ± 0.28 x 10-1 2.59 ± 0.52 x 10-1 2.67 ± 0.53 x 10-1 5.45 ± 1.09 x 10-1

#1987年8月1日の放射線量に換算。

表12 被覆管外表面のFP濃度平均値(μCi/cm2)[1]
核種 揮発性 平均線量 分析データのばらつき
Ce-144 7.4 x 10-2 0 - 1.8 x 10-1
Sr-90 7.0 x 10-2 1.0 x 10-3 - 1.4 x 10-1
Eu-154 5.9 x 10-2 0 - 1.0 x 10-1
Eu-155 3.0 x 10-2 0 - 7.4 x 10-2
Ru-106 2.0 x 100 4.1 x 10-1 - 7.5 x 100
Sb-125 5.7 x 10-2 0 - 1.5 x 10-1
Cs-137 3.0 x 100 6.1 x 10-1 - 9.0 x 100
Cs-134 4.1 x 10-6 1.6 x 10-7 - 9.7 x 10-6
I-129 4.7 x 10-6 0 - 1.6 x 10-5

#放射線の測定値は、1987.8.1時点に補正。

化学・放射化学分析結果のまとめ

 サンプル代表性の課題により不確かさが大きいが、以下の傾向が観測された。

  • ZrとSnを除く、燃料棒、制御棒、可燃性毒物棒などに由来した、炉心上部に残留していた一部形状を維持した燃料集合体表面への付着物量は合計で4.6kgと評価された。
  • Uの分析値は、他の元素に比べて測定データの幅が大きい(サンプルによって20倍以上の差)。しかし、Uの付着物量は高々1-2kgくらいと推定された。おそらくデブリ切断くずなどが付着した可能性が高い。
  • ZrとSnはZry材料中に多く含まれるため、今回の分析で付着物量を評価することはできなかった。分析されたSS被覆管への付着量だけから、炉心上部1/3の燃料集合体の表面積に外挿すると、Zrで12kg、Snで115kgが付着していたと見積もられた。しかし、おそらく過大な評価値であると記載されている。一方で、SS材料とSnの間に何らかの吸着メカニズムがある可能性が指摘された。
  • 溶融凝固して制御棒内に残留していたAg-In-Cdの相対重量比は、装荷時の組成を維持しており、Cdの濃度低下は見られなかった。
  • 一方で、Ag-In-Cdは約6年間冷却水中にさらされていた燃料被覆管や制御棒被覆管の外表面に比較的均質に分布していた。炉心上部1/3の全表面積に外挿して推定した付着物の総量は約1.1kgであった。
  • Inの表面付着量は、AgやCdより顕著に大きかった。
  • 可燃性毒物棒由来のAlは、被覆管表面に4-12μg/cm2のオーダーで付着していた(#分析に供された燃料集合体には、本来、可燃性毒物棒のスパイダーは装荷されておらず、周辺の燃料集合体由来と推定される)。おそらく、本来装荷されていたAl2O3が事故中にZrによって還元され、形成されたAl金属が付着したと推定された。
  • 可燃性毒物のマイナー成分であるGdは(炉心全体としての初期装荷量:13kg)、SS被覆管表面に相対的に多く検出されたが、その原因は不明である(#分析に供された燃料集合体には、本来、Gd含有ペレットは装荷されておらず、周辺の燃料集合体由来と推定される)。
  • 構造材物質の主成分(Fe,Ni,Cr)は、今回の分析で付着物量を評価することはできなかった。一方、構造材物質の副成分(Fe,Ni,Cr以外)付着量は<1.2kgと見積もられた。特定の元素に濃化などの現象は見られなかった。

表13(a)に、ICP分析に基づいて評価された炉心上部構造物への主要な構造材物質の付着量を示す。

 さらに、2個の燃料棒サンプル(3-30,3-42)から採集した燃料ペレットと、各種被覆管/案内管の内外表面への付着物の放射化学分析により、FP成分について以下の傾向が確認された。表13(b)に、γ分光分析値から外挿して評価した上部炉心構造物表面のFP付着インベントリの値を示す。生成されたFPの<0.1%が上部炉心の構造材表面に付着していたという評価結果となっている。

  • ペレット中のFP保持量は、ORIGEN-IIでの解析値より顕著に低かった(40-70%)。これらのペレットは燃料棒の最上部(頂部から10cm以内)から回収されており、この領域では、中性子束の解析値とORIGEN-IIの解析値の双方に評価誤差が大きいと考えられるため、追加検討が必要とされた。
  • 付着しているFP成分のうち、Ce-144,Ru-106,Eu-154,Eu-155は、測定値の幅が大きく、また、Uに同伴していた。これらのことから、燃料ペレットの破砕粉末に含まれて付着したと推定された。
  • Sr-90は、燃料棒/制御棒/案内管の金属表面に広く付着していたが、Uとの同伴の傾向は見られなかった。冷却水を介した付着の可能性が指摘された。
  • Sb-125は、燃料成分と関係なく表面付着していた。しかし、Zry中のSnの放射化により生成されるため、FP由来かどうかは特定できなかった。
  • Cs-137は、すべての表面に付着していた。分析値の幅が大きく、事故時の蒸発凝縮プロセスでの付着が示唆された。
  • I-129は、すべての表面に付着していた。分析値の幅が小さかった(6倍以内)。
表13(a) 炉心上部構造物への主要な炉心構成物質の付着量の推定 [1]
元素 炉心物質 付着重量(kg)
U 燃料棒 1.0
Zr 燃料棒 12.0#
Sn 燃料棒 115.0#
Ag 制御材 0.2
In 制御材 0.8
Cd 制御材 0.1
Al 可燃性毒物棒 0.08
B 可燃性毒物棒 0.4
Gd 可燃性毒物棒 0.04
Fe 構造材 --
Ni 構造材 --
Cr 構造材 0.4#
Mn 構造材 0.04
Mo 構造材 0.3
Co 構造材 0.35
Si 構造材 0.8
Nb 構造材 0.09

#Zr,Snについては、制御棒被覆管付着物の分析結果のみから外挿して評価されている。Crについては、燃料棒被覆管付着物の分析結果のみから外挿して評価されている。

表13(b) 炉心上部構造物へのFP付着量の推定 [1]
核種 揮発性 線量インベントリ

(μCi)

Sr-90 0.63
Eu-154 0.66
Eu-155 0.27
Ru-106 18.0
Sb-125 0.50
Cs-137 27.0
Cs-134 3.7 x 10-5
I-129 4.2

#炉心上部の構造物表面積を8.98 x 106 cm2と仮定した場合の評価値(事故前の炉心構造物の上部1/3の表面積に相当).

燃料集合体上部サンプルの分析結果まとめ

  • 南西側の炉心領域の上部格子から回収した、上部の形状を維持した燃料集合体サンプルを観察したところ、上部スペーサーグリッドのレベルでは、集合体部材の形状が一部維持され、また形状を維持した燃料棒が残留していた。それ以外の炉心領域から採集した燃料集合体サンプルでは、タイプレートの上のみが残留していた。これらのことから、炉心の南西側でやや炉心損傷が少なかったと推定された。これは上部空洞の内部調査での観測結果と一致した。一方で、炉心全体としては、上部格子に付着していた燃料集合体サンプルの軸方向の損傷程度はおおむね類似していた。
  • 分析した燃料集合体サンプル内で、各種構造材の溶融状態や界面状態の違いから、事故時に大きな温度勾配が発生していたと推定された。このような温度勾配と局所的な水蒸気流量の変化により、Zryの酸化、水素化、相転移の局所的な違いが引き起こされていたと推定された。
  • 炉心南西側から回収された燃料集合体サンプルの分析から、上部スペーサーグリッドの高さ位置での事故時ピーク温度は1500~1600Kと推定された。一方で、炉心のそれ以外の領域では、タイプレートの高さ位置でのピーク温度が1650~1750Kと推定された。しかし、燃料集合体ごとに異なった大きな温度勾配が存在しており、燃料集合体ごとのふるまいについて、さらに精査が必要とされた。
  • 制御棒内でいったん溶融したAg-In-Cdは、外圧で制御棒が若干押しつぶされることにより、一部は制御棒内の上部プレナムのスプリングにまで押し上げられていた。一部は押し下げられ、制御棒被覆管が破損した段階でデブリ中に放出された。また、制御棒内に残留していたAg-In-Cd凝固層のデンドライト構造から、わずかに軸方向に距離が離れただけで(10~20cm)、その冷却過程が異なっていたと推定された(#スプリング位置では急冷、残留制御棒内では徐冷)。
  • Zryの水素化の痕跡は、制御棒/案内管サンプル1個だけから検出された。燃料被覆管サンプルには水素化の痕跡が見られなかった。このことは、制御棒の事故時ピーク温度が相対的に低かったという推定と整合している。
  • Zryの表面酸化はすべての燃料棒と案内管で検出された。酸化の程度は、軸方向、径方向、また燃料棒の内と外で、場所によって大きく異なっていた。Zry酸化は、この集合体サンプルの燃料棒の最上部でも検出された。
  • 上部炉心物質(燃料集合体など)の表面に付着した燃料棒、制御棒、構造材由来の成分の物量は<2.0kgと推定された(Zr,Sn,Fe,Ni,Cr以外)。この評価は不確かさが大きいが、分析値を、本来炉心の上部1/3の燃料集合体の表面積に外挿して評価したため、おそらく過大評価されており、実際には<0.4kgと推定された。
  • 付着物中に、多くのSnを検出した(Zry中の副成分由来)が、その付着形態は同定できなかった。(#Snの付着量評価値は、付着量の見積もりに加えていない。Zry表面の分析ではコンタミするため)
  • Ag-In-Cdは、被覆管/案内管サンプルの表面にほぼ均質に付着していた。しかし、付着総量は高々1kgと評価された。Ag-In-Cdによるエアロゾル付着に関する知見は得られなかった。CdはAg-Inに比べて検出量が小さく、蒸発して炉心外に移行した可能性が示唆された。
  • 構造材由来物質の付着量は<2.0kgと推定された(Fe,Ni,Cr以外)。副成分に関する付着物の組成はSS中の組成と類似しており、何らかの副成分の濃化などは見られなかった。
  • ペレット中のFP残留の分析値は、ORIGEN-II計算からの推定値より低い値となった(40-70%)。今回の分析した燃料ペレットサンプルは、すべて燃料棒の最上部から回収されており、おそらく、ORIGEN-IIの計算結果と一致していない。
  • ペレット中のFP残留の分析値を、Ce-144で規格化して評価したところ、Sb-125,Cs-134,Eu-154,Eu-155はいずれも予想より低い値であった。ORIGEN-IIの再評価と照らし合わせて今後検討が必要とされた。特に核分裂で直接形成されず、二次的な放射性壊変で形成されるFPについて解析誤差が大きい可能性が指摘された。
  • FP由来の成分の構造材表面の付着は、生成量の<0.1%と推定された。
  • 燃料棒/制御棒サンプルの内側と外側でFP分析値を比較したところ、一般的に外側での分析値が大きい傾向が見られた。これは、揮発性FPで顕著であった。
  • Ce-144,Ru-106,Eu-154,Eu-155の分析データからは、これらの付着傾向に差は見られず、Uとの同伴性が見られた。燃料ペレット由来の粉末が付着していたと推定された。
  • Sr-90の分析データからは、燃料棒/制御棒サンプルの表面にSr-90が広く均質に付着していた。このことから、Sr-90は冷却水中のなんらかのメカニズムにより、表面付着したと推定された。
  • Cs-137の分析データからは、Sr-90と異なるメカニズムで構造物表面に付着していたことが推定された。また、測定値の幅が大きく、吸着メカニズムが複数あることが推定された。
  • I-129の分析データからは、複数の吸着メカニズムがあることが推定された。

参考文献

[1] S.M. Jensen, D.W. Akers, E.W. garner, G.S. Roybal, Examination of the TMI-2 core distinct components, GEND-INF-082, 1987.

[2] D.W. Akers et al., TMI-2 Core Debris Grab Samples -Examination and Analysis, part-1, GEND-INF-075, 1986.

[3] B.G. Schmitzler and J.B. Briggs, TMI-2 Isotopic Inventory Calculations, EGG-PBS-6798, 1985.