下部プレナムハードデブリサンプルの分析データ(VIPプロジェクト)
VIPプロジェクトでは[1]、vesselサンプルの他に、下部プレナムハードデブリの一部が分取され、各機関で分析されている。ここでは、その分析結果の概要を示す。
参考:VIPプロジェクト
下部プレナムハードデブリサンプルの回収
下部プレナムルースデブリがPick-and-Place工法やエアリフトで回収された後に、残留した下部プレナムハードデブリはスライドハンマーで打撃破砕された。図1に、下部プレナムでのルースデブリの堆積厚さ分布とルースデブリ回収後のハードデブリの堆積厚さ分布を示す[2]。破砕後の岩石状のデブリサンプルは、下部プレナムをおよそ四分割し、それぞれの中央付近から回収された。したがって、本来位置についての情報は失われている。また、北東四半領域では、微粒子デブリのみが残留していたため、岩石状デブリは回収されなかった。図2に、写真の画質が悪いが、回収されたハードデブリサンプルの外観を示す[2]。


下部プレナムハードデブリサンプルの分析の目的
下部プレナムハードデブリについては、デブリ取り出しとクリーンアップの観点では、詳細分析を行う理由は薄れていた。一方で、事故進展解析の観点では、その物理的、微細組織的、放射化学的特性を分析し、下部ヘッド内面との相互作用状態を調査することで、下部ヘッド破損モデルの開発に向けた知見取得が要請された。従って、NRCが主導し、OECD/NEA/CSNIの枠組みを使って、サンプル採集と各機関への輸送と分析が行われた。 非破壊分析としては、外観観察、写真撮影、重量測定、かさ密度とデブリ粒子密度の測定、空孔率測定、が行われた。破壊分析としては、金相観察、SEM/EDX、EPMA、ICP-AES、放射線分析、等が行われた。
FP分析結果に基づいて、事故時の崩壊熱計算が行われた。
主要成分とFPについて、下部プレナムルースデブリの分析結果と比較された。
参加機関は、SCK・CEN(ベルギー、原子力研究センター)、STUK(フィンランド、放射線・原子力安全センター)、IRSN(フランス、放射線防護・原子力安全研究所)、CEA(フランス、原子力・代替エネルギー庁)、GRS(ドイツ、原子炉安全協会)、CNEN(イタリア、原子力および代替エネルギーの研究開発のための国家委員会)、JAERI(日本、日本原子力研究所)、CSN(スペイン、原子力安全委員会)、SKI(スウェーデン、原子力発電検査機関)、OFEN(スイス、連邦エネルギー庁)、AEA-T(英国、AEAテクノロジー社)、NRC(米国、原子力安全委員会)、EPRI(米国、電力研究所)であった。
VIPプロジェクト立ち上げまでの経緯
- TMI-2事故では、スクラム後224分に、約19トンの溶融デブリが、短時間(2分間以内)で炉心部の溶融プールから下部プレナムに移行した。
- 1985年に下部プレナムのビデオ調査[3]、1986年にコアボーリング調査[4](3か所でLCSAを貫通し、下部プレナムを調査)がそれぞれ実施された。
- 下部プレナム調査で採集された下部プレナムルースデブリの分析が行われた[5]。
- さらに、下部プレナムデブリ取り出しの過程で、下部ヘッド内面ライナーの一部にクラックが形成されていることが観測された[2]。
- 下部ヘッド破損状態の解明と解析モデル開発に向けた知見獲得を目的として、OECD/NEA/CSNIの枠組みを利用して、VIPプロジェクトが提案された。
- その一環として、下部ヘッドに付着していた下部プレナムハードデブリの一部が回収され、各参加機関に配布された。
サンプル採集
サンプル採集の詳細は、別項目に記載した。
図1に示すように、ビデオ調査により、ルースデブリとハードデブリの堆積マップが作成された[2]。ハードデブリの堆積厚さは、5~45cm程度であった。最大厚さは、下部プレナム中央部のH9,H10,I9,I10集合体位置の下であった。ハードデブリ層は、136kg重のスライドハンマーを約6.1m高さから落下させることで破砕された。破砕物は均質で、目視では金属相は観測されなかった。図2に示すように、およそ4領域からデブリサンプルが回収された[2]。破砕されたハードデブリサンプルから、代表的なデブリ粒子がクラムシェルツールで拾い上げられ収納缶に回収された。
これらのサンプルは破砕後に回収されているため、必ずしも採集した位置の情報をそのまま持っているとは考えられないことに注意が必要である。
参考:VIPプロジェクト
非破壊分析の結果
重量、密度、外観

表1に、4領域から採集されたサンプル重量とかさ密度を示す[2]。最も高密度のデブリ粒子は南東1/4領域から回収された。北西1/4領域からは、粉末状のデブリしか回収されていないため、これを除いてかさ密度を単純平均すると、8.7g/cm3と評価された。後述の化学分析では、これらの組成はほぼ類似しており、かさ密度の違いは主に空孔率によると考えられた。
| 採集場所 | 重量(g) | かさ密度測定した
サンプル量(g) |
かさ密度(g/cm3) | サンプル番号 |
|---|---|---|---|---|
| 南東1/4領域 | 2436 | 51.81 | 9.4 | 1-9 |
| 北西1/4領域 | 0.50 | 0.50 | 6.9 | 1-10 |
| 南西1/4領域 | 1214 | 52.23 | 8.6 | 1-11 |
| 北東1/4領域 | 2700 | 47.16 | 8.2 | 1-12 |
図3に、代表的なデブリ粒子の外観写真を示す[2]。岩石状であり、わずかに金属微粒子が含有されていた。全体的に薄い灰色であり、部分的に黄色の部分があった。なお、図中の1-9,1-11,1-12はこれらの粒子が採集された領域を示す。
表2に、図3に示したデブリ粒子の重量と密度の測定結果を、かさ密度と比較して示す[2]。測定結果は、7.45~9.40g/cm3の範囲にあり、内部に空孔を有する(U,Zr)O2の密度と整合していた。#(U,Zr)O2の密度は、UO2とZrO2の理論密度から、組成の加重平均として評価されている。

| 採集場所 | 粒子(群)重量(g) | 密度(g/cm3) |
|---|---|---|
| 南東1/4領域 | 51.81、複数粒子 | 9.40 |
| 14.90、1-9-F粒子 | 7.45 | |
| 12.10、1-9-G粒子 | 8.07 | |
| 南西1/4領域 | 52.23、複数粒子 | 8.62 |
| 49.50、1-11-C粒子 | 8.39 | |
| 76.40、1-11-D粒子 | 8.30 | |
| 北東1/4領域 | 47.16、複数粒子 | 8.18 |
| 45.50、1-12-C粒子 | 9.29 | |
| 15.20、1-12-D粒子 | 7.60 |
空孔率
デブリ粒子の密度は、空孔率に大きく影響されていた。空孔率は、図4に示す、粒子粒子切断面の金相写真から計測した[2]。表3に、評価結果をまとめて示す[2]。クラックや、他の研磨面に比べて色が薄く、空孔の一部(くぼみ)と考えられる領域もカウントされている。なお、切断面の例は、図3中に記載している。
単純平均として、南東1/4領域(1-9)で20.8±7%、南西1/4領域(1-11)で18±14%、北東1/4領域で17±9%であった。しかし、いくつかのサンプルで極端に大きい値を示しており、単純平均はその値に影響されていることに注意する必要がある。全体平均は18±11%であった。
| デブリ粒子ID | 空孔率(%) | デブリ粒子ID | 空孔率 |
|---|---|---|---|
| 1-9-A | 29.2 | 1-11-T | 7.0 |
| 1-9-B1 | 10.8 | 1-11-T | 5.7 |
| 1-9-B2 | 19.5 | 1-11-D-B | 47.5 |
| 1-9-F | 27.0 | 1-12 | 9.5 |
| 1-9-G | 17.3 | 1-12 | 19.8 |
| 1-11-C | 7.6 | 1-12 | 22.0 |
| 1-11-D-A | 20.5 | 1-12-C | 5.7 |
| 1-11-L | 21.0 | 1-12-D | 31.7 |
破壊分析の結果
11個のデブリ粒子を、破壊分析用に抽出した。
- 南東1/4領域(1-9)は、溶融デブリが最初に崩落したと推定される領域であり、1-9-A、1-9-B、1-9-C、1-9-F、1-9-Gの5個が抽出された。
- 南西1/4領域(1-11)は、ホットスポットが形成され、下部ヘッドにクラックが観測された領域であり、1-11、1-11-C、1-11-Dの3個が抽出された。
- 北東1/4領域(1-12)は、壁状のデブリ堆積面(おそらく、デブリ広がりの終点)が観測された領域であり、1-12、1-12-C、1-12-Dの3個が抽出された。
微細組織分析(全体的な傾向)
- 上述のサンプルのうち、1-9-Bは取り扱い中にサンプルが分割し、1-9-B1、1-9-B2とナンバリングされた。
- 1-11は、軸方向と径方向でそれぞれ切断され、1-11-L、1-11-Tとナンバリングされた。
- 1-11-Dは、取り扱い中に分割し、1-11-D-Aと1-11-D-Bとナンバリングされた。
- 図4に、これらの金相断面を示す[2]。上述したように、これらの断面から空孔率が計測された。
- 多くのデブリ粒子で、縞模様の構造が見られ、空孔が連結していた。
- 一方で、丸く、孤立している空孔も観測された。
- 空孔の形成メカニズムとして、水蒸気の取り込み、構造材金属の蒸気によるバブリングが原因と推定された。
- 全てのデブリ粒子で、基本組織は、均質な(U,Zr)O2であった。
- 溶融金属の液滴状の析出物は、1-11-L、1-11-T、1-11-D-Aだけで検出された。
- 空孔はサイズによって成層化しており、大きな空孔の周囲に微細空孔が存在し、また、バルクの(U,Zr)O2が相分離している領域に多く存在していた。
- これらの観察結果は、デブリの一部が徐冷されたことのエビデンスとされた。
微細組織分析(特徴的な領域)
SEM/EDX分析







参考文献
[1] A.M. Rubin, Overview and Organization of Three Mile Island Unit 2 Vessel Investigation Project, 1994.
[2] D.W. Akers et al., Examination of Relocated Fuel Debris Adjacent to the Lower Head of the TMI-2 Reactor Vessel, NUREG/CR-6195, 1994.
[3] J.P. Adams et al., TMI-2 Lower Plenum Video Data Summary, EGG-TMI-7429, 1987.
[4] E. Tolman et al., TMI-2 Core Bore Acquisition Summary Report, EGG-TMI-7385, 1987.
[5] C.S. Olsen et al., Examination of Debris from the Lower Head of the TMI-2 Reactor, GEND-INF-084, 1988.