コアボーリングサンプルの分析データ

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 ここでは、コアボーリング調査[1]で採集されたサンプルの分析結果[2]をまとめる。コアボーリング調査は、Accident Evaluation Program(AEP)の一環として、炉心下部の成層化状態を調査するために提案され[3]、1986年7月から8月にかけて実施された。鉱山探査用の市販装置に改良がくわえられ、コアボーリング装置が設計・製作された[4]。炉心中央部2か所、炉心中間領域2か所、炉心外周部6か所でボーリングが行われ、約6.3cm径、全長約2mのボーリングサンプルが9個採集された(図1)[2]。K6位置では、原因不明だが、サンプルが採集できなかった。10か所の開口部にはビデオカメラが挿入され、成層化状態の調査が行われた[1]。さらに、10か所のボーリング孔のうち、3か所ではLCSAを貫通して下部プレナムに到達し、下部プレナム堆積デブリのサンプリングと調査が行われた[1]。回収されたボーリングサンプルは、全長にわたってモザイク写真撮影、かさ密度測定、重量測定、が行われ、微細組織観察や化学・放射化学分析用のサンプルが分取された。全サンプル重量は130.5kgであり、うち、形状を維持した燃料棒が115.8kg、溶融凝固したデブリ層が14.7kgであった。溶融凝固したデブリ層は、砕けやすく、ボーリング作業中に約80%が冷却水中に流出した。ボーリングサンプル回収後に、約400本のボーリングにより、溶融凝固層の破砕作業(デブリのスイスチーズ化)が行われた。その後、1987.1月までに、破砕されたデブリの回収が進められ、切り株燃料とルースデブリが残留する状態まで、デブリ取り出しが進捗した。

図1 コアボーリング調査位置 [1]

 ボーリング調査により、溶融凝固層切り株燃料集合体の成層化状態が解明された。溶融凝固層は、炉心中央でより下部まで広がる漏斗状に堆積し、その周囲をクラスト層が囲んでいた。また、下部クラスト層の下には、ほとんど損傷が見られない燃料棒(切り株燃料)が残留していた(残留長は、炉心中央で約60cm、炉心外周で約120cm)[1]。切り株燃料の被覆管はほとんど酸化しておらず、延性が維持されていた。炉心周辺部の切り株燃料の上部でのみ、中性子吸収剤(Ag-In-Cd)の溶融の痕跡が見られた。

 図2(a)~(c)に、炉心中央領域(G8,K9,D8)、炉心中間領域(G12,O7)、炉心外周領域(D4,N5,N12,O9)で採集されたボーリングサンプルの全体像を示す[2]。炉心中央では、溶融凝固層の上下が上下クラスト層によって囲まれていることが確認できる。炉心中間領域では、溶融凝固層がほとんど見られず、周辺クラスト層が確認できる。炉心中央と炉心中間領域のサンプル中から、クラスト層に相当するプラグ状のサンプルが合計8個回収された。炉心外周領域からは、ほぼ無傷の燃料棒が回収された。上下周辺クラスト、溶融凝固層、切り株燃料棒から、詳細分析用のサンプルが採集された。表1には、これらのうち、日本に搬入されたサンプルの情報をまとめて示す[2]。

 図3(a)~(c)に、炉心中央、炉心中間、炉心外周、から、それぞれ回収されたデブリ粒子の拡大写真、および、切り株燃料棒の破断面の拡大写真を示す[2]。上部クラスト層部位では、セラミック相のバルクから金属相が析出している様子が確認できる。溶融凝固層に比べ、金属相の体積割合が大きいことが特徴である。溶融凝固層部位では、セラミックデブリの比較的大きな粒子が観察される。溶融凝固層と、上部/周辺クラストの構成成分は類似していた。セラミック相から金属相が析出、あるいは、凝固したセラミック相の粒界や空孔中に金属メルトが侵入、と推定された。上部クラストには、溶融ZrによるUO2燃料溶解の痕跡が見られた。このことから、事故時の最高温度は>2200Kと推定された。一方で、上部クラスト層と溶融凝固層中には、(U,Zr)O2やUO2ペレットの溶融の痕跡が見られた。これらのことから、上部/周辺クラスト層と溶融凝固層は、事故進展時に>2810K(局所的に>3120K)に到達していたと推定された。切り株燃料については、Ag-In-Cdの融点(1073K)やZry被覆管材の再結晶温度(920K)より低いと推定された。

 これらに対して、下部クラストでは、燃料被覆管が失われているが、燃料ペレットの形状が残留しているデブリ粒子が検出された。初期に溶融崩落した金属デブリメルトにより、燃料被覆管が溶解されて、冷却水チャンネルが閉塞されたと推定された。表面酸化した燃料被覆管は大部分が金属デブリメルト中に溶解したと推定された。下部クラスト層中には、Zry/SSやZr/Agの共晶溶融の痕跡が観測され、事故時到達温度の下限値は>1200Kと推定された。Zryを主成分とする金属メルトが溶融していたことから、局所的に約2200Kに達していたと推定された。下部クラスト最高温度のベストエスティメートは1300~1500Kと評価された。切り株燃料棒の上端では、燃料被覆管が破損し、燃料ペレットの破砕物が存在していた。ほとんどのサンプルで、様々なサイズの空孔が多く確認された。

 クラスト層の厚みはおよそ4.5~11.5cmの範囲であり、上部クラスト層の方が厚い構造だった。上部/周辺クラスト層の平均かさ密度は7.6~9.7g/ccであり、溶融凝固した炉心物質のセラミック相と金属相の混合物に相当していた。下部クラストの平均かさ密度は7.0~7.6g/ccとやや小さい値であり、溶融凝固層に比べてZrリッチと推定された。溶融凝固層の平均かさ密度は5.5.~8.8g/ccだったが、空孔が多く、すきまに金属相が侵入・析出していた。

 上部クラストについては、セラミック相と金属相の混合物で形成されており、主要炉心物質の組成について、セラミック相中での平均Zr濃度は13wt%であり、事故前炉心平均の18~19%より小さい値であった。このことから、Zrが選択的に炉心下部に移行したと推定された。上部クラスト層中の中性子吸収剤成分は事故前の炉心平均より大きい値を観測した。Ni/Mo比の分析により、比較的インコネル由来の物質が多く含まれると推察された。U富化度については、上部クラスト中でのU-235同位体比から、炉心中央(平均U-235同位体濃度:1.98%)と炉心中間(同:2.64%)の燃料が混合した可能性が示唆された。炉心周辺の燃料集合体はほとんど溶融しておらず、炉心外周部でのU-235同位体濃度が維持されていた。FPについては、中揮発性FPのうち、Sb-125とRu-106が金属相側に濃化していることが確認された。高揮発性FPのI-129とCs-137もデブリ中にある程度保持されていることが確認された。

 下部クラストについては、金属溶融凝固物の中にペレットスタックが堆積している構造であった。ペレット残差中には金属メルトが侵入した痕跡が見られた。Zry副成分のSnは、下部クラストの金属相中にはほとんど見られる、酸化して別相に移動したと推定された。下部クラスト中のFeは、炉心平均の11wt%に近いが、金属相に限ると34wt%に到達していた。これに対し、Niは5.5wt%、Crは1.6wt%で相対的に低い値であった。Zrの平均濃度(金属相中)は30wt%であり、Zrリッチの傾向が確認された。下部クラストにMoが多く含まれ、下部クラスト金属相の由来のひとつがインコネルと示唆された。低揮発性FPの下部クラスト(セラミック、金属)への保持は、それぞれ130wt%、134wt%であり、100%を有意に超えていた。このことから、下部クラストに崩落した燃料は、相対的に高燃焼度部分だったと示唆された。Sb-125とRu-106は、特に金属相への濃化見られず、上部クラストと異なっていた。

 溶融凝固層デブリについては、クラスト層に比べて、成分や形状がかなり均質化していた。デブリ粒子は、セラミックあるいは金属であり、一部に混合物を含んでいた。Agは平均2.9wt%で、Inは平均0.9wt%で検出された。Cdは一部の金属粒子中でのみ検出された。これらのことから、金属成分は下部クラストに選択的に移行したことが推定された。FPについて、Ru-106,Sb-125は金属相中に濃化していた。揮発性FPは若干残留していた。

参考:コアボーリング調査

参考:デブリ取り出しツール

主な分析結果

ボーリングサンプルの採集

 ボーリング調査では、安全上の制約からインコアモニターが装荷されていない燃料集合体位置が選定された。また、コアボーリング装置の構造上炉心最外周の2列の燃料集合体をボーリングすることは不可能であった。これらのことを考慮しつつ、炉心中央、炉心中間、炉心周辺でボーリング位置10か所が選定された(図1)[2]。

 サンプルは合計で187kg(6.3cm径、150cm長)採集された(#1か所からはサンプル回収できず)。

  • 第一期(1986年7月): ボーリング9本、130.7kg
  • 第二期(1986年12月): F6,H8,M11位置の溶融凝固層を追加サンプリング(スイスチーズ化後)、53kg
  • 第三期(1987年1月): H9,K9位置の追加サンプリング(炉心中央)、4kg

分析用サンプルの選定

第一期のサンプルについて

  • デブリ粒子の見た目、サイズ、密度から分析サンプルを選定
  • ボーリングサンプル9本を、66か所に区分して、外観分析を実施(図2,図3[2])
  • 100個のデブリ粒子を予備的に選定(#およそ2.5cmサイズで分析しやすい粒子、あるいは特徴的な外観を持つ粒子)
  • そのうち25個をINELでの破壊分析に使用(#分析サンプルの選定で最も重視したのはかさ密度
  • 切り株燃料棒サンプルは42本を予備的に選定(#外観が代表性を持っているもの)、そこから24本をINELでの破壊分析用に選定

第二、三期のサンプルについて

  • F6,H8,M11位置でデブリバケツに採集したデブリ粒子から、サイズの大きい粒子10個を選定
  • 240kgの最大の塊デブリは、馬蹄形リング構造の一部と推定されたが、大きすぎてハンドリングできないので貯蔵庫に戻した
  • デブリ以外にも、破損した計装機器ストリングなどがみつかったため、外観写真撮影
  • 第三期では、H8,K9位置から、サイズの大きい粒子10個を選定

 これらのサンプルの一部を、CSNI参加国や米国内の別のホットラボに移送(表1:日本に輸送されたサンプル)[2]。

 分析手順・方法は、この段階までに確立していた典型的な手順・方法を利用した。

  • サンプル全長のモザイク写真撮影、重量測定
  • 2.5cm以上のデブリ粒子のかさ密度測定、詳細分析用のデブリ粒子の選定
  • デブリ粒子の破砕
  • 破砕粒子(約20~200mgサイズ)は化学・放射化学分析用に酸溶解・液調整(#Aliquot作成)
  • ICP発光分析、γ線分光分析、遅発中性子測定によるU同位体比測定、I-129分析、Sr-90分析、Te分析
  • 数mmサイズの破砕粒子は、切断・断面研磨後に、微細組織分析
  • 金相顕微鏡、SEM/EDX、EPMA

外観・組織観察・密度

上部クラスト層

  • ボーリングサンプルの3か所(D8-P3、G8-P11、K9-P2、図2参照)から、上部クラストサンプルが回収された。図4に、上部クラスト層から回収したデブリ粒子断面の拡大金相写真の例を示す[2]。
  • 上部クラスト層の厚さは約4.5~11.5cm、デブリ粒子のかさ密度:7.8~9.7g/cc、であった。
  • 金属相とセラミック相の混合物からなり、空孔が多く存在していることがわかる。デブリ粒子中には、U,Zr酸化物の溶融凝固物を主成分とするセラミック相、構造材(Fe,Ni)や中性子吸収材(Ag,In)などを主成分とする金属相が多く観察された。後述する溶融凝固層に比べ、相対的に金属相の体積割合が大きい(約25vol%)。クラスト層の上部には、一部未溶融の燃料ペレットの周辺に、構造材などの金属溶融凝固物や酸化したZry被覆管の残差が存在していた(図4(c))[2]。金属相の一部では、還元されたUや、Zry被覆管副成分のSnが検出された。ZrやCrは主にセラミック相中で検出された。可燃性毒物棒由来と考えられるAlも主に酸化物相中で検出された。
  • セラミック相中のクラックに金属メルトが侵入した痕跡が見られた(図4(b))[2]。このことから、セラミック相のデブリ粒子がいったん凝固した後に、上部からさらに金属デブリメルトが崩落し侵入したと推定された。
  • セラミック相中には空孔が多く存在し、(U,Zr)O2を主成分とする比較的稠密な領域と、構造材酸化物の第2相を多く含むまだらな領域が観測された。まだらな組織は、大きな空孔(ボイド)の周辺に凝集していた(図5(a)(b))[2]。
  • セラミック相の一部では、(U,Zr)O2粒子の結晶粒界に、構造材酸化物の第2相が形成されている様子が確認された(図5(c))[2]。また、セラミック相の隙間に金属メルトが侵入し、相互作用により溶解が進んでいる痕跡が確認された(図5(c))[2]。
  • これらのことから、デブリメルトの溶融凝固時には、先に融点約2810Kの(U,Zr)O2が析出(初晶)、温度低下に伴って結晶成長し、凝固プロセスの最後にFe,Cr,Alを主成分とする構造材酸化物メルトが、初晶の周辺で凝固したと推定された。
  • このような微細組織の観測結果に基づいて、ZrO2-Fe3O4状態図を、燃料デブリと構造材酸化物を代表する系と仮定して、デブリ凝固メカニズムが考察されている(図6)[5]。①共晶温度以上で、(U,Zr)O2と構造材酸化物が相互に溶解開始、②温度上昇によりセラミックメルトが拡大・均質化、③逆に、凝固時には、温度低下により液相線温度で(U,Zr)O2リッチの初晶が析出、一方で、Fe,Crリッチの構造材酸化物メルトが残留(U,Zr酸化物を一部含む)、④共晶温度まで低下すると、構造材酸化物メルトが結晶粒界で凝固(溶解していたU,Zr酸化物は別相として析出)。図6と、実際の微細組織を比較することで、デブリメルト中には、最大で10~20wt%の構造材酸化物メルトが溶解可能と推定された[5]。一方で、固相どうしではほとんど相互溶解度が存在しない。
  • 金属相領域では、デンドライト構造が観測され、その凝固にある程度の時間がかかったと推定された(図5(d))[2]。これは、事故進展中の熱電対の実測値と整合していた(事故以降3日間は>1000K)。
  • 事故時ピーク温度については、破砕・溶融したペレットが残留しており、その周囲に、酸化したZry被覆管と金属の溶融凝固物が残留していたことから(図4(c))[2]、事故時ピーク温度は<2960Kと推定された(#ZrO2が溶融していないため)。他方、金属Zrが溶融した痕跡があることから、事故時ピーク温度は>2200Kと推定された
  • 図7には、金属相周辺での構造材の溶融凝固相と中性子吸収材の溶融凝固相の界面、および、セラミック溶融凝固相との界面の拡大BSE像と特性X線マップを示す[2]。金属相側の相分離や、セラミック相と金属相の主成分が確認できる。酸素については、バックグランドが大きく、検出感度が低いため、有意なデータとなっていないことに注意が必要である。
  • これらの微細組織の分析結果に基づいて、上部クラストは、複数の溶融・凝固過程を経て形成されたと推定された。空孔が多く存在しているが、上部クラスト全体としては比較的凝集程度が高いと評価された。
図8(a) 下部クラスト層の断面金相写真(K9-P1)[2]

下部クラスト層

  • ボーリングサンプルの3か所(K9-P1、D8-P1、D8-P2、図2参照)から、下部クラストサンプルが回収された。図8(a)に、下部クラスト層から回収したデブリ粒子断面の拡大金相写真の例を示す[2]。未溶融の燃料ペレットが積層化して残留し、その周辺を主に金属相からなる溶融凝固物が覆っている構造が観測された。
  • 下部クラスト層の厚さは約5~9cm、デブリ粒子のかさ密度:7.0~7.6g/cc、であった。
  • 図8(b)に、積層ペレットの隙間部分についての拡大金相写真を示す[2]。ディッシュ部に金属メルトが侵入し、ペレットが一部溶解開始している痕跡が確認できる。また、金属溶融凝固相側では、溶融した燃料成分が、凝固時にセラミック粒子として析出している様子が確認できる。
  • 図8(c)に、金属溶融凝固物と酸化したZry被覆管界面の拡大金相写真を示す[2]。図8(a)では見えにくいが、燃料ペレットの周囲には、酸化Zr皮膜が一部残留していた。このことから、溶け落ちて堆積した金属メルトにより、未酸化の燃料被覆管や表面のZry酸化皮膜が溶解されたと推定された。また、金属相側では、構造材(Fe,Ni,Crなど)を主成分とする相と、中性子吸収材(Ag,Inなど)を主成分とする相とに分離している様子が確認できる。
  • 図8(d)に、EDX分析で同定した界面での元素分布をまとめて示す[2]。金属相側には、構造材成分や中性子吸収材成分の他に、Zr金属や還元されたU金属が含まれていることが確認できる。上部クラスト層中では検出されたCdは、下部クラスト中ではほとんど検出されなかった。
  • 図9(a)に、金属溶融凝固相側の拡大金相写真を示す[2]。高温では、金属メルト中に、Uや酸素が一部溶解できるが、これらが、凝固過程でUO2として析出したと推定されている。立方晶形状の析出物の様子が確認できる。
  • 図9(b)には、UO2結晶の周辺の拡大BSE像と、EDX分析で同定した主要元素の分布を示す[2]。UO2結晶中にはわずかにZrが含有されていた。
  • 図8(b) 下部クラスト層の断面金相写真(ペレットディッシュ部の拡大)(K9-P1)[2]
    図9(c)には、UO2結晶の周辺の特性X線マップを示す[2]。AgやSnが、UO2結晶の周辺に濃化している様子など、微細組織形成の特徴を確認することができる。酸素については、EDX分析の感度が低いため、ほとんど信号が得られていない。(#元文献では、U析出相は酸化物と推定されているが、酸素を固溶する金属相の可能性があるかもしれない。
  • 図9(d)には、金属相中のデンドライト組織を示す[2]。金属相が、構造材主成分の相とそれ以外の相に相分離していることがわかる。
  • 事故時ピーク温度については、金属相の主要成分から、Ni-ZrやFe-Zr反応の共晶温度1220K以上と推定された。金属相の平均組成は、構造材側によっていることから、もう少し高い温度であることが示唆された。一方で、燃料ペレットがほとんど溶融していないことから、上限は<2200Kと推定された。金属相の溶融状態を考慮した、ベストエスティメートとして1300~1500Kと推定された。Agが混入するとZr-Ag共晶反応により溶融が進展するため、Agの多い部位では>1400Kと推定された。
  • これらの微細組織観察の結果から、炉心上部で溶融・崩落した主に金属メルトが、下部クラスト周辺で燃料棒の周辺(冷却水チャンネル)にいったん堆積し、一部再溶融して、未酸化のZryや構造材(燃料ペレットや酸化Zryの一部を含む)を溶解してから再凝固した、と推定された。





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周辺クラスト層

  • ボーリングサンプル2か所(G12-P1、O7-P4、図2参照)から、周辺クラストサンプルが回収された。
  • 図10(a)に、周辺クラスト層から回収したデブリ粒子断面の拡大金相写真の例を示す[2]。上部周辺クラスト層中には、セラミック相と金属相の溶融凝固物が多く含まれ、その構成成分は、上部クラスト層と類似していた
  • 周辺クラスト層の厚さは約5.1cm、デブリ粒子のかさ密度:7.6~8.8g/cc、であった。
  • 図10(b)に、セラミック相領域の拡大金相写真を示す[2]。空孔が多く存在し、U,Zr酸化物の溶融凝固物を主成分とする比較的稠密な領域と、構造材酸化物を多く含む多孔質な共晶組織領域が観察された。

溶融凝固層

  • ボーリングサンプル4個(D8,G8,K9,G12、図2参照)から、事故時に炉心中央で溶融デブリプールを形成していたと考えられる領域から、デブリ粒子サンプルが回収された[2]。
  • 図11(a)(b)に、セラミックデブリ粒子と金属デブリ粒子の外観写真の例を示す[2]。溶融凝固層は、周囲のクラスト層に比べてマクロに非均質で、金属相、セラミック相、両者の混合相、で構成されていた
  • 溶融凝固層領域は、マクロには、初期炉心の約20%の体積に相当していた。
  • 金属デブリ粒子のかさ密度:5.5~8.8g/cc、であった。
  • 金属相は、比較的、クラスト層に近い周辺部に多く存在しており、サンプル平均での体積割合は約15vol%であった。
  • 図12に、金属相領域の拡大金相写真を示す[2]。結晶部分は比較的稠密で、その隙間に空孔が多く存在している。一方で、より微細にはデンドライト組織が形成されていることがわかる。Fe-Ni合金が主成分で、わずかにAg-In-Sn合金や、Cr2O3が析出していることが観測された。
  • セラミック相としては、15個のデブリ粒子が採集された。セラミックデブリ粒子のかさ密度:6.9~8.8g/cc、であった。
  • 図13(a)(b)に、セラミック相領域の拡大金相写真を示す[2]。U,Zr酸化物を主成分とする領域は比較的稠密で、その隙間に、構造材や可燃性毒物棒由来のFe,Cr,Al酸化物を主成分とする第2相が存在している。金属の微小相がわずかに析出していた。
  • 図13(c)に、U,Zr酸化物相と構造材酸化物相の境界領域の拡大金相写真を示す[2]。空孔が多く存在していることがわかる。境界部分には、U,Zr酸化物相と構造材酸化物相からなるまだら組織が観測された。
  • 図14に、2種類の酸化物相が混合した領域での特性X線マップを示す[2]。U,Zrを主成分とする酸化物と、Fe,Ni,Cr,Alを主成分とする酸化物に相分離していることが確認できる。(#構造材酸化物が酸化している場合(おそらく、M3O4まで酸化)、カチオンに対する酸素の相対重量比が大きくなるため、構造材酸化物側で酸素濃度が高く見えていることに留意が必要である図9(c)ではほとんど検出されていない酸素が、図14では同定されており、図9(c)のUリッチな四角い相は、金属相の可能性があるかもしれない(元論文ではUO2と記載)。)
  • 図15(a)(b)に、一部のセラミックデブリ粒子中で観測されたペレット残差周辺の拡大金相写真を示す[2]。U,Zr酸化物のセラミック溶融凝固相に囲まれる形状でUO2ペレットが残留していることがわかる。また、UO2ペレットの残差中に大きな空孔が観測された。これらから、事故進展中(溶融デブリプールの拡大過程)に、U,Zr酸化物メルト中へのUO2の溶解が進んでいたと推定された。
  • 金属とセラミックの混合相としては、5個のデブリ粒子が採集された。混合物粒子のかさ密度:7.6~9.1g/cc、であった。
  • 図16(a)(b)に、金属/セラミック混合領域の拡大金相写真を示す[2,6]。金属相は比較的稠密で、Ag-InやFe-Ni合金で形成されていたのに対し、セラミック相では、燃料酸化物と構造材酸化物が混合した多孔質相が検出された。
  • 図17に、2種類の酸化物が混合していた領域の特徴的な断面BSE像、および、断面金相の例を示す[2]。(U,Zr)O2の溶融凝固相の周囲や結晶粒界に、構造材酸化物の第2相が侵入・分布し、析出あるいはデンドライト形成していることが確認できる。この観察結果からも、上で考察したような、Fe3O4-ZrO2系状態図で近似的に示される共晶型の凝固過程が推定された。
  • 図18には、セラミック相中の空孔内で検出された、多面体形状のUO2結晶のSEM像、および、拡大BSE像を示す[2]。(#図9(c)の金属相側の析出物と形状が異なっているように見える。
  • 事故時ピーク温度については、金属相中に析出していたCr2O3相に溶融凝固した痕跡が確認されたことから、少なくともその融点の2266K以上と推定された。また、セラミック相中に見られたUO2残差中に大きな空孔が形成され、その溶融凝固の痕跡が見られたことから、局所的には、その融点の3120K以上に到達していたと推定された

切り株燃料集合体

  • 燃料棒サンプル(D4,G8,K9、図2参照)、制御棒サンプル(D4,K9,N12,O7)、計装案内管サンプル(G8)が採集された[2]。
  • 図19(a)に、D4位置の切り株燃料棒の断面金相写真を示す[2]。燃料ペレットとZry被覆管の本来形状が維持されていることが確認できる。
  • 図19(b)には、被覆管部位の拡大金相写真を示す[2]。外周部の酸化、および、燃料ペレットとの界面での酸化がほとんど起きていないことが確認できる。約920K以上で発生するZryの再結晶化も観測されなかった。一方で、通常運転中に円周方向に形成されるZrH2析出物が観測された。炉外試験からの推定により、被覆管中の平均的な水素濃度は約25ppmと推定された。
  • 図19(c)には、燃料ペレット部位の拡大金相写真を示す[2]。結晶粒のサイズは、ほぼ製造時と同程度であり、大きな空孔も存在していないことが確認された。
  • これらのことから、切り株燃料棒は、事故進展中に、冷却水中に保持され、燃料が溶融するような高温に曝されていないと推定された
  • 図20(a)(b)に、制御棒サンプル内の中性子吸収材部分の断面金相写真(制御棒下部、要烏有凝固層の近く)を示す[2]。下部サンプルでは、製造時の微細組織が維持されていた。溶融凝固層の近くでは、中性子吸収剤がいったん溶融してから凝固した痕跡が見られた。このことから、切り株燃料集合体の上部では1073K以上を経験したと推定された
  • 図21には、計装案内管と金属デブリの界面の拡大金相写真を示す[2]。計装案内管に一部クラックが発生し、溶融金属デブリが侵入しているが、案内管自体はほとんど酸化していないことがわかる。

組成分析

 表2に、化学分析(ICP-発光分析)の対象とされた、主要17元素の炉心インベントリを示す[2]。ここでは、酸素インベントリは、装荷時の物量から評価され、被事故時の覆管や構造材の酸化は考慮されていない。燃料集合体1体あたり(制御棒が装荷されている集合体)について換算すると、UO2:531.9kg、Zry-4:125kg、SS:16.8kg、Inconel:6.8kg、Ag-In-Cd:43.5kgとなる。可燃性毒物棒が装荷されている集合体では、Ag-In-CdのかわりにB4C-Al2O3が装荷されていた。

表2(a) TMI-2炉での主要炉心物質の組成(炉心構成物質ごと)[2]
炉心物質

(重量:kg)

元素 重量濃度(wt%) 炉心物質

(重量:kg)

元素 重量濃度(wt%)
UO2

(94.029)

U-235 2.265 Inconel-718

(1211)

Ni 51.900
U-238 85.882 Cr 19.000
O 11.853 Fe 18.000
Zry-4

(23.177)

Zr 97.907 Nb 5.553
Sn 1.60 Mo 3.000
Fe 0.225 Ti 0.800
Cr 0.125 Al 0.600
O 0.095 Co 0.470
304SS

(676) その他SS (3960)

Fe 68.635 Si 0.200
Cr 19.000 Mn 0.200
Ni 9.000 N 0.130
Mn 2.000 Cu 0.100
Si 1.000 Ag-In-Cd

(2749)

Ag 80.0
N 0.130 In 15.0
C 0.080 Cd 5.0
Co 0.080 B4C-Al2O3

(626) 可燃性毒物棒

Al 34.33
O 30.53
B 27.50
C 7.64
Gd2O3-UO2

(131.5)

Gd 10.27
U 77.72
O 12.01
表2(b) TMI-2炉での主要炉心物質の組成(単純平均)[2]
元素 重量濃度(wt%) 元素 重量濃度(wt%)
U 65.8 Al 0.2
Zr 18.0 B 0.1
O 8.5 Cd 0.1
Fe 3.0 Mn 0.08
Ag 1.8 Nb 0.04
Cr 1.0 Si 0.04
Ni 0.9 Mo 0.03
In 0.3 Gd 0.01
Sn 0.3 Cu 0.01

#Coについては、SSやインコネル中に微量成分として含有されているが、放射化物質由来のCo-60の影響が大きい。

#炉心平均のU/Zr重量比=3.7、燃料棒についてU/Zr重量比=4.0

#燃料棒被覆管中のZr/Sn比=61

上部クラスト層

  • ボーリングサンプル3か所(K9-P2,G8-P11,D8-P3、図2参照)から、化学分析用のサンプルが分取された(#微細組織分析用のサンプルを分取した際の破砕片)。これらを酸溶解し、化学分析・放射化学分析の元溶液(Aliquot)とした。
  • 表3に、上部クラストサンプル分析値と、単純平均と範囲を示す[2]。
燃料棒成分について
  • 上部クラスト平均としては、初期インベントリ前後の値が得られたが、成分の偏在が極めて大きい。
  • 炉心中央の上部クラスト層から採集されたG8-P11サンプルでは、Uに対するZr比が大きく変化しており、燃料崩落時に、燃料成分と被覆管成分が再分布が発生した可能性がある。
  • Zr/Sn比は、U/Zr比より、さらに大きくばらついており、Zrが選択的に酸化されセラミック相に移行した傾向を示している。
制御材成分について
  • Agは、金属相とセラミック相間での偏在が大きいが、ほぼ初期インベントリと整合する分析値が得られた(#しかし、Agは、液調製時の不溶解残差への移行が大きいため、分析誤差が大きいことに注意が必要)。
  • Inは、金属相とセラミック相間での偏在が大きいが、ほぼ初期インベントリと整合する分析値が得られた。
  • Cdは、9個のサンプルで検出された。単純平均値が初期インベントリに近く、主に金属相中に保持されていた。Cdが相当量保持されていることから、上部クラストがあまり高温に達していない可能性、合金化によりCd蒸気圧が抑制された可能性、炉心下部から移行してきたCdがいったん吸着した可能性、などが推定された。
可燃性毒物成分について
  • Alは、ほぼすべてのサンプルで初期インベントリと同程度の濃度で検出された。
  • Bは、ほぼすべてのサンプルで同程度の値で検出されたが、ホウ酸水由来と考えられる。
  • Gdは、クラスト上部でやや濃化しているように見える。全体的に、初期インベントリよりやや大きい値が得られた。
構造材成分について
  • Fe/Cr比は、初期インベントリより大きく、Crが選択酸化されたことを示唆している。
  • 上述の微細組織観察から、酸化されたCrは、(U,Zr)O2相中に混入、あるいは第2相として結晶粒界に析出したと推定された。
  • インコネル由来と推定されるMoを多く含んでいた。金属相中のNi/Mo比はインコネルの値に近かった。
表3 上部クラストサンプルの分析結果 [2]
元素 組成の

単純平均 (wt%)

検出された

組成範囲 (wt%)

サンプルごとの分析結果(wt%) 初期インベントリ

(酸素を除いた割合)

(表2から換算)

K9-P2 G8-P11 D8-P3
C1

(上部)

C2

(中間)

C3

(中間)

C4

(底部)

B1

(中間)

B2

(中間)

B3

(中間)

E1

(上部)

E2

(中間)

E3

(底部)

A1

(中間)

A2

(中間)

Ag 3.2 0.05~9.32 2.14 9.32 4.50 0.0494 0.0946 5.21 0.248 7.85 0.212 1.92 6.78 0.373 1.97
Al 0.21 0.08~0.44 0.132 0.441 0.123 0.188 0.190 0.276 0.316 0.0873 0.230 0.142 0.205 0.177 0.22
B 0.12 ND~0.26 ND 0.128 0.057 0.00988 0.0338 0.259 ND 0.255 ND 0.190 0.144 0.144 0.11
Cd 0.11 ND~0.32 0.119 0.0949 0.057 0.00988 ND 0.199 ND 0.320 ND 0.0203 0.219 0.0131 0.11
Cr 1.6 0.2~3.8 3.69 3.28 1.91 0.336 0.237 1.79 0.484 3.85 0.411 1.00 0.602 1.56 1.1
Cu 0.9 0.05~0.094 0.159 0.0937 0.0817 0.0494 0.142 0.107 0.0742 0.109 0.0632 0.129 0.178 0.0916 0.011
Fe 11 0.42~53 53.4 16.6 17.5 0.780 0.420 5.61 1.15 24.4 0.880 2.87 5.85 2.74 3.27
Gd 0.06 0.006~0.11 0.0066 0.0614 0.0483 0.0494 0.088 0.078 0.071 0.0291 0.0722 0.102 0.0547 0.105 0.011
In 1.0 ND~2.6 1.84 1.57 0.78 ND 0.217 1.30 0.0871 1.77 0.0452 0.704 2.58 0.621 0.33
Mn 0.06 0.03~0.16 0.033 0.162 0.0632 0.0296 0.0271 0.0691 0.0516 0.080 0.0452 0.0609 0.0479 0.0458 0.088
Mo 0.44 ND~2.15 2.15 0.391 0.702 ND ND 0.0950 0.0968 1.02 ND 0.0745 0.308 0.105 0.033
Nb 0.14 ND~0.32 0.119 0.151 0.0743 0.128 0.102 0.135 0.0710 0.175 0.0813 0.325 ND 0.131 0.044
Ni 5.2 0.07~14.5 23.6 14.5 7.47 0.0988 0.0677 1.33 0.207 10.8 0.135 0.724 2.95 0.661 0.98
Si 0.56 0.13~1.5 0.165 1.20 0.279 0.138 0.508 0.538 0.313 0.225 0.303 0.569 1.48 0.942 0.044
Sn 1.1 ND~3.7 3.71 1.72 1.20 ND 0.115 0.979 0.106 3.36 0.0768 0.372 1.68 0.144 0.33
Te 0.03 ND~0.09 0.033 0.0893 0.0409 ND 0.0271 0.0461 0.0258 0.0291 ND 0.0406 ND 0.0262 -
U 49.0 ND~70 ND 32.8 32.2 70.5 66.7 50.7 62.0 15.1 64.6 70.4 60.8 60.9 71.9
Zr 20.4 ND~22 ND 8.76 11.0 19.5 17.6 17.2 22.6 5.20 22.1 4.01 14.0 11.2 19.7
合計 95.13 - 91.7 101 78.0 92.0 86.6 85.9 87.8 74.7 89.2 83.7 97.9 80.0 100.2
元素比
U/Zr 2.4 - - 3.7 2.9 3.6 3.8 2.9 2.7 2.9 2.9 17.6 4.3 5.4 3.7
Zr/Sn 19 - - 5.1 9.2 - 150 18 210 1.5 290 11 8.3 78 61
Fe/Cr 6.9 - 14 5.1 9.2 2.3 1.8 3.1 2.4 6.3 2.1 2.9 9.7 1.8 3.0
Fe/Ni 2.1 - 2.3 1.1 2.3 7.9 6.2 4.2 5.6 2.3 6.5 4.0 2.0 4.1 3.3
Ni/Mo 12 - 11 37 11 - - 14 2.1 11 - 9.7 9.6 6.3 30
備考 C1は、主に金属相

C2,C3は、金属・セラミック混合相

C4は、主にセラミック相

B1,B2,B3ともに、

セラミック相が多く

金属相が一部混入

E1は、

金属・セラミック混合相

E2,E3は、

主にセラミック相

A1,A2とも

金属・セラミック混合相

#サンプル中で、未検出の元素は単純平均の計算から除く

下部クラスト層

  • ボーリングサンプル3か所(K9-P1,D8-P1,D8-P2、図2参照)から、化学分析用のサンプルが分取された。
  • 表4に、下部クラストサンプル分析値と、単純平均と範囲を示す[2]。
燃料棒成分について
  • ペレット残留部は、初期インベントリに近い組成が維持されている。
  • 金属の溶融凝固層中では、Zrが濃化していた。SnはZr以上に濃化していた。Snは崩落過程でZrから分離され、先行溶落した可能性がある。
  • 構造材成分や、In-Agなども、金属相側に濃化している。
制御材成分について
  • Ag、Inでは、初期インベントリより大きい値がえられた。
  • Cdは、初期インベントリより小さい値が得られた。蒸発して炉心上部などに移動した可能性が示唆される。
可燃性毒物成分について
  • Alは、1個のサンプルを除くと、初期インベントリと同程度で検出された。
  • Bは、ほぼすべてのサンプルで同程度の値で検出されたが、ホウ酸水由来と考えられる。
  • Gdは、初期インベントリよりやや大きい値が得られた。
構造材成分について
  • Fe,Ni,Crともに初期インベントリより大きい値を示し、SS,インコネル成分が先行崩落したことを示唆している。
  • Fe/Cr比は、初期インベントリより大きく、Crが選択酸化されたことを示唆している。
  • インコネル由来と推定されるMoを多く含んでいた。
表4 下部クラストサンプルの分析結果 [2]
元素 組成の

単純平均 (wt%)

検出された

組成範囲 (wt%)

サンプルごとの分析結果(wt%) 初期インベントリ

(酸素を除いた割合)

(表2から換算)

K9-P1 D8-P1 D8-P2
C1

(上部)

C2

(ペレット)

C3

(底部)

C4

(底部)

C1

(中間)

C2

(中間)

C3

(中間)

A1

(中間)

A2

(底部)

Ag 4.5 1.13~10.4 3.68 2.28 3.91 2.93 10.4 4.66 6.42 5.09 1.13 1.97
Al 1.1 0.14~6.4 0.788 0.158 0.641 0.834 6.39 0.142 0.308 0.171 0.186 0.22
B 0.10 0.05~0.26 0.0525 0.109 0.122 0.129 0.118 0.0888 0.112 ND 0.0166 0.11
Cd 0.07 0.01~0.12 0.0636 0.0198 0.103 0.110 0.118 0.0888 0.0839 0.0132 0.0166 0.11
Cr 1.6 0.31~4.1 1.87 0.306 1.17 2.06 4.06 0.653 3.23 0.462 0.430 1.1
Cu 0.11 0.05~0.25 0.0608 0.0889 0.0468 0.0548 0.118 0.129 0.112 0.258 0.163 0.011
Fe 11 1.76~34 9.37 1.76 5.85 10.2 34.0 5.28 28.2 2.91 2.18 3.27
Gd 0.40 0.02~0.09 0.0193 0.0988 0.0164 0.0262 0.0186 0.0292 0.0373 ND 0.0929 0.011
In 1.1 0.28~13.7 1.85 0.751 1.09 1.11 1.74 1.13 1.93 0.277 0.290 0.33
Mn 0.04 0.02~0.07 0.0636 0.0198 0.0515 0.0739 0.0869 0.0266 0.0466 0.0132 0.0232 0.088
Mo 0.34 0.06~1.14 0.343 0.0889 0.185 0.377 1.33 0.209 1.14 ND 0.0581 0.033
Nb 0.14 0.05~0.21 0.193 0.0889 0.117 0.210 0.149 ND 0.140 ND 0.151 0.044
Ni 5.5 0.52~13.7 4.42 1.04 3.86 5.05 13.7 2.09 13.0 0.579 0.523 0.98
Si 0.42 0.09~1.11 0.213 0.652 0.211 0.431 0.559 1.11 0.0932 ND 0.499 0.044
Sn 1.5 0.25~3.1 1.41 0.247 1.52 1.86 3.12 0.715 2.92 1.56 0.302 0.33
Te 0.05 ND~0.07 0.0111 ND 0.0257 0.0357 ND ND 0.0653 ND 0.0697 -
U 34.0 2.6~88 17.4 60.3 7.2 14.2 2.65 87.9 6.57 52.5 59.6 71.9
Zr 22.0 8.6~45 44.5 10.1 36.7 40.3 11.7 13.6 13.8 18.2 8.57 19.7
合計 83.97 - 86.3 78.1 62.8 80.0 90.3 121 78.2 87.5 74.3 100.2
元素比
U/Zr 2.4 - 0.39 6.0 0.20 0.35 0.22 6.5 0.47 2.9 7.0 3.7
Zr/Sn 19 - 32 41 24 22 3.8 19 4.7 12 28 61
Fe/Cr 6.9 - 5.0 5.8 5.0 5.0 8.4 8.1 8.7 6.3 5.1 3.0
Fe/Ni 2.1 - 2.1 1.7 1.5 2.0 2.5 2.5 2.2 5.0 42 3.3
Ni/Mo 12 - 13 12 21 13 10 10 11 - 9.0 30
備考 C2は、主に残留ペレット

C1,C3,C4は、主に金属相

C2は、主に残留ペレット

C1,C3は、主に金属相

A1,A2とも

主にセラミック相

#サンプル中で、未検出の元素は単純平均の計算から除く

周辺クラスト層

  • ボーリングサンプル2か所(G12-P1,O7-P4、図2参照)から、化学分析用のサンプルが分取された。
  • 表5に、周辺クラストサンプル分析値と、単純平均と範囲を示す[2]。
燃料棒成分について
  • 金属の溶融凝固層中では、Zrが濃化している。Snも金属相に濃化している。
  • 組成の傾向から、G12サンプルは比較的下部クラストの組成に近く、O7サンプルは比較的上部クラストの組成に近い。
制御材成分について
  • Ag、Inでは、初期インベントリより大きい値がえられた。
  • Cdは、初期インベントリより小さい値が得られた。
  • いずれも金属相中で多く検出された。
可燃性毒物成分について
  • Alは、1個のサンプルを除くと、初期インベントリと同程度で検出された。
  • Bは、ほぼすべてのサンプルで同程度の値で検出されたが、ホウ酸水由来と考えられる。
  • Gdは、初期インベントリよりやや大きい値が得られた。
構造材成分について
  • Fe,Ni,Crともに初期インベントリより大きい値を示し、SS,インコネル成分が先行崩落したことを示唆している。
  • いずれも金属相側に濃化していた。
  • Fe/Cr比は、初期インベントリより大きく、Crが選択酸化されたことを示唆している。
  • インコネル由来と推定されるMoを多く含んでいたが、Fe/Ni,Fe/Cr比は、初期のSSの値に近かった。
表5 周辺クラストサンプルの分析結果 [2]
元素 組成の

単純平均 (wt%)

検出された

組成範囲 (wt%)

サンプルごとの分析結果(wt%) 初期インベントリ

(酸素を除いた割合)

(表2から換算)

O7-P4 G12-P1
C1

(上部)

C2

(上部)

C3

(中間)

C4

(底部)

E2

(中間)

E3

(中間)

E4

(中間)

Ag 2.9 0.04~7.4 6.89 5.39 4.44 1.88 7.39 0.0377 0.0499 1.97
Al 0.29 0.07~0.53 0.466 0.0714 0.108 0.238 0.142 0.245 0.532 0.22
B 0.08 0.03~0.19 0.110 0.0500 0.188 0.111 0.0821 0.0377 0.0416 0.11
Cd 0.14 ND~0.42 0.420 0.221 0.0874 0.0152 0.0712 ND 0.00831 0.11
Cr 1.7 0.45~3.9 3.76 3.23 1.61 0.456 3.88 0.386 0.515 1.1
Cu 0.09 0.07~0.14 0.110 0.146 0.131 0.0709 0.0931 0.0848 0.0665 0.011
Fe 6.4 0.84~29 28.9 3.93 1.98 0.952 17.6 0.839 1.02 3.27
Gd 0.06 0.02~0.09 0.0151 0.0535 0.0807 0.0709 0.0274 0.0942 0.0831 0.011
In 1.3 0.18~2.9 2.73 2.94 1.25 0.182 2.04 0.377 0.357 0.33
Mn 0.10 0.03~0.40 0.0644 0.154 0.0706 0.0304 0.400 0.0471 0.0416 0.088
Mo 0.25 ND~1.18 1.18 0.154 0.0336 0.0152 0.318 0.0377 ND 0.033
Nb 0.13 0.08~0.17 0.0985 0.0857 0.108 0.167 0.153 0.151 0.133 0.044
Ni 2.7 0.19~12.6 12.6 1.76 0.309 0.278 8.76 0.188 0.249 0.98
Si 0.52 0.20~1.51 0.379 0.375 0.850 0.582 0.208 0.405 1.51 0.044
Sn 1.3 ND~2.9 2.92 2.75 0.894 0.223 2.10 0.160 ND 0.33
Te 0.06 ND~0.12 0.0303 ND 0.104 0.0203 0.0767 0.0754 0.116 -
U 46.0 3.2~66.3 3.20 53.2 56.8 66.3 14.1 53.8 49.5 71.9
Zr 16.2 4.4~23.2 16.6 4.39 6.02 17.0 23.2 19.4 17.7 19.7
合計 80.22 - 80.5 78.9 75.1 88.6 80.5 76.4 72.1 100.2
元素比
U/Zr 2.8 - 0.19 12 9.4 3.9 0.61 2.8 2.8 3.7
Zr/Sn 12 - 5.7 1.6 6.7 76 11 121 - 61
Fe/Cr 3.8 - 7.7 1.2 1.2 2.1 4.5 2.2 2.0 3.0
Fe/Ni 2.4 - 2.3 2.2 6.4 3.4 2.0 4.5 4.1 3.3
Ni/Mo 11 - 11 11 9.2 18 28 5.0 - 30
備考 C1は、主に金属相

C2,C3は、金属・セラミック混合相

C4は、主にセラミック相

E2は、主に金属相

E3,E4は、主にセラミック混合相

#サンプル中で、未検出の元素は単純平均の計算から除く

溶融凝固層

  • ボーリングサンプル2か所(G12-P1,O7-P4、図2参照)から、化学分析用のサンプルが分取された。
  • 表6に、溶融凝固層サンプルの分析値と、単純平均と範囲を示す[2]。
燃料棒成分について
  • セラミック相を多く含むサンプル中の分析値は、Uについて52~70wt%、Zrは約16%。
  • 炉心中央の溶融凝固層中のセラミック相では、Zrの相対濃度がやや高い傾向が見えた。
  • 逆に、炉心中間から周辺にかけてのセラミック相中では、Zrの相対濃度がやや低い傾向が見えており、一方で、金属相中では若干Zr相対濃度が高くなっていた。
  • 溶融凝固層中では、金属相中にほとんどUが検出されていない。
  • 初期インベントリに比べてSnの相対濃度が高く、主に金属相中に濃化していた。
制御材成分について
  • Ag,Inは、初期インベントリより高い平均値が得られ、金属相側に濃化していた。
  • Cdは、初期インベントリと同程度の平均値が得られたが、検出できないサンプルも多かった。
可燃性毒物成分について
  • Alは、初期インベントリと同程度で検出された。
  • Bは、ほぼすべてのサンプルで同程度の値で検出されたが、ホウ酸水由来と考えられる。
  • Gdは、多くのサンプルで検出され、初期インベントリよりやや大きい平均値が得られた。
構造材成分について
  • Fe,Ni,Crともに初期インベントリより大きい平均値が得られた。炉心上部から崩落した構造材成分が多く含まれていると推定された。
  • いずれも金属相側に濃化しており、金属相中のFe:Ni:Cr比は、初期インベントリ中の構造材の値と同程度であった。
  • Fe/Cr比は、初期インベントリより大きくサンプルと小さいサンプルがあり、デブリ粒子によって酸化度が異なっていた可能性がある。
  • インコネル由来と推定されるMoを多く含んでおり、Ni/Mo比が初期インベントリより小さいサンプルが多く見られた。
表6(a) 溶融凝固層サンプルの分析結果(その1) [2]
元素 組成の

単純平均 (wt%)

検出された

組成範囲 (wt%)

サンプルごとの分析結果(wt%) 初期インベントリ

(酸素を除いた割合)

(表2から換算)

K9-P3 K9-P4 G8-P5 G8-P6 G8-P7 G8-P8
A1 D1 D2 F1 D1 D2 B1 B2 B1 B2 A1 C1 C2 A1
Ag 2.9 0.07~34.5 0.101 0.224 0.128 0.260 6.41 0.0649 0.302 0.191 0.219 0.219 0.220 9.29 0.212 0.238 1.97
Al 0.34 0.09~1.33 1.34 0217 0.323 0.812 1.03 0.241 0.273 0.241 0.400 0.277 0.350 0.456 0.261 0.217 0.22
B 0.07 0.03~0.23 0.0868 0.0387 0.0278 0.0753 0.185 0.0371 0.0295 0.0602 ND 0.0401 ND 0.131 ND 0.0489 0.11
Cd 0.16 ND~0.83 ND ND 0.00556 ND 0.0321 ND ND 0.0100 ND 0.0073 ND 0.465 ND 0.00699 0.11
Cr 1.4 0.04~6.6 2.34 0.441 0.473 0.594 1.23 0.519 0.472 0.421 0.552 0.493 0.463 4.20 0.367 0.447 1.1
Cu 0.14 0.05~0.59 0.0796 0.0851 0.0723 0.126 0.112 0.0649 0.184 0.0502 0.114 0.0876 0.107 0.0964 0.0579 0.0769 0.011
Fe 14.5 0.26~58 3.44 0.944 0.996 1.46 8.35 1.06 0.958 0.863 1.29 1.06 1.06 31.5 0.869 0.950 3.27
Gd 0.08 0.01~0.12 0.0724 0.0851 0.0723 0.0921 0.0241 0.0835 0.0884 0.0903 0.0762 0.0839 0.0772 0.0175 0.0869 0.0908 0.011
In 0.89 0.05~7.6 0.166 0.310 0.256 0.251 1.38 0.241 0.0516 0.652 0.162 0.394 0.154 1.42 0.212 0.559 0.33
Mn 0.05 0.01~0.10 0.0868 0.0464 0.0445 0.0586 0.0482 0.0464 0.0516 0.0401 0.0571 0.0511 0.0535 0.0789 0.0483 0.0489 0.088
Mo 0.89 0.01~3.7 0.0434 0.0310 0.0278 0.0335 0.329 ND 0.0147 ND ND .0328 ND 1.29 ND 0.0210 0.033
Nb 0.16 0.02~0.58 0.130 0.124 0.0835 0.243 0.169 0.102 0.0221 0.120 0.238 0.0620 0.125 0.149 0.145 0.112 0.044
Ni 6.8 0.05~37 0.970 0.271 0.217 0.737 4.44 0.260 0.361 0.120 0.267 0.234 0.208 14.1 0.174 0.189 0.98
Si 0.60 0.16~1.6 0.376 0.418 0.395 1.53 2.23 0.547 1.56 0.562 0.324 0.431 0.386 0.210 0.405 0.377 0.044
Sn 2.1 0.03~7.5 0.188 0.178 0.145 0.151 1.32 0.232 ND ND 0.209 ND 0.131 3.15 ND ND 0.33
Te 0.06 0.01~0.24 0.0217 0.0542 0.0445 0.100 0.161 0.0278 0.0147 0.0301 ND 0.0328 0.0594 0.0526 0.0579 0.0419 -
U 54.0 1.2~93 52.1 55.9 53.1 54.7 19.1 59.0 87.0 60.5 56.7 58.7 57.0 3.93 57.9 58.3 71.9
Zr 16.4 0.01~37 19.6 20.4 19.1 19.8 34.5 21.1 27.8 19.1 21.5 21.5 21.1 18.2 20.3 21.2 19.7
合計 101.54 - 81.2 79.8 75.5 81.0 81.1 83.7 119 83.2 82.2 83.8 81.5 88.7 81.3 83.1 100.2
元素比
U/Zr 2.8 - 2.7 2.7 2.8 2.8 0.55 2.8 3.1 3.2 2.6 2.7 2.7 0.22 2.9 2.8 3.7
Zr/Sn 12 - 104 115 132 131 26 91 - - 103 - 161 5.8 - - 61
Fe/Cr 3.8 - 1.5 2.1 2.1 2.5 6.8 2.0 2.0 2.0 2.3 2.2 2.3 7.5 2.4 2.1 3.0
Fe/Ni 2.4 - 3.5 3.5 4.6 2.0 1.9 4.1 2.7 7.2 4.8 4.5 5.1 2.2 5.0 5.0 3.3
Ni/Mo 11 - 22 8.7 7.8 22 13 - 25 - - 7.1 - 11 - 9.0 30
備考 A1は、主にセラミック相

金属相混入 D1,D2,F1は、主にセラミック相

D1は、

金属・セラミック相の混合 D2は、

主にセラミック相

主にセラミック相 主にセラック相 A1,C2は、

主にセラミック相 C1は、主に金属相

主に

セラミック相

#サンプル中で、未検出の元素は単純平均の計算から除く

表6(b) 溶融凝固層サンプルの分析結果(その2) [2]
元素 サンプルごとの分析結果(wt%) 初期インベントリ

(酸素を除いた割合)

(表2から換算)

G8-P9 G8-P10 D8-P4 O9-P1 G12-P2 G12-P4 G12-P9 N5-P1 O7-P1 O7-P6 D4-P2
A1 A1 A2 A1 A2 C1A C1B C2 A1 A2 B1 B1 B2 A1 A1 D1A D1B D2 H1 H2 A1 1 2 A1
Ag 7.42 0.0795 3.52 1.22 2.70 0.174 0.113 0.0711 1.96 0.261 0.378 0.208 0.0990 0.200 4.68 1.50 0.201 1.29 7.70 ND 1.36 5.92 5.64 34.5 1.97
Al ND 0.170 0.173 0.126 ND 0.229 0.186 0.316 0.0849 0.175 0.145 0.150 0.193 0.247 0.695 0.443 0.0824 0.191 0.419 0.917 0.350 0.160 0.160 ND 0.22
B 0.0979 0.0653 0.0896 ND ND ND 0.0399 ND 0.106 0.0447 0.0291 0.0404 0.0313 0.0867 0.108 0.232 0.0515 0.0545 0.0563 0.0539 ND 0.0321 0.0291 ND 0.11
Cd 0.832 0.00426 0.0288 ND ND ND ND ND 0.0212 ND ND 0.0115 ND 0.00667 0.0154 0.0206 0.00515 ND 0.313 ND ND ND 0.0145 0.581 0.11
Cr 5.10 0.278 0.208 6.63 3.90 0.229 0.226 0.245 6.55 0.149 0.140 0.196 0.151 0.447 0.826 2.72 0.417 1.08 0.188 0.674 1.97 3.67 4.87 1.61 1.1
Cu 0.171 0.0653 0.134 0.196 0.273 0.0554 0.0864 0.134 0.191 0.108 0.0815 0.0750 0.0834 0.0867 0.0927 0.0721 0.0618 0.123 0.150 0.108 0.591 0.256 0.247 0.194 0.011
Fe 37.5 1.01 2.09 57.9 50.3 0.427 0.452 0.418 55.6 0.309 0.262 0.392 0.370 1.07 4.49 30.2 5.11 13.6 0.307 1.11 50.6 54.7 44.5 26.1 3.27
Gd 0.0245 0.0922 0.0992 ND ND 0.0870 0.0864 0.0947 0.0849 0.123 0.0873 0.0923 0.0886 0.0800 0.0849 0.0155 0.0618 0.0818 0.0125 0.108 ND ND 0.0145 ND 0.011
In 2.35 0.358 0.941 0.811 0.325 0.110 0.312 0.103 1.09 0.301 0.314 0.462 0.172 0.293 0.734 0.469 0.412 0.695 3.54 0.701 0.766 1.17 1.10 7.65 0.33
Mn 0.0734 0.0312 0.0224 0.0979 ND 0.0316 0.0332 0.0316 0.0919 0.0298 0.0233 0.0289 0.0417 0.0467 0.0618 0.0206 0.0103 0.0136 0.0125 0.0539 ND 0.0641 0.102 ND 0.088
Mo 1.54 0.0156 0.0544 2.25 3.67 ND ND ND 2.28 0.0112 0.0291 0.0289 0.0156 0.0200 0.0772 1.34 0.242 0.668 ND ND 2.30 2.87 2.27 1.39 0.033
Nb 0.22 0.0624 0.0416 0.224 ND 0.158 0.0731 0.142 0.205 0.0558 0.0931 0.0981 0.0678 0.100 0.124 0.0309 0.0772 0.204 ND 0.378 0.285 0.240 0.262 0.581 0.044
Ni 17.0 0.0596 0.560 24.5 36.7 0.0554 0.0930 0.174 24.3 0.670 0.582 0.133 0.0521 0.207 2.38 13.0 2.32 6.13 0.382 0.135 28.2 21.8 17.4 13.9 0.98
Si 0.318 0.501 0.918 0.335 ND 0.403 0.485 0.876 0.184 0.581 0.390 0.427 0.511 0.427 0.394 0.402 0.294 0.382 1.16 0.971 1.44 0.705 0.160 ND 0.044
Sn 4.63 0.0341 0.602 3.98 5.33 ND 0.113 ND 4.02 0.0856 0.0989 ND ND 0.127 0.502 1.83 0.474 1.55 2.08 0.674 4.90 5.16 4.24 7.52 0.33
Te 0.0245 0.0539 0.0928 0.0559 ND 0.0475 0.0199 0.0553 ND 0.0477 0.0466 0.0289 0.0365 0.0400 0.0232 0.0464 0.0258 0.0409 ND 0.0243 0.131 0.112 0.0145 0.129 -
U 1.21 65.7 73.9 ND ND 60.8 67.1 65.8 ND 93.4 61.7 58.3 62.0 55.1 50.8 1.47 41.1 50.4 32.4 57.4 ND ND 1.55 ND 71.9
Zr 1.20 15.2 6.98 0.0140 ND 16.8 17.7 17.3 ND 22.1 15.6 16.8 16.5 20.0 14.1 25.9 1.30 3.95 37.4 13.8 0.0876 ND 0.320 0.161 19.7
合計 79.8 83.8 90.5 99.0 100 79.8 87.2 85.9 97.1 118 79.5 77.6 80.5 78.6 80.2 79.7 52.3 f80.5 86.1 77.5 92.4 97.7 82.9 96.6 100.2
元素比
U/Zr 1.0 4.3 11 - - 3.6 3.8 3.8 - 4.2 4.0 3.5 3.8 2.8 3.6 0.057 32 13 0.87 4.2 - - 4.8 - 3.7
Zr/Sn 0.26 446 12 0.0035 - - 157 - - 258 158 - - 158 28 14 2.7 2.5 18 20 0.018 - 0.075 0.021 61
Fe/Cr 7.4 3.6 10 8.7 13 1.9 2.0 1.7 8.5 2.1 1.9 2.0 2.5 2.4 5.4 11 12 7.6 1.6 1.6 26 15 9.1 16 3.0
Fe/Ni 2.2 17 3.7 2.4 1.4 7.7 4.9 2.4 2.3 0.46 0.45 2.9 7.1 5.2 1.9 2.3 2.2 2.2 0.80 8.2 1.8 2.5 2.6 1.9 3.3
Ni/Mo 11 3.8 10 11 10 - - - 11 60 20 4.6 3.5 10 31 9.7 9.6 9.2 - - 12 7.6 7.7 10 30
備考 主に金属相 A1は、

主にセラミック相 A2は、

燃料ペレットと

制御材の残差

A1は、主に金属相

A2は、主にインコネル

C1,C22は、主にセラミック相

A1は、

主に金属相 A2,B1は、

主にセラミック相

主に

セラミック相

主に

セラミック相

セラミック相

金属相析出

D1Aは、主に金属共晶物

D1B,D2は、金属共晶物とペレット残差 H1は、破損燃料棒、制御棒 H2は、主にセラミック相

主に

インコネル+Sn

主に

インコネル+SS+Sn

主に、金属相

#サンプル中で、未検出の元素は単純平均の計算から除く

切り株燃料棒

  • ボーリングサンプル3か所(G8-RT3-2,G8-R11-2,G12-R13-2)から、化学分析用のサンプルが分取された。
  • 表7に、切り株燃料サンプルの分析値と、単純平均と範囲を示す[2]。
  • G8-R11-2とG12-R13-2が切り株燃料棒の一部を全溶解したサンプルを、G8-R3-2は切り株燃料棒の外周に付着していた上部からキャンドリングしてきた物質のサンプルを、それぞれ示している。
  • 切り株燃料サンプルは、燃料棒の初期平均組成に近い値を示した。サンプリングの際に混入した制御材成分をわずかに含んでいた。
  • キャンドリングサンプルは、事故初期に形成された金属メルトの凝固物と推定された。下部クラスト層の金属相に近い組成が得られた。
表7 切り株燃料棒サンプルの分析結果(wt%) [2]
元素 G08-R11-2

燃料ペレット

G12-R13-2

燃料ペレット

G8-R3-2

外周付着物

初期炉心組成
Ag ND ND 0.33 1.97
Al ND ND 0.38 0.22
B ND ND 0.01 0.11
Cd ND ND 0.42 0.11
Cr ND ND 1.4 1.1
Cu ND ND 0.03 0.011
Fe ND ND 5.3 3.27
Gd ND ND 0.01 0.011
In# 0.6 0.6 1.5 0.33
Mn ND ND 0.05 0.088
Mo ND ND 0.15 0.033
Nb ND ND 0.15 0.044
Ni ND ND 3.2 0.98
Si# 0.5 0.5 0.06 0.044
Sn ND ND 1.2 0.33
Te 0.3 0.4 0.02 -
U 78 79 4.2 71.9
Zr ND ND 40.6 19.7

#In,Teの燃料ペレット中の分析値は、測定したICP発光ピークがUピークに近接しているため、測定誤差が大きい。

#Siは、切断作業中に混入した可能性が高い。

FP分析、放射化学分析

 表8に、主要なFP元素の揮発性に係るデータをまとめて示す[2]。この表に基づいて、放射化学分析の対象核種のグループ分けが行われた。表中のI~IVa族までは、希ガス、ハロゲン、アルカリ金属、重カルコゲンに相当し、それぞれの純物質や主要な酸化物の沸点が1600K以下である(高揮発性FP)。この中から、ハロゲンのI-129とアルカリ金属のCs-134,Cs-137が放射化学分析の対象として選定された。重カルコゲンのTeについては、ICP発光分析で測定された(上述)。IVb~VI族の一部までは、VA族金属、アルカリ土類、希土類やアクチニドの一部、貴金属群の一部に相当し、純物質や主要な酸化物の沸点がUO2融点(3120K)より低い(中揮発性FP)。しかし、中揮発性FPは、酸化度によって、蒸気圧が大きく変化することに注意が必要である。このカテゴリーからは、VA族のSb-125、アルカリ土類のSr-90、希土類元素のEu-154,Eu-155、及び貴金属のRu-106が放射化学分析の対象として選定された。Eu核種については、文献によって揮発性のグループ分けが異なっているが、コアボーリングサンプルの分析においては中揮発性のカテゴリーで整理されている。表中のVI~VII族は、貴金属の一部、希土類元素の一部、アクチニド、ZrやNbなどに相当し、低揮発性FPに分類されている。分析対象としては、希土類元素のCe-144が選定された。これらの核種に加えて、U-235とU-238、及びCo-60が定量分析されている。

表8 主要なFP元素の揮発性の区分 [2] (#いくつかの化合物については、参考文献[2]の記載に最近の文献値を追記した)
WASH-1400

での分類

化学的な群 元素 炉内でとりうる主な化学形 沸点(K) 揮発性 分析の対象に選定された同位体
I族 希ガス Kr Kr 120
Xe Xe 166
II族 ハロゲン Br CsBr 1573
I CsI 1553 I-129
HI 238
I2 457
III族 アルカリ金属 Rb RbI 1573
Rb2O 1543
Rb2O2 1284
Cs CsI 1553 Cs-134,Cs-137
CsOH ~1543#
Cs2O 1523
Cs2O2 923
Cs2UO4 未報告 -
IVa族 重カルコゲン Se Se 958
SeO3 453
SeO2 588(昇華点)
Te Te 1663 Te(ICP発光分析)
TeO2 ~1530#
Te2O2 未報告 (高)
AgのTe化合物 - -
FeのTe化合物 - -
ZrのTe化合物 - -
SnのTe化合物 - -
NiのTe化合物 - -
CrのTe化合物 - -
IVb族 VA族金属 Sb Sb 1653 Sb-125
Sb2O3 1323
V族 アルカリ土類 Sr SrO ~3100 Sr-90
Ba BaH2 1673
BaO ~2273
BaO2 1073
Ba(OH)2 1053
VI族 希土類元素 Eu Eu 1802 Eu-154,Eu-155
Eu2O3 ~4270#
Sm Sm 2173
Sm2O3 ~4170#
Pm Pm 3400
Pm2O3 - -
アクチニド Am Am 2873
Am2O3 3973~4173
AmO2 4000~4273
貴金属 Pd Pd 2473
PdO# - -
Rh Rh 4000
RhO2# - -
Rh2O3# - -
Ru Ru 4423 Ru-106
RuO2 - -
RuO4 313
Mo Mo 4780
MoO2# - -
Mo2O3 - -
MoO3 1463(昇華点)
Tc Tc 2445
VII族 希土類元素 Y Y2O3 4773
La LaO - -
La2O3 5173
Ce CeO2 4173~4273 Ce-144
Ce2O3 4073~4273
Pr PrO2 - -
Pr2O3 4173~4273
Nd Nd2O3 4173~4273
アクチニド Np NpO2 4273
Pu PuO2 4023~4073
Cm CmO2 3973~4173
IV価金属 Zr ZrO2 5273
遷移金属 Nb NbO2 1843(解離)
Nb2O5 3573

#CsOHでは、他のアルカリ元素の水酸化物沸点からの類推による。実際には、沸点より低い温度で解離が発生するため、実測は困難である。

#TeO2では、沸点と解離温度の差を検出することは困難である。

#Eu2O3とSm2O3は、高温でEuOあるいはSmOとO2に分解するため、その沸点を正確に評価することは困難である。

#Pd,Rh,Moの酸化物、およびRuO2については、高温で金属と酸素に解離するため、沸点の測定は困難である。

主要FPの分析結果

 表9に、検出された放射線濃度の平均値とサンプルごとのばらつき、最低値と最高値の比をそれぞれ示す[2]。

 表10に、U-235/U-238の同位体比の分析結果を示す[2]。

上部クラスト層について
  • サンプルごとに大きな濃度差(一桁~三桁)が同定された。特にばらつきが大きいのは、Sr-90、Ru-106、Sb-125、Cs-134、Cs-137及びCo-60(#Ru-106については、NDのサンプルが存在)。一方、I-129とCe-144、Eu-154、Eu-155は比較的均質に分布していた。
  • U-235富化度については、1.7~2.3%(ほとんどが2.2~2.3%)と言う値がえられた。TMI-2の炉心全平均値は2.56%(炉心中央1.98、中間2.64、炉心周辺2.98)であり、上部クラスト層の分析値は、炉心中央と炉心中間の燃料集合体の平均値と整合していた。このことから、クラスト形成前に、デブリベッドを形成した段階で、炉心中央と炉心中間の燃料が混合していたことが推定された
下部クラスト層について
  • サンプルごとに大きな濃度差(一桁~三桁)が同定された。データのばらつきの傾向は、上部クラストと類似していた。
  • U-235富化度については、1.8~2.4%(ほとんどが1.8~2.0%)と言う値がえられた。上部クラスト層と異なり、炉心中央の燃料集合体の値と整合していた。
周辺クラスト層について
  • サンプルごとに大きな濃度差(一桁~三桁)が同定された。データのばらつきの傾向は、上部クラストと類似していた。特にばらつきの大きい、Ru-106とSb-125は金属相中に濃化していた。
  • U-235富化度については、1.8~3.5%(ほとんどが2.2~2.4%)と言う値がえられた。周辺クラスト層の分析値は、炉心中央と炉心中間の燃料集合体の平均値と整合していた。周辺クラスト層が回収されたO7位置は、本来1.98%富化度の燃料集合体、G12位置は、本来2.64%富化度の燃料集合体、が、それぞれ存在していたが、事故過程で異なる富化度の燃料集合体が混合していたと推定された。
溶融凝固層について
  • サンプルごとに大きな濃度差(一桁~四桁)が同定された。データのばらつきは、クラスト層よりさらに明確に見えており、特にばらつきの大きいRu-106とSb-125は金属相中に濃化していた。
  • U-235富化度については、1.8~2.6%(ほとんどが2.2~2.4%)と言う値がえられた。溶融凝固層の分析値は、炉心中央と炉心中間の燃料集合体の平均値と整合していた。
表9 主要FPの分析結果(μCi/g) [2]
核種 上部クラスト層 下部クラスト層 周辺クラスト層 溶融凝固層
平均値 測定値の範囲 high/low比 平均値 測定値の範囲 high/low比 平均値 測定値の範囲 high/low比 平均値 測定値の範囲 high/low比
Co-60 262 5.2 - 1430 275 553 34 - 1871 55 172 12 - 887 74 313 2.8 - 1695 605
Sr-90 1820 3.6 - 6300 1750 3100 14 - 7040 500 1120 152 - 2460 16 2660 5.5 - 9320 1690
Ru-106 360 44 - 1510 34 609 72 - 1744 24 181 2.4 - 500 210 958 0.16 - 7705 48000
Sb-125 336 0.4 - 1330 3325 495 0.3 - 1330 4400 218 0.1 - 844 8400 353 0.16 - 2910 18100
I-129 2.2 x 10-4 1.3 x 10-5 - 7.0 x 10-4 54 8.0 x 10-4 3.4 x 10-5 - 4.6 x 10-3 135 7.7 x 10-5 3.9 x 10-6 - 3.0 x 10-4 77 2.2 x 10-4 5.2 x 10-7 - 1.9 x 10-3 3600
Cs-134 27 0.24 - 217 900 32 1.6 - 123 77 6.3 0.5 - 23 46 5.9 0.21 - 95 452
Cs-137 1220 11 - 9600 872 1150 15 - 5300 353 261 13 - 1050 81 291 0.012 - 4923 410000
Ce-144 106 12 - 204 17 127 11 - 238 22 125 21 - 188 17 232 60 - 3534 59
Eu-154 26 1.6 - 42 26 28 2.7 - 50 18 26 19 - 43 2.1 52 1.9 - 780 410
Eu-155 40 13 - 60 5 37 3.6 - 64 18 33 2.0 - 56 18 72 7.8 - 1055 135

#1987.8.1時点に換算

#NDのサンプルは平均値の評価に含めず

表10(a) U-235富化度の分析結果(%)(その1) [2]
上部クラスト層 下部クラスト層 周辺クラスト層 溶融凝固層
K9-P2-C G8-P11-B G8-P11-E D8-P3-A K9-P1-C D8-P1-C D8-P2-A O7-P4-C G12-P1-E G12-P1-D2 K9-P3-A K9-P3-D K9-P4-D G8-P5-B G8-P6-B G8-P7-A G8-P7-C
2.2

2.2 (測定数2)

1.9

2.2 2.3 (測定数3)

1.7

2.0 2.3 (測定数3)

2.2

2.3 (測定数2)

1.8

2.4 3.4# (測定数3)

1.8

1.8 (測定数2)

2.0

(測定数1)

1.8

2.1 2.2 3.5# (測定数4)

2.2

2.4 2.6 (測定数3)

2.2,

2.3 (測定数2)

2.2

(測定数1)

2.3

2.3 (測定数2)

2.4

4.4# (測定数2)

2.1

2.2 (測定数2)

2.2

2.3 (測定数2)

2.2

(測定数1)

2.3

2.5 (測定数2)

#3.4,3.5,4.4の値は、U検出濃度が小さいため、>50%の誤差を持っている。

#TMI-2の全炉心平均2.56%(炉心中央1.98%、炉心中間2.64%、炉心外周2.98%)

表10(b) U-235富化度の分析結果(%)(その2) [2]
溶融凝固層(続き)
G8-P8-A G8-P10-A O9-P1-A G12-P2-B G12-P4-A G12-P9-A N5-P1-H N5-P1-D O7-P6
2.2

(測定数1)

1.8

(測定数1)

2.2

(測定数1)

2.2

2.2 (測定数2)

2.4

(測定数1)

2.1

(測定数1)

2.2

2.6 (測定数2)

2.3

2.5 (測定数2)

3.4#

(測定数1)

#3.4の値は、U検出濃度が小さいため、>50%の誤差を持っている。

#TMI-2の全炉心平均2.56%(炉心中央1.98%、炉心中間2.64%、炉心外周2.98%)

ORIGEN-II解析値との比較

 各FPの分析値を、U-235の分析値で規格化し、ORIGEN-IIでの解析値と比較することで、FP分布の傾向が推定された。なお、クラスト層や溶融凝固層の堆積状態を考慮して、ORIGEN-IIでの解析値としては、炉心中央と炉心中間の集合体の値を加重平均して用いられている。

 表11に、ORIGEN-IIでの解析結果(炉心中央と炉心中間の燃料集合体の加重平均値)を示す[2]。

 表12(a)~(d)に、各領域のサンプル中のFP濃度分析値をU-235濃度の測定値で規格化し、表11に示すORIGEN-II解析に基づく炉心中央と炉心中間の燃料集合体中のFP平均濃度をU-235の平均濃度でわった規格化した値に対する相対値として示す。すなわち、表12中の値は、それぞれのFPのサンプル中の保持率に相当している

上部クラスト層について
  • 低揮発性FP(Ce-144、Eu-154)について、平均保持率85±36%で、Uとの同伴性が強くみられる。見かけの保持率が100より大きいサンプルは、高燃焼度集合体由来の可能性がある。
  • 中揮発性FPについて、Sr-90はほとんどセラミック相側に濃化していた。100より小さい値が多く、一部放出されていた可能性がある。Sb-125とRu-106は金属相側で濃化していた。
  • 高揮発FPについて、I-129、Cs-137ともまだ相当量が保持されており、比較的均質だが、やや金属相側で保持率が大きい。金属相と何らかの相互作用が存在していた可能性がある。一方で、金属相側ではU-235濃度が低いため、測定誤差が大きいことによるかもしれない。
下部クラスト層について
  • 低揮発性FPのうち、Ce-144の保持率が約130%、Eu-154の保持率が202%と大きい値になっており、炉心中央の高燃焼度集合体由来の可能性がある。U濃度の低い金属相サンプル中でのCeとEuの見かけの保持率が低い。金属相側で、CeとEuについて、Uとの同伴性が低い理由は未解明である
  • 中揮発性FPについて、Sr-90は測定値にばらつきが大きい。おそらく、セラミック相中では均質に保持され、金属相中ではセラミック相の析出物として存在していたと推定された。Sb-125とRu-106は金属相側で保持されていた。Sb-125は特にセラミック相側での保持率が小さい。
  • 高揮発FPについて、I-129は残留していた燃料ペレット中に一部保持されていると推定された。金属の溶融凝固層側での保持率は小さかった。Cs-137の保持率はI-129より小さく、金属相側での保持率が比較的大きかった。
周辺クラスト層について
  • 低揮発性FPのうち、Ce-144の平均保持率が91%、Eu-154の平均保持率が105%で、Uとの同伴性が強く見られた。
  • 中揮発性FPについて、Sr-90は、一部のサンプル中での保持率が6.4%と、低い値であった。Sr-90が失われるメカニズムが存在している可能性がある。平均保持率は約50%であった。Sb-125とRu-106は金属相側で保持されていた。
  • 高揮発FPについて、I-129は比較的低温の金属相中に凝縮していた可能性が示唆された。Cs-137も金属相側での保持率が比較的大きかった。
溶融凝固層について
  • 低揮発性FPの平均保持率が78~185%で、100%よりやや大きい値となり、高燃焼度燃料を多く含んでいた可能性が示唆された。セラミック相中での保持率の評価値はばらつきが小さく、濃度が均質化していると推定された
  • 中揮発性FPについて、Sr-90は、金属相中での保持率が低い値であった。Sb-125とRu-106は金属相側で保持され、照射燃料の平均値に比べて、15~40倍濃化していた。
  • 高揮発FPについて、I-129は比較的低温の金属相中に凝縮していた可能性が示唆された。Cs-137も金属相側での保持率が比較的大きかった。
表11 主要FPのインベントリ(炉心中央と炉心中間の加重平均、μCi/g) [2]
核種 全炉心平均

放射能濃度

炉心外周の燃料集合体を

除くための換算係数

計算コードに由来する

補正係数 [7]

補正後の

放射能濃度

Sr-90 7540 1.08 0.988 8045
Ru-106 168 1.16 0.961 187
Sb-125 206 1.13 0.432 101
I-129 2.81 x 10-3 1.11 0.867 2.70 x 10-3
Cs-137 8680 1.09 1.021 9659
Ce-144 215 1.08 1.069 248
Eu-154 60 1.21 0.626 45.6
Eu-155 125 1.10 0.614 84.4

#1987.8.1の値に換算

表12(a) サンプルごとのFP保持率(%)(その1) [2]
核種 上部クラスト層 下部クラスト層 周辺クラスト層
K9-P2-C

(測定数4)

G8-P11-B

(測定数3)

G8-P11-E

(測定数3)

D8-P3-A

(測定数2)

金属相中の

平均値 (カッコ内は範囲)

セラミック相中の

平均値 (カッコ内は範囲)

K9-P1-C

(測定数4)

D8-P1-C

(測定数3)

D8-P11-A

(測定数2)

金属相中の

平均値 (カッコ内は範囲)

セラミック相中の平均値

(カッコ内は範囲)

O7-P4-C

(測定数4)

G12-P1-E

(測定数3)

G12-P1-D2

(測定数2)

金属相中の

平均値 (カッコ内は範囲)

セラミック相中の

平均値 (カッコ内は範囲)

Sr-90 0.04

5.53 9.36 45.2

31.5

18.1 94.2

44.8

121 16.0

61.3

20.6

15

(0.04 - 45)

56(20-121) 10.0

145 133 287

38.4

77.4 2.57

109

134

94

(2.6 - 290)

117(77 - 145) 60.0

32.7 16.6 6.54

56.1

45.7 37.6

16.2

55.5

58(56 - 62) 31

(6.5 - 56)

Ru-106 398

466 1164 -

-

29.3 5.29

5360

1.81 60.5

176

38.5

1490(60-5350) 50

(1.8 - 176)

226

18.4 93.9 541

5400

27.8 2480

67.7

20.1

1750(93 - 5410) 34

(18 - 68)

8360

268 50.5 7.16

966

- -

-

2.3

4660(966 - 8360) 47

(2.3 - 268)

Sb-125 1272

1715 1416 1,50

-

509 2.32

3880

0.06 151

649

63.4

1690(151-3800) 205

(2.3 - 649)

141

14.9 347 925

3970

0.032 1390

88.8

13.1

1360(41 - 3970) 29

(0.03 - 88)

26100

0.24 457 94.3

966

0.032 1390

-

2.6

15100

(4000 - 26100)

80

(0.24 - 457)

I-129 26.3

67.7 34.5 0.15

0.12

25.5 0.77

44.1

1.20 2.36

16.4

6.07

35

(26 - 67)

7.2

(0.11 - 25)

23.4

282 17.5 6.94

321

42.1 95.8

10.6

55.9

93(6.9 - 321) 98(11 - 283) 25.5

8.35 9.78 4.08

78.8

0.27 0.63

0.39

0.66

52

(26 - 78)

3.5

(0.27 - 9.8)

Cs-137 4.21

14.6 0.27 0.41

0.41

13.2 0.67

93.5

0.17 142

8.57

11.2

28#

(4.2 - 93)

4.9

(0.17 - 142)

1.46

91.0 56.4 14.0

14.8

47.6 48.4

0.30

1.15

27

(1.4 - 56)

35

(0.3 - 91)

4.33

3.45 23.2 5.18

77.0

0.49 0.62

0.35

0.60

41

(4.3 - 77)

3.2

(0.5 - 12

Ce-144 -

66.8 102 97.3

87.3

26.8 132

32.2

113 42.6

47.9

92.5

49

(27 - 132)

85(32 - 102) 25.1

159 - 202

57.1

173 170

170

133

134(25 - 203) 130(57 - 170) -

74.9 102 50.3

59.0

128 153

119

78.4

59

(0 - 59)

91(50 - 153)
Eu-154 -

88.5 123 143

135

6.9 151

-

144 28.7

76.9

79.6

80

(29 - 123)

105(6.9 - 150) 33.6

183 - 228

-

121 203

146

146

131(33 - 228) 149(121 - 184) -

78.5 101 39.8

82.4

169 192

146

84.4

82

(0 - 82)

105(40 - 192)

#上部クラスト金属相中のCsの保持率は、1個のサンプルだけで大きな値が出ているため、見かけ上大きい値となっている。

表12(b) サンプルごとのFP保持率(%)(その2) [2]
核種 溶融凝固層
K9-P3-A

(測定数1)

K9-P3-D

(測定数2)

K9-P3-F

(測定数1)

K9-P4-D

(測定数2)

G8-P5-B

(測定数2)

G8-P6-B

(測定数2)

G8-P7-A

(測定数1)

G8-P7-C

(測定数2)

G8-P8-A

(測定数1)

G8-P9-A

(測定数1)

G8-P10-A

(測定数2)

D8-P4-A

(測定数2)

D8-P4-C

(測定数2)

Sr-90 21 110

44

188 160

23

62

62

95

120

97 47

109

130 259 136

28

0.07

0.31

-

48

Ru-106 - 5.1

2.7

3.6 1180

9.0

8.5

-

2.9

4.5

0.15 21500

23

- 118600 -

46

1697

4120

5.7

-

Sb-125 3.6 8.2

3.3

2.6 1700

2.2

2.1

29

3.8

2.2

- 21500

3.2

2.4 110500 -

202

1300

2880

1.8

-

I-129 0.50 2.9

0.77

1.1 31

0.094

0.37

0.37

0.85

-

0.52 57

0.63

0.64 260 0.15

7.5

1.8

22

0.77

0.11

Cs-137 0.65 0.64

1.0

0.56 0.14

0.60

0.38

12

0.56

0.34

0.00023 6.1

0.44

0.61 83 10

2.6

0.10

-

0.63

0.40

Ce-144 194 153

146

155 160

139

85

-

152

132

- -

141

143 - -

36

-

-

170

92

Eu-154 154 179

180

165 260

170

109

-

166

156

- -

162

183 - -

24

-

-

240

138

表12(c) サンプルごとのFP保持率(%)(その3) [2]
核種 溶融凝固層
O9-P1-A

(測定数2)

O9-P1-B

(測定数1)

G12-P2-B

(測定数2)

G12-P4-A

(測定数1)

G12-P9-A

(測定数1)

N5-P1-H

(測定数2)

N5-P1-D

(測定数2)

O7-P1-A

(測定数1)

O7-P6

(測定数2)

D4-P2-A

(測定数1)

金属相中の

平均値

セラミック相中の

平均値

Sr-90 0.11

12

80 40

0.16

132 77 136

202

85

192

0.06 0.15

98

0.45 59 86
Ru-106 1950

-

- 0.45

-

- 169 19

9.6

26450

1370

2200 2720

-

815 34400 107
Sb-125 1260

3.8

18 0.033

0.67

2.9 372 1540

14

42190

738

1760 2290

-

0.16 27600 129
I-129 8.9

0.99

9.0 0.19

-

0.52 17.5 31

10

277

132

4.4 20

-

31 186# 9.1
Cs-137 -

0.14

0.17 118

0.12

0.32 3.3 23

36

53

101

0.07 -

6.9

0.03 19 7.1
Ce-144 -

66

99 99

106

148 143 75

142

-

126

- -

-

- 78 125
Eu-154 -

99

165 176

162

177 89 80

173

-

100

- -

-

- 185 146

#溶融凝固層中の金属相中のIの保持率は、1個のサンプルだけで大きな値が出ているため、見かけ上大きい値となっている。

FPガスの分析

  • 切り株燃料棒、上部クラスト層、溶融凝固層のサンプルを用いて、FPガス放出試験が行われた。
  • 切り株燃料棒については、事故時のFPガス放出はほとんどなく、ほぼ全量がFPガス放出試験で放出された。
  • 一方で、上部クラスト層と溶融凝固層サンプル中にはFPガスはほとんど保持されていなかった。
  • I-129は、上部クラスト層中での保持率が約10%であった。

ボーリングサンプル分析データを反映した事故進展理解の精緻化

炉心デブリの物量評価

 表13に、ボーリングサンプル分析結果を反映して更新された炉心デブリの物量を示す[2]。

  • 上部空洞:9.2m3(炉心の26%)、1.5m深さ、177体の内42体が炉心外周部に一部残留(うち2体は、燃料棒の>90%が残留)
  • 上部ルースデブリベッド:0.6~1.0m厚さ、上部クラストの上に堆積、11か所のサンプリング。粒子デブリ分析により、平均ピーク温度<2200K、(U,Zr)O2を主成分とする溶融凝固層は>2810K、UO2ペレットの一部に溶融の痕跡>3120K。
  • 上部クラスト層:2.95x105cm3の体積、平均密度8.4g/cc、重量2450kg
  • 下部クラスト層:1.2x106cm3の体積、平均密度7.3g/cc、重量8760kg(漏斗型構造)
  • 溶融凝固層:133.5トンの炉心初期重量の24.5%(#デブリ取り出し作業での評価値)、上部クラストはそのうち1.8%、下部クラストは6.6%に相当
  • 周辺燃料集合体と切り株燃料集合体:合計で初期炉心重量の約33.4%(切り株燃料集合体が10.7%、周辺残留燃料集合体22.7%)、その内部にFPはほとんど保持
  • 下部プレナム領域:>15cmサイズの塊から微粒子までのデブリが、合計約19.1トン主成分は(U,Zr)O2、1wt%以下の構造材や制御材成分の酸化物が混入(Fe濃度は、2~4%)
  • LCSA堆積デブリ:初期の炉心構成物質の4.3%の重量に相当、付着デブリの組成は下部プレナムデブリと類似
  • UCLA堆積デブリ:同3.3%に相当

#これらの物量は、デブリ取り出しの進捗と、LCSA、UCSA領域の調査の進捗により、以降のレポートでさらに改定されている。

表13 炉心デブリの物量評価(ボーリングサンプル、下部プレナムデブリサンプルの分析結果を反映) [2]
RPV内の領域 物量の推定(トン) 不確かさ(%) 初期インベントリに対する割合(%)
上部ルースデブリベッド 26.6 5 19.9
溶融凝固領域

(クラスト層を含む)

32.7

(上部クラスト層:2.45) (下部クラスト層:8.76)

24.5

(上部クラスト層:1.8) (下部クラスト層:6.6)

一部、形状を維持した燃料集合体 44.5

(切り株燃料集合体:14.3) (周辺残留燃料集合体:30.2)

5 33.4

(切り株燃料集合体:10.7) (周辺残留燃料集合体:22.7)

下部プレナムの溶融凝固デブリ 19.1 20 14.3
LCSA

(下部格子より下の領域)

5.8 40 4.3
UCSA

(バッフル板の外側の領域)

4.2 40 3.2
ex-vessel ~0.45 非破壊測定による推定 ~0.3

事故シナリオの更新、デブリふるまい理解の深化

 ボーリングサンプルの分析結果に基づいて、事故シナリオとデブリふるまいの理解が更新された。

燃料崩落直後~下部クラスト層形成

 燃料棒の崩落については、ボーリング調査以前に実施された、上部ルースデブリの分析結果や、炉心上部の内部調査により、以下のように整理されている。

  • スクラム後150分で、炉心上部の温度は約1600Kに到達し、Zryの急速酸化開始。これにともない、炉心温度の急上昇と大量の水素発生が進展。
  • ほぼ同じタイミングで、SSやインコネル構造材とZry製の燃料被覆管や案内管が共晶溶融し(#共晶溶融温度:1200~1400K)、炉心下部に金属メルトが移行開始。金属デブリメルトはUO2ペレットを一部溶解。
  • 燃料ペレットとZry被覆管の界面で形成されたU-Zr-Oメルトや、溶融Zry金属が、燃料棒に沿って炉心下部に移行し(#キャンドリング)、炉心下部で構造材を溶解。

 これに対し、ボーリング調査によって、新たに以下の知見が明らかにされた。

  • 炉心上部から下部に移行したメルトは、冷却水水位周辺の冷却水チャンネルで凝固(#ペレットスタックと金属メルトの凝固物からなる下部クラスト層を形成
  • 下部クラスト層により、炉心中央への水蒸気供給が妨害され、一方で、炉心外周部への集中的な水蒸気供給が発生(#炉心外周部の冷却)。同時に冷却水水位が徐々に回復。
  • これらにより、下部クラスト層が漏斗状に成長し、内部にデブリ保持(#坩堝効果)。
  • ボーリングサンプルの分析により、下部クラスト層中の金属メルトの凝固物の組成はほぼ均一であることが示された。
  • 坩堝効果により、下部クラスト層の中央部の上付近で、崩壊熱により温度上昇、除熱能が不足し、デブリ溶融開始。
  • 一方で、下部クラスト層の拡大・成長に伴い、水蒸気流の閉塞範囲が拡大。炉心中央上部でのZry酸化進展と炉心温度の上昇を抑制。これにより、金属メルトの溶け落ちが進み、下部クラスト層の上に堆積。
  • 金属メルトは、残留UO2由来の崩壊熱によって溶融状態を維持、温度上昇に伴って、金属メルト中に炉心下部の構造材やZry被覆管が溶解。一方で、金属メルトとUO2の融点の大きな差により、ペレットはほとんど残留(#下部クラスト層の保持)。

燃料の大規模崩落~溶融プール形成

  • 炉心下部での燃料ペレットの溶解進展により、支えを失った炉心上部の燃料棒が溶融デブリ中に崩落(#スランピング)。
  • スランピングした炉心物質のうち、金属成分は溶融し、金属メルト液位が上昇。一方で、酸化物デブリはまだほとんど溶融していないため、デブリ中の固体と液相の相分率はそんなに変化していなかったと推定。
  • デブリ堆積物の上部に上部ルースデブリ層が残留していたことから、上記メカニズムでのスランピングが炉心全体で完了するまでは進まなかったと推定(#スランピング進展中に別のイベントが発生)。
  • スクラム後174分に発生したB系ポンプの再稼働イベントにより、短時間で、残された炉心上部の燃料棒が崩落し、上部ルースデブリ層(デブリベッド)を形成、溶融デブリとの界面付近に上部クラスト層を形成
  • 炉心上部の燃料が溶融プールにスランピングしている最中では、溶融プール温度はおよそ2810Kを保持(#(U,Zr)O2融点での溶融潜熱により、温度上昇抑制))。
  • 一方で、溶融プール内に閉じ込められた構造材金属成分は、高温によりほとんどガス相として存在。
  • 溶融プール内に閉じ込められた大きな崩壊熱は、残留したUO2の溶融潜熱に転換(#溶融プールが次第に成長)。
  • この時点では、クラスト層の厚さは、溶融プール内部の崩壊熱と、クラスト層内外面での熱的な境界条件によって決まる。クラスト層内面の温度は溶融デブリの融点となる。クラスト層外面での熱バランスは、切り株燃料や周辺燃料への熱の移動に支配される(<2300K)。
  • この条件での熱バランス解析により、クラスト層の厚さは約10cmと推定(実測値と整合)

溶融デブリプールの成長

  • スクラム後174分のB系ポンプ再稼働イベントで、冷却水投入。それまでは、溶融デブリプールの中に一部未溶融のペレットが残留しており、溶融デブリプールの下面は、漏斗状構造の下部クラスト層で支えられていたと推定(溶融プールの上面は開いていた)。
  • 冷却水投入により、デブリベッドと上部クラスト層が形成されたと推定(#上部クラスト層形成)。同時に、溶融プールは上下クラスト層内に完全に閉塞。
  • 上部クラストの主要な構成物質は、炉心上部の損傷燃料棒とこの時点での炉心上部堆積デブリ。
  • 溶融プールが閉塞された時点では、相当量のUO2が溶融プール内部に溶け残っており、しばらくは、その溶融潜熱と崩壊熱がバランスし、溶融プール温度は高々3120Kを維持。
  • I-129等の揮発性FPやCd等の揮発性の炉心物質は、上部クラスト層形成以前にはデブリの外に放出されていたが、溶融プール閉塞以降はプール内に閉じ込め。
  • プール内に残留していたUO2ペレットがすべて溶融するには10分ほどかかったと評価。その後、溶融デブリプールの温度が再度上昇(#溶融デブリとクラスト層との界面はデブリの液相温度に固定されており、内部の残留UO2が溶解しきるまでは、溶融デブリプールが拡大することはない)。
  • 残留UO2が溶解しつくされると、溶融デブリプールの温度はUO2融点以上に温度上昇(>3120K)。これにより、クラスト層への熱伝達が増加しはじめ、クラスト層の厚さが減少。
  • 熱解析によると、スクラム後約205分で、クラスト厚さの変化が熱的な平衡状態に到達し、以降はクラスト厚が次第に減少していくと推定。

炉心物質の再分布の評価

  • 表14に、ボーリングサンプル分析に基づく、金属/セラミック物量の評価結果を示す[2]。
表14 溶融凝固層中の金属/セラミックデブリの重量比 [2]
領域 総重量の推定(トン) 金属相の重量(トン) セラミック相の重量(トン)
上部クラスト層

(周辺クラスト層を含む)

2.45 0.637 1.813
溶融凝固層 21.49 0.490 21.0
下部クラスト層 8.76 3.854 4.90

#デブリ総重量は、ボーリング調査で得られたデブリの空間分布(各層の厚さ)、炉心下部からの燃料取り出し過程で得られた知見、ボーリングサンプルの分析結果などから総合的に評価された。

#クラスト層の厚さは、±50%の誤差があると評価。

#溶融凝固層の重量は、収納缶へのデブリ回収記録から±10%の誤差があると評価。

#セラミック相と金属相の重量比は、ボーリングサンプルの元素分析の結果から評価。

#溶融凝固層中の金属相の割合は、ボーリングサンプル中の体積割合の平均値に基づいて、全重量に外挿して評価。セラミックの微粒子デブリはボーリング作業中に冷却水で洗い流されて失われたこと、金属の塊デブリは、ボーリングサンプルの外に押し出されたこと、などから、誤差が大きい評価となっている。

燃料棒成分について

  • 表15に、主要な燃料棒成分(U,Zr,Sn)の分布を示す[2]。
  • Uについて、下部クラスト層中での平均組成が、他の領域より顕著に低いことがわかる。一方で、セラミック相中のU濃度は、他の領域と同程度であった。これは、下部クラスト層中の主に金属相中に構造材成分が多く含まれていることに対応している(後述)。
  • Zrについて、上部クラスト層中での平均組成がやや低く、下部クラスト層中での平均組成がやや高い傾向がわかる。一方で、セラミック相中でのZr濃度は、比較的近い値を示しているのに対し、金属相中のZr濃度に大きな違い見えている。上の事故進展の項で説明したように、金属Zrメルトが選択的に炉心下部に移行したとすると、これらの分析結果と整合している。
  • Snについて、初期インベントリに対し、平均で約6倍の物量があると評価された。これは、炉心上部から崩落してきたSnが炉心下部(特に下部クラスト層)に移行・堆積したことを示唆している。特に、金属相中への濃化が見られた。
表15 溶融プール中の燃料棒成分の再分布(wt%) [2]
元素 項目 領域 初期インベントリ
上部クラスト層 下部クラスト層 周辺クラスト層 中央の溶融凝固層
U 平均組成 49 34 46 54 66
セラミック相中の平均値 66 65 66 60 66
金属相中の平均値 27 9.6 8.6 2.2 --
初期インベントリに対する割合(%) 1.3 3.6 1.2 12 --
Zr 平均組成 12 22 16 16 18
セラミック相中の平均値 15 13 15 19 18
金属相中の平均値 8.3 29 20 7.6 --
初期インベントリに対する割合(%) 1.5 8.5 1.8 18.2 --
Sn 平均組成 1.1 1.5 1.3 2.1 0.3
セラミック相中の平均値 0.48 0.70 0.59 0.69 0.3
金属相中の平均値 2.5 2.2 2.9 4.5 --
初期インベントリに対する割合(%) 8.4 36 8.7 5.8 --

#周辺クラストの物量評価値は、表14では、上部クラスト層に含めている。

制御材成分について

  • 表16に、中性子吸収材成分(Ag,In,Cd)の分布を示す[2]。
  • Agについて、初期インベントリに対して、ほぼ2倍の物量が同定された。特に、下部クラスト層中の金属相への濃化が見られた。また、セラミック相中のAg組成も初期インベントリとあまり違わない値が得られた。この傾向は、上部ルースデブリで見られた傾向と大きく異なっていた(#上部ルースデブリでは、Agの物量現象が観測された)。これらのことから、事故進展により、炉心上部からAgが選択的に溶け落ち、特に金属相側に濃化したと推定された。
  • Inについて、初期インベントリに対して、約3~4倍の物量が同定された。金属相側への濃化が見られるが、セラミック相中にも初期インベントリより大きい組成で存在していた。これらの傾向は、Agとおおむね類似していた。
  • Cdについて、平均組成は、およそ初期インベントリと同程度であった。金属相側への濃化が観測された。Cdは蒸発しやすい物質であるが、溶融凝固層中のセラミック相中にかなりの物量が残留していた。クラスト層に閉塞された溶融プール内で、なんらかの合金相として保持されていたと推定された。
表16 溶融プール中の中性子吸収材成分の再分布(wt%) [2]
元素 項目 領域 初期インベントリ
上部クラスト層 下部クラスト層 周辺クラスト層 中央の溶融凝固層
Ag 平均組成 3.2 4.5 2.9 2.9 1.8
セラミック相中の平均値 1.6 3.3 1.7 1.1 1.8
金属相中の平均値 5.9 5.5 7.1 7.3 --
初期インベントリに対する割合(%) 3.6 18 3.3 12 --
In 平均組成 1.0 1.1 1.2 0.88 0.3
セラミック相中の平均値 0.83 0.61 0.88 0.54 0.3
金属相中の平均値 1.5 1.5 2.4 1.8 --
初期インベントリに対する割合(%) 6.6 23 7.5 29 --
Cd 平均組成 0.06 0.07 0.14 0.16 0.1
セラミック相中の平均値 0.05 0.04 0.08 0.04 0.1
金属相中の平均値 0.06 0.09 0.24 0.32 --
初期インベントリに対する割合(%) 1.0 4.3 2.4 7.2 --

#周辺クラストの物量評価値は、表14では、上部クラスト層に含めている。

構造材成分について

  • 表17に、構造材成分(Fe,Ni,Cr,Mo)の分布を示す[2]。
  • Feについて、いずれの領域でも、初期インベントリ中の組成を超える組成値が得られた。上下クラスト層でほぼ同程度の平均組成、溶融凝固層中では初期インベントリ組成の5倍近い値が得られた。また、いずれの領域でも金属相の主要成分となっていた。
  • Crについて、領域ごとの平均組成は1.4~1.7wt%であり、金属相中に濃化していた(セラミック相中に比べて、金属相中のCr重量は約4.7倍)。しかし、金属相への濃化の程度は、Fe(約11.2倍)、Ni(約15.3倍)に比べて小さい値となった。これは、Fe,Ni,Crの酸化傾向と整合していた。
  • Niについて、いずれの領域でも、初期インベントリ中の組成を超える組成値が得られた。最大で初期インベントリ平均の約6倍に相当する組成値が得られた。上下クラスト層と溶融凝固層中の平均組成は近い値が得られたが、周辺クラストでは、やや小さい値が得られた。その原因は特定されていない。
  • Moについて、初期インベントリ組成に対して、約10~20倍に相当する分析値が得られた。Moのセラミック相に対する金属相の重量割合は、Feの値に近く、FeとMoが同程度の酸化傾向をもっていると推定された。金属相中のNi/Moの分析値の比はインコネルの値に近く、金属相の由来物質にインコネル製のグリッドスペーサーが多く含まれていると推察された。
表17 溶融プール中の構造材成分の再分布(wt%) [2]
元素 項目 領域 初期インベントリ
上部クラスト層 下部クラスト層 周辺クラスト層 中央の溶融凝固層
Fe 平均組成 11 11 6.4 14 3.0
セラミック相中の平均値 2.3 3.0 1.6 3.5 3.0
金属相中の平均値 28 17 23 44 --
初期インベントリに対する割合(%) 8.6 23 4.6 6.2 --
Cr 平均組成 1.6 1.6 1.7 1.4 1.0
セラミック相中の平均値 0.69 0.46 1.1 0.70 1.0
金属相中の平均値 3.3 2.5 3.8 3.4 --
初期インベントリに対する割合(%) 3.8 14.2 3.8 14.5 --
Ni 平均組成 5.2 5.5 2.7 6.8 0.9
セラミック相中の平均値 0.77 2.4 0.48 1.3 0.9
金属相中の平均値 14 8.0 11 22 --
初期インベントリに対する割合(%) 13 45 6.4 10 --
Mo 平均組成 0.44 0.34 0.25 0.89 0.03
セラミック相中の平均値 0.10 0.12 0.05 0.21 0.03
金属相中の平均値 1.1 0.51 0.75 2.1 --
初期インベントリに対する割合(%) 27 62 17 28 --

#周辺クラストの物量評価値は、表14では、上部クラスト層に含めている。

FPふるまいの評価

  • 表18に、ボーリングサンプル分析に基づく、FP保持率を示す[2]。
  • FPの分析値は、サンプルごとに数桁異なっており、また、サンプル中のFP分布が非均質であったことから、FP保持率の評価は複数の考え方で行われた。
  • 表中の平均保持率の値は、FP保持率の下限値として、サンプル中に含有されていた1g-Uに対するFP分析値(線量)として、ORIGEN-IIで解析した初期インベントリ中のFP値(全炉心平均)をUに対して規格化した値(線量)に対して評価した。
  • 表中の規格化した保持率の値は、セラミック相と金属相に分けて、セラミック相についてはUに対して規格化し、金属相については燃料棒成分(U+Zr+Sn)に対して規格化した、それぞれの値を加重平均して評価した。
  • これらの評価値は、いずれも、サンプル分析値からの評価になっており、特に溶融凝固層については、セラミック相と金属相中のFP組成の分析値が大きくばらついており、誤差の大きい評価になっていることに注意が必要である。

低揮発性FPについて

  • 全体的に、下部クラスト層、周辺クラスト層、溶融凝固層中では、100%を超えた評価値が多く、炉心中央から炉心中間にかけて配置されていた比較的高燃焼度の燃料集合体由来と推定された。
  • 一方、上部クラストでは、100%を下回る値が得られ、炉心外周に配置されていた比較的低燃焼度の燃料集合体の寄与があった可能性が示唆された。
  • Ce-144については、金属相中の保持率は、セラミック相に比べて低い値を示した。このことから、高温の金属メルト中に、UO2は若干の溶解度を有するが、Ce酸化物はほとんど溶融しないと示唆された。
  • Ce-144の約31%が溶融プールの凝固物中に存在し、うち約6%が各クラスト層、約1.4%が上部クラスト層に存在していた。これに対し、切り株燃料棒中の割合は約11%であった。
  • Eu-154,Eu-155について、およぼCe-144と類似した評価結果が得られた。

中揮発FPについて

  • Sr-90について、上部クラスト層と周辺クラスト層中の保持率が、やや低い値を示した。溶融凝固層についても、やや低い値が得られた。一方、下部クラスト層については、ほぼ100%の保持率として評価された。セラミック相中で主に検出されたが、金属相側への移行も見られた。
  • Sb-125について、評価されたFP保持率(平均保持率)は、100%を大きく超える値となった。金属相とセラミック相に分けて、燃料成分に対して規格化した場合には、特に金属相中でさらに大きな評価値が得られた。しかし、Sb-125は、ほとんどUと同伴しておらず、金属相中に別相を形成して存在していたため、これらの評価では、合理的な値を得ることができない。セラミックから金属相への再分布の傾向は確認できる。
  • Ru-106について、Sb-125と同様に極めて大きな評価値が得られた。Sb-125と同様に、事故進展過程で金属相側に濃化したと考えられる。

高揮発性FPについて

  • I-129については、サンプル全体である程度保持されていることが確認できる。金属相中でやや大きいI-129保持率が示されており、金属相中でのなんらかのI-129保持メカニズムがあることが示唆された。若干の保持は見られるものの、I-129の大半は放出されている(保持率の合計は約2.4%、I-129検出の極めて大きいサンプル2個を除く)。
  • Cs-137については、若干の保持率が見られているが、総じてI-129より小さい値であった。
表18 溶融プール中のFPの再分布(初期インベントリ、ORIGEN-II解析値、に対する比(保持率))(%) [2]
核種 揮発性 項目 FPの分布
上部クラスト層 下部クラスト層 周辺クラスト層 中央の溶融凝固層
Ce-144 平均保持率(下限値) 43 51 50 93
相ごとに規格化した保持率(上限値) 76 132 87 121
同上(セラミック相) 85 130 91 125
同上(金属相) 49 134 59 78
初期インベントリに対する割合 1.4 5.9 1.6 24
Eu-154 平均保持率(下限値) 57 61 57 114
相ごとに規格化した保持率(上限値) 98 143 102 149
同上(セラミック相) 105 149 105 146
同上(金属相) 80 131 82 185
初期インベントリに対する割合 2.0 7.9 2.0 32
Eu-155 平均保持率(下限値) 47 44 39 85
相ごとに規格化した保持率(上限値) 81 125 83 103
同上(セラミック相) -- -- -- --
同上(金属相) -- -- -- --
初期インベントリに対する割合 1.6 5.1 2.5 22
Sr-90 平均保持率(下限値) 23 38 24 33
相ごとに規格化した保持率(上限値) 39 104 36 78
同上(セラミック相) 56 117 31 86
同上(金属相) 45 94 58 59
初期インベントリに対する割合 0.73 4.5 0.45 8.3
Sb-125 平均保持率(下限値) 330 490 220 350
相ごとに規格化した保持率(上限値) 880 770 1690 9030
同上(セラミック相) 16 29 80 129
同上(金属相) 640 860 1960 1060
初期インベントリに対する割合 8.3 43.4 7.4 10
Ru-106 平均保持率(下限値) 193 330 97 510
相ごとに規格化した保持率(上限値) 770 990 1070 14100
同上(セラミック相) 50 34 47 107
同上(金属相) 370 580 420 1240
初期インベントリに対する割合 4.6 29.7 3.4 11.2
I-129 平均保持率(下限値) 8.1 30 2.8 8.1
相ごとに規格化した保持率(上限値) 19 66 14 65
同上(セラミック相) 7.2 98 3.5 9.1
同上(金属相) 35 93 52 186
初期インベントリに対する割合 0.27 3.5 0.1 2.1
Cs-137 平均保持率(下限値) 13 12 2.7 3.0
相ごとに規格化した保持率(上限値) 26 31 12 10
同上(セラミック相) 4.9 35 3.2 7.1
同上(金属相) 28 27 41 19
初期インベントリに対する割合 0.41 1.4 0.1 0.87

#周辺クラストの物量評価値は、上部クラスト層に含めている。

#I-129の下部クラスト層中の大きな評価値は、サンプルのうち2個だけにI-129が多く含まれていたことによる。

まとめ

  • 上部クラスト、周辺クラスト、溶融凝固層の成分は類似し、金属相リッチな領域とセラミック相リッチな領域の混合状態であった。セラミック相中には、Ag-InとFe-Cr-Niの析出相が見られた。
  • 金属メルトが、炉心上部から下に溶け落ち、凝固したセラミック相の隙間に侵入して凝固した様子が見られた。このことから、炉心物質の溶融崩落は連続的に複数回発生したと推定された。
  • 上部クラスト層の上には、上部ルースデブリ層(デブリベッド)が堆積していた。>2200Kで、燃料ペレットとZry被覆管の界面で形成されるU-Zr-Oメルトによる燃料溶解が進展したと推定された。
  • 溶融プール中では、(U,Zr)O2相を主成分とする領域は>2810Kに達していたと推定された。さらに、溶融プールの中央部ではUO2ペレット溶融の痕跡が見られ(残留ペレット中の大きな気泡)、局所的に>3120Kに達していたと推定された。
  • 下部クラストは、炉心上部から溶け落ちてきた主に金属デブリメルトの凝固物と燃料ペレットスタックで構成されていた。Zry被覆管の表面酸化膜は金属デブリ中に溶解したと推定された。金属デブリの主成分は、ZryとSS,Ag,などであった。
  • 金属デブリの溶融溶け落ちは>1400Kで発生したと推定された。炉心下部で凝固し、冷却水チャンネルを閉塞した。下部クラストのピーク温度は1300-1500Kと推定された。
  • クラスト層の厚さは約4.5~11.5cm(上部クラストの方が厚い)で、クラスト層内に大きな温度勾配が存在していた。その内側には比較的温度均質な溶融デブリプールが保持されていたと推定された。
  • かさ密度に関しては、上部クラスト、周辺クラストは7.6~9.7g/cc((U,Zr)O2相と金属相の混合物)、下部クラストは7.0~7.6g/cc(残留ペレットと金属相の混合物)、溶融凝固層は、5.5~8.8g/cc(金属相とセラミック相の混合物)であった。
  • 切り株燃料棒では、ほとんどZryの酸化は見られず、延性が維持されていた。事故時のピーク温度については、切り株燃料棒の上部で>1073K(制御材の溶融の痕跡)、ほとんどは<920K(Zryの再結晶化なし)と推定された。
  • 切り株燃料の残留長は、炉心中央で約60cm、炉心周辺約120cm(#60cmは事故時の最低水位に相当)であった。
  • 下部クラスト層は、全体的に漏斗型の構造をしており、事故過程での水位の上昇と、炉心外周部が事故進展中に比較的温度が低かったことに対応していた。
  • 上部、周辺クラスト層中には、セラミック相を主成分として金属相が混合していた(体積割合として約25%)。金属相の主成分はSSやインコネルで、わずかにZrが混入していた。セラミック物相中のZr濃度は10~20%(平均13%)で、炉心インベントリ(18~19%)より小さい値であった。このことは、Zrの先行的な炉心下部への移行(下部クラスト層など)があったことを示唆していた。
  • 上部、周辺クラスト層中の中性子吸収材は、セラミック相中と金属相中にともに存在し、平均濃度は3%(炉心インベントリ1.9%より大きい値)であった。
  • 上部クラスト中のNi/Mo比から、インコネルグリッド成分を多く含むと推定された。
  • 上部クラスト中のU富化度について、1.98%燃料(炉心中央)と2.64%燃料(炉心中間)の混合状態が発生していたと推定された。
  • また、上部クラスト中の低揮発性FP保持率からは、高燃焼度燃料の寄与が大きい(外周部の燃料を含まない)と推定された。
  • 上部クラスト中のSr-90の保持率データからは、金属相とセラミック相で保持率に大きな差異は見られなかった。領域ごとに顕著な再分布傾向も見られなかった。
  • Sb-125,Ru-106は、金属相側に濃化していた。
  • 高揮発性FPについて、金属相、セラミック相双方に、若干量が保持されていた。初期インベントリに対し、セラミック中では最大5%、金属中では最大35%、保持されているという評価結果が得られた。ただし、それぞれの相に含まれている揮発性FPの濃度自体は同程度であり、この差は、金属相に含まれているUが少ないため、見かけ上現れた結果となっている。
  • 下部クラスト層では、ペレット中のクラックに金属メルトが血管状に侵入していた。ZrとSnが濃化していたが、それぞれ別相を形成していた。
  • 下部クラスト中のFe濃度は、平均で11%、金属相中では最大34%であった。これに対し、Niの金属相中の平均濃度は5.5%、Crでは1.6%であった。Zrは、下部クラスト層中の金属相中に約30%の割合で含有されていた。Moを多く含み、インコネル由来成分が下部クラストに多く含まれると推定された。
  • 下部クラストでの低揮発性FP保持率は、初期インベントリの130%(セラミック相)、134%(金属相)と評価された。100%を超える値は、炉心中央の高燃焼度燃料由来の可能性を示唆している。
  • 下部クラストでの中揮発性FP保持については、Sr-90はセラミック相側に多く保持されていた。Sb-125,Ru-106は金属相側に濃化していた。
  • 溶融凝固層は均質性が高く、金属デブリ粒子、セラミックデブリ粒子、混合物粒子からなっていた。
  • AgとInは、測定値にばらつきが大きいが、金属相側に多く検出された。Cdはサンプルのうち約半数で金属デブリ側で検出された。蒸気圧の高いCdであっても、合金化されることで、蒸発が抑制された可能性が示唆された。
  • 低揮発性FPについて、溶融凝固層中の保持率は78~185%で100%よりやや大きい値となった。高燃焼度燃料由来の可能性が考えられた。
  • Sr-90はUとの同伴性があまり見られなかった。

参考文献

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[7] D.W. Akers et al., Verification of the ORIGEN2 Code Analyses for the TMI-2 Reactror Core, Proceedings of the ACS Symposium on Nuclear Reactor Severe Accident Chemistry, Toronto, Canada, June 6-11, 1988.