DOE年次レポートの概要

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 TMI-2事故の数か月後から、TMI-2事故炉の廃炉に向けて、GPU社、EPRI、NRC、DOE(GEND)の協議が行われ、廃炉(特に圧力容器からの燃料取り出し、原子炉建屋内の環境整備)に必要となる知見の効果的、効率的な取得と実作業への反映のために、マネージメントおよびサポート体制の整備と必要なタスクの整理が行われた。また、TMI-2の廃炉過程で得られる知見・データは、実機サイズでのシビアアクシデントの理解や事故で発生した放射性廃棄物の取り扱い・処理技術の開発にも極めて有用であることから、GPU社が進める廃炉作業を遅延させない範囲において、これらに係る内部調査やサンプル採集と分析などが進められることとなった[1]。原子炉建屋や燃料取り扱い建屋の内部調査、さらに、圧力容器内や冷却水系(RCS: Reactor Coolant System)の廃炉に向けた作業は、1980年から本格的に進められた。このうち、DOEは、以下の分野を主担当した[1]。

図1 TMI-2号機プラントの構成 [2]
  • 事故時および事故後の、安全機器や設備、および電気系統のサバイバル状態の確認
  • 建屋内の線量分布と環境影響の確認、線量低減と廃棄物取り扱い技術の開発
  • 知見とデータのアーカイブ化、産業界への情報提供
  • 炉心と燃料の状態の調査、事故シナリオの解明

 1980.3月に、これら課題の実行計画(TI&EP: Technical Information & Examination Program)が策定された[1]。さらに、1981年に、廃棄物安定化プログラムと炉内状況の評価プログラムと統合・改定され、以下の3分野で研究開発プログラムが整理された[2]。

  • 事故プラントからのデータ取得プログラム(DAP: Data Acquisition Program)
  • 廃棄物取り扱い・安定化プログラム(WIP: Waste Immobilization Program)
  • 事故炉の状態評価プログラム(REP: Reactor Evaluation Program)

 さらに、1983年からは、燃料や炉心デブリの分析、キャラクタリゼーション、貯蔵、輸送、などに関する技術支援、および、EPICOR-IIやその他の事故炉由来の高レベル廃棄物の処理・処分の研究開発について、

  • 炉心物質の取り扱いプログラム(CAP: Core Activities Program)
  • EPICORおよびその他の高レベル放射性廃棄物の処理・処分の研究プログラム(EPICOR and Waste Research and Disposition Program)

のカテゴリーで進捗報告された[4]。

 1984年7月に圧力容器ヘッドが、1985年5月に上部プレナム構造物が撤去され、1985年10月から圧力容器内からの燃料および炉心デブリ(Core CDebris)の取り出しが開始された。これに対応して、1985年以降の年次レポートは、当初目的であったTMI-2でのTechnical Information and Examination Program(TI&EP)から、研究開発の進捗報告Research and Development Programに変更された[6]。また、この段階までに行われてきたDAPやEPICORなどの廃棄物処理についてはほぼ完了した。そこで、1985年から、研究開発プログラムの改編が行われ、以下の3プログラムに集約された[6]。

  • 燃料物質と廃棄物の取り扱いプログラム(FWHDP: Fuel and Waste Handling and Disposition Program)、以下の3
  • 事故評価プログラム(AEP: Accident Evaluation Program)
  • 事故炉の状態評価プログラム(REP: Reactor Evaluation Program)

 さらに、廃炉工程の進捗にともない、得られた知見の産業界への提供が一層重視されるようになり、1986年から

  • TMI-2で得られた知見の活用(Future Uses and Applications of TMI-2 Data)

というプログラムが追加された[7]。

 また、1987年には、上述のDAPプログラムの成果とりまとめが

  • オンサイトでのデータ取得(Onsite Data Acquisiton)

として行われた[8]。

 GENDレポートとしての年次報告は1988年まで行われた。1989年内に圧力容器内からの燃料と炉心デブリ取り出しがほぼ完了し、1990年に最終検査が完了して、モニタリングフェーズに移行した。これに対応して、1989年から1990年にかけて、関連部署が閉鎖された。1989年と1990年の年次レポートは、GENDレポートではない形式でDOEから公開された。

 これらの年度ごとの進捗が年次レポートとして刊行された[1-10]。本項目では、DOE年次レポートの概要をまとめる。

年度ごとの進捗概要

 図1にTMI-2号機プラントの構成を示す[2]。原子炉建屋内には、原子炉圧力容器の周囲に、加圧器、蒸気発生器、冷却水循環ポンプ、緊急時の炉心注水タンク、冷却水ドレインタンク(RCDT: Reactor Coolant Drain Tank)などが配置されている。地階にはサンプ(排水溝)があり、排水ポンプが設置されている。隣接する補助建屋には、RCS系冷却水の浄化システムが設置されており、脱塩装置の前後にフィルターが取り付けられている。また、冷却水の貯留タンク(RCBT: Reactor Coolant Bleed Tank)や、廃液タンクが設置されている。建屋外にはホウ酸水の貯蔵タンクが置かれている。タービン建屋内には、タービンと水蒸気の凝縮器(コンデンサ)、発電機、ポンプなどが配置されている。

1980年 [1]

  • TMI-2廃炉と関連作業、調査、データ取得にかかわる総合計画(TI&EP)がとりまとめられた(GEND-001レポート)[12]。
  • 総合計画の実行プランを策定する専門家グループとして、EG&G社の専従スタッフ12名と、パシフィックノースウェスト国立研究所(PNL)、サンディア国立研究所(SNL)、エクソン社などから派遣された専門家により、Technical Integration Office(TIO)が設置された。(TMI-TIO Program Management Plan, 1980
  • 安全機器や設備、電気系統のサバイバル状態については、建屋内線量計の回収、内部調査用のポータブルビデオカメラシステムの調達、建屋内の固定監視カメラの調達、12個の安全機器の現場での再稼働試験が行われた。
  • 建屋内の線量分布調査と線量低減(環境改善)、廃棄物取り扱いについては、廃炉作業にともなって事故時の情報を持ったサンプルが失われる前に、建屋内のサンプル採集(圧力容器内冷却水、RCBT、原子炉建屋内の雰囲気、水素再結合設備の配管、など)が進められた。また、公衆用のモニタリングシステムが開発され、建屋から5マイル以内に居住している住民が訓練され、放射性物質を自分たちで測定できるようになった。
  • 知見とデータのアーカイブ、産業界への情報提供については、1980.7月に、原子炉建屋内の換気が行われ、滞留していたKr-85が排出された。以降、原子炉建屋内へのルーチン的な立ち入りが開始された。また、補助建屋と燃料取り扱い建屋に滞留していた事故由来水の処理が、EPICOR-IIにより完了した。その処分に向けて、EPICOR-IIの高線量樹脂やライナー(樹脂の容器)の特性評価と処分技術の検討が開始された。さらに、事故対応に係る知見が、1980年9月までに、全米の原子力技術者3000人で共有された。
  • 炉心と燃料の状態評価については、ヘッドから圧力容器内にカメラを挿入する調査の基本計画が立案された。また、燃料やデブリの収納缶の概念設計と、燃料やデブリの回収ツール・手法の検討が開始された。

1981年 [2]

  • 基本的なプロジェクト内容に大きな変更はないが、TMI-2事故炉のTechnical Information and Examination Program(TI&EP)が改定され、事故炉からのデータ取得(DAP: Data Acquisition Program)、廃棄物安定化(WIP: Waste Immobilization Program)、事故炉の状態評価(REP: Reactor Evaluation Program)に再編された。
  • DAPは、事故炉内の情報収集(設備・プラントデータ、水素燃焼イベントでの損傷評価)、除染・廃炉・調査技術の開発、FP移行の理解、ソースターム評価、を担当する。
  • WIPは、安全でコスト効率的な放射性廃棄物の取り扱い・輸送、および商用処分施設への処分、を担当し、当面の主な対象物は、EPICOR-IIのイオン交換ライナーと浸水型脱塩システム:SDS(Submerged Demineralizer System)のゼオライト吸着塔とする。
  • REPは、オフサイト試験でのデータ採集、圧力容器内やRCS系へのアクセス方法の開発とデータ採集、を担当し、当面は、ヘッド撤去に向けた炉心内部の損傷状態の調査、事故シナリオ評価、燃料やデブリ取り出しに向けた炉内データの採集、モックアップ試験などの計画を策定する。

DAP

  • エリア線量計HP-R-211と、ルースパートモニタリングシステムコンバーター(Loose Part Monitoring System Converter)の分析が完了した。
  • 自己発電型中性子検出器(SPND:Self-Powered Neutron Detector)の測定値による事故時の温度評価が完了した。
  • 計測機器および電気系統の情報を原子力事業者に転送するプログラムが導入された。
  • 原子炉建屋地階サンプ滞留水と、補助建屋のmakeupフィルター5B系統の付着物、のサンプリングと分析が行われた。
  • RCBT、建屋内エアクーラー、305フィート高さ床面、のγスキャンが行われた。
  • 原子炉建屋内の総合除染試験計画と、ポーラークレーンの検査計画が立案された。
  • 原子炉建屋内の多くの場所で、コンクリートと金属のコアサンプルが採集された。
  • 作業員のルーチン的な立ち入りに向けて、携帯サーベイメーターの較正が行われた。
  • 事故時に発生した建屋内の水素燃焼イベントによる設備や機器の損傷評価が実施された。
  • EPICOR-IIプレフィルターPF-16が、バッテルコロンバス研究所(BCL)に輸送され、予備分析が開始された。
  • 事故時に発生した建屋内での水素燃焼イベントの原因探索、安全機器・設備のサバイバル状態の調査、FPふるまい・分布の調査が進められた。

WIP

  • EPICOR-II樹脂を300年間収納・保管可能な、液体や固体廃棄物用の高強度収納コンテナ(HIC: High Integrity Container)の設計が開始された。
  • 原子炉建屋に滞留していた高レベルの汚染水を処理するSDSシステムの開発支援として、イオン交換剤への適切なゼオライト混入量の評価と、ゼオライトのガラス固化模擬試験が行われた。
  • 高線量SDSライナーとEPICOR-IIプレフィルターの処理に関する研究開発と、廃棄物輸送の責任体制について、DOE、GPU社、NRCがおよそ合意した。

REP

  • 圧力容器ヘッド内部調査に向けて、内部調査装置の開発とヘッド貫通方法の検討が進められた。
  • 既存知見による、炉心損傷程度と損傷範囲の予備評価が完了した。
  • 破損燃料収納缶の予備設計が行われた。
  • 燃料取り出しと圧力容器内の構造物解体のための設備と方法について概念検討が行われた。

1982年 [3]

DAP

  • 原子炉建屋内の安全設備と電気系統について、事故時のサバイバル状態について各種機器・設備の調査が継続された。ポーラークレーン再稼働の技術支援が行われた。圧力容器内については、APSR(Axial Power Shaping Rod)挿入試験が新たに実施され、インコアモニターのin situ試験が継続された。得られた知見は、ヘッド撤去に向けた炉内状況推定に利用された。
  • 線量と環境放出については、一次系液体・固体サンプル分析の継続、計量管理システムの開発、事故時ソースターム評価、建屋地階サンプル採集、高汚染の建屋地階やRCBTキュービクルなどのCCTV調査、などが進められた。また、原子炉建屋内の総合除染試験が実施され、各種の除染技術について性能・効果が検証された。事故時の水素燃焼解析が継続された。
  • 炉内状況の調査に関しては、炉内調査技術の検討が継続され、Core Topography調査ツールの設計・製作と、採集される炉内サンプルの保管方法が検討された。

WIP

  • DOEとNRCがTMI-2廃棄物の取り扱い方法に合意した(#廃棄物の一部を、DOEが研究開発に利用することを含む)。
  • EPICOR-II廃棄物からのガスサンプリングデバイス開発(実廃棄物2体に適用)、高強度コンテナ(HIC)の検証試験が行われた。
  • 高汚染SDSが研究機関に輸送され、ライナーのガラス固化技術の開発と汚染樹脂の分析が開始された。

REP

  • 初めての炉内ビデオ調査として。Quick Look調査が実施された。
  • ヘッド撤去の準備として、制御棒61本とAPSR8本のリードスクリューの接続外し、撤去技術の安全評価などが進捗した(ヘッド撤去は1983年に予定された)。
  • プレナム構造物撤去と燃料デブリ回収方法の具体的な実行計画の検討が開始された。

参考:APSR挿入試験

参考:Quick Look調査

参考:総合除染試験

1983年 [4]

DAP

  • 原子炉建屋内の安全設備と電気系統について、事故時のサバイバル状態について各種機器・設備の調査が継続された。ヘッドとプレナム撤去に向けた重要工程であるポーラークレーン負荷試験の準備が進められた。
  • 線量と環境放出については、一次系の液体・固体サンプル分析の継続、事故時ソースターム評価、建屋地階の排水後の粘土状サンプルの採集、エアクーラーの調査、などが進められた。事故時の水素燃焼イベントについて解析が継続され、約370kgの水素がRCDTラプチャーディスク経由で放出され、事故後約10時間時点で、雰囲気中の巣井戸濃度約7~8%に達して、何らかのスパークにより燃焼したと評価された。
  • 炉内状況の調査に関しては、遠隔ロボット(Louie、ROSA)の開発が進められた。

WIP

  • SDS系統から、SDSベッセルが撤去され、構外に搬出された。埋設処分時の再結合触媒とベントシステムの開発が行われた。また、ゼオライトのガラス固化技術の開発が行われた。
  • EPICOR-II廃棄物の搬出がほぼ完了し、INELに輸送された。
  • RCS系のmakeupフィルターと脱塩媒体からのサンプリングと線量測定が、遠隔ロボットLouieにより行われた。サンプルはORNLに移送され分析された。
  • 1983年内に、事故時に汚染水の処理に用いられた、高線量廃棄物の約95%の搬出が完了した。

REP

  • Underhead Characterizationが行われ、ヘッド内の線量測定や構造物の損傷状態の調査、さらに、様々な課題に関する安全性(#この時点で、大きな課題とされていた上部プレナム構造物付着デブリの自然発火可能性の検討を含む)の検討が行われた。その結果を受けて、圧力容器ヘッドの撤去を大気中で行うことが最終決定された
  • プレナム構造物の撤去に向けて、Qucik Scanにより、歪みや損傷状態、付着デブリの状態、上部支持板への燃料集合体上部や上部端栓の固着・融着状態、プレナム構造物と圧力容器フランジとの接合状態、などが調査された。
  • さらに、プレナム構造物の調査ツール、吊り上げツール、付着デブリの除去ツール、の設計製作が行われた。
  • プレナム構造物の撤去方法については、一体物で撤去できるかどうか、水中工法か大気中工法か、などを判断するために、プレナム初期リフトにより数23cmジャッキアップしてから、内部調査が継続されることとなった。
  • Core Topography調査が行われ、上部空洞周辺(上面、側面、底面)での燃料集合体や炉心物質デブリの堆積・残留状態が3Dマップとして描かれた。
  • 炉心部からの燃料取り出しについては、Quick Look調査での観測結果に基づき、炉心上部の破損燃料や粒子デブリを対象にして、大きく2つの燃料取り出し概念について検討が進められた(#WH社が開発担当)。
  1. 圧力容器上部の作業プラットフォームから、長尺ツールを吊り降ろし、作業員の手作業により、冷却水中で、燃料や炉心部デブリを収納缶に回収
  2. 完全遠隔タイプのロボット(シュレッダー、真空吸引、ROSA)を圧力容器内に設置して、燃料や炉心部デブリを破砕し、その真空吸引作業により、圧力容器外に設置した収納缶内に燃料やデブリを回収
  • 取り出した収納缶を一時貯蔵するために、A系の使用済み燃料プールの再稼働が行われた。
  • また、圧力容器内冷却水の循環型処理システム(DWCS)の検証試験が行われた。

CAP

  • INELが、TMI-2で回収されるサンプル分析のリード機関に選定された。
  • TMI-2 Core Examination Planが公開され、内部調査ニーズと優先度が整理された。
  • Plan for Shipment, Storage, and Examination of TMI-2 Fuelが公開され、取り出した燃料物質の輸送、貯蔵、分析方法が示された。
  • RCS系のmakeupフィルター、CRDMリードスクリュー、などの分析が行われた。
  • 上部ルースデブリサンプルが、炉心中央と炉心中間で採集する深さ位置を変えて6か所から採集された(#1984年初旬にさらに5か所から採集)。
  • Core Topography調査結果に基づき、上部空洞の3Dマップが整備された。

EPICOR及びそれ以外の高レベル放射性廃棄物の処理・処分研究開発

  • このプログラムでは、EPICOR-IIライナーの処理・処分技術と処分用の高強度コンテナ(HIC: High Integrity Container)の開発、それ以外の事故由来高レベル廃棄物(ライナーや樹脂)の処理・中間貯蔵技術の開発を、それぞれ進めることとされた。
  • EPICOR-IIライナーと樹脂の分析、及び、埋設処分用のHIC開発が進められた。
  • それ以外の事故由来の高レベル廃棄物については、研究開発計画が示された。

参考:圧力容器ヘッドの撤去

参考:上部プレナム構造物の撤去

参考:Core Topography調査

参考:リードスクリューサンプルの分析

参考:上部ルースデブリの分析

参考:デブリの自然発火性確認試験

参考:デブリ取り出し工法の変遷

1984年 [5]

 1984.5月に、圧力容器内からの燃料・デブリ取り出し工法の最終決定が行われた[50]。それまでは、

  1. 通常の燃料交換と類似の方法で、圧力容器ヘッドを大気中で撤去した後で、燃料移送Canal全体を水没させて上部プレナム構造物を水中で撤去し、Dリングの上からの遠隔自動操作により、燃料・デブリを取り出す工法
  2. 圧力容器ヘッド撤去後に、圧力容器の上に改良型IIFを設置して圧力容器内のみ水位をかさ上げし、改良IIFの上に遮蔽付きの作業プラットフォームを設置して、そこからの遠隔マニュアル操作により、燃料・デブリを取り出す工法

の、2つのプランが主に検討されていた。さらに、前者では、圧力容器内に遠隔操作ロボットを導入して、燃料・デブリをスラリー状態にして取り出す方法が検討された。後者については、上部プレナム構造物が大気中で撤去できるかどうかの判断が重要課題の一つになっていた。検討の結果、以下の3点が重視され、後者の工法が選定された。

  1. 取り出しツールには、できるだけ単純で、信頼性の高いものを採用する。複雑で高性能のツールは、必要不可欠と判断された場合に、次第に導入する。
  2. 燃料移送Canalをドライに保つことで、汚染水の処理量を大幅に低減する。あわせて、原子炉建屋内への燃料物質の拡散をできるだけ抑制する。
  3. 圧力容器周辺のコンクリートフロアは、原子炉建屋内で空間線量が最も低い場所の一つである。これに対し、Dリング上は、相対的に線量が高い。圧力容器ヘッド近くで作業することで、作業員の被ばくが抑制される。

 1984.2月には、ヘッドとプレナム構造物の撤去で用いる、ポーラークレーン負荷試験が行われた。燃料・デブリ取り出し工法の最終決定を受けて、1984.7月に圧力容器ヘッドの大気中での撤去、1984.12月にプレナム構造物の初期リフトが行われた。

DAP

  • 建屋内の安全機器、電気系統などの調査計画(I&E)のPhase-Iでの現地調査と、in situ試験が終了した。調査した機器や電気系統のうち約1/3で不具合が発生した折、約1/4が動作不可であった。
  • Phase-IIでの詳細調査に向けて、機器の取り出しが行われた。
  • 圧力容器内でのデブリベッド下の成層化状態を調査するため、ボーリング調査方法の詳細検討が開始された。
  • 圧力容器内のビデオ調査で取得された画像の分析と編集作業を、DAPが担当した。

WIP

  • RCS系統のmakeupフィルターと脱塩装置からの苛性ソーダ溶液によるCsリンス(#事故時に、約37,000CiのCs-137により汚染)作業が行われ、1984年中に40%の除去が完了した。また、これらの設備に燃料物質が約4.1kg付着していることが確認された。リンス後の溶液は、SDS系に送られCsが再吸着された。
  • SDSライナーはハンフォードサイトに移送され、コンクリートオーバーパックで一時貯槽されることとなった。
  • EPICOR-IIの有機系廃棄物は、HICに格納して商用施設で埋設処分されることとなった。
  • その他の、事故由来の高レベル廃棄物(Abnormal Waste)については、一般的な放射性廃棄物の最終処分方針が決定されるまで、INELで中間貯蔵されることとなった。

REP

  • ヘッド撤去に向けた準備作業として、ポーラークレーン負荷試験ヘッドスタッドの撤去、CSP(Canal Seal Plate)取り付け、圧力容器内の冷却水処理系(DWCS: Defueling Water Cleanup System)の整備、ヘッド貯蔵スタンド用の砂遮蔽体の搬入、ヘッドリフト作業やその準備作業のモックアップ試験、等が進められた。
  • ヘッド撤去が、遠隔作業により行われた。数回発生したトラブルは、作業員による現地作業で処理された。
  • プレナム構造物の初期リフト(ジャッキアップ)の準備として、水中カメラ、光源、取り扱いツールなどが作業プラットフォームに取り付けられ、損傷状態の調査が行われた。また、プレナム構造物に固着し、ぶらさがっていた燃料集合体や上部端栓の叩き落としツール(スライドハンマー)が投入され、これらの除去作業が行われた。#この作業は、事故後初めて、相当量の燃料成分が、圧力容器内で移動するイベントとして注目された
  • 油圧ジャッキのモックアップ試験が行われた。
  • 初期リフトが2段階で行われ、上部プレナム構造物が18.4cm引き上げられた。段階ごとに、残留していた上部端栓やぶら下がり燃料集合体が自力で崩落したり、スライドハンマーによる除去作業が行われた。
  • 燃料デブリ取り出し方法が確定された(1984.5月)。実工程を担当するGPU社の強い意向で、作業信頼性の観点から、遠隔マニュアル方式が選定された。マニュアル工法では、長尺ツールによる摘まみ上げ(Pick-and-place)工法と、真空吸引ノズルと2種類のフィルターによる真空吸引工法が併用されることとなった。これらの工法に対応させて、Fuel型、Knockout型、Filter型の3タイプの収納缶が設計された。各種長尺ツールの設計が進められた。
  • 回収された収納缶は、使用済み燃料プールにいったん貯蔵してから、INELに構外輸送されることとなった。このための構外輸送キャスクの設計が完了した。7体の収納缶をキャスク1体に格納して輸送する方式であった。これは、Pu含有物質の輸送における二重格納という連邦法にも合致していた。

CAP

  • 圧力容器内やRCS系などから採集された各種の分析用サンプルの輸送が行われた。
  • INELで、11個のルースデブリサンプル、2個のリードスクリューサンプル、1個のリードスクリュー案内管サンプル、加圧器の抵抗温度計サンプル、等の分析が進められた。
  • 分析結果に基づいて、デブリベッドの事故時最高温度が2922K(UO2融点の156K下)と推定された。また、FPの分布・マスバランス評価が行われた。

EPICOR及びそれ以外の高レベル放射性廃棄物の処理・処分研究開発

  • EPICOR-IIプレフィルター 50体中46体をHICに入れて商用処分場で埋設することが決定され、そのうち37体の埋設が完了した。
  • 残り4体は、低レベル廃棄物処理の研究開発に利用されることとなった。セメント固化やDowポリマー固化試験、浸出試験などが計画された。
  • それ以外のAbnormal Wasteについては、INELでの中間貯蔵計画の検討が継続された。TRU廃棄物のカテゴリーとなると考えられ、主な対象物は、冷却系のカートリッジフィルター、有機樹脂、各種タンクのスラッジ、建屋地階の汚泥、SDSカートリッジやフィルター、原子炉建屋内の汚染された設備、等と想定された。

参考:圧力容器ヘッドの撤去

参考:上部プレナム構造物の撤去

参考:リードスクリューサンプルの分析

参考:上部ルースデブリの分析

参考:デブリの自然発火性確認試験

参考:デブリ取り出し工法の変遷

参考:燃料・デブリ取り出しツールの設計

1985年 [6]

 1984年までに廃炉への技術支援と調査が大きく進捗し、事故由来の廃棄物処分や、安全機器・電気系統のサバイバル状態の調査などはほぼ終了した。そこで、1985年から、年次報告の構成が大きく変更され、燃料と廃棄物の取り扱いと輸送・安定化、事故評価、事故炉内部の状態評価の3プログラムに再編された。

 1985年の大きな進捗は、1985年5月のプレナム構造物の最終撤去と、1985年10月の炉心部からの燃料取り出し開始、であった。

FWHDP

  • SDS容器の搬出とコンクリートオーバーパックでの一時埋設により、事故由来の汚染水を処理した廃棄物の処理はおおむね完了した。
  • そこで、1984年までの廃棄物取り扱いプロジェクト(WIP)と、炉心部からの燃料取り出し開始にともなって開始される炉心物質の輸送(Core Transportation)プロジェクトが統合され、FWHDP(Fuel and Waste Handling and Disposition Program)に再編された。
  • Core Transportationについては、1/4スケールの輸送キャスクとフルスケールのknockout収納缶の落下試験が行われた。
  • 輸送キャスクの取り扱い方法および収納缶の装荷方法の検討が進捗し、輸送キャスク製造が開始された。
  • デブリ収納缶内に配置する、再結合触媒の機能確認試験が行われた。

AEP

  • 事故解析に係る研究開発プログラムが、AEP(Accident Evaluation Program)に再編された。
  • 炉心ぶから回収されたサンプル分析が継続され、FPインベントリ・分布の解明が継続された。#しかし、インベントリデータ精緻化のためには、炉心下部や下部プレナムなどから追加サンプル採集が必要とされた。
  • 事故シナリオ解析が継続された。
  • 圧力容器内のビデオ調査とサンプル採集が継続された。
  • 炉心下部から下部プレナムにかけてのコアボーリング計画の具体化が進められた。

REP

  • 1984年までのREPDAPが統合された。
  • 上部プレナム構造物が撤去された。
  • 炉心部からの燃料と炉心デブリの回収が開始された。そのための準備として、回転式遮蔽付き作業プラットフォームの設置、各種の長尺ツールの設計・製作・機能確認試験、真空吸引系の取り付け、などが行われた。
  • 事故時の安全機器・電気系統のサバイバル状態の確認について、原子炉建屋からさらに17個のサンプルが回収された。
  • 廃棄物容器中での水素発生評価技術の開発が行われた。

参考:デブリ取り出し工法の変遷

参考:初期の燃料取り出し中の情報

参考:下部プレナム調査

参考:ボーリング調査

参考:下部プレナムデブリの分析

参考:燃料・デブリ取り出しツールの設計

1986年 [7]

 1985.10月から、圧力容器内からの燃料・炉心デブリ取り出し作業が開始され、1985.12月に最初のFuel収納缶が取り出された。しかし、取り出し作業開始直後から、冷却水中に微細物が繁殖し、透明度が悪化する事象が発生した。この対策に多くの検討と時間が必要となった。1986.7月には炉心下部から下部プレナムにかけてのボーリング調査が行われ、炉内状況の理解が大きく進展した。ボーリング調査後に、この装置を用いて、取り出しのために溶融凝固層の破砕作業が行われた。一方で、1986.4月に、取り出した燃料の構外輸送計画が承認され、1986.7月から、INELへの構外輸送が開始された。

FWHDP

  • 使用済みのSDS容器の埋設処分が完了し、モニタリングフェーズに移行した(埋設体のうち一体を監視)。
  • 事故由来水を処理した後の処理水の取り扱い計画が策定され、一部はRCS系に戻して冷却水として再利用すること、大部分は蒸発処理することが決定された。
  • 1986初旬に、微生物発生による冷却水の水質悪化問題が発生し、水質改善方法が検討された。殺生物剤としては過酸化水素が有効であることが確認された。
  • あらかじめ設置されていた冷却水浄化系(DWCS)は、水質浄化にあまり有効ではないことが確認された。大きな原因は、微粒子や生物の死骸による金属フィルターのつまりであった。
  • 凝固剤を投入してつまりを改善するとともに、1987年以降に改良したDWCS系を投入することが計画された(フィルターサイズを粗くする対策:0.5μmから20μmに変更)。

AEP

  • 下部プレナムのビデオ調査とサンプル分析が行われた。
  • ボーリング調査により、ボーリングサンプルの採集と炉心下部から下部プレナムにかけての調査が行われた。
  • ボーリング調査により、下部プレナムへのデブリ移行経路が明らかになり、事故シナリオとデブリ分布が更新された。#炉心周辺部から下部プレナムにデブリ移行し、LCSAの損傷やデブリ付着は軽微である
  • 原子炉建屋内のサンプル採集と分析が継続され、分析結果にもとづいてFPインベントリ評価が継続された。

REP

  • 燃料デブリ取り出しが本格化し、1986年内に、炉心物質の約20%が取り出された。
  • 取り出しでは、主に、マニュアル操作での長尺ツールを用いて、ルースデブリ粒子を収納缶に回収する作業が行われた(Pick-and-place)。
  • 取り出し作業は、冷却水の水質改善とコアボーリング作業で一時中断された。
  • 1986年8-11月にかけて、ボーリング装置を用いて、溶融凝固デブリの破砕作業が行われた。最終的に、ブラインド状態で、400か所以上のボーリングが行われ、溶融凝固層が破砕された。
  • 1986.12月に、溶融凝固層破砕後にデブリ取り出し作業が再開された。
  • 一方で、LCSAと下部プレナムデブリの取り出し計画の検討が継続され、プラズマアークによる構造物解体と遠隔取り扱いによる構造物・デブリ回収が採用されることとなった。
  • RCS系については、加圧器、スプレー系、プレナムからのデブリ取り出しシステムの設計が開始された。
  • 主要なRCS機器、建屋地階、冷却水処理系のmakeupフィルターについて、ex-vesselデブリの位置と物量の調査が継続された(予想より少ないデブリ量が検出された)。
  • GPU社は、デブリ取り出しと除染後のTMI-2管理計画をNRCに提出した。プラントはPost-Defueling Monitored Storage状態で維持する方針が示された。

参考:ボーリング調査

参考:ボーリングサンプルの分析

参考:形状を維持した燃料集合体の分析

参考:燃料・デブリ取り出しツールの設計

1987年 [8]

 1987年には、長尺ツールを用いた炉心部からデブリ取り出しが進捗した。さらに、切り株燃料集合体の取り出しが開始された。これらの過程で、取り出しツールに様々な工夫が加えられた。また、LCSA、UCLAの解体計画、下部プレナムからのデブリ取り出し計画の具体化が進められた。LCSA解体では、強度をできるだけ維持するため、プラズマアークによるプレートの切断とコアボーリング装置によるポストやボルト部の破砕を組み合わせることとなった。5層構造のLCSAを上部から一枚ずつ解体・撤去し、その間に堆積しているデブリを、pick-and-placeあるいは真空吸引で回収していくこととなった。UCLA解体では、切断回数をできるだけ減らすように、プラズマアークによるバッフル板の縦方向と横方向の切断部位が検討された。バッフル板の開口部から、各種の長尺ツールを挿入し、コアフォーマ領域に堆積しているデブリをかきとることが計画された。下部プレナム堆積デブリについては、粒子状デブリをpick-and-placeと真空吸引で除去しつつ、堆積状態によってツールを改良していくこととされた。また、Defueling Tool Advisory Groupが設置され、これらの作業に必要となるツールの開発や、燃料取り出し終了後のモニタリングフェーズへの移行方法について検討が開始された。RCS系に堆積していたデブリの回収が進捗し、ex-vesselデブリ中の核物質量の評価が進められた。

 燃料・炉心デブリの構外輸送が進捗し、合計22回の輸送で、燃料物質の約53%がINELに移送された。Accident Evaluation Programの修正版が刊行され[60]、今後必要となる内部調査とサンプル分析について整理された。事故シナリオ解析作業がほぼ終了し、事故シナリオが提示された[61]。

参考:デブリ取り出しの進捗、ツールの改良

参考:事故シナリオ

参考:ex-vessel debrisの回収と分析

FWHDP

  • 最初の事故由来高レベル廃棄物(abnormal waste、SDSフィルター容器)の搬出が行われた。最終処分概念が定められるまで、INELで数10年間貯蔵されることtなった。
  • 輸送キャスクを用いたデブリ収納缶の構外輸送が、合計22回実施された。

AEP

  • AEP計画の改定版が発行された[60]。
  • RCS系での燃料とFP分布把握のための計測とサンプル分析をが継続された。
  • 燃料取り出し作業中のビデオ撮影が行われ、画像解析が進められた。
  • 事故シナリオの解析がほぼ終了した。
  • ボーリングサンプルの分析が完了し、得られた知見の解析が進められた[62]。
  • TMI-2知見に基づく、シビアアクシデント標準問題とデータベースの整備が、OECD/NEA/CSNIとの共同で進められた。

REP

  • 炉心部からのルースデブリのpick-and-placeでの回収がほぼ完了した。
  • 切り株燃料集合体のpick-and-placeが進捗し、1体を残して炉心から取り出された。
  • これらの作業中に、炉心周辺部のボーリングできなかった部分からデブリが崩落し、回収が進められた。
  • LCSAとUCLAの解体方法と下部プレナムデブリの回収方法の計画が進められた。
  • 下部プレナムでのデブリ堆積状態を調査することで、真空吸引系が効率的に利用できるようになった。
  • Defueling Tooling Advisory Groupが設置され、燃料取り出し完了からモニタリング開始までの移行期に関する検討が開始された。

TMI-2知見の活用

  • 高レベル廃棄物の減容技術(SDS樹脂やEPICOR-IIのプレフィルターなど)
  • 大型廃棄物の解体技術と処分技術
  • 収納缶内部での可燃性ガス対策
  • 高強度コンテナ(HIC)の開発

安全機器や設備のサバイバル状態、1980年まで

  • 事故時の安全設備の適切な制御と運転はアクシデントマネージメントの鍵であり、TMI-2事故進展中の稼働状況に係る知見を得ることは重要である。Instrumentation and Electrical Equipment Survivability Planning Group(IEPG)が設置され、破損モードの同定、設計時の動作標準条件と実動作の比較、クラス1E設備の脆弱性の分析、品質管理、規制基準、設計などへの修正点の提案、TMI-2事故進展理解の向上、等のために、
    • 安全機器や設備、および電気・機械系統の現地調査と動作試験
    • コンポネントのテスト目的と方法の決定
    • アーカイブとして保管するコンポネントやサンプルの決定、が実施されることとなった。
  • 約200個の機器デバイスのサーベイ計画が立案され、初期に調査されるべき安全機器12個を同定し、そののサーベイが実施された。
  • コンポネントの撤去、防護、動作試験(例:線量計HP-RT-211を撤去し、SNLに送付)が進められた。
  • 付属するケーブル類、ソースレンジアンプ(N1-AMP-2)、チャージアンプ(YM-AMP-7023)などが回収予定とされた。
  • 建屋内の画像調査については、CCTVシステムが原子炉建屋内に導入され、ポータブルTVカメラやポータブル暗視カメラが準備された。
  • 安全システムのレビューが進められ、初期にデータ分析が必要な安全・モニタリング設備として、SPNDが重要であることが同定された。

建屋内の線量調査と線量低減(環境改善)、廃棄物、1980年まで

  • 総合計画レポート[12]において、TIO所属の専門家により、放射性物質の移行と堆積・分布状態にかかわるデータ取得計画(Recommended Data Acquisition Tasks at TMI-2 Relating to Fission Products Transport, Deposition, and Environments Characterization)と、除染と被ばく抑制に係るデータ取得計画(Recommended Data Acquisition Tasks at TMI-2 Relating to Decontamination and Personnel Exposure Control)におけるタスクが整理された。
  • 原子炉冷却水一次系(RCS系)について、サンプリングの対象物が選定された(RCS系スラッジ、冷却水浄化フィルターと樹脂、RCS冷却水、RCBT堆積物、ドレインタンク底部のスラッジや粒子)。
  • 圧力容器から放出されてRCS系に堆積しているデブリ(ex-vessel debris)の堆積位置や状態の測定に向けて、ガンマスキャン、中性子、超音波、赤外などの測定方法のレビューが行われた。
  • 原子炉建屋内については、エアクーラー、建屋地階サンプ、水素再結合器、建屋雰囲気、等のサンプリングの優先度が高いとされた。
  • 放射性物質の環境放出と建屋内コンクリートや設備表面の堆積については、原子炉建屋床面の線量マップ作成、設備表面サンプルの分析、さらに、初期の除染試験が行われた。# 作業員の被ばく線量の適切なコントロールが重視され、ALARAの考え方に基づくことが示された
  • 環境への放射性物質放出評価について、TMI-2炉周辺のモニタリング計画が提示された。
  • 放射性廃棄物の取り扱いについては、冷却水系や除染対象となる各種の溶液からの放射性物質除去、処理により汚染されるイオン交換樹脂やライナーなどの安定化、および、最終的な廃棄体の調製、移送、処分について、概要計画が示された
  • 短期プロジェクトとして、18課題が整理され、それぞれについてワークスコープ、スケジュール、予算見積もりが行われた。同定された研究開発課題は、中間貯蔵の基準策定、イオン交換剤の安定化と線量や化学反応の影響調査、イオン交換剤やスラッジフィルターなどの固化処理技術、脱水したイオン交換剤の高強度の貯蔵・輸送・貯蔵コンテナの開発、放射性廃棄物の減容技術、イオン交換方式の高性能化、などに係るものであった。
  • SDSイオン交換樹脂やEPICOR-IIのプレフィルターライナーの分析計画が策定された。

知見とデータのアーカイブ、1980年まで

  • TMI-2知見の産業界への効果的な共有、および、産業界側のニーズの整理の重要性が指摘され、公式に承認されたTMI-2事故情報としてGENDレポートが刊行されることとなった。また、GENDレポートに準ずる非公式レポートとしてGEND-INFレポートが刊行されることとなった。以下の項目の調査の重要性が共有された。
    • 安全設備と電気系統のサバイバル状態
    • FP移送と付着・体積
    • 建屋の除染、廃棄物減容技術
    • 圧力容器内へのアクセスとモニタリング
    • 放射性廃棄物の取り扱い
    • 原子炉建屋の損傷
    • 原子炉建屋地階の排水溝デブリの同定
    • 一次系圧力バウンダリ
    • プラント運転にかかわる機器やコンポネントのサバイバル状態(ポンプ、バルブ、など)
    • 臨界性制御
    • 炉心損傷状態、燃料取り出し方法
    • 破損燃料や炉心物質の格納と輸送
    • 事故時の燃料ふるまい

炉心と燃料の状態、1980年まで

  • TIOにより、圧力容器内の調査計画として、以下の廃炉工程5段階について、基本計画が立案され、内部調査や燃料取り出しの進捗に伴って修正されることとなった。(Recommendations on TMI-2 Core Damage Examinations, 1980
  1. ヘッド撤去前
  2. 上部プレナム構造物撤去前
  3. 燃料取り出し開始前
  4. 燃料取り出しの進捗中
  5. 燃料取り出し完了後
  • GEND-001レポートにおいて、最初の取り出し方法や代替法などのとりまとめ(Scoping Studies of the Alternative Options for Defueling, Packaging, and Disposal of the TMI-2 Spent Fuel Core)と。事故シナリオの評価に向けた調査項目(TMI-2 Fuel and Core Components Examinations, 1980)が示された[12]。
  • まず、通常の燃料交換に準ずる方法での燃料取り出しが可能かどうかを確認するために、初期の圧力容器内の調査方法として、圧力容器上部ヘッドに取り付けられている制御棒駆動メカニズム(CRDM: Control Rod Drive Mechanism) を撤去して、ヘッド開口部から小型CCTVカメラを挿入し、制御棒案内管アッセンブリ(CRGA: Control Rod Guide Assembly)上部から燃料集合体の上部付近を調査する基本計画が整理された。併せて、CCTV挿入箇所の調査基本計画が立案された。
  • インコアモニターの現状調査により、圧力容器内の状態を推定する調査計画が立案され、生き残っているモニターからの信号取得方法や補正方法が検討された。
  • 核燃料物質の計量管理については、通常は燃料集合体ごとの管理が行われるが、事故炉で発生する破損燃料やデブリの計量についての計量方法の検討が開始された。この横目は、以下の3段階で行われることとなった
    • Phase-I: 課題の同定、計量管理システムの定義
    • Phase-II:詳細設計、機器、方法、コンピューター制御
    • Phase-III:機器システム製作、プログラミング
  • 破損燃料の回収・保管技術については、候補技術の抽出とスクリーニングと、破損燃料収納缶の概念設計が行われた。この項目は、以下の5段階で行われることとなった。
    • Phase-I: 候補技術の抽出とスクリーニング
    • Phase-II: 選定された技術の基礎試験と、破損燃料やデブリ取り出しに向けた概念設計
    • Phase-III: Phase-IとIIの技術レポート
    • Phase-IV: 装置・機器設計と製作、運転方法の開発
    • Phase-V: 未照射材を用いたフルスケールモックアップ
  • 長期間にわたり、破損燃料や炉心物質がホウ酸水溶液中に保持されることの影響評価が行われ、TMI-2の圧力容器内では鋼材の腐食増加などは起こらないと結論された。
  • 炉内状態の推定については、最初のとりまとめレポートが1981年に発行されることとなった。

DAP (Data Acquisition Program)、1981~1984年

1981年

安全機器や設備のサバイバル状態

  • 原子炉建屋内機器の状態調査について、エリアモニター2台、ルースパートモニター(LPM)チャージコンバーター2台、ソースレンジ中性子チャンネルプリアンプ1台、マルチコンダクターケーブル1セットが原子炉建屋から回収された。
  • SNLで、エリアモニターHP-R-211の分析が行われ、線量影響が評価された。事故時の建屋内線量は10R/hと評価され、この線量計の設計上限値を超えていた。詳細は、GEND-INF-008で報告された[13]。また、HP-R-211のコネクターとケーブルの接続不良について、高線量による絶縁不良が発生していたことが解析された。ケーブル自体の損傷は見られなかった。
  • チャージコンバーターについては、YM-AMP-7023と7025のテストが行われた。事故時の高線量で、これらの機器は故障していたことが確認された。また、金属酸化物半導体(MOS)を装荷したField-Effect Transistorの動作確認が行われ、高線量(約105 Rad)により半導体が劣化していたことが確認された。
  • ソースレンジプリアンプNI-AMP-2も回収されて損傷状態が検査されたが、機器自体には大きな損傷は見られなかった。ケーブルコネクションに課題があった可能性があり、調査が継続されることtなった。
  • INELで、SPNDの事故時の高温環境に対するレスポンスの分析が行われた。その結果、事故進展中の定量的な温度と時間変化のモニターとしては使えないことが確認された。
  • 1980年度に選定された12個の安全設備のin situ動作試験が行われ、おのおのの動作状況が確認された[13]。さらに、22個の全然設備のin situ試験が継続されている。
図2 1981年時点での建屋内サンプリング箇所 [2]

建屋内の線量調査と環境改善

  • この分野については、(1)FP輸送と付着、(2)除染と作業員被ばく低減、(3)事故評価、が進められた。
原子炉一次系について
  • 燃料棒の破損箇所、FP分布、腐食状態評価に向けて、一次系のサンプリング部位が同定された(図2)[2]。メイクアップ系と浄化系の冷却水フィルターと付着・堆積物、RCS冷却水とスラッジ(圧力容器外)、RCBT水、が重要サンプリングポイントとして同定された。
  • makeupフィルター系と脱塩装置(Letdown Demineralizer)については、高線量のフィルター5B,2A,2B,4A,4Bの回収方法が検討された。フィルターと付着物が、B&W社、EG&G社に、分析のために輸送された。予備分析の結果、付着物は酸に可溶性および難溶性の物質が混在し、ほとんどが1~5ミクロン以下の粒子であった。線量は、470 μCi/g(α線)、2.3 x 104 μCi/g(ベータ線)であった。
  • 液体サンプルについては、毎週1回の頻度でサンプリングが行われた。さらに、150 mlのサンプル(浮遊物込み)が採集され、エクソン社(ENICO)とEG&G社で分析された。分析項目は、外観調査、γ分光、α/β測定、I-129、H-3、C-14、Ce-144の分析、元素分析、pH測定、電気伝導度、密度、であった。ろ過後のサンプルについては、秤量、XRD、DCES(Direct Emission Spectroscopy)、ガンマ分光、が行われた。分析結果の詳細は、GEND-015で報告された[14]。
  • スラッジサンプルについては、圧力容器、加圧器、蒸気発生器シート、主蒸気配管、などからのスラッジサンプル回収方法が検討された。かきとり方法が最も簡便だが、蒸気発生器にしかつかえないと判定された。冷却水中にスラッジを巻き上げて濁りとして回収する方が実用的と指摘された。
  • RCBTサンプルについては、サンプル回収され、INELで分析が行われた。
  • RCS系の燃料物質の付着・堆積状態については、サンプル分析方法について、GEND-018にとりまとめられた[15]。
  • ポータブルγ線検出器の現地試験が行われた。
原子炉建屋とサポート系について
  • 原子炉建屋内の線量分布測定が行われ、線量マップがとりまとめられた。線量分布は非均質であり、ホットスポットが同定された。圧力容器ヘッド上で、作業プラットフォームを支える円筒形構造物(サービスストラクチャー)や原子炉建屋の比較的上層階の床面でのβ線量が相対的に高い、などの結果が得られた。
  • エアクーラーサンプル、地階サンプサンプルの採集と分析が行われた。
設備や床面の堆積物、環境放出について
  • 原子炉建屋内床面の堆積物サンプルの採集と分析が行われた。
事故シナリオ評価について
  • 事故時の建屋内温度分布の推定が行われ、GEND-020とに評価結果がまとめられた[16]。
  • 事故進展中に原子炉建屋内で発生した水素燃焼について予備的な検討が行われた。
除染効果の評価について
  • 1982年に実施予定の総合除染試験にむけて、概要計画が策定された。
建屋内エントリーについて
  • 24回の原子炉建屋内エントリーにおいて、総合除染試験の準備やサンプリングなどの作業が行われた。
個人線量計について
  • 作業員の被ばく低減について、ALARA(As Low As Reasonably Acheivable)の考え方に基づくことが確認された。
  • 作業員被ばく低減方針について、GEND-004にとりまとめられた[17]。

炉内調査計画

  • 1981.10から、INELのリードの下で、建屋内及び圧力容器内の調査、サンプリング、取り扱い、格納、分析の、計画と実行プランを具体化開始した。
  • In-Vessel Data Acquisition Planの検討では、データ採集の目的が4項目に整理された。計画案のレビューが行われた。
  1. 現行のプラント設計基準の改良あるいは検証
  2. NRCの規制サポート
  3. 解析コードの高度化
  4. コスト効率、実効性

廃棄物取り扱い

  • 事故により、約1900m3の汚染水が補助建屋と燃料取り扱い建屋に移行した。これらは、EPICOR-IIで処理された。
  • 処理後のライナー(高線量50個、低線量22個)のうち、高線量の1個:PF-16をバッテルコロンバス研究所に移送し、分析が行われた。
  • バッテル研究所では、外観観察、ガス分析、コアサンプル分析、液体サンプル分析、γスキャンが行われた。

文書化、アーカイブ

  • アーカイブの保管体制が整備され、知見・データの文書化方法、今後のデータ点数増大対策、およびデータの品質管理、等の放送が確認された。
  • 公式レポートは、GEND-XXXとナンバリングされ、広い研究開発分野において重要であり、かつ、研究プロジェクトの終了によるなんらかの推奨を含むものとされた。
  • 非公式レポートは、GEND-INF-XXXとナンバリングされ、予備的な検討結果や全体プロジェクトとのうちの一部の成果をまとめたものとされた。
  • 1981年内に、14本のGENDレポートと、12本のGEND-INFレポートが刊行された。

1982年

図3 事故時の原子炉建屋内の温度測定値 [3]

安全機器や設備のサバイバル状態

  • インコアモニターについて(圧力容器下部から、燃料集合体のうち52体に挿入、本来のリード線の全長39m)、炉心下部の比較的損傷を受けていない領域でのモニターのサバイバル状態が調査された(364本のSPND、52本のバックグランド検出器、52個の熱電対)。炉心の中央で損傷がさらに大きく、ほとんどの計測系が生き残っていなかった。熱電対は52個が全滅、SPND系は416本(364+52)中22本が生き残っていた。
  • APSRについて、APSR8本を、事故直後の25%引き抜き位置から、圧力容器内に挿入する試験が実施され、荷重、ノイズ、トルクなどが計測された[18]。2本は、全挿まで5%位置まで、1本は18%位置まで、3本はほとんど動かなかった。これらは、炉内状況の推定に参考知見として用いられた。その後、制御棒や可燃性毒物棒のリードスクリューの接続外し作業が行われた。

参考:APSR挿入試験

  • ポーラークレーンについて、レールとトロリーの電気駆動系、ペンダントケーブルの一部、が事故時の水素燃焼イベントにより損傷していたため、修理・交換が行われた[19]。それ以外の関連設備について、再稼働試験に向けて、目視確認と非破壊検査が行われた。
  • 原子炉建屋内の線量計による損傷状態評価について、4個の線量モニターが原子炉建屋から回収され、事故時の建屋内環境と損傷モードの調査が進められた。
  • 圧力伝達器(Pressure Transmitter、建屋内に58個、安全設備と接続)について、事故時の損傷状態が調査された。
  • 約70個の電気コンポネントの調査が行われた。そのうち23個は総合除染試験の効果を確認するために再調査されることとなった。12個の電気コンポネントは事故で不具合が発生しており、そのうち4個は詳細調査のため、建屋から搬出された。さらに5個が搬出予定となった。
  • ケーブル、コネクション、貫通部については、全長152kmのケーブルやコネクションが建屋壁床を貫通して配線されており、それらの調査が進められた。
  • 抵抗温度計のチャートから、事故時の建屋内の温度推定が行われた。図3に、353tf位置での天井温度計の指示値を示す[3]。事故発生以降、何回かの温度上昇イベントが発生しており、約10時間後に発生した温度上昇は、建屋内で発生した水素燃焼イベントに起因すると推定された。

建屋内の線量調査と環境改善

建屋内の線量測定について
  • 一次系について、ヘッド撤去に向けた基礎知見として、燃料成分、FP、腐食生成物の一次系への移行に係るデータ収集とFPマスバランス評価が進められた。
  • RCBTスラッジの分析で、Ce-144が検出された。冷却水浄化系のサンプルからも、Ce-144が検出された。これらから、U,PuがRCBTや冷却水浄化系に移行した可能性が示唆された。また、Cs-134,Cs-137、ZrO2粒子、さらに、Sb-125,Ru-106,Co-60,Ag-110m,Mn-54が検出された。
  • RCDTや原子炉建屋と補助系についても調査が進められた。原子炉建屋地階では、事故由来水が約2.5m高さに堆積し、建屋内の高線量の原因の一つとなっていた。ポンプで排出し、SDSシステムでの処理が進められた[20]。さらに、フラッシングにより、残されたスラッジと数100Lの汚染水が回収された。残留した粘土状の物質を一部をすくい取りでサンプリングし、分析された。並行して、建屋地階のCCTV調査が行われた。
  • 事故時にホットハウス効果が発生し、高温の冷却水や水蒸気中にいったん溶融したFPが低温部に移行して堆積したと推定された。そこで、建屋内の設備や床面などの上への堆積状態が調査された。建屋の損傷についても、目視調査とCCTV調査が行われた。
総合除染試験について
  • 1982.3月に、建屋地階の滞留水処理システムを除き、総合除染試験が実施された[21]。
  • EPICOR-IIで処理された補助建屋や燃料取り扱い建屋の処理水を利用して、低圧スプレー高圧スプレーが行われた。高圧スプレーでは、ポータブル加圧器(約90L/分、約70MPa)と洗浄水ヒーター(60℃に加温)が、建屋の外に配置された。低圧スプレー(約15MPa)では、ポーラークレーンから床面が洗浄され、その後高圧スプレーでさらに洗浄された。スプレーによる除染効果としては、ある領域を効果的に除染できるが、その一方で、汚染水が他に運ばれて再汚染するので、処理水の排水経路が、うまくSDSに流れるようにしないといけないと報告された。
  • 物理的なスクラブ再剥ぎ取り可能な表面コーティングも行われた。物理的スクラブ剤と洗浄水は、SDSで処理できないため、使用後に真空吸引で別途貯蔵バレルに移送された。表面コーティングはシリコン剤が用いられた。空孔や手が届きにくいところに注入し、固化させてはぎとりする仕組みであった。

参考:総合除染試験(準備中)

事故評価、FPと核物質のマスバランス評価について
  • 建屋内サンプル分析データ(約2000点)に基づき、コンピューター解析が行われた。さらにORIGEN-II解析で補正された。その結果、I-129について、事故進展中に、原子炉建屋地階に18~23%、補助建屋に3.3%、RCS系冷却水に4%、建屋雰囲気に0.03%、建屋内堆積0.7%移行したと評価された。残りは圧力容器内に保持されていると評価された。
水素燃焼イベントについて
  • 事故途中で発生した原子炉建屋内の水素燃焼による有機物質の損傷程度が評価された。また、LLNLが建屋内サンプルの分析、水素燃焼温度、場所の評価を担当した。閉鎖された階段、エレベータシャフトでの燃焼損傷が大聞いという結果が得られた。水素燃焼過程として、以下が推定された。
  1. 水素燃焼前に建屋内の雰囲気はよく混合され、3.5%の水蒸気、7.9%の水素を混入。室温53.3℃。
  2. 建屋地階の西側で水素燃焼開始、縦方向、横方向に燃焼の広がり。燃焼の移動速度は毎秒3m程度。
  3. 水素燃焼は約15秒継続、最後の3秒で主に燃焼が進んだ。
  4. 燃焼フロントの温度は760℃、圧力容器内雰囲気温度は660℃。
  5. 冷却スプレー起動し、1分間で雰囲気を230℃まで冷却、2分間で120℃まで冷却。
  6. 建屋高所の東と南側で水素燃焼の損傷最大。約319kgの水素燃焼、51.6kgの水素は燃焼せずに排出、88kgはRCS系に残留。
  7. Zr酸化による水素発生がそのうち90%を占める。45.6%のZrが酸化したのに相当。
その他
  • モバイルラボとポータブルγ検出器の開発状況が報告された。

炉内調査

調査計画について

TMI-2のCore Examination Planがとりまとめられた。燃料取り出し開始前、燃料取り出し途中、オフサイトの3分野に分けて、調査計画が示された。

Topography調査について

・Core Examination Planに基づいて、Core Topography計画が具体化された。

参考:Core Topography

文書化、アーカイブ

  • GENDレポート11報、GEND-INFレポート14報が公開された。

1983年

図4 ポーラークレーンの構成 [4]

安全機器や設備のサバイバル状態

  • 安全設備・機器や電気系統・機械系統の生き残り状態の調査が継続され、PORV弁、加圧器ヒーター、などの調査とサンプル採集・分析が行われた。
  • 抵抗温度計の分析により、事故時の建屋内温度の評価が行われた。A系ホットレグなどの線量計や圧力伝達系(空圧、油圧)の分析、ケーブル系の破損状態の調査が行われた。
  • インコアモニターの分析が継続され、事故シナリオや炉内状態推定に係る知見が取得された。
  • ヘッド撤去に向けた重要課題であるポーラークレーン再稼働に向けて、事故後約10時間で発生した水素燃焼による損傷程度の調査、腐食状態の調査、電気系統・機械系統の動作確認、ペンダントの損傷状態確認、などが行われた。機械的な損傷は軽微であったが、ヘッド吊り上げに用いるペンダントは強度が保証できないため交換されることになった。図4に、ポーラークレーンの概略構成を示す[4]。

建屋内の線量測定について

  • 一次系について、RCDTの調査とサンプル採集と分析が行われた。地階の汚泥サンプルの採集と分析が行われた。
  • 建屋内のサポートシステムについて、エアクーラー、機器や床面の堆積物、などのサンプル採集と分析が行われた。
  • 図5 遠隔ロボットLouieによるRCS浄化系の調査 [22]
    事故時に圧力容器内から汚染水が流入し、高線量となっていた、冷却水浄化系のmakeupフィルターと脱塩装置の調査とサンプル採集用にマスタースレーブ型のロボットRemotely Controlled Transporter Vehicle (RCTV)、通称Loiueが投入された(図5)[22]。
  • 建屋内の目視検査と、線量サーベイが行われた。
  • これらに基づき、総合除染試験の効果が確認された。#期待していたレベルでの線量低減効果は確認されず(平均的な線量低減効果は数分の1程度)、以降は、除染は中長期的にALARAに基づいて継続し、短期的には遮蔽と不要物の撤去が優先されることとなった。線量が大きく低減されなかった理由は、除染で発生した粉塵や飛沫の別領域への移行、建屋地階の滞留水と汚泥の高線量、除染に用いた水が建屋地階に移行して滞留、などと考えられた。

事故時のマスバランス評価について

  • 図6に、この時点までに採集されたサンプルの分析結果に基づく主要FPのマスバランスの評価結果を示す[4]。
    • H-3:事故時に建屋内に放出され、滞留・堆積。原子炉建屋立ち入り前のベントにより、一部が環境に放出。プレナムへの付着はほとんどない。約47%がまだ捕捉できていない。
    • Xe, Kr-85:事故時に建屋内および環境に放出され、滞留。原子炉建屋立ち入り前のベントにより、建屋内滞留分がほぼ環境に放出。プレナムへの付着はほとんどない。Kr-85の約53%が、Xeの約65%まだ捕捉できていない。
    • Sr-90:事故時の建屋への放出は微量。事故後に一次系冷却水中にわずかに溶出。プレナムへの付着はほとんどない。おそらく、ほとんどが形状を維持した燃料や炉心物質のデブリ中に残留。
    • I-129:事故時に一部が建屋に放出、さらに一部が環境に放出。一部は冷却水中に移行・滞留。プレナムへの付着はほとんどない。約78%がまだ捕捉できておらず、一部は、燃料棒中に保持されていると推定。Csに比べて建屋地階への移行割合が少なかった。
    • 図6 FP分布の推定(1983年時点) [4]
      Cs-134,Cs-137:ヨウ素とほぼ同様の分布だが、付着位置・状態が若干異なる(#Iに比べて、Csの方が建屋地階への移行割合が大きい)。建屋内の線量の主なソースとなっている。

水素燃焼イベントについて

  • 建屋内の損傷状態等から、事故後10時間までに、約370kgの水素が放出され、建屋内雰囲気中の濃度が約7~8%に達していたと推定された。放出経路としては、原子炉内でのZr/水蒸気反応で発生した水素が、一次系を経由して、建屋地階にあるRCDTに移行し、ラプチャーディスク破損によって、建屋内に放出されたと推定された。燃焼が進展した経路や燃焼のメカニズムについて検討が継続された。

圧力容器内の調査とサンプルの分析について

  • リードスクリューサンプルと上部ルースデブリ(コアデブリ)の分析が行われた。
  • 1983.8~9月に、上部空洞のCore Topography調査が行われ、上部格子板からのぶら下がり燃料集合体上部、炉心周辺の残留燃料集合体、上部ルースデブリ(デブリベッド)の堆積状態、が確認された[23]。

#1983年より、調査・分析結果の詳細は、後述のCAPでまとめられることとなった。

参考:Core Topography

1984年

安全機器や設備のサバイバル状態、水素燃焼イベント、等について

  • 安全機器や設備のサバイバル状態の現地調査とin situ試験が継続された。また、建屋内線量計やPORV弁の調査などが継続された。
  • 電気ケーブル系やコネクションの状態調査が行われた。
  • 事故時に発生した水素燃焼イベントの影響評価が継続された。
  • これらにより、現場調査とin situ試験はほぼ終了し、以降は搬出した機器の調査や分析に移行することとなった。

サンプル採集と分析について

コアボーリング計画
  • コアボーリング計画とボーリング穴を利用した下部ヘッド調査計画の具体化、および、下部プレナム領域のCCTV調査の具体化が行われた。
  • 模擬堆積物(溶融凝固物、切り株燃料など)を用いた、コアボーリング装置の最終機能確認試験が開始された。
  • ボーリング調査位置の検討が行われ、候補8か所が選定された。そのうち4か所は、冷却水フローパスを通じて、下部プレナムまでアクセス可能な位置であった。
圧力容器内のその他のサンプリング計画
図7 原子炉建屋内コンクリートボアサンプルでのCs侵入深さ [5]
  • 炉心周辺に残留していた燃料棒6本を、燃料取り出し初期フェーズにあわせて実施することが計画された。回収した燃料棒サンプルを格納するホルダーの設計が行われた。これにより、燃料棒の無傷部分と破損部分の境界領域のデータが取得される予定である。
  • 制御棒駆動リードスクリューをさらに7本採集する計画が示された。これにより、プレナム構造物内の事故時の状態や温度分布の詳細把握が期待された。
  • 代表的な破損燃料集合体とインコアモニターについて、燃料取り出し初期フェーズ中に回収することが計画された。#しかし、後述する冷却水透明度の喪失などのために、実施されなかった。
RCS系の調査とサンプリング
  • 上部空洞が存在したことから、圧力容器外の、加圧器、蒸気発生器、配管、Core Flood系、崩壊熱除去系、などに燃料物質が移行した可能性が考えられた。そこで、TLD線量計やガンマスキャンにより、ex-vessel debrisの探索が実施された。
  • 併行して、ニューヨーク大学開発のポータブル線量計でのex-vessel debris探索が行われた。A系蒸気発生器では、燃料物質がほとんど検出されなかった。1985年にサンプリングが予定された。配管類、タンク類のサーベイも継続された。
原子炉建屋内の堆積物のサンプリングと分析
  • コンクリートコアサンプルが採集され、特にCsの侵入深さについて、分析が行われた。Cs侵入は表面数mmまででとどまっていた結果が得られた(図7)[5]。
原子炉建屋内のソースターム
  • ドレインタンク、地階汚泥、エアクーラーなどから採集されたサンプルの分析結果から、トリチウムの59%、Sr-90の2.7%、I-129の15%、I-131の20%、Cs-137の42%が圧力容器から放出され、原子炉建屋内に移行・堆積したと評価された。これらの多くは建屋地階汚泥中に堆積したと推定された。放射性のIと、Cu,Agに同伴性が見られ、銅や銀のヨウ化物が形成された可能性が示唆された。
  • 地階汚泥の総重量は380kgと推定された。主要な線源はCs-137とSr-90であった。
  • ドレインタンク中で検出されたAg-In-Cd比は、炉心部と異なっていた。これは、制御材が破砕物でなく、蒸気相で輸送されたというエビデンスとなった。
蒸気発生器の温度計
  • 事故進展中に温度計が正常に動作していたことが確認された。事故時の温度変化と付着FP分析が行われている。
ビデオ調査結果の文書化
  • 上部プレナム、上部空洞などで実施されたビデオ調査で取得された画像データの編集と分析が行われた。分析結果は、ヘッド撤去、プレナム撤去、燃料・炉心デブリ取り出し工法、デブリ収納缶の設計などの綿密な検討に利用された。
  • ルースデブリの探針調査が18か所で行われ、スライドハンマーでSS棒製のプローブをハードストップまで打ち込む作業が行われた。これにより、ルースデブリ深さは35.6~106.7cmと評価された(表1)[5]。
表1 デブリベッドの探針調査の結果 [5]
燃料集合体位置 空洞深さ(cm)

Core Topographyで探索された堆積物表面位置

ルースデブリベッド表面(cm)

SS探査棒の接地位置

ハードストップ(cm)

SS探査棒の侵入位置

デブリベッド堆積深さ(cm)
E3 127.0 182.9 255.9 73.0
C5 121.9 182.9 270.2 87.3
O11 137.2 129.5 259.4 129.9
M13 124.5 129.5 231.1 101.6
B10 132.1 231.1 241.9 10.8
E13 116.8 182.9 200.0 17.1
N4 160.0 119.4 275.0 155.6
M3 139.7 241.3 254.0 33.0
O5 180.3 189.9 231.1 41.3
P6 -- -- -- --
P8 162.6 210.5 266.7 56.2
K7 147.3 154.9 238.1 83.2
L8 157.5 158.1 233.0 74.9
G9 160.0 161.6 235.0 73.4
H8 162.6 163.2 244.8 81.6
G7 167.6 203.8 254.6 50.8
B8 127.0 157.5 244.3 86.8
C9 127.0 144.1 279.4 135.3

WIP (Waste Immobilization Program)、1981~1984年

図8 EPICOR-IIライナー埋設処分用の高強度コンテナ(HIC)[2]

1981年

高強度コンテナ(HIC)開発

  • EPICOR-II廃棄物の埋設方法としてHICに格納して、低深度の地下に埋設する方法が選定された。理由は、比較的安価、取り扱い時の作業員被ばくがALARAに整合、廃棄物を長期間固定可能、ということであった。
  • HIC設計条件として、液体/固体廃棄物を300年保管可能、ガスのベント可能、地下約30mで圧力約3気圧に耐性、長期間の容器内外の腐食耐性が抽出された。図8にHICの模式図を示す[2]。性能確認試験計画が立案された。

SDS廃棄物技術

  • 図9 原子炉建屋内汚染水処理用のSDSの系統図 [2,3]
    事故時に約2300m3の汚染水が原子炉建屋地階に滞留した。これは、SDS系で処理された(1982年運転開始)。図9に、SDS系の系統図を示す[2]。
  • SDS由来の放射性廃棄物の減容化、低レベル廃棄物の焼却処理技術の開発が行われた。
  • ゼオライトと樹脂の安定化技術、ガラス固化技術、有機物(樹脂)のガラス固化技術、ゼオライトのガラス固化模擬試験、有機物のガラス固化、補助建屋での初期の汚染水処理に使われたEPICOR-Iの汚染有機物の処理、等が行われた。

1982年

SDS廃棄物技術

  • 事故時に発生した汚染水に加えて、総合除染試験で発生した廃液が、建屋地階、RCBT、RCS系に滞留した[21]。これらの総容積は約5000m3であり、SDS系での処理が継続された(図9)[2,3]。SDSライナー(収納缶)内には高線量のゼオライトが装荷されていた。
  • 使用済みSDSライナーの輸送準備として、ガス排気システム、水素結合触媒の開発が、WH社とロックウェル社により行われた。
  • 高線量SDSライナーの分析のため、SDS1体がPNLに輸送された。ガス、液体、ゼオライトの分析と、使用済みゼオライトのガラス固化試験が行われた。ガラス固化試験では、溶融した廃棄物がドラム缶内で固化・格納された。

一般的でない廃棄物(Abnormal Waste)の処理・処分技術

  • Abnormal Wasteの定義と分類が行われ、一般的な発電所でルーチン的に発生しない廃棄物であり、GPU社がその処分オプションを有していない廃棄物をAbnormal Wasteといい、事故で汚染されたフィルター、タンク、設備、排水溝、等で、>10nCi/gのTRUを含む可能性があるものとされた(現行の埋設基準以上の汚染レベル)。
  • Abnormal Wasteのうち、RCS冷却水浄化系のmakeup, letdownフィルター、脱塩装置については、事故時に汚染水が混入しており、その後、系統から分離・閉鎖されていた。1982.3月にフィルターが撤去され、INEL移送、分析が行われた。
  • また、高線量の脱塩装置の調査のため、WH社がSISI(Surveillance and Inservice Inspection Robot)を開発した。
  • EPICOR-IIは、事故時に補助建屋と燃料取り扱い建屋に滞留した汚染水約1900m3の処理に用いられた。そのプレフィルターと脱塩装置のINELへの輸送準備が行われた。
  • HICの開発が継続した。

1983年

図10 SDSライナーの構成 [4]

SDS廃棄物技術(ゼオライト処理)

  • 高線量ゼオライトを格納するSDSライナー14体が搬出された。
  • ガス排気システム、水素結合触媒の開発が、WH社とロックウェル社により継続された。図10に、SDSライナー内の構成を示す[4]。
  • 図11 SDSゼオライトのガラス固化装置の概略 [4]
    PNLでのゼオライト固化試験と、リーチング特性評価、微細構造分析が継続された。図11に、ガラス固化装置の模式図を示す[4]。

一般的でない廃棄物(Abnormal Waste)の処理・処分技術

  • SDSライナーの埋設処分方法がほぼ確定した。
  • 事故後約18時間、汚染水が通過していた圧力容器内冷却水浄化系のmakeupフィルターと脱塩媒体について、A/B系それぞれの液体とスラッジサンプルが採集され、分析が行われた。
  • EPICOR-IIプレフィルターのコンテナがINELに搬出された。

1984年

  • RCS系makeupフィルター、脱塩装置からのCs溶出処理について、事故時に吸着していた約37,000CiのCs-137のうち約40%が溶出除去された。
  • 溶出処理条件を定めるため、脱塩樹脂サンプルが採取され、ORNLでCsリンス試験が行われた(3段階リンス、0.18Mホウ酸水、ホウ酸ナトリウムの濃度増加、苛性ソーダ)。A系統から採集したサンプル中のCsの70%、B系統から採集したサンプル中のCsの90%が除去できた。併せて、SDS系のゼオライトからのリンス試験も行われ、リンス率99.99%が達成された。また、リンス溶液のフィルタリング試験と汚染樹脂の微細組織分析が行われた。
  • Csリンス装置の開発が、DOE予算によりWH社で実施された(図12)[5]。重要課題は、高線量の脱塩装置にどうやってアクセスするかであった。リンス液の給水系には既設配管が利用され、排水系は増設された。排水系のフィルターについて、設計段階では、金属メッシュ0.5μmのフィルターが用いられたが、頻繁に詰まりが発生するため、20μmフィルターに交換された。溶液供給速度は、廃液配管の線量(最大200mR/h)から決定された。1985年上半期に処理終了予定となっている。
  • 図12 RCS浄化系makeupフィルターと脱塩塔のCsリンス処理 [5]
    Abnormal Wasteについて、無機イオン交換剤などはHICに入れて、商用処分場で埋設する方針が定められた。今後、圧力容器内から、高線量で燃料成分をあまri含まない廃棄物が発生すると予想された。現状では、このような商用処分場の基準を超える廃棄物は、研究開発用としてホットラボ施設で保管されることなった。このような廃棄物について。保管コストや長期の責任体制などについて、検討継続されることとなった。

REP (Reactor Evaluation Program)、1981~1984年

1981年

  • 4個のタスクに分割された。
  1. ヘッド撤去前の炉心損傷評価: 今後の炉内状況推定のベンチマークとなる、炉内調査方法やツール開発の参照データ、圧力容器内部調査計画検討
  2. 炉内状態観測システム: 圧力容器内の観察、サンプリングへのニーズ整理、画像調査、サンプル選定、取り出し、分析、トポグラフィー、パノラマ写真、構造マップ
  3. 炉心解体と現場データ採集: 燃料構造材の安全な撤去、調査、ヘッドとプレナムの貯蔵、燃料貯蔵
  4. モックアップ試験装置: 構造物解体、燃料取り出しツール、フルスケール

ヘッド撤去前の炉心損傷評価

  • プレナム及び炉心上部の内部調査計画の詳細化、アクセスルート検討、作業安全性評価が進められた。
  • 内部調査の目的として、プレナム構造物への炉心物質付着の物量と分布、プレナム構造物の変形、デブリベッド形成の可能性、制御棒CRDMとリードスクリューの接続状態、プレナム構造物の溶接部や接合部の損傷、圧力容器との接合状態が整理された。図13に、当初計画されたアクセスルートと重点調査個所を示す[2]。
  • 図13 圧力容器へのアクセスルート案と重点調査個所 [2]
    図14 インコアモニターの構成模式図 [2]
    インコアモニター案内管を通じた炉内状況推定が計画された。炉心には、52本のモニターが装荷されていた。図14にインコアモニター調査の概要を示す[2]。

炉内状態観測システム

  • コアマッピング方法の検討、炉内状況マッピング技術の選定、CCTV、超音波探査、等が行われた。

炉心解体と現場データ採集

  • 炉内状況に係る現状情報の整理が、GEND-007にとりまとめられた[24]。以降の検討のベンチマークとして利用された。表2に、この時点での炉内状態の推定状況を示す[2]。
  • また、ソースターム評価として、ヘッド内面とプレナム構造物へのFPや燃料物質の付着評価が着手された。
  • ホウ酸水中に、長期にわたって、破損燃料が放置されるため、腐食影響の評価が行われた。影響は軽微と評価され、GEND-INF-014にとりまとめられた[25]。
  • この時点では、炉心損傷は比較的軽微と予想されており、燃料集合体1体をそのまま格納できる収納缶が開発された(GEND-011)[26]。
  • この時点では、約50%の燃料集合体が酸化していると推定されており、その結果形成される粒子状デブリは最大で約64トンと推定された。このため、約40μm以下の粒子を回収する真空吸引システムの検討が開始された。
  • プレナム構造物の撤去方法の検討が開始され、一体物として強度を維持して撤去できるかどうか、他の構造物と接合状態(どのように分離するか)が重要な調査項目であることが確認された。
  • 計量管理について、最初のとりまとめが、GEND-016に報告された[27]。

モックアップ試験装置

  • タービン建屋内に、圧力容器上部のフルスケールモックアップ設備を設置することが計画された[19]。課題は、プレナム撤去時に水没させるかどうかであった
表2 初期の炉心損傷状態の予測 [2]
対象物 最小予測 基準条件 最大予測
損傷した燃料棒の割合(%) 90 100 100
事故時燃料温度(℃) 1730

(燃料被覆管が形状維持)

2330(ピーク) 2430(ピーク)
燃料被覆管の酸化度(%) 40 50 60
燃料溶融 局所的に発生した可能性 炉心中央領域で発生 炉心下部約1mを残して炉心全体が溶融
溶融燃料の残留 なし なし 局所的に残留する可能性
炉心崩落(スランピング) 発生した可能性 発生 発生
燃料棒の破砕、デブリベッドの形成 あり あり あり
炉心周辺の燃料集合体 一部は無傷、一部は損傷 炉心上部で破損 全て破損、多くが溶融
制御棒、スペーサーグリッド 一部溶融 溶融 溶融
計装案内管 ほぼ無傷 炉心中央で破損 全て破損
炉心中央での損傷高さ 集合体下部から1.8m 同1.4m 同0.9m
上部プレナム構造物 歪みなし、溶融なし 若干の歪み、局所的な溶融 中央下部で溶融進展、破損・溶融物が炉心部に崩落

1982年

  • 燃料取り出しを3段階に分けて、それぞれタスクグループによる検討が進捗した。
  1. ヘッド撤去前の内部調査
  2. ヘッド撤去とその準備作業
  3. プレナム撤去と燃料の回収

ヘッド撤去前の内部調査

  • Quick Look調査に向けて、CRDMリードスクリュー撤去が行われた[28]。
  • Quick Look調査により、炉心中央(H8)、炉心中間(E9)、炉心外周(B8)位置でCCTVカメラが挿入され、プレナム構造物内部と炉心上部の調査が行われた[28]。図15に調査の概要を示す[28]。
  • 主な観測結果として
  1. プレナム構造物はほぼ無傷、上部格子板に、一部の上部端栓が固着、一部で燃料集合体のぶらさがり
  2. 炉心上部で燃料集合体が崩落し、デブリベッドを形成
  3. 炉心上部に約1.5m深さの上部空洞、炉心周辺に燃料集合体が残留
  4. 少なくともデブリベッドの深さは35cm以上、
  5. 燃料には溶融の痕跡見られず、燃料集合体部材に一部溶融の痕跡
  6. 粒子状デブリが広く堆積
図15 Quick Look調査の概要 [28]

参考:Quick Look調査とその準備

ヘッド撤去

準備作業
  • CRDMとAPSRのリードスクリュー接続外しと、中間位置への吊り上げ準備作業が行われた[19]。
  • 接続外し用の特殊ツールが開発された。
  • 撤去したH8とB8リードスクリューはINELに移送され分析が行われた。
  • 接続外し作業により、上部端栓やスパイダーがデブリベッド上にいくつか崩落した。
工法の検討
  • ドライリフト工法が推奨された(通常のヘッド取り外しと同様の方法)[3,19]。
  • ヘッドが高線量で水没工法が採用される場合には、汚染水処理のためSDS系統の増強が必要とされた。
  • ヘッド撤去に向けて、Canal排水・給水系の整備、Canal Seal Plate(CSP)の改良、IIFの開発、などが行われた。
  • ヘッド吊り上げツールの準備・整備・調達が行われた。
Quick Scan調査
  • 1982.12月から、圧力容器ヘッド内(特に上部プレナム構造物内)のQucik Scan調査が行われ、ビデオ調査、線量分布などが測定された。

参考:圧力容器ヘッド取り外し

プレナム撤去と燃料の回収

  • Reactor Disassembly and Defueling Task Groupでは、プレナムを一体物で撤去する技術(調査、準備、ツール)およびオプションとして解体して撤去する技術の検討、および、形状を維持した燃料集合体を回収する技術、粒子デブリを回収する技術、回収した燃料の貯蔵輸送技術の検討が進められた。
  • Plenum Removal Task Groupでは、プレナム撤去・貯蔵・処分計画の具体化と技術レビューが行われた。その結果、できるだけ一体物としての撤去工法を優先すること、そのために、圧力容器上部への注水方法、プレナム構造物の調査項目と方法、付着デブリの状態調査と撤去技術、プレナム構造物と炉心構造物の接合状態の調査などが検討された。また、プレナム構造物の撤去は2段階で実施されることが決定された。
  • プレナム撤去の第一段階(プレナム初期リフト)では、油圧ジャッキによる初期リフトが行われることとなった[29]。第二段階では(プレナム最終リフト)、水中あるいは大気中で、ポーラークレーンを使った撤去が行われることとなった[30]。#この時点では、Canal全体に注水して、水中でプレナム撤去する工法がメインプランとして検討されていた。
  • 圧力容器内の水位を約1mかさ上げするために、改良型のIIFを設置することとなった。IIFの上に作業用のプラットフォームが設置されることとなった。
  • プレナム初期リフト後の調査項目が整理された(プレナムの損傷・歪みの調査、デブリの付着状態の調査、デブリの洗浄可能性の調査、プレナム構造物と圧力容器構造物の接合状態の調査、など)。
  • 初期リフト後に、スライドハンマーとフラッシング装置により、付着デブリやぶらさがり燃料集合体の除去が行われることとなった。
  • 初期リフト用の油圧ジャッキの設計製作が行われた。
  • 初期リフトは、圧力容器ヘッド周辺をドライに維持して行われることとなった。最終リフトは、水中工法が主に検討され、ポーラークレーンを用いた水中作業で、フレキシブルコンテナに格納する方法が検討された[3]。
  • この時点では、プレナム構造物は水中をCanal浅瀬の端まで移送し、一時貯蔵される計画であった。
  • これらの方針に基づき、使用済み燃料プール冷却系の再稼働、燃料移送システムとCanalクリーンアップシステムの改良、燃料とプレナム回収ツールの設計、デブリ収納缶と貯蔵ラックの設計、等が進捗した。
  • ヘッド撤去、プレナム撤去に向けて、多くのモックアップ試験装置が整備された。

参考:上部プレナム構造物取り外し

図16 1983年時点でのヘッドとプレナム構造物の撤去の構想 [4]

1983年

 図16に、この時点での圧力容器ヘッドと上部プレナム構造物の撤去の構想を示す[4]。

 ヘッドは、大気中あるいは水中で、通常の燃料交換と同様に、ポーラークレーンで吊り上げ、貯蔵スタンドに一時保管する構想であった。汚染水を増やさないためには、できるだけ大気中での撤去が望ましく、その判断のために、圧力容器ヘッド内の調査(Underhead Characterization)が行われた。また、作業員の被ばく量を抑制するために、ヘッド上部の円筒形構造物(サービスストラクチャー)は取り付けたまま移動すること、ヘッドの水平移動の障害になる、制御棒駆動用のリードスクリューは、撤去するのではなく中間位置まで引き抜いて固定しておくこと、サービスストラクチャーの周囲やヘッドの底部に必要な遮蔽体を取り付けること、などの方針が定められた。

 プレナム構造物についても、汚染水を増やさないため、また、燃料取り出し作業を、作業員ができるだけ圧力容器の近くに滞在して実行できるようにするために、大気中での撤去が望ましいとされた。一方で、ヘッドより高線量であると考えられることから、十分な内部調査により撤去方法が定められることとなった。#1983年までは、プレナム構造物については、水中での撤去工法が主概念として検討されていた図16)[4]。水中での撤去では、まず、ヘッド周辺の燃料交換Canalを通常の燃料交換と同様にすべて水没させてから、上部プレナム構造物をポーラークレーンで吊り上げる。次に、汚染が拡大しないように、吊り上げた上部プレナム構造物を圧力容器の上の水中で、ただちにフレキシブルコンテナに格納し、Canal浅瀬の端にある貯蔵スタンドに移動させる、という手順が考えられた。工法を確定するためには、上部プレナム内部の調査や付着デブリの状態を詳細に調べる必要があるとされた。そこで、プレナム撤去は、初期リフト最終リフトの2段階に分けて実施されることとなった[29,30]。初期リフトでは、油圧ジャッキにより、プレナム構造物を圧力容器フランジから約23cm分離し、その位置で約5か月間保持しつつ、構造物の歪みや損傷の調査(一体物で吊り上げられるかどうか)、付着デブリの撤去(スライドハンマーや水スプレー)が行われた。

 燃料取り出し方法は、ヘッドとプレナム構造物の撤去方法によって、さらに修正が必要となるが、作業員の長尺ツールを使った手作業による方法と、完全遠隔ロボットを使った破砕・吸引方法について、検討が進められた。

ヘッド撤去の準備作業

  • ポーラークレーンの再稼働に向けた準備作業として、吊り上げツールの補修、交換、点検などが行われた。
  • Underhead Characterizationにより、ヘッド内の線量分布測定、リードスクリューの接続外しと中間位置への吊り上げ固定、リードスクリュー取り外し作業にともなう線量分布の変化測定、プレナムカバー上の堆積デブリサンプルの採集、などが行われた。ヘッド撤去作業中に予想される空間線量は8~20R/hとなり、大気中でのヘッド撤去工法で当初想定された8.6R/hより高いものの、遮蔽で対応できると判断された。
  • 事故後初めてプレナム構造物が大気に曝されるため、付着・堆積デブリの自然発火可能性が重要課題と位置付けられ、リードスクリュー付着デブリについて分析と自然発火性検証試験が綿密に行われた[31]。その結果、自然発火可能性は極めて低いと判定された。また、ヘッド内面への付着デブリの物量が少ないため、フラッシングを実施する必要がないと判断された。
  • リードスクリュー4本の試験的取り外し作業が行われ、中間位置に引き上げることで、ヘッド周辺のCanal浅瀬で80~350mR/h線量が増加することが確認された。これにより、サービスストラクチャーの周囲に巻く鉛遮蔽の厚さが定められた。
  • ヘッド貯蔵スタンドの周囲に砂遮蔽体が設置された。
  • ヘッド周辺の不要機器(中性子遮蔽タンク、絶縁体、冷却ファン、など)が撤去された。
  • サービスストラクチャーとCanal浅瀬部の除染が行われた。
  • ヘッド移動中に不測の事態が発生した際に、Canal浅瀬に注水するホウ酸水が、圧力容器の中の冷却水と混合しないように、Canal Seal Plate(CSP)が取り付けられた。
  • 圧力容器内冷却水の浄化系が取り付けられた。
  • 蒸気発生器内汚染水のドレインと、ヘッドスタッドのクリーニングと緩め作業が行われた。
  • ヘッド吊り上げツールの検査(ラグ、ホイスト、など)が行われた。
  • 重量物落下解析など、ヘッド撤去に係る安全解析・評価が行われた。
  • 臨界安全のマージンを大きくするため、ホウ酸水濃度が3700ppmから5000ppmに増加されることとなった。

#これらの知見に基づき、圧力容器ヘッドは、燃料交換Canalに注水することなしに、大気中で撤去(Dirty Lift)できると判断された[19]。

プレナム撤去の計画

 プレナム撤去は、5個のサブタスクに分けて、検討が進められた[29,30]。

  1. プレナム撤去ツールの開発
  2. プレナム撤去の準備作業と初期リフト
  3. プレナム撤去の安全性評価(臨界性、など)
  4. 燃料・デブリの取り出し・移送方法
  5. 使用済み燃料プールの再稼働
プレナム撤去ツールについて
  • 内部調査ツール、初期リフトで用いるジャッキアップツール、プレナム移送と貯蔵ツール、クリーニングツールについて、それぞれ検討された。
  • 内部調査ツールに関しては、プレナム構造物と圧力容器フランジの接合部や、プレナム構造物内部の調査(歪み、損傷、デブリ付着、ぶらさがり)が可能なビデオカメラ、線量計、光源用のツールが開発された。特に、重要箇所である、上部プレナム構造物と圧力容器フランジの接合部(key/keyway)が詳細に観察できるように設計された。また、内部に円環や水平板構造を多く有するプレナム構造物内でのデブリ付着や、構造物の歪み・破損・腐食状態を観測できるように工夫された。初期リフト後や最終リフト後の状態も観測できるように設計された。Quick Look調査Core Topography調査で観測された、上部格子板からぶら下がった燃料集合体上部や上部端栓については、除去作業が行われたが、作業の様子も監視できるように整備された。
  • 初期リフトツールについては、基本となる60トン油圧ジャッキ(4基)について設計が終了した。油圧コントロールで、水平位置やねじれをバランスさせつつ、少しずつジャッキアップする方式であった。まず、6cmリフトして、プレナム下部や接続部をビデオ調査し、ぶら下がりデブリや付着デブリ除去した後で、さらに23cmジャッキアップして、プレナム内部調査と付着物の除去を行うこととなった。
  • 最終リフトツール、移送・貯蔵ツールについては、初期リフト位置でプレナム構造物の状態を確認した後、ポーラークレーンでの吊り上げツールを取り付けてから、Canalにホウ酸水を注水し、リフトアップされる計画であった。吊り上げ後ただちに、汚染水の発生量を抑制するために、TCB: Transfer Containment Barrier内に格納し、TCB底部と圧力容器側のトップは、それぞれ強化プラスチックシートで閉鎖する方式が検討された[29,30]。#TCBは結局使われなかった。
  • プレナム構造物に本来取り付けられていた吊り上げラグは強度が保証できないため、新たなラグが取り付けられた。また、吊り上げ・移送時の水平バランスや回転抑制のため、ペンダント、ターンバックル、ポール、フックなどのツールが準備された。
  • プレナム構造物の移送先として、SS製リングエアリングからなるプレナム貯蔵リングが設計された[29,30]。#プレナム貯蔵リングは結局使われなかった。
  • 付着・堆積デブリやぶら下がり燃料集合体のクリーニングツールとして、当初は、本来形状を維持した燃料集合体が多く残留しているという想定のもとで、上部格子の溶接部を剪断するツールが検討された。しかし、炉心上部に空洞があり、付着デブリ・ぶら下がりデブリの物量が比較的少ないこと、から、スライドハンマーの打撃による機械的な除去方式が採用された。また、当初、プレナム構造物に相当量のデブリが付着していることを想定して、油圧式の可変ノズルを持つ真空吸引装置が検討されたが、付着デブリの物量が比較的少なかったことから、現場で採用されるには至らなかった。かわりに低圧水でのフラッシングが行われた。
プレナム撤去の準備作業と初期リフトについて
  • 上述のツールを用いて、プレナム構造物の状態調査、付着・ぶら下がりデブリの除去作業が、初期リフトの前後に行われた[29,30]。
  • これらのツールについては、プレナム構造物の一部を実寸大で再現したモックアップ試験装置により、作業性と作業手順の確認、ツールの改良、作業員の訓練が行われた。
臨界評価・安全評価について
  • プレナム部にぶら下がっていた燃料集合体の落下解析が行われ、冷却水中のホウ素濃度を5000ppmに維持すれば、臨界は課題にならないことが確認された。
燃料・デブリの取り出しと移送について
  • 既設の燃料移送メカニズムの改良について、チェーンドライブで駆動する水中モーターは信頼性が低いので、単純なウィンチケーブルで駆動するシステムに交換するように修正がなされた。
  • 燃料集合体でなく、デブリ収納缶や遮蔽キャスクを使用するシステムに対応できるように修正する必要がある。
  • 収納缶サイズは1種類に固定(取り扱い性、輸送性、貯蔵性)されたまた、収納缶重量のセンタリングが重要な設計課題となった。移送システムは、別プラントで運用中のものでを転用してリプレースされることとなった。
使用済み燃料プールの再稼働について
  • デブリ収納缶を一時貯蔵できるように、使用済み燃料建屋のA系燃料プールの整備と再稼働が行われた。
  • 設置されていたSDS系やタンクファームの撤去作業における被ばく線量評価、作業安全性評価が行われた。撤去した廃棄物の一時貯蔵場所の整備が行われた。
  • 原子炉建屋地階の汚染水の処理ルートと、SDSへの給水ラインの取り換えが行われた。
  • コンクリート遮蔽体の16体中8体の撤去、不要配管系の撤去が計画された。プールライナーの検査が行われた。
図17 1984年ころまで検討されていた完全遠隔ロボット方式のデブリ取り出し概念 [4]

燃料と炉心部デブリの取り出し方法について

  • 冷却水クリーンアップ系: 冷却水の濁りと放射性物質の除去システム(イオン交換媒体、フィルター)の概念設計が進捗した。汚染水処理の負担低減のため、圧力容器内の水とCanalの水を別系統で処理する方式が採用された。フィルター候補材の機能確認試験が実施された。
  • 燃料取り出しツール: 予備検討が進捗した(Preliminary Design Study for Plenum and Fuel Removal, 1983, GEND-INF-073)[32]。粒子状デブリとさらに細かい微粒子状デブリを2段階で真空吸引して回収するシステムが必要となることが提示された。そこで、機械的な摘まみ上げ工法(Pick-and-Place工法)と真空吸引工法を併用する方式が検討された。これらの工法では、収納缶の位置決めマストとマニピュレータ、長尺ツールが必要となる。長尺ツールでは、つかむ機能、吊り上げる機能、破砕された集合体をおさえる機能、大型デブリをすくい取る機能、打撃で破砕する機能(チゼル)、収納缶内に装荷する機能(バケツ、漏斗)、などが必要とされた。
  • 粒子デブリの真空吸引系は、10ミクロンくらいからペレットサイズくらいまでのデブリ回収のために必要とされた。冷却水から分離して収納缶に格納するシステムが必要とされた。すでに利用されている水質浄化系のフィルターは、粒子・粉末デブリ回収システムの参考になると考えられた。デブリ回収系で取り切れない微粒子や水溶性の放射性物質は、水質浄化系で対応することとされた。
  • WH社が、デブリ取り出しツールの設計担当に選定され、2つの方式が提案された。
  1. 長尺ツールのマニュアル操作による、燃料デブリ回収と粒子状デブリ真空吸引システム。
  2. 自動化運転システム(Westinghouse Candidate System Design)。真空吸引ノズルをデブリシュレッダーの先に置き、すべてのデブリをスラリー状にして原子炉建屋から排出、建屋の外で収納缶に装荷(図17)[4]。
  • 図18 ROSAシステム [22]
    自動化運転システムで用いるROSA(Remotely Operated Service Arm)の設計製作が行われた(図18)[22]。
  • 自動化運転システムは設計段階まで進捗し、採用が決まればロボットシステムの機能確認試験に進捗する予定であった。#しかし、信頼性が十分でないと判断され、1984年に不採用になった。
  • 収納缶: 燃料タイプとフィルタータイプの2種類の収納缶の設計仕様が提示され、基本設計が終了した。燃料タイプの収納缶内には、燃料集合体1体がそのまま格納でき、輸送や貯蔵できるように設計された。フィルタータイプは、冷却水クリーンアップシステムにも転用できるように設計された。全長が短いタイプの収納缶も予備設計が行われたが採用されなかった。#内部調査の結果を反映して、上部空洞内での取り合いの容易さから短尺タイプの収納缶が検討されたが、取り出し以降の工程での取り合いが優先され、採用されなかった。できるだけ小さくてシンプルな収納缶が、臨界管理の観点で望まれる(固有の安全性収納缶)。既存のDOE輸送キャスクが使えるサイズで設計された。
  • 収納缶貯蔵ラック: 燃料貯蔵プールとCanal最深部で使う収納缶ラックの仕様が決定された。同じ仕様で、TMI-2サイトだけでなくINEL貯蔵プールでも利用できるかどうか検討された。
  • 燃料と炉心物質の構外輸送: 輸送キャスクの設計が進捗した。

参考:デブリの自然発火性確認試験

参考:圧力容器ヘッドの撤去

参考:上部プレナム構造物の撤去

参考:デブリ取り出し工法の変遷

参考:デブリの自然発火性確認試験

1984年

 1984年5月に、燃料取り出しに向けた大きな決定がなされた[5]。これらの決定における大きな判断材料は、作業や装置の信頼性・メンテナンス性、および、汚染水処理量の低減、であった

# プレナム構造物について、大気中での撤去(Dirty Lift)がメインプランとなったあわせて、その貯蔵位置はCanal端ではなく、Canal最深部に変更された。Canal最深部の水位かさ上げのため、ダムが設置されることになった。

# 圧力容器周辺のCanalが水没しないこととなり、燃料取り出し作業の位置が、Dリング上ではなく、圧力容器直上の遮蔽付きプラットフォームとなった。

# これらの変更により、また、GPU社の強い要望により(作業信頼性)、ロボットによる完全遠隔での燃料・炉心デブリ取り出し案はキャンセルされ、遮蔽付きプラットフォームからの長尺ツールによる作業員の手作業による方式が選定された

図19 改良型IIF [19]
図20 撤去したヘッドの一時貯蔵 [19]

ヘッド撤去とそれに向けた準備作業

  • 1984.2月に、ポーラークレーン負荷試験に成功した。
  • 1984.4月に、緊急時にCanal側に注水された冷却水と圧力容器内の冷却水のコンタミを防止する、CSP(Canal Seal Plate)が取り付けられた。
  • ヘッド移送の際に、ポーラークレーン移送に用いられるAFHB(Auxiliary Fuel Handling Bridge)が移設された。
  • ヘッド撤去後に、作業プラットフォームを支え、冷却水水位をかさましするために用いる改良型IIF(Internal Indexing Fixture)の準備とモックアップ試験が行われた(図19)[19]。
  • 圧力容器内冷却水の処理系(DWCS)が稼働開始した。
  • ヘッド貯蔵スタンド周辺に、ポータブル砂遮蔽体が配置された。ヘッド移動に関連するモニター系、ゲージ系が取り付けられた。
  • ヘッドスタッド(60本)のゆるめ作業において、錆による固着が確認された。オイル注入・加温・冷却などによりすべてのスタッド緩めに成功、ヘッド撤去直前にスタッドが撤去され、防腐剤が塗布された。また、ヘッド撤去と貯蔵スタンド着座に用いるガイドスタッド(2本)が取り付けられた。
  • ヘッド上の支持構造物周囲に鉛遮蔽体が取り付けられ、リードスクリューが中間固定位置まで引き上げられ、固定された。
  • 1984.7月に、ヘッド撤去に成功した(図20)[19]。ヘッド移動時に、底部からの放射性物質の放出を防止するため、ヘッドブーツが取り付けられた。

プレナム初期リフトとそれに向けた準備作業

  • 初期リフトから最終リフトにむけたステップバイステップの工程が示された。
  1. プレナム内部の調査、固着・付着デブリの除去(圧力容器内に叩き落とし)
  2. プレナム初期リフト(油圧ジャッキでのジャッキアップ。プレナム構造物と圧力容器フランジの分離)
  3. 固着・付着デブリの撤去作業(特に、プレナム構造物の移動と着座の障害になる、プレナム下部からの撤去)
  4. 作業プラットフォームをいったん撤去
  5. プレナム最終リフト、Canal最深部に移動
  6. IIF上に一時カバーを取り付け
  7. プレナム構造物側にカバー取り付け(#実際には取り付けられなかった)
  • 1984.12月に、プレナム構造物(4.24m径、3.81m高さの円環状構造、内部にCRGTなどの構造物。#Quick Look調査により、底部の一部が溶融・損傷を確認。事故時の高温で構造が歪み、圧力容器フランジと融着・固着している可能性。底部には上部端栓や燃料集合体の上部が固着・融着して残留。)が大気中で撤去できることを最終確認するために、初期リフトが行われた[29]。
  • 初期リフトに向けて、内部調査が行われ、一体物でジャッキアップできるかどうかが確認された。局所的な損傷や南北方向への若干の変形が観測され、Quick Look調査で見つかったものより大きい付着デブリが検出されたが、一体物でジャッキアップ可能と判断された。特に重要なチェックポイントは、プレナムの取り付け溝(凹凸構造、key/keyway)、ジャッキを載せるフランジ側の表面状態、ベント弁やLOCA Bosseなどの干渉可能性がある構造物の実際の配置、炉心支持構造と上部格子円環部のクリアランス、などであった。
  • ぶら下がりデブリを撤去するツール(スライドハンマー、低圧水フラッシング)が設計製作された。内部調査と並行して、ぶら下がり燃料や上部端栓の叩き落とし作業が行われた。この時点で、APSR挿入試験で挿入したAPSRも叩き落された。これらの現場作業のモックアップ試験も行われた。
  • 初期リフト、および、最終リフトには、強力な垂直ジャッキ、水遮蔽と鉛遮蔽、放射性物質の飛散防止バリア、プレナム構造物内に挿入できる長いペンダント、などが必要とされ、設計・製作が行われた。
  • 図21 プレナム初期リフトの概要 [5]
    油圧ジャッキが取り付けられた(図21)[5]。# 建設時のTMI-2の図面が残っておらず、油圧ジャッキの設計に使えなかった。現場確認より、4基のうち1基のジャッキのフレームを改良する必要があった。
  • 第一段階で6.35cmジャッキアップされた。この過程で、かなりの残留デブリが崩落した。さらに叩き落とし作業が追加された。
  • さらに、18.4cmまでジャッキアップされた。当初計画の25.7cmより低い位置であったが、円滑に分離できたため、この位置で1985.5月まで保持されることとなった。
  • ぶら下がりデブリがさらに落下し、残りは、最終リフトまでに除去される予定となった。
  • 初期リフト中に建屋内の線量増加は観測されなかった。
  • 最終リフト時の重量物落下解析が行われた。プレナム移動中の落下イベントにより、プラントが全停止した場合でも、ホウ酸水濃度を維持すれば、十分な臨界マージンがあることが確認された。
  • 同時に作業員の環境改善のため、冷風システムが設置された。
  • 最終リフトでは、ポーラークレーン、Tripod、新たなペンダント3本、を使用予定であり、検査と交換が行われた。
  • 貯蔵場所は、Canal最深部に決まり、移動前にダムを設置し、水位を上げることとなった。#この時点では、着座後にプレナム構造物をソフトラップし、Canal冷却水とは別系統で処理することが計画されていた。

燃料と炉心部デブリの取り出し(Defueling)

  • 遠隔ロボット方式では(図17)[4]、クラムシェル型ツールで、デブリをつまみとり、シュレッダーにかける構想であった。これらのツールはロボットアーム(ROSA)で操作する。しかし、1984年に、クラムシェル型ツールとシュレッダーの開発計画は中中断された。自動化装置が故障した際に、メンテナンスに時間を要し、デブリ取り出し作業に大きく影響することが懸念された。
  • 自動化方式をあきらめても、作業員と公衆の被ばく低減(ALARAコンセプト)は最優先とされた。
    図22 炉心上部からのデブリ取り出し概念(初期フェーズ) [5]
  • 燃料取りだようの長尺ツールは、Fuel Removal Working TeamとFuel Removal Feasibility Review Groupで設計された。前者は、システムの信頼性、コスト、被ばく線量の評価を担当し、後者は、レビューを担当した。
  • 3段階の燃料取り出しフェーズが定められた。
  1. Phase-1(initial early): 1985.7月に着手を計画(実際には10月まで遅れ)。遮蔽付き作業プラットフォームの46cm開口部スロットから長尺ツールを挿入し、デブリベッド表層に堆積している塊状の燃料・炉心デブリをpick-and-placeで回収し、収納缶に回収する(図22)[5]。収納缶を圧力容器から取り出して、Canal最深部の貯蔵ラックに移動し、いったん貯蔵する。崩落した燃料集合体上部などの大型デブリは、炉心周辺部にいったん移動する(炉心中央の粒子デブリ吸引処理後に、中央に戻して破砕し、Fuel収納缶回収する)。
  2. Phase-II(early vacuuming): デブリベッド中の粉末・粒子状デブリを吸引し、Knockout収納缶(130μmからペレットサイズ対象)、Filter収納缶(0.4μmフィルター)で分離しつつ回収する。大きな粒子デブリについてはデブリバスケットを併用し、fuel収納缶に回収する。これらの収納缶の回転、位置決めのために、カルーセルを投入する。大きな塊状デブリは、デブリバケツに入れていったん吊り上げて退避させる。
  3. Phase-III(bulk removal): 塊状デブリを圧力容器内で切断し、fuel収納缶に回収する。残留粉末デブリは吸引し、knockout収納缶とfilter収納缶で回収する。以降、炉心下部に存在すると想定される、溶融凝固層、切り株燃料、下部プレナム構造物などの切断と回収段階に進む。
  • これらの作業では、マニュアルの長尺ツールとROSA(Remotely Operated Service Arm)が併用される計画であったが、最終的にROSAの使用は、信頼性の観点でキャンセルされた。
  • 図23 3タイプのデブリ収納缶 [5]
    Phase-IIIの後半では、デブリベッド下の溶融凝固デブリ、切り株燃料、LCSAの解体などの詳細は、ボーリング調査と下部プレナム調査で決定することとされた。
  • これらの工程は、いずれも、Canalをドライにして実施されることが最終決定された。
  • 燃料と炉心デブリの収納は圧力容器内の水中で実施し、収納缶は遮蔽ベルに吊り上げて移送する方式となった。
  • 冷却水中の浮遊物と放射性物質を処理するために、DWCSが設計された。このシステムには、燃料・炉心デブリの真空吸引に用いるのと同型のKnockoutおよびFilter収納缶が取り付けられた。
  • 構外輸送前に脱水処理を行うため、収納缶の脱水装置が設計された。
  • 収納缶を遮蔽しつつ、Canalへ移送するシステムが開発された。
  • 燃料デブリ取り出しツールの設計が進捗し、水圧レーザー、ソー、シャーリング、ジャックハンマー、打撃チゼル、等が開発された。いずれもモックアップ試験により改良が施され、ALARAに反映された。
  • デブリ真空吸引装置、遮蔽付き回転作業台、カメラ監視系は製作発注が行われた。1984年内には、取り出しPhase-IからIIで使う、収納缶の遮蔽ベル、カルーセル、ケーブルマネージメントシステム、長尺ツール、ツールラックなどが設計終了見込みである。ROSAは予備設計段階で開発中断された。#これらの、デブリ取り出しツールの重要課題は、装置・ツール間の位置取りとクリアランス、作業時の相互干渉であった

燃料・デブリ収納缶の開発

  • 燃料・デブリの収納缶は、GPU社、B&W社、EG&G社、INELが共同で設計した。INELで30年間貯蔵される予定である。
  • 図24 郊外輸送キャスクの概要 [5]
    3タイプの収納缶が開発された(図23)[5]。外形を共通化することが重視された(14インチ外径、0.25インチの肉厚、SS製、長さ150インチ)。臨界防止のB4Cが装荷された。#より大きい間口だと、大型デブリの取り扱いが容易になる、短尺だと圧力容器内での取り扱いが容易になる、というような検討がなされたが、輸送、貯蔵、ハンドリングなどのため外寸は変えないこととなった
  • filter収納缶とknockout収納缶は、DWCSのフィルターシステムとしても共用される予定とされた。
  • 臨界安全、構造強度(特に、構外輸送と長期貯蔵において)などの評価、落下試験が行われた。
  • デブリ収納缶のサイズにあわせて、収納缶ラック、移送システム、構外輸送キャスク、デブリ取り出しシステム、収納缶取り扱いシステム、DWCS、ボルト締めシステム、受け入れと貯蔵のインターフェースなどが設計された。
  • 収納缶取り扱い系の設計が進められた。収納缶つかみシステム、上部と下部のコネクション、脱水系、上部蓋のトルク締めツール、などが対象であった。

構外輸送キャスク

  • 図24に、構外輸送キャスクの概略を示す[5]。収納缶7体を装荷して、二重格納方式によりINELまでの構外列車輸送が行われた。

CAP(Core Activities Program)、1983~1984年

図25 リードスクリューサンプル分析結果から推定された事故時のプレナム最高温度 [4]

1983年

 CAPは、燃料、炉心デブリ、それ以外のサンプルの分析、分析結果の解析、貯蔵・輸送の支援、および、事故による燃料や炉心物質への影響評価、炉内推定図の更新、などを担当することとされ、1983年から、DAPから分離されて進捗報告されることとなった。

  • INELが分析のリード機関に選定された。
  • 内部調査のニーズと優先度について、TMI-2 Core Examination Planが、取り出した燃料物質の輸送、貯蔵、分析の方法について、Plan for Shipment, Storage, and Examination of TMI-3 Fuelが、それぞれ公開された。
  • 1983年度の主な進捗として、以下のサンプル分析と調査が行われた。
  1. RCS系フィルターサンプルの分析: 事故後18時間、通常のRCS系冷却水処理系で圧力容器内の冷却水が処理された。極めて高線量のフィルターと付着デブリが存在していた。Louieで回収したサンプルが、INEL、LANL、ANL-eastで分析された。主成分はSSで、破砕された燃料物質や制御材を含んでいた。Uに対するCs,Sb,Ru,I,Sr濃度が炉心より高い結果が得られた。分析継続中である。
  2. リードスクリューの分析: スクリュー母材の微細構造の分析結果から、事故時のピーク温度が推定された(図25)[4,33]。UとZrは炉心近くの付着デブリからのみ検出された。付着デブリは酸に難溶性であり、除染しにくいことが明らかになった。
  3. 上部ルースデブリ(コアデブリ)の採集: 2種類のサンプリングツールを用いて(図26)[4]、炉心中央部と炉心中間部に堆積していたルースデブリが、深さ方向に異なる6か所からサンプリングされた。粒度分布とγ線測定が行われた。詳細分析が継続している。
  4. Core Topography調査: 超音波探査で得られた点群データを用い、上部空洞周辺の3Dマップが整備された。
  • 施設のアップグレードとして、サンプリング作業をサポートするクレーンと線量計が増設された。

参考:リードスクリューサンプルの分析

図26 上部ルースデブリ(炉心デブリ)のサンプリング [4]

参考:上部ルースデブリの分析

参考:Core Topography

1984年

  • 分析の具体的な計画をとりまとめるCore Damage Assessment and Fission Product Behavior Technical Evaluation Groupが設置された。
  • 燃料や炉心デブリについて、INELでの受け入れ準備が開始された。
  • 1984年度の主な進捗として、以下のサンプル分析と調査が行われた。
  1. 上部ルースデブリ(コアデブリ)の分析: 合計11個のサンプルについて、粒度分布、形態、構造、由来、FP濃度などの分析が行われた[34]。また、自然発火性の確認が網羅的に実施された[35]。分析結果に基づき、事故時のピーク温度が2922K(UO2融点の156K下)と評価された。この温度から、事故進展中にU-Zr-Oメルトが形成されたと推定された(溶融ZryによるUO2の溶解)。FPについては、揮発性FPがかなり放出されていること、非揮発性FPがほぼ保持されていることが確認された。中揮発性FPのうち、Ru-106,Sb-125は金属相に濃化していることが明らかになった。さらに、ルースデブリの混合やCs溶出による、冷却水濁り度の変化や放射性微粒子の放出試験が行われた[36]。デブリ粒子を破砕しても冷却水の濁り度にはあまり影響しない結果が得られた。一方で、デブリ粒子を破砕するとCs溶出速度が4-5倍に増加した。放射性微粒子の放出は、粒子デブリがドライアウトする直前に2-3倍上昇する結果が得られた。ドライアウト後には微粒子発生はほぼゼロになった。このことから、放射性物質は、乾燥直前の蒸発水蒸気中に混入すると推定された。分析で得られた、デブリ粒子の粒度分布、微粒子放出傾向、FP溶出傾向は、デブリ取り出し工程設計に重要なデータとなった。
  2. H8とB8リードスクリューサンプルの分析: 炉心中央と炉心周辺位置の上にあったリードスクリューサンプルの分析により、事故時の最高温度と温度勾配、FP付着量、などが評価された[33]。燃料成分(U,Zr)は炉心近くにのみ存在していた。プレナム構造物全体へのFP付着量は、保守的に見積もっても、炉心インベントリの<2%と評価された。
  3. リードスクリュー案内管サンプルの分析: 事故時の最高温度と付着FP量が評価された[37]。リードスクリューサンプルと類似の分析結果が得られた。付着デブリの除染性について、酸溶解試験が行われた。
  4. A系蒸気発生器の温度計サンプルの分析: 燃料物質の付着は極めて微量であった。
  5. RCS系のγスキャンシステム: ex-vessel debrisの探索用装置の検証試験が行われた。
  6. 事故シナリオシークエンス: 事故時温度変化と燃料物質の位置の変化について、SPNDデータの解析が行われた。事故シナリオについてRELAP/SCDAP解析が行われた。
  7. Te分布の分析: 放射線計測では分析困難なTe同位体について、放射化分析により、リードスクリュー、makeupフィルター、サンプ、等への移行量が評価された。酸への溶解性確認試験が行われた
  8. マスバランスデータベース: 得られた分析結果により、FPの分布・マスバランスの評価結果が更新された。

EPICORおよびそれ以外の高レベル放射性廃棄物の処理・処分の研究開発、1983~1984年

1983年

  • EPICOR-IIライナーを埋設処分するHICが、設計寿命300年として設計進捗した。また、落下試験が行われた。
  • EPICOR-IIライナーの強度評価、樹脂の劣化分析が行われた。また、樹脂の固化技術の検討が行われた。
  • 一般的でない廃棄物(Abnormal Waste): EPICOR-II以外のフィルター類、スラッジ、イオン交換媒体、汚染された機器、などで、TRUを>100nCi/g以上含み、β/γ高線量の廃棄物については、既存の商用処分場では処分できないため、これらをAbnormal Wasteと位置付けて、処分方法が決まるまでの中間貯蔵技術の開発が開始された。まず、廃棄物の基準・分類、処分シナリオ、コスト予測、物量評価などが行われた [38]。オプションとして、TMI-2で使用されているフィルター収納缶への格納が検討された。

1984年

  • EPICOR-IIプレフィルター46体(50体中)の商用処分場への埋設処分が予定され、37体がHICに格納されて埋設済みとなった。残りの4体の分析、樹脂の劣化調査、固化試験、浸出試験などがおおむね終了した。これらは、研究用の廃棄物としてINELで中間貯蔵されることとなった。
  • その他のAbnormal Wasteについては、INELに輸送が開始され、中間貯蔵が予定されている。受け入れ不可能物質、液体廃棄物の扱い、廃棄物取り扱い方法、必要な文書類、などについて、中間貯蔵のクライテリアが策定中である。

FWHDP(FFuel and Waste Handling and Disposition Program、1985年以降

1985年

WIP

  • 最後のSDS容器がロックウェルハンフォードサイトに搬出され、事故由来の汚染水処理で発生した廃棄物の処理プログラムが完了した。
  • SDS容器の一部は、ゼオライト固化の研究開発に使用された後、研究用廃棄物として処分されることとなった。
  • SDS容器の一時埋設以降は、長期モニタリング(内圧、温度、湿度、ガス組成)が行われることとなった。

Core Transportation

  • デブリ収納缶のINELへの輸送準備(輸送キャスク、取り扱い技術)が完了した。
  • 輸送キャスク(NuPac 125B)が製造された。
  • 並行して輸送キャスクの安全評価レビュー(パッケージ、構造、熱特性、容器、遮蔽、再臨界(通常条件、仮想条件))と、落下試験やリーク試験が行われた。
  • デブリ収納缶内の脱水について、輸送前の完全な脱水処理にはコストと時間がかかるため、湿潤状態でINELに輸送した後で、時間をかけて脱水することとなった。
  • 可燃性ガス対策の再結合触媒が開発された(RH社)。# NRCは予想される輸送時間の2倍の期間に対応できる再結合触媒効果を要求した。水素と酸素はそれぞれ<5%に維持される。
  • RH社の機能確認試験の結果:
    1. 触媒が完全に水没すると再結合の効果なし
    2. 水没しても雰囲気中にもどせば100%の効率で再結合
    3. 放射線の影響は小さい
    4. 比表面積が重要
    5. 触媒の組成を最適化(80%Engelhard, 20%AECL)
    6. 触媒が凍った場合の性能確認、大きな課題無し
    7. 油圧溶媒、溶接、コンクリート、切断くずなどの影響もほとんどない
  • デブリ収納缶の設計上の耐用年数は30年とされた。
  • knockout収納缶の落下試験が行われた。

1986年

WIP

  • SDS容器の処理・処分が完了し、モニタリングフェーズに移行した。SDSのうち3体はガラス固化処理などの研究開発用途に用いられた後、研究用廃棄物として処理処分され、1体は埋設後に長期監視の対象とされた。
  • 1体のモニタリングは、20~50年実施予定とされ、湿度、温度、内圧、廃棄物の状態(腐食、粉体化)、ガス発生などが連続的に監視されることとなった。

Core Transportation

  • 輸送キャスク(NuPac 125-B)と、取り扱いシステムがサイトに搬入された。
  • 構外輸送に向けて、収納缶の輸送準備作業が行われた。
  1. 過酸化水素による微生物絶滅(必要に応じ)
  2. 脱水処理(収納缶ごとに最低2回実施し、水素結合触媒の50%以上が露出されるように)
  3. ガスサンプル採集
  4. Arガスで2気圧に加圧して封入
  5. リークチェック
  6. ガスリリースバルブの撤去
  7. 秤量
  8. 表面除染
  • INELの貯蔵プール内で、最長30年の貯蔵が予定された。
  • 再結合触媒の機能確認試験が行われた(RH社)。残留ホウ酸水の影響、希釈媒体の選定、仮想的な最悪シナリオの検討などが行われた。

1987年

WIP

  • 1986年に、SDS廃棄物の残り19体が、ロックウェルハンフォード(RH)に移送された。うち、16体はコンクリートオーバーパックして埋設処分、そのうち1体は円族的なモニタリングが開始された(温度、湿分、粒子化など)。3体はPNLでガラス固化などの研究開発用に利用されることとなった。

Core Transportation

ここから、、、

AEP (Accident Evaluation Program)、1985年以降

1985年

圧力容器内部調査、FPインベントリ評価

  • FPインベントリについて、上部デブリベッドサンプルの分析結果(デブリベッドは全炉心物質の約20%に相当、その中にI,Csの5-6%、Srの12%、Ceの26%が残留)から、相当量の揮発性FPがまだ炉心内に保持されていることが明らかにされた。
  • 原子炉建屋内の追加サンプル(原子炉建屋地階の汚泥とコンクリート、冷却水浄化系、RCDT)の分析結果により、FPインベントリが修正された(表3、(図6参照))。1983年時点では同定されていなかったFPのうち、デブリベッド中に存在していた割合が新たに評価された。建屋内に移行・堆積したFPについては、評価値の修正が行われた。
  • 内部調査の結果やFP分布の評価結果などに基づいて、シビアアクシデントのベンチマーク解析用のデータベースが、1986年中に公開予定とされた。
表3 FPインベントリの修正(1979.12.31に換算) [6]
放射性核種 原子炉建屋地階の

汚泥と滞留水(修正値)

上部ルースデブリ

(デブリベッド)

H-3 0.57 [39] --
Sr 0.01 [40] 0.12 [34]
I 0.18 [40] 0.05 [34]
Cs 0.41 [40] 0.06 [34]
Ce 0.001 [39] 0.26 [34]

事故シナリオ

  • 図27 コアボーリング調査前後での圧力容器内状態推定の変化 [6,7]
    事故発生後4時間までの、圧力容器内での事故進展理解の精緻化が継続された(図27)[6,7]。以下の重要イベントについて検討された[6]。(#図27では、1985年と1986年の推定状況の違いを示す(ボーリング調査前後)。
    • 水位低下による炉心露出は、スクラム後100~120分の間で開始した。以降、燃料棒の温度上昇が発生した。
    • スクラム後約140分で、燃料被覆管のバルーニングと破損が始まり、FP放出が始まった。#スクラム後143分で、圧力容器外でFPが検出されている。
    • スクラム後約150分で、Zry被覆管のブレークアウェイ温度に到達し、燃料温度の急上昇が始まった。Zryの溶融が始まり、溶融Zry中へのUO2溶融によりU-Zr-Oメルト形成が始まった。メルトは、炉心下方に移動開始した(キャンドリング)。
    • この時点では、炉心下部1/3に水位があり、U-Zr-Oメルトはそのあたりでいったん堆積した。水位以下の燃料は切り株状で残留した。
    • スクラム後174分に、B系ポンプ再稼働イベントが発生し、圧力容器内への注水が行われた。それ以前に、いったん堆積したデブリは炉心中央で溶融温度に到達していたと推定された。注水により、炉心上部に残留していた燃料棒が破砕・崩落してデブリベッドを形成(スランピング)、炉心中央で溶融開始していた層の上に堆積した。
    • 同時に、この注水イベントで、炉心周辺部に残留していた燃料集合体が冷却された。しかし、炉心中央ではクラストによって閉塞されていたため、十分に除熱されず、温度上昇が継続し、溶融プールが形成され、拡大した。
    • 一方で、水位の上昇が継続し、溶融プールとクラスト層、さらにデブリベッドが水没した。#デブリベッドの水没により、高温水蒸気・水素が発生し、上部格子板を一部、溶融・損傷させた。
    • デブリの下部プレナム移行メカニズムと経路は不確かさが残されている。#1985年時点では中央での落下可能性も検討されていたが、ボーリング調査により修正された
    • スクラム後約227分に、デブリの下部プレナム移行が発生し、水蒸気発生と圧力上昇が起こった。移行したデブリは水中で破砕され、冷却性が改善されたため、温度低下・固化した。炉心に残留したデブリについては、空洞への注水が進み、冷却性が改善されたため、温度低下・固化した。

参考:事故進展に伴うデブリ移行挙動

図28 ボーリング調査計画 [7,42]

事故時データの解析

  • 事故進展中の水位の変化、中性子検出器のデータ解析、下部プレナムデブリの物量推定などを継続し、1986年中には炉内状況と事故シナリオ推定が完了する見込みとされた。

サンプル採集と分析

  • ex-vessel領域での燃料物質とFPの調査が、γ線検出器などにより継続された。
    • 建屋地階床面に約18kgの燃料成分が検出された。
    • 原子炉建屋コンクリートと汚泥サンプルが、Roverにより回収された。
  • 上部プレナム構造物撤去後に、熱遮蔽と容器槽の間の円環状領域にツールを挿入し、下部プレナム周辺部のビデオ調査とサンプリングが行われた[41]。粒子状サンプルが採集され、分析が開始された。
  • 1984年に、ボーリング装置の設計が開始され、1985年に製作、搬入、組み立てが行われた。1986年にボーリング実施予定である(最大9本のボーリングを予定)(図28)[42]。ボーリングサンプルの調査と開口部のビデオ調査により、炉心下部の成層化状態、LCSA周辺の状態、下部プレナム内部の状態等が調査される予定である。ボーリングサンプルのホットラボでの詳細分析は1988年に予定された。

参考:下部プレナム調査(調査中)

参考:コアボーリング調査

1986年

圧力容器内部調査、FPインベントリ評価

  • FPインベントリについて、上部ルースデブリサンプルや下部プレナムサンプルの分析結果、ボーリング調査でのビデオ調査などを反映して、圧力容器内上部と下部とでのFP保持割合が評価された(表4)[7]。
  • TMI-2事故の標準問題とデータベースについて整備が継続された。

事故シナリオ 

  • 最新知見により1985年までの理解が更新された(図27)[6,7]。1986年に新たに獲得された事故シナリオに関する知見は以下である。
  1. ボーリング調査、下部プレナムビデオ調査: 炉心下部の成層化状態、LCSAの損傷状態、下部プレナムのデブリ堆積状態、デブリ移行経路
  2. 下部プレナムデブリサンプルの分析: デブリの酸化度、FP残留割合、構造材や制御材の混入程度
  3. 上部デブリベッドと周辺燃料集合体取り出し過程で得られた知見: 炉心上部や炉心周辺での燃料・炉心デブリの堆積・残留状態
  4. 下部ヘッドと貫通部の損傷予備解析: 下部ヘッドの損傷程度、下部ヘッドとデブリの相互作用
  5. 炉心加熱状態の解析、炉心移行解析: デブリの最高温度、デブリの移行経路・メカニズム、事故シナリオ
  6. 熱水力解析(RCS系への除熱解析): 事故シナリオ
  7. ソースレンジモニターとインコア中性子検出器のデータ解析: デブリの移行・堆積
  • 1986年に進められた、事故シナリオ理解の精緻化は、以下の項目である(図27)。
  1. スクラム後200分の高圧注水系可動により、炉心中央のクラスト層周囲は水没したが、炉心中央は除熱されず、溶融プールが成長した。
  2. デブリの移行経路は、炉心南東側の集合体およびバッフル板周辺と推定された。#1987年に、主な移行経路がバッフル板の先であることが明らかになった
  3. 下部プレナムへのデブリ移行の際に、水蒸気爆発の痕跡はない。約16%の炉心物が下部プレナムに移行した。
  4. 下部プレナム冷却水により移行したデブリは冷却され、それ以上の事故進展が停止した。下部ヘッドは大きく損傷しなかった。
  5. FP放出は化学形による揮発性に強く依存することが確認された。しかし、揮発性FPのI,Csの下部プレナムデブリからの放出は予想以下であった。Csは、下部プレナム移行デブリ中で、初期インベントリに対して約16%が保持されていた(主に、ボイド内部)。低揮発性FP(Ce-144,Eu-154など)は、ほとんどがデブリ内に保持されていた。中揮発性FPのSb-125とRu-106は金属相への濃化傾向が見られた。#これらの分析値は、数mg~数10mgの粒子サンプルの分析結果であり、分析値の代表性に課題が残されている
表4 下部プレナムデブリと上部ルースデブリ中のFP保持の比較(ORIGEN-II解析値をUに対して規格化:%)[7]
放射性核種 下部プレナムルースデブリ 炉心上部ルースデブリ
単純平均 範囲 単純平均 範囲
I-129 2 0~10 22 10~28
Cs-137 16 9~22 21 6~32
Sb-125 5 3~10 28 18~38
Ru-106 7 4~9 55 35~86
Ce-144 114 106~124 114 90~130
Eu-154 85 75~94 90 60~108

サンプル採集と分析

  • 今後の内部調査とサンプリングの計画が改定され[51]、1987年以降の調査計画に反映されることとなった。
図29 1986年に実施された建屋地階の調査 [7]
ex-vesselのFPインベントリ 
  • 炉心から放出され一次系に吸着したFPの評価に向けて、建屋地階からのサンプリングと分析が行われた(図29)[7]。
  • 主な観測結果は
  1. コンクリートからの主要線源はCs-137とSr-90(線量の約90%)であり、表面から約1/4インチ侵入していた。表面ペイントよりもコンクリート内の気孔に侵入して保持されたFPからの効果が大きかった。
  2. 事故以降しばらく水没していた範囲の水面近くだった部分の線量が特に大きかった。#濡れ渇き位置
  3. ホウ酸水を用いたFP溶出処理は可能かもしれない。
  4. 約5トンの汚泥が堆積していた。核物質量はUO2換算で約1.7~3.2kgと推定された。
RCS系のFPインベントリ
  • (a)加圧器、蒸気発生器上部ヘッドのデブリ探査(ビデオ)、(b)蒸気発生器配管と下部ヘッドのデブリ探査(ファイバースコープ)、(c)加圧器と蒸気発生器からのデブリサンプリング、(d)加圧器と蒸気発生器の侵入口の付着デブリサンプリング、(e)加圧器下部堆積物の分析、(f)付着デブリサンプルの予備分析、などが行われた。
  • 主な観測結果は
  1. 加圧器: スラリー状の堆積物とヒーターへの付着物が約15L検出された。堆積物中の粒度分布は、50μm以上が40%、20~50μmが40%、10~20μmと5~10μmがそれぞれ10%と評価された。
  2. A系蒸気発生器: 約0.5~1Lの粒子デブリがチューブシート上に堆積していた。U含有は少なかった。約3cm以上のデブリを含んでいた。また、約10~15Lのスラリーが下部ヘッド上に堆積していた。
  3. A系コールドレグ: 約20~30Lのスラリーが堆積していた。
  4. B系蒸気発生器: 約1~4Lの粒子デブリがチューブシート上に堆積していた。約1~2cmサイズであった。燃料デブリ粒子が混入しており、U含有量は<70%であった。
  5. B系コールドレグ: 約40~60Lのスラリーが堆積していた。
  6. 付着堆積デブリの特徴: (a)加圧器や蒸気発生器上部での堆積厚さは約1~15μm、(b)B系蒸気発生器での堆積FPが多く、加圧器で少ない。(c)主要な放射性物質はCs-137とCo-60であった。
圧力容器内の調査
  • 1986.1月に微生物繁殖問題発生したため、収納缶に入った物量の確認やルースデブリ堆積状態の観察が困難となった。
  • 一方で、ボーリング調査と下部プレナム調査により、サンプルが回収され、分析が進捗した。
  • 残された調査が必要な領域は
  1. 溶融凝固デブリの下部プレナムへの移行ルート周辺
  2. LCSAに付着したデブリの状態
  3. 下部プレナム堆積デブリの中央下層(#燃料以外の金属デブリが溶融凝固している可能性

新たに製作・利用されたツール

収納缶取り扱いツール 
  • 収納缶の回転、キャップの脱着、監視ビデオ、脱水系、排気系、収納缶の内容物(形状を維持した燃料集合体上部、コアバレル、など)を取り出すツール、内容物を解体するツール。サンプルの特定箇所を小分けするツール、などが製作され、機能確認試験を経て、INELに搬入された。
  • これらのツールを用いて、ボーリングサンプルや上部端栓、制御棒スパイダーなどを、Fuel収納缶5個から取り出した。
  • 上部端栓サンプルの収納缶からの取り出しに苦労した。#収納缶内にさかさまに入っていて取り出し時にスタックした、また、微粒子が内管との境目にくさびのように入ってしまった。
コアボーリング装置
  • 1985年に完成し、1986年に建屋内に搬入して、SWPに取り付けられた。9本のボーリングサンプル回収に成功した。下部プレナムデブリの採集を3本試みたが失敗した(#LCSAに付着していたデブリ量が少なかった。下部プレナムデブリの表面がルースで採集できなかった)。10本目のボーリング(K6位置)では、原因不明だが、ほとんどサンプルが入っていなかった(図28)[7,42]。下部プレナムまでの貫通には成功した。
図30 コアボーリング装置を用いたデブリ破砕作業(約400回のボーリング) [7]
溶融凝固層の破砕作業
  • ボーリング調査後に、ヘッドを硬いブロックに交換し、デブリ破砕ツールとして使用された。
  • 第一段階(8月): 約1.8m半径の炉心中央部を48本、約5cm径のボーリングピットで破砕。
  • 第二段階(11月): 約2.6m半径の範囲で409本、約11.4cm径のボーリングピットで破砕(図30)[7]。
  • 将来の再利用に備えて、ボーリングマシンはいったん撤去された(構造物の切断、下部プレナムデブリの破砕、など)。
ガンマスキャン装置(サンプル軸方向の線量分布の測定)
  • 1986年初旬に準備完了し、INELホットラボに搬入された。上部端栓に付着していた残留燃料棒、制御棒の分析に使用された。

炉心部のビデオ調査の継続

  • 燃料・炉心デブリ取り出し作業と並行して、以下のビデオ調査が行われた[7]。この過程で、炉心周辺部での燃料集合体の残留状態[52]や、馬蹄形リング構造の調査[53]が行われた。
    • 1986.1月(炉心東側の空洞床部分): P4集合体の倒壊状態を調査
    • 1986.6月(上部ルースデブリ回収後のクラスト層の表面): ボーリング調査位置周辺の調査、ボーリングの障害になりそうな堆積物の表面状態を調査
    • 1986.7月(ボーリング孔の内側、LCSA、下部プレナム堆積物の表面): 炉心下部の成層化状態、下部プレナムの様子、LCSAの損傷、下部ヘッド計装管の損傷、等を調査
    • 1986.10月(上部空洞の側面と床面): 炉心周辺の倒壊していない燃料集合体の様子、ルースデブリの残留状態(真空吸引システムでのデブリ回収をいったん終了した後)などを調査
    • 1986.12月(同上): 溶融凝固層をボーリングマシンで砕いた後の様子を調査
  • 得られたビデオ画像をINELで編集し図面化して、炉内状況理解の精緻化やボーリング調査計画などに利用された。
  • 主な観測結果は
  1. 図31 馬蹄形リング構造(斜線部)と周辺に残留していた燃料集合体(赤線の外側)の位置関係 [7,52,53]
    周辺燃料集合体の損傷は、元の空洞床面よりも下のレベル、特に溶融凝固層レベル付近で増加していた(1月調査)。
  2. 上部クラストの上に、馬蹄形リング状の凝集相が存在していた(図31)[7,52,53](6月調査)。周辺燃料集合体より一層内側にあり、高さは上部クラスト表面と炉心下部から約2.5mの高さの間であった(数10cmの高さ)。
  3. 図32 炉心下部の成層化状態 [7]
    コアボーリングホール調査により、成層化状態が解明された(図32)[7](7月調査)。堆積状態のマッピングが行われた。
  4. 溶融デブリの移行位置がほぼ同定された(10月調査)。
  5. 堆積物の表層に、大きな塊デブリを確認、デブリ破砕作業中に崩落した馬蹄形リング構造の一部と推定された。馬蹄形リング構造の切れめを観測した。P5,R6あたりでコアフォーマプレートに反りが見られた。(12月調査)
  • これらに基づいて、燃料物質の分布が再評価され、周辺燃料+切り株燃料で42%、ルースデブリ23%、溶融凝固デブリ(炉心)19%、同(下部プレナム)16%と推定された。

参考:下部プレナム調査(調査中)

参考:コアボーリング調査

参考:初期の燃料デブリ取り出し中に得られた知見(馬蹄形リング構造、周辺燃料集合体)

炉心部からのサンプル採集と分析

  • 1986年には、以下のサンプルがINELに輸送、あるいは現場で採集された。
  1. 炉心周辺の燃料棒
  2. 上部ルースデブリの追加サンプル
  3. 上部端栓、燃料集合体上部サンプルの収納缶からの取り出し
  4. ボーリングサンプル採集(合計約132kg)
  5. 計装系ストリング(約1.2m長)を炉心上部から回収
  6. 破砕処理後に、溶融凝固層を約136kg追加回収、うち約2/3は馬蹄形リング構造の塊デブリと推定
  • 1987年には、以下が予定された。
  1. 追加の溶融凝固サンプルのINEL輸送
  2. 下部プレナムからのルースデブリ追加サンプリング
  3. デブリ移行パス周辺の集合体サンプリング
  • 1986年には、以下のサンプル分析が行われた。
  1. H8リードスクリュー案内管(GEND-INF-067)[54]
  2. 上部ルースデブリ(GEND-INF-075)[55]
  3. 下部プレナムデブリ分析(GEND-INF-084)[56]
  4. 周辺燃料棒の非破壊分析に着手
  5. 燃料集合体上部サンプルの分析に着手
  6. ボーリングサンプルの分析開始
  • 1987年には、以下の分析が予定された。
  1. 周辺燃料棒の分析結果まとめ(GEND-INF-087)[57]
  2. 上部残留燃料集合体の分析結果まとめ(GEND-INF-082)[58]
  3. ボーリングサンプルの分析まとめ(GEND-INF-092)[59]
  4. 上部ルースデブリの追加サンプルの分析
  5. 下部プレナムデブリの追加サンプルの分析

参考:リードスクリュー案内管の分析

参考:上部ルースデブリの分析

参考:下部プレナムデブリの分析

参考:炉心周辺に残留していた燃料棒サンプルの分析

参考:形状を残した燃料集合体上部サンプルの分析

参考:コアボーリングサンプルの分析

REP (Reactor Evaluation Program)、1985年以降

1985年

プレナム構造物の撤去

  • 図33 プレナム最終リフトの様子 [30]
    1984.12月にジャッキアップが行われ、それ以降数か月の間に、プレナム構造物内部のビデオ観察と付着・ぶらさがりデブリの撤去が行われた。
  • モックアップ試験や機能確認試験、さらに重量物落下解析が行われ、NRCに対し、Plenumu Removal Safety Evaluation Reportが提出された[43]。プレナム取り外しツールの詳細は、GEND-INF-051レポートで報告された[44]。
  • 1985.5月にプレナム最終リフトが行われ、プレナム構造物が撤去され、Canal最深部に一時貯蔵された(図33)[30]。移送中の建屋内の線量増加は予想値以下であった。作業員は遮蔽エリアに待機し、撤去は完全な遠隔作業で行われた。#この段階で、上部格子板を下からビデオ調査できた。また、炉心内部を、上から初めて目視できた
  • その前に、Canal側の準備作業として、水位をかさ上げするためのダムの設置、冷却水処理系の取り付け、等が行われた。
  • プレナム構造物撤去後に、下部プレナムの初めての調査が行われた[41]。

燃料と炉心デブリの取り出し

  • 主要な燃料と炉心デブリ取り出しツールの搬入、取り付けが行われた。1985.10月にデブリ取り出しが開始された。あらかじめNRCに対して、Early Defueling Safety Evaluation Reportが提出された[45]。
  • 図34 デブリ取り出しツールの例 [47]
    表5に主要な燃料・デブリ取り出しツール及びサポートツールの一覧を示す[46]。大きく4つの区分されている。図34にツールの例を示す[47]。
  • 作業の中核となるのは、遮蔽付き回転型プラットフォーム(SWP: Shielded Working Platform)であり、様々ツールや設備が取り付けられた。

#高線量下、水中、作業員から最大約10m離れた場所で取り扱うことから、デブリ取り出しツールのコンセプトは、できるだけシンプル、開発要素が少ない、機能確認試験と運転経験および炉内状況からの要請で必要になった時のみ複雑な機器・ツールを導入する、とされた。

  • また、炉心中央から下部にかけてハードクラスト層が存在することはほぼ確実であり、溶融デブリがLCSA(Lower Core Support Assembly)の隙間や、UCSA(Upper Core Support Assembly)のバッフル板の外側領域に侵入して凝固・堆積している可能性も考えられた。これらの場合、より硬く高精度な切断・破砕技術が必要となる可能性が考えられた。そこで、いくつかの追加ツールの検討が開始された(固いデブリ層の破砕、LCSAやUCSAの解体、インコアモニターの撤去、等)。追加されるツールの候補は、クランピング/カッティングステーション、ツールの位置決めマスト、油圧式の打撃チゼル、ロボット操作のアーム、計測機器のカッター、油圧カッター、強力なソー、切り株燃料集合体吊り上げツール、大型のデブリ粒子吸引システム(ペレットサイズまで)、などであった。どれをどこまで開発し、いつまで使うかは、内部調査の進捗を考慮しつつ検討されることとなった。デブリ取り出しツールの設計は、GEND-INF-065レポートにまとめられた[47]。
  • 溶融凝固層の破砕には、ボーリング装置を改良し、先端を硬いブロックビットに交換したものを用いることとなった[42]。
  • 冷却水処理系として、DWCS(Defueling Water Cleanup System)が、取り付けられ、冷却水の透明度維持と放射性物質の除去が行われた。
  • 5トン能力のサービスクレーンが取り付けられ、ポーラークレーンを使わなくても、長尺ツールを吊り上げられるように準備された。さらに、より小さいジブクレーン2基が作業プラットフォーム上に設置された。
  • デブリ収納缶の建屋内移送用に、ARB(Auxiliary Refueling Bridge)とトロリーの改造が行われた。Canal最深部と燃料貯蔵プール側でも、デブリ収納缶をハンドリングできるように、収納缶ラックや冷却水処理系が準備された。
  • 収納缶の脱水装置が設計・製作された。
  • 3タイプの収納缶の設計が完了し、30年の耐用年数で、最大で280体必要と見込まれた。最初の45体が製作され搬入された。
  • 徹底したデブリ取り出しモックアップ試験が行われた。第一段階では、デブリベッド表層の堆積物を回収、あるいは炉心の周辺部に移動する作業が行われた。1985年内に、収納缶2個が満載となり、2個に一部装荷された。デブリ破砕作業も進行し、真空吸引システムでのデブリ回収の準備が完了した。
  • 並行して、ex-vessel debrisへのアプローチ開始された。まず、FPと燃料物質の堆積位置の調査が行われた。放射性物質の物量は少ないが、遮蔽がほとんどないので、作業員被ばく低減策が重要となった。加圧器、蒸気発生器、その他圧力容器周辺の配管系の調査が行われた。建屋地階は極めて高線量だったため、遠隔ロボットRover-1が使用された。地下階のコンクリートボアサンプルが採集された。
表5 主要な燃料・炉心デブリ取り出しツール [6]
作業の区分
塊状デブリ(溶融・凝固層、クラスト層)

一部形状を維持した燃料集合体(切り株燃料、周辺燃料) 炉心上部構造物(上部端栓、制御棒スパイダー)、 等のサイズの調整・破砕・解体 構造物(LCSA,UCSA)の切断・解体

切断系ツール: シャーリング、シュレッダー、切断機、ソー、ウォータージェットソー

解体系ツール: プラズマアークトーチ、インコアモニターカッター、カットオフソー 破砕系ツール: 打撃チゼル、穴あけ用のウォータージェット、ボーリングマシン かきとり系ツール: 回転ブラシ

デブリの摘み上げ、収納缶に投入

Pick-and-Place工法

取り扱い容器: デブリバスケット、デブリバケツ、上部端栓等のコンテナ

取り扱いツール: 形状を残している燃料集合体の上部をつかんで(たばねて)吊り上げ、スクープ、フック、トング、グリッパー、タンパー、スィーパー 収納缶とその取扱い: Fuel収納缶、収納缶ハンドリングツール、クレーン、ハンドリングブリッジ

粒子状デブリ(130μm~ペレットサイズ)

微粒子デブリ(0.5μmフィルター)の真空吸引 DWCS系での冷却水処理

吸引系: 吸引ノズル、ホース、ハンドリングツール

収納缶: Knockout収納缶、Filter収納缶

サポートツール 作業ベース: 遮蔽付き回転型作業プラットフォーム(SWP)とその支持構造、制御系、ケーブルマネージメント

作業監視・記録: CCTV、光源、通信系 作業サポート: ロボットアームマニピュレータ、位置決め器、スタビライザー、収納缶位置決め(カルーセル)、ツールラック

オンサイトデータの収集継続

  • 1984年まで実施されていたDAPがここに再編された。
  • 安全機器設備と電気系統について現地調査が継続された。17個のサンプルが新たにRH社に送付された。
  • 安全機器の動作確認、診断システム(ECCAD: Electrical Circuit Characterization and Diagnostic System)が開発された。
  • 調査結は、GEND-INF-068レポートにまとめられた[48]。また、事故時の動作については、GEND-050レポートにまとめられた[49]。

参考:デブリ取り出し工法の変遷

参考:燃料・デブリ取り出しツールの設計

1986年

燃料と炉心デブリの取り出し

  • 1986.1月: 最初のFuel収納缶が使用済み燃料プールに移送された。1986年内に炉心物質の約20%を回収し、使用済み燃料プールに移送する計画であった。
  • 1986.1月: 粒子状デブリの真空吸引システムの運用が開始された。しかし、デブリベッド表層に塊状デブリが密集し、真空吸引作業の障害となった。高圧水ホースによる、ウォータージェットシステムが導入され、デブリ粒子を巻き上げて、真空吸引しやすいように工夫された。このシステム改良で、4月から真空吸引が本格運用され、デブリ回収速度は、約1.36kg/分となった。
  • 1986.1月以降: 冷却水の濁りが継続し2月には実質的に透明度ほぼゼロとなった。しかし、ブラインドで、Pick-and-placeと真空吸引作業が継続された。
  • 1986.4月以降: 回収可能な上部ルースデブリをほぼ回収し、デブリ取り出し作業がいったん中断され、水質浄化に注力された。殺生物剤が投入され、5月には透明度が若干回復したため、デブリ回収作業が若干追加され、上部ルースデブリの回収作業が終了した。
  • 1986.6月: コアボーリング予定位置周辺の片づけとビデオ調査が行われた。
  • 1986.7月: コアボーリング作業は、最初の掘削位置決めが難しかったが、それ以降は順調に進行した。ボーリング時の目視と記録計のレコードから、溶融凝固層は予想より硬くなくボーリングで破砕可能と判断された。炉心下部の成層化状態が確認された。LCSAの損傷は軽微であり、炉心東側にデブリが堆積していた。下部プレナムの堆積デブリはルース状態で真空吸引システムが使えると判断された。成層化状態から事故時の水位が推定された。
  • 1986.8月: コアボーリング装置の先端ピットを中空タイプから固体タイプに交換し、溶融凝固層やクラスト層の破砕作業が行われた。しかし、破砕は十分でなく、この段階での破砕デブリを既存ツールで回収するのは困難と判断された。
  • 1986.9月: デブリ破砕ボーリングの邪魔になる塊状のデブリ(端栓など)が撤去された。上部端栓はいくつか相互に固着していて収納缶に入らなかったので、遮蔽付きのドラムにホウ酸水を満たして回収し、吊り上げられた。
  • 1986.10月: ボーリングマシンが再度投入された。粉末凝縮ダイアモンド塗布された炭化タングステンの大きいサイズのピットが使用された。掘削孔を重ねながら、19個のテスト採掘が行われ、デブリが破砕されるこが確認された。
  • 1986.11月: デブリ破砕のボーリングが409本計画された。うち11本は周辺の採掘で固い層が失われたため、実施できなかった。炉心外周部は、ボーリング装置が到達できず、掘削できなかった(図28,30)[6,7]。
  • 1986.11月以降: 掘削後に、Topography調査とビデオ観察が行われた。水質が悪く、ビデオでは十分なデータが得られなかった。Topography調査では、破砕前に損zないしていた重量物の一部が確認できなかった。これは、破砕作業により、切り株燃料の間を通過し、下部プレナムに落ちたと推定された。水質改善作業が追加で行われた。
  • 1986.12月: 水質が改善し、ビデオデータやtopographyデータがより鮮明に取得できるようになった。その結果、10-11月に実施された破砕作業は十分でなかったことがわかった。約30cm以上のサイズの岩石状デブリがいくつか確認された。これらは、馬蹄形リング構造から崩落したと推定された。壊れたドリル部品が散乱していた。炉心周辺には、溶融凝固層と周辺燃料集合体がまだ残留していた。壊れたドリル部品はFuel収納缶に回収された。1987年以降に、岩石状デブリを砕く方法が必要とされた。1986年は、透明性が悪く打撃チゼルタイプツールがうまく使えなかった。破砕された粒子デブリは摘まみ上げが困難だったが、比較的アクセス容易な外周部の内側領域から一部のデブリが回収された。

LCSAと下部プレナムからのデブリ取り出し、LCSA解体

  • 1985.9月: LCSAの解体方法の検討が開始された。
  • 1986.4月: ここまでのデブリ取り出し経験と内部調査を反映して、取り出し案の改定が進められた。おそらく、大きくて硬いデブリが下部プレナムとLCSAに存在すること、デブリ取り出しの準備作業としてLCSAの解体撤去が必要なこと、等の課題が抽出された。
  • LCSAの解体方法として、プラズマアークが主概念として選定された。別案としてAWJ(Abrasive Water Jet)の検討も行われた。LCSAのクリーニングツールと岩石状デブリの破砕装置が設計された(Cavitating Water Jet、研磨砥石ツール、フラッシング、真空吸引系、など)。
  • プラズマアーク装置の設計・製作先として、PCI社が選定された(Power Cutting Inc.)。長尺ツールの設計・製作先として、OSE社が選定された(Ocean Systems Engineering)。
  • 並行して下部ヘッドデブリの取り出し方法の検討が開始された。ボーリングマシンでLCSAに穴を開け、真空吸引とフラッシングツールを下部プレナムに挿入する案が提案された。

ex-vesselデブリの回収

  • 1986の第三四半期に、ex-vesselデブリの回収方法の検討が開始された。
  • 3つの加圧スプレーシステムが基本検討された。
  1. PSLDS(Pressurized Spray Line Defueling System)
  2. PDS(Pressurized Defueling System)
  3. P/DS(Plenum Defueling System)
  • PSLDPは、既設のDWCSを水源に利用し、加圧器やコールドレグの中をフラッシングするシステムであり、1986年内にホースを敷設し、1987年にはフラッシングの準備開始が計画された。
  • PDSは、ホース系を新設し、DWCSで処理した(KnockoutとFilter収納缶の後)水を利用して、加圧器や冷却水中のデブリの巻き上げに利用するシステムであった。PSLDPシステムで、Filter収納缶がうまく稼働しない時には、PDS系を用いて付着粒子を巻き上げて圧力容器内に還流する案が計画された。1987年に運転開始予定とされた。
  • P/DSは、プレナム構造物の付着デブリ除去や燃料移送Canal床のデブリ除去に利用予定のシステムであった。燃料移送Canalの冷却水をポンピングしてフィルタリングし、高圧スプレー系に戻すシステムであった。高圧スプレーはプレナム構造物(Canal内に貯蔵)のデブリ除去と共用された。プレナムからフラッシングされたデブリと共に、Canal冷却水(床堆積デブリを含む)を回収する計画であった。

TMI-2で得られた知見の活用、1986年~

 1986年の年次報告から、TMI-2知見・データの活用という項目が新たに追加された[7]。

放射性廃棄物取り扱い技術

  • EPICOR-IIとSDSの減容処理技術の開発により、EPICOR-IIの高レベル廃棄物は1/10、SDSの高レベル廃棄物は1/500以下に減容された。
  • 高レベル廃棄物のゼオライト処理技術が開発された。
  • 低レベル廃棄物の減容技術が開発された。
  • 可燃性ガスの取り扱い技術が開発された。
  • 埋設処分のための高強度収納缶(HIC)が開発された。

事故時の安全設備と電気系統のサバイバル状態の調査

  • 事故時の安全機器、電気系統、機械系統などの動作状態、損傷状態の調査が行われ、機器設計設計、装荷方法、メンテナンス方法などに反映された。
  • ECCADシステムが開発された。

規格基準への知見提供

  • IAEA、ANS、ANSI、IEEEなどに、規格基準の改定に向けた知見・データを提供した。

事故の教訓の反映

  • 産業界において、規格基準の高度化、コミュニケーションの向上(ニュークリアネットワーク)、トレーニング、プラントの改良、緊急時対応と準備、などについて、TMI-2事故教訓が導入された。

事故の解明

  • 一次系の熱水力ふるまい、炉心損傷進展、FPふるまいについて、産業界と知見共有された。
  • 残された重要未解明問題として、①溶融プールを囲んでいたクラスト層の破損メカニズムは何か?②下部ヘッドの損傷程度は?が提示され、追加でのサンプル採集が必要とされた。デブリ取り出しに並行してサンプリングが行われることとなった。

参考文献

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