今後の内部調査に向けて、実デブリサンプルの採取に向けて(開発中)

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 日米CNWG(Japan-US Civil Nuclear Energy Research and Development Working Group)における、1F事故解析分野での情報交換(1F Forensics Expert Meeting)での米国側提案を踏まえて、東京電力HDは、1F1~3号機について、内部調査が望まれる部位と調査項目を整理している[1]。ここでは、それを参考にしつつ、1F事故進展解析に関する最近の進捗を考慮して、デブリ/FPふるまいに係る内部調査の部位と項目を整理した。

RPV内部の調査、実デブリサンプル採取に向けて(1~3号機共通)

・この項目では、1F1~3号機のRPV内部について、デブリ/FPふるまいに係る調査部位と調査項目を整理した。

・さらに、RPV内でのデブリふるまいの理解の深化に向けて、特に重要となる2課題について、内部調査とサンプル分析で拡充したい知見をとりまとめた。

RPV内部調査での、デブリ/FPふるまいに係る調査部位と調査項目

・1~3号機共通で、RPV内部調査・サンプリングの注目部位は、①RPV内の上部構造物、②シュラウド、③本来炉心があった部位(本来炉心支持板や支持金具があった部位を含む)、④下部プレナム(本来炉心支持板があった部位の下)、に大別できる(図1)。

表1に、それぞれの部位について、調査方法・項目、現状での推定、調査の目的、についてまとめて示す。

図1 RPV内部の主な調査部位

















表1 RPV内部の調査部位、調査方法、調査項目、調査目的、及び、現状推定
























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RPV内でのデブリふるまいにおける、重要2課題

① デブリいったん堆積(炉心部)~デブリ溶融プールの形成・拡大(炉心部)~下部プレナムへのデブリ移行(溶融物or高粘性デブリ)

〇 デブリふるまいの違い

 1F1~3号機では、崩落した炉心物質が炉心支持板の直上あたりでいったん堆積したと推定されている。一方で、1~3号機では崩落に至る過程が異なっていると推定されている。

  • 1号機: RPV内高圧条件で冷却水水位が徐々に低下、従って、炉心物質は水蒸気潤沢雰囲気に曝されていた。
  • 2号機: SRV弁開操作で冷却水の減圧沸騰が発生、従って、制御棒溶落~燃料棒崩落の初期は、RPV内が低圧の水蒸気枯渇条件で維持されていた。それ以降でも、炉心の上部では、燃料崩落まで水素濃度の高い条件が継続した。
  • 3号機: 冷却水水位が徐々に低下して炉心上部が露出、燃料溶融が一部開始された段階で、ADS作動により冷却水の減圧沸騰が発生、以降の制御棒溶落~燃料棒崩落の初期は、RPV内が低圧の水蒸気枯渇条件で維持された。

〇 デブリ酸化度について

 燃料被覆管の酸化が進みやすい条件では、燃料棒外周の酸化皮膜が厚く形成されやすく、燃料棒の形状が比較的高温まで維持されやすい。このために燃料ペレットと燃料被覆管の界面で形成されるU-Zr-Oメルトが維持・拡大しやすい。U-Zr-Oメルトが成長すると、崩落時のデブリが塊状になりやすい。塊状のデブリでは、崩落時にその内部の酸化が進みにくい。逆に、燃料被覆管の酸化が進みにくい条件では、比較的低い温度でU-Zr-Oメルトが燃料棒の外に噴出し、燃料棒の形状が変化する可能性が高い。この場合には、デブリは粒子状になりやすい。粒子状のデブリでは、崩落時にその酸化が進みやすい。(参考7:燃料棒の溶融・破損メカニズム参考8:デブリ崩落時の炉心エネルギーとデブリ酸化度の上昇

  • 1号機: 水蒸気潤沢条件で燃料被覆管の表面酸化が進み、最も高温まで燃料棒の形状が維持され、燃料棒内部でのU-Zr-Oメルト成長が最も進んだ。このため、崩落直前までのデブリ酸化は進みやすいが、崩落・堆積以降のデブリ酸化は進みにくかったと推定されている。
  • 2号機: 水蒸気枯渇条件で、初期の燃料被覆管酸化が進み、比較的低い温度で、燃料棒の崩落が主に粒子状で進んだ。このため、崩落直前までのデブリ酸化度は比較的低いが、崩落・堆積途中で酸化が進んだと考えられる。さらに、制御棒ブレードとチャンネルボックスの崩落は水蒸気枯渇条件で発生したため、その溶落物による炉心下部の閉塞が比較的非均質であった可能性がある。(参考2:制御棒溶融物とチャンネルボックス(Zry)の共晶溶融
  • 3号機: 炉心上部の破損は1号機と同様に進んだが、途中から、水蒸気枯渇条件が発生した。このため、2号機よりは、塊状のデブリが多く形成され、崩落・堆積時点でのデブリ酸化度が低かったと考えられる。

〇 デブリ再溶融について

 炉心支持板の直上付近でいったん堆積したデブリについて、崩落・堆積状態と、デブリ酸化度の違いが、デブリ再溶融進展にどう影響するか、が重要課題となる。

  • 熱水力的には、デブリ堆積状態(水蒸気透過度)の違いによる、堆積物内部での温度上昇と溶融プールの形成・拡大が重要となる。
  • 材料反応的には、比較的低温で形成される亜酸化U-Zr-O系メルトへの二酸化物の溶融進展が重要となる。
  • これらの反応進展メカニズムの理解を深化することで、SA解析コードにおける、デブリ溶融・移行モデルの精緻化・高度化が期待される。

〇 デブリの下部プレナム移行について

 炉心部でいったん堆積した燃料デブリは、下部プレナムに崩落・移行したと考えられるが、その移行メカニズムとして、大きく2つがありうると考えられている。

  • TMI-2型シナリオ: 炉心部で、溶融デブリプールが成長・拡大し、その周囲を断熱性のクラスト層が覆う。ある段階で、クラスト層が溶融デブリプールを支えきれなくなり、溶融デブリは短時間で下部プレナムに移行する。下部プレナムに冷却水が残留している場合、燃料/冷却水反応を起こしつつ、燃料デブリはいったん冷却・固化される。TMI-2事故では、クラスト層の破損が溶融プールの側面で発生しており、溶融デブリはシュラウドを破損して下部プレナムに移行した。
  • BWRドレナージ型シナリオ: デブリの堆積・閉塞が稠密でない場合には、溶融デブリプールが成長しにくく、局所的に形成された溶融デブリと固体デブリ(ルースデブリや金属デブリ)が混合しつつ崩落するシナリオが考えられる。このシナリオは、制御棒ブレードが非均質に装荷されており、また、炉心に装荷されたZr量が多くデブリ酸化度が上がりにくい、BWRで起きやすいと考えられている。(参考9:BWRドレナージ型シナリオ
  • TMI-2事故で発生した、炉心部でのデブリ溶融プールの形成と拡大~溶融デブリによるシュラウド破損~下部プレナムへのデブリ移行が、RPV内の事故進展において、どの程度普遍的に起こりうるのかに関する知見を取得することが望まれる。

炉心部でのデブリ崩落~下部プレナムへのデブリ移行シナリオ(1号機)

・3/11 18:00頃に、冷却水水位がTAFに到達。それまでは、燃料温度はほぼ冷却水温度と等しい。燃料被覆管外周の酸化は、通常運転時に形成される酸化皮膜20μm程度にとどまっていた。

・3/11 19:00頃に、炉心上部が露出。炉心上部で燃料温度が最高1800℃程度まで上昇し、部分的な溶融が開始した。炉心上部での制御棒温度は1200℃を超え、下方への溶落開始した。炉心上部での燃料被覆管やチャンネルボックスの酸化が進行した。一方で、冷却水に浸かっている炉心中央以下の燃料温度や酸化度は低いまま維持されていた。

・3/11 20:00~22:00頃に、炉心上部での温度が2000℃を超え、燃料崩落が開始した。溶融・崩落の過程で局所的に2550℃以上の高温に到達した。燃料は、高温に到達してから塊状で崩落しやすかったと推定される。したがって、崩落開始まではデブリ(Zr)酸化度が上昇しやすいが、崩落途中では上昇しにくい。

・3/11 22:00~3/12 1:00頃に、炉心支持板の直上あたりで、崩落した燃料デブリがいったん堆積し、いったん温度低下した。冷却水水位はBAF以下まで低下した。その後、崩壊熱で、堆積物の中央で温度上昇し、溶融デブリプールが形成・拡大した。溶融デブリプールが形成・拡大する場合、上下のクラスト層も形成されやすいと考えられる。溶融デブリの主成分は、亜酸化のU-Zr-Oメルトと推定され、周囲の酸化物を溶融しながら拡大する。溶融デブリプールの温度は、2300~2550℃程度と推定される。二酸化物の融点より数100℃低い。

・3/11 2:00~3:00頃に、クラスト層の一部が破損し、溶融デブリが短時間で下部プレナムに移行した。内部調査により、溶融デブリの移行経路、および、炉心下部の構造物や堆積物の残留程度の知見取得が期待される。

図1(a) 1号機でのRPV内デブリふるまいシナリオ






















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炉心部でのデブリ崩落~下部プレナムへのデブリ移行シナリオ(2号機)

・3/14 18:00頃に、SRV開操作。それまでは、炉心は冷却水中に維持されており、燃料温度はほぼ冷却水温度と等しい。燃料被覆管外周の酸化は、通常運転時に形成される酸化皮膜20μm程度にとどまっていた。

・3/14 18:00~18:30頃に、冷却水が減圧沸騰して炉心上部が露出。燃料温度は冷却水温度以下までいったん低下した。この過程でのZr酸化度の上昇はほとんどないと考えられる。

・3/14 20:30頃まで、炉心部にほとんど水蒸気が供給されず、水蒸気枯渇条件が発生した。この条件で、燃料温度は最高2000℃程度まで上昇したが、燃料被覆管外周の酸化は限定的であった。制御棒温度は1200℃を超え、下方へ溶落した。チャンネルボックスの酸化が限定的で、制御棒溶融物とZryチャンネルボックスの共晶溶融が進みやすかったと考えられる。この場合、炉心下部での金属デブリによる閉塞は稠密になりにくい。

・3/14 20:30頃に、冷却水水位がBAF以下に回復、あるいは、金属デブリメルトの下部プレナム崩落、等の、限定的な事象により、RPV内で最初の圧力ピークが発生した。これにより、炉心に水蒸気が供給され、炉心上部での温度が2000℃を超え、燃料崩落が開始した。燃料被覆管の酸化度が低かったため、燃料は、比較的低い温度で粒子状で崩落しやすかったと推定される。したがって、崩落開始まのデブリ(Zr)酸化度は限定的であるが、崩落途中では上昇しやすい。

・3/14 22:30~3/15 1:00頃に、RPV圧力が連続的に上昇した。これは、いったん炉心支持板の直上あたりで、崩落した燃料デブリがいったん堆積し、いったん温度低下した後に、崩壊熱で、再溶融し、下部プレナムの冷却水中に少しずつ移行したことを示している。炉心部でいったん堆積したデブリ中で、どの程度溶融デブリプールの形成・拡大が進んだのかは不明である。溶融デブリの主成分は、亜酸化のU-Zr-Oメルトと推定され、周囲の酸化物を溶融しながら拡大する。溶融デブリプールの拡大が限定的で、BWRドレナージ型でデブリ崩落した場合のデブリ温度は、2000~2300℃程度と推定される。

・2号機では、デブリのいったん堆積~下部プレナムへの移行パス、および、炉心下部の構造物や堆積物の残留程度の不確かさが大きく、内部調査による知見取得が期待される。

図1(b) 2号機でのRPV内デブリふるまいシナリオ













炉心部でのデブリ崩落~下部プレナムへのデブリ移行シナリオ(3号機)

・3/14 18:00頃に、SRV開操作。それまでは、炉心は冷却水中に維持されており、燃料温度はほぼ冷却水温度と等しい。燃料被覆管外周の酸化は、通常運転時に形成される酸化皮膜20μm程度にとどまっていた。

・3/14 18:00~18:30頃に、冷却水が減圧沸騰して炉心上部が露出。燃料温度は冷却水温度以下までいったん低下した。この過程でのZr酸化度の上昇はほとんどないと考えられる。

・3/14 20:30頃まで、炉心部にほとんど水蒸気が供給されず、水蒸気枯渇条件が発生した。この条件で、燃料温度は最高2000℃程度まで上昇したが、燃料被覆管外周の酸化は限定的であった。制御棒温度は1200℃を超え、下方へ溶落した。チャンネルボックスの酸化が限定的で、制御棒溶融物とZryチャンネルボックスの共晶溶融が進みやすかったと考えられる。この場合、炉心下部での金属デブリによる閉塞は稠密になりにくい。

・3/14 20:30頃に、冷却水水位がBAF以下に回復、あるいは、金属デブリメルトの下部プレナム崩落、等の、限定的な事象により、RPV内で最初の圧力ピークが発生した。これにより、炉心に水蒸気が供給され、炉心上部での温度が2000℃を超え、燃料崩落が開始した。燃料被覆管の酸化度が低かったため、燃料は、比較的低い温度で粒子状で崩落しやすかったと推定される。したがって、崩落開始まのデブリ(Zr)酸化度は限定的であるが、崩落途中では上昇しやすい。

・3/14 22:30~3/15 1:00頃に、RPV圧力が連続的に上昇した。これは、いったん炉心支持板の直上あたりで、崩落した燃料デブリがいったん堆積し、いったん温度低下した後に、崩壊熱で、再溶融し、下部プレナムの冷却水中に少しずつ移行したことを示している。炉心部でいったん堆積したデブリ中で、どの程度溶融デブリプールの形成・拡大が進んだのかは不明である。溶融デブリの主成分は、亜酸化のU-Zr-Oメルトと推定され、周囲の酸化物を溶融しながら拡大する。溶融デブリプールの拡大が限定的で、BWRドレナージ型でデブリ崩落した場合のデブリ温度は、2000~2300℃程度と推定される。

・2号機では、デブリのいったん堆積~下部プレナムへの移行パス、および、炉心下部の構造物や堆積物の残留程度の不確かさが大きく、内部調査による知見取得が期待される。


















図1(c) 3号機でのRPV内デブリふるまいシナリオ
























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② 下部プレナムでのデブリ再溶融~RPV破損・デブリのペデスタル内移行

ここから、、、、


〇 デブリふるまいの違い

 1F1~3号機では、崩落した炉心物質が炉心支持板の直上あたりでいったん堆積したと推定されている。一方で、1~3号機では崩落に至る過程が異なっていると推定されている(参考資料①)。

  • 1号機: RPV内高圧条件で冷却水水位が徐々に低下、従って、炉心物質は水蒸気潤沢雰囲気に曝されていた。
  • 2号機: SRV弁開操作で冷却水の減圧沸騰が発生、従って、制御棒溶落~燃料棒崩落の初期は、RPV内が低圧の水蒸気枯渇条件で維持されていた。それ以降でも、炉心の上部では、燃料崩落まで水素濃度の高い条件が継続した。
  • 3号機: 冷却水水位が徐々に

〇 1F1~3号機では、デブリ平均としては、100%に至らないデブリ酸化度を維持した燃料デブリや金属デブリが、いったん下部プレナムに堆積し、その後、崩壊熱で再溶融し、RPV破損に至ったと推定されている(以下の参考資料②参照)。

• 崩落したデブリが、下部プレナム、炉心支持板周辺で、いったん堆積した状態の痕跡調査

• デブリ溶融過程(金属デブリと酸化物デブリの相互作用、鋼材の溶融)

• デブリ溶融状態((亜)酸化度、金属/酸化物メルトの成層化程度、温度、粘性、RPV内壁との間のクラスト層の状態)

• デブリとRPVとの伝熱、デブリによるRPV局所破損の有無

• RPV破損孔の位置、サイズ

• ペデスタル内への崩落時の、デブリ温度、酸化度、粘性

デブリサンプリングへの期待

• 多様なサンプルの採取(g規模で、外観や堆積状態の異なるデブリをできるだけ多種類採取)

• ボーリング調査:深さ方向調査(堆積物の深さ方向分布、特に、異なる堆積物の界面サンプル) # ボーリング困難な場合でも、深さ方向のサンプリングが採取されるのが望ましい、

参考文献

[1] https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/decommissioning/committee/osensuitaisakuteam/2022/08/4-1.pdf