「TMI-2での内部調査、デブリ取り出しの概要(簡略版)」の版間の差分
Kurata Masaki (トーク | 投稿記録) |
Kurata Masaki (トーク | 投稿記録) タグ: 手動差し戻し ビジュアルエディター |
||
| (同じ利用者による、間の61版が非表示) | |||
| 1行目: | 1行目: | ||
TMI-2事故で発生したデブリの最終処分に向けて、IAEAで研究プログラムT13015が提案された。米国アイダホ国立研究所(INL)は、それに対し、TMI-2事故でのRPV内部調査とデブリ取り出しの経緯についてレポートをとりまとめ報告した[1]。このレポートでは、RPV内部調査とデブリ取り出しの経緯がわかりやすく時系列でまとめられている。TMI-2での内部調査の進捗やデブリ取り出しに係る技術開発などは、'''<span style="color:blue">GENDレポート'''で時系列的にまとめられているが、炉心下部からの切り株燃料集合体取り出し以降では、技術開発項目の減少に伴って報告内容が減少傾向となっている。従って、むしろ、このレポートでの記述が参考になる場合がある。 | TMI-2事故で発生したデブリの最終処分に向けて、IAEAで研究プログラムT13015が提案された。米国アイダホ国立研究所(INL)は、それに対し、TMI-2事故でのRPV内部調査とデブリ取り出しの経緯についてレポートをとりまとめ報告した[1]。このレポートでは、RPV内部調査とデブリ取り出しの経緯がわかりやすく時系列でまとめられている。TMI-2での内部調査の進捗やデブリ取り出しに係る技術開発などは、'''<span style="color:blue">GENDレポート'''で時系列的にまとめられているが、炉心下部からの切り株燃料集合体取り出し以降では、技術開発項目の減少に伴って報告内容が減少傾向となっている。従って、むしろ、このレポートでの記述が参考になる場合がある。 | ||
'''<big><span style="color:blue">参考:[[TMI-2での内部調査、デブリ取り出しの概要 | '''<big><span style="color:blue">参考:[[TMI-2での内部調査、デブリ取り出しの概要]]</big>''' | ||
== TMI-2デブリ貯蔵の現状 == | == TMI-2デブリ貯蔵の現状 == | ||
| 8行目: | 8行目: | ||
最終処分の現状案として、乾式貯蔵キャニスターから個々のデブリ収納缶を取り出し、最終処分に適した標準的な収納缶オーバーパックに詰め替える方式が検討されている。オプションとして、デブリの減容化やガラス固化なども検討されている。 | 最終処分の現状案として、乾式貯蔵キャニスターから個々のデブリ収納缶を取り出し、最終処分に適した標準的な収納缶オーバーパックに詰め替える方式が検討されている。オプションとして、デブリの減容化やガラス固化なども検討されている。 | ||
'''<big><span style="color:blue">参考:[[デブリ取り出しツール]]</span></big>''' | '''<big><span style="color:blue">参考:[[デブリ取り出しツール]]</span></big>'''[[ファイル:Winston 1.png|サムネイル|400x400ピクセル|'''<big>図1 Quick Look調査の概要 [4]</big>''']] | ||
== RPV内の状態調査(デブリ取り出し前) == | == RPV内の状態調査(デブリ取り出し前) == | ||
事故直後に事故シナリオとRPV内の損傷状態が推定され[2]、それに基づいて、破損燃料の取り出し方法の検討が開始された。当初は、炉心損傷は比較的軽微で、燃料被覆管の酸化度は50%程度で、燃料集合体の形状は炉心中央上部以外では、ほぼ維持されていると推定されていた。そこで、建屋に既設の設備を利用して、通常の燃料交換に基づく方式で、<span style="color:blue">'''圧力容器ヘッド'''</span>と<span style="color:blue">'''上部プレナム構造物'''</span>の撤去、さらに<span style="color:blue">'''破損燃料集合体'''</span>の回収を行うことが基本プランとして検討開始された。これに向けて、圧力容器の上部プレナム領域と燃料集合体の上部端栓付近の調査が優先された。 | 事故直後に事故シナリオとRPV内の損傷状態が推定され[2]、それに基づいて、破損燃料の取り出し方法の検討が開始された。当初は、炉心損傷は比較的軽微で、燃料被覆管の酸化度は50%程度で、燃料集合体の形状は炉心中央上部以外では、ほぼ維持されていると推定されていた。そこで、建屋に既設の設備を利用して、通常の燃料交換に基づく方式で、<span style="color:blue">'''圧力容器ヘッド'''</span>と<span style="color:blue">'''上部プレナム構造物'''</span>の撤去、さらに<span style="color:blue">'''破損燃料集合体'''</span>の回収を行うことが基本プランとして検討開始された。これに向けて、圧力容器の上部プレナム領域と燃料集合体の上部端栓付近の調査が優先された。 | ||
[[ファイル:Winston 7.png|サムネイル|400x400px|'''<big>図2(a) 上部空洞底部のTopographyマップ [7]</big>''']] | |||
[[ファイル:Winston 8.png|サムネイル|400x400px|'''<big>図2(b) 炉心上部の3Dアクリル模型 [7]</big>''']] | |||
上部プレナム調査では、まず、圧力容器ヘッド上に取り付けられていた制御棒駆動システム(<span style="color:blue">'''CRDM'''</span>)を引き抜いて圧力容器内部を大気開放し、開口部からCCTVカメラをRPV内に挿入する方式が検討された。しかし、作業安全性、放射性物質の飛散防止、作業員の被ばく抑制などの観点で、開口部のサイズをできるだけ小さくすることが要請され、CRDM全体ではなくその内部の<span style="color:blue">'''制御棒リードスクリュー'''</span>だけを引き抜いて細径CCTVカメラを挿入する方式に変更された(<span style="color:blue">'''Quick Look調査'''</span>[3])。Quick Look調査(1982年7月)により、上部プレナム構造物は本来形状を維持し、大きな損傷が見られないことが確認された。そこで、上部プレナム内部の調査(線量分布、機械的強度、付着デブリ、など)を継続し、通常工法(<span style="color:blue">'''Dry Lift'''</span>)に基づいた方式で、圧力容器ヘッドと上部プレナム構造物が撤去・貯蔵できるかどうかについて、さらに検討を進めることとされた。この方針に基づき、<span style="color:blue">'''Underhead Characterization'''</span>プログラムが開始され、プレナム構造物内部のビデオ調査、線量分布測定、付着デブリの除去が行われた[4]。さらに、Quick Look調査のために引き抜いたリードスクリューの分析が行われ、構造強度評価のための事故時ピーク温度の評価、付着デブリの特性評価が行われた[5]。 | 上部プレナム調査では、まず、圧力容器ヘッド上に取り付けられていた制御棒駆動システム(<span style="color:blue">'''CRDM'''</span>)を引き抜いて圧力容器内部を大気開放し、開口部からCCTVカメラをRPV内に挿入する方式が検討された。しかし、作業安全性、放射性物質の飛散防止、作業員の被ばく抑制などの観点で、開口部のサイズをできるだけ小さくすることが要請され、CRDM全体ではなくその内部の<span style="color:blue">'''制御棒リードスクリュー'''</span>だけを引き抜いて細径CCTVカメラを挿入する方式に変更された(<span style="color:blue">'''Quick Look調査'''</span>[3])。Quick Look調査(1982年7月)により、上部プレナム構造物は本来形状を維持し、大きな損傷が見られないことが確認された。そこで、上部プレナム内部の調査(線量分布、機械的強度、付着デブリ、など)を継続し、通常工法(<span style="color:blue">'''Dry Lift'''</span>)に基づいた方式で、圧力容器ヘッドと上部プレナム構造物が撤去・貯蔵できるかどうかについて、さらに検討を進めることとされた。この方針に基づき、<span style="color:blue">'''Underhead Characterization'''</span>プログラムが開始され、プレナム構造物内部のビデオ調査、線量分布測定、付着デブリの除去が行われた[4]。さらに、Quick Look調査のために引き抜いたリードスクリューの分析が行われ、構造強度評価のための事故時ピーク温度の評価、付着デブリの特性評価が行われた[5]。 | ||
| 23行目: | 23行目: | ||
'''<u>1985年10月から、デブリ取り出しが開始</u>'''され、一方で、次段階の内部調査、サンプル採集計画の検討が具体的に進められた(#主に、炉心下部、下部プレナムについて)。 | '''<u>1985年10月から、デブリ取り出しが開始</u>'''され、一方で、次段階の内部調査、サンプル採集計画の検討が具体的に進められた(#主に、炉心下部、下部プレナムについて)。 | ||
'''<big> | '''<big><span style="color:blue">参考:[[Quick Look計画の概要|Quick Look調査]]</big>''' | ||
'''<big> | '''<big><span style="color:blue">参考:[[圧力容器ヘッド取り外し計画の概要|圧力容器ヘッド撤去]]</big>''' | ||
'''<big> | '''<big><span style="color:blue">参考:[[上部プレナム構造物取り外し計画の概要|上部プレナム構造物撤去]]</big>''' | ||
'''<big> | '''<big><span style="color:blue">参考:[[下部プレナム調査]]</big>''' | ||
'''<big><span style="color:blue">参考:[[TMI-2での内部調査、デブリ取り出しの概要 | '''<big><span style="color:blue">参考:[[TMI-2での内部調査、デブリ取り出しの概要]]</big>''' | ||
=== | === Quick Look調査 === | ||
* | * 1982年7~8月に、Quick Look調査が行われた[3]。'''図1'''に、調査の模式図を示す[4]。小型のCCTVが、制御棒リードスクリューを撤去した後の開口部3カ所(炉心中央、炉心中間、炉心周辺)から挿入された。 | ||
* 炉心上部に約1.2m深さの'''上部空洞'''が形成され、その下に<span style="color:blue">'''デブリベッド'''</span>が堆積していた。SS棒による<span style="color:blue">'''探針調査'''</span>が行われ、数10cm侵入すると、<span style="color:blue">'''ハードストップ'''</span>があることが確認された。 | |||
* 上部格子板の一部には、燃料集合体の上部や上部端栓が残留していた。カメラの作動範囲と光源が不十分で、上部空洞周辺の状態は十分に観察できなかった。 | |||
=== | === Quick Scan調査 === | ||
* Quick Look調査に引き続いて、上部プレナム構造物や上部支持格子板周辺の調査(<span style="color:blue">'''Quick Scan'''</span>)が行われた。当初は水中カメラで行われ、デブリ取り出しに向けて行われた冷却水水位低下後には大気中で調査が行われた。パノラマ写真撮影が行われ、構造物の損傷状態とデブリの堆積状態が調査された。 | |||
* デブリ取り出し開始後も、ビデオ調査は継続的に実施された。 | |||
[[ファイル:Winston 6.png|サムネイル|434x434px|'''<big>図3 原子炉建屋内の線量 [1]</big>''']] | |||
[[ファイル:Winston 9.png|サムネイル|537x537px|'''<big>図4 上部格子板の損傷の様子 [4]</big>''']] | |||
==== | === Core Topography調査 === | ||
* 1983年8月に、上部空洞の形状とデブリ堆積や燃料集合体の残留状態を調査するために、超音波プローブを用いたCore Topography調査が行われた[7]。 | |||
* 調査結果に基づいて、上部空洞周辺の3Dマップが描図され('''図2(a)''')、アクリル製の模型が製作された('''図2(b)''')[7]。これらは、初期のデブリ取り出しの工法と手順を決めるために用いられた。 | |||
=== 下部プレナム調査 === | |||
* 1985年2月以降、数回にわたって、コアフォーマ領域と圧力容器槽の間の円環状の隙間を利用して、下部プレナム周辺領域のビデオ調査とデブリサンプリングが行われた[12]。炉心下部支持構造(<span style="color:blue">'''LCSA'''</span>)の損傷はほとんど見られないが、約10~20トンのデブリが下部プレナムに堆積していることが明らかになった。 | |||
=== 調査時の建屋環境 === | |||
* | * これらの初期調査を実施した際の原子炉建屋内の線量は、建屋エントリーレベルでは4.3~1.5 mSv/h、RPVトップレベルでは0.6mSv/hであった。'''図3'''に、建屋エントリー開始前と開始後の線量を比較して示す[1]。なお、この時点では、建屋地階に高線量の滞留水が存在していた。 | ||
==== | == 圧力容器ヘッドと上部プレナム構造物の撤去 == | ||
* デブリ取り出しに向けた最初の関門は<span style="color:blue">'''圧力容器ヘッドの撤去'''</span>であった。遠隔でのヘッド撤去と貯蔵に向けて様々な準備作業と訓練が行われた[9]。 | |||
* | * 主な準備作業として、ヘッド貯蔵スタンド周辺の遮蔽、ポーラークレーンでのヘッド移動作業用の遮蔽された制御ブースの整備、モニタリングシステムの設置、一次系冷却水の水位低下、ポーラークレーンの再稼働試験と負荷試験、ヘッド周辺の除染やシール作業、等が行われた[9]。 | ||
* '''<u>1984年5月に、デブリ取り出し工法とヘッド及びプレナム構造物の撤去方法が最終決定された</u>'''[4]。燃料移送Canalを水没させず、気中条件(Dry Lift)でヘッドとプレナム構造物を撤去すること、デブリ取り出しは、RPV上に遮蔽付きの作業プラットフォームを設置し、そこからのマニュアル作業により行うこととなった。 | |||
* 1984年7月に、ヘッドが撤去され、圧力容器内の水位をかさましするための<span style="color:blue">'''改良型IIF'''</span>が設置された[9]。 | |||
* ついで、1984年12月に、上部プレナム構造物が約18cm<span style="color:blue">'''ジャッキアップ'''</span>され、気中での一体物としての撤去が可能かどうか調査と、付着デブリのフラッシング、ぶら下がりデブリの除去作業が行われた[10]。 | |||
* | * 1985年5月に、<span style="color:blue">'''上部プレナム構造物の気中工法での撤去'''</span>が行われ、上部プレナム構造物は、Canal最深部に貯蔵された[11]。移動の途中に、上部格子板の底部の損傷状態が確認された('''図4''')[4]。 | ||
* | * ヘッドと上部プレナム構造物が撤去されることで、圧力容器内部を直接観察できるようになり、より詳細に破損状態が確認できるようになった。炉心周辺に残留していた燃料集合体については、うち2体のみがほぼ90%本来形状を維持していたが、残りは大きく損傷していた('''図5''')[1]。 | ||
[[ファイル:Winston 10.png|サムネイル|382x382px|'''<big>図5 上部ぶらさがり燃料集合体と炉心周辺の残留燃料集合体の外観 [1]</big>''']] | |||
[[ファイル:Winston 3.png|サムネイル|397x397px|'''<big>図6 ルースデブリのサンプリング部位 [4]</big>''']] | |||
'''<big><span style="color:blue">参考:[[デブリ取り出し工法の変遷]]</big>''' | |||
* | |||
[[ファイル:Winston | |||
'''<big><span style="color:blue">参考:[[ | |||
'''<big><span style="color:blue">参考:[[ | '''<big><span style="color:blue">参考:[[圧力容器ヘッド取り外し計画の概要|圧力容器ヘッド撤去]]</big>''' | ||
'''<big><span style="color:blue">参考:[[ | '''<big><span style="color:blue">参考:[[上部プレナム構造物取り外し計画の概要|上部プレナム構造物撤去]]</big>''' | ||
== | == 上部ルースデブリとリードスクリューのサンプル採集と分析 == | ||
* | * リードスクリューは、Quick Look調査の準備作業において3本が回収され、そのうち、炉心中央(H8位置)と炉心外周(B8位置)に対応した2本の分析が、複数の研究機関の協働で行われた[5]。 | ||
* | * 母材の微細組織観察により、プレナム構造物の事故時のピーク温度が評価され、ピーク温度は構造材の融点より400℃以上低く、機械的強度は維持されていると推定された。 | ||
* 一方で、上部格子板の底面では、一部損傷・溶融の痕跡が見られ、上部格子底面付近で大きな温度勾配が発生していたことが推定された。 | |||
* 付着デブリについては、付着状態や除染性の確認、付着デブリ中のFPや核物質量の評価、が行われた。付着デブリは表面近くのルース層と母材に近い固着層に成層化しており、ルース層は機械的に除去可能だが、固着層は酸に難溶性で除染しにくいことが確認された。付着デブリの主成分は構造材と制御材のAg-In-Cdであり、核物質と揮発性FP成分は、保守的に見積もっても、初期インベントリの0.1%以下と評価された。 | |||
* | * さらに、事故時に上部プレナムに金属Zrや水素化物の微粒子が移行して付着した可能性が指摘され、これらの物質は、大気に曝されると自然発火する可能性が懸念されたため、自然発火性の確認試験が行われた。実デブリを用いた熱分析試験、粒度分布の測定、微細組織の観察、組成分析などにより、自然発火可能性を有する物質はほとんど含有されておらず、その可能性は極めて低いと結論された。一方で、採集されたサンプルが必ずしも付着デブリを完全に代表しているわけではないことが指摘された[5,13]。 | ||
* | * 上部プレナム構造物の付着デブリサンプルを用いて、基本的なサンプル溶解手法と分析フローについての検討が行われ、硝酸やフッ酸への溶解性調査や、不溶解残差のアルカリ溶融処理技術の実用性検証が行われた。 | ||
* | * 1983年9~10月と1984年5月に、クラムシェル型と回転式の探査棒型のサンプリングツールを用いて、炉心中央(H8位置)と炉心中間部(E9位置)において、上部ルースデブリのサンプリングが行われた(合計11カ所)。 | ||
* | * '''図6'''に、サンプリング位置の模式図を示す[4]。合計で1.37kgのサンプルが回収され、INELで分析が行われた[8]。 | ||
* デブリ取り出しツールの設計の観点では、数100gの実デブリを用いて、<span style="color:blue">'''デブリの平均密度と粒度分布'''</span>が測定された[8]。 | |||
* デブリ粒子のサイズは、大半が約30μmから6mmの範囲であった。そのうち、1~4mm範囲の粒子が全体重量の90%を占めていた。粒子タイプはおよそ<span style="color:blue">'''5群に類型化'''</span>され、破損燃料ペレット、破損被覆管、溶融凝固したUとZrの混合酸化物、金属粒子、燃料成分と構造材の混合酸化物に分類された。 | |||
* また、デブリ粒子中に金属Zrや水素化物の微粒子が混入している可能性があることから、<span style="color:blue">'''自然発火可能性'''</span>がないことを確認するために、数100gの実デブリを用いて網羅的な検証試験が行われた[13]。一部のデブリサンプルを用いて、デブリ取り出し作業中にデブリ破砕した場合の<span style="color:blue">'''Cs放出試験'''</span>も行われた[14]。 | |||
* これらの結果から、デブリ粒子が破砕されても、ほとんど追加のCs放出が起こらないこと、デブリの自然発火可能性は極めて低いこと、が示された。 | |||
* 事故進展解析の観点では、FPふるまいとデブリ中の残留率を評価するため、酸溶解したサンプルの化学・放射化学分析が行われた。 | |||
* 炉心物質については、ICP発光分析が行われ、Ag,Al,B,Cd,Cr,Cu,Fe,Gd,In,Mn,Mo,Ni,Nb,Si,Sn,U,Zrの存在割合が測定された。FPのうち、TeについてもICP発光分析が行われた。 | |||
* FPについては、高揮発性(I-129,Cs-134,Cs-137)、中揮発性(Sr-90,Ru-106,Sb-125)、低揮発性(Ce-144,Eu-154,Eu-155)に分けて、重要核種が抽出され、γ線分光分析が行われた。分析結果は、それぞれの核種について、Uに対する割合として整理され、<span style="color:blue">'''FP保持率'''</span>として評価された[8]。 | |||
* あわせて、X線回折により結晶構造が、金相顕微鏡と走査型電子顕微鏡により、微細組織が調査された。これらのデータは、事故時のデブリふるまい(酸化進展、炉心物質の相互作用)の推定に用いられた | |||
* デブリふるまいの観点では、デブリの酸化度が重要なデータになるが、(U,Zr)O<sub><small>2±x</small></sub>相の酸化度について、オージェ分光分析により測定された。 | |||
* これらの分析により、上部ルースデブリの主成分は溶融凝固したUO<sub><small>2</small></sub>とZrO<sub><small>2</small></sub>の混合物であり、一部にUO<sub><small>2</small></sub>の溶融凝固物が含まれていることがわかった。これらの微細組織から、事故時のピーク温度は約2810K以上(局所的に3120K以上)と評価された。この他に、構造材の金属成分あるいは酸化物成分が含まれていた。 | |||
'''<big><span style="color:blue">参考:[[上部ルースデブリの詳細分析データ|上部ルースデブリの分析データ]]</big>''' | '''<big><span style="color:blue">参考:[[上部ルースデブリの詳細分析データ|上部ルースデブリの分析データ]]</big>''' | ||
| 96行目: | 96行目: | ||
'''<big><span style="color:blue">参考:[[リードスクリューサンプルの分析と自然発火性試験|リードスクリューサンプルの分析データ]]</big>''' | '''<big><span style="color:blue">参考:[[リードスクリューサンプルの分析と自然発火性試験|リードスクリューサンプルの分析データ]]</big>''' | ||
== | == 燃料・炉心デブリの回収(デブリ取り出し初期、上部ルースデブリベッドについて) == | ||
* 燃料・炉心デブリ取り出し工法やツールの開発に向けて、最初の事故炉内部の推定が行われた(GEND-007)[2]。 | |||
* | * Quick Look調査[3]により、炉心上部には粒子状のデブリと瓦礫状のデブリが堆積していることが明らかになった。 | ||
* これらの知見に基づいて、遠隔ロボット方式とマニュアル方式のそれぞれで、シリンダーやホースを用いた真空吸引、フレキシブルフィルターの回収システム、ドライ工法での回収システム、等が検討された[6]。 | |||
* <span style="color:blue">'''遠隔ロボット方式'''</span>では、燃料輸送ブリッジに2基の伸縮式の配管を取り付け、デブリ近傍の吸入口をCCTVで観察つつ、粒子デブリを回収する概念が検討された[6]。 | |||
* | * <span style="color:blue">'''マニュアル方式'''</span>では、RPV上部に回転式の作業プラットフォームを設置し、そこに開口スロットを設けて長尺ツールを挿入し、<span style="color:blue">'''Pick-and-Place方式'''</span>と<span style="color:blue">'''真空吸引方式'''</span>で、デブリを回収する概念が検討された[6]。 | ||
* オプションとして検討された、フレキシブルフィルター回収システムでは、X-Yブリッジと伸縮配管を装荷し、円錐形の膜の上で、分離タンク、サポートアーム、収納缶、マニピュレータ、バケツなどを使用する方式であった。同じくオプションとして検討されたドライ工法では、トップフランジにシールドリングをとりつけ、大気雰囲気の重遮蔽キャスク内に、デブリを装荷して構内輸送することが検討された。 | |||
* 遠隔ロボット方式とマニュアル方式の比較検討が行われ、遠隔ロボットシステムの欠点として、燃料輸送Canal全体を水没させるため、高汚染範囲が広がること、また汚染水の物量が増加することが指摘された。また、自動化のための複雑なシステムを導入することで、デブリ破砕やサイズ調整のためのツール開発に時間を要すること、高コストが予想されること、信頼性が十分でないことなどが指摘された。作業員の被ばく低減の観点では、燃料輸送Canal全体を水没させた場合、比較的空間線量の大きい建屋内上層階での作業になること、信頼性が十分でないロボットを用いるとメンテナンス頻度が増え、作業員被ばくがかえって増加することなどが指摘された。 | |||
* [[ファイル:Winston | * '''<u>1984年5月に、最終技術レビューが行われ、マニュアル方式が採用された</u>'''[1]。また、遠隔自動ツールについては、成熟した技術として開発が間に合えば、必要に応じて現場投入することとされた[6]。(<u>#ROSAやMANFREDと言ったロボットアームが開発されたが、結局、現場適用されなかった。</u>) | ||
* [[ファイル:Winston 18.png|サムネイル|450x450ピクセル|'''<big>図7(a) 初期の炉心デブリ取り出し概念 [1]</big>''']][[ファイル:Winston 16.png|サムネイル|'''<big>図7(b) 遮蔽付き回転作業プラットフォーム(SWP)[1]</big>''']]マニュアル方式が採用されたことで、圧力容器内での作業用に水位を上げるために改良型IIFが設計・製作された[1]。また、遮蔽付きの回転作プラットフォーム(SWP)が設計・製作された。'''図7(a)(b)'''に、マニュアル工法での燃料・炉心デブリ回収概念とSWPの外観を示す[1]。SWPの開口スロットから長尺ツールを挿入し、拾い上げたデブリをバスケットに回収し、さらに収納缶へ装荷する方式である。収納缶がデブリで満載となったら、SWP上に吊り上げ、表面をフラッシングする。 | |||
* [[ファイル:Winston 19.png|サムネイル|500x500ピクセル|'''<big>図8 デブリ収納缶取り扱い概念 [1]</big>''']]'''図8'''に、収納缶の輸送と一時貯蔵、さらに構内輸送の構想を示す[1]。収納缶輸送のために、通常の燃料交換システムが改良された。収納缶は、遮蔽キャスクで囲って、収納缶輸送ブリッジを用いて、燃料移送Canal最深部に移送される。そこで、横倒しにされ、燃料取り扱い建屋にある燃料貯蔵プールに一時貯蔵される。その後、構外輸送キャスクに装荷されて、INELに輸送された。 | |||
'''<big> | === デブリ取り出し長尺ツール === | ||
* [[ファイル:Winston 21.png|サムネイル|400x400ピクセル|'''<big>図9 長尺ツールの例 [1]</big>''']]20種類以上のデブリ取り出し用の長尺ツールが設計・製作された[15]。ウォータージェットカッター、アブレイシブソー、ボルトカッター、ベールカッター、フック、プライアー、クラムシェルツール、スペードバケツ、スパイクツール、グリッパー、等が試作され、モックアップ試験を経て、現場投入された。'''図9'''に、長尺ツールの例を示す[1]。 | |||
* Pick-and-Place方式では、スクープ、プライア、フックタイプのツールを用いて、瓦礫状のデブリが回収された。拾い上げたデブリは、デブリバスケットやデブリバケツにいったん回収し、漏斗ツールを利用して内容物をFuel収納缶内に装荷された。ロードセルで、収納缶重量変化が確認された。 | |||
=== 上部ルースデブリの回収 === | |||
* 1985年10月に、RPV内でのデブリ取り出しの準備作業が開始された。収納缶位置決めシステムを装荷するための作業空間を形成するため、デブリベッド上に崩落していた上部端栓やスパイダーが撤去、あるいは移動された。 | |||
''' | * 1985年12月から、主にスペード型のバケツツールを使ってデブリ粒子の回収が開始された。作業開始後すぐに、微生物発生による水質悪化が発生し、1986年2月にほぼブラインド条件での作業となった。回収されたデブリは、主に<span style="color:blue">'''Fuel収納缶'''</span>に装荷された。この作業は、1986年4月まで継続された。 | ||
* [[ファイル:Winston 23.png|サムネイル|600x600px|'''<big>図10 デブリ真空吸引システムの構成と模式図 [1]</big>''']]ついで、すくいきれなかった粒子デブリは、10cm径のパイプで真空吸引して回収された。'''図10'''に、真空吸引システムの模式図を示す[1]。吸引したデブリは、ペレットサイズ以上のものは<span style="color:blue">'''Knockout収納缶'''</span>へ、それ以下のものは<span style="color:blue">'''Filter収納缶'''</span>へ回収された。しかし真空吸引システムでは、デブリ粒子によるつまり対策が課題となった[1]。 | |||
* 上部ルースデブリがほぼ回収され、ハードストップにぶつかった段階で、打撃チゼルでの破砕を試したが、これを破ることはできなかった。 | |||
'''<big><span style="color:blue">参考:[[デブリ取り出しツール]]</big>''' | |||
* | |||
'''<big><span style="color:blue">参考:[[初期の燃料デブリ取り出し中に得られた知見]]</big>''' | |||
== | == ボーリング調査とデブリ破砕作業 == | ||
* | * 1982~1983年にかけて実施されたQuick Look調査や下部プレナム調査の結果に基づき、炉心下部に溶融凝固デブリや切り株燃料が成層化していると推定された。成層化状態を調査するために、一般の鉱山作業で利用されているボーリング装置を改良して、<span style="color:blue">'''ボーリング調査'''</span>が行われた(1986年7月)。 | ||
*装置開発において、まず<span style="color:blue">'''先端ビット'''</span>の選定が行われ、様々な候補材の中から、想定される様々な物質(ルースデブリ、溶融凝固セラミック、溶融凝固金属、切り株燃料棒、など)を掘削可能な王冠型のタイプが選定された('''図11''')[1]。 | |||
[[ファイル:Winston 11.png|サムネイル|300x300px|'''<big>図11 コアボーリング調査の先端ビット [1]</big>''']] | |||
* 次に、実寸大のモックアップ試験装置を用いて、模擬の燃料集合体、ルースデブリ、金属、セラミックを使用して、機能確認試験が行われた[16]。 | |||
'''< | |||
'''< | |||
* 次に、実寸大のモックアップ試験装置を用いて、模擬の燃料集合体、ルースデブリ、金属、セラミックを使用して、機能確認試験が行われた[ | |||
* その結果、ドリル回転速度(最大500rpm)、トルク(最大4067 Nm)、垂直荷重(最大4535kg)などの実機使用条件の範囲が選定された。 | * その結果、ドリル回転速度(最大500rpm)、トルク(最大4067 Nm)、垂直荷重(最大4535kg)などの実機使用条件の範囲が選定された。 | ||
* | * '''図12'''に、ボーリング装置の設置模式図を示す[1]。先端部分は二重管構造になっており、外側管(89mm外径)がガイドとなって掘削孔を保持し、内側管(63.5mm外径)が回転してボーリングサンプルを回収する構造であった。 | ||
* 掘削先端には、ポンプでホウ酸水を注入することで、冷却と掘削チップの除去が行われた。 | * 掘削先端には、ポンプでホウ酸水を注入することで、冷却と掘削チップの除去が行われた。 | ||
[[ファイル:Winston 12.png|サムネイル|461x461px|'''<big>図12 コアボーリング装置(CBM)の模式図 [1]</big>''']] | |||
* 先端のケーシングは、3.35m長で、その内部にボーリングサンプルを回収し、Fuel収納缶に装荷できるように構成されていた。 | * 先端のケーシングは、3.35m長で、その内部にボーリングサンプルを回収し、Fuel収納缶に装荷できるように構成されていた。 | ||
* ボーリング装置は、ドリルユニットのヘッドから油圧スピンドルと油圧ストリングで先端ビットにトルクと荷重を負荷する方式であり、ドリルユニットは専用のプラットフォームの上に設置された。プラットフォームを水平移動させることで、炉心中央から2.4m径の範囲を掘削することができた。 | * ボーリング装置は、ドリルユニットのヘッドから油圧スピンドルと油圧ストリングで先端ビットにトルクと荷重を負荷する方式であり、ドリルユニットは専用のプラットフォームの上に設置された。プラットフォームを水平移動させることで、炉心中央から2.4m径の範囲を掘削することができた。 | ||
* [[ファイル:Winston 13.png|サムネイル| | * 1986年7月に10本のボーリング調査が行われ、うち、9本でサンプルが回収された。さらに、3本はLCSAを貫通して下部プレナムに到達した('''図13''')[1]。 | ||
[[ファイル:Winston 13.png|サムネイル|500x500px|'''<big>図13 コアボーリング調査位置 [1]</big>''']] | |||
* ボーリング孔を利用して、炉心中央から下部にかけての成層化状態、LCSAの損傷とデブリの堆積状態、下部プレナムの状態が観測された。 | * ボーリング孔を利用して、炉心中央から下部にかけての成層化状態、LCSAの損傷とデブリの堆積状態、下部プレナムの状態が観測された。 | ||
* [[ファイル:Winston 14.png|サムネイル|'''<big>図14 コアボーリングサンプルの分析例 [1]</big>''']] | * ボーリングサンプルの分析が行われ[17]、上部クラスト層、下部クラスト層、周辺クラスト層、溶融凝固層、切り株燃料集合体の成層化状態や分布が明らかにされた('''図14''')[1]。 | ||
* [[ファイル:Winston 15.png|サムネイル|'''<big>図15 炉内状態推定図の最終版 [1]</big>''']] | [[ファイル:Winston 14.png|492x492px|サムネイル|'''<big>図14 コアボーリングサンプルの分析例 [1]</big>''']] | ||
* | * ボーリング調査により、事故後の原子炉圧力容器内の'''最終形態の推定図'''がほぼ確定した('''図15''')[1]。 | ||
* <u>#なお、後述する下部プレナム底部のハードデブリの分析において、デブリ底部と下部ヘッドの間に、核物質をほとんど含まない金属系の炉心物質が先行崩落し、堆積していた可能性が指摘された。結局この事象は、検証されていない。炉心部での最初のデブリ崩落の際に発生した金属デブリ粒子が、冷却水中で下部プレナム底部まで移行し約15cmほど堆積した可能性等が指摘された。</u> | |||
[[ファイル:Winston 15.png|467x467px|サムネイル|'''<big>図15 炉内状態推定図の最終版 [1]</big>''']][[ファイル:Winston 24.png|サムネイル|436x436px|'''<big>図16 エアリフトシステム(ALS)の模式図 [1]</big>''']] | |||
* ボーリングサンプルの分析により、溶融凝固層と周囲のクラスト層、及び切り株燃料中の炉心物質とFPの分布が評価された('''表1'''、'''表2''')[17]。 | |||
* ボーリング調査が行われた後すぐに、コアボーリングマシン(CBM)の先端を固体ビットに交換し、1986年10月に409回の掘削が行われた。これにより、炉心中央下部の<span style="color:blue">'''溶融凝固層とクラスト層が破砕'''</span>された。 | |||
* 溶融凝固層の破砕作業においても、微生物による冷却水透明度悪化と、デブリ微粒子による冷却水浄化系のつまりが課題となった。 | |||
* デブリ破砕処理後に、水質改善作業が行われた。この際に、部分的にしか破砕されていないリング状の構造物(約1.2トン、<span style="color:blue">'''馬蹄形リング構造'''</span>)が発見された。これを長尺ツールで除去するのは困難であり、デブリの上に崩落していたため、打撃チゼルでの破砕も困難であった。そこで、肉厚の漏斗型治具を製作して、Fuel収納缶上にとりつけ。そこに拾い上げて、その中で打撃破砕することで回収された。 | |||
* 馬蹄形リング構造については画像調査のみが行われた[18]。 | |||
* 破砕された溶融凝固層に対する真空吸引システムとPick-and-Place方式での回収作業は、1986年後半から1987年中盤まで行われ、合計で14.5トンの粒子デブリと瓦礫デブリが回収された。 | |||
* 1987年後半以降の粒子デブリ回収では、<span style="color:blue">'''エアリフト'''</span>が使用された('''図16''')[1]。 | |||
'''<big><span style="color:blue">参考:[[初期の燃料デブリ取り出し中に得られた知見]]</big>''' | |||
<span style="color:blue">'''<big>参考:[[デブリ取り出しツール]]</big>'''</span> | <span style="color:blue">'''<big>参考:[[デブリ取り出しツール]]</big>'''</span> | ||
<span style="color:blue">'''<big>参考:[[コアボーリング調査と溶融凝固層の破砕|コアボーリング調査]]</big>''' | <span style="color:blue">'''<big>参考:[[コアボーリング調査と溶融凝固層の破砕|コアボーリング調査]]</big>'''</span> | ||
<span style="color:blue">'''<big>参考:[[ | <span style="color:blue">'''<big>参考:[[コアボーリングサンプルの分析データ]]</big>'''</span> | ||
{| class="wikitable" | {| class="wikitable" | ||
|+'''<big>表1 各種デブリ中の炉心物質の組成と分布(初期インベントリに対する捕捉率) [ | |+'''<big>表1 各種デブリ中の炉心物質の組成と分布(初期インベントリに対する捕捉率) [17]</big>''' | ||
! colspan="2" rowspan="2" |炉心物質の分布 | ! colspan="2" rowspan="2" |炉心物質の分布 | ||
! colspan="3" |燃料棒成分 | ! colspan="3" |燃料棒成分 | ||
| 313行目: | 279行目: | ||
|} | |} | ||
{| class="wikitable" | {| class="wikitable" | ||
|+'''<big>表2 各種デブリ中のFP分布(ORIGEN-II解析値に対する捕捉率) [ | |+'''<big>表2 各種デブリ中のFP分布(ORIGEN-II解析値に対する捕捉率) [17]</big>''' | ||
! colspan="2" rowspan="2" |FPの分布 | ! colspan="2" rowspan="2" |FPの分布 | ||
! colspan="3" |低揮発性FP | ! colspan="3" |低揮発性FP | ||
| 501行目: | 467行目: | ||
<nowiki>#</nowiki>Eu-155については、下部プレナム、LCSA、UCSAについて分析が行われていない。Ce-144の分析値を参考に分布が推定された。 | <nowiki>#</nowiki>Eu-155については、下部プレナム、LCSA、UCSAについて分析が行われていない。Ce-144の分析値を参考に分布が推定された。 | ||
== | == 形状維持した燃料棒の採集と分析 == | ||
* | * 1985年10月から、<span style="color:blue">'''初期の燃料・デブリ取り出し作業'''</span>が開始された(デブリベッド上に崩落していた上部端栓等の撤去)。 | ||
* 上部端栓のうち14個が上部格子板に固着・融着しており、そのうち4個は脱離できなかった。 | |||
* 上部プレナム構造物の付着・堆積デブリのフラッシングが行われた。 | |||
* デブリ取り出し前に、デブリベッドの上に崩落していた110個の上部端栓と制御棒や可燃性毒物スパイダーの破砕物が回収された。 | |||
* | * これらは、5体の一部形状を維持した燃料集合体(上部)と共に18体のFuel収納缶に回収され、INELに輸送された。 | ||
* | |||
* | |||
* | |||
* INELのTANホットセルで収納缶が開封され、写真撮影、中性子ラジオグラフィー、γ線分光分析が行われた。 | |||
* 上部格子板からぶら下がっていた燃料集合体上部サンプルのうち2体について(図5参照)、主に事故進展解明の目的で詳細分析が行われた[19]。分析結果に基づいて、上部端栓周辺の事故時ピーク温度と分布、損傷・溶融程度や損傷メカニズム、酸化程度の分布、などの評価が行われた。集合体1体の中でも、損傷状態や酸化度に大きな変化が見られた[18]。 | |||
* 炉心周辺に残留していた燃料棒については、簡易分析が行われた[20]。燃料棒のうち、形状を維持している部分については、一般的な使用済み燃料とほとんど変わらないことが確認された(FPはほぼ保持され、ペレットの形状が維持されていた)。 | |||
= | '''<big><span style="color:blue">参考:[[初期の燃料デブリ取り出し中に得られた知見]]</big>''' | ||
'''<big><span style="color:blue">参考:[[一部形状を残していた燃料集合体の詳細分析データ|一部形状を残していた燃料集合体上部サンプルの分析データ]]</big>''' | |||
'''<big><span style="color:blue">参考:[[炉心周辺に残留していた燃料集合体サンプルの分析データ]]</big>''' | |||
== | == 切り株燃料の回収、LCSA/UCSAの解体、下部プレナムデブリの回収 == | ||
=== 破砕デブリの回収 === | |||
*溶融凝固層をボーリング装置で破砕した後に、比較的大型のデブリはPick-and-Place方式で(図9参照)、粒子状デブリはエアリフトで回収された。 | |||
*エアリフトでは、ノズル先端にガスバブルを注入して気液混合相を形成させ、稠密な水相との比重差により、気液混合相が細管内を上昇する力で、ノズル先端からデブリ粒子を吸引する。細管の上部は分離チャンバーになっており、流速を低下させることで気体、液体、固体の分離が行われる。ガス相は、装置の上部から排気され、液相は冷却水に還流される。粒子デブリは、分離チャンバー底部に堆積し、斜めになった底面を移動して、デブリバスケット内で回収される。デブリバスケットはそのまま収納缶に装荷される。 | |||
* | |||
* エアリフトでは、ノズル先端にガスバブルを注入して気液混合相を形成させ、稠密な水相との比重差により、気液混合相が細管内を上昇する力で、ノズル先端からデブリ粒子を吸引する。細管の上部は分離チャンバーになっており、流速を低下させることで気体、液体、固体の分離が行われる。ガス相は、装置の上部から排気され、液相は冷却水に還流される。粒子デブリは、分離チャンバー底部に堆積し、斜めになった底面を移動して、デブリバスケット内で回収される。デブリバスケットはそのまま収納缶に装荷される。 | |||
* エアリフトは化学毒性、放射性毒性の高い物質を扱うプラントで利用されており、フィルター部がないためにつまりが起こりにくく、また、機械的な動作部位が少ないため、メンテナンスが容易なシステムとして導入された。 | * エアリフトは化学毒性、放射性毒性の高い物質を扱うプラントで利用されており、フィルター部がないためにつまりが起こりにくく、また、機械的な動作部位が少ないため、メンテナンスが容易なシステムとして導入された。 | ||
=== 切り株燃料集合体、炉心周辺燃料集合体の回収 === | === 切り株燃料集合体、炉心周辺燃料集合体の回収 === | ||
* 溶融凝固層デブリ回収後のターゲットは、'''切り株燃料集合体'''と'''周辺燃料集合体'''であった。そのうち、何体かは相互に融着していた。また、何体かの燃料集合体では、下部端栓が歪んでおり、機械的に引き抜くことが困難であった。 | * 溶融凝固層デブリ回収後のターゲットは、<span style="color:blue">'''切り株燃料集合体'''</span>と<span style="color:blue">'''周辺燃料集合体'''</span>であった。そのうち、何体かは相互に融着していた。また、何体かの燃料集合体では、下部端栓が歪んでおり、機械的に引き抜くことが困難であった。 | ||
* | * スペーサグリッド、インコアモニター、下部端栓、下部格子グリッドなどの構造材は、高圧水フラッシングや打撃処理により、できるだけ燃料成分と分離して回収された。回収された構造材はハンフォードサイトに輸送され、低レベル廃棄物として埋設処分された。 | ||
* | * 燃料集合体の大部分は、長尺ツールで引き抜き回収された。上部に、吊り上げ治具をネジ込んで引っ張り上げながら、たがね型のこじ開けツールで集合体を互いに傾けて引きはがす作業が行われた。引きはがした後の燃料集合体底部をツーフィンガーツールでひっかけあげることで、切り株燃料集合体が引き上げられた。 | ||
* | * 集合体のうち2体はひどく破損して、構造材に融着しており、1987年11月に、LCSA解体作業の一環として回収された。 | ||
* 切り株燃料のすきまに堆積していた粒子状デブリは、下部プレナムに叩き落とす、あるいは、エアリフトで回収された。 | |||
=== LCSAの解体・撤去 === | === LCSAの解体・撤去 === | ||
* 切り株燃料集合体の回収後に、LCSA以下を目視できるようになった。 | * 切り株燃料集合体の回収後に、LCSA以下を目視できるようになった。 | ||
* | * LCSA以下からのデブリ取り出しについて、初期に計画された案では、LCSAのフローホールなどの開口部から吸引ノズルを挿入してデブリ回収する方式が検討されていた。しかし、炉心部からの切り株燃料やデブリ取り出し後のビデオ調により、炉心部での作業(CBMでの破砕、切り株燃料集合体の引き抜き、など)により、燃料棒形状を一部維持したものや大きめの瓦礫状のもの、など、様々な形状のデブリが、LCSAの5層構造の隙間や下部プレナムに移行・崩落・堆積していることが確認された。 | ||
* [[ファイル:Winston 25.png|サムネイル| | * <span style="color:blue">'''LCSA'''</span>は、約3m径で最大で90cmの厚みのある頑丈な5層構造の構造物であり、縦方向に支持ポストやインコアモニター案内管が接続されていた('''図17''')[12]。 | ||
[[ファイル:Winston 25.png|サムネイル|450x450px|'''<big>図17 LCSAの構成 [1]</big>''']] | |||
* そこで、LCSAの中央部を切断・解体して、大きな開口部を形成し、デブリを回収するプランに変更された。 | * そこで、LCSAの中央部を切断・解体して、大きな開口部を形成し、デブリを回収するプランに変更された。 | ||
* いくつかのLCSA切断・解体オプションが検討され、プラズマアークによる切断方法が採用されることとなった。 | * いくつかのLCSA切断・解体オプションが検討され、プラズマアークによる切断方法が採用されることとなった。 | ||
* プラズマアーク方式での大きな課題は、水深12mのホウ酸水中での作業となることであり、トーチの寿命、漏電、微粒子対策などが課題となった。また、LCSAに大きな開口部を作るには1000回近くの切断作業が必要と評価された。 | * プラズマアーク方式での大きな課題は、水深12mのホウ酸水中での作業となることであり、トーチの寿命、漏電、微粒子対策などが課題となった。また、LCSAに大きな開口部を作るには1000回近くの切断作業が必要と評価された。 | ||
* | * プラズマトーチによる切断システム(<span style="color:blue">'''ACES'''</span>)が開発され、LCSA上に<span style="color:blue">'''X-Yブリッジ'''</span>をとりつけて、プラズマトーチを移動する方式が採用された('''図18''')[12]。ACES実装までに、再臨界性の維持、水素発生対策、Zrの自然発火可能性の検討、下部ヘッドの破損防止、汚染の拡散防止、等の課題について、安全評価と対策が行われた。 | ||
[[ファイル:Winston 26.png|サムネイル|450x450px|<big>'''図18 プラズマトーチ切断システム(ACES)の構成 [1]'''</big>]] | |||
* 1988年1月から開始された、LCSA切断・解体・撤去作業では、5層構造が上から順に処理されることとなった。 | * 1988年1月から開始された、LCSA切断・解体・撤去作業では、5層構造が上から順に処理されることとなった。 | ||
* [[ファイル:Winston 27.png|サムネイル|400x400ピクセル|'''<big> | * まず、効率的に切断・解体を進め、作業員の被ばくを抑制するために、ACESでの切断作業前に、CBMを再装荷して、インコアモニター案内管(52本)と支持ポスト(48本)を掘削・分離するプランが採用された。CBMの先端ビットとして、金属プレート掘削用のトレパニングタイプと、酸化物デブリ掘削用のJunkmillタイプが用いられた('''図19''')[1]。 | ||
[[ファイル:Winston 27.png|サムネイル|400x400ピクセル|'''<big>図19 LCSA切断・解体に用いられたCBM先端ビット [1]</big>''']] | |||
* 切削くずの除去が課題となり、インコア案内管を全部掘削することはできなかった。しかし、CBMにより、第一層は13個に分割され、撤去された。 | * 切削くずの除去が課題となり、インコア案内管を全部掘削することはできなかった。しかし、CBMにより、第一層は13個に分割され、撤去された。 | ||
* あらかじめ、貯蔵場所として、Core Flood Tank-Aが改造されて準備されており、そこに移送された。 | * あらかじめ、貯蔵場所として、Core Flood Tank-Aが改造されて準備されており、そこに移送された。 | ||
| 573行目: | 520行目: | ||
* 1988年12~1989年2月に、第4層が4つに解体・撤去された。 | * 1988年12~1989年2月に、第4層が4つに解体・撤去された。 | ||
* 1989年2~4月に、第5層が26個に解体・撤去された。 | * 1989年2~4月に、第5層が26個に解体・撤去された。 | ||
* これらの作業でのオプション技術として、'''MANFRED'''(Multi-axis Dual-arm)システムが設計された。 | * これらの作業でのオプション技術として、<span style="color:blue">'''MANFRED'''</span>(Multi-axis Dual-arm)システムが設計された。<u>#しかし、複雑な仕組みで、除染作業が多くなるという理由で、実装されなかった</u>。 | ||
=== 下部プレナムデブリの回収、UCSAの撤去 === | === 下部プレナムデブリの回収、UCSAの撤去 === | ||
[[ファイル:Winston 28.png|サムネイル|400x400px|'''<big>図20 LCSA中央部を撤去した段階での圧力容器内の様子 [1]</big>''']] | |||
* 次に、下部プレナムのルースデブリが、主にエアリフトによって回収された。 | * 次に、下部プレナムのルースデブリが、主にエアリフトによって回収された。 | ||
* ''' | * '''図20'''に、この段階での圧力容器内の模式図を示す[1]。圧力容器側面のバッフル板を撤去して、コアフォーマ領域のデブリ回収に着手する前に、ここまでの作業で下部プレナムに移行・堆積したデブリ取り出しが必要になった。 | ||
* 1989年5月に、長尺ツールのグリッパー、スクープ、トングを利用したPick-and-Place方式とエアリフトにより、12.4トンの下部プレナムデブリが回収された。この過程で、下部プレナムデブリの実際の物量が計測された。 | * 1989年5月に、長尺ツールのグリッパー、スクープ、トングを利用したPick-and-Place方式とエアリフトにより、12.4トンの下部プレナムデブリが回収された。この過程で、下部プレナムデブリの実際の物量が計測された。 | ||
* 下部プレナムの中央部には、約60cm厚さでハードデブリが堆積していたが、もろかったので打撃ハンマーで破砕された。 | * 下部プレナムの中央部には、約60cm厚さでハードデブリが堆積していたが、もろかったので打撃ハンマーで破砕された。 | ||
* | * LCSAの周辺残留部への付着・堆積デブリが約3トン、UCSAのコアフォーマ領域への残留デブリが約4トンと推定された('''図20''')[1]。 | ||
* プラズマトーチにより、4m長さのバッフル板が8枚に分割され撤去された。撤去前に付着デブリのフラッシングが行われた。デブリの回収とフラッシングには、エアリフトと'''CAVIJET'''が使用された。 | * プラズマトーチにより、4m長さのバッフル板が8枚に分割され撤去された。撤去前に付着デブリのフラッシングが行われた。デブリの回収とフラッシングには、エアリフトと<span style="color:blue">'''CAVIJET'''</span>が使用された。 | ||
* ここまでの作業により、コアフォーマ領域から4218kg、LCSA周辺部から2903kg、下部プレナム中央から3946kgと下部プレナム周辺から12383kgのルースデブリ、下部プレナム中央から6804kgのハードデブリ、これらの合計として30254kgが回収された。 | * ここまでの作業により、コアフォーマ領域から4218kg、LCSA周辺部から2903kg、下部プレナム中央から3946kgと下部プレナム周辺から12383kgのルースデブリ、下部プレナム中央から6804kgのハードデブリ、これらの合計として30254kgが回収された。 | ||
* 燃料と炉心デブリの取り出し作業、および、最終クリーニングにより、炉心デブリの99%以上が回収された。 | * 燃料と炉心デブリの取り出し作業、および、最終クリーニングにより、炉心デブリの99%以上が回収された。 | ||
| 590行目: | 537行目: | ||
'''<big><span style="color:blue">参考:[[デブリ取り出し工法の変遷]]</big>''' | '''<big><span style="color:blue">参考:[[デブリ取り出し工法の変遷]]</big>''' | ||
== VIP計画 == | |||
* TMI-2での事故進展過程が明らかになると、デブリが下部プレナムに移行した後で、<span style="color:blue">'''圧力容器ヘッドが破損するまでの裕度と下部プレナムでのデブリふるまいの理解'''</span>が、事故時の安全性に係る重要な評価項目となった。 | |||
* NRCがスポンサーとなって、OECD/NEAでの国際共同プロジェクトとして、下部ヘッドサンプルの分析が行われた[21]。 | |||
* デブリ取り出し終了後に、下部ヘッドから15個のサンプルが採集され、国外輸送と分析が行われた。 | |||
* 分析の結果、事故時の局所的な最高温度は1100℃であり、ノズル部にクラックが形成されていたが、ヘッド内面のSSライナー内にとどまり、その下の圧力容器バルク層への貫通がなかったこと、などが明らかになった。 | |||
* また、ヘッドサンプルと同時に、<span style="color:blue">'''下部プレナムハードデブリ'''</span>サンプルの輸送と分析が行われた[22]。 | |||
* 下部プレナム底部に堆積していたハードデブリのマトリックスは、UO<sub><small>2</small></sub>-ZrO<sub><small>2</small></sub>の混合二酸化物相であり、Uリッチ相とZrリッチ相への相分離が見られた。このことから、ハードデブリは徐冷されたと推定された。 | |||
* 平均組成は、70wt%-U、13.75wt%-Zr、約3%はSS系の酸化物であった。 | |||
* デブリ内部に形成されていた空孔は、水蒸気をトラップして形成、あるいは、金属蒸気由来と推定された。 | |||
'''<big><span style="color:blue">参考:[[VIP(Vessel Investigation Project)プロジェクト|VIPプロジェクト]]</big>''' | |||
'''<big><span style="color:blue">参考:[[下部プレナムデブリサンプルの分析データ|下部プレナムルースデブリサンプルの分析データ]]</big>''' | |||
'''<big><span style="color:blue">参考:[[下部ヘッドサンプルの分析データ(VIPプロジェクト)|下部ヘッドサンプルの分析データ]](VIPプロジェクト)</big>''' | |||
'''<big><span style="color:blue">参考:[[下部プレナムハードデブリサンプルの分析データ(VIPプロジェクト)|下部プレナムハードデブリサンプルの分析データ]](VIPプロジェクト)</big>''' | |||
== 作業員の訓練 == | |||
=== 建屋エントリーの訓練 === | |||
* 授業方式で、建屋内配置や調査内容の教育が行われた。 | |||
* ついで、TMI-1を用いて、照明のない条件で、実地トレーニングが行われた。仮想的な事故後の様子について作業クルーでイメージが共有された。 | |||
* 現場環境を模して、サンプリング、線量測定、写真撮影などの訓練が行われた。 | |||
* 現在では、ALARA原則(作業員の被ばくは、現実的に実施可能な範囲で、できるだけ抑制すること)は原子力プラントで周知されているが、'''<u>TMI-2事故当時はALARA原則が策定されてわずか3年目だった</u>。''' | |||
* TMI-2の経験は、その後のINPOでの作業者被ばくガイドラインに反映された。 | |||
=== Quick Look調査、ヘッド撤去の訓練 === | |||
* 授業形式で、現場で使用する各機器の仕様、操作方法、設計限界などの教育が行われた。 | |||
* タービン建屋などに、5種類のモックアップ装置が設置され、訓練が行われた。また、TMI-1を用いて、実機同等環境での訓練が行われた[3,9]。 | |||
* 以下の、<span style="color:blue">'''モックアップ装置'''</span>が製作された。 | |||
# CRDMモックアップ(木製+CRDM実機1体): リードスクリュー引き抜き、CCTVカメラ挿入、などの訓練 | |||
# プレナムヘッドモックアップ(ヘッドフランジ実寸、木製+プラスチック製): ヘッド周辺作業、ヘッドの吊り上げ、などの訓練 | |||
# IIFと作業プラットフォームモックアップ(実機同等材+プラスチック製): IIF据え付け、および、各種設備や配管の接続、プラットフォーム上での作業、等の訓練 | |||
# スタッド緩め作業モックアップ(実寸スタッド): ヘッドスタッドの緩め、除染、等の訓練 | |||
# AFHBモックアップ(交換部材使用): 燃料輸送ブリッジの交換、移設、等の訓練 | |||
* これらのモックアップ装置を利用して、Quick Look、コアデブリサンプリング、Topography、ヘッド撤去、プレナム初期リフト、プレナムクリーニング、SWP据え付け、などの各クルーの訓練が行われた。 | |||
* 訓練では、設備の据え付け・運転、吊り上げ準備・撤去作業、予想される不具合への対応、不測の事態への対応、などが行われた。 | |||
* さらに、ポーラークレーンなどの大型機器については、大型機器取り扱い専門家による教育が行われた。 | |||
* 現場作業直前には、ブリーフィングが行われた。 | |||
* これらに、現場作業について、NRCによる許認可を受けた。 | |||
=== 燃料・デブリ取り出しの訓練 === | |||
* SWPのモックアップ装置により、各種作業の訓練が行われた。 | |||
* CBMについては、専用のモックアップ装置が製作され、多層からなる模擬デブリを用いて性能検証試験と訓練が行われた。 | |||
* 燃料取り出しは、NRCからライセンスを受けた原子炉運転員が実施した(各燃料取り扱い技術に習熟、さらに未知のデブリ取り扱い時に予想される被ばくに対応する訓練)。 | |||
* 臨界等に関して、NRCの承認を受けた。 | |||
== 参考文献 == | == 参考文献 == | ||
[1] P.L. Winston, Management of the Three Mile Island Unit 2 Accident Corium and Severely Damaged Fuel Debris, Contribution to International Atomic Energy Agency Coordinated Research Proposal T13015, INL/EXT-21-61607, rev. 2, 2022. | [1] P.L. Winston, Management of the Three Mile Island Unit 2 Accident Corium and Severely Damaged Fuel Debris, Contribution to International Atomic Energy Agency Coordinated Research Proposal T13015, INL/EXT-21-61607, rev. 2, 2022. | ||
| 613行目: | 613行目: | ||
[11] D.C. Wilson et al., TMI-2 Reactor Vessel Plenum Final Lift, GEND-054, 1986. | [11] D.C. Wilson et al., TMI-2 Reactor Vessel Plenum Final Lift, GEND-054, 1986. | ||
[ | [12] J.P. Adams et al., TMI-2 Lower Plenum Video Data Summary, EGG-TMI-7429, 1987. | ||
[13] | [13] V.F. Baston et al., TMI-2 Pyrophoricity Studies, GEND-043, 1984. | ||
[14] D.W. Akers et al., TMI-2 Core Debris-Cesium Release Settling Test, GEND-INF-060, vol. 3, 1984. | [14] D.W. Akers et al., TMI-2 Core Debris-Cesium Release Settling Test, GEND-INF-060, vol. 3, 1984. | ||
[15] | [15] D.E. Falk et al., TMI-2 Defueling System Design Description, GEND-INF-065, 1985. | ||
[16] E.L. Tolman et al., TMI-2 Core Bore Acquisition Summary Report, EGG-TMI-7385, rev. 1, 1987. | |||
[ | [17] D.W. Akers et al., TMI-2 Core Bore Examination, GEND-INF-092, vol. 1 and vol. 2, 1990. | ||
[ | [18] M.L. Russell et al., TMI-2 Core Horseshoe Ring Examination, GEBD-INF-083, 1987. | ||
[ | [19] S.M. Jensen et al., Examination of the TMI-2 Core Distinct Components, GEND-INF-082, 1987. | ||
[ | [20] D.W. Alers et al., TMI-2 Standing Fuel Rod Segments Preliminary Examination Report, GEND-INF-087, 1987. | ||
[ | [21] J.R. Wolf et al., TMI-2 Vessel Integration Project Report, NUREG/CR-6197, 1994. | ||
[ | [22] D.W. Akers et al., Examination of Relocated Fuel Debris Adjacent to the Lower Head of the TMI-2 Reactor vessel, NUREG/CR-6195, 1994. | ||
2026年2月9日 (月) 11:45時点における最新版
TMI-2事故で発生したデブリの最終処分に向けて、IAEAで研究プログラムT13015が提案された。米国アイダホ国立研究所(INL)は、それに対し、TMI-2事故でのRPV内部調査とデブリ取り出しの経緯についてレポートをとりまとめ報告した[1]。このレポートでは、RPV内部調査とデブリ取り出しの経緯がわかりやすく時系列でまとめられている。TMI-2での内部調査の進捗やデブリ取り出しに係る技術開発などは、GENDレポートで時系列的にまとめられているが、炉心下部からの切り株燃料集合体取り出し以降では、技術開発項目の減少に伴って報告内容が減少傾向となっている。従って、むしろ、このレポートでの記述が参考になる場合がある。
TMI-2デブリ貯蔵の現状
TMI-2事故で発生したデブリは、取り出し初期には、様々な長尺ツールを用いたPick-and-Place方式とエアリフトやダイアフラムポンプを用いた真空吸引システムにより、3タイプの収納缶に回収された。しかし、真空吸引システムは、フィルターの詰まりのため、効率的に運用することができなかった。そこで、炉心下部の溶融凝固層を、コアボーリングで破砕した以降は、エアリフトが導入され、粒子状デブリ回収の主力ツールとなった。デブリ取り出し後半には、フィルタータイプの収納缶は冷却水の浄化システムに用いられた。下部プレナムデブリを回収する前に、炉心支持構造物はプラズマアークトーチ(ACES)やコアボーリングマシン(CBM)を用いて解体・撤去された。収納缶は、デブリの構外輸送、中間貯蔵(湿式および乾式)においても、デブリを密閉する容器として利用された。収納缶内には、デブリ輸送や貯蔵中の水素発生の対策として、再結合触媒とベントシステムが取り付けられた。合計で344体(Fuel収納缶268体、Filter収納缶62体、Knockout収納缶12体)が7体ずつ郊外輸送キャスクに装荷され、INELサイトに列車輸送され、プール内に貯蔵された。近年、デブリ収納缶を乾式貯蔵に移行する決定がなされ、加熱条件で収納缶内部の真空吸引処理が行われた。処理された収納缶12体ごとに、乾式貯蔵キャニスターに装荷され、コンクリートで遮蔽された乾式貯蔵エリアに移送された。現在、最終処分に向けた検討が継続している。
最終処分の現状案として、乾式貯蔵キャニスターから個々のデブリ収納缶を取り出し、最終処分に適した標準的な収納缶オーバーパックに詰め替える方式が検討されている。オプションとして、デブリの減容化やガラス固化なども検討されている。
参考:デブリ取り出しツール

RPV内の状態調査(デブリ取り出し前)
事故直後に事故シナリオとRPV内の損傷状態が推定され[2]、それに基づいて、破損燃料の取り出し方法の検討が開始された。当初は、炉心損傷は比較的軽微で、燃料被覆管の酸化度は50%程度で、燃料集合体の形状は炉心中央上部以外では、ほぼ維持されていると推定されていた。そこで、建屋に既設の設備を利用して、通常の燃料交換に基づく方式で、圧力容器ヘッドと上部プレナム構造物の撤去、さらに破損燃料集合体の回収を行うことが基本プランとして検討開始された。これに向けて、圧力容器の上部プレナム領域と燃料集合体の上部端栓付近の調査が優先された。


上部プレナム調査では、まず、圧力容器ヘッド上に取り付けられていた制御棒駆動システム(CRDM)を引き抜いて圧力容器内部を大気開放し、開口部からCCTVカメラをRPV内に挿入する方式が検討された。しかし、作業安全性、放射性物質の飛散防止、作業員の被ばく抑制などの観点で、開口部のサイズをできるだけ小さくすることが要請され、CRDM全体ではなくその内部の制御棒リードスクリューだけを引き抜いて細径CCTVカメラを挿入する方式に変更された(Quick Look調査[3])。Quick Look調査(1982年7月)により、上部プレナム構造物は本来形状を維持し、大きな損傷が見られないことが確認された。そこで、上部プレナム内部の調査(線量分布、機械的強度、付着デブリ、など)を継続し、通常工法(Dry Lift)に基づいた方式で、圧力容器ヘッドと上部プレナム構造物が撤去・貯蔵できるかどうかについて、さらに検討を進めることとされた。この方針に基づき、Underhead Characterizationプログラムが開始され、プレナム構造物内部のビデオ調査、線量分布測定、付着デブリの除去が行われた[4]。さらに、Quick Look調査のために引き抜いたリードスクリューの分析が行われ、構造強度評価のための事故時ピーク温度の評価、付着デブリの特性評価が行われた[5]。
一方、燃料集合体については、炉心中央部から中間部にかけて、上部が大きく破損し崩落していることが明らかになった。炉心上部には約9.3m3の空洞(上部空洞)が形成されており、その下に粒子状や瓦礫状のデブリが堆積していた(上部ルースデブリ、デブリベッド)。そこで、粒子状デブリ、瓦礫状デブリ、破損燃料集合体の取り出し方法や取り出しツールの検討が進められた[6]。また、上部空洞やデブリベッドについて内部調査が継続され、超音波探査による3Dマップと3D模型の作成[7]、探針調査によるデブリベッド深さの測定、等が行われた。さらに、2種類のサンプラーを用いて、炉心中央と炉心中間部で、深さ方向に合計11か所から、上部ルースデブリサンプルが採集され、詳細な分析が行われた[8]。デブリ取り出し工法の検討では、再臨界性、除熱性、取り扱い安全性(放射線対策、水素ガス対策、自然発火可能性)、放射性物質の飛散対策、汚染の広がり抑制、作業員被ばくの抑制、などの観点で、安全性が検討された[4]。デブリ再臨界可能性については、十分な安全裕度を持つために、燃料取り出し中の冷却水中のホウ酸濃度>4350ppmという基準が定められた。デブリ取り出しシステムとしては、粒子状や瓦礫状のデブリを回収するために、長尺ツールを用いたPick-and-Place工法、遠隔ロボット方式の真空吸引工法などが検討された[4]。
これら調査・検討の結果、1984年5月にデブリ取り出し工法が決定された[4]。圧力容器ヘッドは、ポーラークレーンと関連設備、および、貯蔵スタンドを改良し、通常工法に類する方式でDry Liftで撤去し、乾式で貯蔵することに決まった。作業員の被ばく抑制のため、リードスクリューは撤去せず、中間位置まで引き上げて固定し、ヘッドと一体物として撤去することとされた。上部プレナム構造物は、一体物として撤去することは定まったが、Dry Lift可能か、水中作業が必要かの判断はいったん延期された。最終判断のため、初期リフトと最終リフトの2段階工程で撤去することとされた。初期リフトにおいて、上部プレナム構造物を約20cmジャッキアップし、内部調査とデブリ除去作業を行って、最終リフトの工法が決定されることとなった。一方で、燃料デブリの取り出しは、遠隔ロボットによる自動化方式と作業員によるマニュアル方式について検討が進められ、作業信頼性の確保、汚染範囲の抑制、汚染水発生の抑制、作業員被ばくの抑制、等の観点が重視され、マニュアル方式が採用されることとなった[4]。
これらの決定を受けて、1984年7月にヘッド撤去[9]、1984年12月に上部プレナム初期リフト[10]が行われた。初期リフトとそれに続く作業の結果、上部プレナム構造物の撤去はDry Lift方式で行うこと、また、線量が高いため、その貯蔵は湿式で行うこと(通常は乾式)が最終決定された。上部プレナム構造物の貯蔵場所として、燃料移送Canalの最深部が選定され、水位調整や冷却水循環などの設備・システムが設置された。1985年5月に、プレナム最終リフトが行われた[11]。他方、プレナム初期リフトで形成された圧力容器槽の外側を通じたルートを用いて、下部プレナム外周部にCCTVカメラとサンプラーが挿入され、約10-20トンのデブリが堆積していることが確認された[12]。
1985年10月から、デブリ取り出しが開始され、一方で、次段階の内部調査、サンプル採集計画の検討が具体的に進められた(#主に、炉心下部、下部プレナムについて)。
参考:Quick Look調査
参考:圧力容器ヘッド撤去
参考:上部プレナム構造物撤去
参考:下部プレナム調査
Quick Look調査
- 1982年7~8月に、Quick Look調査が行われた[3]。図1に、調査の模式図を示す[4]。小型のCCTVが、制御棒リードスクリューを撤去した後の開口部3カ所(炉心中央、炉心中間、炉心周辺)から挿入された。
- 炉心上部に約1.2m深さの上部空洞が形成され、その下にデブリベッドが堆積していた。SS棒による探針調査が行われ、数10cm侵入すると、ハードストップがあることが確認された。
- 上部格子板の一部には、燃料集合体の上部や上部端栓が残留していた。カメラの作動範囲と光源が不十分で、上部空洞周辺の状態は十分に観察できなかった。
Quick Scan調査
- Quick Look調査に引き続いて、上部プレナム構造物や上部支持格子板周辺の調査(Quick Scan)が行われた。当初は水中カメラで行われ、デブリ取り出しに向けて行われた冷却水水位低下後には大気中で調査が行われた。パノラマ写真撮影が行われ、構造物の損傷状態とデブリの堆積状態が調査された。
- デブリ取り出し開始後も、ビデオ調査は継続的に実施された。


Core Topography調査
- 1983年8月に、上部空洞の形状とデブリ堆積や燃料集合体の残留状態を調査するために、超音波プローブを用いたCore Topography調査が行われた[7]。
- 調査結果に基づいて、上部空洞周辺の3Dマップが描図され(図2(a))、アクリル製の模型が製作された(図2(b))[7]。これらは、初期のデブリ取り出しの工法と手順を決めるために用いられた。
下部プレナム調査
- 1985年2月以降、数回にわたって、コアフォーマ領域と圧力容器槽の間の円環状の隙間を利用して、下部プレナム周辺領域のビデオ調査とデブリサンプリングが行われた[12]。炉心下部支持構造(LCSA)の損傷はほとんど見られないが、約10~20トンのデブリが下部プレナムに堆積していることが明らかになった。
調査時の建屋環境
- これらの初期調査を実施した際の原子炉建屋内の線量は、建屋エントリーレベルでは4.3~1.5 mSv/h、RPVトップレベルでは0.6mSv/hであった。図3に、建屋エントリー開始前と開始後の線量を比較して示す[1]。なお、この時点では、建屋地階に高線量の滞留水が存在していた。
圧力容器ヘッドと上部プレナム構造物の撤去
- デブリ取り出しに向けた最初の関門は圧力容器ヘッドの撤去であった。遠隔でのヘッド撤去と貯蔵に向けて様々な準備作業と訓練が行われた[9]。
- 主な準備作業として、ヘッド貯蔵スタンド周辺の遮蔽、ポーラークレーンでのヘッド移動作業用の遮蔽された制御ブースの整備、モニタリングシステムの設置、一次系冷却水の水位低下、ポーラークレーンの再稼働試験と負荷試験、ヘッド周辺の除染やシール作業、等が行われた[9]。
- 1984年5月に、デブリ取り出し工法とヘッド及びプレナム構造物の撤去方法が最終決定された[4]。燃料移送Canalを水没させず、気中条件(Dry Lift)でヘッドとプレナム構造物を撤去すること、デブリ取り出しは、RPV上に遮蔽付きの作業プラットフォームを設置し、そこからのマニュアル作業により行うこととなった。
- 1984年7月に、ヘッドが撤去され、圧力容器内の水位をかさましするための改良型IIFが設置された[9]。
- ついで、1984年12月に、上部プレナム構造物が約18cmジャッキアップされ、気中での一体物としての撤去が可能かどうか調査と、付着デブリのフラッシング、ぶら下がりデブリの除去作業が行われた[10]。
- 1985年5月に、上部プレナム構造物の気中工法での撤去が行われ、上部プレナム構造物は、Canal最深部に貯蔵された[11]。移動の途中に、上部格子板の底部の損傷状態が確認された(図4)[4]。
- ヘッドと上部プレナム構造物が撤去されることで、圧力容器内部を直接観察できるようになり、より詳細に破損状態が確認できるようになった。炉心周辺に残留していた燃料集合体については、うち2体のみがほぼ90%本来形状を維持していたが、残りは大きく損傷していた(図5)[1]。


参考:デブリ取り出し工法の変遷
参考:圧力容器ヘッド撤去
参考:上部プレナム構造物撤去
上部ルースデブリとリードスクリューのサンプル採集と分析
- リードスクリューは、Quick Look調査の準備作業において3本が回収され、そのうち、炉心中央(H8位置)と炉心外周(B8位置)に対応した2本の分析が、複数の研究機関の協働で行われた[5]。
- 母材の微細組織観察により、プレナム構造物の事故時のピーク温度が評価され、ピーク温度は構造材の融点より400℃以上低く、機械的強度は維持されていると推定された。
- 一方で、上部格子板の底面では、一部損傷・溶融の痕跡が見られ、上部格子底面付近で大きな温度勾配が発生していたことが推定された。
- 付着デブリについては、付着状態や除染性の確認、付着デブリ中のFPや核物質量の評価、が行われた。付着デブリは表面近くのルース層と母材に近い固着層に成層化しており、ルース層は機械的に除去可能だが、固着層は酸に難溶性で除染しにくいことが確認された。付着デブリの主成分は構造材と制御材のAg-In-Cdであり、核物質と揮発性FP成分は、保守的に見積もっても、初期インベントリの0.1%以下と評価された。
- さらに、事故時に上部プレナムに金属Zrや水素化物の微粒子が移行して付着した可能性が指摘され、これらの物質は、大気に曝されると自然発火する可能性が懸念されたため、自然発火性の確認試験が行われた。実デブリを用いた熱分析試験、粒度分布の測定、微細組織の観察、組成分析などにより、自然発火可能性を有する物質はほとんど含有されておらず、その可能性は極めて低いと結論された。一方で、採集されたサンプルが必ずしも付着デブリを完全に代表しているわけではないことが指摘された[5,13]。
- 上部プレナム構造物の付着デブリサンプルを用いて、基本的なサンプル溶解手法と分析フローについての検討が行われ、硝酸やフッ酸への溶解性調査や、不溶解残差のアルカリ溶融処理技術の実用性検証が行われた。
- 1983年9~10月と1984年5月に、クラムシェル型と回転式の探査棒型のサンプリングツールを用いて、炉心中央(H8位置)と炉心中間部(E9位置)において、上部ルースデブリのサンプリングが行われた(合計11カ所)。
- 図6に、サンプリング位置の模式図を示す[4]。合計で1.37kgのサンプルが回収され、INELで分析が行われた[8]。
- デブリ取り出しツールの設計の観点では、数100gの実デブリを用いて、デブリの平均密度と粒度分布が測定された[8]。
- デブリ粒子のサイズは、大半が約30μmから6mmの範囲であった。そのうち、1~4mm範囲の粒子が全体重量の90%を占めていた。粒子タイプはおよそ5群に類型化され、破損燃料ペレット、破損被覆管、溶融凝固したUとZrの混合酸化物、金属粒子、燃料成分と構造材の混合酸化物に分類された。
- また、デブリ粒子中に金属Zrや水素化物の微粒子が混入している可能性があることから、自然発火可能性がないことを確認するために、数100gの実デブリを用いて網羅的な検証試験が行われた[13]。一部のデブリサンプルを用いて、デブリ取り出し作業中にデブリ破砕した場合のCs放出試験も行われた[14]。
- これらの結果から、デブリ粒子が破砕されても、ほとんど追加のCs放出が起こらないこと、デブリの自然発火可能性は極めて低いこと、が示された。
- 事故進展解析の観点では、FPふるまいとデブリ中の残留率を評価するため、酸溶解したサンプルの化学・放射化学分析が行われた。
- 炉心物質については、ICP発光分析が行われ、Ag,Al,B,Cd,Cr,Cu,Fe,Gd,In,Mn,Mo,Ni,Nb,Si,Sn,U,Zrの存在割合が測定された。FPのうち、TeについてもICP発光分析が行われた。
- FPについては、高揮発性(I-129,Cs-134,Cs-137)、中揮発性(Sr-90,Ru-106,Sb-125)、低揮発性(Ce-144,Eu-154,Eu-155)に分けて、重要核種が抽出され、γ線分光分析が行われた。分析結果は、それぞれの核種について、Uに対する割合として整理され、FP保持率として評価された[8]。
- あわせて、X線回折により結晶構造が、金相顕微鏡と走査型電子顕微鏡により、微細組織が調査された。これらのデータは、事故時のデブリふるまい(酸化進展、炉心物質の相互作用)の推定に用いられた
- デブリふるまいの観点では、デブリの酸化度が重要なデータになるが、(U,Zr)O2±x相の酸化度について、オージェ分光分析により測定された。
- これらの分析により、上部ルースデブリの主成分は溶融凝固したUO2とZrO2の混合物であり、一部にUO2の溶融凝固物が含まれていることがわかった。これらの微細組織から、事故時のピーク温度は約2810K以上(局所的に3120K以上)と評価された。この他に、構造材の金属成分あるいは酸化物成分が含まれていた。
燃料・炉心デブリの回収(デブリ取り出し初期、上部ルースデブリベッドについて)
- 燃料・炉心デブリ取り出し工法やツールの開発に向けて、最初の事故炉内部の推定が行われた(GEND-007)[2]。
- Quick Look調査[3]により、炉心上部には粒子状のデブリと瓦礫状のデブリが堆積していることが明らかになった。
- これらの知見に基づいて、遠隔ロボット方式とマニュアル方式のそれぞれで、シリンダーやホースを用いた真空吸引、フレキシブルフィルターの回収システム、ドライ工法での回収システム、等が検討された[6]。
- 遠隔ロボット方式では、燃料輸送ブリッジに2基の伸縮式の配管を取り付け、デブリ近傍の吸入口をCCTVで観察つつ、粒子デブリを回収する概念が検討された[6]。
- マニュアル方式では、RPV上部に回転式の作業プラットフォームを設置し、そこに開口スロットを設けて長尺ツールを挿入し、Pick-and-Place方式と真空吸引方式で、デブリを回収する概念が検討された[6]。
- オプションとして検討された、フレキシブルフィルター回収システムでは、X-Yブリッジと伸縮配管を装荷し、円錐形の膜の上で、分離タンク、サポートアーム、収納缶、マニピュレータ、バケツなどを使用する方式であった。同じくオプションとして検討されたドライ工法では、トップフランジにシールドリングをとりつけ、大気雰囲気の重遮蔽キャスク内に、デブリを装荷して構内輸送することが検討された。
- 遠隔ロボット方式とマニュアル方式の比較検討が行われ、遠隔ロボットシステムの欠点として、燃料輸送Canal全体を水没させるため、高汚染範囲が広がること、また汚染水の物量が増加することが指摘された。また、自動化のための複雑なシステムを導入することで、デブリ破砕やサイズ調整のためのツール開発に時間を要すること、高コストが予想されること、信頼性が十分でないことなどが指摘された。作業員の被ばく低減の観点では、燃料輸送Canal全体を水没させた場合、比較的空間線量の大きい建屋内上層階での作業になること、信頼性が十分でないロボットを用いるとメンテナンス頻度が増え、作業員被ばくがかえって増加することなどが指摘された。
- 1984年5月に、最終技術レビューが行われ、マニュアル方式が採用された[1]。また、遠隔自動ツールについては、成熟した技術として開発が間に合えば、必要に応じて現場投入することとされた[6]。(#ROSAやMANFREDと言ったロボットアームが開発されたが、結局、現場適用されなかった。)

図7(a) 初期の炉心デブリ取り出し概念 [1] マニュアル方式が採用されたことで、圧力容器内での作業用に水位を上げるために改良型IIFが設計・製作された[1]。また、遮蔽付きの回転作プラットフォーム(SWP)が設計・製作された。図7(a)(b)に、マニュアル工法での燃料・炉心デブリ回収概念とSWPの外観を示す[1]。SWPの開口スロットから長尺ツールを挿入し、拾い上げたデブリをバスケットに回収し、さらに収納缶へ装荷する方式である。収納缶がデブリで満載となったら、SWP上に吊り上げ、表面をフラッシングする。
図7(b) 遮蔽付き回転作業プラットフォーム(SWP)[1] 図8に、収納缶の輸送と一時貯蔵、さらに構内輸送の構想を示す[1]。収納缶輸送のために、通常の燃料交換システムが改良された。収納缶は、遮蔽キャスクで囲って、収納缶輸送ブリッジを用いて、燃料移送Canal最深部に移送される。そこで、横倒しにされ、燃料取り扱い建屋にある燃料貯蔵プールに一時貯蔵される。その後、構外輸送キャスクに装荷されて、INELに輸送された。
図8 デブリ収納缶取り扱い概念 [1]
デブリ取り出し長尺ツール
20種類以上のデブリ取り出し用の長尺ツールが設計・製作された[15]。ウォータージェットカッター、アブレイシブソー、ボルトカッター、ベールカッター、フック、プライアー、クラムシェルツール、スペードバケツ、スパイクツール、グリッパー、等が試作され、モックアップ試験を経て、現場投入された。図9に、長尺ツールの例を示す[1]。
図9 長尺ツールの例 [1] - Pick-and-Place方式では、スクープ、プライア、フックタイプのツールを用いて、瓦礫状のデブリが回収された。拾い上げたデブリは、デブリバスケットやデブリバケツにいったん回収し、漏斗ツールを利用して内容物をFuel収納缶内に装荷された。ロードセルで、収納缶重量変化が確認された。
上部ルースデブリの回収
- 1985年10月に、RPV内でのデブリ取り出しの準備作業が開始された。収納缶位置決めシステムを装荷するための作業空間を形成するため、デブリベッド上に崩落していた上部端栓やスパイダーが撤去、あるいは移動された。
- 1985年12月から、主にスペード型のバケツツールを使ってデブリ粒子の回収が開始された。作業開始後すぐに、微生物発生による水質悪化が発生し、1986年2月にほぼブラインド条件での作業となった。回収されたデブリは、主にFuel収納缶に装荷された。この作業は、1986年4月まで継続された。
ついで、すくいきれなかった粒子デブリは、10cm径のパイプで真空吸引して回収された。図10に、真空吸引システムの模式図を示す[1]。吸引したデブリは、ペレットサイズ以上のものはKnockout収納缶へ、それ以下のものはFilter収納缶へ回収された。しかし真空吸引システムでは、デブリ粒子によるつまり対策が課題となった[1]。
図10 デブリ真空吸引システムの構成と模式図 [1] - 上部ルースデブリがほぼ回収され、ハードストップにぶつかった段階で、打撃チゼルでの破砕を試したが、これを破ることはできなかった。
参考:デブリ取り出しツール
ボーリング調査とデブリ破砕作業
- 1982~1983年にかけて実施されたQuick Look調査や下部プレナム調査の結果に基づき、炉心下部に溶融凝固デブリや切り株燃料が成層化していると推定された。成層化状態を調査するために、一般の鉱山作業で利用されているボーリング装置を改良して、ボーリング調査が行われた(1986年7月)。
- 装置開発において、まず先端ビットの選定が行われ、様々な候補材の中から、想定される様々な物質(ルースデブリ、溶融凝固セラミック、溶融凝固金属、切り株燃料棒、など)を掘削可能な王冠型のタイプが選定された(図11)[1]。

- 次に、実寸大のモックアップ試験装置を用いて、模擬の燃料集合体、ルースデブリ、金属、セラミックを使用して、機能確認試験が行われた[16]。
- その結果、ドリル回転速度(最大500rpm)、トルク(最大4067 Nm)、垂直荷重(最大4535kg)などの実機使用条件の範囲が選定された。
- 図12に、ボーリング装置の設置模式図を示す[1]。先端部分は二重管構造になっており、外側管(89mm外径)がガイドとなって掘削孔を保持し、内側管(63.5mm外径)が回転してボーリングサンプルを回収する構造であった。
- 掘削先端には、ポンプでホウ酸水を注入することで、冷却と掘削チップの除去が行われた。

- 先端のケーシングは、3.35m長で、その内部にボーリングサンプルを回収し、Fuel収納缶に装荷できるように構成されていた。
- ボーリング装置は、ドリルユニットのヘッドから油圧スピンドルと油圧ストリングで先端ビットにトルクと荷重を負荷する方式であり、ドリルユニットは専用のプラットフォームの上に設置された。プラットフォームを水平移動させることで、炉心中央から2.4m径の範囲を掘削することができた。
- 1986年7月に10本のボーリング調査が行われ、うち、9本でサンプルが回収された。さらに、3本はLCSAを貫通して下部プレナムに到達した(図13)[1]。

- ボーリング孔を利用して、炉心中央から下部にかけての成層化状態、LCSAの損傷とデブリの堆積状態、下部プレナムの状態が観測された。
- ボーリングサンプルの分析が行われ[17]、上部クラスト層、下部クラスト層、周辺クラスト層、溶融凝固層、切り株燃料集合体の成層化状態や分布が明らかにされた(図14)[1]。

- ボーリング調査により、事故後の原子炉圧力容器内の最終形態の推定図がほぼ確定した(図15)[1]。
- #なお、後述する下部プレナム底部のハードデブリの分析において、デブリ底部と下部ヘッドの間に、核物質をほとんど含まない金属系の炉心物質が先行崩落し、堆積していた可能性が指摘された。結局この事象は、検証されていない。炉心部での最初のデブリ崩落の際に発生した金属デブリ粒子が、冷却水中で下部プレナム底部まで移行し約15cmほど堆積した可能性等が指摘された。


- ボーリングサンプルの分析により、溶融凝固層と周囲のクラスト層、及び切り株燃料中の炉心物質とFPの分布が評価された(表1、表2)[17]。
- ボーリング調査が行われた後すぐに、コアボーリングマシン(CBM)の先端を固体ビットに交換し、1986年10月に409回の掘削が行われた。これにより、炉心中央下部の溶融凝固層とクラスト層が破砕された。
- 溶融凝固層の破砕作業においても、微生物による冷却水透明度悪化と、デブリ微粒子による冷却水浄化系のつまりが課題となった。
- デブリ破砕処理後に、水質改善作業が行われた。この際に、部分的にしか破砕されていないリング状の構造物(約1.2トン、馬蹄形リング構造)が発見された。これを長尺ツールで除去するのは困難であり、デブリの上に崩落していたため、打撃チゼルでの破砕も困難であった。そこで、肉厚の漏斗型治具を製作して、Fuel収納缶上にとりつけ。そこに拾い上げて、その中で打撃破砕することで回収された。
- 馬蹄形リング構造については画像調査のみが行われた[18]。
- 破砕された溶融凝固層に対する真空吸引システムとPick-and-Place方式での回収作業は、1986年後半から1987年中盤まで行われ、合計で14.5トンの粒子デブリと瓦礫デブリが回収された。
- 1987年後半以降の粒子デブリ回収では、エアリフトが使用された(図16)[1]。
参考:デブリ取り出しツール
参考:コアボーリング調査
| 炉心物質の分布 | 燃料棒成分 | 制御棒成分 | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| U | Zr | Sn | Ag | In | Cd | ||
| 上部プレナム付着 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | 1.0 | <0.1 | <0.1 | |
| 上部ルースデブリ | 24 | 13 | <0.1 | 1.8 | <0.1 | <0.1 | |
| 上部クラスト | セラミック相 | 1.3 | 1.2 | 2.3 | 1.2 | 3.6 | 0.65 |
| 金属相 | ~0 | 0.3 | 6.1 | 2.4 | 3.3 | 0.39 | |
| 溶融凝固層 | セラミック相 | 12 | 18 | ~0 | 10 | 27 | 6.1 |
| 金属相 | ~0 | 0.2 | 5.8 | 1.6 | 2.1 | 1.1 | |
| 下部クラスト層 | セラミック相 | 3.6 | 2.8 | 9.3 | 7.3 | 7.2 | 1.4 |
| 金属相 | ~0 | 5.6 | 26 | 11 | 16 | 2.9 | |
| 形状を維持した燃料集合体
(上部ぶら下がり、周辺、切り株) |
33 | 33 | 33 | 11 | 11 | 11 | |
| 下部プレナムデブリ | 15 | 11 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | |
| LCSA堆積デブリ | 4.6 | 3.3 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | |
| UCSA堆積デブリ | 3.3 | 2.4 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | |
| 合計 | 97 | 91 | 82 | 47 | 70 | 23 | |
| FPの分布 | 低揮発性FP | 中揮発性FP | 高揮発性FPと希ガスFP | |||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Ce-144 | Eu-154 | Eu-155 | Sr-90 | Ru-106 | Sb-125 | Cs-137 | I-129 | Kr-85 | ||
| ex-vessel | ||||||||||
| 原子炉建屋
(雰囲気、地階、タンク群) |
0.01 | ~0 | ~0 | 2.1 | 0.5 | 0.7 | 47 | 47 | 54 | |
| RCS系冷却水 | ~0 | ~0 | ~0 | 1 | ~0 | 0.2 | 3 | 1 | ~0 | |
| 補助建屋
(滞留水、冷却水浄化系、タンク群) |
~0 | ~0 | ~0 | 0.1 | ~0 | 0.7 | 5 | 7 | ~0 | |
| In-vessel | ||||||||||
| 上部ルースデブリ-A
(炉心中央サンプルの分析値に基づく評価) |
26 | 30 | 24 | 23 | 14 | 13 | 5.3 | 5.9 | 6 | |
| 上部ルースデブリ-B
(デブリベッド底部サンプルの分析値に基づく推定) |
20 | 19 | 19 | 19 | 16 | 24 | 4.3 | 3.3 | ~0 | |
| 上部クラスト | セラミック相 | 1.4 | 2.0 | 1.6 | 0.73 | 0.8 | 0.5 | 0.41 | 0.27 | ~0 |
| 金属相 | <0.1 | 3.8 | 7.8 | |||||||
| 溶融凝固層 | セラミック相 | 24 | 32 | 22 | 8.3 | 2.2 | 3.1 | 0.77 | 2.1 | ~0 |
| 金属相 | <0.1 | 9.0 | 6.9 | |||||||
| 下部クラスト層 | セラミック相 | 5.9 | 7.9 | 5.1 | 4.5 | 5.7 | 7.4 | 1.4 | 3.5 | ~0 |
| 金属相 | ~0 | 24 | 36 | |||||||
| 形状を維持した燃料集合体
(上部ぶら下がり、周辺、切り株) |
30 | 30 | 30 | 30 | 30 | 30 | 30 | 30 | 30 | |
| 下部プレナムデブリ | 16 | 21 | [NA] | 18 | 1.1 | 1.0 | 2.1 | 0.54 | ~0 | |
| LCSA堆積デブリ | 4.7 | 6.3 | [NA] | 5.3 | 0.32 | 0.30 | 0.63 | 0.16 | ~0 | |
| UCSA堆積デブリ | 3.4 | 4.5 | [NA] | 3.9 | 0.23 | 0.22 | 0.46 | 0.12 | ~0 | |
| 合計 | 105 | 122 | 110 | 93 | 94 | 119 | 95 | 97 | 91 | |
#Eu-155については、下部プレナム、LCSA、UCSAについて分析が行われていない。Ce-144の分析値を参考に分布が推定された。
形状維持した燃料棒の採集と分析
- 1985年10月から、初期の燃料・デブリ取り出し作業が開始された(デブリベッド上に崩落していた上部端栓等の撤去)。
- 上部端栓のうち14個が上部格子板に固着・融着しており、そのうち4個は脱離できなかった。
- 上部プレナム構造物の付着・堆積デブリのフラッシングが行われた。
- デブリ取り出し前に、デブリベッドの上に崩落していた110個の上部端栓と制御棒や可燃性毒物スパイダーの破砕物が回収された。
- これらは、5体の一部形状を維持した燃料集合体(上部)と共に18体のFuel収納缶に回収され、INELに輸送された。
- INELのTANホットセルで収納缶が開封され、写真撮影、中性子ラジオグラフィー、γ線分光分析が行われた。
- 上部格子板からぶら下がっていた燃料集合体上部サンプルのうち2体について(図5参照)、主に事故進展解明の目的で詳細分析が行われた[19]。分析結果に基づいて、上部端栓周辺の事故時ピーク温度と分布、損傷・溶融程度や損傷メカニズム、酸化程度の分布、などの評価が行われた。集合体1体の中でも、損傷状態や酸化度に大きな変化が見られた[18]。
- 炉心周辺に残留していた燃料棒については、簡易分析が行われた[20]。燃料棒のうち、形状を維持している部分については、一般的な使用済み燃料とほとんど変わらないことが確認された(FPはほぼ保持され、ペレットの形状が維持されていた)。
参考:一部形状を残していた燃料集合体上部サンプルの分析データ
切り株燃料の回収、LCSA/UCSAの解体、下部プレナムデブリの回収
破砕デブリの回収
- 溶融凝固層をボーリング装置で破砕した後に、比較的大型のデブリはPick-and-Place方式で(図9参照)、粒子状デブリはエアリフトで回収された。
- エアリフトでは、ノズル先端にガスバブルを注入して気液混合相を形成させ、稠密な水相との比重差により、気液混合相が細管内を上昇する力で、ノズル先端からデブリ粒子を吸引する。細管の上部は分離チャンバーになっており、流速を低下させることで気体、液体、固体の分離が行われる。ガス相は、装置の上部から排気され、液相は冷却水に還流される。粒子デブリは、分離チャンバー底部に堆積し、斜めになった底面を移動して、デブリバスケット内で回収される。デブリバスケットはそのまま収納缶に装荷される。
- エアリフトは化学毒性、放射性毒性の高い物質を扱うプラントで利用されており、フィルター部がないためにつまりが起こりにくく、また、機械的な動作部位が少ないため、メンテナンスが容易なシステムとして導入された。
切り株燃料集合体、炉心周辺燃料集合体の回収
- 溶融凝固層デブリ回収後のターゲットは、切り株燃料集合体と周辺燃料集合体であった。そのうち、何体かは相互に融着していた。また、何体かの燃料集合体では、下部端栓が歪んでおり、機械的に引き抜くことが困難であった。
- スペーサグリッド、インコアモニター、下部端栓、下部格子グリッドなどの構造材は、高圧水フラッシングや打撃処理により、できるだけ燃料成分と分離して回収された。回収された構造材はハンフォードサイトに輸送され、低レベル廃棄物として埋設処分された。
- 燃料集合体の大部分は、長尺ツールで引き抜き回収された。上部に、吊り上げ治具をネジ込んで引っ張り上げながら、たがね型のこじ開けツールで集合体を互いに傾けて引きはがす作業が行われた。引きはがした後の燃料集合体底部をツーフィンガーツールでひっかけあげることで、切り株燃料集合体が引き上げられた。
- 集合体のうち2体はひどく破損して、構造材に融着しており、1987年11月に、LCSA解体作業の一環として回収された。
- 切り株燃料のすきまに堆積していた粒子状デブリは、下部プレナムに叩き落とす、あるいは、エアリフトで回収された。
LCSAの解体・撤去
- 切り株燃料集合体の回収後に、LCSA以下を目視できるようになった。
- LCSA以下からのデブリ取り出しについて、初期に計画された案では、LCSAのフローホールなどの開口部から吸引ノズルを挿入してデブリ回収する方式が検討されていた。しかし、炉心部からの切り株燃料やデブリ取り出し後のビデオ調により、炉心部での作業(CBMでの破砕、切り株燃料集合体の引き抜き、など)により、燃料棒形状を一部維持したものや大きめの瓦礫状のもの、など、様々な形状のデブリが、LCSAの5層構造の隙間や下部プレナムに移行・崩落・堆積していることが確認された。
- LCSAは、約3m径で最大で90cmの厚みのある頑丈な5層構造の構造物であり、縦方向に支持ポストやインコアモニター案内管が接続されていた(図17)[12]。

- そこで、LCSAの中央部を切断・解体して、大きな開口部を形成し、デブリを回収するプランに変更された。
- いくつかのLCSA切断・解体オプションが検討され、プラズマアークによる切断方法が採用されることとなった。
- プラズマアーク方式での大きな課題は、水深12mのホウ酸水中での作業となることであり、トーチの寿命、漏電、微粒子対策などが課題となった。また、LCSAに大きな開口部を作るには1000回近くの切断作業が必要と評価された。
- プラズマトーチによる切断システム(ACES)が開発され、LCSA上にX-Yブリッジをとりつけて、プラズマトーチを移動する方式が採用された(図18)[12]。ACES実装までに、再臨界性の維持、水素発生対策、Zrの自然発火可能性の検討、下部ヘッドの破損防止、汚染の拡散防止、等の課題について、安全評価と対策が行われた。

- 1988年1月から開始された、LCSA切断・解体・撤去作業では、5層構造が上から順に処理されることとなった。
- まず、効率的に切断・解体を進め、作業員の被ばくを抑制するために、ACESでの切断作業前に、CBMを再装荷して、インコアモニター案内管(52本)と支持ポスト(48本)を掘削・分離するプランが採用された。CBMの先端ビットとして、金属プレート掘削用のトレパニングタイプと、酸化物デブリ掘削用のJunkmillタイプが用いられた(図19)[1]。

- 切削くずの除去が課題となり、インコア案内管を全部掘削することはできなかった。しかし、CBMにより、第一層は13個に分割され、撤去された。
- あらかじめ、貯蔵場所として、Core Flood Tank-Aが改造されて準備されており、そこに移送された。
- 1988年6~7月に、第2層を4個に分割する作業が行われた。付着デブリによるトーチの漏電が課題となり、トーチ制御方式が再設計された。
- 1988年8~12月に行われた、最も分厚い第3層(34cm厚さ)の切断・解体・撤去では、縦方向切断には機械的なソーが併用された。
- 1988年12~1989年2月に、第4層が4つに解体・撤去された。
- 1989年2~4月に、第5層が26個に解体・撤去された。
- これらの作業でのオプション技術として、MANFRED(Multi-axis Dual-arm)システムが設計された。#しかし、複雑な仕組みで、除染作業が多くなるという理由で、実装されなかった。
下部プレナムデブリの回収、UCSAの撤去

- 次に、下部プレナムのルースデブリが、主にエアリフトによって回収された。
- 図20に、この段階での圧力容器内の模式図を示す[1]。圧力容器側面のバッフル板を撤去して、コアフォーマ領域のデブリ回収に着手する前に、ここまでの作業で下部プレナムに移行・堆積したデブリ取り出しが必要になった。
- 1989年5月に、長尺ツールのグリッパー、スクープ、トングを利用したPick-and-Place方式とエアリフトにより、12.4トンの下部プレナムデブリが回収された。この過程で、下部プレナムデブリの実際の物量が計測された。
- 下部プレナムの中央部には、約60cm厚さでハードデブリが堆積していたが、もろかったので打撃ハンマーで破砕された。
- LCSAの周辺残留部への付着・堆積デブリが約3トン、UCSAのコアフォーマ領域への残留デブリが約4トンと推定された(図20)[1]。
- プラズマトーチにより、4m長さのバッフル板が8枚に分割され撤去された。撤去前に付着デブリのフラッシングが行われた。デブリの回収とフラッシングには、エアリフトとCAVIJETが使用された。
- ここまでの作業により、コアフォーマ領域から4218kg、LCSA周辺部から2903kg、下部プレナム中央から3946kgと下部プレナム周辺から12383kgのルースデブリ、下部プレナム中央から6804kgのハードデブリ、これらの合計として30254kgが回収された。
- 燃料と炉心デブリの取り出し作業、および、最終クリーニングにより、炉心デブリの99%以上が回収された。
参考:デブリ取り出しツール
参考:デブリ取り出し工法の変遷
VIP計画
- TMI-2での事故進展過程が明らかになると、デブリが下部プレナムに移行した後で、圧力容器ヘッドが破損するまでの裕度と下部プレナムでのデブリふるまいの理解が、事故時の安全性に係る重要な評価項目となった。
- NRCがスポンサーとなって、OECD/NEAでの国際共同プロジェクトとして、下部ヘッドサンプルの分析が行われた[21]。
- デブリ取り出し終了後に、下部ヘッドから15個のサンプルが採集され、国外輸送と分析が行われた。
- 分析の結果、事故時の局所的な最高温度は1100℃であり、ノズル部にクラックが形成されていたが、ヘッド内面のSSライナー内にとどまり、その下の圧力容器バルク層への貫通がなかったこと、などが明らかになった。
- また、ヘッドサンプルと同時に、下部プレナムハードデブリサンプルの輸送と分析が行われた[22]。
- 下部プレナム底部に堆積していたハードデブリのマトリックスは、UO2-ZrO2の混合二酸化物相であり、Uリッチ相とZrリッチ相への相分離が見られた。このことから、ハードデブリは徐冷されたと推定された。
- 平均組成は、70wt%-U、13.75wt%-Zr、約3%はSS系の酸化物であった。
- デブリ内部に形成されていた空孔は、水蒸気をトラップして形成、あるいは、金属蒸気由来と推定された。
参考:VIPプロジェクト
参考:下部ヘッドサンプルの分析データ(VIPプロジェクト)
参考:下部プレナムハードデブリサンプルの分析データ(VIPプロジェクト)
作業員の訓練
建屋エントリーの訓練
- 授業方式で、建屋内配置や調査内容の教育が行われた。
- ついで、TMI-1を用いて、照明のない条件で、実地トレーニングが行われた。仮想的な事故後の様子について作業クルーでイメージが共有された。
- 現場環境を模して、サンプリング、線量測定、写真撮影などの訓練が行われた。
- 現在では、ALARA原則(作業員の被ばくは、現実的に実施可能な範囲で、できるだけ抑制すること)は原子力プラントで周知されているが、TMI-2事故当時はALARA原則が策定されてわずか3年目だった。
- TMI-2の経験は、その後のINPOでの作業者被ばくガイドラインに反映された。
Quick Look調査、ヘッド撤去の訓練
- 授業形式で、現場で使用する各機器の仕様、操作方法、設計限界などの教育が行われた。
- タービン建屋などに、5種類のモックアップ装置が設置され、訓練が行われた。また、TMI-1を用いて、実機同等環境での訓練が行われた[3,9]。
- 以下の、モックアップ装置が製作された。
- CRDMモックアップ(木製+CRDM実機1体): リードスクリュー引き抜き、CCTVカメラ挿入、などの訓練
- プレナムヘッドモックアップ(ヘッドフランジ実寸、木製+プラスチック製): ヘッド周辺作業、ヘッドの吊り上げ、などの訓練
- IIFと作業プラットフォームモックアップ(実機同等材+プラスチック製): IIF据え付け、および、各種設備や配管の接続、プラットフォーム上での作業、等の訓練
- スタッド緩め作業モックアップ(実寸スタッド): ヘッドスタッドの緩め、除染、等の訓練
- AFHBモックアップ(交換部材使用): 燃料輸送ブリッジの交換、移設、等の訓練
- これらのモックアップ装置を利用して、Quick Look、コアデブリサンプリング、Topography、ヘッド撤去、プレナム初期リフト、プレナムクリーニング、SWP据え付け、などの各クルーの訓練が行われた。
- 訓練では、設備の据え付け・運転、吊り上げ準備・撤去作業、予想される不具合への対応、不測の事態への対応、などが行われた。
- さらに、ポーラークレーンなどの大型機器については、大型機器取り扱い専門家による教育が行われた。
- 現場作業直前には、ブリーフィングが行われた。
- これらに、現場作業について、NRCによる許認可を受けた。
燃料・デブリ取り出しの訓練
- SWPのモックアップ装置により、各種作業の訓練が行われた。
- CBMについては、専用のモックアップ装置が製作され、多層からなる模擬デブリを用いて性能検証試験と訓練が行われた。
- 燃料取り出しは、NRCからライセンスを受けた原子炉運転員が実施した(各燃料取り扱い技術に習熟、さらに未知のデブリ取り扱い時に予想される被ばくに対応する訓練)。
- 臨界等に関して、NRCの承認を受けた。
参考文献
[1] P.L. Winston, Management of the Three Mile Island Unit 2 Accident Corium and Severely Damaged Fuel Debris, Contribution to International Atomic Energy Agency Coordinated Research Proposal T13015, INL/EXT-21-61607, rev. 2, 2022.
[2] D.W. Croucher, Three Mile Island Unit-2 Core Status Summary: A Basis for Tool Development for Reactor Disassembly and Defueling, GEND-007, 1981.
[3] Quick Look Inspection: Report on the Insertion of a Camera into the TMI-2 Reactor vessel through a Leadscrew Opening, GEND-030, vol. 1, 1983.
[4] W.C. Holton et al., The Cleanup of Three Mile Island Unit 2, A Technical History: 1979 to 1990, EPRI-NP-6931, 1990.
[5] K. Vinjamuri et al., Examination of H8 and B8 Leadscrews from Three Mile Island Unit 2 (TMI-2), GEND-INF-052, 1985.
[6] TMI-2 Defueling Tools Engineering Report, GEND-INF-073, 1986.
[7] L.S. Beller and H.L. Brown, Design and Operation of the Core Topography Data Acquisition System for TMI-2, GEND-INF-012, 1984.
[8] D.W. Akers et al., TMI-2 Core CDebris Grab Samples -Examination and Analysis, GEND-INF-075-PT1 and PT2, 1986.
[9] P.R. Bengel et al., TMI-2 Reactor Vessel Head Removal, GEND-044, 1985.
[10] M.W. Ales et al., Equipment for Removal of the TMI-2 Plenum Assembly, GEND-INF-051, 1984.
[11] D.C. Wilson et al., TMI-2 Reactor Vessel Plenum Final Lift, GEND-054, 1986.
[12] J.P. Adams et al., TMI-2 Lower Plenum Video Data Summary, EGG-TMI-7429, 1987.
[13] V.F. Baston et al., TMI-2 Pyrophoricity Studies, GEND-043, 1984.
[14] D.W. Akers et al., TMI-2 Core Debris-Cesium Release Settling Test, GEND-INF-060, vol. 3, 1984.
[15] D.E. Falk et al., TMI-2 Defueling System Design Description, GEND-INF-065, 1985.
[16] E.L. Tolman et al., TMI-2 Core Bore Acquisition Summary Report, EGG-TMI-7385, rev. 1, 1987.
[17] D.W. Akers et al., TMI-2 Core Bore Examination, GEND-INF-092, vol. 1 and vol. 2, 1990.
[18] M.L. Russell et al., TMI-2 Core Horseshoe Ring Examination, GEBD-INF-083, 1987.
[19] S.M. Jensen et al., Examination of the TMI-2 Core Distinct Components, GEND-INF-082, 1987.
[20] D.W. Alers et al., TMI-2 Standing Fuel Rod Segments Preliminary Examination Report, GEND-INF-087, 1987.
[21] J.R. Wolf et al., TMI-2 Vessel Integration Project Report, NUREG/CR-6197, 1994.
[22] D.W. Akers et al., Examination of Relocated Fuel Debris Adjacent to the Lower Head of the TMI-2 Reactor vessel, NUREG/CR-6195, 1994.