燃料デブリの分類と堆積状態

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デブリの分類

2号機RPV底部

 2号機のRPV内部調査はまだ実施されていない。ミューオン調査では、炉心部に重金属がほとんど存在しておらず、RPV下部プレナム底部に重金属が堆積している観測結果が得られている。ミューオン調査結果に加えて、事故進展解析、およびPCV内部調査の結果から、2号機RPV底部の燃料デブリの分類は、以下のように推定されている。(図1:2号機の炉内状態推定図から抜粋

 しかし、内部の堆積状態(特に堆積物の形状)については、かなり不確かさが大きいことに注意が必要である。図1に示すデブリ分類は、TMI-2事故の最終形態の評価やシビアアクシデント事故進展の理解に基づいて、現状では、このような種類のデブリが存在しうるというレベルで推定したものである。

A) 切り株燃料集合体・・ 本来炉心があったあたりの外周下部に残留している可能性がある。# 切り株燃料集合体の存在が確認されているわけではないが、現時点でこれを否定する根拠もない。

B) 破損した金属部材・・ 崩落したCRGT(おそらく下部が大きく溶融・損傷)、炉心支持金具、炉心支持板、燃料集合体部材の一部(タイプレート、制御棒ブレードなど)が、一部は未溶融のままで、おそらく下部プレナム底部の堆積物の上の方に存在している可能性がある。堆積している金属部材の下の方は、溶融・凝固した金属デブリに溶融・固着している可能性が高い。

C) 金属デブリの再溶融/凝固物・・ SS/Zrを主成分とする合金がいったん溶融した後に凝固していると推定される。2号機では、下部プレナム崩落時点でのデブリ酸化度(Zr酸化度)が70-80%程度と予想されており、その再溶融時に、UやBが還元されて、金属デブリメルト中に溶融すると考えられる。溶解度は、デブリの到達温度に依存するが、およそ、Uについて数モル%~10数モル%、Bについても10モル%程度溶融する可能性がある。溶融・凝固時に、粒子状酸化物デブリ(破砕したペレットなど)や未溶融B4C粒子、制御棒やチャンネルボックスの共晶溶融で中間生成物として形成される金属間化合物などを巻き込んでいる可能性が高い。金属デブリメルトが酸化されると、U,Zrリッチな析出物が形成されると推定される。

D) 粒子状の酸化物デブリ(ルースデブリ)・・ 粒子状のデブリは、主に2つの形成メカニズムがあると考えられる。1つ目として、破損・溶融した燃料棒が崩落して炉心部でいったん堆積した際に隙間の多いルースデブリを形成し。その一部が、あまり再溶融せずに、下部プレナムに機械的に崩落した可能性が考えられる。2つ目として、炉心部で再溶融したデブリが下部プレナムの冷却水中に崩落した際に、燃料/冷却水反応により、一部が破砕された可能性が考えられる。前者は、残留ペレットや破砕された燃料棒などが主成分となる。後者は、いったん溶融する過程を経ているため、内部が均質化されていると推定される。

E) 酸化物デブリの再溶融/凝固物(多孔質デブリ)・・ ルースデブリの一部が再溶融・凝固し塊状を形成したものである。金属デブリメルトと接触・混合・成層化する可能性がある。化学的な物質再分布が発生する可能性がある。溶融・凝固時に多孔質になっている可能性が高い。凝固時に成分再分布する可能性がある。

F) スラリー状のデブリ・・ デブリの破砕などにより、1号機PCV底部で見られているようなスラリー状のデブリが2号機下部プレナムでも堆積していると推定される。

堆積状態

2号機RPV底部

 RPV内部の状態については不確かさが大きいため、上で示したような分類のデブリが存在しているとすると、堆積物の上の方から、以下のような堆積状態になっている可能性が考えられる(図2)。今後のRPV内部調査により、理解を精緻化していく必要がある。

a) 切り株燃料集合体・・ 本来の炉心部の周辺下部に存在している可能性がある。その下には、おそらく、CRGTが残留している。# CRGTが一部倒壊している可能性や、CRGT内部にデブリが侵入している可能性も考えられる。切り株燃料ごと、下部プレナムに崩落しているようなこともありうる。

b) 破損した金属部材(CRGT、炉心支持板、炉心支持金具、燃料集合体部材など)・・ 崩落した金属部材は、堆積物の上の方では、本来形状を一部維持した未溶融の状態で堆積している可能性が考えられる。下の方では、酸化物のルースデブリや再溶融・凝固物、あるいは、金属デブリの再溶融・凝固物と一体となっている可能性が考えられる。本来、下部プレナム底部にあったCRDスタブチューブはデブリとの接触により溶融・消失し、CRDハウジング支持金具に着座、一部で、破損孔を形成している可能性が考えられる。

c) スラリー状のデブリ・・ RPV内の冷却水の水位によるが、下部プレナム堆積物の上の方にスラリー状や粉末状の物質が存在している可能性がある。

d) 粒子状の酸化物デブリ(ルースデブリ)・・ 破損した金属部材などと共に、堆積物の比較的上のほうに存在していると考えられる。スラリー状の堆積物と混在していると推定される。隙間が多いと考えられるが、堆積物の下の方では、金属デブリや多孔質デブリと固着している可能性がある。

e) 酸化物デブリの再溶融/凝固物(多孔質デブリ)・・ ルースデブリの下の方(内部)で形成されている可能性がある。金属デブリの再溶融・凝固物と固着・一体化、あるいは成層化している可能性がある。

f) 金属デブリの再溶融/凝固物・・ 下部プレナムにいったん堆積したデブリの中で、金属デブリが先行溶融すると、RPV底面に濡れ広がる可能性が考えられる。そこへのCRGTや炉心支持版の溶融量によって、金属メルトの物量が増えると推定される。金属デブリの相当量がペデスタル内に流出したと考えられるため、下部プレナム堆積物の内部(特に側面の大規模破損孔周辺)に空洞がある可能性がある。酸化物デブリの再溶融・凝固物と固着・一体化、あるいは成層化している可能性がある。

 また、2号機下部プレナムでは、以下のような破損孔が形成されていると考えられる。破損孔近くでは、RPV鋼材とデブリが相互溶融したり、固着したりしている可能性がある。

g) 側面大規模破損孔・・ 下部プレナム堆積物が再昇温する際に、シュラウドサポートとスカートの間で、クリープ破損が累積する傾向が解析されており、上部タイプレートが通り抜ける程度の大規模破損孔が、下部ヘッド側面に形成されている可能性がある。(参考5:2号機下部プレナム堆積物の伝熱解析

h) 底部局所破損孔・・ 金属デブリとCRDハウジング等の溶接部で発生する共晶溶融により、共晶反応生成物(合金層+化合物相、酸化物デブリ巻き込み?)が、CRD内に流入、あるいは、CRDハウジング外周部に付着すると推定される。(参考4:再溶融した金属デブリとRPV鋼材、溶接部の共晶溶融

 さらに、流出したデブリの一部は、RPV下に取り付けられている保温層の上に堆積している可能性がある。

i) RPVと保温層の間の堆積物・・ 金属デブリや燃料デブリが、ペデスタル内に崩落せずに、一部が残留・堆積している可能性がある。他方、CRD内部に流入したデブリによる、内側からのCRD破損はないと推定している。

#備考:2号機RPV堆積物のコアボーリングについて・・ 2号機では、RPV下部プレナム堆積物の深さ方向サンプルを、部分的にでも採集できれば、デブリ特性に大きく影響すると考えられる【下部プレナムでのデブリ再溶融状態】に関する知見を得ることができる。これにより、RPV底部堆積物の均質・非均質の程度や、ペデスタル内に移行したデブリの特性に関する知見も精緻化できると期待される。