Nucl.Technol.誌のTMI-2特集号の概要

提供:debrisWiki
2025年7月15日 (火) 18:01時点におけるKurata Masaki (トーク | 投稿記録)による版 (→‎デブリふるまい解析)
ナビゲーションに移動 検索に移動

 TMI-2の内部調査とサンプル分析で得られた成果は、Nucl. Technol.誌の1989年特別号でまとめられている。本項目では、その概要を紹介する。

規制、事故対応、環境影響、公衆影響

After Three Mile Island Unit 2 - A Decade of Change

E.E. Kintner, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 21-22.

 事故発生以降、約10年間のGPU Nuclear社の対応について概説されている。

Three Mile Island - The Political Legacy

R.T. Kennedy, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 23-26.

 事故時、および、廃炉に向けた政府の対応が時系列として整理されている。

Regulatory Impact of the Three Mile Island Unit 2 Accident

J.F. Aheame, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 27-33.

 TMI-2事故により、米国の原子力規制委員会(NRC)、産業界、電力会社、政府は、大きな影響を受けた。NRCの受けた影響は、産業界と規制機関の関係を再構築することであった。TMI-2事故以前は、技術的な専門性に基づく良好な情報交換であったが、事故以降は、むしろ対立する関係になり、距離を置き、法律によって支配される関係となった。

Three Mile Island Unit 2: Plant Recovery

F.R. Standerfer, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 54-56.

 TMI-2現場での、復旧作業の概要が示されている。

インベントリ評価

Three Mile Island Unit 2 Fission Product Inventory Estimate

D.W. Akers et al., Nucl. Technol. 87(1) (1989) 205-213.

 1988年に実施された、事故後のFP核種のインベントリと分布についての検討結果がとりまとめられた。ベストエスティメートインベントリが、Kr-85、Cs-137、I-129、Sb-125、Sr-90、Ru-106、Ce-144について評価された。このインベントリ評価では、原子炉建屋内での滞留や、環境放出予測も含められた。核種の捕捉率は、Ce-144が105%、Sr-90が90%、Cs-137が95%、Kr-85が91%となった。放射性I-129の捕捉率はCs-137と同程度と評価された。Cs,I,および希ガスの滞留の多くは、原子炉建屋内であり、そのほか核種についてはRPV内であった。

Core Materials Inventory and Behavior

D.W. Akers and R.K. McCardell, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 214-223.

 TMI-2の圧力容器(RPV)内サンプルの分析結果と、そこから予想される事故時のふるまいをとりまとめた。TMI-2のCore Material Examination計画に基づいて[1]、RPV内から採集されたすべてのサンプルが分析された(上部プレナムのリードスクリューサンプルから、事故時に下部プレナムに移行した溶融凝固デブリサンプルまで)。これらの分析結果により、炉心物質の>99%はRPV内に保持されていたが、RPV内の配置や体積は大きく変化していたことが確認された。また、分析結果は、金属物質と酸化物との熱力学的な特性におよそ基づいて、物質再分布が起きていたことを示した。

サンプル分析

Metallurgical Reactions Involving Ag-In-Cd Control Rod Assemblies(炉心中央の切り株燃料集合体中の制御棒の分析)

Y.Y. Liu et al., Nucl. Technol. 87(1) (1989) 95-103.

 炉心中央(N12位置)の切り株燃料集合体から採集された、制御棒とZry案内管の3個のサンプルがANLで分析された(炉心下端から5cm~52cmの部分)。微細組織と局所的な化学反応が、炉心の高さ方向の位置との関係として同定された。炉心下端からの距離47cmから52cmの間で、微細組織が、Ag-In-Cdメルトのキャンドリング(SS成分を含まない)とSS被覆管とZryの固相反応から、制御棒がほぼそのまま無傷で残留し、Zry案内管がβ相に総変態する状態に変化していた。このような組織変化は、事故時の温度評価のマーカーに利用できる。

Examination of Three Mile Island Unit 2 Core Materials at CEA

J. Duco and M. Trotabas, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 104-119.

 OECD/NEA/CSNIのTMI-2事故タスクグループの活動の一環として、CEAでは5個のサンプルを分析した(炉心外周部L1から採集された破損燃料棒、C7位置の上部格子からぶらさがっていた破損燃料棒、炉心中央の溶融凝固層の3サンプル)。

 分析手法は、外観観察、浸出法での密度測定、金相観察、SEM/EDX、XRD、熱重量分析、γ線分光分析、中性子活性化分析であった。分析結果から、事故時の局所的な最高温度の評価、C7位置での炉心物質間の反応進展メカニズム、FPと制御材のふるまい推定が行われた。微量なサンプルの分析結果ではあったが、他の機関の分析結果と合わせることで、包括的なデータベースとして整備され、事故シナリオの理解に活用された。

Metallurgical Examination of Bore Samples from the Three Mile Island Unit 2 Reactor Core

P.D. Bottomley and M. Coquerelle, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 120-136.

 TMI-2のAccident Evaluation Programの一環として、溶融凝固層のボーリングサンプルの分析が行われた。サンプルは、燃料棒、制御棒、溶融デブリ、粉末状のデブリ、を含んでいた。

 SEM/EDXとEPMAにより、サンプルの表面と断面の微細組織が分析された。γ線分光とFP放出試験も実施された。

 G12ボーリングサンプルから得られた溶融凝固物中には、ほぼポーラスな、UとZrの二酸化物を主成分とするセラミック相を主成分とし、微小なUO2リッチとZrO2リッチの共晶組織、および、構造材の酸化物が観察された。サンプル内で、空孔と構造材酸化物の分布は変化していたが、UO2とZrO2の共晶組織は共通していた。

 FP分析では、Cs-137、Ru-106、Eu-154などが、照射後燃料より小さい割合で検出された。揮発性のI-129は検出されなかった。それ以外の核種は、デブリ中にある程度保持されていた。

 Zr(O)-UO2系の共晶反応、および、ZrO2-UO2系の共晶反応については(事故時の酸素ポテンシャルに依存すると考えられる)、状態図から、それぞれの共晶溶融温度が2173 Kと2873 Kであえい、事故時にこの温度まで到達していたことが示唆された。また、完全に溶融した領域については、UO2融点の3073 Kまで到達していたと示唆された。一方で、完全に溶融していない凝集物相(agglomerate)については、ピーク温度が約1673K程度、あるいはSS構造材の融点程度であると示唆された。残留していた切り株状の燃料棒については、ほとんど形状変化は見られず、温度上昇がほとんどなかったと推定された。

Analysis of Crystalline Phases in Core Bore Materials from Three Mile Island Unit 2

A. Brown et al., Nucl. Technol. 87(1) (1989) 137-145.

 溶融凝固層、下部クラスト、下部プレナムデブリの3個のサンプルが、XRDで分析された。さらに、γ線分光分析とPIXE(Particle-Induced X-ray Emission)でも分析が行われた。

 分析結果から、主要相として、(a) UO2リッチの非均質な溶融凝固相(おそらく、ZrO2を含有し、酸化度は若干superstoichiometric)、(b) ZrO2リッチのBaddeleyite相(1200K以下での安定相)とtetragonal-ZrO2相(1200~1600Kの安定相)、(c) Ni,Cr,FeのSpinel相[(Ni,Fe)(Fe,Cr)2O4]が同定された。格子定数測定からは、ZrO2相中にUO2が固溶していることと、Spinel相中のCr,Fe部位にAlが混入していることが推定された。PIXEの測定値からは、Spinel中のNi含有率が小さいことが示された。

 これらの相のサンプル中の分布が、XRDの強度分布から評価され、UO2-ZrO2状態図からの推定と比較された。下部プレナムから採集されたサンプルは、明らかに急冷過程で形成されていた。下部クラストサンプルでは、状態図中の平衡相が同定され、徐冷により形成されたと推定された。溶融凝固層は、中間的な傾向をもっており、一面で冷却され、多面で加熱されたような状態が観測された。

Three Mile Island Unit 2 B-Loop Steam Generator Tubesheet Loose Debris Examination and Analysis

G.O. Hayner and T.L. Hardt, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 191-196.

 B系蒸気発生器の上部チューブシートから回収されたデブリサンプルの分析結果がまとめられている。ルースで粒子状のデブリサンプルについて、スクラム後174分から192分に発生したB系冷却水ポンプの再稼働イベントの際に、炉心部から輸送された物質であると推定されていた。5つのサイズ群に分類され、大きな粒子10個について、化学/放射化学分析、微細組織観察、SEM/EDX分析が行われた。非破壊分析としては、外観写真撮影、密度測定が行われた。分析結果により、B系ポンプ再稼働イベント時点でのRPV内の状態が推定された。

Fission Product and Core Materials Distribution Outside the Three Mile Island Unit 2 Reactor Vessel

C.V. McIsaac et al, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 224-233.

 原子炉建屋と補助建屋から採集されたサンプルについて、放射化学分析、元素分析、粒子サイズ分析が行われた。事故後数日経過時点での、ヨウ素混入飛散微粒子(おそらく有機物)の分析から、原子炉建屋内に放出された炉心物質は0.03%以下であると評価された。ヨウ素は事故進展中に冷却水中に溶解され、炉心インベントリ中の約14%が原子炉建屋地階の滞留水中に移行したと評価された。ヨウ素の8~100%は、原子炉建屋地階の汚泥中に存在していた。セシウムの約47%は、炉心から外部に放出された。その大部分は、原子炉建屋地階の滞留水中に移行した。アンチモンとルテニウムは、ほとんどが圧力容器内で、おそらく構造材に吸着して保持されていた。ストロンチウムとセリウムは、酸化物デブリ中に保持されていた。Reactor Coolant Drain Tank中では、燃料成分と制御材成分が検出された。これらはハイドロゾルとして炉心部から輸送されたと推定された。

事故シナリオ、ベンチマーク解析

A Scenario of the Three Mile Island Unit 2 Accident

J.M. Broughton et al., , Nucl. Technol., 87(1) (1989) 34-53.

 TMI-2のAccident Evaluation Program [2]の目的は、TMI-2事故の包括的で矛盾のないTMI-2事故の理解であった。このプログラムでとりまとめられたTMI-2事故シナリオを示す。(a) 炉心損傷の進展により、一部溶融物を含む堆積層が形成され、(b) この堆積層内での温度上昇により、溶融デブリプールが形成され、(c) 溶融デブリプールを支えていたクラスト層の破損により、溶融デブリの一部(15~20トン)がUCSAとLCSAに侵入し、さらに下部プレナムに移行し、(d) 下部プレナムでの溶融デブリと冷却水および構造物との相互作用により、デブリが凝固した。事故進展中のFP放出傾向についてもとりまとめられた。

The Three Mile Island Analysis Exercise

D.F. Giessing, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 298-301.

 TMI-2事故は、当時、世界で唯一の実機規模でのシビアアクシデントの検証の場であった。事故を契機として、世界各国で、事故の理解の精緻化や解析ツール開発が行われた。事故進展を理解するためのデータは、事故のリカバリーとクリーンアップの過程で採集された。同時に、シビアアクシデント解析コードについて、その解析結果を実機データと比較することで開発がすすめられた(ベンチマーク解析)[3]。1987年10月から開始されたOECD/NEA/CSNIでの解析プロジェクトは、1990年初旬までにおよそ完了した。9か国を代表する13機関によって、ベンチマーク解析が行われた。この経験により、シビアアクシデント解析手法に関する共通認識が醸成された。

Modeling of the Three Mile Island Unit 2 Accident with MELPROG/TRAC and Calculation Results for Phases 1 and 2

F.E. Motley and R.P. Jenks, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 302-309.

 TMI-2事故解析に利用する、MELPROG/TRACコードのための解析モデルの開発が行われた。TMI-2事故解析用の解析モデルの概要と、スクラム後174分までの解析結果をとりまとめる。TMI-2ベンチマーク解析プロジェクト[3]で推奨された境界条件を用いることで、加圧器からの排水と燃料損傷前の炉心の水没状況について、妥当な解析結果が得られた。感度解析により、冷却水のmaekupフィルターへの流量を減少させることで、より、実プラントの状況と整合する解析結果が得られた。現在、事故のPhase-3(スクラム後174~227分)、Phase-4(スクラム後227~300分)の解析を実施中である。

MARCH Calculations Performed for the Three Mile Island Unit 2 Analysis Exercise

R.O. Wooton, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 310-325.

 MARCHコードのSTCPバージョンにより、TMI-2事故のベンチマーク解析が行われた。TNI-2事故のより適切な解析のためには、様々なコードでモデルの改良が必要であり、MARCHコードについて、その概要が示された。改良されたMARCHコードにより、多くの重要イベントが再現された(炉心加熱のタイミング、溶融デブリと被覆管の反応進展、一次系圧力、原子炉建屋への水素放出)。水素放出イベントについては、スクラム後10時間で水素燃焼が起きている。

Summary of the Three Mile Island Unit 2 Analysis Exercise

D.W. Golden et al., Nucl. Technol. 87(1) (1989) 326-333.

 OECD/NEA/CSNIでのTMI-2事故解析プロジェクト(米国DOEとの共同プロジェクトによるベンチマーク解析)の概要が紹介された。参加機関はそれぞれの有する最新のシビアアクシデント解析コードを用いて、TMI-2事故解析を実施した。定性的には解析結果はほぼ類似した傾向を示したが、定量的には大きく異なった結果が得られた。シビアアクシデント解析コードの開発継続の必要性が明らかになった。

デブリふるまい解析

Summary - Three Mile Island Unit 2; Materials Behavior

D.E. Owen, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 19-20.

 TMI-2事故の分析により、炉心物質の高温反応、FPふるまい、解析モデルの整備、がすすめられたことを、イントロダクションとして紹介している。

Materials Interactions and Temperatures in the Three Mile Island Unit 2 Core

C.S. Olsen et al., Nucl. Technol. 87(1) (1989) 57-94.

 炉心部の様々な領域から採集されたデブリサンプルの分析が、炉心物質相互の反応や冷却水との反応を調べ、事故時ピーク温度評価とデブリふるまいの推定のために、行われた。事故時ピーク温度の推定は、炉心損傷進展とFPふるまいに影響する重要因子である。ピーク温度の推定は、サンプルの微細組織の観察結果を状態図と比較することでおこなわれた。微細組織の分析は、金相、SEM/EDX、EPMA、オージェ走査電顕で行われた。

 炉心構成成分間の相互作用は極めて複雑で、Zry被覆管とUO2ペレット反応だけではなく、制御棒とインコネルスペーサーグリッドの反応など、多くの相互作用を含んでいた。これらの複雑系の理解の基礎となる状態図は、いくつかの系については報告例がなかった。また、物質移送による効果も考慮する必要があった。

 現状、シビアアクシデント解析コードに組み込まれているデブリの溶融進展モデルは単純化されており、このような高温での物質移動に関する複雑な現象をより適切に推定できるように改良する必要がある。

Reactor Core Materials Interactions at Very High Temperature

P. Hoffman et al., Nucl. Technol. 87(1) (1989) 146-186.

 軽水炉のシビアアクシデントで起こりうる、燃料バンドル内での化学反応についてまとめる。成分としては、UO2燃料、ジルカロイ被覆管、Ag-In-Cd、Al2O3-B4C、SS、インコネル、などが含まれ、温度は数100℃からデブリの溶融温度までが対象となる。重要な化学反応の速度論(kinetics)と、その結果として現れる相状態についてもまとめる。ほとんどの系で、反応相の融点は、本来の構成成分の融点より低くなる傾向がある。その結果として、各成分液相化による移動が融点以下で発生する。炉心溶融進展については、3つの特徴的な温度範囲が存在している。基本形はU-Zr-Oであり、重点的に研究された。そこへの鋼材系成分の混入についても言及されている。これらの検討結果は、PWR体系についてのものであることに注意が必要である。

Fuel Relocation Mechanisms Based on Microstructures of Debris

R.V. Strain et al, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 187-190.

 下部プレナムから採集されたデブリの微細組織と化学状態の詳細な分析が行われた。マトリックスは、UO2とZrO2からなるセラミックスの溶融凝固物を主成分としており、一部にFe,Cr,Ni,Alの酸化物が第2相として存在していた。

 その組織は、急冷固化された溶融物に典型的なものであり、丸い形状の結晶粒と比較的大きな結晶粒界からなっていた。析出する初晶は、酸化物メルトから急冷されたUO2-ZrO2の二酸化物固溶相であった。しかし、この析出相は、2相に相分離する傾向が見られ、一部の領域では、完全に2相分離していた。このような領域では、固相変態が起こるのに十分なある程度ゆっくりした冷却速度であったと推定された。いくつかのサンプルでは、広い範囲で結晶粒界相が形成されており、その内部に共晶組織が観測された。この共晶組織のマトリックス相は、Fe-Cr系酸化物であり、AlとNi酸化物をわずかに含んでいた。この相は、UO2-ZrO2の析出相周囲の結晶粒界にも見られた。

 この結晶粒界相のsolidusはおよそ1600Kと推定され、初晶の融点(およそ2823K)と比較すると、初晶が析出した後に、しばらく液相として存在していたと推定された。このことから、初晶が析出した後もしばらくの間、デブリは、下部プレナムで砂のようにゆっくり移動していた可能性が考えられる。その温度は、おそらく、SS構造材の融点(1673K)より低い。このような砂状物質は、下部ヘッドを溶融損傷しにくかった可能性がある。

Thermal Interaction of Core Melt Debris with Three Mile Island Unit 2 Vessel Components

A.W. Cronenberg and E.L. Tolman, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 273-282.

 RPV内の構造物と溶融デブリとの熱的な相互作用の解析結果は有用である。構造物の損傷状態の観測結果と、それを引き起こした物理現象の理解についての検討結果がまとめられた。特に、炉心周辺を取り囲んでいるバッフルプレート、コアフォーマプレート、下部ヘッドのインコアモニター貫通部、下部ヘッドの熱損傷解析が行われた。解析結果から、これらの構造物の損傷状態の特徴の違いは、主に、溶融デブリとの接触時間と構造物の熱容量と冷却水との接触に影響されることが示された。VIP計画[4]によるサンプル分析データは、本研究による解析結果の精緻化に貢献すると期待される。

Thermal Behavior of Molten Corium during the Three Mile Island Unit 2 Core Relocation Event

J.L. Anderson and J.J. Sienicki, , Nucl. Technol. 87(1) (1989) 283-293.

 TMI-2の事故進展中に、炉心部に溶融デブリプール周辺クラスト層が形成された。スクラム後224分に、クラスト層が破損し、約19トンの溶融デブリが、RPV東側の燃料集合体とその外側のコアフォーマ領域を通過して、下部プレナムに移行した。ここでは、加熱状態と溶融デブリとUCSA構造物の急激な相互作用の解析結果がまとめられている。

Just How much Water is Required to Cool a Molten Core?

S. Langer, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 294-297.

 古典的なシビアアクシデント研究では、炉心溶融によりRPVが破損し、最終的には格納容器が破損して核分裂生成物が環境に放出される、という前提があった。この仮定は、TMI-2事故によってくつがえされた。TMI-2事故では、炉心のおよそ50%が溶融したにもかかわらず、環境へのFP放出は、希ガスであっても5%以下であった。TMI-2では、事故終息時点において、RPV内に液相水が残留していたことが重要である。本研究では、デブリの冷却に必要な冷却水の条件が計算された。得られた知見は、将来のアクシデントマネージメントにも利用できると期待される。とにかく、冷却水を供給し続けることが重要であることが強調されている。

FPふるまい評価

Fission Product Release Pathways in Three Mile Island Unit 2

S. Langer et al., Nucl Technol. 87(1) (1989) 196-204.

 TMI-2事故でのFP放出は小規模で抑制され、その主成分は希ガス(ほぼ全量)とI-131の一部(15Ci)であった。ヨウ素の放出が大きく抑制されたのは、炉心部からセシウムの52%とヨウ素の40%が放出されたことを考慮すると、驚くべきことであった。FP放出は、スクラム後約138分に、燃料棒が大きく破損することで発生したと推定される。環境へのFP移行経路は、補助建屋に設置されていた冷却水浄化系(Letdown/makeup系)から、補助建屋内への漏洩と考えられている。希ガス(約40-50%)、セシウム、ヨウ素の一部は、原子炉建屋内に放出されたが、その内部で約1年間以上保持された。希ガスは、制御された条件で環境放出された、セシウムやヨウ素は、建屋地階の滞留水や汚泥に多く存在しており、少しずつ除染された。

Consideration of Cesium and Iodine Chemistry and Transport Behavior during the Three Mile Island Unit 2 Accident

A.W. Cronenberg and S. Langer, , Nucl. Technol. 87(1) (1989) 234-242.

 TMI-2事故の解析から、プラント外へのCs-137とI-129の放出は、ごくわずかであったことが解明されている(数10Ci以下)。このような限定的な放出となった要因となる物理化学的なメカニズムを調査するために、TMI-2事故途中でのCsとIの化学形と移行の詳細解析が行われた。解析結果から、CsとIの燃料からの放出化学形は、高温での水蒸気/水素との反応で形成されるCsIとCsOHのガス相であることが示された。さらに、CsOHについては、上部プレナムやホットレグ配管での凝集と化学吸着が起こると推定された。CsOHが除かれると、ガス相中での水蒸気、CsI、CsOH、HIなどの平衡状態が変化し、CsIが相対的に不安定化してCsOHに変化し、あわせてHIが形成されると推定された。同様に、CsIがホウ酸水と反応すると、CsIがホウ酸化セシウムとHIに変化すると推定された。これらにより、CsI、HI、CsOHの混合物が、RPVから一次冷却水系への移行におけるCsとIの化学形態と推定された。これらは水溶性であり、冷却水中にCsやIが保持される要因となったと推定された。

Fission Product Partitioning in Core Materials

D.W. Akers and R.K. McCardell, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 264-272.

 RPV内での燃料物質からのFP分離と放出の傾向と、そこから予想されるFP化学についてとりまとめられた。TMI-2のCore Material Examination計画に基づいて、RPV内から採集されたすべてのサンプルが分析された(上部プレナムのリードスクリューサンプルから、事故時に下部プレナムに移行した溶融凝固デブリサンプルまで)。これらの分析結果により、FPふるまいの相違は、FP核種の揮発性と化学的な特性に依存することが確認された。Ce-144のような低揮発性FPは、燃料物質のマトリックス中にほぼ保持され、一方で、Sb-125のような酸化されにくい中揮発性FPは、金属構造材との同伴性が確認された。高揮発性FPのCs-137とI-129は、多くが溶融凝固デブリから放出されたが、放出割合は単純な予測より小さかった。これらの高揮発性FPは、デブリの結晶粒界に存在していた構造材酸化物の第2相や空孔内に一部が保持されていた。

内部調査、デブリ取り出し

A Guide to Technical Information Regarding Three Mile Island Unit 2

K.D. Auclair and J.S. Epler, Nucl. Technol. 87(1) (1989) .

Reactor Fuel Detection and Distribution in the Three Mile Island Unit 2 Auxiliary Building

P.J. Babel et al., Nucl. Technol. 87 (1) (1989) .

Three Mile Island Unit 2 Reactor Building Basement Concrete Activity Distribution

P.J. Babel et al., Nucl. Technol. 87 (1) (1989) .

Three Mile Island Unit 2 Reactor Building Dose Reduction Task Force

R.S. Daniels, Nucl. Technol. 87(1) (1989) .

Preface - TMI-2: Health Physics and Environmental Releases

C.H. Distenfeld, Nucl. Technol. 87(1) (1989) .

A Fast Sorting Measurement Technique to Determine Decontamination Priority

C.H. Distenfeld et al., Nucl. Technol. 87(1) (1989) .

Exposure of the General Public Near Three Mile Island

M. Eisenbud, Nucl. Technol. 87(1) (1989) .

Robotic Characterization of the 86.1-m Elevation of the Three Mile Island Unit 2 Reactor Building

D.E. Ferguson, Nucl. Technol. 87(1) (1989) .

Dealing with Public Perceptions of Health Risks in a Nuclear World

R.S. Friedman, Nucl. Technol. 87(1) (1989) .

Respiratory Protection Lessons Learned at Three Mile Island

E.F. Gee, Nucl. Technol. 87(1) (1989) .

Three Mile Island and the Environment

B.A. Good et al., Nucl. Technol. 87(1) (1989) .

RCS Characterization and SNM Accountability: Trace Fuel Circulation in the RCS, Reactor Building, and Auxiliary Building at TMI-2

J. Greenborg, Nucl. Technol. 87(1) (1989) .

Personnel Contamination Protection Techniques Applied during the Three Mile Island Unit 2 Cleanup

J.E. Hildebrand, Nucl. Technol. 87(1) (1989) .

The Role of Radiation Instruments in the Recovery of Three Mile Island Unit 2

R.D. Holmes and G.W. Frank, Nucl. Technol. 87(1) (1989) .

参考文献

[1] Core Material Examination計画

[2] Accident Evaluation Program

[3] CSNIのベンチマーク解析

[4] VIP計画