「燃料デブリの分類と堆積状態」の版間の差分
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=== | === '''RPV内での事故進展における2号機の固有事象(詳細は、、、、、)''' === | ||
① SRV開操作による短時間での冷却水の減圧沸騰、炉心露出。その後の注水不十分による水蒸気枯渇条件の発生。 | |||
② 水蒸気枯渇条件で、制御棒が先行溶落。 | |||
③ 炉心崩落時の崩壊熱が比較的小さい。 | |||
④ 水位が炉心支持板直上あたりまで回復、水蒸気潤沢条件に復帰。 | |||
⑤ 炉心エネルギーが比較的小さい条件で燃料崩落(燃料温度が比較的低い)。 | |||
⑥ 炉心部でいったん堆積した燃料デブリは、ドレナージ型で、2-3時間かけて徐々に、下部プレナムに移行。 | |||
⑦ デブリの下部プレナム崩落時には、冷却水が残留。 | |||
=== RPV内でのデブリふるまいにおける2号機の固有事象(詳細は、、、、) === | |||
①②により、 | |||
・B,Cを少量溶融したSSメルトが先行溶落し、さらに、チャンネルボックスに接触して共晶溶融しつつ下方に移行。 | |||
・制御棒上部では溶け残った顆粒状B4Cが金属メルトに覆われていったん残留し、その後に、制御棒チャンネル内で物理的に崩落。 | |||
・炉心最上部の集合体部材(上部タイプレートなど)は、一部は未溶融のまま崩落。 | |||
・炉心下部での、崩落制御棒による初期閉塞は稠密性が不十分だった可能性。 | |||
③により | |||
・崩落時のデブリ温度が比較的低く、主に粒子状で崩落した。このため、崩落途中で酸化度が上昇した。崩落後にも粒子状を維持し、隙間が多い状態で堆積した。 | |||
・溶融プールは、炉心支持板の直上あたりに形成され、かつ、閉塞不十分のため、成長・拡大しにくかった可能性がある。したがって、溶融プールの上下クラスト層も形成されにくかったのではないかと推定される。 | |||
・溶融プールを形成すると、表面に酸化被膜を形成し、バルクのメルトは、固体状態に比べて酸化がすすみにくい。 | |||
・燃料デブリは、下部プレナムに崩落した後、いったん冷却・凝固し、崩壊熱で再昇温した。再昇温の過程で、崩落したルースデブリ中に、局所的に溶融プールが形成された。 | |||
・溶融プールの化学状態は、U-Zr-Oメルトと(U,(Zr))O<small><sub>2</sub></small>固相の固液共存状態として理解できる。U-Zr-Oメルト相は、周囲を(U,(Zr))O<sub><small>2</small></sub>固相等のクラスト層で覆われるため、その内部は酸化されにくい。 | |||
・下部プレナムにいったん堆積したデブリは、崩壊熱で再溶融した。その際に、金属デブリが先に溶融した。 | |||
・U-Zr-Oメルトは凝固時に相分離する。 | |||
・粒子状デブリは、デブリ再溶融時に、かなり高温まで固体状態を維持した。 | |||
・一方で、酸化物デブリの一部は、亜酸化状態を維持した可能性があり、金属デブリに溶融する可能性がある。 | |||
・炉心下部の支持金具やCRGTは大きく破損、一部は未溶融のまま下部プレナムに堆積した。 | |||
・溶融金属デブリや破損・溶融した酸化物デブリは、下部プレナムの冷却水中に崩落し、いったん急冷・凝固した。 | |||
・冷却水との反応により、デブリの一部が、微粒子化・粉体化した。 | |||
・U-Zr-Oメルトと鋼材が接触すると、メルト中の酸素溶解度が急減し、UO<sub><small>2</small></sub>やZrO<sub><small>2</small></sub>の粉末が析出する可能性がある。 | |||
==='''デブリの分類('''2号機RPV底部)=== | |||
2号機のRPV内部調査はまだ実施されていない。ミューオン調査では、炉心部に重金属がほとんど存在しておらず、RPV下部プレナム底部に重金属が堆積している観測結果が得られている。ミューオン調査結果に加えて、事故進展解析、およびPCV内部調査の結果から、2号機RPV底部の燃料デブリの分類は、以下のように推定されている。('''図1:2号機の炉内状態推定図から抜粋''') | 2号機のRPV内部調査はまだ実施されていない。ミューオン調査では、炉心部に重金属がほとんど存在しておらず、RPV下部プレナム底部に重金属が堆積している観測結果が得られている。ミューオン調査結果に加えて、事故進展解析、およびPCV内部調査の結果から、2号機RPV底部の燃料デブリの分類は、以下のように推定されている。('''図1:2号機の炉内状態推定図から抜粋''') | ||
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'''F) スラリー状のデブリ'''・・ デブリの破砕などにより、1号機PCV底部で見られているようなスラリー状のデブリが2号機下部プレナムでも堆積していると推定される。 | '''F) スラリー状のデブリ'''・・ デブリの破砕などにより、1号機PCV底部で見られているようなスラリー状のデブリが2号機下部プレナムでも堆積していると推定される。 | ||
== ''' | ==='''破損・堆積状態('''2号機RPV底部) === | ||
RPV内部の状態については不確かさが大きいため、上で示したような分類のデブリが存在しているとすると、<u>堆積物の上の方から</u>、以下のような堆積状態になっている可能性が考えられる('''図2''')。今後のRPV内部調査により、理解を精緻化していく必要がある。 | RPV内部の状態については不確かさが大きいため、上で示したような分類のデブリが存在しているとすると、<u>堆積物の上の方から</u>、以下のような堆積状態になっている可能性が考えられる('''図2''')。今後のRPV内部調査により、理解を精緻化していく必要がある。 | ||
2024年3月6日 (水) 16:49時点における版
2号機
RPV内での事故進展における2号機の固有事象(詳細は、、、、、)
① SRV開操作による短時間での冷却水の減圧沸騰、炉心露出。その後の注水不十分による水蒸気枯渇条件の発生。
② 水蒸気枯渇条件で、制御棒が先行溶落。
③ 炉心崩落時の崩壊熱が比較的小さい。
④ 水位が炉心支持板直上あたりまで回復、水蒸気潤沢条件に復帰。
⑤ 炉心エネルギーが比較的小さい条件で燃料崩落(燃料温度が比較的低い)。
⑥ 炉心部でいったん堆積した燃料デブリは、ドレナージ型で、2-3時間かけて徐々に、下部プレナムに移行。
⑦ デブリの下部プレナム崩落時には、冷却水が残留。
RPV内でのデブリふるまいにおける2号機の固有事象(詳細は、、、、)
①②により、
・B,Cを少量溶融したSSメルトが先行溶落し、さらに、チャンネルボックスに接触して共晶溶融しつつ下方に移行。
・制御棒上部では溶け残った顆粒状B4Cが金属メルトに覆われていったん残留し、その後に、制御棒チャンネル内で物理的に崩落。
・炉心最上部の集合体部材(上部タイプレートなど)は、一部は未溶融のまま崩落。
・炉心下部での、崩落制御棒による初期閉塞は稠密性が不十分だった可能性。
③により
・崩落時のデブリ温度が比較的低く、主に粒子状で崩落した。このため、崩落途中で酸化度が上昇した。崩落後にも粒子状を維持し、隙間が多い状態で堆積した。
・溶融プールは、炉心支持板の直上あたりに形成され、かつ、閉塞不十分のため、成長・拡大しにくかった可能性がある。したがって、溶融プールの上下クラスト層も形成されにくかったのではないかと推定される。
・溶融プールを形成すると、表面に酸化被膜を形成し、バルクのメルトは、固体状態に比べて酸化がすすみにくい。
・燃料デブリは、下部プレナムに崩落した後、いったん冷却・凝固し、崩壊熱で再昇温した。再昇温の過程で、崩落したルースデブリ中に、局所的に溶融プールが形成された。
・溶融プールの化学状態は、U-Zr-Oメルトと(U,(Zr))O2固相の固液共存状態として理解できる。U-Zr-Oメルト相は、周囲を(U,(Zr))O2固相等のクラスト層で覆われるため、その内部は酸化されにくい。
・下部プレナムにいったん堆積したデブリは、崩壊熱で再溶融した。その際に、金属デブリが先に溶融した。
・U-Zr-Oメルトは凝固時に相分離する。
・粒子状デブリは、デブリ再溶融時に、かなり高温まで固体状態を維持した。
・一方で、酸化物デブリの一部は、亜酸化状態を維持した可能性があり、金属デブリに溶融する可能性がある。
・炉心下部の支持金具やCRGTは大きく破損、一部は未溶融のまま下部プレナムに堆積した。
・溶融金属デブリや破損・溶融した酸化物デブリは、下部プレナムの冷却水中に崩落し、いったん急冷・凝固した。
・冷却水との反応により、デブリの一部が、微粒子化・粉体化した。
・U-Zr-Oメルトと鋼材が接触すると、メルト中の酸素溶解度が急減し、UO2やZrO2の粉末が析出する可能性がある。
デブリの分類(2号機RPV底部)
2号機のRPV内部調査はまだ実施されていない。ミューオン調査では、炉心部に重金属がほとんど存在しておらず、RPV下部プレナム底部に重金属が堆積している観測結果が得られている。ミューオン調査結果に加えて、事故進展解析、およびPCV内部調査の結果から、2号機RPV底部の燃料デブリの分類は、以下のように推定されている。(図1:2号機の炉内状態推定図から抜粋)
しかし、内部の堆積状態(特に堆積物の形状)については、かなり不確かさが大きいことに注意が必要である。図1に示すデブリ分類は、TMI-2事故の最終形態の評価やシビアアクシデント事故進展の理解に基づいて、現状では、このような種類のデブリが存在しうるというレベルで推定したものである。
A) 切り株燃料集合体・・ 本来炉心があったあたりの外周下部に残留している可能性がある。# 切り株燃料集合体の存在が確認されているわけではないが、現時点でこれを否定する根拠もない。
B) 破損した金属部材・・ 崩落したCRGT(おそらく下部が大きく溶融・損傷)、炉心支持金具、炉心支持板、燃料集合体部材の一部(タイプレート、制御棒ブレードなど)が、一部は未溶融のままで、おそらく下部プレナム底部の堆積物の上の方に存在している可能性がある。堆積している金属部材の下の方は、溶融・凝固した金属デブリに溶融・固着している可能性が高い。
C) 金属デブリの再溶融/凝固物・・ SS/Zrを主成分とする合金がいったん溶融した後に凝固していると推定される。2号機では、下部プレナム崩落時点でのデブリ酸化度(Zr酸化度)が70-80%程度と予想されており、その再溶融時に、UやBが還元されて、金属デブリメルト中に溶融すると考えられる。溶解度は、デブリの到達温度に依存するが、およそ、Uについて数モル%~10数モル%、Bについても10モル%程度溶融する可能性がある。溶融・凝固時に、粒子状酸化物デブリ(破砕したペレットなど)や未溶融B4C粒子、制御棒やチャンネルボックスの共晶溶融で中間生成物として形成される金属間化合物などを巻き込んでいる可能性が高い。金属デブリメルトが酸化されると、U,Zrリッチな析出物が形成されると推定される。
D) 粒子状の酸化物デブリ(ルースデブリ)・・ 粒子状のデブリは、主に2つの形成メカニズムがあると考えられる。1つ目として、破損・溶融した燃料棒が崩落して炉心部でいったん堆積した際に隙間の多いルースデブリを形成し。その一部が、あまり再溶融せずに、下部プレナムに機械的に崩落した可能性が考えられる。2つ目として、炉心部で再溶融したデブリが下部プレナムの冷却水中に崩落した際に、燃料/冷却水反応により、一部が破砕された可能性が考えられる。前者は、残留ペレットや破砕された燃料棒などが主成分となる。後者は、いったん溶融する過程を経ているため、内部が均質化されていると推定される。
E) 酸化物デブリの再溶融/凝固物(多孔質デブリ)・・ ルースデブリの一部が再溶融・凝固し塊状を形成したものである。金属デブリメルトと接触・混合・成層化する可能性がある。化学的な物質再分布が発生する可能性がある。溶融・凝固時に多孔質になっている可能性が高い。凝固時に成分再分布する可能性がある。
F) スラリー状のデブリ・・ デブリの破砕などにより、1号機PCV底部で見られているようなスラリー状のデブリが2号機下部プレナムでも堆積していると推定される。
破損・堆積状態(2号機RPV底部)
RPV内部の状態については不確かさが大きいため、上で示したような分類のデブリが存在しているとすると、堆積物の上の方から、以下のような堆積状態になっている可能性が考えられる(図2)。今後のRPV内部調査により、理解を精緻化していく必要がある。
a) 切り株燃料集合体・・ 本来の炉心部の周辺下部に存在している可能性がある。その下には、おそらく、CRGTが残留している。# CRGTが一部倒壊している可能性や、CRGT内部にデブリが侵入している可能性も考えられる。切り株燃料ごと、下部プレナムに崩落しているようなこともありうる。
b) 破損した金属部材(CRGT、炉心支持板、炉心支持金具、燃料集合体部材など)・・ 崩落した金属部材は、堆積物の上の方では、本来形状を一部維持した未溶融の状態で堆積している可能性が考えられる。下の方では、酸化物のルースデブリや再溶融・凝固物、あるいは、金属デブリの再溶融・凝固物と一体となっている可能性が考えられる。本来、下部プレナム底部にあったCRDスタブチューブはデブリとの接触により溶融・消失し、CRDハウジング支持金具に着座、一部で、破損孔を形成している可能性が考えられる。
c) スラリー状のデブリ・・ RPV内の冷却水の水位によるが、下部プレナム堆積物の上の方にスラリー状や粉末状の物質が存在している可能性がある。
d) 粒子状の酸化物デブリ(ルースデブリ)・・ 破損した金属部材などと共に、堆積物の比較的上のほうに存在していると考えられる。スラリー状の堆積物と混在していると推定される。隙間が多いと考えられるが、堆積物の下の方では、金属デブリや多孔質デブリと固着している可能性がある。
e) 酸化物デブリの再溶融/凝固物(多孔質デブリ)・・ ルースデブリの下の方(内部)で形成されている可能性がある。金属デブリの再溶融・凝固物と固着・一体化、あるいは成層化している可能性がある。
f) 金属デブリの再溶融/凝固物・・ 下部プレナムにいったん堆積したデブリの中で、金属デブリが先行溶融すると、RPV底面に濡れ広がる可能性が考えられる。そこへのCRGTや炉心支持版の溶融量によって、金属メルトの物量が増えると推定される。金属デブリの相当量がペデスタル内に流出したと考えられるため、下部プレナム堆積物の内部(特に側面の大規模破損孔周辺)に空洞がある可能性がある。酸化物デブリの再溶融・凝固物と固着・一体化、あるいは成層化している可能性がある。
また、2号機下部プレナムでは、以下のような破損孔が形成されていると考えられる。破損孔近くでは、RPV鋼材とデブリが相互溶融したり、固着したりしている可能性がある。
g) 側面大規模破損孔・・ 下部プレナム堆積物が再昇温する際に、シュラウドサポートとスカートの間で、クリープ破損が累積する傾向が解析されており、上部タイプレートが通り抜ける程度の大規模破損孔が、下部ヘッド側面に形成されている可能性がある。(参考5:2号機下部プレナム堆積物の伝熱解析)
h) 底部局所破損孔・・ 金属デブリとCRDハウジング等の溶接部で発生する共晶溶融により、共晶反応生成物(合金層+化合物相、酸化物デブリ巻き込み?)が、CRD内に流入、あるいは、CRDハウジング外周部に付着すると推定される。(参考4:再溶融した金属デブリとRPV鋼材、溶接部の共晶溶融
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さらに、流出したデブリの一部は、RPV下に取り付けられている保温層の上に堆積している可能性がある。
i) RPVと保温層の間の堆積物・・ 金属デブリや燃料デブリが、ペデスタル内に崩落せずに、一部が残留・堆積している可能性がある。他方、CRD内部に流入したデブリによる、内側からのCRD破損はないと推定している。
#備考:2号機RPV堆積物のコアボーリングについて・・ 2号機では、RPV下部プレナム堆積物の深さ方向サンプルを、部分的にでも採集できれば、デブリ特性に大きく影響すると考えられる【下部プレナムでのデブリ再溶融状態】に関する知見を得ることができる。これにより、RPV底部堆積物の均質・非均質の程度や、ペデスタル内に移行したデブリの特性に関する知見も精緻化できると期待される。