「Nucl.Technol.誌のTMI-2特集号の概要」の版間の差分
Kurata Masaki (トーク | 投稿記録) (→参考文献) |
Kurata Masaki (トーク | 投稿記録) |
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TMI-2現場での、復旧作業の概要が示されている。 | TMI-2現場での、復旧作業の概要が示されている。 | ||
=== Radiological Conditions and Experiences in the Three Mile Island Unit 2 Auxiliary Building === | |||
P.E. Ruhter and W.G. Zurlience, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 361-367. | |||
TMI-22号機事故後の放射線状況は通常とは異なるものであったが、作業員に潜在的影響を与えたのは、主に補助建屋および燃料取扱建屋に限られていた。最も重要な放射性物質の移行経路は、冷却水処理のLetdown系、Makeup系、および浄化システムであった。補助建屋および燃料取扱建屋の一部の場所で、事故後数日間は線量率が3mSv/s(1000R/h)を超えた。線量率は3~4日後に低下し、約1週間後に安定した。空気中の放射能レベルは、当初は希ガスの放出によるものであり、その後は表面汚染の再浮遊によるものであった。最初の1ヶ月間、原子炉冷却材中の核分裂生成物の寄与は、主にCs単元素から、SrとCsがほぼ同量に変化した。これにより、非常に高いβ線源が発生した。Sr濃度が高かったため、汚染管理限度は事故前の限度の半分に引き下げられた。 | |||
=== Environmental Measurements during the Three Mile Island Unit 2 Accident === | === Environmental Measurements during the Three Mile Island Unit 2 Accident === | ||
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TMIプラントの所有者(GPU社)と独立機関がそれぞれ実施した放射線環境モニタリングにより、工学設計および排出管理の適切性が確認された。通常プラント運転中の公衆への放射線量は、米国環境保護庁(EPA)の環境基準、米国原子力規制委員会(NRC)の線量限度ガイドライン、そして自然放射線からの被ばく線量をはるかに下回っていた。独立機関によって検証された長年にわたる排水と環境の監視の結果に基づき、TMI からの放射性物質の放出は環境にも公衆の健康や安全にも悪影響を及ぼしていないと結論付けられた。 | TMIプラントの所有者(GPU社)と独立機関がそれぞれ実施した放射線環境モニタリングにより、工学設計および排出管理の適切性が確認された。通常プラント運転中の公衆への放射線量は、米国環境保護庁(EPA)の環境基準、米国原子力規制委員会(NRC)の線量限度ガイドライン、そして自然放射線からの被ばく線量をはるかに下回っていた。独立機関によって検証された長年にわたる排水と環境の監視の結果に基づき、TMI からの放射性物質の放出は環境にも公衆の健康や安全にも悪影響を及ぼしていないと結論付けられた。 | ||
=== Airborne Recontamination of the Three Mile Island Unit 2 Reactor Building === | |||
J.E. Tarpinian, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 429-432. | |||
TMI-2のRB内の線量低減目標は、作業区域の線量率を下げ、作業員の集団被ばく線量を合理的に達成可能な限り低く抑えることであった。この目標の一環として、RB建屋表面について大規模な除染の取り組みが行われた。除去可能な表面汚染レベルが非常に高く、場所によっては1.7 x 10<sup><small>3</small></sup>Bq/cm<sup><small>2</small></sup>(4.6μCi/100 cm<sup><small>2</small></sup>)を超えることもあり、空気中の放射能濃度が高く、呼吸器系防護具の広範な使用が必要であった。そのため、除染プログラムでは、除去可能な汚染レベルを、呼吸器系防護具の使用を減らす、あるいは完全に不要にできるレベルまで低減することを目標とした。 | |||
除染プログラムの進捗は、RB内の広範囲で再汚染が発生していることが判明したことで阻害された。再汚染速度は、一日当たり約1.5 Bq/cm<sup><small>2</small></sup>(4.1 X 10<sup><small>-3</small></sup> μCi/100cm<sup><small>2</small></sup>)と測定された。一連の検査の結果、RB内の空調システムが高度に汚染されており、その表面から放射能が拡散されていることが判明した。エアロゾルのカスケード効果調査では、粒子径について2ピーク分布を示した。等価直径が>20μmを超える放射性粒子は、放射能の約30%を占め、<5μm未満の放射性微粒子は放射能の60%を占めていた。光学顕微鏡、電子顕微鏡、ラマン分光法による検査の結果、大きな放射性粒子は空調システムに由来する有機粉塵であり、富者性微粒子は処理水中に溶解していたホウ酸に由来することが判明した。 | |||
冷却ファンの風量を減らし、高汚染されたDリングへの風量を制限することで、再汚染速度を一日当たり4 x 10<sup><small>-2</small></sup> Bq/cm<sup><small>2</small></sup>(1.1 x 10<sup><small>-4</small></sup> μCi/100cm<sup><small>2</small></sup>)まで低減できた。これにより、空気を媒体とした構造物の表面再汚染は大きな懸念事項ではなくなった。そこで、床面をさらに除染するいことで、人工呼吸具の使用を大幅に削減することができた。 | |||
=== Characterization of the Radiological Conditions of the Three Mile Island Reactor Building Basement and D-Rings === | |||
H.K. Peterson, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 433-442. | |||
TMI-2事故発生時および事故後に、高濃度汚染水が原子炉建屋(RB)地階に放出され、構造物が2.59 mの深さまで浸水した。RBから水が除去された後も、RB上部の空間線量は予想通りに減少しなかった。地階の放射線源は、TLDを吊り降ろした測定により特定された。TLDデータは、ISOSHLDコンピュータコードで放射線源としてモデル化され、RB内でのその後の復旧作業における作業員被ばく影響の評価に用いられた。 | |||
=== Heat Stress Control in the Three Mile Island Unit 2 Defueling and Decontamination Activities === | |||
J.S. Schork and B.A. Parfitt, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 486-489. | |||
TMI-2での燃料取り出しおよび除染作業では、RB内の高汚染環境で作業を行う作業員は、防護服を何枚も重ね着する必要があった。このため、防護服の断熱性が作業員に熱ストレスを与えることが認識されていた。そこで、作業員の熱ストレスを抑制するための具体的なプログラムが策定された。これには、作業員の健康検査、訓練と教育、作業時間制限、そして個人用冷却装置としての「アイスベスト」の広範な使用が含まれていた。ここでは、プログラムの各段階におけるロジスティクスと運用面についてもまとめる。最後に、原子炉建屋における熱ストレスに対処し、個人用防護装置への依存を減らすための工学的制御の活用について説明する。 | |||
=== The Significance of Radiological and Environmental Controls Documentation in Litigation === | |||
G.M. Lodde and T.D. Murphy, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 490-497. | |||
商業用原子力施設では、企業方針、規制、ライセンス、技術仕様の要件に基づき、放射線管理および環境管理プログラムのデータと文書が蓄積される。TMI-2事故発生時および事故後に、通常であれば作成されないであろう多くの文書が作成された。この文書量の増加に対処するため、GPU社は記録管理プログラムを設計・実装した。 | |||
この記録管理プログラムは、TMI-2事故後、経済的損失や放射線障害を主張する集団訴訟を含む訴訟をGPUが経験した際に、非常に有用であった。通常の業務過程においても、適切な放射線および環境に関する文書とデータを慎重に計画し体系的に作成することで、放射線障害訴訟において、そのような記録とデータを証拠として採用しやすくなる。 | |||
ここでは、事故後の訴訟の状況、文書作成の規模、訴訟における放射線および環境管理の記録、放射線および環境管理の文書化、および過去の放射線障害訴訟事例から得られた教訓について説明する。 | |||
=== Computer System Development to Support Three Mile Island Unit 2 Radiological Controls Operations and Records Management Activities === | |||
R.D. Schauss, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 498-503. | |||
TMI-2事故発生時、世界中から支援活動を行う人員が現場に派遣された。数千人規模に及ぶ大規模な人員流入について、現場で発生していた大量の作業処理に対応できるよう設計されておらず、そのための人員も配置されていなかったため、TMI-2発電所の放射線被ばく管理(REM)システムに多大な負担が発生した。それ以上に、放射線学的およびロジスティクスの観点から見た事故状況の特異な特性により、これまで予期していなかった多くの新たな保健物理学情報管理のニーズと要件が継続的に発生した。この状況により、数百件ものREMシステム変更要請が行われた。その多くは、全体的なロジスティクスと情報フローの面で非常に広範囲かつ複雑であり、当時の設計のままでは実施に多大な費用がかかる可能性があった。その後すぐに、事故に起因する特別な要件を満たすためには、既存のREMシステムを完全に再設計することが最善のアプローチであることが明らかになった。銀行や小売業など、他の業界で使用されている「オンライン」取引処理コンセプトを採用した、全く新しいREMコンピュータシステムを設計・開発することが決定された。GPU社の現在のオンラインコンピュータREMシステム(REMオンライン)の設計・開発に影響を与えた主要な問題と決定について考察する。 | |||
=== A Guide to Technical Information Regarding Three Mile Island Unit 2 === | === A Guide to Technical Information Regarding Three Mile Island Unit 2 === | ||
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これらの線量によるリスクが評価され、被ばくした公衆の人生において、この線量によるがん発生増加はないと結論された。 | これらの線量によるリスクが評価され、被ばくした公衆の人生において、この線量によるがん発生増加はないと結論された。 | ||
=== An Upgraded Personnel Dosimetry System for Use at Three Mile Island Unit 2 === | |||
J.W. Schmidt and J.M. Harworth, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 520-526. | |||
TMI-2事故後、異常な放射線環境が発生したため、除染と復旧を支援するために改良TLDシステムが必要であると判断された。その結果、GPU社はパナソニック社ベースのTLDシステムを開発し、TMI-2施設に設置した。その結果、得られた改良型802型パナソニック線量計の設計と関連アルゴリズムは、ミシガン大学のPhillip Plato氏との契約に基づき開発された。この線量計/アルゴリズム設計は、線量計によって収集されたベータスペクトルデータから導出される変化するベータ補正係数の使用を可能にした。システムのコンピュータベースの処理装置は、International Science Associates社との契約に基づき開発されたソフトウェアを使用して駆動された。システムの長期的な安定性は、システム運用に統合された広範な品質管理プログラムによって保証された。いくつかの小さな改良を除いて、線量測定システムは1983年2月に最初に導入されて以来、基本的に変更されていません。さらに、このシステムはすべてのモニタリングカテゴリーにおいて、国家自主試験所認定プログラムの認証を継続的に維持している。 | |||
=== Respiratory Protection Lessons Learned at Three Mile Island === | === Respiratory Protection Lessons Learned at Three Mile Island === | ||
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TMI-2事故により生じた放射線学的に危険な環境では、作業員の汚染を効果的に防護するためにさまざまな技術を適用する必要があった。クリーンアップ作業中には、布製の防護服から、高強度ベータ線汚染区域での作業に適した頑丈な消防士用の防護服まで、多種多様な防護服が使用された。防護服の選定では、作業員への全体的なリスクを考慮し、計画された作業が最大限の効率で遂行されるよう配慮がなされた。適切な防護服を着用することで、皮膚の汚染は効果的に最小限に抑えられた。 | TMI-2事故により生じた放射線学的に危険な環境では、作業員の汚染を効果的に防護するためにさまざまな技術を適用する必要があった。クリーンアップ作業中には、布製の防護服から、高強度ベータ線汚染区域での作業に適した頑丈な消防士用の防護服まで、多種多様な防護服が使用された。防護服の選定では、作業員への全体的なリスクを考慮し、計画された作業が最大限の効率で遂行されるよう配慮がなされた。適切な防護服を着用することで、皮膚の汚染は効果的に最小限に抑えられた。 | ||
=== Assessment and Control of the Three Mile Island Unit 2 Reactor Building Atmosphere === | |||
G.M. Lodde et al., Nucl Technol. 87(1) (1989) 535-544. | |||
TMI-2事故の結果、損傷した原子炉の炉心から大量の核分裂ガスと揮発性放射性核種 (主に放射性ヨウ素) が密閉された原子炉建屋 (RB) の雰囲気中に放出された。事故から約1年後、RB雰囲気サンプルから、残留放射性核種としてKr-85が検出された。 | |||
TMI-2での制御されたベントの経験により、事故時に放出された放射性ガスは、短寿命核種の放射性崩壊に適切な期間を経た後に、大気拡散によって安全に処分できることが実証された。 | |||
氷ベストの使用と空気冷却装置の設置により、防護服を着用した作業員にとって、RB内で許容できる作業環境が確保された。 | |||
作業員の体内に蓄積した放射能による線量への影響は、体外の放射線源による影響と比較すると無視できるほど小さいことが確認された。TMI-2では、放射性物質の体内への取り込みはそれほど大きくなかったことは明らかであった。 | |||
=== The Role of Radiation Instruments in the Recovery of Three Mile Island Unit 2 === | === The Role of Radiation Instruments in the Recovery of Three Mile Island Unit 2 === | ||
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TMI-2の線量低減タスクフォースは、線量低減に向けた3段階のアプローチを策定した。線量低減プログラムの結果を時系列で示し、予測と比較した。 | TMI-2の線量低減タスクフォースは、線量低減に向けた3段階のアプローチを策定した。線量低減プログラムの結果を時系列で示し、予測と比較した。 | ||
=== Review of Radiation Shielding Concerns Associated with the Three Mile Island Unit 2 Defueling Systems === | |||
N.L. Osgood et al., Nucl. Technol. 87(1) (1989) 556-561. | |||
TMI-2での燃料取出システムの設計プログラムにおいて重要な要素の一つは、燃料取出作業中の放射線源の影響評価であった。あらゆる燃料取出作業中に予想される放射線影響を評価するために、包括的な放射線分析プログラムが開発された。この分析結果は、作業員の適切な放射線防護と、集団線量の最小化に使用された。この分析プログラムの開発は、燃料取り出し設計プロセスと連携して実施された。これにより、取り出し設計に重要な放射線防護機能を組み込むことが可能となった。 | |||
== インベントリ評価、計量 == | == インベントリ評価、計量 == | ||
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TMI-2プラントの補助建屋と燃料取り扱い建屋に残留する燃料成分の物量と分布が検討された。物量と分布の評価に用いられた手法(γ線分光システム、線量輸送コード、経験則的な分析技術)についても紹介する。検討の結果、少量の核燃料物質が、makeup系と脱塩系、および、廃液処理系に残留していることが確認された。 | TMI-2プラントの補助建屋と燃料取り扱い建屋に残留する燃料成分の物量と分布が検討された。物量と分布の評価に用いられた手法(γ線分光システム、線量輸送コード、経験則的な分析技術)についても紹介する。検討の結果、少量の核燃料物質が、makeup系と脱塩系、および、廃液処理系に残留していることが確認された。 | ||
=== Using Ex-Core Neutron Detectors to Estimate Fuel Quantities in the Reactor Vessel Lower Head === | |||
R. Rainisch and V.R. Fricke, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 478-485. | |||
TMI-2事故では、相当量の炉心デブリが原子炉容器の下部プレナムに移動した。その後、炉心部での燃料取出し作業により燃料成分が再分配され、一部の炉心デブリが下部プレナム領域に移動した。ここでは、炉心外の中性子検出器の測定値の変化から、下部プレナムに堆積したデブリ物量の相対的な増加を評価する解析的アプローチを示す。原子炉容器下部プレナム内の燃料の中性子源強度と、下部ヘッドにおける中性子の未臨界増倍の程度が調査された。解析により、炉心下部での燃料取出し作業(1986年9月から1987年11月)中に、約12トンから23.5トンの炉心物質が下部プレナムに移動したと推定された。 | |||
Surface Activity Characterization with Thermoluminescent Detector Pseudo Cores | Surface Activity Characterization with Thermoluminescent Detector Pseudo Cores |
2025年7月24日 (木) 14:03時点における版
TMI-2の内部調査とサンプル分析で得られた成果は、Nucl. Technol.誌の1989年特別号でまとめられている。本項目では、その概要を紹介する。
規制、事故対応、線量低減、被ばく低減対策、環境影響、公衆影響
Preface - TMI-2: Health Physics and Environmental Releases
C.H. Distenfeld, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 17.
前文、本特集号の目的。
After Three Mile Island Unit 2 - A Decade of Change
E.E. Kintner, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 21-22.
事故発生以降、約10年間のGPU Nuclear社の対応について概説されている。
Three Mile Island - The Political Legacy
R.T. Kennedy, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 23-26.
事故時、および、廃炉に向けた政府の対応が時系列として整理されている。
Regulatory Impact of the Three Mile Island Unit 2 Accident
J.F. Aheame, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 27-33.
TMI-2事故により、米国の原子力規制委員会(NRC)、産業界、電力会社、政府は、大きな影響を受けた。NRCの受けた影響は、産業界と規制機関の関係を再構築することであった。TMI-2事故以前は、技術的な専門性に基づく良好な情報交換であったが、事故以降は、むしろ対立する関係になり、距離を置き、法律によって支配される関係となった。
Three Mile Island Unit 2: Plant Recovery
F.R. Standerfer, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 54-56.
TMI-2現場での、復旧作業の概要が示されている。
Radiological Conditions and Experiences in the Three Mile Island Unit 2 Auxiliary Building
P.E. Ruhter and W.G. Zurlience, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 361-367.
TMI-22号機事故後の放射線状況は通常とは異なるものであったが、作業員に潜在的影響を与えたのは、主に補助建屋および燃料取扱建屋に限られていた。最も重要な放射性物質の移行経路は、冷却水処理のLetdown系、Makeup系、および浄化システムであった。補助建屋および燃料取扱建屋の一部の場所で、事故後数日間は線量率が3mSv/s(1000R/h)を超えた。線量率は3~4日後に低下し、約1週間後に安定した。空気中の放射能レベルは、当初は希ガスの放出によるものであり、その後は表面汚染の再浮遊によるものであった。最初の1ヶ月間、原子炉冷却材中の核分裂生成物の寄与は、主にCs単元素から、SrとCsがほぼ同量に変化した。これにより、非常に高いβ線源が発生した。Sr濃度が高かったため、汚染管理限度は事故前の限度の半分に引き下げられた。
Environmental Measurements during the Three Mile Island Unit 2 Accident
A.P. Hull, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 383-394.
TMI-2事故では、あらかじめ準備されていた計画に基づいて(これは、現在の基準からすれば最小限であったが)、連邦および州による大規模な統合環境モニタリングが実施された。特に、米国エネルギー省(DOE)は多くの資源を投入した。そこには、ブルックヘブン国立研究所を拠点とする放射線支援プログラム、大気放出に関する勧告、航空測定システムなどがあり、DOE傘下の他の国立研究所からのバックアップ要員の派遣も含まれていた。環境保護庁(EPA)からも資源が提供された。
モニタリング活動には、プルームの追跡、現場環境モニタリングとサンプリング、サンプル分析、線量評価が含まれていた。あらかじめ設置されていたプラントモニターの測定範囲を超えたため、これらの活動で採集されたデータは、事故後数週間にわたるプラントからの日々の放出に含まれる核種とその量を特定する上で重要な役割を果たした。特に、継続的な放出はほぼすべて放射性ガスで構成されており、そこには、ごく少量の放射性ヨウ素が含まれていたことが判明した。
測定された地上レベルでの最高線量率は1.3×102C/kg(50 mR/h)、放射性I-131の最大線量は<3.7×10-6Bq/cm3(1×10-10Ci/cm3)だった。DOEによる公衆の被ばく線量評価では、個人被ばく線量の最高値は<1mSv/h(<100mR/h)、総被ばく線量は20人Sv(約2000人レム)だった。
これらはアドホック対応であったが、今日の連邦放射線監視評価プログラムの基本モデルとなり、米国の原子力施設で重大事故が発生した場合に運用されることとなった。
Three Mile Island and the Environment
B.A. Good et al., Nucl. Technol. 87(1) (1989) 395-406.
プラントのルーチン運転では、液体や気体中での放射性物質の放出は限定されている。排出コントロールプラグラムにより、排出量は最小化され、連邦基準を超えないようにされている。排出コントロールは、ベンチレーションシステムとフィルター、排ガス貯蔵タンク、脱塩装置、蒸発システムなどによって行われている。排出量の最小化に加えて、排出コントロールプログラムは、排出物や周辺環境のモニタリングも含んでいる。
TMIプラントの環境線量プログラムは、環境線量の測定と環境サンプルの採集、放射性物質の含有量と影響評価のための分析、からなっている。人体への移行経路を重視して、水生、大気、陸生環境からのサンプルが収集された。
公衆への放射線量は、外部線源からの線量率の直接測定と、内部被ばく線量に寄与する可能性のある環境中の放射性核種濃度の測定から推定される。通常のプラント運転中の環境線量率と放射性核種の濃度は、測定するには小さすぎる。そのため、環境中の放射性物質の濃度を予測し、放射線量を推定するコンピュータモデルを使用して、潜在的な敷地外被ばく線量が計算される。
TMIプラントの所有者(GPU社)と独立機関がそれぞれ実施した放射線環境モニタリングにより、工学設計および排出管理の適切性が確認された。通常プラント運転中の公衆への放射線量は、米国環境保護庁(EPA)の環境基準、米国原子力規制委員会(NRC)の線量限度ガイドライン、そして自然放射線からの被ばく線量をはるかに下回っていた。独立機関によって検証された長年にわたる排水と環境の監視の結果に基づき、TMI からの放射性物質の放出は環境にも公衆の健康や安全にも悪影響を及ぼしていないと結論付けられた。
Airborne Recontamination of the Three Mile Island Unit 2 Reactor Building
J.E. Tarpinian, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 429-432.
TMI-2のRB内の線量低減目標は、作業区域の線量率を下げ、作業員の集団被ばく線量を合理的に達成可能な限り低く抑えることであった。この目標の一環として、RB建屋表面について大規模な除染の取り組みが行われた。除去可能な表面汚染レベルが非常に高く、場所によっては1.7 x 103Bq/cm2(4.6μCi/100 cm2)を超えることもあり、空気中の放射能濃度が高く、呼吸器系防護具の広範な使用が必要であった。そのため、除染プログラムでは、除去可能な汚染レベルを、呼吸器系防護具の使用を減らす、あるいは完全に不要にできるレベルまで低減することを目標とした。
除染プログラムの進捗は、RB内の広範囲で再汚染が発生していることが判明したことで阻害された。再汚染速度は、一日当たり約1.5 Bq/cm2(4.1 X 10-3 μCi/100cm2)と測定された。一連の検査の結果、RB内の空調システムが高度に汚染されており、その表面から放射能が拡散されていることが判明した。エアロゾルのカスケード効果調査では、粒子径について2ピーク分布を示した。等価直径が>20μmを超える放射性粒子は、放射能の約30%を占め、<5μm未満の放射性微粒子は放射能の60%を占めていた。光学顕微鏡、電子顕微鏡、ラマン分光法による検査の結果、大きな放射性粒子は空調システムに由来する有機粉塵であり、富者性微粒子は処理水中に溶解していたホウ酸に由来することが判明した。
冷却ファンの風量を減らし、高汚染されたDリングへの風量を制限することで、再汚染速度を一日当たり4 x 10-2 Bq/cm2(1.1 x 10-4 μCi/100cm2)まで低減できた。これにより、空気を媒体とした構造物の表面再汚染は大きな懸念事項ではなくなった。そこで、床面をさらに除染するいことで、人工呼吸具の使用を大幅に削減することができた。
Characterization of the Radiological Conditions of the Three Mile Island Reactor Building Basement and D-Rings
H.K. Peterson, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 433-442.
TMI-2事故発生時および事故後に、高濃度汚染水が原子炉建屋(RB)地階に放出され、構造物が2.59 mの深さまで浸水した。RBから水が除去された後も、RB上部の空間線量は予想通りに減少しなかった。地階の放射線源は、TLDを吊り降ろした測定により特定された。TLDデータは、ISOSHLDコンピュータコードで放射線源としてモデル化され、RB内でのその後の復旧作業における作業員被ばく影響の評価に用いられた。
Heat Stress Control in the Three Mile Island Unit 2 Defueling and Decontamination Activities
J.S. Schork and B.A. Parfitt, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 486-489.
TMI-2での燃料取り出しおよび除染作業では、RB内の高汚染環境で作業を行う作業員は、防護服を何枚も重ね着する必要があった。このため、防護服の断熱性が作業員に熱ストレスを与えることが認識されていた。そこで、作業員の熱ストレスを抑制するための具体的なプログラムが策定された。これには、作業員の健康検査、訓練と教育、作業時間制限、そして個人用冷却装置としての「アイスベスト」の広範な使用が含まれていた。ここでは、プログラムの各段階におけるロジスティクスと運用面についてもまとめる。最後に、原子炉建屋における熱ストレスに対処し、個人用防護装置への依存を減らすための工学的制御の活用について説明する。
The Significance of Radiological and Environmental Controls Documentation in Litigation
G.M. Lodde and T.D. Murphy, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 490-497.
商業用原子力施設では、企業方針、規制、ライセンス、技術仕様の要件に基づき、放射線管理および環境管理プログラムのデータと文書が蓄積される。TMI-2事故発生時および事故後に、通常であれば作成されないであろう多くの文書が作成された。この文書量の増加に対処するため、GPU社は記録管理プログラムを設計・実装した。
この記録管理プログラムは、TMI-2事故後、経済的損失や放射線障害を主張する集団訴訟を含む訴訟をGPUが経験した際に、非常に有用であった。通常の業務過程においても、適切な放射線および環境に関する文書とデータを慎重に計画し体系的に作成することで、放射線障害訴訟において、そのような記録とデータを証拠として採用しやすくなる。
ここでは、事故後の訴訟の状況、文書作成の規模、訴訟における放射線および環境管理の記録、放射線および環境管理の文書化、および過去の放射線障害訴訟事例から得られた教訓について説明する。
Computer System Development to Support Three Mile Island Unit 2 Radiological Controls Operations and Records Management Activities
R.D. Schauss, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 498-503.
TMI-2事故発生時、世界中から支援活動を行う人員が現場に派遣された。数千人規模に及ぶ大規模な人員流入について、現場で発生していた大量の作業処理に対応できるよう設計されておらず、そのための人員も配置されていなかったため、TMI-2発電所の放射線被ばく管理(REM)システムに多大な負担が発生した。それ以上に、放射線学的およびロジスティクスの観点から見た事故状況の特異な特性により、これまで予期していなかった多くの新たな保健物理学情報管理のニーズと要件が継続的に発生した。この状況により、数百件ものREMシステム変更要請が行われた。その多くは、全体的なロジスティクスと情報フローの面で非常に広範囲かつ複雑であり、当時の設計のままでは実施に多大な費用がかかる可能性があった。その後すぐに、事故に起因する特別な要件を満たすためには、既存のREMシステムを完全に再設計することが最善のアプローチであることが明らかになった。銀行や小売業など、他の業界で使用されている「オンライン」取引処理コンセプトを採用した、全く新しいREMコンピュータシステムを設計・開発することが決定された。GPU社の現在のオンラインコンピュータREMシステム(REMオンライン)の設計・開発に影響を与えた主要な問題と決定について考察する。
A Guide to Technical Information Regarding Three Mile Island Unit 2
K.D. Auclair and J.S. Epler, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 504-508.
TMI-2事故から多くの貴重な知見が得られた。技術的、法的、財政的、そして政治的な課題が引き起こされた。これらは複雑で解決が難しいため、これに対応した組織構造も複雑に見える。得られた情報量が膨大であるため、TMI-2事故からの復旧の過程で整備された「技術データ」が重要である。ここでは、整備された情報の概要と、それを管理する組織についてまとめる。
Dealing with Public Perceptions of Health Risks in a Nuclear World
R.S. Friedman, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 509-513.
科学技術の専門家と一般公衆の間には、健康・安全リスクに対する認知に大きな隔たりがある。特に原子力技術に関しては、大きな隔たりがある。ギャップについての調査結果がまとめられている。結論としては、専門家の分析結果と公衆の反応の双方を考慮した認知プロセスの開発が必要である。これは奇跡に近いことかもしれないが、社会的に、かつ、経済的に有用な技術と、そのリスクとをバランスさせて、正しくリスクを理解することに向けた努力を続ける必要がある。
Exposure of the General Public Near Three Mile Island
M. Eisenbud, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 514-519.
TMI-2事故により、多くの一次系冷却水が、原子炉建屋、補助建屋、燃料取り扱い建屋に放出された。希ガスとヨウ素が建屋内に放出され、プラントの換気系にいったんスタックされてから、環境に放出された。汚染水は建屋内に保持され環境放出は起こらなかった。
政府系機関と国立研究所による線量モニタリングの専門家がTMI-2に集められた。彼らの測定したデータは、ペンシルバニア州職員、国立研究所、原子力規制委員会、環境防護機構、保健福祉省、の専門家によって評価された。これらの活動により、最大の個人被ばく線量と80.5km圏内の住民2百万人の集団線量が評価された。
集団線量は28~35人Sv(2800~3500人rem)で、個人の最大被ばくは<1mSv(100mrem)であった。
その原因は、約370PBq(1000万Ci)の希ガスFPであった。加えて、<1.1TBq(30Ci)のI-131と0.148TBq(4Ci)のI-133が環境放出されたと評価された。ごく微量のFPはサスケハンナ川に放出された。
これらの線量によるリスクが評価され、被ばくした公衆の人生において、この線量によるがん発生増加はないと結論された。
An Upgraded Personnel Dosimetry System for Use at Three Mile Island Unit 2
J.W. Schmidt and J.M. Harworth, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 520-526.
TMI-2事故後、異常な放射線環境が発生したため、除染と復旧を支援するために改良TLDシステムが必要であると判断された。その結果、GPU社はパナソニック社ベースのTLDシステムを開発し、TMI-2施設に設置した。その結果、得られた改良型802型パナソニック線量計の設計と関連アルゴリズムは、ミシガン大学のPhillip Plato氏との契約に基づき開発された。この線量計/アルゴリズム設計は、線量計によって収集されたベータスペクトルデータから導出される変化するベータ補正係数の使用を可能にした。システムのコンピュータベースの処理装置は、International Science Associates社との契約に基づき開発されたソフトウェアを使用して駆動された。システムの長期的な安定性は、システム運用に統合された広範な品質管理プログラムによって保証された。いくつかの小さな改良を除いて、線量測定システムは1983年2月に最初に導入されて以来、基本的に変更されていません。さらに、このシステムはすべてのモニタリングカテゴリーにおいて、国家自主試験所認定プログラムの認証を継続的に維持している。
Respiratory Protection Lessons Learned at Three Mile Island
E.F. Gee, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 527-530.
TMI-2事故の対応において、人工吸気システムの準備が不足していた。計画的なメンテナンスのために、必要な安全係数をかけて、人工吸気システムが準備されていたが、事故進展中とその後の対応には全く不足していた。事故直後に顕在化した課題は、緊急時対応用の備品供給が十分でなく、圧縮空気のチャージが不足し、熟練技術者が不足し、プラントの訓練施設や装着施設へのアクセスが不足したことであった。長期のクリーンアップにおいては、人工吸気システムについて抜本的な改定が必要である。専従の専門家の評価により、(1)訓練プログラムの充実と装着方法の改良、(2)準備数の増加、(3)緊急時対応マニュアルの詳細化、(4)大規模除染とメンテナンス施設の準備、の重要性が指摘された。
Personnel Contamination Protection Techniques Applied during the Three Mile Island Unit 2 Cleanup
J.E. Hildebrand, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 531-534.
TMI-2事故により生じた放射線学的に危険な環境では、作業員の汚染を効果的に防護するためにさまざまな技術を適用する必要があった。クリーンアップ作業中には、布製の防護服から、高強度ベータ線汚染区域での作業に適した頑丈な消防士用の防護服まで、多種多様な防護服が使用された。防護服の選定では、作業員への全体的なリスクを考慮し、計画された作業が最大限の効率で遂行されるよう配慮がなされた。適切な防護服を着用することで、皮膚の汚染は効果的に最小限に抑えられた。
Assessment and Control of the Three Mile Island Unit 2 Reactor Building Atmosphere
G.M. Lodde et al., Nucl Technol. 87(1) (1989) 535-544.
TMI-2事故の結果、損傷した原子炉の炉心から大量の核分裂ガスと揮発性放射性核種 (主に放射性ヨウ素) が密閉された原子炉建屋 (RB) の雰囲気中に放出された。事故から約1年後、RB雰囲気サンプルから、残留放射性核種としてKr-85が検出された。
TMI-2での制御されたベントの経験により、事故時に放出された放射性ガスは、短寿命核種の放射性崩壊に適切な期間を経た後に、大気拡散によって安全に処分できることが実証された。
氷ベストの使用と空気冷却装置の設置により、防護服を着用した作業員にとって、RB内で許容できる作業環境が確保された。
作業員の体内に蓄積した放射能による線量への影響は、体外の放射線源による影響と比較すると無視できるほど小さいことが確認された。TMI-2では、放射性物質の体内への取り込みはそれほど大きくなかったことは明らかであった。
The Role of Radiation Instruments in the Recovery of Three Mile Island Unit 2
R.D. Holmes and G.W. Frank, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 545-552.
TMI-2プラントのリカバリ、燃料・炉心デブリ回収、環境的に安定状態への復旧は、様々な放射線強度の複雑な放射線条件下で実施する必要があり、労働集約的な作業であった。TMI-2での放射線管理プログラムが、作業員の被ばくを最小限に抑えることに成功した一因として、様々な携帯型計測機器の効果的な活用があげられる。作業環境一般での放射線場を定量化し、ホットスポットを特定し、表面汚染レベルと空気中の放射性核種の濃度を評価するため、体系的な調査が実施された。詳細かつ正確な放射線調査と現場測定は、合理的に達成可能な限り低い被ばく線量に抑制するためのレビューや、防護措置に関する放射線作業許可の仕様作成、そして作業員への説明に不可欠であった。TMI-2で使用された放射線計測機器には、密封された放射線源、汚染された表面、空気中の放射性微粒子などからの放射線場を評価できるさまざまな装置が含まれている。
リカバリーの過程で、原子炉建屋と補助建屋全体での、汚染レベルの体系的な特性評価が行われた。被ばく低減の対象となる表面を特定・優先順位付けし、除染活動の有効性を迅速に評価するための高速選別測定技術が開発された。Eberline社製のHP-220-AやRO-7といった標準機器は、方向に対する感度を改良する必要があった。また、除染作業のためには、様々な放射性核種の空気中濃度を広範囲に監視することも必要だった。呼吸により、空気中から人体に侵入する放射能の有無を評価するため、エリアエアサンプルと呼吸ゾーンエアサンプラーが広く使用された。作業員の皮膚や衣服の汚染の検出を最適化するために、パンケーキ型プローブによる身体検査は、自動化された作業員汚染モニターに置き換えられたり、補完されたりした。
放射線計測機器の保守と較正は、放射線管理部門の有資格技術者グループによって現場で行われた。すべての較正および修理は、様々な監査、検査、内部および外部評価の対象となった。品質保証監査員は、定期的にステーションの手順の遵守を確認し、主要な機器が較正のために認定された研究所に送られていることを確認し、較正用のソースがトレーサブルであることを国立標準局に対して証明した。
Three Mile Island Unit 2 Reactor Building Dose Reduction Task Force
R.S. Daniels, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 553-555.
1982年に発生した原子炉建屋内の線量増加により(最初のエントリーの2年後)、2つの結論が導かれた。(a) 原子炉建屋内で現在計画されている活動は、作業員の被ばく量を過度に増加させることにつながり、合理的に達成可能な限り低いレベルで被ばく線量を抑制するという概念と相いれない。(b) これまでに計画された活動は、既存の作業員の人的資源では、四半期および年間の線量限度を超えずに達成することが困難であった。そこで、個人被曝を制限する必要性と財政資源の制約に基づいて、包括的な線量低減プログラムが実施された。
このような線量低減プログラムは、迅速に実施できる対策から着手し、段階的に進める必要がある。初期段階での措置に続いて、現場データにもとづく技術的な計画と対応する機器の調達を通じて、実施可能な次の段階の線量低減活動を行う必要があった。これらの初期の線量低減活動が終了した後、線量率の低下により、次に重要となる新たな線源が特定されることになる。線量低減には、除染と現場復旧のプロセス全体を通じて、継続的に取り組む必要がある。
TMI-2の線量低減タスクフォースは、線量低減に向けた3段階のアプローチを策定した。線量低減プログラムの結果を時系列で示し、予測と比較した。
Review of Radiation Shielding Concerns Associated with the Three Mile Island Unit 2 Defueling Systems
N.L. Osgood et al., Nucl. Technol. 87(1) (1989) 556-561.
TMI-2での燃料取出システムの設計プログラムにおいて重要な要素の一つは、燃料取出作業中の放射線源の影響評価であった。あらゆる燃料取出作業中に予想される放射線影響を評価するために、包括的な放射線分析プログラムが開発された。この分析結果は、作業員の適切な放射線防護と、集団線量の最小化に使用された。この分析プログラムの開発は、燃料取り出し設計プロセスと連携して実施された。これにより、取り出し設計に重要な放射線防護機能を組み込むことが可能となった。
インベントリ評価、計量
Three Mile Island Unit 2 Fission Product Inventory Estimate
D.W. Akers et al., Nucl. Technol. 87(1) (1989) 205-213.
1988年に実施された、事故後のFP核種のインベントリと分布についての検討結果がとりまとめられた。ベストエスティメートインベントリが、Kr-85、Cs-137、I-129、Sb-125、Sr-90、Ru-106、Ce-144について評価された。このインベントリ評価では、原子炉建屋内での滞留や、環境放出予測も含められた。核種の捕捉率は、Ce-144が105%、Sr-90が90%、Cs-137が95%、Kr-85が91%となった。放射性I-129の捕捉率はCs-137と同程度と評価された。Cs,I,および希ガスの滞留の多くは、原子炉建屋内であり、そのほか核種についてはRPV内であった。
Core Materials Inventory and Behavior
D.W. Akers and R.K. McCardell, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 214-223.
TMI-2の圧力容器(RPV)内サンプルの分析結果と、そこから予想される事故時のふるまいをとりまとめた。TMI-2のCore Material Examination計画に基づいて[1]、RPV内から採集されたすべてのサンプルが分析された(上部プレナムのリードスクリューサンプルから、事故時に下部プレナムに移行した溶融凝固デブリサンプルまで)。これらの分析結果により、炉心物質の>99%はRPV内に保持されていたが、RPV内の配置や体積は大きく変化していたことが確認された。また、分析結果は、金属物質と酸化物との熱力学的な特性におよそ基づいて、物質再分布が起きていたことを示した。
サンプル分析
Metallurgical Reactions Involving Ag-In-Cd Control Rod Assemblies(炉心中央の切り株燃料集合体中の制御棒の分析)
Y.Y. Liu et al., Nucl. Technol. 87(1) (1989) 95-103.
炉心中央(N12位置)の切り株燃料集合体から採集された、制御棒とZry案内管の3個のサンプルがANLで分析された(炉心下端から5cm~52cmの部分)。微細組織と局所的な化学反応が、炉心の高さ方向の位置との関係として同定された。炉心下端からの距離47cmから52cmの間で、微細組織が、Ag-In-Cdメルトのキャンドリング(SS成分を含まない)とSS被覆管とZryの固相反応から、制御棒がほぼそのまま無傷で残留し、Zry案内管がβ相に総変態する状態に変化していた。このような組織変化は、事故時の温度評価のマーカーに利用できる。
Examination of Three Mile Island Unit 2 Core Materials at CEA
J. Duco and M. Trotabas, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 104-119.
OECD/NEA/CSNIのTMI-2事故タスクグループの活動の一環として、CEAでは5個のサンプルを分析した(炉心外周部L1から採集された破損燃料棒、C7位置の上部格子からぶらさがっていた破損燃料棒、炉心中央の溶融凝固層の3サンプル)。
分析手法は、外観観察、浸出法での密度測定、金相観察、SEM/EDX、XRD、熱重量分析、γ線分光分析、中性子活性化分析であった。分析結果から、事故時の局所的な最高温度の評価、C7位置での炉心物質間の反応進展メカニズム、FPと制御材のふるまい推定が行われた。微量なサンプルの分析結果ではあったが、他の機関の分析結果と合わせることで、包括的なデータベースとして整備され、事故シナリオの理解に活用された。
Metallurgical Examination of Bore Samples from the Three Mile Island Unit 2 Reactor Core
P.D. Bottomley and M. Coquerelle, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 120-136.
TMI-2のAccident Evaluation Programの一環として、溶融凝固層のボーリングサンプルの分析が行われた。サンプルは、燃料棒、制御棒、溶融デブリ、粉末状のデブリ、を含んでいた。
SEM/EDXとEPMAにより、サンプルの表面と断面の微細組織が分析された。γ線分光とFP放出試験も実施された。
G12ボーリングサンプルから得られた溶融凝固物中には、ほぼポーラスな、UとZrの二酸化物を主成分とするセラミック相を主成分とし、微小なUO2リッチとZrO2リッチの共晶組織、および、構造材の酸化物が観察された。サンプル内で、空孔と構造材酸化物の分布は変化していたが、UO2とZrO2の共晶組織は共通していた。
FP分析では、Cs-137、Ru-106、Eu-154などが、照射後燃料より小さい割合で検出された。揮発性のI-129は検出されなかった。それ以外の核種は、デブリ中にある程度保持されていた。
Zr(O)-UO2系の共晶反応、および、ZrO2-UO2系の共晶反応については(事故時の酸素ポテンシャルに依存すると考えられる)、状態図から、それぞれの共晶溶融温度が2173 Kと2873 Kであえい、事故時にこの温度まで到達していたことが示唆された。また、完全に溶融した領域については、UO2融点の3073 Kまで到達していたと示唆された。一方で、完全に溶融していない凝集物相(agglomerate)については、ピーク温度が約1673K程度、あるいはSS構造材の融点程度であると示唆された。残留していた切り株状の燃料棒については、ほとんど形状変化は見られず、温度上昇がほとんどなかったと推定された。
Analysis of Crystalline Phases in Core Bore Materials from Three Mile Island Unit 2
A. Brown et al., Nucl. Technol. 87(1) (1989) 137-145.
溶融凝固層、下部クラスト、下部プレナムデブリの3個のサンプルが、XRDで分析された。さらに、γ線分光分析とPIXE(Particle-Induced X-ray Emission)でも分析が行われた。
分析結果から、主要相として、(a) UO2リッチの非均質な溶融凝固相(おそらく、ZrO2を含有し、酸化度は若干superstoichiometric)、(b) ZrO2リッチのBaddeleyite相(1200K以下での安定相)とtetragonal-ZrO2相(1200~1600Kの安定相)、(c) Ni,Cr,FeのSpinel相[(Ni,Fe)(Fe,Cr)2O4]が同定された。格子定数測定からは、ZrO2相中にUO2が固溶していることと、Spinel相中のCr,Fe部位にAlが混入していることが推定された。PIXEの測定値からは、Spinel中のNi含有率が小さいことが示された。
これらの相のサンプル中の分布が、XRDの強度分布から評価され、UO2-ZrO2状態図からの推定と比較された。下部プレナムから採集されたサンプルは、明らかに急冷過程で形成されていた。下部クラストサンプルでは、状態図中の平衡相が同定され、徐冷により形成されたと推定された。溶融凝固層は、中間的な傾向をもっており、一面で冷却され、多面で加熱されたような状態が観測された。
Three Mile Island Unit 2 B-Loop Steam Generator Tubesheet Loose Debris Examination and Analysis
G.O. Hayner and T.L. Hardt, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 191-196.
B系蒸気発生器の上部チューブシートから回収されたデブリサンプルの分析結果がまとめられている。ルースで粒子状のデブリサンプルについて、スクラム後174分から192分に発生したB系冷却水ポンプの再稼働イベントの際に、炉心部から輸送された物質であると推定されていた。5つのサイズ群に分類され、大きな粒子10個について、化学/放射化学分析、微細組織観察、SEM/EDX分析が行われた。非破壊分析としては、外観写真撮影、密度測定が行われた。分析結果により、B系ポンプ再稼働イベント時点でのRPV内の状態が推定された。
Fission Product and Core Materials Distribution Outside the Three Mile Island Unit 2 Reactor Vessel
C.V. McIsaac et al, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 224-233.
原子炉建屋と補助建屋から採集されたサンプルについて、放射化学分析、元素分析、粒子サイズ分析が行われた。事故後数日経過時点での、ヨウ素混入飛散微粒子(おそらく有機物)の分析から、原子炉建屋内に放出された炉心物質は0.03%以下であると評価された。ヨウ素は事故進展中に冷却水中に溶解され、炉心インベントリ中の約14%が原子炉建屋地階の滞留水中に移行したと評価された。ヨウ素の8~100%は、原子炉建屋地階の汚泥中に存在していた。セシウムの約47%は、炉心から外部に放出された。その大部分は、原子炉建屋地階の滞留水中に移行した。アンチモンとルテニウムは、ほとんどが圧力容器内で、おそらく構造材に吸着して保持されていた。ストロンチウムとセリウムは、酸化物デブリ中に保持されていた。Reactor Coolant Drain Tank中では、燃料成分と制御材成分が検出された。これらはハイドロゾルとして炉心部から輸送されたと推定された。
事故シナリオ、ベンチマーク解析
A Scenario of the Three Mile Island Unit 2 Accident
J.M. Broughton et al., , Nucl. Technol., 87(1) (1989) 34-53.
TMI-2のAccident Evaluation Program [2]の目的は、TMI-2事故の包括的で矛盾のないTMI-2事故の理解であった。このプログラムでとりまとめられたTMI-2事故シナリオを示す。(a) 炉心損傷の進展により、一部溶融物を含む堆積層が形成され、(b) この堆積層内での温度上昇により、溶融デブリプールが形成され、(c) 溶融デブリプールを支えていたクラスト層の破損により、溶融デブリの一部(15~20トン)がUCSAとLCSAに侵入し、さらに下部プレナムに移行し、(d) 下部プレナムでの溶融デブリと冷却水および構造物との相互作用により、デブリが凝固した。事故進展中のFP放出傾向についてもとりまとめられた。
The Three Mile Island Analysis Exercise
D.F. Giessing, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 298-301.
TMI-2事故は、当時、世界で唯一の実機規模でのシビアアクシデントの検証の場であった。事故を契機として、世界各国で、事故の理解の精緻化や解析ツール開発が行われた。事故進展を理解するためのデータは、事故のリカバリーとクリーンアップの過程で採集された。同時に、シビアアクシデント解析コードについて、その解析結果を実機データと比較することで開発がすすめられた(ベンチマーク解析)[3]。1987年10月から開始されたOECD/NEA/CSNIでの解析プロジェクトは、1990年初旬までにおよそ完了した。9か国を代表する13機関によって、ベンチマーク解析が行われた。この経験により、シビアアクシデント解析手法に関する共通認識が醸成された。
Modeling of the Three Mile Island Unit 2 Accident with MELPROG/TRAC and Calculation Results for Phases 1 and 2
F.E. Motley and R.P. Jenks, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 302-309.
TMI-2事故解析に利用する、MELPROG/TRACコードのための解析モデルの開発が行われた。TMI-2事故解析用の解析モデルの概要と、スクラム後174分までの解析結果をとりまとめる。TMI-2ベンチマーク解析プロジェクト[3]で推奨された境界条件を用いることで、加圧器からの排水と燃料損傷前の炉心の水没状況について、妥当な解析結果が得られた。感度解析により、冷却水のmaekupフィルターへの流量を減少させることで、より、実プラントの状況と整合する解析結果が得られた。現在、事故のPhase-3(スクラム後174~227分)、Phase-4(スクラム後227~300分)の解析を実施中である。
MARCH Calculations Performed for the Three Mile Island Unit 2 Analysis Exercise
R.O. Wooton, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 310-325.
MARCHコードのSTCPバージョンにより、TMI-2事故のベンチマーク解析が行われた。TNI-2事故のより適切な解析のためには、様々なコードでモデルの改良が必要であり、MARCHコードについて、その概要が示された。改良されたMARCHコードにより、多くの重要イベントが再現された(炉心加熱のタイミング、溶融デブリと被覆管の反応進展、一次系圧力、原子炉建屋への水素放出)。水素放出イベントについては、スクラム後10時間で水素燃焼が起きている。
Summary of the Three Mile Island Unit 2 Analysis Exercise
D.W. Golden et al., Nucl. Technol. 87(1) (1989) 326-333.
OECD/NEA/CSNIでのTMI-2事故解析プロジェクト(米国DOEとの共同プロジェクトによるベンチマーク解析)の概要が紹介された。参加機関はそれぞれの有する最新のシビアアクシデント解析コードを用いて、TMI-2事故解析を実施した。定性的には解析結果はほぼ類似した傾向を示したが、定量的には大きく異なった結果が得られた。シビアアクシデント解析コードの開発継続の必要性が明らかになった。
デブリふるまい解析
Summary - Three Mile Island Unit 2; Materials Behavior
D.E. Owen, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 19-20.
TMI-2事故の分析により、炉心物質の高温反応、FPふるまい、解析モデルの整備、がすすめられたことを、イントロダクションとして紹介している。
Materials Interactions and Temperatures in the Three Mile Island Unit 2 Core
C.S. Olsen et al., Nucl. Technol. 87(1) (1989) 57-94.
炉心部の様々な領域から採集されたデブリサンプルの分析が、炉心物質相互の反応や冷却水との反応を調べ、事故時ピーク温度評価とデブリふるまいの推定のために、行われた。事故時ピーク温度の推定は、炉心損傷進展とFPふるまいに影響する重要因子である。ピーク温度の推定は、サンプルの微細組織の観察結果を状態図と比較することでおこなわれた。微細組織の分析は、金相、SEM/EDX、EPMA、オージェ走査電顕で行われた。
炉心構成成分間の相互作用は極めて複雑で、Zry被覆管とUO2ペレット反応だけではなく、制御棒とインコネルスペーサーグリッドの反応など、多くの相互作用を含んでいた。これらの複雑系の理解の基礎となる状態図は、いくつかの系については報告例がなかった。また、物質移送による効果も考慮する必要があった。
現状、シビアアクシデント解析コードに組み込まれているデブリの溶融進展モデルは単純化されており、このような高温での物質移動に関する複雑な現象をより適切に推定できるように改良する必要がある。
Reactor Core Materials Interactions at Very High Temperature
P. Hoffman et al., Nucl. Technol. 87(1) (1989) 146-186.
軽水炉のシビアアクシデントで起こりうる、燃料バンドル内での化学反応についてまとめる。成分としては、UO2燃料、ジルカロイ被覆管、Ag-In-Cd、Al2O3-B4C、SS、インコネル、などが含まれ、温度は数100℃からデブリの溶融温度までが対象となる。重要な化学反応の速度論(kinetics)と、その結果として現れる相状態についてもまとめる。ほとんどの系で、反応相の融点は、本来の構成成分の融点より低くなる傾向がある。その結果として、各成分液相化による移動が融点以下で発生する。炉心溶融進展については、3つの特徴的な温度範囲が存在している。基本形はU-Zr-Oであり、重点的に研究された。そこへの鋼材系成分の混入についても言及されている。これらの検討結果は、PWR体系についてのものであることに注意が必要である。
Fuel Relocation Mechanisms Based on Microstructures of Debris
R.V. Strain et al, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 187-190.
下部プレナムから採集されたデブリの微細組織と化学状態の詳細な分析が行われた。マトリックスは、UO2とZrO2からなるセラミックスの溶融凝固物を主成分としており、一部にFe,Cr,Ni,Alの酸化物が第2相として存在していた。
その組織は、急冷固化された溶融物に典型的なものであり、丸い形状の結晶粒と比較的大きな結晶粒界からなっていた。析出する初晶は、酸化物メルトから急冷されたUO2-ZrO2の二酸化物固溶相であった。しかし、この析出相は、2相に相分離する傾向が見られ、一部の領域では、完全に2相分離していた。このような領域では、固相変態が起こるのに十分なある程度ゆっくりした冷却速度であったと推定された。いくつかのサンプルでは、広い範囲で結晶粒界相が形成されており、その内部に共晶組織が観測された。この共晶組織のマトリックス相は、Fe-Cr系酸化物であり、AlとNi酸化物をわずかに含んでいた。この相は、UO2-ZrO2の析出相周囲の結晶粒界にも見られた。
この結晶粒界相のsolidusはおよそ1600Kと推定され、初晶の融点(およそ2823K)と比較すると、初晶が析出した後に、しばらく液相として存在していたと推定された。このことから、初晶が析出した後もしばらくの間、デブリは、下部プレナムで砂のようにゆっくり移動していた可能性が考えられる。その温度は、おそらく、SS構造材の融点(1673K)より低い。このような砂状物質は、下部ヘッドを溶融損傷しにくかった可能性がある。
Thermal Interaction of Core Melt Debris with Three Mile Island Unit 2 Vessel Components
A.W. Cronenberg and E.L. Tolman, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 273-282.
RPV内の構造物と溶融デブリとの熱的な相互作用の解析結果は有用である。構造物の損傷状態の観測結果と、それを引き起こした物理現象の理解についての検討結果がまとめられた。特に、炉心周辺を取り囲んでいるバッフルプレート、コアフォーマプレート、下部ヘッドのインコアモニター貫通部、下部ヘッドの熱損傷解析が行われた。解析結果から、これらの構造物の損傷状態の特徴の違いは、主に、溶融デブリとの接触時間と構造物の熱容量と冷却水との接触に影響されることが示された。VIP計画[4]によるサンプル分析データは、本研究による解析結果の精緻化に貢献すると期待される。
Thermal Behavior of Molten Corium during the Three Mile Island Unit 2 Core Relocation Event
J.L. Anderson and J.J. Sienicki, , Nucl. Technol. 87(1) (1989) 283-293.
TMI-2の事故進展中に、炉心部に溶融デブリプールと周辺クラスト層が形成された。スクラム後224分に、クラスト層が破損し、約19トンの溶融デブリが、RPV東側の燃料集合体とその外側のコアフォーマ領域を通過して、下部プレナムに移行した。ここでは、加熱状態と溶融デブリとUCSA構造物の急激な相互作用の解析結果がまとめられている。
Just How much Water is Required to Cool a Molten Core?
S. Langer, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 294-297.
古典的なシビアアクシデント研究では、炉心溶融によりRPVが破損し、最終的には格納容器が破損して核分裂生成物が環境に放出される、という前提があった。この仮定は、TMI-2事故によってくつがえされた。TMI-2事故では、炉心のおよそ50%が溶融したにもかかわらず、環境へのFP放出は、希ガスであっても5%以下であった。TMI-2では、事故終息時点において、RPV内に液相水が残留していたことが重要である。本研究では、デブリの冷却に必要な冷却水の条件が計算された。得られた知見は、将来のアクシデントマネージメントにも利用できると期待される。とにかく、冷却水を供給し続けることが重要であることが強調されている。
FPふるまい評価
Fission Product Release Pathways in Three Mile Island Unit 2
S. Langer et al., Nucl Technol. 87(1) (1989) 196-204.
TMI-2事故でのFP放出は小規模で抑制され、その主成分は希ガス(ほぼ全量)とI-131の一部(15Ci)であった。ヨウ素の放出が大きく抑制されたのは、炉心部からセシウムの52%とヨウ素の40%が放出されたことを考慮すると、驚くべきことであった。FP放出は、スクラム後約138分に、燃料棒が大きく破損することで発生したと推定される。環境へのFP移行経路は、補助建屋に設置されていた冷却水浄化系(Letdown/makeup系)から、補助建屋内への漏洩と考えられている。希ガス(約40-50%)、セシウム、ヨウ素の一部は、原子炉建屋内に放出されたが、その内部で約1年間以上保持された。希ガスは、制御された条件で環境放出された、セシウムやヨウ素は、建屋地階の滞留水や汚泥に多く存在しており、少しずつ除染された。
Consideration of Cesium and Iodine Chemistry and Transport Behavior during the Three Mile Island Unit 2 Accident
A.W. Cronenberg and S. Langer, , Nucl. Technol. 87(1) (1989) 234-242.
TMI-2事故の解析から、プラント外へのCs-137とI-129の放出は、ごくわずかであったことが解明されている(数10Ci以下)。このような限定的な放出となった要因となる物理化学的なメカニズムを調査するために、TMI-2事故途中でのCsとIの化学形と移行の詳細解析が行われた。解析結果から、CsとIの燃料からの放出化学形は、高温での水蒸気/水素との反応で形成されるCsIとCsOHのガス相であることが示された。さらに、CsOHについては、上部プレナムやホットレグ配管での凝集と化学吸着が起こると推定された。CsOHが除かれると、ガス相中での水蒸気、CsI、CsOH、HIなどの平衡状態が変化し、CsIが相対的に不安定化してCsOHに変化し、あわせてHIが形成されると推定された。同様に、CsIがホウ酸水と反応すると、CsIがホウ酸化セシウムとHIに変化すると推定された。これらにより、CsI、HI、CsOHの混合物が、RPVから一次冷却水系への移行におけるCsとIの化学形態と推定された。これらは水溶性であり、冷却水中にCsやIが保持される要因となったと推定された。
Fission Product Partitioning in Core Materials
D.W. Akers and R.K. McCardell, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 264-272.
RPV内での燃料物質からのFP分離と放出の傾向と、そこから予想されるFP化学についてとりまとめられた。TMI-2のCore Material Examination計画に基づいて、RPV内から採集されたすべてのサンプルが分析された(上部プレナムのリードスクリューサンプルから、事故時に下部プレナムに移行した溶融凝固デブリサンプルまで)。これらの分析結果により、FPふるまいの相違は、FP核種の揮発性と化学的な特性に依存することが確認された。Ce-144のような低揮発性FPは、燃料物質のマトリックス中にほぼ保持され、一方で、Sb-125のような酸化されにくい中揮発性FPは、金属構造材との同伴性が確認された。高揮発性FPのCs-137とI-129は、多くが溶融凝固デブリから放出されたが、放出割合は単純な予測より小さかった。これらの高揮発性FPは、デブリの結晶粒界に存在していた構造材酸化物の第2相や空孔内に一部が保持されていた。
内部調査、デブリ取り出し、探査技術、クリーンアップ
Three Mile Island Unit 2 Reactor Building Entry Program
J.W. Langenbach, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 368-382.
TMI-2事故以降、初期の原子炉建屋内立ち入りまでのイベントをまとめる。このペーパーには、最初の 2 回のエントリの結果と、エントリ準備として実施された実験が含まれており、初期エントリにおける課題とその解決策を理解することができる。
The Three Mile Island Unit 2 Reactor Building Gross Decontamination Experiment; Effects on Loose Surface Contamination Levels
E.N. Lazo, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 407-420.
1982年3月に、原子炉建屋の総合除染試験が実施された。そこには大きな2つの目的があった。(a) 一般的な除染技術のうち、垂直面と水平面の汚染レベルを低減するのに最も効果的な方法を決定する。(b) 原子炉建屋内のアクセス可能なエリアにおける放射線と表面汚染のレベルを低減し、今後の内部作業における被ばくコストを低減する。アクセス可能なエリアは、D-リング内、閉鎖系の階段、282ft高さレベルの建屋地階、を除く原子炉建屋全域であった。総合除染試験は、6個の独立タスクで構成されており、さらに9個のワークパッケージに分割され、第15回目の原子炉建屋エントリーとして、30日間にわたって実施された。この作業に、0.4人Svの被ばくコストが用いられた。試験遂行中に当初の計画から変更したことや、試験前後でのデータ収集が十分でなかったことがあったが、平均の汚染レベルは約10分の1に低下し、また、最も効果的な除染技術が決定された。放射性ヨウ素に関する除染係数は最大125に到達した。
A Fast Sorting Measurement Technique to Determine Decontamination Priority
C.H. Distenfeld et al., Nucl. Technol. 87(1) (1989) 424-428.
TMI-2の原子炉建屋の除染の優先順位づけは、システマチックに行う必要があるが、そのためには多くの人員とコストを必要とする。作業員の被ばくを最小限に抑える方法は、集団線量に大きく寄与する表面線源を特定し、そこを優先的に処理することである。その宣言の表面特性を特定することで、そこに適した除染技術を開発できる。TMI-2では、線源の高速選別技術が開発され、被ばく低減の対象となる表面の優先順位付けに使用された。この技術では、2 回目のクイックソートにより、次に対象とする表面の特性を調べ、除染方法を定め、期待されるパフォーマンスを予測できる。
開発されたクイックソート技術は、Eberline HP 220A方向探査システムをベースとしている。HP 220Aプローブの角度応答は2πsrに近く、接近型および離間型の測定が可能である。しかし、4πsrに分布する線源を特定することは困難である。プローブシールドの再設計により、角度分解能をおよそπ/2srまで向上できた。この改良により、実質的に角度の重複や測定漏れがなく、6方向(上下、前、後、右、左)の測定が可能となった。シンプルで軽量なスタンドを使用し、長方形のパッケージに収納されたプローブの角度基準を確立した。長方形の6つの表面は、角度基準と連動して6つの視野角を確立した。
Robotic Characterization of the 86.1-m Elevation of the Three Mile Island Unit 2 Reactor Building
D.E. Ferguson, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 443-449.
TMI-2でのロボット特性評価プログラムは、実施された作業中に明らかになった要件と問題に応じて進化した。1987年10月31日~11月9日にかけて、原子炉建屋地階の調査が、RoverロボットとDiver方向探査システムを使って実施された。操作作業員は、Diverを使って、243カ所の線量を測定した。1988年8月19日から24日にかけて、追加サーベイが行われた。これらの測定により、除染作業により建屋地階の線量が減少したこと、個別の除染作業の有効性を検証するためにはデータ点が不足することが明らかになった。このサーベイの結果とロボット特性評価プログラムにおいて得られたツールとサーベイ技術に関する教訓をとりまとめた。これによって、建屋地階の状況理解の精緻化と、ロボットサーベイ技術の今後の開発に有用な知見が得られた。
Three Mile Island Unit 2 Reactor Building Basement Concrete Activity Distribution
P.J. Babel et al., Nucl. Technol. 87 (1) (1989) 450-456.
原子炉建屋地階のコンクリート壁面と床面に残留している放射性物質の物量を評価するために、サンプル分析が行われた。原子炉建屋地階のレイアウト、分析方法、評価結果がとりまとめられた。Cs-137は、稠密コンクリート内にはあまり深く侵入していまかったが、ポーラスなコンクリートブロック内には侵入していた。線量の大きさは、地階での高さ位置に依存しており、全体での評価値975TBq(26,400Ci)±25%にたいし、その約72%がコンクリートブロックに、約23%が低圧強化型コンクリート壁面に、約2%が低圧強化型コンクリート床面に、約3%が高圧強化型コンクリート壁面に存在していた。
RCS Characterization and SNM Accountability: Trace Fuel Circulation in the RCS, Reactor Building, and Auxiliary Building at TMI-2
J. Greenborg, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 457-460.
RCS系内に堆積している核物質量の評価に向けて、その状態の検討結果がとりまとめられている。TMI-2事故時の一次系冷却水の循環により、燃料物質が、RCS系内とRCS系が連結されている補助建屋内に移行した。移行後に堆積した位置は、一般的に低い地点、水平面、そして、それに比べて物量は少ないが垂直面であった。補助建屋で、燃料物質の移行の影響を受けたのは、冷却水ドレインタンク、下流側(letdown)、供給側(makeup)、精製系(脱塩装置)、液体廃棄物系、冷却水ポンプシールの戻りラインが含まれていた。一方で、蒸気発生器への蒸気流により、デブリ微粒子(<1mm)が移行・堆積した。炉心損傷進展時に発生した煙が、RCS系の上部で構造材表面に形成されていた膜状物質の大部分を占めていた。蒸気発生器内で見つかった比較的大きなデブリ粒子は、B系ポンプの再稼働イベントの際に移行したと考えられる。
Ex-vessel Fuel Characterization Results in the Three Mile Island Unit 2 Reactor Building
R. Kobayashi et al., Nucl. Technol. 87(1) (1989) 461-469.
TMI-2での事故進展中および事故以降の冷却水の強制循環により、燃料成分が、原子炉建屋内の一次系(RCS系)と設備類、および、補助建屋と燃料取り扱い建屋に拡散した。放出された燃料成分のほとんどは、RCS系内と原子炉建屋内にとどまっていたが、わずかな量が燃料取り扱い建屋に移行した。これらのex-vesselデブリの分布と物量の調査は1985年から開始された。原子炉建屋内から圧力容器にかけての調査結果の概要をまとめる。
調査は、中性子測定、アルファ線測定、サンプリング、外観検査、ガンマ線分光、総合ガンマ線測定の6手法で行われた。特定の領域ごとにベストエスティメートのために用いられた手法は、それぞれの領域の状態によって変わり、しばしば、複数の手法のコンビネーションが用いられた。
これらのデータを用いて、燃料物質の最小値と最大値が、原子炉建屋内のex-vessel領域ごとに見積もられた。見積値の合計は、76.2~215.1kgの範囲となった。
Reactor Fuel Detection and Distribution in the Three Mile Island Unit 2 Auxiliary Building
P.J. Babel et al., Nucl. Technol. 87 (1) (1989) 470-477.
TMI-2プラントの補助建屋と燃料取り扱い建屋に残留する燃料成分の物量と分布が検討された。物量と分布の評価に用いられた手法(γ線分光システム、線量輸送コード、経験則的な分析技術)についても紹介する。検討の結果、少量の核燃料物質が、makeup系と脱塩系、および、廃液処理系に残留していることが確認された。
Using Ex-Core Neutron Detectors to Estimate Fuel Quantities in the Reactor Vessel Lower Head
R. Rainisch and V.R. Fricke, Nucl. Technol. 87(1) (1989) 478-485.
TMI-2事故では、相当量の炉心デブリが原子炉容器の下部プレナムに移動した。その後、炉心部での燃料取出し作業により燃料成分が再分配され、一部の炉心デブリが下部プレナム領域に移動した。ここでは、炉心外の中性子検出器の測定値の変化から、下部プレナムに堆積したデブリ物量の相対的な増加を評価する解析的アプローチを示す。原子炉容器下部プレナム内の燃料の中性子源強度と、下部ヘッドにおける中性子の未臨界増倍の程度が調査された。解析により、炉心下部での燃料取出し作業(1986年9月から1987年11月)中に、約12トンから23.5トンの炉心物質が下部プレナムに移動したと推定された。
Surface Activity Characterization with Thermoluminescent Detector Pseudo Cores
R.J. Vallern et al., Nucl. Technol. 87(1) (1989) .
参考文献
[1] J.O. Carlson, TMI-2 Core Examination Plan, EGG-TMI-6169, 1984.
[2] M.L. Russell, R.K, McCardell, M.D. Peters, M.R. Martin, J.O. Carlson, J.M. Broughton, TMI-2 Accident Evaluation Program Sample Acquisition and Examination Plan, EGG-TMI-7132, 1986.
[3] CSNIのベンチマーク解析
[4] VIP計画