デブリ取り出し工法の変遷

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 ここでは、TMI-2においてどのように取り出し方法が定められたのかを、1983年~1986年の年次レポートの記述に基づいて整理した[1,2,3,4]。内部調査の結果や、圧力容器ヘッドと上部プレナム構造物の撤去およびそのための環境整備を進めることで、デブリ取り出し工法が具体化されていった経緯を読み取ることができる。

圧力容器ヘッド取り外し

1983年の進捗

  • Quick Look調査[5]、Underhead Characterization[6]などにより、圧力容器ヘッドはDirty-Lift工法で取り外せると判断された[6]。
  • 当初懸念された付着デブリの自然発火性については、実デブリを用いた自然発火性確認試験が行われ、自然発火の可能性は極めて低いと結論された[7]。
  • ヘッド取り外しの障害となるリードスクリューについては、完全撤去ではなく、スパイダーとの接続を外して支持構造物内の一時保持位置で固定する工法が採用された[6]。
  • ヘッド貯蔵スタンドに遮蔽が取り付けられた[6]。
  • ヘッド周辺については、既設の遮蔽体が撤去され、支持構造物とCanal浅瀬が除染された。Canal浅瀬とヘッドのインターフェースとしてCSP(Canal Seal Plate)が取り付けられた[6]。
  • ヘッド吊り上げツールの検査、ヘッド固定Studsのクリーニングと緩め作業が行われた[6]。

1984年の進捗

、、、

参考: Quick Look

参考: ヘッド取り外し

参考: 自然発火性確認試験

上部プレナム撤去

1983年の進捗

 プレナム構造物の撤去工程の検討は、5個のワークに分類され実施された。(a)撤去手法とツール、(b)撤去作業、(c)臨界安全と作業安全の評価、(d)プレナム撤去後の燃料デブリ取り出し・移送方法の改良、(e)使用済み燃料プールの再稼働。

 図1に、1983年時点でのヘッドとプレナム取り外しの概念図を示す。この時点では、ヘッドをDirty-Lift工法で取り外した後、建屋上部の燃料移送Canal全域を水没させ、水中で上部プレナム構造物を取り外し、Canalの端の貯蔵スタンド上にソフトバリアで包んで保管するという工法が主に検討されていた。上部プレナム構造物撤去後に圧力容器上部にリークタイトのカバーを設置し、圧力容器内と上部プレナム構造物のソフトバリア内の冷却水と、Canalと使用済み燃料貯蔵プールの冷却水を分離して、それぞれ水処理するという構想であった[1]。

プレナム撤去手法とツールについて

  • 一体構造物として撤去することに決定。3段階で撤去という方針を決定。第1段階:プレナムをジャッキアップして圧力容器から分離、第2段階:プレナムをポーラークレーンで吊り上げCanal端に移動、第3段階:Canal端にある貯蔵スタンド上に、ソフトバリアでくるんで貯蔵(図1参照)[1]。
  • プレナム内部調査ツール、ジャッキツール、移送と貯蔵ツール、クリーニングツールの設計進捗。
  • プレナム内部調査ツールは、プレナムリフトの障害になる可能性のある個所が観察できるように設計。デブリ付着量も観察できるように設計。
  • ジャッキツールの要件整理、基本設計終了(4基の60トン油圧ジャッキ)[8]。
  • 移送・貯蔵ツールとしては、吊り上げ具、プレナム貯蔵リング、TCBなどを設計[8]。
  • TCB(Transfer Containment Barrier)は、プレナム移動時のコンテナとして設計(#結局、使用されなかった)[8]。
  • デブリ除去ツールとしては、上部格子からぶら下がっている燃料集合体上部を、プレナム撤去前に落とすためのスライドハンマーと高圧フラッシング装置を設計(#Quick Look前は、燃料集合体が多く残留し、上部でプレナムや上部格子と融着している可能性が考えられたため、上部格子の溶接部を剪断するツールと油圧式のデブリ吊り上げ設備が検討されていた。しかし、Quick Lookにより、上部空洞があり、ぶら下がりデブリ量が、当初の想定より少なかったため、ハンマーでたたき落とす方式に変更された。プレナムをジャッキアップした後には、高圧水で落とす作業も行われた)[1]。
  • プレナム撤去作業のモックアップ試験の要件を整理[8]。

プレナム撤去作業について

 EG&G社が、プレナム調査とプレナム撤去作業に参加することが合意された。

臨界評価・作業安全評価について

 プレナム部に付着した燃料集合体上部の崩落事象が解析され、冷却水中のホウ素濃度を3500ppm以上に維持すれば、臨界までの十分なマージンが維持されると評価された[1]。

燃料デブリの取り出し・移送方法について

 既設の燃料移送メカニズムについて、チェーンドライブで駆動する水中モーターは信頼性が低いので、単純なウィンチケーブルで駆動するシステムに交換するように技術レビューが行われた。

燃料貯蔵プール再稼働

 1983年内にDOE予算で完了した。

1984年の進捗

参考:プレナム取り外し

燃料・デブリ取り出し方法

1983年の進捗

冷却水クリーンアップ系について

ここから、、、

参考文献

[1] D.E. Scardena, TMI-2 Technical Information and Examination Program 1983 Annual Report, GEND-039, 1984.

[2] C.J. Hess, TMI-2 Technical Information and Examination Program 1984 Annual Report, GEND-049, 1985.

[3] G.R. Brown, U.S. DOE Three Mile Island Research and Development Program 1985 Annual Report, GEND-055, 1986.

[4] EG&G Idaho Inc., U.S. DOE Three Mile Island Research and Development Program 1986 Annual Report, GEND-060, 1987.

[5] Bechtel Northern Corporation, Quick Look Inspection: Report on the Insertion of a Camera into the TMI-2 Reactor Vessel thrpugh a Leadscrew Opening, vol. 1, GEND-030, 1983

[6] P.R. Bengel, M.D. Smith, G.A. Estabrook, TMI-2 Reactor Vessel Head Removal, GEND-044, 1985.

[7] V.F. Baston, W.E. Austin, K.J. Hoffstetter, D.E. Owen, TMI-2 Pyrophoricity Studies, GEND-043, 1984.

[8] D.C. Wilson, TMI-2 Reactor Vessel Plenum Final Lift, GEND-054, 1986.