「下部プレナムハードデブリサンプルの分析データ(VIPプロジェクト)」の版間の差分

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Kurata Masaki (トーク | 投稿記録)
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<span style="color:blue">'''<big>参考:[[OECD/NEA/CSNIでのデブリ分析]]</big>'''</span>
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'''<big>参考:コアボーリングサンプルの分析データ</big>'''
'''<big>参考:[[コアボーリングサンプルの分析データ]]</big>'''


'''<big>参考:下部プレナムルースデブリの分析データ</big>'''
'''<big>参考:[[下部プレナムデブリサンプルの分析データ|下部プレナムルースデブリサンプルの分析データ]]</big>'''


== 下部プレナムハードデブリサンプルの回収 ==
== 下部プレナムハードデブリサンプルの回収 ==

2025年12月11日 (木) 10:14時点における版

 VIP(Vessel Investigation Project)プロジェクトでは[1]、vesselサンプルの他に、下部プレナムハードデブリの一部が分取され、OECD/NEA/CSNIの枠組みで、各国・機関に輸送され、分析が行われた。ここでは、その分析結果の概要を示す。デブリ取り出しの後期になると、取り出し工法の検討や原子炉クリーンアップの目的で実デブリを詳細に分析する重要性はなくなってきている。一方で、下部プレナムに約19トンの溶融デブリが崩落したこと、下部プレナムからのデブリ取り出し過程で、下部ヘッド内面にホットスポットが見つかり、SSライナーにクラックがあることが観測されたこと、等から、原子炉安全評価の観点で、デブリ崩落後の圧力容器破損までのマージン解析と、下部プレナムでのデブリふるまいモデル開発のための知見取得の重要性が指摘された。これを背景として、NRCが主導し、VIPプロジェクトが立ち上がった。並行して、これまでに採集されていたデブリサンプル(コアボーリングサンプル、溶融凝固層破砕サンプル、等)についても、VIPプロジェクトは別の枠組みでの、OECD/NEA/CSNIでの国際協力で、詳細分析が行われ、圧力容器内のデブリふるまいの認識アップデートが行われた[2]。

参考:VIPプロジェクト

参考:OECD/NEA/CSNIでのデブリ分析

参考:コアボーリングサンプルの分析データ

参考:下部プレナムルースデブリサンプルの分析データ

下部プレナムハードデブリサンプルの回収

図1 下部プレナムのルースデブリとハードデブリの堆積状態 [2]
図2 回収された下部プレナムハードデブリサンプルの外観 [2]

 下部プレナムルースデブリがPick-and-Place工法やエアリフトで回収された後に、残留した下部プレナムハードデブリはスライドハンマーで打撃破砕された。図1に、下部プレナムでのルースデブリの堆積厚さ分布とルースデブリ回収後のハードデブリの堆積厚さ分布を示す[2]。破砕後の岩石状のデブリサンプルは、下部プレナムをおよそ四分割し、それぞれの四半領域の中央付近から回収された。したがって、回収されたサンプルが本来存在していた位置についての情報は失われている。また、北東四半領域では、微粒子デブリのみが残留していたため、岩石状デブリは回収されなかった。図2に、写真の画質が悪いが、回収されたハードデブリサンプルの外観を示す[3]。


下部プレナムハードデブリサンプルの分析の目的

 下部プレナムハードデブリをサンプリングする段階では、すでに、デブリ取り出や原子炉クリーンアップの観点では、詳細分析を行う理由は薄れていた。一方で、事故進展解析の観点では、その物理的、微細組織的、放射化学的特性を分析し、デブリと下部ヘッド内面との相互作用を解明することで、下部ヘッド破損とデブリふるまいモデルの開発に向けた知見取得が要請された。そこで、NRCが主導し、OECD/NEA/CSNIの枠組みを使って、サンプル採集と各国・機関への輸送と分析が行われた。

 非破壊分析としては、外観観察、写真撮影、重量測定、かさ密度とデブリ粒子密度の測定、空孔率測定、が行われた。破壊分析としては、金相観察、SEM/EDX、EPMA、ICP-AES、放射線分析、等が行われた。

 さらに、FP分析結果に基づいて、事故時の崩壊熱計算が行われた。主要成分とFPについて、INELで行われた下部プレナムルースデブリの分析結果と比較された。

 参加機関は、SCK・CEN(ベルギー、原子力研究センター)、STUK(フィンランド、放射線・原子力安全センター)、IRSN(フランス、放射線防護・原子力安全研究所)、CEA(フランス、原子力・代替エネルギー庁)、GRS(ドイツ、原子炉安全協会)、CNEN(イタリア、原子力および代替エネルギーの研究開発のための国家委員会)、JAERI(日本、日本原子力研究所)、CSN(スペイン、原子力安全委員会)、SKI(スウェーデン、原子力発電検査機関)、OFEN(スイス、連邦エネルギー庁)、AEA-T(英国、AEAテクノロジー社)、NRC(米国、原子力安全委員会)、EPRI(米国、電力研究所)であった。

VIPプロジェクト立ち上げまでの経緯

  • TMI-2事故では、スクラム後224分に、約19トンの溶融デブリが、短時間(2分間以内)で炉心部の溶融プールから下部プレナムに移行した。
  • 1985年に下部プレナムのビデオ調査[4]、1986年にコアボーリング調査[5]がそれぞれ実施された。前者の調査では、上部プレナム構造物撤去後に、容器槽と遮蔽体の間の円環状の隙間を使って、下部プレナム周辺部が調査された。同時に下部プレナムルースデブリサンプルが採集された。後者の調査では、炉心中央から中間領域にかけて、合計10本のボーリングが行われ、うち3本はLCSAを貫通し、下部プレナム中央部のビデオ調査が行われた。
  • 下部プレナム調査で採集された下部プレナムルースデブリの分析が行われた[6]。
  • さらに、1988~89年にかけて実施された下部プレナム構造物とデブリ取り出しの過程で、下部プレナム内のノズルが大きく損傷している領域(ホットスポット)があり、また、下部ヘッド内面ライナーの一部にクラックが形成されていることが観測された[4]。
  • 下部ヘッド破損状態の解明と解析モデル開発に向けた知見獲得を目的として、OECD/NEA/CSNIの枠組みを利用して、VIPプロジェクトが提案された[1]。
  • 1990年1月のデブリ取り出しと圧力容器内のクリーンアップ完了後に、工程を約3か月中断し、下部ヘッドサンプルが採集された[1]。
  • VIPプロジェクトの一環として、予め採集されていた、下部ヘッド上に付着・堆積していた下部プレナムハードデブリサンプルが、各国・機関に配布された[1]。

サンプル採集

 サンプル採集の詳細は、別項目に記載した。

 図1に示すように、ビデオ調査により、ルースデブリとハードデブリの堆積マップが作成された[3]。ハードデブリの堆積厚さは、5~45cm程度であった。最大厚さは、下部プレナム中央部のH9,H10,I9,I10集合体位置の下あたりであった。ハードデブリ層は、136kg重のスライドハンマーを約6.1m高さから落下させることで破砕された。破砕物は均質で、目視では金属相は観測されなかった。図2に示すように、およそ4領域からデブリサンプルが回収された[3]。破砕されたハードデブリサンプルから、代表的なデブリ粒子がクラムシェルツールで拾い上げられ収納缶に回収された。

 これらのサンプルは破砕後に回収されているため、必ずしも採集した位置の情報をそのまま持っているとは考えられないことに注意が必要である。

参考:VIPプロジェクト

非破壊分析の結果

重量、密度、外観

図3 代表的なデブリ粒子の外観 [2]

 表1に、4領域から採集されたサンプル重量とかさ密度を示す[2]。最も高密度のデブリ粒子は南東1/4領域から回収された。北西1/4領域からは、粉末状のデブリしか回収されていないため、これを除いてかさ密度を単純平均すると、8.7g/cm3と評価された。後述の化学分析では、これらの組成はほぼ類似しており、かさ密度の違いは主に空孔率によると考えられた。

表1 下部プレナムハードデブリの採集重量と平均かさ密度 [2]
採集場所 重量(g) かさ密度測定した

サンプル量(g)

かさ密度(g/cm3 サンプル番号
南東1/4領域 2436 51.81 9.4 1-9
北西1/4領域 0.50 0.50 6.9 1-10
南西1/4領域 1214 52.23 8.6 1-11
北東1/4領域 2700 47.16 8.2 1-12

 図3に、代表的なデブリ粒子の外観写真を示す[2]。岩石状であり、わずかに金属微粒子が含有されていた。全体的に薄い灰色であり、部分的に黄色の部分があった。なお、図中の1-9,1-11,1-12はこれらの粒子が採集された領域を示す。

 表2に、図3に示したデブリ粒子の重量と密度の測定結果を、かさ密度と比較して示す[2]。測定結果は、7.45~9.40g/cm3の範囲にあり、内部に空孔を有する(U,Zr)O2の密度と整合していた。#(U,Zr)O2の密度は、UO2とZrO2の理論密度から、組成の加重平均として評価されている。

表2 下部プレナムハードデブリのかさ密度と粒子密度 [2]
採集場所 粒子(群)重量(g) 密度(g/cm3
南東1/4領域 51.81、複数粒子 9.40
14.90、1-9-F粒子 7.45
12.10、1-9-G粒子 8.07
南西1/4領域 52.23、複数粒子 8.62
49.50、1-11-C粒子 8.39
76.40、1-11-D粒子 8.30
北東1/4領域 47.16、複数粒子 8.18
45.50、1-12-C粒子 9.29
15.20、1-12-D粒子 7.60

空孔率

図4 [2]

 デブリ粒子の密度は、空孔率に大きく影響されていた。空孔率は、図4に示す、粒子粒子切断面の金相写真から計測した[2]。表3に、評価結果をまとめて示す[2]。クラックや、他の研磨面に比べて色が薄く、空孔の一部(くぼみ)と考えられる領域もカウントされている。なお、切断面の例は、図3中に記載している。

 単純平均として、南東1/4領域(1-9)で20.8±7%、南西1/4領域(1-11)で18±14%、北東1/4領域で17±9%であった。しかし、いくつかのサンプルで極端に大きい値を示しており、単純平均はその値に影響されていることに注意する必要がある。全体平均は18±11%であった。

表3 デブリ粒子の空孔率 [2]
デブリ粒子ID 空孔率(%) デブリ粒子ID 空孔率
1-9-A 29.2 1-11-T 7.0
1-9-B1 10.8 1-11-T 5.7
1-9-B2 19.5 1-11-D-B 47.5
1-9-F 27.0 1-12 9.5
1-9-G 17.3 1-12 19.8
1-11-C 7.6 1-12 22.0
1-11-D-A 20.5 1-12-C 5.7
1-11-L 21.0 1-12-D 31.7

破壊分析の結果

図5 下部プレナムハードデブリの断面金相拡大(1-9-A粒子)[2]

 11個のデブリ粒子を、破壊分析用に抽出した。

  • 南東1/4領域(1-9)は、溶融デブリが最初に崩落したと推定される領域であり、1-9-A、1-9-B、1-9-C、1-9-F、1-9-Gの5個が抽出された。
  • 南西1/4領域(1-11)は、ホットスポットが形成され、下部ヘッドにクラックが観測された領域であり、1-11、1-11-C、1-11-Dの3個が抽出された。
  • 北東1/4領域(1-12)は、壁状のデブリ堆積面(おそらく、デブリ広がりの終点)が観測された領域であり、1-12、1-12-C、1-12-Dの3個が抽出された。

微細組織分析(全体的な傾向)

  • 上述のサンプルのうち、1-9-Bは取り扱い中にサンプルが分割し、1-9-B1、1-9-B2とナンバリングされた。
  • 1-11は、軸方向と径方向でそれぞれ切断され、1-11-L、1-11-Tとナンバリングされた。
  • 1-11-Dは、取り扱い中に分割し、1-11-D-Aと1-11-D-Bとナンバリングされた。
  • 図4に、これらの金相断面を示す[2]。上述したように、これらの断面から空孔率が計測された。
  • 多くのデブリ粒子で、縞模様の構造が見られ、空孔が連結していた。図5に、代表的な金相拡大写真を示す[2]。
  • 一方で、丸く、孤立している空孔も観測された。
  • 空孔の形成メカニズムとして、水蒸気の取り込み、構造材金属の蒸気によるバブリングが原因と推定された。
  • 全てのデブリ粒子で、基本組織は、均質な(U,Zr)O2であった。
  • 溶融金属の液滴状の析出物は、1-11-L、1-11-T、1-11-D-Aだけで検出された。

微細組織分析(特徴的な領域)

  • 空孔はサイズによって成層化しており、大きな空孔の周囲に微細空孔が存在し、また、バルクの(U,Zr)O2が相分離している領域に多く存在していた。図6に、マトリクス相が(U,Zr)O2からなる領域の拡大金相写真の例を示す[2]。図7に、比較的平滑な単相領域とまだら状の相分離領域からなる領域の拡大金相写真の例を示す[2]。この2つの領域は、下部プレナムハードデブリ全体で観測された。
  • これらの観察結果は、デブリの一部が急冷され、別の一部は徐冷されたことのエビデンスとされた。
  • 別のデブリ粒子中には、金属の析出粒子が観測された。金属粒子は、空孔の近くにみられることが多く、後述のSEM/EDX分析では、AgやSnを主成分とする粒子が同定された。図8,9に、典型的な金属粒子の析出状態を示す[2]。
図10 1-9-A粒子のSEM像、BSM像 [2]

SEM/EDX分析、WDX分析

 1-9-A、1-9-B、1-11-T粒子について、詳細SEM分析、EDX分析、WDX分析が行われた。

  • 図10に、1-9-A粒子の断面SEM像と、拡大した領域の組成像(BSI)を示す[2]。金相観察と同様に、稠密な単相領域とまだらな相分離領域が観察された。
  • 単相領域は、(U,Zr)O2からなっていた。おそらく立方晶と考えられる。
  • 相分離領域は、比較的空孔が多く、Uリッチ相とZrリッチ相からなっていた。組成の違いは、BSIの濃淡に反映されている。
  • WDX面分析は、対象領域について、U,Zr,Ag,Al,Cd,Cr,Fe,In,Mg,Mn,Mo,Nb,Ni,Sn,Oについて行われた。
  • 全体的な傾向として、単相領域は、ほぼ(U,Zr)O2で構成されており、それ以外の元素はほとんど同定されなかった。
  • Fe,Cr等を主成分とする第二相(おそらくスピネル相)が、空孔の周辺や、結晶粒界に、多く観察された。
  • 初晶と、第二相の融点の違いにより、スラリー状の状態がある程度の時間保持されたと推定された。

 WDX分析の結果については、1-11-T粒子についての分析結果を示す(図11)[2]。

  • 上述したように、1-11-T粒子では、金属析出物が観測された。そこで、研磨断面で、観察された金属析出物や空孔の周辺について、WDX面分析を実施した。
  • ROI#1、ボイドの内表面にライナー状の析出層が観測された。ライナー層中には、Al,Mgがやや多く観測された。おそらく、Cs等の揮発性物質が付着していると推定される。マトリックス側では、UとZrがほぼ同伴しており、(U,Zr)O2立方晶を形成していたと推定された。一方で、Fe,Crは別相を形成しており、スピネル相と推定された。
  • ROI#2、空孔内にAgを主成分とする金属相が析出していた。その周囲では、セラミックマトリクスがUリッチ相とZrリッチ相に相分離し、さらに、Fe,Crを含むスピネル相が析出していた。
  • ROI#3、空孔周辺にFe,Cr酸化物が濃化している様子が確認された。また、Sn金属粒子が検出された。
  • ROI#4、同様に空孔周辺にFe,Cr酸化物の濃化が観測された。Alが同伴していた。
  • ROI#5、上述と類似した観測結果が得られた。

化学・放射化学分析

参考文献

[1] A.M. Rubin, Overview and Organization of Three Mile Island Unit 2 Vessel Investigation Project, 1994.

[2] D.W. Akers et al., TMI-2 Examination Results from the OECD-CSNI Program, vol. 1 and 2, EGG-OECD-9168, 1992.

[3] D.W. Akers et al., Examination of Relocated Fuel Debris Adjacent to the Lower Head of the TMI-2 Reactor Vessel, NUREG/CR-6195, 1994.

[4] J.P. Adams et al., TMI-2 Lower Plenum Video Data Summary, EGG-TMI-7429, 1987.

[5] E. Tolman et al., TMI-2 Core Bore Acquisition Summary Report, EGG-TMI-7385, 1987.

[6] C.S. Olsen et al., Examination of Debris from the Lower Head of the TMI-2 Reactor, GEND-INF-084, 1988.