2号機の事故進展

提供: debrisWiki
ナビゲーションに移動 検索に移動


事故進展の概要図

図2.1: 2号機事故進展

原子炉スクラム〜炉心損傷

図2.1に,2号機における事故進展推定シナリオを示す。2号機では,炉心溶融・ペデスタルへの炉心物質移行は,3/14 18:00頃のSRV弁開によるRPV減圧以降,3/15 16:00頃までに起こったと推定される。14 日 18:00頃のSRV開によるRPV減圧によって短時間で水位はBAF以下となったと考えられる。減圧後数時間にわたって炉心は低圧で水蒸気が供給されにくい状態になっており,この条件下で炉心燃料は崩壊熱で昇温していったと考えられる。3/14 20:30頃からはRPV圧力が上昇しているが、この圧力上昇は主に水素発生によるものと推定され、この段階で炉心が溶融していた可能性がある。

炉心損傷〜燃料デブリの下部プレナム移行

3/14 18:00頃のSRV開による減圧後,3回のRPV 圧力上昇が見られるが,第1圧力ピークは,崩壊熱で高温化しつつある炉心に何らかの作用によって蒸気が供給され,Zry-水蒸気反応によって水素が発生しているものと考えられる。炉心への蒸気供給メカニズムとしては、注水によって下部プレナム水位がBAFまで上昇した場合と、水位がBAF以下で制御棒などの金属系材料の溶融・崩落によって下部プレナムで蒸気が発生した場合の2つが考えられる。第1圧力ピークの上昇は飽和する傾向が見られているが、前者のメカニズムは圧力上昇による注水低下によってこの傾向を説明しやすい点は特記される。第1圧力ピークの時点では,制御ブレードやチャンネルボックスなどの金属系物質は溶融していたと考えられる[1]が,このような溶融金属が下部プレナムに向かってどの程度まで落下していたのかが炉心への蒸気供給の観点で重要になる。溶融した金属の大部分は,炉心下部もしくは炉心支持板付近で固化していた可能性が高く,下部プレナムまで落下したものはあまり多くないと考えられる。燃料棒については,燃料ペレットと被覆管の界面で初期の溶融が始まり,U-Zr-Oメルトの形成が始まったと予測される。21:00頃正門付近で中性子が検出されている。中性子がどのようなメカニズムで放出されたのかは明確ではないが,3号機の炉心損傷が開始したと思われる時間帯にも中性子が観測されており,注目に値する。21:20頃の減圧後から,22:40頃の水位の挙動には不確かさが大きいが,RPV圧,D/W圧共に大きな変化が見られないことから,大規模な反応は起こっていないと考えられる。第2圧力ピークでは,初期にRPV圧が短時間で2 MPa程度まで上昇し,その後連続的に3.3 MPaまで上昇している。これは,RPV内で初期に蒸気や水素ガスが大量に発生し,その後も継続して発生していることを示している。この時間には,燃料のスランピングあるいは炉心での燃料と冷却水との混合が起こったものと推定される。このような燃料と冷却材の混合に至るまでの経過時間が比較的短い2号機では燃料溶融プールの生成は限定的であったと考えられ,22:40頃の冷却材との混合発生後は炉心燃料の断続的な崩落がRPV圧の継続した上昇を生じさせていた可能性がある。D/W圧はRPV圧力がピークになる頃には0.7 MPaに近づいており,第2圧力ピークの終わりごろからはPCVトップフランジからのリークが顕著になっていたと考えられる。第3圧力ピークは蒸気や水素の発生は連続的であった場合でもSRVが閉じたことで説明が可能である。3/15 2:20頃にRPV圧の微増が見られるが,これは炉心燃料と冷却材の新たな混合を示唆する。この時刻までの圧力履歴を勘案すると,2:20頃のイベントは炉心から下部プレナムへの最終スランピングであった可能性がある。なお,この時刻以降D/W CAMS(Containment Atmosphere Monitoring System)の信号増加が大きくなっており,RPVからD/Wへの直接漏洩が増えていたものと考えられる。2:20頃のスランピングによってRPV内で発生した高温のガス(下部プレナムで発生した蒸気が高温化した炉心残留物に加熱されて高温の過熱蒸気となる)がSRVに流れたとすると主蒸気配管とSRVハウジングの連結部のシール機能が低下し,D/Wへの漏洩が増加した可能性がある。

燃料デブリの下部プレナム移行〜RPV破損

3/15 4:10過ぎにはRPV圧力が低下しており,RPV内での蒸気発生が低下していると考えられる。これは下部プレナム内での液相水の枯渇によって蒸気発生量が低下している可能性がある。2号機では前述のように燃料溶融プールの形成が限定的であったと考えられることから,下部プレナムに移行した燃料デブリは粒子状の可能性が高い。この場合,下部プレナムのデブリが昇温する過程で,金属成分が溶融し,固相の粒子状酸化物燃料の隙間を埋めた金属の溶融プールが形成された可能性がある(最高温度:1400~1500°C)。このような金属溶融プールの対流熱伝達が顕著な場合,下部ヘッド側部への熱流束が大きくなり,この部分でRPV破損を生じた可能性がある。

RPV破損以降

下部プレナムからペデスタルへの移行は,溶融金属あるいはU-Zr-Oのような比較的融点の低い溶融物が主体であった可能性が高い。このような炉心物質のペデスタルへの移行は数時間程度の時間帯の中で起こっており,酸化物系デブリの多くはRPV内部に残留した可能性がある。RPV中応募近くのCRD下端にはデブリと思われる付着物が見られ,この部分を通じて若干量のデブリが放出された可能性がある。この位置の直下のプラットフォーム,及びその下の中間架台のグレーチングは脱落しているが,中間架台については隣接部のグレーチング(直上のプラットフォームのグレーチングは残留)も脱落している。また,プラットフォームに残留しているグレーチング上の堆積物の状況なども勘案すると,流出デブリはスティール融点程度以下の温度で,粘性の大きな流体であったことが推定される。このように流出デブリ温度はあまり高くなかったと思われることや,流出量も少ないことから、MCCIはほとんど起きていないと考えられる。

事故後の状態および内部調査結果

※最終状態のまとめと、推定図および内部調査結果の比較等を記載

参考文献

  1. H.Madokoro and I.Sato (2020), Estimation of the core degradation and relocation at the Fukushima Daiichi Nuclear Power Station Unit 2 based on RELAP/SCDAPSIM analysis, Nuclear Engineering and Design (under review)