燃料デブリ経年変化特性の推定技術開発 準備中

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燃料デブリの経年変化特性の推定

    研究開発の目的、事業の概要
    東京電力福島第一原子力発電所(1F)では、原子炉圧力容器(RPV: Reactor Pressure Vessel)及び原子炉格納容器(PCV: Primary Containment Vessel)内に燃料デブリが存在していると考えられる。燃料デブリの取出しに向けて、取出し作業中及び取出し後の保管中におけるその性状や長期間の安定性を把握しておくことが重要である。
    チェルノブイリ原子力発電所4号機の事故においては、溶融炉心がコンクリート等の構造物を取りこんで、溶融炉心-コンクリート反応(MCCI: Molten Core Concrete Interaction)が起こり、様々な燃料デブリが発生した。これらの燃料デブリの一部は、時間の経過とともに放射線や酸化などによる自己崩壊が進行し、事故から30年以上経過した現時点では、そこから微粒子が発生していることが報告されている。このため、チェルノブイリプラントでは、微粒子が気中に飛散、液中に流出して拡散することで、汚染や被ばくが拡大することが懸念されている。

    他方、スリーマイルアイランド原子力発電所2号機(TMI-2)の事故で発生した燃料デブリは、事故から40年以上経過した現在でも顕著な経年変化を生じず、塊状を維持している。また、事故後に採集したサンプルを分析する際に、酸による液調製が課題であったことが報告されており、TMI-2事故の燃料デブリは化学的に高い安定性を有していると推定されている。
    このような、実際の原子力発電所の過酷事故で発生した燃料デブリの経年変化現象の違いは、どのような原因やメカニズムによって引き起こされているのかは明らかになっていない。
    1F事故プラントからの燃料デブリ取出し時の汚染や被ばくの低減や閉じ込め性能の維持、取出した後の収納・移送・保管方法を検討するために、燃料デブリに経年変化が起きた場合の影響を把握し、その状態変化の重要度に応じて適切な対策を予め講じておくことが必要である。そのために、燃料デブリの経年変化に起因する微粒子化や形態変化、水中への移行挙動等に関する知見を取得することで、1F燃料デブリの経年変化現象を予測しておことが重要となる。
    本研究開発事業では、1F燃料デブリが長期間置かれると考えられる環境下での経年変化の有無を明らかにし、経年劣化が生じる場合には、その様態の経時変化を予測し、それらの基礎知見に基づいて、燃料デブリ取出しや収納・移送・保管等への経年変化現象の影響の有無や程度の推定を行った。

    なお、燃料デブリの経年変化特性の推定技術の開発は、廃炉・汚染水対策事業補助金により、2019-2020年度に、燃料デブリ性状把握のための分析・推定技術の開発事業の一環として公募され、東芝エネルギーシステムズ株式会社、および、ROSATOM/TENEX社の研究提案(合せて2件)が採択され実施された。その成果の概要を以下に示すと共に、公開されている成果説明資料を掲載する。
    燃料デブリ経年変化の要因としては、主に、放射線損傷などによる物理的要因、酸化や腐食などの化学的要因、微生物などによる生物学的要因が考えられる。下記の廃炉汚染水対策事業では、このうち主に物理的要因、化学的要因について検討した。これらとは別に英知事業において、化学的要因(東北大英知事業)と生物学的要因(東工大英知事業)について検討が進められている。

    燃料デブリの経年変化特性の推定技術の開発(東芝エネルギーシステムズ株式会社提案のプロジェクト、2019-2020年度実施)
    Development of Estimation Technology of Aging Properties of Fuel Debris (ROSATOM/TENEX社提案のプロジェクト、2019-2020年度実施)



    以下に東芝エネルギーシステム(株)事業の概要を紹介する。

    燃料デブリの経年変化特性の推定技術の開発の概要(東芝エネルギーシステムズ株式会社提案のプロジェクト、2019-2020年度実施)

    研究項目、目的、進め方、スケジュール
    東芝エネルギーシステムズ株式会社の提案は、以下の2個の実施項目((1) 燃料デブリの経年変化の要因として考えられる現象を確認するための試験方法立案及び実施、(2) 1F燃料デブリの化学的経年変化予測)からなる。
    事業は2019年7月から2021年2月に実施された。
    得られた知見は・データは、関連研究プロジェクト(燃料デブリの性状把握のための分析・推定技術の開発、燃料デブリ・炉内構造物の取出し規模の更なる拡大に向けた技術の開発、燃料デブリ収納・移送・保管技術の開発、燃料デブリ臨界管理技術の開発、固体廃棄物の処理・処分に関する研究開発)に提供された。
    〇2020年度最終報告(資料:3-6ページ)

    実施内容

  1. 燃料デブリの経年変化の要因として考えられる現象を確認するための試験方法立案及び実施
  2. 1)1F燃料デブリの経年変化要因の設定および評価方法立案(資料:12~19ページ)
    2)燃料デブリの経年変化評価試験(資料:20-52ページ、55~64ページ、67-73ページ)
  3. 1F燃料デブリの化学的経年変化予測
  4. 1)経年変化が発生する条件評価(資料:41,48,50,58~62,64,69~71,73ページ)
    2)燃料デブリの経年変化予測及び影響評価(資料:51~54、65~66、74~76ページ)

    1F燃料デブリの経年変化要因の設定および評価方法立案

    〇 チェルノブイリ燃料デブリの特徴と微粒子化要因の推定(資料:12~14ページ)

    チェルノブイリ原発事故で発生した燃料デブリで見られた微粒子化及び自己崩壊の知見から、1F燃料デブリの経年変化を引き起こす可能性が考えられる要因を設定し、そこで着目したメカニズムに応じた模擬燃料デブリの酸化・溶出試験方法を立案した。
    チェルノブイリ事故で発生した燃料デブリは、コンクリートと溶融反応したことにより、マトリックスとしてガラス状の構造を有し、その内部に、ジルコニウムを固溶した二酸化ウラン、ジルコニウムとウランと酸素の混合物(二酸化物ではない)、チェルノビライトと言われるジルコニウム、ウラン、シリコンを主成分とする混合酸化物、金属鉄、等のミクロな介在物が含有されている。
    チェルノブイリ事故後数十年経過して、燃料デブリの表面に黄色の物質が形成されていることが観測された。XRD分析により、六価ウランによるウラニル相が主成分であることが解明された。チェルノブイリ事故の燃料デブリは、外気に曝されているため、ウラニル相の形成メカニズムは、空気中の酸素、あるいは放射線で形成される過酸化水素による燃料デブリの酸化、炭酸水による酸化および溶出、炭酸ナトリウムとの鉱物化および溶出などのメカニズムに起因すると推定されている。このような化学的な要因による微粒子化は経年と共に進行すると推定される。
    さらに、微粒子発生の要因として、燃料デブリが空隙や亀裂の多い構造であり、そこに侵入した水分の氷結による崩壊、あるいは燃料デブリ形成時の残留応力による亀裂進捗のような、物理的な因子も影響していると考えられる。

    〇 1F燃料デブリの特徴(資料:15ページ、炉内状況推定図)

    1F事故で発生したと想定される燃料デブリは、コンクリート成分を含まず原子炉圧力容器内にとどまっているデブリ(U-Zr-O酸化物を主成分とする燃料デブリ、in-vessel debrisと言う)と原子炉圧力容器から放出されコンクリートと反応あるいはコンクリートの上に堆積しているデブリ(MCCIによるガラス状物質を含む燃料デブリ、ex-vessel debrisと言う)に大別されると考えられている。

    〇 廃炉作業に影響を与える経年変化現象、要因の設定(資料:16~19ページ)

    燃料デブリの経年変化現象としては、組成変化、機械的特性の変化、微粒子形成・飛散、燃料デブリバルクの崩壊(バルク:塊状の燃料デブリのことを言う)等が考えられる。
    燃料デブリの経年変化により、廃炉工程における臨界管理で取扱い時などに燃料デブリが急に形状変化し臨界リスクに影響、燃料デブリ取出し作業で切削等の機械加工において微粒子の飛散リスクを増大、移送・保管中に微粒子が放出・飛散するリスクを増大、等の可能性が考えられる。このため、基礎データとして、燃料デブリバルクの崩壊による微粒子形成に着目した経年変化の要因を設定した。
    今後の廃炉作業で想定される環境変化として、燃料デブリ取出しに向けた原子炉格納容器の負圧管理にともなう空気混入の影響(現状は窒素雰囲気で封入)、水位低下による燃料デブリ表面付着水中の放射線分解による化学活性物質(ラジカル)濃度上昇の影響、取出した後の燃料デブリの空気保管による影響、を想定した。また、微粒子形成メカニズムとして、気中での局所的な酸化進行⇒体積増加・亀裂発生⇒錆の発生・バルク崩壊、のプロセスと、水中での局所的な酸化進行と溶出⇒体積変化・亀裂発生⇒バルク崩壊、のプロセスを想定した。これらのプロセスは、ex-vessel debrisについては、チェルノブイリ事故で形成された燃料デブリと変化の要因が共通すると予想される。In-vessel debrisについては、TMI-2事故で形成された燃料デブリと同様に、このようなプロセスがほとんど観測されない可能性も考えられるが、1F事故では燃料溶融がTMI-2事故よりも進んでいると考えられ、上で推定した微粒子化のメカニズムは共通するため、変化の程度を模擬試験で確認することとした。

    燃料デブリの経年変化評価試験

    〇 調製した模擬燃料デブリ、気中・水中試験項目、1F燃料デブリとの対応(2019年度実施分)(資料:20~22ページ)
    1F事故の模擬燃料デブリを複数作製し、酸化・溶出による経年変化の予測が可能となる試験データを取得した。
    経年変化試験に供した模擬デブリ(9種類)を、資料20ページに示すように調製した。またその組成を資料21ページに、9種類の模擬デブリが模擬している1F燃料デブリの状況を22ページに示した。1F事故の炉内状況推定図に基づき、様々な化学形態の燃料デブリが堆積していると推定されている。

    〇 第1期試験の試験条件、試験方法(資料:23~26ページ)

    模擬デブリは、粉末状の試薬を混合・成形・加熱焼結して調製した。
    気中試験では、ペレット状に成型した模擬デブリを電気炉内に設置し、所定の雰囲気、温度、時間で加熱した。試験前後の模擬デブリの外観と重量の変化、および、発生した微粒子の個数、サイズの分布を測定した。さらに、密度を10g/cm3と仮定して粒子の重量分布を算出した。
    水中試験では、ペレット状に成型した模擬デブリを試験水中に浸漬し、所定温度、時間、カバーガスで放置した。試験前後の模擬デブリの外観と重量の変化、および、溶出元素の重量を測定した。さらに、微粒子が発生していた場合には、その発生量(個数、サイズの分布)を計測した。
    第1期の気中試験では、50℃で500時間放置する条件と、加速試験として110℃で100時間放置する条件を採用した。ここで50℃は気中で取出し・移送・保管における燃料デブリの温度を想定した。同じく水中試験では、30℃で500時間放置する条件と、加速試験として80あるいは90℃で100時間放置する条件を採用した。ここで、30℃は水中で取出し・移送・保管における燃料デブリの温度を想定した。

    〇 第1期試験の結果(資料:27~41ページ)

    第1期試験の試験結果を、資料の27から40ページに、9種類の模擬燃料デブリの気中および水中での微粒子発生試験の試験データとして示す。資料の41ページに、第1期試験における、試験後の観測結果の概要をまとめて示す。二酸化物模擬デブリ(二酸化ウランと二酸化ジルコニウムの固溶物、模擬デブリ種類1)では、気中水中共に微粒子の発生はほとんど見られなかった。水中試験で、微量のウラン溶出を観測した。
    二酸化物とαジルコニウムZr(O)の混合物模擬デブリ(模擬デブリ種類2)では、気中試験においてジルコニウムの酸化に起因するウラン含有微粒子の発生を観測した。#微粒子発生要因その1(気中)
    二酸化ウラン結晶が一部析出しているガラス状の模擬燃料デブリ(模擬デブリ種類3)では、水中試験において、ウランを過剰に含むガラス状物質の酸化に起因するウラン含有微粒子の発生を観測した。#微粒子発生要因その2(水中)
    二酸化物にまで酸化されていないジルコニウムとウラン(U-Zr-O)がガラス状に形成された模擬燃料デブリ(模擬デブリ種類4)では、気中水中共に微粒子の発生は観測されなかった。
    金属鉄(Fe)が内部に析出しているガラス状の模擬燃料デブリ(模擬デブリ種類5)では、気中水中共に鉄が酸化されて鉄錆となり、それを含有する微粒子が発生した。#微粒子発生要因その3(鉄成分の選択的酸化)
    一酸化鉄(FeO)が内部に析出しているガラス状の模擬燃料デブリ(模擬デブリ種類6)では、気中試験で一酸化鉄の酸化が起こり、それを含有する微粒子が発生した。#微粒子発生要因その3(鉄成分の選択的酸化
    ガラス状物質のみからなる模擬燃料デブリ(模擬デブリ種類7)では、水中試験での成分溶出は観測されなかった。
    ホウ素を含有するガラス状物質の模擬燃料デブリ(模擬デブリ種類8)では、水中試験でホウ素についても成分溶出は観測されなかった。
    ウランとジルコニウムの固溶した二酸化物が内部に析出しているガラス状の模擬燃料デブリ(模擬デブリ種類9)では、空気雰囲気のカバーガスで実施した水中試験で、二酸化物の酸化度上昇により、ウランを含有する微粒子が発生した。(微粒子発生要因その2)

    〇 第2,3期試験の試験条件、試験方法(資料:42~45ページ)

    第1期試験により、微粒子が発生する条件(燃料デブリの材質と環境の組合せ)がいくつか存在することを確認した(#微粒子発生要因その1~その3)。第2、3期試験では、微粒子発生条件を明確化し、長期変化の予測を行うために、試験計画を立案した。詳細な試験マトリクスを資料43、44ページに掲載している。
    第2、3期試験では、燃料デブリの組成、試験温度、カバーガス雰囲気を、より精緻に設定した。燃料デブリの組成については、微粒子化しやすいαジルコニウムと二酸化物の比率やミクロ組織をパラメータとした。カバーガスについては、様々な廃炉工程を想定し、空気環境、窒素雰囲気、低酸素分圧(微量酸素の窒素雰囲気への混入)をパラメータとした。さらに、変化の長期予測のために、加速試験の温度を変化させて微粒子を形成する主要反応の活性化エネルギーと加速倍率を評価すると共に、より長時間の試験を行って、変化のメカニズムを確認した。

    〇 第2,3期の気中試験結果(資料:46~52ページ)

    第2,3期のうち気中試験の結果を資料46から52ページに示す。以下のような傾向が明らかになった。
    二酸化物とαジルコニウムが共存する模擬燃料デブリ(模擬デブリ種類2)について、気中での微粒子発生は、温度やカバーガス中の酸素濃度の上昇によって増大した。従って、燃料デブリの取出し前や取出し中に、燃料デブリが水中に存在あるいは冷却水に表面を覆われている状態であれば、#微粒子発生要因1に起因する微粒子発生は進行しにくいと予想される。また、燃料デブリの保管において、窒素ガスなどの低酸素分圧で雰囲気管理すれば、気中での微粒子発生を抑制できると見込まれる。
    模擬デブリのミクロ組織については、αジルコニウムの割合が少ないほど微粒子発生は低下した。また、模擬デブリを急速に冷却して調製した試料(ミクロ組織が微細化)では、微粒子発生が低下した。これらの結果から、燃料デブリのミクロ組織は微粒子発生に影響する可能性が推定される。
    燃料デブリ変化の長期予測については、微粒子発生が時間とともに増加するが、その増加傾向は対数的に変化する(今回の試験データでは、時間に対して約0.64乗)ことが明らかになった。発生量低下の要因としては、模擬燃料デブリ表面近傍のαジルコニウムが選択的に酸化し、次第に減少したためと示唆される。

    〇 第2,3期の水中試験結果(酸化物とガラスからなる模擬デブリ)(資料:55~64ページ)

    第2,3期のうち、ウランとジルコニウムの酸化物析出相とガラスマトリックスからなる模擬デブリの水中試験の目的を資料55ページに示す。模擬燃料デブリの特性と水環境を評価因子とした。資料56ページに模擬デブリの調製方法を、資料57ページに結果のまとめを示す。また、結果の詳細を58-64ページに示す。
    燃料デブリ中のウランとジルコニウムの組成の影響を調べるため、ウランリッチの正方晶(c-(U,Zr)O2)とジルコニウムリッチの斜方晶(m-(Zr,U)O2)、および、鉄、ジルコニウム、アルミニウム、ウラン、カルシウム、シリコンの酸化物と炭酸ナトリウムの粉末から調製したガラス状物質が混合する模擬デブリを調製した。この模擬デブリを用いて、浸出温度、浸出時間、カバーガスの雰囲気をパラメータとして、水中での微粒子発生を調査した。
    その結果、水中での微粒子発生量は、温度や平衡酸素分圧、水の交換頻度と相関する傾向を確認した。酸素を含有しない窒素カバーガスでの試験では、水中での微粒子発生はほとんど観測されなかった。カバーガス中に酸素2%含有する条件では水中の微粒子発生が見られ、空気をカバーガスとする条件では、微粒子発生量が若干増加した。模擬デブリのミクロ組織については、αジルコニウムの割合が少ないほど微粒子発生は低下した。また、模擬デブリを急速に冷却して調製した試料(ミクロ組織が微細化)では、微粒子発生が低下した。水交換頻度が増えると微粒子発生が増加する傾向が示された。

    〇 第2,3期の水中試験結果(鉄析出物とガラスからなる模擬デブリ)(資料:67~69ページ)

    第2,3期のうち、鉄あるいは酸化鉄を析出させたガラス状物質の模擬デブリを用いた水中試験の目的を資料67ページに示す。模擬燃料デブリの特性と水環境を評価因子とした。資料68ページに模擬デブリの調製方法を、資料69ページに結果を示す。
    その結果、水中での微粒子発生量は、温度や平衡酸素分圧、水の交換頻度と相関する傾向を確認した。発生した微粒子はいずれも鉄系物質であり、ウランを含有していなかった。微粒子発生は鉄含有量の増加、および、水交換頻度の増加により増大した。

    〇 第2,3期の気中試験結果(鉄析出物とガラスからなる模擬デブリ)(資料:70~71ページ)

    鉄あるいは酸化鉄を析出させたガラス状物質の模擬デブリを用いた気中試験の結果を70、71ページに示す。気中での微粒子発生は温度上昇により増大した。微粒子はほとんどが鉄系物質であり、ウランは含有していなかった。一部試料では、微粒子中にシリコンが検出された。鉄金属が析出している模擬デブリでは、微粒子発生が大きいことが示された。鉄系物質を析出させた模擬デブリの気中、水中試験では、反応の見かけの活性化エネルギーを評価した。

    〇 第2,3期の気中試験結果(酸化物と鉄析出物が混在しているガラス状マトリックスの模擬デブリ)(資料:72~73ページ)

    ウランとジルコニウムの酸化物析出物、および鉄あるいは酸化鉄をそれぞれ析出させたガラス状物質の模擬デブリの調製方法と水中試験の結果を72、73ページにそれぞれ示す。それぞれの析出物どうしの相互作用の効果はほとんど観測されなかった。模擬デブリ調製時に、析出物が化合すると微粒子発生に影響する可能性が示された。

    経年変化が発生する条件評価

    〇 経年劣化要因の推定(資料:41ページ)
    第一期に実施した模擬デブリ経年変化試験により、気中および水中での微粒子発生要因、および、鉄系析出物が介在する微粒子発生要因を推定した。

    〇 気中でのデブリ経年劣化要因の評価(48、50ページ)

    窒素雰囲気(現状で燃料デブリが堆積しているPCV内部を模擬)では微粒子発生は観測されなかった。気中に酸素が含有される条件では微粒子発生が観測され、酸素濃度の上昇にともなって微粒子発生量が増加した。併せて、模擬燃料デブリ中のジルコニウムとウランの比が大きいと微粒子化が進む傾向があること、模擬燃料デブリが急冷され組織が微細化している場合に微粒子化が進みにくい傾向があること、も示された。これらのことから、燃料デブリ取出し前や取出し中に燃料デブリ表面が冷却水に覆われている状態であれば(空気と直接接触しない条件であれば)、また、燃料デブリの保管を窒素ガスなどの低酸素分圧雰囲気で実施すれば、気中条件での微粒子化を抑制できる可能性があると推定された。さらに、燃料デブリの組成や形成条件により微粒子化に影響が出る可能性が推定された。

    〇 水中でのデブリ経年劣化要因の評価(58~62ページ)

    カバーガスが窒素雰囲気(現状で燃料デブリが堆積しているPCV内部を模擬)では微粒子発生は観測されなかった。カバーガス中に酸素が2%含有される条件では微粒子発生が観測され、カバーガスが空気の条件では微粒子発生量が増加した。併せて、燃料デブリ中に酸化物析出物が介在する場合、その選択的酸化による局所体積変化があると微粒子発生が増加する可能性が示された。また、水の交換頻度が大きいと微粒子発生が増大した。水中にウランが微量溶出し、その溶出量はpHの影響を受けることが確認されたが、微粒子発生への影響は見られなかった。これらのことから、燃料デブリ取出し前や取出し中に冷却水中の溶存酸素が制御されている条件であれば、また、燃料デブリの保管を窒素ガスなどの低酸素分圧雰囲気で実施すれば、微粒子化を抑制できる可能性があると推定された。

    〇 鉄や酸化鉄の析出物が介在するデブリ経年劣化要因の評価(69~71、73ページ)

    気中条件では、温度、雰囲気が、水中条件ではカバーガス雰囲気、水の交換頻度が、それぞれ微粒子発生に影響することが示された。また、金属鉄が析出している場合、微粒子発生が増加することが示された。しかし、このメカニズムで発生する微粒子はウランを含有しないことが確認された。析出物中で鉄系物質とウランやジルコニウムが化合している場合にはさらに調査が必要である。

    燃料デブリの経年変化予測及び影響評価

    〇 燃料デブリ経年変化の予測(気中、第1期試験)(資料:51-54ページ)
    経年変化を予測評価するため、試験温度を変化させて温度依存性データを取得し、アレニウス式にあてはめてみかけの活性エネルギー(Ea)を算出した(気中条件での微粒子発生のみかけの活性化エネルギー65 kJ/mol)。そこから、温度加速倍率を下式で評価した。

    Exp [(Ea/R)・(1/T – 1/T’)]

    ここで、Rは気体定数8.3145 J/mol/K、TとT’が温度の違いを示す。
    この評価式から、50℃での微粒子発生に対し、110℃では約40倍の加速化が起こると評価された。温度加速倍率を実温度50℃での時間依存性に換算したところ(参考文献 J.L. Vandegrift et al., Nucl. Mater. Energ. 20 (2019) 100692.)、微粒子発生は、経過時間1.5年までは時間に対しほぼ一定速度で推移すると評価された。この際の評価式は

    y = 0.0048 x

    ここで、yは微粒子発生量(mg/cm2)を、xは経過時間(year)を示す。
    さらに、130℃空気中での加速化試験を経過時間1000hまで追加実施し、微粒子発生の時間依存性の変化を調査した。微粒子発生の増加傾向は時間に対し約0.64乗となった。このことから、経過時間1.5年以降14年までの評価式は

    y = 0.0055 x0.6389

    微粒子発生メカニズムとしては、Zr(O)と(U,Zr)O2が共存する模擬燃料デブリでは微粒子が発生し、二酸化物のみで形成される模擬燃料デブリではほとんど微粒子発生が見られなかった。このことから、時間経過に伴って、微粒子発生速度が漸減する理由として、微粒子発生の主要因と推定されるデブリ表面近傍のZr(O)相が漸減する可能性が示唆される。これらの微粒子発生メカニズムを考慮すると、微粒子中にはPuやAm, Cmなどのマイナーアクチニドが混入されると推定された。気中試験での評価結果のまとめを資料54ページにまとめている。

    〇 燃料デブリ経年変化の予測(水中、第1期試験)(資料:64-66ページ)

    経年変化を予測評価するため、試験温度を変化させて温度依存性データを取得し、アレニウス式にあてはめてみかけの活性エネルギー(Ea)を算出した(水中条件での微粒子発生のみかけの活性化エネルギー50 kJ/mol)。この値は、UO2の気中酸化の活性化エネルギーの文献値150 kJ/mol(参考文献:R.J. McEachem, P. Tayler, J. Nucl. Mater. 254 (1998) 87.)より小さいが、他方で、表層参加の活性エネルギーはより小さい値を示すという文献(参考文献:G. Leinders et al., Inor. Chem. 57 (2018) 4196-4204.)もあり、燃料デブリの酸化のみかけの活性化エネルギーがUO2より小さいのは妥当と推定した。そこから、温度加速倍率を下式で評価した。

    Exp [(Ea/R)・(1/T – 1/T’)]

    ここで、Rは気体定数8.3145 J/mol/K、TとT’が温度の違いを示す。
    この評価式から、30℃での微粒子発生に対し、90℃では約30倍の加速化が起こると評価された。温度加速倍率を実温度30℃での時間依存性に換算したところ(参考文献 J.L. Vandegrift et al., Nucl. Mater. Energ. 20 (2019) 100692.)、微粒子発生は、経過時間0.3年までは時間に対しほぼ一定速度で推移すると評価された。この際の評価式は

    y = 6.0 x

    ここで、yは微粒子発生量(mg/cm2)を、xは経過時間(year)を示す。
    微粒子発生メカニズムとして、水中の溶存酸素濃度に依存することが示された。窒素カバーガスと平行する水中では微粒子発生が確認されなかった。また、(U,Zr)O2相部分が選択的に酸化し、ガラス部分に亀裂が伝播することで微粒子が形成されることが推定された。これらの微粒子発生メカニズムを考慮すると、カバーガスを低酸素濃度で管理することで、水中での微粒子発生を抑制できると考えられる。他方、取出した燃料デブリを乾燥処理・保管する際には、付着した水中に微量の微粒子が発生し、それが乾燥と共に期中に飛散する可能性は残されている。従って、燃料デブリの保管を乾燥空気雰囲気で実施し、付着水の残留を防止すれば、水中での微粒子化は起こらないと考えられる。また、微粒子中にはPuやAm, Cmなどのマイナーアクチニドが混入されると推定された。水中試験での評価結果のまとめを資料66ページにまとめている。

    〇 燃料デブリ経年変化の予測のまとめ(資料:74-76ページ)

    第2,3期に実施した試験では、気中では、微粒子のほとんどがウランを含まず、鉄が主成分であった。鉄金属を含むfガラス状物質では、鉄の酸化による体積変化でガラス状物質の亀裂が発生し、微粒子発生した可能性が示唆された。水中では、微粒子のほとんどがウランを含まず、鉄が主成分であった。微粒子発生量は、水の交換頻度や水中の溶存酸素により上昇した。温度依存性は小さかった。鉄に起因する微粒子発生の場合には、PuやAm, Cmなどのマイナーアクチニドが微粒子に随伴する可能性は低いと示唆される。
    試験条件のまとめ(資料:75ページ)、試験結果に基づく燃料デブリ経年変化予測と影響評価の結果(資料:76ページ)を示す。

    〇 燃料デブリの経年変化特性の推定技術の開発(東芝エネルギーシステムズ株式会社提案のプロジェクト、2019-2020年度実施)の成果まとめ (資料:77ページ)

    本研究では、1F燃料デブリが長期間おかれる環境下での経年変化の発生有無および発生する場合の挙動を明らかにするために、燃料デブリ経年変化の要因を設定し、模擬燃料デブリを用いて気中および水中試験を行い、以下の知見を得た。
    • 気中では、空気雰囲気において、Zr(O)と二酸化物の組織を有する模擬燃料デブリで微粒子発生が見られた。水中では、空気をカバーガスとする平衡水中で、二酸化物の介在物を有するガラス状模擬燃料デブリで微粒子発生が見られた。また、鉄や酸化鉄(FeO)の析出物を含むガラス状模擬燃料デブリでは、気中、水中共に鉄さび形成にともなう微粒子発生が見られた。
    • Zr(O)と二酸化物、あるいは、二酸化物とガラス状物質からなる模擬燃料デブリからの微粒子発生は、試験温度、気中の酸素濃度、水中の溶存酸素濃度などに依存して増加した。酸素濃度を抑制することで微粒子化が抑制される傾向を示した。
    • 微粒子発生の温度依存性から、みかけの活性化エネルギーを算出し、気中、および水中での微粒子発生の経年変化推定式を予備的に求めた。今後、長期予測性の向上や、微粒子発生する燃料デブリの組成条件、環境影響因子の条件を明確にするため、試験データを拡充し、微粒子化挙動をより明確にすることが重要と考えられる。




    以下にTENEX社の事業の概要を紹介する。

    Development of Estimation Technology of Aging Properties of Fuel Debris(ROSATOM/TENEX社提案のプロジェクト、2019-2020年度実施)

    研究項目、目的、進め方、スケジュール
    TENEX社の提案は、(1)シリコンを含有する模擬燃料デブリの製造技術の開発、(2)模擬燃料デブリを用いた経年変化試験の実施、(3)燃料デブリ経年変化に影響する因子の評価、からなる。また、これらの基礎知見として、チェルノブイリ事故とTMI-2事故で発生した燃料デブリおよびガラス固化体の経年変化に関する過去知見の分析も行われた。事業は2019-2021年にかけて実施された。
    〇2019年度および2020年度の最終報告 (資料:3-4ページ)

    実施内容

    (1)模擬燃料デブリの製造技術の開発(Corium model samples manufacturing)
    (2)模擬燃料デブリの経年変化試験の実施(Aging experiments)
    (3)経年変化予測モデルの開発(Prediction model development)



    〇 模擬燃料デブリの製造技術の開発(資料:5-11ページ)
    6種類のウラン含有模擬燃料デブリ(FD、重量300g以上、コールドサンプルと称する)を製造し、SEM/EDX、XRD、XRF、化学分析手法で分析した。この模擬燃料デブリを破砕し、790個以上のウラン含有模擬燃料デブリ試験片を調製した。破砕片の一部をRIAR研究所に輸送し、ウランに対して4%のプルトニウム(238Pu)を添加して、45個のホットサンプルを調製した。
    6種類の模擬燃料デブリ(FD、C1~C6)は、資料7ページに装荷した試薬の組成を示す。C1~C5は1F事故で発生した燃料デブリ組成を模擬した。C6はTMI-2事故で発生した燃料デブリを模擬した。これらの製造は、NITI研究所にあるRASPLAV試験装置を用い、誘導加熱によるコールドクルーシブル法で実施した。製造時の加熱・冷却パターンを資料7ページにあわせて示す。
    C1~C5については、製造後サンプルの分析による、模擬燃料デブリ中のコリウム(炉心物質)成分とコンクリート成分の重量比、見かけの密度、製造時の冷却速度を、資料8ページに示す。コリウムとコンクリートの組成を変えてC1~C5を製造した。

    模擬燃料デブリ断面の典型的なSEM/EDX分析結果を資料9-10ページに示す。シリコンを含有する模擬燃料デブリ(ex vessel debris)では、基本構造として、シリコン化合物を主成分とするアモルフォス相から、ウランとジルコニウムの二酸化物(U,Zr)O2がデンドライト状に析出している。TMI-2事故を模擬した燃料デブリ(in vessel debris)は、2種類の(U,Zr)O2の固溶体相に金属成分が一部析出している。ex vessel debrisでは、コンクリート成分の割合が増えるほど二酸化物デンドライトのサイズが大きくなることが示されている。
    プルトニウムを添加したホットサンプルでは、プルトニウムが主にウランと同一の相に含有された。
    #なお、調製した模擬燃料デブリについて、定性定量分析の詳細は公開されていないため、記述されている内容の技術レビューは実施していない。

    〇 模擬燃料デブリの経年変化試験の実施(資料:13-27ページ)
    経年劣化試験の方法論を検討するために、4つの経年変化因子を選定した。(i) 燃料デブリに接触する媒体(雰囲気、冷却水)、(ii) 二次相やダスト粒子の形成メカニズム、(iii) 燃料デブリの組成、(iv) ウラン二酸化物の高次酸化(VI価への酸化)さらに、燃料デブリが曝される3つの環境を選定した。(I) 原子炉格納容器内部(水冷、窒素カバーガス(酸素濃度1%))、(II) 燃料デブリ取出し作業中(水冷、空気接触)、(III) 長期貯蔵(乾燥空気)水中での燃料デブリ経年変化加速化試験の試験パラメータを資料14-15ページに示す。
    #なお、試験マトリックスの詳細は公開されていない。
    水中での模擬燃料デブリ経年変化試験の試験データの一部を資料16-24ページに示す。
    #なお、これらの結果を導出するための分析データの詳細は公開されていないため、記述内容の技術レビューは実施していない。

    資料16-17ページに、いくつかの模擬燃料デブリについて、水相への主要元素の浸出量が、温度、pH、溶存酸素量を変えた条件で示され、その傾向がまとめられている。コリウム成分(U, Zr, Fe, Cr, Ni)の溶出は極めて少なく、コンクリート成分(Si, Ca, Al)の溶出が確認された。酸性溶液(pH=4)では、Caの大きな溶出が見られた。アルカリ性溶液(pH=9)ではSiとAlの大きな溶出が見られた。窒素飽和水(Nitrated water)、脱イオン水(Deionized water)で溶出傾向に大きな違いはなかった。過酸化水素濃度の増加により、溶出は増大した。C1~C5で大きな差は見られなかった。

    資料18-19ページに、試験後試料の表面分析の結果が示されている。酸性溶液(pH=4)での浸出試験後にはシリコンの残留が見られ、水酸化シリコン化合物が形成された可能性がある。過酸化水素溶液での浸出試験では、表面変化はほとんど見られなかった。中性溶液(pH=7)あるいはアルカリ性溶液(pH=9.2)での浸出試験後には表面に鉄の濃化が見られた。C1~C5で大きな差は見られなかった。浸出試験後の模擬燃料デブリには表面層が形成されており、その中では組成が平均的に変化していることが確認された。模擬燃料デブリ(ex vessel)の溶出が次第に抑制されるメカニズムとして、最析出したシリコンによる、燃料デブリ中の空隙(pore)の閉塞が考えられる。模擬燃料デブリ(in vessel)では、浸出試験後に表面が鉄の水酸化物で覆われ、ウランやジルコニウムは二酸化物のままであった。水酸化鉄層の形成はin vessel debrisについても成分浸出を抑制する可能性がある。

    資料20ページに、試験後試料表面で見られた析出相(secondary phaseと記載)のデータが示されている。鉄、アルミニウム、シリコンを含有する水酸化物が析出していた。これらへのウランやジルコニウムの含有は見られていない。

    資料21-22ページに、長時間試験での変化について記載されている。試験日数28日まで溶解速度は次第に減少し、それ以降はおおむね一定速度になったと記載されているが、判断根拠は明記されていない。また、長時間試験では、ウランとジルコニウムを含む層が検出されており、仮説として、鉄などを含有する水酸化物層の析出・形成により、残されたウランとジルコニウムからなる二酸化物相が形成されたのではないかと提案されている。長時間試験においても、水酸化物相中にウランとジルコニウムは検出されていないと述べられている、また、析出相の厚さは初期の模擬燃料デブリ中のガラス相の量に依存して増加すると述べられているが、明確な試験データは示されていない。

    資料23ページに、プルトニウムを添加した模擬燃料デブリの浸出データが記載されている。このデータも分析値の判断根拠が明記されていない。プルトニウム添加試料ではウラン、ジルコニウム、鉄、シリコン等の溶出速度はプルトニウムを添加していない試料より大きかったと説明されている。しかし、その理由はプルトニウム添加を原因とするのでなく、プルトニウムを添加する際の熱処理により、模擬燃料デブリが変質したためと推論されている。

    資料24ページに、調製した模擬デブリの水中での変質の傾向についてまとめられているが、その判断根拠は公開されていない。炉心物質(コリウム)とコンクリート成分の割合により、模擬燃料デブリの変質の傾向に系統的な違いが観測されたと結論している。また、コンクリート成分のうち、シリコンやアルミニウムは模擬燃料デブリに水酸化物として残留し、カルシウムは水中に溶出したとしている。鋼材成分については、模擬燃料デブリ表面の析出相中に検出されたことから、水中に溶出した可能性があると推定している。ウランとジルコニウムは析出相中には検出されず、二酸化物の固溶体相中に存在した。

    乾式貯蔵中の模擬燃料デブリ経年変化を模擬した試験の結果を資料25-27ページに示す。
    #上と同様に、これらの結果を導出するための分析データの詳細は公開されていないため、記述内容の技術レビューは実施していない。

    資料25ページに、炉心物質(コリウム)のみからなるin-vessel模擬デブリを150℃乾燥空気中で最長2200時間放置した試験の結果(表面状態の変化)を示す。模擬燃料デブリ表面に、鉄の水酸化物あるいは二三酸化鉄からなる褐色相(鉄錆、ダスト)が形成され、そこに微量のウランやジルコニウムの酸化物が混入したと報告されている。
    #分析データの詳細は公開されていない。

    資料26ページに、形成されたダストの重量割合が示されている。やはり分析データの詳細は公開されていない。in-vessel debris (composition 6)で、ex-vessel debris (composition 1-5)に比べてダスト形成が多くみられている。ダスト発生量は0.016%、また、そのうち微細粉は1%以下と記されているが、判断根拠となる分析データの詳細は記載されていない。

    資料27ページに、空気中での模擬燃料デブリの変質について、まとめが記されている。ここでも、判断根拠となる分析データの詳細は公開されていない。予め水中に放置され、表面に水酸化物が析出した模擬燃料デブリでは、気中保管中により多くの微粒子が飛散すると推定されているが、その判断根拠となる分析データは示されていない。

    〇 経年変化予測モデルの開発(資料:29-46ページ)
    資料29-34ページに、この研究開発事業で開発した燃料デブリ経年変化モデルの概念が示されている。試験結果に基づいて、燃料デブリ経年変化として現れる現象を2つに集約している。
    1) 燃料デブリ表面の変質あるいは溶出深さの計算
    2) 燃料デブリ表面での析出相(secondary phase)の生成体積の計算
    燃料デブリが水中に放置される場合、デブリ表面でのこれらの現象がデブリ経年変化の主要因子となると仮定した。特に、secondary phaseの形成は、乾燥保管時の微粒子発生の主要因となると仮定した。
    その上で、以下の9個の要因について、モデル化を行っている。いずれもモデル式は公開されておらず、考え方のみが記載されている。

    要因1:水溶液中への成分溶出における燃料デブリ組成の影響・・・ex-vessel debrisでは、炉心物質とコンクリートの組成変化による溶出量の経時変化は見られず、調製した5個の模擬デブリの実験データの平均値でフィッティングを行った。In-vessel debrisについてはほとんど溶解しないため、別の評価式を導入した。

    要因2:水溶液中に溶出する成分の違い・・・模擬燃料デブリ中のガラス相(アモルファス相)の主成分であるカルシウム、シリコン、アルミニウムが溶出の主要元素となる。二酸化ウランやジルコニウムを主成分とする酸化物結晶からの溶出はほとんど見られない。Ex-vessel debrisからの成分溶出は、従って、よく溶出するガラス相とほとんど溶出しない二酸化物相の2相状態からの溶出問題としてモデル化した。In-vessel debrisからは鉄とウランが溶出したので、別モデルとした。

    要因3:pHの影響・・・酸性溶液およびアルカリ性溶液では成分溶出が増加する傾向をフィッティングした。アルカリ溶液ではアルミニウムとシリコンの溶出が大きく、酸性溶液ではカルシウムの溶出が大きい。その原因として、デブリ表面に形成されるsecondary phaseのタイプが異なることを推定しているが、エビデンスは示されていない。

    要因4:温度の影響・・・℃表示の温度上昇にともなって、成分溶出は加速度的に増加する傾向をフィッティングしている。本研究での試験データによると、25℃から50℃で約8倍、25℃から90℃で約150倍、25℃から120℃で約900倍、溶出が装荷したと示されている。

    要因5:水質の違い・・・窒素ガスと飽和した水溶液と脱イオン化水では、成分溶出に若干の差が見られたことをモデル化した。窒素ガスと飽和した水溶液での若干んお溶出拡大は、主にカルシウムに起因するとしている。

    要因6:secondary phaseの析出・・・ex-vessel debrisでは数μm厚のsecondary phaseが層状に形成されることをモデル化した。熱力学解析とSEM分析によりsecondary phaseはゼオライト相と水酸化物鉱物相とした。In-vessel debrisでは、乾燥空気条件での褐色の鉄錆層が形成されることをモデル化した。

    要因7:プルトニウム添加の影響・・・ガラス相からのカルシウム、アルミニウム、シリコン溶出には差がないとした。プルトニウム添加したもで燃料デブリでは、鋼材成分、ウラン、ジルコニウム、プルトニウム、アメリシウムの溶出が見られ、プルトニウムを含有しない模擬デブリより大きな溶出だった。しかし、両者の違いはサンプル調製方法の違いによるものとした。

    要因8:粉体化サンプルの溶解・・・粉状試料と板状試料で溶出挙動(溶出成分、pHの影響、温度の影響)は同様であるとした。

    要因9:乾燥空気下での貯蔵・・・ex-vessel debrisではコンクリート成分と炉心物質の割合に大きな差がないとした。水中で放置した燃料デブリを乾燥空気下で保管する場合、水中で形成されるsecondary phaseに起因する微粒子が発生するとした。

    これが微粒子発生の原因とした。
    #十分な判断根拠は示されていない。In-vessel debrisでは、表面に鉄錆層が形成されるとした。

    資料35-39ページに、整備した要素反応モデル式の考え方と実験データとの比較が示されている。モデル式は、平衡論とkineticsによる燃料デブリ表面からの成分溶出化学モデル(温度、pH、デブリ組成等に依存した溶出評価、secondary phase形成評価)と、溶出する成分ごとの拡散物理モデル(表面層厚さの長期変化の評価)からなる。資料36ページにモデル式が与えられている(フィッティングパラメーターは非公開)。資料38-39ページに実験値とモデル計算の結果が数例比較されている。

    資料40ページに、長期的な、燃料デブリからの成分溶出評価の考え方が示されている。成分溶出はガラス相(アモルフォス相)からが支配的であり、その溶出に伴って、難溶性の二酸化ウラン相、およびスピネル相が、デブリ表面に濃化する。また、水酸化物からなるsecondary phaseが析出・堆積する。

    資料41ページに、この考え方に基づく、成分溶出、secondary phase析出の長期評価モデルが示されている。資料42-43ページに、この評価モデルに基づく長期変質の評価結果が示されている。

    資料44-46ページに、開発したデブリ変質予測ツール(program code)の入力画面と入力方法が示されている。プログラムで使用しているフィッティングパラメータは公開されていない。