燃料デブリの分類と堆積状態

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1号機

RPV内事故進展(1号機固有の事象)

#詳細は、事故シナリオの特徴と燃料デブリのふるまいの推定を参照。

① 高圧条件で、冷却水の水位低下、炉心は上部から次第に水蒸気中に露出。

② 水蒸気潤沢条件で、水蒸気/Zr反応により、炉心温度の急上昇。炉心溶融開始。

③ 燃料デブリは塊状で多く崩落し、炉心支持板直上付近で、いったん堆積。崩落時の炉心エネルギーは2、3号機に比べて高かった可能性。

④ 炉心部でいったん崩落・堆積した燃料デブリは、Zr表面積の急な減少により、いったん温度低下。その後、水蒸気供給の不足条件で、崩壊熱により温度再上昇。

⑤ 1号機では、溶融デブリプールの形成・拡大が進んでいた可能性。溶融デブリは、短時間で下部プレナムに移行した可能性。#TMI-2事故と類似していたと推定。

⑥ デブリの下部プレナム崩落時には、冷却水が残留。崩落した燃料デブリはいったん冷却・固化。その後、崩壊熱により、下部プレナムでデブリドライアウト、再昇温・再溶融。

⑦ 溶融デブリとRPV鋼材との伝熱、あるいは化学的相互作用により、RPVが大規模破損。

RPV内でのデブリふるまい(1号機固有の事象)

ここから、、、、

詳細は、事故シナリオの特徴と燃料デブリのふるまいの推定を参照。

①②により、in-vessel初期フェーズでの、制御棒破損・溶融について、

(2号機と類似)

・B,Cを少量溶融したSSメルトが先行溶落し、さらに、チャンネルボックスに接触して、その一部を共晶溶融しつつ下方に移行。

・制御棒上部では溶け残った顆粒状B4Cが金属メルトに覆われていったん残留。その後に、制御棒チャンネル内で物理的に崩落。

・炉心上部の集合体部材(上部タイプレートなど)は、未溶融のままでいったん残留。

・溶落した金属デブリメルト(制御棒/チャンネルボックスの溶融物)の酸化度が低かったため、その炉心下部での初期閉塞では、稠密性が高くなかった可能性(水蒸気に対するガス透過度を維持)。

(3号機固有)

・ADS作動前に、炉心上部では、すでに制御棒溶落が始まっていた可能性。炉心崩落進展には、あまり影響しなかったのではないか。

①②③④により、in-vessel初期フェーズ、トランジエントフェーズでの、燃料棒破損・溶融について、

・炉心下部では、燃料棒の外周酸化皮膜が比較的薄く、デブリ温度が比較的低い段階で(2000℃程度と推定)、粒子状で崩落。

・炉心上部では、燃料棒の外周酸化皮膜が比較的厚く、デブリ温度が比較的高くなってから(2300℃程度と推定)、塊状で崩落(3号機で、ADS作動時点までのZr酸化度は、10%と推定、参考8:デブリ崩落時の炉心エネルギーとデブリ酸化度の上昇)。

・粒子状のデブリは、崩落途中で水蒸気に曝され、酸化度が上昇しやすい。一方、塊状のデブリは、崩落途中で内部が酸化されにくい(3号機で、炉心崩落開始時点までのZr酸化度は20%、炉心支持板直上でいったん堆積した時点までのZr酸化度は40%と推定、参考8:デブリ崩落時の炉心エネルギーとデブリ酸化度の上昇)。

・崩落後、ある程度塊状が多く、2号機に比べて隙間が少ない状態で堆積。

さらに、⑤⑥により、in-vessel後期フェーズ(炉心部)について、

・いったん炉心支持板の直上あたりに堆積したデブリ中で、金属デブリが溶融開始、酸化物デブリも一部そこに溶融。2号機よりもデブリ酸化度が低いため、U-Zr-Oメルトが成長しやすい、さらに、金属デブリがU-Zr-Oメルト中に溶融しやすいと推定。

・溶融プールの上下クラスト層が形成されたと推定。# 一部は、BWRドレナージ型で崩落した可能性は否定できない。

・炉心部から、下部プレナムへの崩落時においても、デブリ酸化度が上昇した可能性。# 溶融デブリプールが拡大すると、表面に酸化被膜が形成され、バルクのメルトは、固体状態に比べて酸化がすすみにくい。したがって、この時点でも、デブリ(Zr)酸化度がある程度抑制されていた可能性が高い。

さらに、⑦により、in-vessel後期フェーズ(下部プレナム)について、

・塊状(固体orメルト状)のデブリ(主成分は、U-Zr-Oメルト(亜酸化)、Fe-U-Zrメルト(金属))が、下部プレナムの冷却水中に崩落し、いったん冷却・凝固。粒子状のデブリも崩落。

・冷却水との反応により、デブリの一部が、微粒子化・粉体化(分類(F))。

・再昇温過程では、金属デブリが先に溶融、亜酸化デブリがさらに溶融、下部プレナムでデブリ溶融プールを形成した可能性(分類(C)(E))。# 溶融プールの化学状態は、U-Zr-Oメルトと(U,(Zr))O2固相の固液共存状態として理解できる。U-Zr-Oメルト相は、周囲を(U,(Zr))O2固相等のクラスト層で覆われるため、その内部は酸化されにくい。3号機では、デブリ酸化度が低いため、U-Zr-Oメルト中に鋼材成分が溶融しやすかったと推定。

・粒子状の酸化物デブリは、デブリ再溶融時に、かなり高温まで固体状態を維持(分類(D)

・炉心下部の支持金具やCRGTは大きく破損、一部は未溶融のまま崩落し下部プレナムに堆積(分類(B))、一部は、デブリ溶融プール中に溶融したと推定(分類(C)(E)

さらに、⑧により、RPV破損モードについて、

・2号機と同様の、金属デブリメルト(主成分:SS(Fe)-U-Zr(-O)、おそらくBやC、金属系のFPを含む)の先行溶落が発生していた可能性。おそらく、そこには酸化物デブリ(粒子状)や破損した金属部材等が混入。

・高粘性デブリ(U-Zr-O亜酸化メルト、Fe-U-Zr金属デブリメルトなど、あるいは両者が混合)が、時間をかけて、ペデスタル内に崩落。局所的には、二酸化物も溶融していた可能性。

・U-Zr-Oメルトと鋼材が接触すると、メルト中の酸素溶解度限が急減し、UO2やZrO2の粉末が析出する可能性(U含有粒子の形成メカニズムのひとつ)。

図 状況推定図





















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図 堆積状態






















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2号機

RPV内事故進展(2号機固有の事象)

#詳細は、事故シナリオの特徴と燃料デブリのふるまいの推定を参照。

① RPV内高圧状態でSRV弁を手動で開操作 ⇒ 短時間での冷却水の減圧沸騰 ⇒ 炉心が短時間で露出。これにより、冷却水水位がBAF以下にいったん低下。その後の注水不十分による水蒸気枯渇条件の発生。

② 水蒸気枯渇条件で、制御棒が先行溶落。同時に、燃料棒温度が上昇。

③ 冷却水の水位が炉心支持板直上あたりまで回復 ⇒ 炉心内は水蒸気潤沢条件に復帰。燃料被覆管の急速な昇温開始。

④ 炉心下部での燃料被覆管の酸化が比較的低いうちに炉心・燃料が崩落開始した可能性。したがって、崩落時の炉心エネルギーが比較的小さい(平均的なデブリ温度が比較的低い)と推定。

⑤ 炉心部でいったん崩落・堆積した燃料デブリは、Zr表面積の急な減少により、いったん温度低下。その後、水蒸気供給の不足条件で、崩壊熱により温度再上昇。

⑥ BWRドレナージ型シナリオで、2-3時間かけて徐々に下部プレナムに移行。

⑦ デブリの下部プレナム崩落時には、冷却水が残留。崩落した燃料デブリはいったん冷却・固化。その後、崩壊熱により、下部プレナムでデブリドライアウト、再昇温・再溶融。

⑧ 溶融デブリとRPV鋼材との伝熱、あるいは化学的相互作用により、RPV下部側面で大規模破損、RPV底部溶接部で小規模破損が発生。主に金属デブリメルトがペデスタル内に流出。

RPV内でのデブリふるまい(2号機固有の事象)

詳細は、事故シナリオの特徴と燃料デブリのふるまいの推定を参照。

①②により、in-vessel初期フェーズでの、制御棒破損・溶融について、

・B,Cを少量溶融したSSメルトが先行溶落し、さらに、チャンネルボックスに接触して、その一部を共晶溶融しつつ下方に移行。

・制御棒上部では溶け残った顆粒状B4Cが金属メルトに覆われていったん残留。その後に、制御棒チャンネル内で物理的に崩落。

・炉心上部の集合体部材(上部タイプレートなど)は、未溶融のままでいったん残留。

・溶落した金属デブリメルト(制御棒/チャンネルボックスの溶融物)の酸化度が低かったため、その炉心下部での初期閉塞では、稠密性が高くなかった可能性(水蒸気に対するガス透過度を維持)。

①②③④により、in-vessel初期フェーズ、トランジエントフェーズでの、燃料棒破損・溶融について、

・燃料棒の外周酸化皮膜が比較的薄く、デブリ温度が比較的低い段階で(2000℃程度と推定)、主に粒子状で崩落。

・粒子状のデブリは、崩落途中で水蒸気に曝され、酸化度が上昇しやすい(2号機で、炉心崩落開始時点までのZr酸化度は15%、炉心支持板直上でいったん堆積した時点までのZr酸化度は55%と推定、参考8:デブリ崩落時の炉心エネルギーとデブリ酸化度の上昇)。

・崩落後にも粒子状を維持し、隙間が多い状態で堆積(分類(D))。

さらに、⑤⑥により、in-vessel後期フェーズ(炉心部)について、

・いったん炉心支持板の直上あたりに堆積したデブリ中で、金属デブリが溶融開始、酸化物デブリも一部そこに溶融。しかし、炉心下部での閉塞不十分のため、溶融デブリプールが成長・拡大しにくかった可能性。# 従って、溶融プールの上下クラスト層も形成されにくかったのではないかと推定。

・炉心部から、下部プレナムへの崩落時においても、デブリ酸化度が上昇した可能性。# 溶融デブリプールが拡大すると、表面に酸化被膜が形成され、バルクのメルトは、固体状態に比べて酸化がすすみにくいが、2号機では溶融デブリプールが拡大しなかった可能性。

さらに、⑦により、in-vessel後期フェーズ(下部プレナム)について、

・金属デブリや酸化物デブリは、下部プレナムの冷却水中に崩落し、いったん冷却・凝固。

・冷却水との反応により、デブリの一部が、微粒子化・粉体化(分類(F))。

・再昇温過程では、金属デブリが先に溶融(分類(C))。

・さらに、酸化物ルースデブリ中に、局所的に溶融プールを形成(分類(D)(E))。# 溶融プールの化学状態は、U-Zr-Oメルトと(U,(Zr))O2固相の固液共存状態として理解できる。U-Zr-Oメルト相は、周囲を(U,(Zr))O2固相等のクラスト層で覆われるため、その内部は酸化されにくい。

・粒子状の酸化物デブリは、デブリ再溶融時に、かなり高温まで固体状態を維持(分類(D))。

・一方で、酸化物デブリの一部は、亜酸化状態を維持し、金属デブリ中に溶融(分類(C)(E))。

・炉心下部の支持金具やCRGTは大きく破損、一部は未溶融のまま崩落し下部プレナムに堆積(分類(B))。

・不確かさが大きいが、炉心部から下部プレナムへのデブリ崩落過程、および、下部プレナムでのデブリ再溶融過程で、Zr酸化度は70-80%程度まで上昇した可能性。

さらに、⑧により、RPV破損モードについて、

・金属デブリメルト(主成分:SS(Fe)-U-Zr(-O)、おそらくBやC、金属系のFPを含む)が、RPV下部側面破損孔からペデスタル内に流出。酸化物デブリ(粒子状)や破損した金属部材等が混入。

・金属デブリメルトの一部は、RPV底部溶接部を破損し、CRDハウジング外周にいったん固着。その後に一部は崩落。

・下部プレナム底部に残留したU-Zr-Oメルト、あるいは金属デブリメルトは、それぞれ凝固時に相分離(分類(E))。

・U-Zr-Oメルトと鋼材が接触すると、メルト中の酸素溶解度限が急減し、UO2やZrO2の粉末が析出する可能性(U含有粒子の形成メカニズムのひとつ)。

デブリの分類(2号機RPV底部)

 2号機のRPV内部調査はまだ実施されていない。ミューオン調査では、炉心部に重金属がほとんど存在しておらず、RPV下部プレナム底部に重金属が堆積している観測結果が得られている。ミューオン調査結果に加えて、事故進展解析、およびPCV内部調査の結果から、2号機RPV底部の燃料デブリの分類は、以下のように推定される。(図1:2号機の炉内状態推定図から抜粋

 しかし、RPV内部の堆積状態(特に堆積物の形状・分布)については、かなり不確かさが大きいことに注意が必要である。図1に示すデブリ分類は、TMI-2事故の最終形態の評価やシビアアクシデント事故進展の理解に基づいて、現状では、このような種類のデブリが存在しうるというレベルで推定したものである。

(A) 切り株燃料集合体・・ 本来炉心があったあたりの外周下部に残留している可能性がある。# 切り株燃料集合体の存在が確認されているわけではないが、現時点でこれを否定する根拠もない。

(B) 破損した金属部材・・ 崩落したCRGT(おそらく下部が大きく溶融・損傷)、炉心支持金具、炉心支持板、燃料集合体部材の一部(タイプレート、制御棒ブレードなど)が、一部は未溶融のままで、下部プレナム底部の堆積物の上の方に存在している可能性がある。堆積している金属部材の下の方では、溶融・凝固した金属デブリに溶融・固着している可能性が高い。

(C) 金属デブリの溶融・凝固物・・ SS/Zrを主成分とする合金がいったん溶融した後に凝固していると推定される。2号機では、下部プレナム崩落時点でのデブリ酸化度(Zr酸化度)が70-80%程度と予想されており、その再溶融時に、U酸化物やBの化合物がZr金属によって還元されて、金属デブリメルト中に溶融すると考えられる。それらの溶解度は、Zrの酸化度とデブリの到達温度に依存するが、Uについて数モル%~10数モル%、Bについて10モル%程度と推定される。溶融・凝固時に、粒子状の酸化物デブリ(破砕したペレットなど)や未溶融B4C粒子、制御棒やチャンネルボックスの共晶溶融で中間生成物として形成される金属間化合物などを巻き込んでいる可能性がある。金属デブリメルトが酸化されると、そこに溶融しているU,Zrが選択的に酸化されて、U,Zrリッチな析出物が形成されると推定される。これは、U含有粒子の形成メカニズムのひとつと考えられる。

(D) 粒子状の酸化物デブリ(ルースデブリ)・・ 粒子状のデブリは、主に2つの形成メカニズムがあると考えられる。1つ目として、破損・溶融した燃料棒が崩落して炉心部でいったん堆積した際に隙間の多いルースデブリを形成し、その一部が、あまり再溶融せずに、下部プレナムに物理的に崩落した可能性が考えられる。2つ目として、炉心部で再溶融したデブリが下部プレナムの冷却水中に崩落した際に、燃料/冷却水反応により、一部が破砕された可能性が考えられる。前者は、残留ペレットや破砕された燃料棒などが主成分となる。後者は、いったん溶融する過程を経ているため、前者に比べてその内部でUやZrが均質化されていると推定される。

(E) 酸化物デブリの再溶融・凝固物(多孔質デブリ)・・ ルースデブリの一部が再溶融・凝固し塊状を形成したものである。金属デブリメルトと接触すると、溶融・混合・成層化する可能性がある。その際に、デブリ主成分やFPについて、金属デブリと酸化物デブリの間で、酸化還元反応による物質再分布が発生すると考えられる。凝固時に多孔質になる可能性が高い。凝固時に、さらに成分再分布する可能性がある。# ここで、酸化度が100%に到達していない亜酸化状態のデブリの溶融では、溶融開始温度(solidus)と全て溶融する温度(liquidus)におよそ1000℃の差(およそ1400℃から2400℃)があり、その間では、熱力学的には固液混合状態が安定となることに留意が必要である。実際の系では、酸化物デブリから金属デブリにかけて大きな温度勾配が形成される可能性も考えられる。

(F) スラリー状のデブリ・・ デブリの破砕などにより、1号機PCV底部で見られているようなスラリー状のデブリが2号機RPV下部プレナムでも堆積していると推定される。

図1 2号機RPV内の状況推定図


















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破損・デブリ堆積状態(2号機RPV底部)

 RPV内部の破損・デブリ堆積状態については不確かさが大きい。上で示したような分類のデブリが存在しているとすると、堆積物の上の方から、以下のような堆積状態になっていると推定されている(図1)。# 今後のRPV内部調査により、理解を精緻化していく必要がある。

(a) 切り株燃料集合体・・ 本来の炉心部の周辺下部に存在している可能性がある。その下には、おそらく、CRGTが残留している。# CRGTが一部倒壊している可能性や、CRGT内部にデブリが侵入している可能性も考えられる。いったん形成された切り株燃料集合体が、そのまま下部プレナムに崩落しているようなこともありうる。

(b) 破損した金属部材(CRGT、炉心支持板、炉心支持金具、燃料集合体部材など)・・ 崩落した金属部材は、下部プレナム堆積物の上の方では、本来形状を一部維持した状態で堆積している可能性が考えられる。下の方では、酸化物のルースデブリや溶融・凝固物、あるいは、金属デブリの溶融・凝固物と一体となっている可能性が考えられる。本来、下部プレナム底部にあったCRDスタブチューブはデブリとの接触により溶融・消失し、CRDハウジング支持金具に着座、一部で、破損孔を形成している可能性が考えられる。

(c) スラリー状のデブリ・・ RPV内の冷却水の水位にもよるが、下部プレナム堆積物の上の方にスラリー状や粉末状の物質が存在している可能性がある。

(d) 粒子状の酸化物デブリ(ルースデブリ)・・ 破損した金属部材などと共に、粒子状の酸化物デブリが堆積物の比較的上のほうに存在していると考えられる。(C)のスラリー状の堆積物と混在していると推定される。隙間が多いと考えられるが、堆積物の下の方では、金属デブリや多孔質デブリと固着している可能性がある。

(e) 酸化物デブリの再溶融・凝固物(多孔質デブリ)・・ ルースデブリの下の方(内部)で、デブリが一部再溶融して形成された可能性がある。金属デブリの溶融・凝固物と溶融・混合し、固着・一体化、あるいは成層化している可能性がある。

(f) 金属デブリの溶融・凝固物・・ 下部プレナムにいったん堆積したデブリが再昇温すると、比較的溶融開始温度の低い金属デブリが先行溶融すると考えられる。金属デブリメルトは、RPV底面に濡れ広がる可能性が考えられる。そこへのCRGTや炉心支持版の溶融量によって、金属メルトの物量が増えると推定される。金属デブリの相当量がペデスタル内に流出したと考えられるため、下部プレナム堆積物の内部(特に側面の大規模破損孔周辺)に空洞がある可能性がある。酸化物デブリの再溶融・凝固物と溶融・混合し、固着・一体化、あるいは成層化している可能性がある。

 また、2号機下部プレナムでは、以下のような破損孔が形成されていると考えられる。破損孔近くでは、RPV鋼材とデブリが相互溶融したり、固着したりしている可能性がある。

(g) 側面大規模破損孔・・ 下部プレナム堆積物が再昇温する際に、シュラウドサポートとスカートの間で、クリープ破損が累積する傾向が解析されており、上部タイプレートが通り抜ける程度の大規模破損孔が、下部ヘッド側面に形成されている可能性がある。(参考5:2号機下部プレナム堆積物の伝熱解析

(h) 底部局所破損孔・・ 金属デブリとCRDハウジング等の溶接部で発生する共晶溶融により、共晶反応生成物(合金層+化合物相、酸化物デブリ巻き込み?)が、CRD内に流入、あるいは、CRDハウジング外周部に付着すると推定される。(参考4:再溶融した金属デブリとRPV鋼材、溶接部の共晶溶融

 さらに、流出したデブリの一部は、RPV下に取り付けられている保温層の上に堆積している可能性がある。

(i) RPVと保温層の間の堆積物・・ 金属デブリや燃料デブリが、ペデスタル内に崩落せずに、一部が残留・堆積している可能性がある。他方、CRD内部に流入したデブリによる、内側からのCRD破損はないと推定している。

#備考:2号機RPV堆積物の調査、コアボーリングについて・・ 2号機では、RPV下部プレナム堆積物の画像データを取得することで、デブリ堆積状態や鋼材系の構造物の破損状態を確認することが重要である。これにより、RPV内でのデブリのふるまいにおいて最も不確かさが大きく、かつ、ペデスタルへのデブリ移行に影響が大きい、『下部プレナムにいったん堆積した金属/酸化物デブリの再溶融』に関する知見が拡充すると期待される。さらに、堆積物の深さ方向サンプルを、コアボーリングあるいは部分的(数cm~10cm程度の深さ)に採集できれば、深さ方向の堆積状態や、デブリ堆積・再溶融の反応メカニズムについての理解が精緻化する。これらにより、RPV底部堆積物の均質・非均質の程度や、ペデスタル内に移行したデブリの特性に関する知見も拡充されると期待される。

図1 2号機RPV内の堆積状態
















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デブリのペデスタル移行(2号機固有の事象)

詳細は、事故シナリオの特徴と燃料デブリのふるまいの推定を参照。

 2号機では、下部プレナムで、いったん堆積した後に、金属デブリと酸化物デブリの再溶融状態が、どこまで進んだのか(最高到達温度、溶融範囲、酸化度の変化など)が、以降のデブリふるまいとデブリ特性に大きく影響したと推定される(参考11:下部プレナム堆積後のデブリ再溶融)。下部プレナムで、デブリが熱力学的な平衡状態に近い状態に到達した後に、ペデスタル内部へ移行したとすると、その際のデブリふるまいは、以下のように推定される(図1)。

① RPV底部側面から流出した金属デブリメルト(平均温度1000-1300℃程度と推定、SS-Zr系の共晶溶融温度に相当)が、RPV下の保温層やグレーチング上にいったん堆積、これらを溶融・破損、一部がそこに残留し凝固・固着。金属デブリメルトの主成分はSS/Zr合金、U,B,Cなどを最大10mol%程溶融する可能性、粒子状酸化物デブリや燃料集合体部材を巻き込む可能性。

② 金属デブリメルトはペデスタル底部に溶落し、鋼材やコンクリート上に広がるまでの過程で急冷され、スレート状や粒子状で固化。ペデスタル内構造材やコンクリートはほとんど損傷していないと推定。したがって、MCCIはほとんど起きていない。

③ RPV底部溶接部の局所破損で流出した金属デブリ(平均温度1000~1300℃程度と推定、SS-Zr系の共晶溶融温度に相当)が、一部はCRD内へ流入・固化、一部はCRDハウジング外周に付着、さらに一部は崩落。経路①の金属デブリメルトに比べ、化合物相を含み、粘性が大きい可能性(参考4:再溶融した金属デブリとRPV鋼材、溶接部の共晶溶融)。

図1 2号機でのデブリのペデスタル移行(模式図)



















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ペデスタル内での事故進展(2号機固有の事象)

詳細は、事故シナリオの特徴と燃料デブリのふるまいの推定を参照。

① RPVバウンダリ(下部側面)の大規模破損 ⇒ デブリのペデスタル内部への移行開始。デブリ移行時の平均的なデブリ温度は、1000~1500℃と推定。デブリ移行過程で、RPV保温層やグレーチングが破損。この段階では、ペデスタル底部に液相水はほとんどなかった可能性。

② RPVバウンダリ(底部)の局所破損 ⇒ デブリの一部がCRD溶接部を破損。

③ 粒子状で隙間が多く堆積していたと考えられる燃料デブリ本体は、大規模に再溶融することなく、RPV下部に残留と推定。さらに、2号機では他号機に比べ残留崩壊熱が小さく、除熱されやすかった可能性。

④ ペデスタル底部に崩落したデブリが再冠水。再冠水時の水素/水蒸気発生は限定的。

ペデスタル内でのデブリふるまい(2号機固有の事象)

詳細は、事故シナリオの特徴と燃料デブリのふるまいの推定を参照。

①②について、

・どちらの破損が先に起きたのかは不明。

・下部プレナムでの破損までのデブリ再溶融状態は、化学平衡状態に近づく可能性。化学平衡状態では、金属デブリの主成分はSS/Zrと推定。さらに、金属デブリ中に、数モル~10数モル%のUや、10モル%程度のBが固溶していると可能性。Pu,Gdは混入しないと推定。

①③により、

・主に金属デブリメルトがペデスタル内に溶落。一部は、下部プレナムに残留し、凝固。金属デブリ流出により、下部プレナム堆積物の内部に空洞形成の可能性。

・酸化物デブリは、大部分が粒子状を維持して、下部プレナムに残留。底部では、金属デブリと固着・一体化している可能性。

・溶け落ちた金属デブリメルト中に、破損した金属部材や粒子状酸化物デブリ等が混入したと推定。

①②により、

・CRDスタブチューブが局所破損し、金属デブリメルトが、CRDハウジング内に溶落した可能性。一部は、CRDハウジング外周にいったん付着してから落下した可能性。

①④により、

・金属デブリメルトは、ペデスタル底部に移行。構造材(コンクリートや鋼材)との接触で冷却され、薄く広がってスレート状に堆積。堆積後に再溶融しなかったと推定(#コンクリートとの界面で一部再溶融していた可能性は否定できない)。

・デブリのペデスタル移行過程で、U含有粒子が、液滴で飛散・凝縮、気体で蒸発・凝縮。U含有粒子は、RPV内、PCV内、さらには、建屋内に飛散したと推定(#U粒子の化学的な特性と形成メカニズムは、デブリ最高到達温度と酸化度に依存し、U粒子を分析することで判別できる)。

デブリの分類(2号機ペデスタル内部)

 2号機のペデスタル内部調査により、グレーチング上の破損孔、ペデスタル底部にスレート状の堆積物等が比較的薄く堆積、堆積物中に未溶融の燃料集合体部材の一部を検出、ペデスタル内の構造物やコンクリートに大きく溶融・損傷した様子がない、などの観測結果が得られている。(図1:2号機の炉内状態推定図から抜粋

 以下では、2号機ペデスタル内に堆積しているデブリを分類した。なお、RPV内に堆積しているデブリと特性が類似すると考えられるデブリについては、RPV内と同様のIDを付記している。

(A) 切り株燃料集合体・・ ペデスタル内部には存在していない。

(B) 破損した金属部材・・ RPV下部プレナムにいったん堆積した金属部材の一部が、RPV底部側面の破損孔を通じて、金属デブリメルトに巻き込まれて、一部崩落した。

(C) 金属デブリの溶融・凝固物・・ 下部プレナムで形成された金属デブリメルトが、ペデスタル内に崩落し、ペデスタル底部でに溶落し、スレート状に広がったと推定される。サンプピット内にも流入している可能性が高い。破損した金属部材、粒子状酸化物デブリ、B4C顆粒などを巻き込んでいる可能性が高い。堆積物の下の方ではデブリどうしが連結している可能性がある。また、コンクリートが劣化している可能性がある。U,B,Cなどが最大で10mol%ほど溶融している可能がある。

(D) 粒子状の酸化物デブリ(ルースデブリ)・・ ルースデブリの一部が、金属デブリメルトに巻き込まれて、ペデスタル底部に崩落した可能性がある。

(E) 酸化物デブリの再溶融/凝固物(多孔質デブリ)・・ 多孔質デブリの破砕物などが、金属デブリメルトに巻き込まれて、ペデスタル底部に崩落した可能性がある。

(F) スラリー状のデブリ・・ デブリの破砕などにより、スラリー状のデブリが2号機ペデスタル底部堆積物の上にも堆積していると推定される。

(G) 保温層やグレーチングへの固着物・・ ペデスタル内のグレーチングにある破損孔の周辺に金属デブリメルトの一部が固着していると推定。RPV下の保温層の上にも堆積・固着している可能性がある。

(H) CRDハウジング内部へのデブリ流入・・ 金属デブリと鋼材の共晶溶融物の一部は、溶接部から、CRDハウジング内に侵入したと推定される。

(I) CRDハウジング付着の崩落物・・ RPV底部の溶接部を破損した金属デブリメルトの一部は、いったん、CRDハウジング外周に付着し、そこから物理的にペデスタル底部に塊状で崩落した可能性がある。側面破損孔からの崩落物に比べ、物量は少ないが、金属間化合物などを多く含み、化学的な特性が異なっている可能性がある(凝固時に隙間形成、機械的にもろい可能性。CRDハウジングに付着していた時のR構造(凹面構造)が残留している可能性)。

図1 2号機ペデスタル内の状況推定図
















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破損・デブリ堆積状態(2号機ペデスタル底部)

 2号機のペデスタル内部調査より、以下のような堆積状態になっていると推定されている(図1)。深さ方向のデブリ堆積状態の変化やコンクリートとの界面状態について不確かさが残される。ペデスタル開口部からD/Wへの移行程度についても調査による確認が望まれる。なお、RPV内に堆積しているデブリと特性が類似すると考えられるデブリについては、RPV内と同様のIDを付記している。

(a) 切り株燃料集合体・・ ペデスタル底部には存在していない。

(b) 破損した金属部材・・ おそらく、金属デブリメルトに巻き込まれ、ペデスタル底部堆積物の上の方に多く存在している。重量があるため、主にグレーチング破損孔の直下近くに存在していると推定される。

(c) 金属デブリの溶融・凝固物・・ スレート状、塊状、粒子状、粉末状などの形状で堆積していると考えられる。堆積物の下の方では、金属デブリが連結し広がっている可能性やコンクリートが一部溶融している可能性が残される。表面は急冷・酸化した可能性がある。冷却水中で長期保持されたことで酸化が進んだ可能性がある。内部に活性な金属成分が残留している可能性がある。

(d) 粒子状の酸化物デブリ(ルースデブリ)・・ 凝固した金属デブリ中に巻き込まれて存在していると考えられる。

(e) 酸化物デブリの再溶融/凝固物(多孔質デブリ)・・ 凝固した金属デブリ中に巻き込まれて存在していると考えられる。

(f) スラリー状のデブリ・・ ペデスタル堆積物の上の方にスラリー状や粉末状の物質が存在していると考えられる。

(g) CRDハウジング付着の崩落物・・ いったんCRDハウジング外周に付着してから崩落した物質が、堆積物の上の方に存在している可能性がある。おそらく塊状・小石状となっている。

(h) 本来ペデスタル内にあった金属部材・・ ほとんど腐食されていないと考えられる。

#備考:2号機ペデスタル堆積物のコアボーリングについて・・ 2号機ペデスタル堆積物について、コアボーリングを行う場合には、グレーチング破損孔下方の、ペデスタル壁の近くが望ましい。2号機では、堆積物中におそらく合金や金属間化合物が多く、堆積物の下層では酸化が十分に進んでいない可能性がある。本来コンクリート床面との間にクラスト層が形成されている場合には、その界面で分離しやすい可能性がある。他方、堆積物の下層と劣化したコンクリートが相互に反応している場合には、劣化コンクリート層の下で分離されやすい可能性がある。コアボーリングを実施しない場合でも、ある程度(10-20cm程度)深さ方向にデブリサンプルを採集できれば、金属デブリの特性や生成・移行のメカニズムの推定精度が向上すると期待される。これにより、デブリの特性評価に大きく影響する『下部プレナムにいったん堆積した金属/酸化物デブリの再溶融』に係る知見拡充が期待される。

図1 2号機のペデスタル内の堆積状態













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3号機

RPV内事故進展(3号機固有の事象)

#詳細は、事故シナリオの特徴と燃料デブリのふるまいの推定を参照。

① 炉心上部の露出、温度上昇、炉心損傷開始。

② ADS作動により、炉心全体が短時間でボイド化。水位はBAF以下まで低下。ボイド化の過程で、すでに露出し温度上昇していた炉心上部に急速な水蒸気供給、温度急上昇。

③ 冷却水の水は、しばらく回復していない。

④ 炉心下部での燃料被覆管の酸化が比較的低いうちに炉心・燃料が崩落開始した可能性。一方で、炉心上部では、急速に酸化が進んだ可能性。したがって、崩落時の炉心エネルギーは2号機に比べて高い(平均的なデブリ温度が比較的低い)と推定。

⑤ 炉心部でいったん崩落・堆積した燃料デブリは、Zr表面積の急な減少により、いったん温度低下。その後、水蒸気供給の不足条件で、崩壊熱により温度再上昇。

⑥ 2号機に比べて、塊状デブリが多く堆積し、平均的なデブリ酸化度が低いと推定される3号機では、溶融デブリプールの形成・拡大が進んでいた可能性。一方で、いったん堆積したデブリ下部の稠密度が十分でなく、BWRドレナージ型の崩落が一部発生していた可能性。

⑦ デブリの下部プレナム崩落時には、冷却水が残留。この時点で、RPV内圧力に急峻なピークが数回発生、塊状のデブリが複数回、下部プレナムに崩落したと推定される。崩落した燃料デブリはいったん冷却・固化。その後、崩壊熱により、下部プレナムでデブリドライアウト、再昇温・再溶融

⑧ 溶融デブリとRPV鋼材との伝熱、あるいは化学的相互作用により、RPVが大規模破損。

RPV内でのデブリふるまい(3号機固有の事象)

詳細は、事故シナリオの特徴と燃料デブリのふるまいの推定を参照。

①②により、in-vessel初期フェーズでの、制御棒破損・溶融について、

(2号機と類似)

・B,Cを少量溶融したSSメルトが先行溶落し、さらに、チャンネルボックスに接触して、その一部を共晶溶融しつつ下方に移行。

・制御棒上部では溶け残った顆粒状B4Cが金属メルトに覆われていったん残留。その後に、制御棒チャンネル内で物理的に崩落。

・炉心上部の集合体部材(上部タイプレートなど)は、未溶融のままでいったん残留。

・溶落した金属デブリメルト(制御棒/チャンネルボックスの溶融物)の酸化度が低かったため、その炉心下部での初期閉塞では、稠密性が高くなかった可能性(水蒸気に対するガス透過度を維持)。

(3号機固有)

・ADS作動前に、炉心上部では、すでに制御棒溶落が始まっていた可能性。炉心崩落進展には、あまり影響しなかったのではないか。

①②③④により、in-vessel初期フェーズ、トランジエントフェーズでの、燃料棒破損・溶融について、

・炉心下部では、燃料棒の外周酸化皮膜が比較的薄く、デブリ温度が比較的低い段階で(2000℃程度と推定)、粒子状で崩落。

・炉心上部では、燃料棒の外周酸化皮膜が比較的厚く、デブリ温度が比較的高くなってから(2300℃程度と推定)、塊状で崩落(3号機で、ADS作動時点までのZr酸化度は、10%と推定、参考8:デブリ崩落時の炉心エネルギーとデブリ酸化度の上昇)。

・粒子状のデブリは、崩落途中で水蒸気に曝され、酸化度が上昇しやすい。一方、塊状のデブリは、崩落途中で内部が酸化されにくい(3号機で、炉心崩落開始時点までのZr酸化度は20%、炉心支持板直上でいったん堆積した時点までのZr酸化度は40%と推定、参考8:デブリ崩落時の炉心エネルギーとデブリ酸化度の上昇)。

・崩落後、ある程度塊状が多く、2号機に比べて隙間が少ない状態で堆積。

さらに、⑤⑥により、in-vessel後期フェーズ(炉心部)について、

・いったん炉心支持板の直上あたりに堆積したデブリ中で、金属デブリが溶融開始、酸化物デブリも一部そこに溶融。2号機よりもデブリ酸化度が低いため、U-Zr-Oメルトが成長しやすい、さらに、金属デブリがU-Zr-Oメルト中に溶融しやすいと推定。

・溶融プールの上下クラスト層が形成されたと推定。# 一部は、BWRドレナージ型で崩落した可能性は否定できない。

・炉心部から、下部プレナムへの崩落時においても、デブリ酸化度が上昇した可能性。# 溶融デブリプールが拡大すると、表面に酸化被膜が形成され、バルクのメルトは、固体状態に比べて酸化がすすみにくい。したがって、この時点でも、デブリ(Zr)酸化度がある程度抑制されていた可能性が高い。

さらに、⑦により、in-vessel後期フェーズ(下部プレナム)について、

・塊状(固体orメルト状)のデブリ(主成分は、U-Zr-Oメルト(亜酸化)、Fe-U-Zrメルト(金属))が、下部プレナムの冷却水中に崩落し、いったん冷却・凝固。粒子状のデブリも崩落。

・冷却水との反応により、デブリの一部が、微粒子化・粉体化(分類(F))。

・再昇温過程では、金属デブリが先に溶融、亜酸化デブリがさらに溶融、下部プレナムでデブリ溶融プールを形成した可能性(分類(C)(E))。# 溶融プールの化学状態は、U-Zr-Oメルトと(U,(Zr))O2固相の固液共存状態として理解できる。U-Zr-Oメルト相は、周囲を(U,(Zr))O2固相等のクラスト層で覆われるため、その内部は酸化されにくい。3号機では、デブリ酸化度が低いため、U-Zr-Oメルト中に鋼材成分が溶融しやすかったと推定。

・粒子状の酸化物デブリは、デブリ再溶融時に、かなり高温まで固体状態を維持(分類(D)

・炉心下部の支持金具やCRGTは大きく破損、一部は未溶融のまま崩落し下部プレナムに堆積(分類(B))、一部は、デブリ溶融プール中に溶融したと推定(分類(C)(E)

さらに、⑧により、RPV破損モードについて、

・2号機と同様の、金属デブリメルト(主成分:SS(Fe)-U-Zr(-O)、おそらくBやC、金属系のFPを含む)の先行溶落が発生していた可能性。おそらく、そこには酸化物デブリ(粒子状)や破損した金属部材等が混入。

・高粘性デブリ(U-Zr-O亜酸化メルト、Fe-U-Zr金属デブリメルトなど、あるいは両者が混合)が、時間をかけて、ペデスタル内に崩落。局所的には、二酸化物も溶融していた可能性。

・U-Zr-Oメルトと鋼材が接触すると、メルト中の酸素溶解度限が急減し、UO2やZrO2の粉末が析出する可能性(U含有粒子の形成メカニズムのひとつ)。

デブリの分類(3号機RPV底部)

 3号機のRPV内部調査はまだ実施されていない。ミューオン調査では、RPV内に重金属がほとんど存在していないという観測結果が得られている。ミューオン調査結果に加えて、事故進展解析、およびPCV内部調査の結果から、3号機RPV底部の燃料デブリの分類は、以下のように推定される。(図1:3号機の炉内状態推定図から抜粋

 しかし、RPV内部の堆積状態(特に堆積物の形状・分布)については、かなり不確かさが大きいことに注意が必要である。図1に示すデブリ分類は、TMI-2事故の最終形態の評価やシビアアクシデント事故進展の理解に基づいて、現状では、このような種類のデブリが存在しうるというレベルで推定したものである。

(A) 切り株燃料集合体・・ 本来炉心があったあたりの外周下部に残留している可能性がある。# 存在している可能性は、2号機よりもさらに低いが、現時点でこれを否定する根拠もない。

(B) 破損した金属部材・・ 崩落したCRGT(おそらく下部が大きく溶融・損傷)、炉心支持金具、炉心支持板、燃料集合体部材の一部(タイプレート、制御棒ブレードなど)が、一部は未溶融のままで、下部プレナム底部の堆積物の上の方に存在している可能性がある。堆積している金属部材の下の方では、溶融・凝固した金属デブリに溶融・固着している可能性が高い。2号機に比べて、下部プレナムでのデブリ再溶融温度が高かったと推定されており、未溶融の金属部材の残留が少ないと推定される。

(C) 金属デブリの溶融・凝固物・・ SS/Zrを主成分とする合金がいったん溶融した後に凝固していると推定される。3号機では、下部プレナム崩落時点でのデブリ酸化度(Zr酸化度)が60-70%程度と予想されており、その再溶融時に、U酸化物やBの化合物がZr金属によって還元されて、金属デブリメルト中に溶融すると考えられる。3号機では、亜酸化U-Zr-Oメルトが形成されやすかった可能性があり、金属デブリメルトはU-Zr-Oメルトと相互に溶融した可能性がある。金属デブリメルトの組成は、Zrの酸化度とデブリの到達温度に依存するが、Uについて数モル%~10数モル%、Bについて10モル%程度まで上昇する可能性がある。溶融・凝固時に、粒子状の酸化物デブリ(破砕したペレットなど)や未溶融B4C粒子、制御棒やチャンネルボックスの共晶溶融で中間生成物として形成される金属間化合物などを巻き込んでいる可能性がある。金属デブリメルトが酸化されると、そこに溶融しているU,Zrが選択的に酸化されて、U,Zrリッチな析出物が形成されると推定される。これは、U含有粒子の形成メカニズムのひとつと考えられる。

(D) 粒子状の酸化物デブリ(ルースデブリ)・・ 粒子状のデブリは、主に2つの形成メカニズムがあると考えられる。1つ目として、破損・溶融した燃料棒が崩落して炉心部でいったん堆積した際に隙間の多いルースデブリを形成し、その一部が、あまり再溶融せずに、下部プレナムに物理的に崩落した可能性が考えられる。2つ目として、炉心部で再溶融したデブリが下部プレナムの冷却水中に崩落した際に、燃料/冷却水反応により、一部が破砕された可能性が考えられる。前者は、残留ペレットや破砕された燃料棒などが主成分となる。後者は、いったん溶融する過程を経ているため、前者に比べてその内部でUやZrが均質化されていると推定される。

(E) 酸化物デブリの再溶融・凝固物(多孔質デブリ)・・ ルースデブリの一部が再溶融・凝固し塊状を形成したものである。金属デブリメルトと接触すると、溶融・混合・成層化する可能性がある。デブリ酸化度が比較的低い3号機では、U-Zr-Oメルトと金属デブリメルトがより混合しやすいと考えられる。その際に、デブリ主成分やFPについて、金属デブリと酸化物デブリの間で、酸化還元反応による物質再分布が発生すると考えられる。一方で、下部プレナムでのデブリ再溶融時に、平均的な温度が高くなったと推定され、二酸化物も溶融していた可能性が考えられる。この場合には、金属デブリと酸化物デブリが成層化する。酸化物デブリの凝固時には多孔質になる可能性が高い。凝固時に、さらに成分再分布する可能性がある。# ここで、酸化度が100%に到達していない亜酸化状態のデブリの溶融では、溶融開始温度(solidus)と全て溶融する温度(liquidus)におよそ1000℃の差(およそ1400℃から2400℃)があり、その間では、熱力学的には固液混合状態が安定となることに留意が必要である。実際の系では、酸化物デブリから金属デブリにかけて大きな温度勾配が形成される可能性も考えられる。

(F) スラリー状のデブリ・・ デブリの破砕などにより、1号機PCV底部で見られているようなスラリー状のデブリ3号機RPV下部プレナムでも堆積していると推定される。

図1 3号機RPV内の状況推定図



















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破損・デブリ堆積状態(3号機RPV底部)

 RPV内部の破損・デブリ堆積状態については不確かさが大きい。上で示したような分類のデブリが存在しているとすると、堆積物の上の方から、以下のような堆積状態になっていると推定されている(図1)。# 今後のRPV内部調査により、理解を精緻化していく必要がある。

(a) 切り株燃料集合体・・ 本来の炉心部の周辺下部に存在している可能性がある。その下には、おそらく、CRGTが残留している。# CRGTが一部倒壊している可能性や、CRGT内部にデブリが侵入している可能性も考えられる。いったん形成された切り株燃料集合体が、そのまま下部プレナムに崩落しているようなこともありうる。

(b) 破損した金属部材(CRGT、炉心支持板、炉心支持金具、燃料集合体部材など)・・ 崩落した金属部材は、下部プレナム堆積物の上の方では、本来形状を一部維持した状態で堆積している可能性が考えられる。下の方では、酸化物のルースデブリや溶融・凝固物、あるいは、金属デブリの溶融・凝固物と一体となっている可能性が考えられる。本来、下部プレナム底部にあったCRDスタブチューブはデブリとの接触により溶融・消失し、CRDハウジング支持金具に着座、一部で、破損孔を形成している可能性が考えられる。

(c) スラリー状のデブリ・・ RPV内の冷却水の水位にもよるが、下部プレナム堆積物の上の方にスラリー状や粉末状の物質が存在している可能性がある。

(d) 粒子状の酸化物デブリ(ルースデブリ)・・ 破損した金属部材などと共に、粒子状の酸化物デブリが堆積物の比較的上のほうに存在していると考えられる。(C)のスラリー状の堆積物と混在していると推定される。隙間が多いと考えられるが、堆積物の下の方では、金属デブリや多孔質デブリと固着している可能性がある。

(e) 酸化物デブリの再溶融・凝固物(多孔質デブリ)・・ ルースデブリの下の方(内部)で、デブリが一部再溶融して形成された可能性がある。金属デブリの溶融・凝固物と溶融・混合し、固着・一体化、あるいは成層化している可能性がある。

(f) 金属デブリの溶融・凝固物・・ 下部プレナムにいったん堆積したデブリが再昇温すると、比較的溶融開始温度の低い金属デブリが先行溶融すると考えられる。金属デブリメルトは、RPV底面に濡れ広がる可能性が考えられる。そこへのCRGTや炉心支持版の溶融量によって、金属メルトの物量が増えると推定される。金属デブリの相当量がペデスタル内に流出したと考えられるため、下部プレナム堆積物の内部(特に側面の大規模破損孔周辺)に空洞がある可能性がある。酸化物デブリの再溶融・凝固物と溶融・混合し、固着・一体化、あるいは成層化している可能性がある。

 また、3号機RPV底部は、鋼材とデブリが相互に溶融・凝固している可能性がある。

#備考:3号機RPV堆積物の調査、コアボーリングについて・・ 3号機でも、RPV下部プレナム堆積物の画像データを取得することで、デブリ堆積状態や鋼材系の構造物の破損状態を確認することが重要である。これにより、RPV内でのデブリのふるまいにおいて最も不確かさが大きく、かつ、ペデスタルへのデブリ移行に影響が大きい、『下部プレナムにいったん堆積した金属/酸化物デブリの再溶融』に関する知見が拡充すると期待される。さらに、堆積物の深さ方向サンプルを、コアボーリングあるいは部分的(数cm~10cm程度の深さ)に採集できれば、深さ方向の堆積状態や、デブリ堆積・再溶融の反応メカニズムについての理解が精緻化する。これらにより、RPV底部堆積物の均質・非均質の程度や、ペデスタル内に移行したデブリの特性に関する知見も拡充されると期待される。

図1 3号機RPV内の堆積状態


















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デブリのペデスタル移行(3号機固有の事象)

詳細は、事故シナリオの特徴と燃料デブリのふるまいの推定を参照。

 3号機では、下部プレナムで、いったん堆積した後に、金属デブリと酸化物デブリの再溶融状態が、どこまで進んだのか(最高到達温度、溶融範囲、酸化度の変化など)が、以降のデブリふるまいとデブリ特性に大きく影響したと推定される(参考11:下部プレナム堆積後のデブリ再溶融)。2号機に比べて、下部プレナム堆積時点での平均的なデブリ酸化度が低く、酸化物デブリの再溶融時にU-Zr-Oメルトが形成されて、金属デブリメルトと相互に溶融しやすかった可能性がある。下部プレナムで、デブリが熱力学的な平衡状態に近い状態に到達した後に、ペデスタル内部へ移行したとすると、その際のデブリふるまいは、以下のように推定される(図1)。

(2号機と同様に、金属デブリメルトの先行溶落が発生していた場合)

① RPV底部側面あるいはRPV底部からの金属デブリメルト(平均温度1000-1300℃程度と推定、SS-Zr系の共晶溶融温度に相当)の先行流出が発生していたと推定。金属デブリメルトは、RPV下の保温層やグレーチング上にいったん堆積、これらを溶融・破損、一部がそこに残留し凝固・固着。金属デブリメルトの主成分はSS/Zr合金、U,B,Cなどを最大10mol%程溶融する可能性、粒子状酸化物デブリや燃料集合体部材を巻き込む可能性。

② 金属デブリメルトはペデスタル底部に溶落し、鋼材やコンクリート上に広がるまでの過程で急冷され、スレート状や粒子状で固化。ペデスタル内構造材やコンクリートはほとんど損傷していないと推定。金属デブリメルトの凝固層はMCCI発生を妨害すると推定。

③ RPV底部溶接部の局所破損で流出した金属デブリ(平均温度1000~1300℃程度と推定、SS-Zr系の共晶溶融温度に相当)が、一部はCRD内へ流入・固化、一部はCRDハウジング外周に付着、さらに一部は崩落。経路①の金属デブリメルトに比べ、化合物相を含み、粘性が大きい可能性(参考4:再溶融した金属デブリとRPV鋼材、溶接部の共晶溶融)。

(高粘性デブリの崩落)

④ 金属デブリメルトの先行溶落にかかわらず、下部プレナムで溶融が進み、固液混合状態の高粘性デブリが形成され、ある程度時間をかけて、ペデスタル内に崩落(参考)。ペデスタル崩落時のデブリの平均的な温度は、〇℃と推定[4]。一方で、デブリ内に大きな温度勾配が形成され、二酸化物デブリも一部溶融していた可能性。

⑤ 高粘性デブリと、本来ペデスタルにあった鋼材との相互作用により、鋼材が一部溶融した可能性。

⑥ 亜酸化状態の高粘性デブリとコンクリートとの間で、酸化還元反応をともなうMCCIが発生していた可能性。

図1 3号機でのデブリのペデスタル移行(模式図)


















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ペデスタル内での事故進展(3号機固有の事象)

詳細は、事故シナリオの特徴と燃料デブリのふるまいの推定を参照。

① 高粘性デブリが、ペデスタル内に時間をかけて崩落。

② 高粘性デブリは、主に、本来のペデスタル床面の上に徐々に堆積。本来、ペデスタル内底部にあった鋼材(制御盤、ケーブルトレイ、各種配管、など)は、堆積物中に埋没。本来、ペデスタルの上にあった鋼材(CRDハウジング、CRDレール、など)は、大きく破損して崩落、堆積物中に一部埋没。

③ ペデスタル底部堆積物の底部や内部の様子は不明。しかし、高粘性デブリでは、堆積時に、ある程度の冷却ガス透過度が維持されており、デブリ再溶融にはいたらなかった可能性

ペデスタル内でのデブリふるまい(3号機固有の事象)

詳細は、事故シナリオの特徴と燃料デブリのふるまいの推定を参照。

①②③により、ペデスタル底部でのデブリふるまいについて、

・堆積物中に空隙、隙間が多く形成されていると推定。

・本来、ペデスタルにあった鋼材は、高粘性デブリとの相互作用により、一部溶融した可能性。

・崩落・埋没している、CRDハウジングや、CRDレールは、堆積物の底部で高粘性デブリと相互溶融している可能性。

・堆積物底部で、高粘性デブリとコンクリートの間で、MCCIが発生した可能性。# 現在の堆積状態を考慮すると、底部でMCCIが発生した可能性はあまり高くないが、これを否定する明確な根拠も存在しない。

・高粘性デブリと接触あるいは非接触で加熱された、ペデスタル側面やペデスタル開口部のコンクリートが、1号機のように一部消失している可能性は否定できない。

・ペデスタル堆積デブリ内で、再溶融が発生していた可能性。その場合、比較的低い酸化度が維持された可能性。

・高粘性デブリのペデスタル崩落時に、U含有粒子が蒸発・凝縮あるいは液滴として発生し、飛散した可能性。


ここから、、、

デブリの分類(3号機ペデスタル内部)(作成中)

 2号機のペデスタル内部調査により、グレーチング上の破損孔、ペデスタル底部にスレート状の堆積物等が比較的薄く堆積、堆積物中に未溶融の燃料集合体部材の一部を検出、ペデスタル内の構造物やコンクリートに大きく溶融・損傷した様子がない、などの観測結果が得られている。(図1:2号機の炉内状態推定図から抜粋

 以下では、2号機ペデスタル内に堆積しているデブリを分類した。なお、RPV内に堆積しているデブリと特性が類似すると考えられるデブリについては、RPV内と同様のIDを付記している。

(A) 切り株燃料集合体・・ ペデスタル内部には存在していない。

(B) 破損した金属部材・・ RPV下部プレナムにいったん堆積した金属部材の一部が、RPV底部側面の破損孔を通じて、金属デブリメルトに巻き込まれて、一部崩落した。

(C) 金属デブリの溶融・凝固物・・ 下部プレナムで形成された金属デブリメルトが、ペデスタル内に崩落し、ペデスタル底部でに溶落し、スレート状に広がったと推定される。サンプピット内にも流入している可能性が高い。破損した金属部材、粒子状酸化物デブリ、B4C顆粒などを巻き込んでいる可能性が高い。堆積物の下の方ではデブリどうしが連結している可能性がある。また、コンクリートが劣化している可能性がある。U,B,Cなどが最大で10mol%ほど溶融している可能がある。

(D) 粒子状の酸化物デブリ(ルースデブリ)・・ ルースデブリの一部が、金属デブリメルトに巻き込まれて、ペデスタル底部に崩落した可能性がある。

(E) 酸化物デブリの再溶融/凝固物(多孔質デブリ)・・ 多孔質デブリの破砕物などが、金属デブリメルトに巻き込まれて、ペデスタル底部に崩落した可能性がある。

(F) スラリー状のデブリ・・ デブリの破砕などにより、スラリー状のデブリが2号機ペデスタル底部堆積物の上にも堆積していると推定される。

(G) 保温層やグレーチングへの固着物・・ ペデスタル内のグレーチングにある破損孔の周辺に金属デブリメルトの一部が固着していると推定。RPV下の保温層の上にも堆積・固着している可能性がある。

(H) CRDハウジング内部へのデブリ流入・・ 金属デブリと鋼材の共晶溶融物の一部は、溶接部から、CRDハウジング内に侵入したと推定される。

(I) CRDハウジング付着の崩落物・・ RPV底部の溶接部を破損した金属デブリメルトの一部は、いったん、CRDハウジング外周に付着し、そこから物理的にペデスタル底部に塊状で崩落した可能性がある。側面破損孔からの崩落物に比べ、物量は少ないが、金属間化合物などを多く含み、化学的な特性が異なっている可能性がある(凝固時に隙間形成、機械的にもろい可能性。CRDハウジングに付着していた時のR構造(凹面構造)が残留している可能性)。

図1 3号機ペデスタル内の状況推定図
















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破損・デブリ堆積状態(3号機ペデスタル底部)(作成中)

 2号機のペデスタル内部調査より、以下のような堆積状態になっていると推定されている(図1)。深さ方向のデブリ堆積状態の変化やコンクリートとの界面状態について不確かさが残される。ペデスタル開口部からD/Wへの移行程度についても調査による確認が望まれる。なお、RPV内に堆積しているデブリと特性が類似すると考えられるデブリについては、RPV内と同様のIDを付記している。

(a) 切り株燃料集合体・・ ペデスタル底部には存在していない。

(b) 破損した金属部材・・ おそらく、金属デブリメルトに巻き込まれ、ペデスタル底部堆積物の上の方に多く存在している。重量があるため、主にグレーチング破損孔の直下近くに存在していると推定される。

(c) 金属デブリの溶融・凝固物・・ スレート状、塊状、粒子状、粉末状などの形状で堆積していると考えられる。堆積物の下の方では、金属デブリが連結し広がっている可能性やコンクリートが一部溶融している可能性が残される。表面は急冷・酸化した可能性がある。冷却水中で長期保持されたことで酸化が進んだ可能性がある。内部に活性な金属成分が残留している可能性がある。

(d) 粒子状の酸化物デブリ(ルースデブリ)・・ 凝固した金属デブリ中に巻き込まれて存在していると考えられる。

(e) 酸化物デブリの再溶融/凝固物(多孔質デブリ)・・ 凝固した金属デブリ中に巻き込まれて存在していると考えられる。

(f) スラリー状のデブリ・・ ペデスタル堆積物の上の方にスラリー状や粉末状の物質が存在していると考えられる。

(g) CRDハウジング付着の崩落物・・ いったんCRDハウジング外周に付着してから崩落した物質が、堆積物の上の方に存在している可能性がある。おそらく塊状・小石状となっている。

(h) 本来ペデスタル内にあった金属部材・・ ほとんど腐食されていないと考えられる。

#備考:2号機ペデスタル堆積物のコアボーリングについて・・ 2号機ペデスタル堆積物について、コアボーリングを行う場合には、グレーチング破損孔下方の、ペデスタル壁の近くが望ましい。2号機では、堆積物中におそらく合金や金属間化合物が多く、堆積物の下層では酸化が十分に進んでいない可能性がある。本来コンクリート床面との間にクラスト層が形成されている場合には、その界面で分離しやすい可能性がある。他方、堆積物の下層と劣化したコンクリートが相互に反応している場合には、劣化コンクリート層の下で分離されやすい可能性がある。コアボーリングを実施しない場合でも、ある程度(10-20cm程度)深さ方向にデブリサンプルを採集できれば、金属デブリの特性や生成・移行のメカニズムの推定精度が向上すると期待される。これにより、デブリの特性評価に大きく影響する『下部プレナムにいったん堆積した金属/酸化物デブリの再溶融』に係る知見拡充が期待される。

図1 3号機ペデスタル内の堆積状態</big













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分類ごとのデブリの特性(RPV内部)

(A) 切り株燃料集合体

 1F1~3号機のRPV内に切り株燃料集合体が残留していた場合、TMI-2事故で形成されていた切り株燃料集合体と異なる外観や特性を有している可能性が高い。

 TMI-2事故では、炉心部で水位が徐々に低下し、水蒸気潤沢条件で酸化・破損・溶融した燃料棒や制御棒が冷却水水位の直上(炉心底部から約1/3の高さ)まで崩落して、ルースデブリとしていったん堆積した。その後、崩壊熱により、ルースデブリの内部(堆積物の中央下あたり)でデブリ溶融プールが形成・拡大し、溶融デブリの一部は、RPV側面を経由して下部プレナムに移行した。デブリ溶融プールの形成・拡大時に、その底面には厚さ数cmの稠密なクラスト層が形成された。切り株燃料集合体は下部クラストの下に残留していた。下部クラストの下では、冷却水の水位が維持されていたため、切り株燃料集合体は、ほぼ事故前の形状を維持していた。また、ほとんど温度上昇を経験してないため、燃料棒や制御棒の内部での溶融も進行していなかった。(図1

 これに対し、1F2号機では、事故進展中に炉心が短時間でボイド化する過程が発生した。このため、制御棒ブレードの崩落が水蒸気枯渇条件で発生したと推定されている。BWRでは、元々、制御棒が制御棒ブレードとして非均質に配置されている。さらに、比較的酸化しにくい条件で制御棒が破損・崩落したため、炉心下部での閉塞が非均質であった可能性が高い(参考1:制御棒の共晶溶融参考2:制御棒溶融物とチャンネルボックス(Zry)の共晶溶融)。また、炉心ボイド化のため、最初の閉塞位置は、TMI-2に比べて低く、炉心支持板の直上あたりだったと推定されている。炉心下部の閉塞が稠密でない場合には、いったん堆積したルースデブリ中にある程度水蒸気が流入するため、2号機では溶融デブリプールがあまり拡大・成長しなかったと推定されている(参考9:BWRドレナージ型シナリオ)。これらのことから、1F2号機では、切り株燃料集合体は、炉心の中央部分には存在していない可能性がかなり高い。炉心の周辺部では、わずかに残留している可能性は排除できない。2号機では、下部プレナムでのデブリ再溶融が1,3号機に比べて進んでいないと考えられることから、切り株燃料集合体が残留している可能性は、2号機が最も高い。(2号機推定図2号機事故シナリオ

 1F3号機でも、事故進展中に炉心が短時間でボイド化する過程が発生した。2号機との相違は、ボイド化の前に炉心上部が露出し、ジルカロイの水蒸気酸化が始まっていた点である。3号機では、炉心ボイド化により、制御棒だけでなく初期の燃料棒の崩落が、水蒸気枯渇条件で進行した可能性が高い。2号機に比べて、デブリ崩落時の温度が高く、塊状のデブリが多く崩落したと推定されている。デブリが炉心部でいったん堆積した位置は、2号機と同様に炉心支持板の直上と推定されている。したがって、2号機と同様に、炉心中央部に切り株燃料集合体が残留している可能性は低い。炉心の周辺部では、わずかに残留している可能性は排除できない。(3号機推定図3号機事故シナリオ

 1F1号機では、冷却水がほとんど注入されない条件で、水位が低下し、炉心崩落にいたったと考えられている。このため、2,3号機のような炉心ボイド化は起きておらず、高圧水蒸気が潤沢にある条件でデブリが崩落した。現状の事故進展解析では、1号機においても、デブリ崩落時の水位は炉心支持板の直上あたりと推定されている。1号機では、炉心下部でいったん堆積したデブリ中で溶融デブリプールが形成・拡大した可能性が高いが、その位置が炉心支持板の直上と考えられるため、炉心中央部には切り株燃料集合体は残留していないと考えられる。一方で、炉心の周辺部に切り株燃料集合体がわずかに残留している可能性は排除できない。1号機では、下部プレナムでのデブリ再溶融が2,3号機に比べてかなり進んでおり、破損状態も激しいことから、切り株燃料集合体が残留している可能性は、1号機が最も低い。(1号機推定図1号機事故シナリオ

 このような事故進展シナリオの特徴から、2,3号機の炉心周辺部に切り株燃料集合体が残留していた場合には、以下のような特徴を有していると感が和えられる。まず、上部については、稠密なクラスト層が形成されず、明確な境界が存在しない可能性が考えられる。BWRドレナージ型シナリオで上部から崩落してきた、酸化・破損・溶融した燃料棒や制御棒ブレードが非均質に閉塞を引き起こしていると推定される。JAEAが実施した制御棒ブレードの崩落試験で観測されたような状態(図2)が参考になると考えられる。また、周囲に水位がなかったため、TMI-2事故と異なり切り株燃料集合体がある程度の高温を経験していると考えられる。このため、制御棒ブレードはかなり下の方まで溶け落ちていると推定される。燃料棒外周では酸化が進み、燃料棒内では、ペレットと被覆管の界面で、U-Zr-Oメルトの形成・凝固が進展していた可能性が高い。この場合、化学的な活性を持つ物質が燃料棒内に残留している可能性がある。(参考7:燃料棒の溶融・破損メカニズム

 1号機については、デブリ溶融プールが形成・拡大した可能性が高いため、切り株燃料集合体が存在していた場合、その上部にはクラストが固着している可能性が考えられる。

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【主な構成成分(別表:物性リスト)】

・形状を維持している燃料棒、その隙間に、上部から崩落してきた燃料棒(UO2ペレット、表面酸化したZry被覆管(ZrO2、α-Zr(O))

・ペレット/被覆管界面では、U-Zr-Oメルトの凝固層を形成(c-(U,Zr)O2、t-(Zr,U)O2、m-(Zr,U)O2、α-Zr(O))

・形状をおよそ維持しているチャンネルボックス(ZrO2、α-Zr(O))

・破損・崩落してきた制御棒や金属部材

(B) 破損した金属部材

 様々なタイプの金属部材(燃料集合体部材)が、一部形状を維持し、1~3号機のRPV底部堆積物の比較的上の方に堆積している可能性がある。

 下部プレナム底部では、破損して堆積している金属部材の下の方では、分類(C)の金属デブリの溶融・凝固物や、分類(E)の酸化物(亜酸化物を含む)デブリの溶融・凝固デブリと固着・一体化している可能性がある。

 2号機では、下部プレナム底部側面から、分類(C)の金属デブリメルトがペデスタルに移行したと推定されているが、この際に、分類(B)の破損した金属部材が巻き込まれたと推定される(2号機ペデスタルの内部調査で、上部タイプレートの一部、チャンネルボックス底部構造物の一部、制御棒ブレードの一部の可能性がある物質、などが実際に観測されている(図1))。

 1、3号機では、下部プレナムでのデブリ再溶融時の最高温度が、2号機よりかなり高かったと評価されている[4]。したがって、下部プレナムでの金属部材の溶も比較的進行しやすく、金属部材の残留が少なくなった可能性が考えられる。さらに、1,3号機では、金属デブリメルトだけでなく、酸化物デブリも大部分がペデスタルに移行したと考えられる。しかし、わずかに残留している可能性がある下部プレナム底部堆積物中に、破損した金属部材が巻き込まれている可能性は否定できない。

 

【主なデブリ構成成分(別表の物性リスト参照)】

RPV内の金属部材由来

・燃料集合体の上部の部材(UTP、など)

・制御棒由来(ブレード材、制御棒被覆管、共晶溶融/凝固物:SSにB,C固溶、その内部にFe3O4、Cr2O3、B4C巻き込み)

・チャンネルボックスや燃料棒由来(表面酸化したZry材やSS材(Zry、SS、ZrO2、α-Zr(O)、Fe3O4、Cr2O3

・制御棒ブレードとチャンネルボックスの共晶溶融/凝固物(表面酸化したZry材とSS材、界面に化合物相析出((Fe,Cr)2Zr、ZrB2、Cr2Bなど)

・破損した炉心支持金具、炉心支持板、CRGT、CRDハウジング、など(表面酸化した鋼材)

図1 2号機ペデスタル内部調査で観測された金属部材の一部[2]




















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(C) 金属デブリの溶融・凝固物

 炉心部では、燃料破損・溶融の初期フェーズにおいて、制御棒ブレードとチャンネルボックスの共晶溶融反応により、ZrやFeを主成分とする金属デブリが溶け落ちた。その際に、中間的な生成物として、(Fe,Cr)2Zr等の金属間化合物が形成され、上部にいったん取り残され後で物理的に崩落した。また、B4Cについては、一部は金属デブリメルト中に溶出し、大部分は、金属デブリメルトに覆われて物理的に崩落した。(参考1:制御棒の共晶溶融参考2:制御棒溶融物とチャンネルボックス(Zry)の共晶溶融

 これらの金属デブリは、RPV下部プレナムに移行し、いったん凝固・堆積した後に、崩壊熱で再昇温・再溶融した。再溶融の過程で、金属間化合物や残留B4Cは金属デブリメルト中に次第に溶融し、均質な合金化すると考えられる。また、金属デブリ中に金属Zrが残留している場合、デブリ再溶融と同時に酸化還元反応が進行して、UO2の一部が還元され、金属デブリメルト中に溶融すると考えられる。(参考3:金属デブリの再溶融参考11:下部プレナム堆積後のデブリ再溶融

 さらに、RPV下部プレナムで、金属デブリメルトが形成・拡大すると、そこにCRDハウジングやCRGTなどの鋼材が溶融し、金属デブリメルトの組成や比重が変化する。(参考14:Fe-U-Zr-O状態図の展開図参考15:MASCA模擬試験

 金属デブリの再溶融・凝固物の特性は、RPV下部プレナムでのデブリ再溶融反応がどこまで進んでいたかに強く依存する。熱力学的な平衡状態近くまで溶融が進んでいた場合には、Fe-U-Zr-O系状態図におけるhypo側領域のメルトの凝固パスにより、金属デブリの特性を理解することができる。(参考14:Fe-U-Zr-O状態図の展開図

 また、金属デブリメルトが水蒸気や液相水と反応した場合には、そこに含有されるUやZrが選択的に酸化され、急冷されて、U含有粒子として放出される可能性が考えられる(U含有粒子の形成メカニズム)。

 デブリの平均的な酸化度が比較的低い場合には、酸化物デブリが亜酸化状態で溶融し(U-Zr-Oメルト)、金属デブリメルトと相互に溶融しあうと考えられる。

 金属デブリの溶融・凝固物の類型として、2号機内部調査で観測されたグレーチング上の固着物(図1)や、JAEAの制御棒ブレード破損模擬試験で観測された金属デブリ(図2)があげられる。

#備考:2号機試験的デブリ取り出しに向けて・・ 2号機試験的デブリ取り出しでは、金属デブリの溶融・凝固物が採集される可能性が高い。採集されたデブリ中の、合金相と化合物相の組成や分布、B,Cの固溶度、Uの含有程度、酸化度、などが重要な分析項目となる。これらの分析結果から、下部プレナムでのデブリ再溶融条件(デブリ酸化度、最高到達温度、物質再分布の傾向)を逆推定できると期待される。得られる知見は、1,3号機の事故進展の理解の精緻化にも貢献すると期待される。

 

【主なデブリ構成成分(別表の物性リスト参照)】

RPV内で、酸化物デブリとの相互作用があまり進まなかった場合

・バルク成分:SS-Zr(-U-B-C)合金、SS、酸化したSS(Crが選択的に酸化している可能性)

・析出成分:c-(U,Zr)O2、t-(Zr,U)O2、m-(Zr,U)O2、α-Zr(O)、(Fe,Cr)2(Zr,U)、Spinel(FeCr2O4、Fe3O4)、Fe2B、Fe3C

・酸化物デブリ成分、海水成分、FP成分などが混入している可能性

RPV内で、酸化物デブリとの相互作用が進んでいた場合

・バルク成分:SS-U-Zr(-O)合金、凝固時に、様々な金属間化合物や酸化物が析出する可能性

・析出成分:上と同じ、U,Zrの二酸化物系と鋼材系の析出物の割合が増えると推定

・海水成分、FP成分などが混入している可能性

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(D) 粒子状の酸化物デブリ(ルースデブリ)

 粒子状の酸化物デブリが、1~3号機のRPV下部プレナム堆積物の比較的上の方に残留していると考えられる。RPV内の粒子状デブリについては、大きく以下の2つの形成メカニズムがあると考えられる。

 Type-Iとして、TMI-2事故の最終形態で観測された上部ルースデブリと類似した物質が、炉心部から下部プレナムに物理的に崩落し、そのまま再溶融することなく堆積したケースである。図1に、TMI-2事故で観測されたデブリの分類を、図2に、上部ルースデブリの写真を示す。粒子状で、隙間が多く、破損した燃料ペレットがU-Zr-Oメルトの凝固物に覆われたような状態になっている。内部は非均質である可能性が高い。これ以外にも、燃料被覆管やチャンネルボックスの外周で酸化・破砕されたZr酸化物なども含まれていると推定される。

 Type-IIとして、炉心下部で、いったん堆積し再溶融したデブリが下部プレナムの冷却水中に崩落し、破砕されたケースである。図3に、TMI-2事故で観測された下部プレナムルースデブリの写真を示す。いったん溶融した過程を経ているため、内部は均質化していると考えられる。

#備考:2号機試験的デブリ取り出しに向けて・・ 2号機試験的デブリ取り出しでは、粒子状の酸化物デブリが採集される可能性がある。採集されたデブリ中の、相状態やU,Zr,Feの組成・分布、酸化度、B,C,FP等の混入程度などが重要な分析項目となる。これらの分析結果から、下部プレナムでのデブリ再溶融条件(デブリ酸化度、最高到達温度、物質再分布の傾向)を逆推定できると期待される。得られる知見は、1,3号機の事故進展の理解の精緻化にも貢献すると期待される。

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【主なデブリ構成成分(別表の物性リスト参照)】

・破損した燃料棒(粒子状のZrO2、UO2)、U-Zr-Oメルトの凝固物(c-(U,Zr)O2、t-(Zr,U)O2、m-(Zr,U)O2、α-Zr(O))

・金属デブリ成分、海水成分、FP成分などが混入している可能性

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(E) 酸化物デブリの再溶融・凝固物(多孔質デブリ)

 分類(D)のルースデブリが下部プレナムにいったん堆積した後、崩壊熱で再昇温・再溶融してから凝固して形成されたデブリであり、ルースデブリの内部に存在していると推定される。1,2,3号機で、RPV破損時のデブリ温度が異なっていたと評価されており、酸化物デブリの再溶融は、1号機>3号機>2号機の順に進んでいたと考えられる。溶融が進むと、分類(C)の金属デブリメルト、分類(E)の酸化物デブリメルトが相互作用し、成分の再分布が発生すると考えられる。また、金属デブリメルトと酸化物デブリ固相との共存状態、あるいは、金属メルトと酸化物メルトの成層化状態が形成されたと考えられる。(参考11:下部プレナム堆積後のデブリ再溶融参考15:MASCA模擬試験

 図1に、TMI-2事故で観測されたデブリの分類を、図2に、溶融・凝固デブリの写真を示す。TMI-2事故では、溶融デブリが下部プレナムに崩落した際に、一部が塊状を形成しており、1F事故での酸化物デブリの再溶融・凝固物の外観や形状と類似している可能性が考えられる。

 溶融・凝固過程でガス成分が多く発生すると考えられることから、内部は多孔質になっている可能性が高い。

 金属デブリメルトと相互作用していた場合、酸化物デブリの溶融物も亜酸化状態であったと推定される。その凝固物の相状態は、U-Zr-Oメルトの凝固パスに基づいて評価するのが適切である。(参考12:溶融デブリの凝固

 1,3号機では、デブリの酸化度が比較的低く、また、RPV破損時点でのデブリの平均的な温度が高かったと推定されている[4]。この場合、下部プレナムで、金属デブリメルト(主成分:Fe-U-Zr)と酸化物メルト(主成分:(U,Zr)O2)の成層化にいたっていた可能性が考えられる。(参考15:MASCA模擬試験

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【主なデブリ構成成分(別表の物性リスト参照)】

・バルク成分:U-Zr-O(-Fe)メルトの凝固物(c-(U,Zr)O2、t-(Zr,U)O2、m-(Zr,U)O2

・金属デブリメルトと相互作用すると鋼材成分が多く混入し、(Fe,Cr)2(Zr,U)、Spinel(FeCr2O4、Fe3O4)、α-Zr(O)などが析出

・海水成分、FP成分などが混入している可能性

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(F) スラリー状のデブリ

 下部プレナム堆積物の上の方あるいは隙間に、1号機PCV内部調査で観測されたような、スラリー状や粉末状の物質が堆積していると考えられる。主成分は鋼材の可能性が高いが、その中にU含有粒子が存在していると考えられる。図1、図2に、1号機D/W底部の写真を類型として示す。

#備考:2号機試験的デブリ取り出しに向けて・・ 2号機試験的デブリ取り出しでは、スラリー状や粉末状のデブリが採集される可能性がある。様々な由来を持つ物質が混入していると推定されるため、ていねいな定性分析が不可欠である。おそらく、α粒子が混入しているため、その探索と分析も重要である。

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【主なデブリ構成成分(別表の物性リスト参照)】

・酸化して微粒子化した金属材料(ZrO2、Fe3O4、Cr2O3、など)、破砕されたUO2ペレット、B4C顆粒、U-Zr(-Fe)-Oメルト凝固物に由来する微粒子(c-(U,Zr,Fe)O2、t-(Zr,U,Fe)O2、m-(Zr,U,Fe)O2)、粉体化した化合物相((Fe,Cr)2Zr、Zr2B、Cr2B、など)、貴金属FP微粒子、海水含有成分、など

図1 1号機PCV内部調査で観測されたスラリー状堆積物












図2 1号機PCV内部調査で観測されたスラリー状堆積物、その2











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分類ごとのデブリの特性(ペデスタル内部)(作成中)

(A) 切り株燃料集合体

 ペデスタル内には存在していない。

(B) 破損した金属部材

 本来、RPV内にあり、そこから崩落してきた金属部材は、RPV下部プレナム堆積時とほぼ同様の状態を維持していると考えられる。図1に、2号機ペデスタル内部調査で観測された金属部材の例を示す。

 一方で、本来、ペデスタル内にあった金属部材については、2号機のペデスタル内部調査では、大規模に破損した様子は見られていない。しかし、堆積物の底部(サンプピット内など)で、金属部材や鋼材製の配管の一部が破損・溶融した可能性は否定できない。3号機のペデスタル内部調査では、本来、ペデスタル底部にあった金属部材の様子は、堆積物にさえぎられて観測できていない。2号機より、破損・溶融が進んでいた可能性が高い。また、堆積物の下の方では、デブリの亜酸化度が維持された可能性があり、この場合には、溶融したデブリと破損した金属部材は、相互に溶融し、固着している可能性がある。1号機では、3号機よりさらに、ペデスタル底部での金属部材の溶融が進んだと考えられる。

 これに対し、本来、ペデスタルの比較的上部にあった金属部材については、2号機では、大きな破損は見られていないが、断熱層や保温層が消失している可能性が高い。CRDハウジングの内部(特に、RPVとの接続部あたり)には、デブリが侵入している可能性がある。CRDハウジングの外周に一部付着物があることがわかっており、RPV底部を局所破損して流出したデブリの可能性がある。3号機では、CRDハウジングやCRDレールなどの、本来ペデスタル上部にあった金属部材が大規模に破損し、ペデスタル底部堆積物につきささるように崩落している。その内部で、デブリと溶融・固着している可能性がある。1号機でも、CRDハウジングが、ペデスタル底部堆積物に突き刺さっている。また、多くのCRDハウジングで上下方向が逆になっている。3号機との外観の違いから、1号機の金属部材は、堆積物中で溶融が進んでいた可能性がある。また、崩落時に、RPVとの接合部あたりがデブリによって溶融されて重量増加し、崩落中に上下逆転した可能性が考えられる。

 また、1号機では、3号機よりさらに鋼材の溶融が進んでいるように見え、崩落したCRDハウジングの一部が堆積物中にめり込んでいる。CRDハウジングの全長が見えないこと、比較的鉛直方向に立っていることから、堆積物の底部では鋼材の溶融が進んでいた可能性や、堆積しているデブリが溶融時に粘性を有していた可能性が推定される。


【主なデブリ構成成分(別表の物性リスト参照)】

RPV内の金属部材由来

・燃料集合体の上部の部材(UTP、など)

・制御棒由来(ブレード材、制御棒被覆管、共晶溶融/凝固物:SSにB,C固溶、その内部にFe3O4、Cr2O3、B4C巻き込み)

・チャンネルボックスや燃料棒由来(表面酸化したZry材やSS材(Zry、SS、ZrO2、α-Zr(O)、Fe3O4、Cr2O3

・制御棒ブレードとチャンネルボックスの共晶溶融/凝固物(表面酸化したZry材とSS材、界面に化合物相析出((Fe,Cr)2Zr、ZrB2、Cr2Bなど)

・破損した炉心支持金具、炉心支持板、CRGT、CRDハウジング、など(表面酸化した鋼材)

RPV外の金属部材由来

・RPV下の保温層、断熱材

・CRDハウジング、CRDレール

・グレーチング、各種ペネトレーション構造材

・ケーブルトレイ、制御盤、CRD交換設備、各種配管

図1 2号機ペデスタル底部の様子




















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(C) 金属デブリの溶融・凝固物

 下部プレナムで形成された金属デブリメルトは、RPVを破損して、デブリ本体の崩落に先行して、ペデスタル内に流出した可能性が考えられる。金属デブリメルトの先行流出があった場合には、その温度や酸化度によって、特性が異なると推定される。流出した金属デブリメルトは、いったん、RPV下の保温層や、グレーチングの上に堆積し、さらにそれらを破損して、ペデスタル底部に移行したと考えられる。

 2号機では、金属デブリメルトの相当量がペデスタル内に先行流出し、一部は、グレーチング(大きな破損孔の周辺)に固着していると考えられる(図1)。金属デブリの再溶融・凝固物の類似物として、JAEAの模擬制御棒ブレード破損試験で形成された金属デブリが参考になると思われる(図2)。また、2号機では、デブリの平均的な酸化度が比較的高く、また、RPV破損時のデブリ温度が比較的低いという解析結果が得られており、主に金属デブリメルトが流出した可能性が高い。酸化度が比較的高い場合、酸化物デブリは固体を維持しやすい。

 2号機では、流出した金属デブリメルトは、ペデスタル底部床面の鋼材(ケーブルトレイ等)、あるいはコンクリート上でスレート状に広がったと推定される。サンプピット内にも流入した可能性が高い。破損した金属部材、粒子状酸化物デブリ、B4C顆粒などを巻き込んでいる可能性が高い。堆積物の下の方ではデブリどうしが連結している可能性がある。コンクリート表面が劣化している可能性があるが、金属デブリメルトによるMCCIはほとんど起きないと考えられる。金属デブリメルトの凝固物中には、U,B,Cなどが最大で10mol%ほど溶融している可能がある。また、金属デブリメルトは、急冷されたと推定され、破損したペレットなどの酸化物ルースデブリ、燃料集合体部材の一部、等を巻き込んでいる可能性がある。

 一方、1,3号機では、2号機のような金属デブリメルトの先行的なペデスタル移行が発生したかどうかは不明である。現状の解析では、1,3号機の下部プレナム堆積時点でのデブリ酸化度は2号機より低いため、デブリが亜酸化状態になりやすく、したがって、金属デブリメルトと酸化物デブリメルトが混合・一体化しやすかった可能性がある。この場合には、低融点の金属デブリメルトの先行溶落でなく、固液混合状態の高粘性デブリとして流出すると推定される。高粘性デブリのペデスタル移行には、ある程度時間がかかると推定される。1,3号機で、金属デブリメルトの先行崩落があった場合には、ペデスタル内で、金属デブリメルトの酸化度が上昇しつつ、コンクリート成分と相互溶融すると推定される。したがって、金属デブリメルトは消失する可能性が高い。

 金属デブリメルトの凝固物の主成分は、Fe/Zr合金と推定される。下部プレナムでの再溶融進展に依存するが、U,B,C,貴金属FP等が固溶している可能性がある。U,B,C等の濃度は最大10モル%程度と推定される。凝固時に、金属間化合物や、U,Zrを含む酸化物粒子が析出している可能性がある。B,C等が固溶している場合、一般的なSSの溶融・凝固物に比べ、硬化していると考えられる。

#備考:試験的デブリ取り出しサンプルの分析データ・・ 2号機の試験的デブリ取り出しでは、金属デブリが採集される可能性が高い。合金相と化合物相の組成や分布、B,Cの固溶度、Uの含有程度などが重要な分析課題である。これらから、下部プレナムでのデブリ再溶融条件を逆推定できると期待される。それにより、グレーチング固着物の性状理解も精緻化すると期待される(参考3:金属デブリの再溶融)。

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【主なデブリ構成成分】

・下部プレナム堆積物の項参照

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(D) 粒子状の酸化物デブリ(ルースデブリ)

 2号機では、下部プレナムで形成された粒子状酸化物デブリの一部が、金属デブリメルトのペデスタル移行の際に、巻き込まれて移行したと推定される。1,3号機では、下部プレナムでのデブリ温度がさらに上昇したため、ルースデブリの溶融が進み、ルースデブリの物量が減少した可能性がある。一方で、ペデスタルへの崩落時に、冷却水との反応で、デブリの一部が粒子化した可能性も考えられる。したがって、1,3号機のペデスタル堆積デブリ中にもルースデブリが混入している可能性は排除できない。類型として、TMI-2事故で観測された、上部ルースデブリ(図1)、下部プレナムルースデブリ(図2)を、それぞれ掲載する。

#備考:2号機試験的デブリ取り出しに向けて・・ 2号機試験的デブリ取り出しでは、粒子状の酸化物デブリが採集される可能性がある。採集されたデブリが、金属デブリの溶融・凝固物だった場合、その相状態やU,Zr,Feの組成・分布、酸化度、B,C,FP等の混入程度などが重要な分析項目となる。これらの分析結果から、下部プレナムでのデブリ再溶融条件(デブリ酸化度、最高到達温度、物質再分布の傾向)を逆推定できると期待される。一方で、採集されたデブリが、ルースデブリの巻き込みだった場合には、その相状態分析により、炉心崩落時の条件が推定できる可能性がある。

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【主なデブリ構成成分】

・下部プレナム堆積物の項参照

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(E) 酸化物デブリの再溶融/凝固物(多孔質デブリ)

 2号機では、下部プレナムで形成された酸化物多孔質デブリの破砕物などが、金属デブリメルトに巻き込まれて、ペデスタル底部に崩落した可能性がある。

 3号機では、デブリ本体が、おそらく高粘性状態で、ペデスタルに崩落したと考えられる。3号機のペデスタル内部観測結果(図1)は、高粘性デブリの崩落を示唆している。3号機では、ペデスタル堆積物の下の方で、分類(B)の金属部材、分類(C)の金属デブリの溶融・凝固物、および、分類(E)の酸化物デブリの溶融・凝固物が互いに再溶融・混合・固着している可能性がある。

(以下、追記)

 1号機では、下部プレナムでの再溶融時に、燃料デブリが、3号機よりさらに高温に達していた可能性が高い。また、ペデスタルに崩落した時の燃料デブリの崩壊熱が大きかったと考えられる。したがって、溶融デブリとコンクリートの相互作用を考慮する必要がある。

(以下、追記)


【主なデブリ構成成分(別表の物性リスト参照)】

2号機

・下部プレナム堆積物の項参照

3号機

1号機

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(F) スラリー状のデブリ

 デブリの破砕、デブリと鋼材との相互作用などにより、スラリー状のデブリがペデスタル堆積物の上の方に堆積していると推定される。

 1号機のPCV内部調査で採集されたサンプルからは、鋼材成分が多く検出され、一部にU含有粒子が検出された。

 1、2、3号機のペデスタル堆積物の比較的上の方に、スラリー状や粉末状のデブリが堆積している可能性がある。

#備考:2号機試験的デブリ取り出しに向けて・・ 2号機試験的デブリ取り出しでは、スラリー状や粉末状のデブリが採集される可能性がある。様々な由来を持つ物質が混入していると推定されるため、ていねいな定性分析が不可欠である。おそらく、α粒子が混入しているため、その探索も重要である。

【主なデブリ構成成分(別表の物性リスト参照)】

・酸化して微粒子化した金属材料(ZrO2、Fe3O4、Cr2O3、など)、破砕されたUO2ペレット、B4C顆粒、U-Zr(-Fe)-Oメルト凝固物に由来する微粒子(c-(U,Zr,Fe)O2、t-(Zr,U,Fe)O2、m-(Zr,U,Fe)O2)、粉体化した化合物相((Fe,Cr)2Zr、Zr2B、Cr2B、など)、貴金属FP微粒子、海水含有成分、など

(G) 保温層やグレーチングへの固着物

 2号機では、下部プレナムで再溶融した金属デブリメルトの一部は、RPV底部側面の破損孔から流出し、RPV下の保温層や、その下のグレーチングに、一部固着していると推定される。(参考5:2号機下部プレナム堆積物の伝熱解析参考4:再溶融した金属デブリとRPV鋼材、溶接部の共晶溶融

 固着物は、急冷されたと推定され、破損したペレットなどの酸化物ルースデブリ、燃料集合体部材の一部、等を巻き込んでいる可能性がある。

 固着物の主成分は、Fe/Zr合金と推定される。下部プレナムでの再溶融進展に依存するが、U,B,C,貴金属FP等が固溶している可能性がある。U,B,C等の濃度は最大10モル%程度と推定される。凝固時に、金属間化合物や、U,Zrを含む酸化物粒子が析出している可能性がある。

 B,C等が固溶している場合、一般的なSSの溶融・凝固物に比べ、硬化していると考えられる。

【主なデブリ構成成分(別表の物性リスト参照)】

・SS/Zr/B/C合金(Uや貴金属FPを固溶する可能性)、金属間化合物の析出((Fe,Cr)2Zr,Zr2B,Cr2B等)、破砕したB4CやUO2,ZrO2の巻き込み、破損した金属部材、保温材の残留。

#備考:試験的デブリ取り出しサンプルの分析データ・・ 2号機の試験的デブリ取り出しでは、金属デブリが採集される可能性が高い。合金相と化合物相の組成や分布、B,Cの固溶度、Uの含有程度などが重要な分析課題である。これらから、下部プレナムでのデブリ再溶融条件を逆推定できると期待される。それにより、グレーチング固着物の性状理解も精緻化すると期待される(参考3:金属デブリの再溶融)。

図1 2号機ペデスタル内グレーチング破損孔の近くの様子





















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(H) CRDハウジング内部へのデブリ流入

 金属デブリと鋼材の共晶溶融物の一部は、溶接部から、CRDハウジング内に侵入したと推定される。

(I) CRDハウジング付着の崩落物

 2号機では、金属デブリと鋼材の共晶溶融物の一部は、溶接部から、CRDハウジング内に侵入したと推定される。その一部は、CRDハウジングの外周にも付着し、そこから崩落した可能性がある。2号機PCV内部調査で観測された塊状の物質の一部には、R上の凹面が観測されており、CRDハウジングにいったん固着してから崩落したことを示唆している可能性がある(図1)。

(図1挿入)

参考文献

[1] A. Pshenichnnikov et al., J. Nucl. Sci. Technol. 59 (3), 267-291, 2022.

[2] 東京電力ホールディングズ株式会社、福島第一原子力発電所2号機格納容器内部調査実施結果、2018年2月1日

[3] M. Takano, A. Onozawa, M. Suzuki, et al. Proceedings of HOTLAB 2017; 2017 Sep 17-22; Mito, Japan.

[4] I. Sato et al., MAAP code analysis for the in-vessel phase of Fukushima-Daiichi Nuclear Power Station Unit 1 and comparison of the results among Units 1 to 3, Nucl. Eng. Design, 422 (2024) 113088.