一部形状を残していた燃料集合体の詳細分析データ

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2024年11月6日 (水) 14:10時点におけるKurata Masaki (トーク | 投稿記録)による版 (→‎化学・放射化学分析)
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サンプル採集位置

 図1に、INELのホットセルで分析された、燃料集合体上部サンプルのうち、詳しく分析されたD-141-3の見取り図と、詳細分析に供された燃料棒・制御棒のサンプル番号を示す[1]。図2には、採集した燃料棒・制御棒サンプルの破壊分析用の切り出し部位を示す[1]。D-141-3サンプルは、炉心外周から2層めにあったC7燃料集合体の上部が、上部格子に固着していた部分を回収した(参考:C7集合体の位置)。

  • 3-30:燃料棒サンプル。燃料バンドルの外周側から採集、制御棒に隣接。全長は約40cm。
  • 3-42:燃料棒サンプル。燃料バンドルの中央近くから採集、制御棒に隣接していない。全長約28cm。
  • 3-1C:制御棒サンプル。3-30燃料棒に隣接。案内管と分離して回収。全長約40cm。
  • 3-1G:案内管サンプル。3-30燃料棒に隣接。制御棒と分離して回収。全長約40cm。
  • 3-14C/G:制御棒と案内管の固着サンプル。全長約25cm。

 破壊分析サンプルのうち、Mでナンバリングされたサンプルは、断面を研磨後に、微細組織観察(光学顕微鏡、断面金相、など)に供され、SEでナンバリングされたサンプルは、溶融処理後に化学・放射化学分析(ICP、γ分光、など)に供された。また、サンプルの全長について、中性子計測とγ分光分析が行われた。

図1 炉心上部に残留した燃料集合体サンプル(D-141-3)からのサンプル採集位置 [1]
図2 燃料棒と制御棒サンプルからの、破壊分析サンプルの切り出し [1]




































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分析手順・方法

全長γ分光分析

 採集した燃料棒と制御棒を、個別にアルミナ管に装荷し、サンプルの全長について、γ分光分析が行われた。また、3cm間隔で、特定のγ線源について定量分析が行われた。

微細組織観察

 燃料ペレットと燃料被覆管の酸化程度、結晶粒のサイズ、空孔の状態、Zry案内管とSS製の制御棒被覆管などの炉心構成材料間の反応、などを調査し、事故時のピーク温度を推定するために、微細組織観察が行われた。上述したサンプル部位を切り出し、断面が研磨された。また、結晶サイズを調べるために、いくつかのサンプルでは研磨断面のエッチングを行われた。光学顕微鏡の倍率としては、500Xを多用されている。

研磨手順:

  1. SiC潤滑剤利用、120グリッドのペーパーで、粗く回転研磨(grinding)
  2. 240~400グリッドのペーパーでさらに研磨(ペーパーのサイズを変えるたびに、表面を水洗)
  3. 600グリッドの ペーパーで仕上げ研磨
  4. 6μmのオイルタイプのダイアモンドペーストで粗磨き(polishing)、回転研磨機の固いペーパー上で
  5. 3μmのダイアモンドペーストで仕上げ磨き。起毛ナイロン上で

エッチング溶液:

  • 酸化物用:85%過酸化水素+15%硫酸(酸化物相の主成分がUO2であることから選定)
  • 金属用:酪酸55%、硝酸19%、水19%、フッ酸7%(金属相の主成分がZryかAg-In-Cdであることから選定)

化学・放射化学分析

 全長γ分光分析の後に、注目箇所13個の被覆管サンプルを分取し、内外表面への、FPと主要な炉心構成物質の付着分布が定量分析された。燃料ペレットについては、回収された領域では、あまり高温に達しておらず、ほとんど事故前の状態を維持していると推定されたため、放射化学分析、化学分析は行われなかった。

溶液調製と分光分析の手順:

  1. 燃料棒サンプルから、燃料ペレットを取り外し、一部を、閉鎖系で5M硝酸で溶融。これによりI-129を水酸化ナトリウムトラップで回収。トレーサーとしてI-131とSr-93を添加することで、溶融処理時の溶液中への残留とトラップへの移行の割合を評価。
  2. 被覆管サンプルは、片側が封じられていることを利用し、被覆管外面と内面で別々に溶解処理を実施。空いている方の端に、ガラス製のキャップをつけエポキシ樹脂で隙間を封入し、まず、被覆管の外表面を6M塩酸で浸出処理。次に、ガラス管を外し、被覆管の内面を浸出処理。いくつかのサンプルでは、被覆管が封じ切れていなかったため、内外表面を同時に浸出処理。
  3. 回収した溶液にI-131とSr-93をトレーサーとして添加。
  4. 溶液を60mlにメスアップし、分析Aliquotとした。
  5. γ線分光分析では、ゲルマ検出器で定量分析。測定誤差はおよそ20%。Eu-155などのγ線エネルギーの弱い核種では30%。
  6. 核物質分析では、Aliquotから一部を分取してATRで照射し、アクティブ中性子/遅発中性子の分析。サンプル中に中性子吸収物質(B,Ag,In,Cd)が存在しない場合、測定誤差10%。中性子吸収物質が存在する場合には、別途ICP分析を実施。
  7. Sr-90分析では、液体シンチレーターを使用。分析前にSr-90をトレーサーとともに沈殿させて分析。分析誤差10-20%。
  8. I-129分析では、I-131をトレーサーとして添加し、溶融処理中の蒸発量を評価。有機分離法で、調製した溶液と水酸化ナトリウムトラップ溶液から、I-129とI-131を回収。ATRで照射し、I-129が放射化して形成されるI-130を定量。測定誤差10-15%。
  9. ICP分析では、主要な17個の炉心構成物質(Ag,Al,B,Cd,Co,Cr,Fe,Gd,In,Mn,Mo,Ni,Nb,Si,Sn,U,Zr)の定量分析を行った。測定誤差約10%。

分析結果

全長γ分光分析

 図3(a)~(e)に、図2に示したロッド状サンプルの全長γスキャンの結果を示す。

〇燃料棒サンプル:3-30(図3(a))

 C7集合体のN11ポジションから回収(図1参照)。制御棒の隣、燃料バンドル外周から2.9cm内側に存在しており、サンプル全長40.4cm。そのうち、上部の11.5cmは304SS製のスプリングがある部位に相当。上部スペーサーグリッドがあり、ギャップ(3.5cm)があり、燃料ペレットは19.4cm分残留、6cmは空の被覆管。

0-14cmの領域に計測ピーク。2.5cm位置にCe-144を同定。è燃料成分の粉末が付着している可能性。10cm位置にCo-60。èスプリングの放射化と推定。Ce-144なしでCs-137を検出。è燃料から放出され、被覆管表面に付着と推定。Sb-125。èSnの放射化orFP由来。

12-15cm領域では、被覆管内のボイドとZry製のスペーサーに対応。

15cm以下では、燃料ペレットが存在。

15è35cmにかけての線量増加は、燃料棒の下の方でより中性子束が大きいため。燃料由来のFP成分とCoを検出。

35-40cmはボイド。燃料由来のFP線量が一桁以上減少。しかしFPは検出。è燃料デブリ粉末の付着と推定。一方で、Co-60線量が増加、Sb-125は30%しか減っていない。èCo-60線量増加は、被覆管内が空になったため、裏側のCo-60も検出したと推定。Sb-125は放射化由来の可能性。

放射線量は、スプリング領域で、燃料領域より1-2桁大きい。これは。スプリングの放射化のため(含有されているCo-59の放射化)。

Ce-144は10cm部位のみで検出èデブリ粒子付着?

Cs-137は広く表面に付着。

それ以外は、燃料由来ではないと推定。Co-60,Sb-125

参考文献

[1] S.M. Jensen, D.W. Akers, E.W. garner, G.S. Roybal, Examination of the TMI-2 core distinct components, GEND-INF-082, 1987.