下部ヘッドサンプルの分析データ(VIPプロジェクト)

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2025年12月23日 (火) 17:43時点におけるKurata Masaki (トーク | 投稿記録)による版 (分析結果)
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 TMI-2でのデブリ・燃料取り出し方法の開発や事故シナリオ解明、原子力安全向上のための知見取得は、GENDプログラムの枠組みで行われた(GPU社、EPRI、NRC、DOEを中心とした取り組む)[1]。GENDプログラム開始時点では、炉心部での燃料破損とデブリふるまいメカニズムの解明、および、FPふるまいにフォーカスされており、下部プレナムへのデブリ移行メカニズムの解明や下部ヘッドとデブリとの相互作用による圧力容器破損までのマージン解析は、研究開発項目に入っていなかった。TMI-2でのデブリ取り出しと内部調査の進展に伴い、事故過程で下部プレナムに約19トンの溶融デブリが移行していたこと、下部ヘッドを貫通していたノズルの一部が溶融・損傷していたこと、下部ヘッド内面のSSライナーの一部にクラックが存在すること、などが明らかになった。下部プレナムデブリサンプルや下部ヘッドサンプルを詳細分析して、溶融デブリの移行メカニズムや圧力容器破損までのマージン解析を行うことは、デブリ取り出し方法の開発や圧力容器クリーアップ技術の開発の観点では、必要性が薄れていた。一方で、OECD/NEA/CSNIにおいても、TMI-2の事故評価プログラム(AEP: Accident Evaluation Program)が進められていた。そこで、米国NRCが主導し、OECD/NEA/CSNIの枠組みにおいて、VIP(Vessel Investigation Project)プロジェクトが立ち上げられた[1]。

 VIPプロジェクトには、ベルギー、フィンランド、フランス、ドイツ、イタリア、日本、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、米国が参加した。VIPプロジェクトの枠組みの中で、以下のタスクが行われることとなった。

  • Vesselサンプル、ノズルサンプル、案内管サンプルのサンプリング技術の開発
  • Vesselサンプル、ノズルサンプル、案内管サンプルの採集、各機関への輸送と分析
  • すでに採集されていた下部プレナムハードデブリサンプルの各機関への輸送と分析
  • 圧力容器破損モード、破損マージンの解析
  • 下部プレナムへのデブリ移行シナリオの検討

 このうち、サンプル採集と、下部プレナムハードデブリサンプルの分析、およびデブリ移行シナリオの検討については、別項目でまとめた[2]。ここでは、Vessel、ノズル、案内管サンプルの分析と、それに基づく圧力容器破損モードと破損マージンの解析結果についてまとめる[1,3,4]。

 また、VIPプロジェクトとは別のOECD/NEA/CSNIの枠組みにおいて、TMI-2デブリサンプルの詳細分析が行われている[5]。その結果についても、別項目でまとめた。

参考:VIP(Vessel Investigation Project)プロジェクト

参考:下部プレナムハードデブリサンプルの分析データ(VIPプロジェクト内)

参考:OECD/NEA/CSNIでのデブリ分析(VIPプロジェクト外)

サンプル採集

 サンプル採集技術の詳細は、参考:VIP(Vessel Investigation Project)プロジェクト、の項目にまとめた[1]。MPR社が主導して、装置開発が行われた。Vesselサンプル採集には、MDM(Metal Disintegration Machining)技術が採用された。これは、電導性の対象物に対し、グラファイト電極から斜めにアークを飛ばして、対象物を溶融させて切断する方式であった。ノズルと案内管サンプルの採集には、油圧モーター式のソーが使用された。

 サンプル採集は、VIPプロジェクト用に確保された30日間の工程の中で、効率的に行う必要があった。そこで、あらかじめ優先順位が定められ(デブリが最初に崩落した真下あたり、デブリ堆積厚さが最も厚い下あたり、デブリが広がった終端あたり)、デブリ取り出し後の画像データを確認しつつ、計画修正が行われることとなった。最終的に、15個のVesselサンプル(プリズム形状のボートサンプル)、14個のノズルサンプル2個のインコアモニター案内管サンプルが採集された。このうち、案内管サンプルについては、すでにLCSA(下部炉心支持構造物)の解体・撤去工程により、圧力容器外の水タンクに貯蔵されていたため、これを切断した。

 Vesselサンプルは、152~178mm長さ x 64~89mm巾 x 64~76mm厚さであった。採集箇所は、D10,E6,E8,E11,F5,F10,G8,H4,H5,H8,K7,K13,L9,M8,M11であった。ANLにいったん輸送され、ANLが幹事機関となって各国・機関に輸送され、分析結果の取りまとめが行われた。

 ノズルサンプルは、当初サンプリングを計画していた、デブリ移行の先端付近のノズルがほぼ溶融していたため、別な部位からサンプリングされた。採集箇所は、D10,E7,E11,G5,H5,H8,H9,K11,K12,L6,L11,M9,M10,R7であった。

 案内管サンプルは、当初計画では、10本切断する予定であったが、原因不明の理由により、案内管が硬化しており、K5,K10の2本のみ回収された。

 ノズルと案内管サンプルは、デブリが付着していたことから、いったんINELに搬入され、その一部がANLに輸送されて分析が行われた。別の一部はCEAサクレーに輸送されて分析が行われた。

 図1に、これらのサンプルの採集位置を示す[1]。また、表1に、ノズルサンプルの切断と分析担当機関を示す[1]。

Vesselサンプルの分析結果

サンプル分割と分析方法

 圧力容器の下部ヘッド母材は、136mm厚さのA533B鋼からなっており、その表面に5mm厚さの308L-SS製のライナーが溶接されている。図2に、Vesselサンプルの採集例を示す[1]。MDM装置により、プリズム型のボートサンプルが回収された。ボートサンプルの一断面を切り出し、金相観察が行われた。また、サンプル母材から。引張試験やクリープ破断試験用のサンプル、あるいは、シャルピー試験用のサンプルが切り出された。

 サンプルの外観観察により、一部のサンプル(E6,G8,F10,G6)にクラックが観測された。クラックは、SSライナー層内にとどまっていることが確認された。金相観察は、後述するホットスポットにあったE6,G8について詳細に行われることとなった。

基準データベースの整備

 図3に、事故前の下部ヘッド同等サンプルの深さ方向断面の金相写真と硬さの変化の例を示す[1]。ライナー層と母材の間にクラックが観察できる。また、組織の熱影響を受けていないマトリックスとクラックの間に、熱影響を受けたゾーン(HAZ: Heat Affected Zone)が見られる。母材の低炭素鋼とライナーのSS材では、含有される炭素濃度が異なる(母材:0.25%、ライナー:0.035%)ため、暴露された熱履歴に応じて、母材からライナー側に炭素の拡散が発生する。このため、HAZでは炭素濃度の減少に伴う組織変化と材料硬化が発生する。TMI-2のVessel材との同等材を用いて、加熱温度:700~1300℃、保持時間:1分~2時間、昇温速度40℃/分、冷却速度50℃/分の条件で、熱履歴とHAZ形成巾、硬度の変化の関係について、基準データベースが整備された。これに対し、TMI-2から採集してきたサンプルを用いて、加熱温度:950,1000,1050,1100℃、保持時間:10,30,100分で熱処理し、基礎データベースとの比較が行われた。

 図4、同等材の加熱試験に基づいて整備されたデータベースを示す[1]。データベースでは、サンプルの組織変化から逆算できる加熱温度と加熱時間について整理されている。温度の低い側から、以下の説明がなされている。

  • 607℃、製造時の、ライナー材溶接後の応力ストレス開放のための加熱処理温度に相当する。従って、それ以下の温度では、組織変化は起こらない。
  • 727~830℃、昇温・降温速度によって変化するが、フェライト/オーステナイト変態が発生する。
  • 800~925℃(加熱時間によって温度低下)、ライナーと母材の界面に黒い羽毛状バンドが形成され、温度上昇すると失われる。これは、母材からの炭素拡散によるライナー層側での炭化物相形成と分解に相当している。
  • 850~900℃、界面のA533B側で、等軸晶が形成される。
  • 1025~1100℃(加熱時間により温度低下)で、等軸晶が失われる。これは、炭素濃度の減少によるセメンタイト析出に対応している。
  • 950~1075℃(加熱時間により温度低下)、A533B鋼の母相(HAZ以外)で結晶成長が顕著に発生する。
  • ライナー層中のδ-フェライトアイランドの形状変化が発生する。これは、975~1000℃では100分、1100~1125℃では10分で発生する。これは、M23C6型炭化物相のバルク溶解に相当する。VIPプロジェクトにおける、ドイツとスペインでの分析では、δ-フェライトの存在割合は、熱処理のない条件では4~5%、これに対しTMI-2のE8サンプルでは、1.4%であった。

硬度測定、金相観察

  • 図5に、E6,E8,F10,G8サンプルの深さ方向の硬さ変化を示す[1]。図3の同等材のデータに比べ、母材側で材料硬化が起きていることが確認される。これは、同等材を830℃以上に加熱した条件に相当していた。
  • H8,F5サンプルでは、金相観察と硬度測定からから、727℃以上を経験したと評価された。
  • 基準データベースとの比較により、これらのサンプルでの冷却速度は10~100℃/分と評価された。
  • E6,E8,F10,G8サンプルでは、微細組織観察が行われた。その結果、E6,E8は1075~1100℃(30分間)を経験したと評価された。F10,G8は1040~1060℃(30分間)を経験したと評価された。
  • 表1に、温度評価の結果をまとめて示す[1]。また、図6に、分析に基づいて同定されたホットスポットの範囲を示す[1]。
  • 図7に、F10サンプルの金相組織と硬度の分析結果を示す[1]。図3と比べることで、加熱による組織変化と硬度変化の様子が確認できる。
  • 図8に、ホットスポット(E6,E8位置)における、ライナーと母材の界面でのピーク温度と、母材側に約45~50mm侵入した位置でのピーク温度を比較して示す。母材に侵入することで、ピーク温度が約100℃低下していることが確認できる。
表1 TMI-2下部ヘッドVesselサンプルの微細組織分析結果 [1]
サンプル番号

(太字はホットスポット)

分析国

(米国については機関)

事故時ピーク温度の評価結果(℃) サンプル番号

(太字はホットスポット)

分析国

(米国については機関)

事故時ピーク温度の評価結果(℃)
D10 イタリア <727 H5 ドイツ <727
米国ANL <727 英国 <727(727に近い可能性)
米国INEL <727 米国ANL <727
E6 米国ANL 1000~1100 米国INEL <727
米国INEL 1075~1100 H8 米国ANL <727
日本JAERI <1100
E8 ベルギー >727 米国INEL <727(片側)

>727(片側)

フィンランド 1100(ライナー層)、950(界面から34mm下、母材側) K7 ドイツ <727
フランス 1000~1100 スペイン <727
ドイツ >850(>1000の可能性) 英国 <727
スペイン >1000 米国ANL <727
米国ANL 1000~1100 米国INEL <727
米国INEL 1075~1100 K13 ベルギー <727
日本JAERI <1050
E11 米国ANL <727 ドイツ <727
米国INEL <727 英国 <727
F5 ベルギー >727(界面から2~30mm下、母材側) 米国ANL <727
ドイツ 730~850(界面から15mm下、母材側) 米国INEL <727
英国 >727(界面から15mm下、母材側)

~727(界面から40mm下、母材側)

L9 フランス <727
米国ANL <727 ドイツ <727
米国INEL <727 英国 <727(727に近い可能性)
F10 英国 >727 米国ANL <727
米国ANL 900~1000 米国INEL <727
米国INEL 1040~1060 M8 ドイツ <727
日本JAERI <1000
G8 米国ANL 1000~1100 英国 <727(727に近い可能性)
米国INEL 1040~1060 米国ANL <727
H4 ドイツ <727 米国INEL <727
イタリア <727 M11 フランス <727
英国 <727(727に近い可能性) ドイツ <727
米国ANL <727 スペイン <727
米国INEL <727 英国 >727(界面から数mm下、母材側)

<727(それ以外の部位)

米国ANL <727
米国INEL <727

機械特性試験

 引張応力試験とクリープ破断試験は、600~1200℃の範囲で100℃インターバルで実施された。シャルピー試験は-20~300℃の範囲で実施された。同等材を使った試験により、基準データベースを整備し、TMI-2サンプルとの比較が行われている。

引張応力試験

  • 図9に、TMI-2サンプルと同等サンプルの引張横領試験の結果を比較して示す[1]。TMI-2サンプルでは、室温でのデータが、熱履歴を受けていない差アンプルよりかなり増加していることがわかる。600℃でも同様の結果が得られた。これは、TMI-2サンプルで硬化が観測されたことと整合している。

クリープ破断試験

  • 図10に、応力と破断時間の関係を、基準サンプルと比較して示す[1]。熱履歴を受けていない同等材とTMI-2サンプルでやや異なったデータが得られた。試験結果に基づいて、クリープ評価試験が整備された。

シャルピー試験

  • 図11に、シャルピー試験の結果を示す[1]。事故時に727℃を超えていないサンプルは類似した傾向が示された。
  • 事故時に高温を経験したサンプルでは、延性の低下と打撃抵抗性の向上が見られた。これは、硬度測定や引張横領試験の結果と整合していた。

クラックの詳細観察

 E6,G8サンプルで観察されたライナー層のクラックについて、詳細分析が行われた。

  • 図12に、E6サンプルのクラック断面写真を示す[1]。クラックはライナー層内にとどまり、墓相に到達していないことが確認される。冷却時の延性の低下、ライナーと母材の急冷時の熱収縮の違いに起因して、クラック形成されたと推定された。
  • SEM/EDX分析により、クラック内表面に、鋼材主成分のFe,Cr,Niに加えて、Sn,In,Ag,Cdが検出された。これらの元素は、第二相形成あるいは金属粒子として存在していた。
  • クラック内に燃料成分はほとんど検出されなかった。
  • これらのことから、炉心部での燃料崩落初期に、おもに制御棒メルトからなる物質が下部プレナムに移行・堆積したと推定された。

ノズルと案内管サンプルの分析結果

 14個のノズルサンプルと2個の案内管サンプルが回収された。ノズルサンプルのうち、M9,L6,H5,H8,D10,E11はANLで分析された。M10,H9,L11,R7,K11,K12,G5,E7と案内管K5はINELで分析された。ノズルサンプルのうちE7,G5,R7は、さらにCEAサクレーで追加分析された。分析結果に基づいて、ノズルへのデブリ侵入程度(径方向、軸方向)、デブリとノズルの相互作用程度、ノズル微細組織の変化、軸方向温度分布、Vessel近くの温度、デブリベッド堆積深さ、などが評価された。

サンプル分割と分析方法

 まず、INELに輸送され、外観写真撮影、ガンマスキャンが行われた(燃料成分やFP成分の侵入・付着分析、Co-60の分布)。軸方向に何か所か切断され、分析サンプルとしてANLに送付された。

 損傷状態を確認しつつ、特徴的な部位が分析されるように、試料切断が行われた。

 図12(a)(b)に、ノズルの断面模式図と下部プレナムにおけるノズル、案内管、LCSAの位置関係の模式図示す[1]。

分析結果

  • 表2に、米国ANLとINELで実施されたノズルサンプルの分析位置と外観観察結果をまとめて示す[1]。
  • 図13に、ノズルの損傷マップを示す[1]。E9,F7,F8,G6位置のノズルは大きく損傷して溶け落ちており、サンプリングすることができなかった。
  • 図14(a)~(d)に、損傷したノズルサンプルの外観写真の例(R7,M9,K11,E7)を示す[1]。
  • 図14(e)に、案内管サンプルK5の外観写真を示す[1]。
  • R7ノズルについて(図14(a))、外観上に大きな損傷は見られない(上端以外)。しかし、ノズル内の計装ラインには溶融の痕跡が見られ、デブリの凝固物が付着していた。デブリ付着物付近で、高いγ線量が計測されたが、ノズル内部でのデブリによる閉塞は観測されなかった。CEAサクレーにおいて、上端部分のみが詳細分析された。付着デブリの主成分はU,Zr相とFeリッチ相からなり、おそらく、初期にやってきたデブリに相当していると推定された。これは、R7位置が、デブリが最初に落ちてきたあたりに相当することと整合していた。
  • M9ノズルについて(図14(b))、ノズル上端が25mm溶け落ちていた。その下のノズル残留部25mmでは表面が変色していた。これは、溶融物のキャンドリングの痕跡と推定された。さらに、その下の部分では表面に酸化スケールが付着していた。そのの部分は金属光沢が維持されていた。ノズル上部はデブリで完全に閉塞されていたが、ノズル底部にはデブリが到達していかった。計測ラインは、ノズル溶け落ち部の下まで溶融していた。メルトの溶融凝固時に形成されたと考えられるボイドが観測され、メルトの急冷が示唆された。
  • K11ノズルについて(図14(c))、ノズル中央部分(235mm高さ)で損傷が見られ。ノズル内にデブリ侵入していた。3か所でデブリが堆積していた(20~63mm,70~100mm,200~230mm)。
  • E7ノズルについて(図14(d))、大きな損傷を受けたノズルの典型例である。ノズルのほとんどの部分が喪失していた。ノズル株が13~16mmしか残留していなかった。CEAサクレーで詳細分析が行われた。
  • K5案内管について(図14(e))、案内管の下部で大きな損傷が見られた。特に、案内管の片側半分が大きく損傷していた。硬化しており、切断が困難であった。硬化の原因不

 ノズルサンプルの一部は、SEM/EDX/WDXで詳細分析が行われら。主な分析結果は、

  • G5,H5,H8,M9,M10について、高さ位置140~270mmあたりでの溶け落ちは、溶融デブリとの反応によると判断された。ノズル表面の酸化物スケールは、初期のデブリが凝固したクラストに相当すると推定された。
  • D10,E11ノズルの表面と内側のデブリの状態から、これらのノズルがデブリフローの終端近くにあったと推定された。
  • ノズル損傷パターンは、Vesselサンプルのホットスポットパターン(E7,E8,F7,F8あたり)と整合していた。デブリフローの終端近くで、下部クラスト層が薄かったものと推定された。
  • ノズル最高温度は、H5,M9のヘッド近くの1400℃からH8,M9のベッセルから64mmの約1000℃あたりと評価された。
  • ノズルの損傷モードは、高温による溶融の他に、Zrメルトとの反応、Ag-Cdメルトの侵入、Alとの相互作用、Cr選択酸化によるCr濃度減少、ノズル内圧上昇による破断、などがあると推定された。
  • 相当量のZr金属やAg-Cdがノズル周辺に存在しており、初期の炉心崩落過程でのこれらの物質が下部プレナムまで移行していたことが示唆された。その堆積厚さは不明だが、H8位置では120mmに達していた可能性が考えられた。
  • ノズル内でのデブリの下方向へのフローは、デブリ温度、ノズル温度、デブリ組成、粘性、燃料とノズルの相互作用(酸化Crによる燃料成分のトラップ)などに依存すると推定された。
表2 ノズルサンプルの分析位置 [1]
分析機関 ノズル位置

(太字は大きく損傷)

ノズルの取り付け高さ

(下部ヘッド内面最低部からの高さ、mm)

ノズルサンプル長さ

(mm)

残留切り株長さ

(mm)

ノズル上部の損失長さ

(mm)

ノズルの残留長さ

(mm)

デブリ侵入位置

(ノズル底部からの高さ、mm)

観察結果
ANL M9 119 254 26 25 280 241 ノズル上端が溶け落ち
L6 94 241 64 0 305 75 本来構造を維持
H5 107 146 0 159 146 89~117 ノズル上半分が溶け落ち
H8 0 70 51 184 121 <64 ノズル上半分が溶け落ち

中間部分に歪

D10 244 235 57 13 292 55~184 片側にデブリ付着

内圧により変形

E11 221 225 77 3 302 204 ノズル上端に溶融の痕跡
INEL E7 NA 12.7~15.9 NA >203.4 <101.6 デブリによる閉塞無し 切り株がわずかに残留
G5 44.5 >152.6 <152.4 デブリにより完全に閉塞 切り株が残留
H9 241.3 0 305 閉塞無し 損傷なし
K11 235 0 305 閉塞無し 中間部分に歪

上下部分には損傷なし

K12 244.5 0 305 閉塞無し 本来構造を維持
L11 228.6 0 305 閉塞無し 損傷なし
M10 171.5 127.2 177.8 57 ノズル上半分が溶け落ち
R7 231.8 0 305 閉塞無し 計装ラインがノズル上部で損傷

ノズル損傷傾向の検討

ここから、、、

下部ヘッド破損のマージン解析

・検討された破損モードは、計装管の破損、計装管の脱落、vesselの局所破損、vesselの大規模クリープ破損

・デブリメルトの組成、計装管の溶融侵入程度、デブリ諸特性、vesselのピーク温度、保持時間、冷却速度

・計装管破損と計装管脱落モードは可能性が低い

・セラミックデブリメルトはヘッド面より下まで侵入しない解析結果

・RCS高圧条件でも、ホットスポット領域の計装管の溶接部は破損せず

・デブリとヘッドの熱応答解析(上限、下限、ベストエスティメート)

・同時にデブリの移行モード堆積モードの感度解析

・デブリジェットの侵入モードでは、RPV破損に至らない

・デブリジェットの侵入モードでは、実測されたホットスポットは観測されない(ある程度長期間のデブリとヘッドのコンタクトが必要)


・RPV大規模破損の可能性解析を、ベストエスティメートと下限条件で実施

・どちらの条件でも、クリープ破断は、デブリ崩落後約2時間で発生(冷却なしのRCS高圧条件で)

・スクラム後320分で、Pilot Operated Relief Valve(PORV)が閉じられていたケース

・局所破損が複数発生すると、大規模破損のタイミングがはやまる

・しかし、ホットスポットで1100℃が30分継続することは可能(ボートサンプルの分析結果)、他は冷却を維持していても

・局所、大規模の破損モードのどちらが発生するかは、ヘッドの温度履歴に依存。ヘッド冷却が維持される場合、ホットスポットが存在し、高圧条件であっても大規模破損の可能性は抑制される。

・デブリの一部は徐冷されていたが、ヘッド材とデブリ表面は約2時間以内に冷却されていた


・デブリは下部プレナム移行とRPV再加圧の間で冷却されていた(冷却水のエネルギーバランスから解析)

・TMI-2デブリの冷却メカニズムは十分に評価できなかったが、最初の2時間でヘッドが十分に冷却されたのはほぼ確実

・破損モードがstressベースからmechanical instabilityベースに変わる??

・ヘッドサンプルの微細組織分析で確認

・解析結果はTMI-2サンプルの観察結果と整合


・ヘッドの急冷メカニズムは十分に解明できていない。

・可能性として、デブリのクラックやギャップが水蒸気の流路となった(冷却水がデブリのギャップから侵入して加熱され、水蒸気がクラックを通過して上に抜けた)

・どの程度のクラックやギャップが必要かの解析実施(既存の下部プレナムモデルでは、この冷却モードは考慮されていない)


・残され重要2課題。デブリの冷却量。Vessel破損を予測するための基準をどうするか。

・この不確かさは、既存の下部プレナムモデルの適用性の限界も示す。

・子の不確かさにより、マージン評価は、ここで仮定された条件のもとでということを理解することが重要。最も破断まで近かったメカニズムでのマージンを同定することが重要。今後の研究必要。

参考文献

[1] J.R. Wolf et al., TMI-2 Vessel Investigation Project Integration Report, NUREG/CR-6197, 1994.

[2] D.W. Akers et al., Examination of Relocated Fuel Debris Adjacent to the Lower Head of the TMI-2 Reactor vessel, NUREG/CR-6195, 1994.

[3] G.E. Korth et al., Metallographic and Hardness Examinations of TMI-2 Lower Pressure Vessel Head Samples, NUREG/CR-6194, EGG-2731, 1994.

[4] D.W. Akers et al., TMI-2 Nozzle Examinaation Performed at INEL, NUREG/CR-6198, 1994.

[5] D.W. Akers et al., TMI-2 Examination Results from the OECD-CSNI Program, vol. 1 and 2, EGG-OECD-9168, 1992.