「Quick Look計画の概要」の版間の差分
Kurata Masaki (トーク | 投稿記録) (ページの作成:「 図2に、TMI-2で使用されていた燃料集合体の模式図を示す。15x15の燃料集合体内に、燃料棒(ジルカロイ被覆管)、および、制御棒案内管と計装管(ジルカロイ-4製)が配置されている。燃料棒の軸方向には、数か所でスペーサーグリッド(インコネル製)が配置され、上端と下端は、ステンレス製の金具で束ねられている。上端下端金具内にはイ…」) |
Kurata Masaki (トーク | 投稿記録) |
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炉心上部を調査した'''Quick Look計画'''については、参考文献[1]に概要がまとめられている。制御棒駆動機構(Control Rod Drive Mechanism: '''CRDM''')の取り外しとアクセスルート確保に向けた検討事項がとりまとめられ、さらに、プローブの挿入作業、データ採集、カメラ画像の取得の過程が示されている。Quick Lookにより、2つの重要事象が明らかになったとされている。(a) 上部プレナム内部には歪や損傷が見られない。(b) 炉心上部に空洞が存在し、その下にルースデブリが堆積している。 | |||
== 炉心上部の形状 == | |||
Quick Look計画では当初、原子炉圧力容器の上部にある、制御棒案内管(Control Rod Guide Tube: '''CRGT''')、上部格子、燃料集合体の上部(端栓など)、さらに、上部端栓が破損していた場合には、炉心部の調査を目的としていた。これは、事故直後には、燃料集合体の形状はほぼ維持されているという推定が主流だったためである。 | |||
調査では、上部ヘッドのリードスクリューホールを通じて、上部プレナム内に放射線耐性のCCTVを挿入した。'''図1'''に上部プレナム内の概略を示す[1]。シリンダー形状の構造の外壁の内部に、制御棒や出力調整棒の案内管が、燃料集合体ごとに設置されている。下の方で、上部格子や支持リングと接続している。'''図2'''に取り外したCRDMの模式図を示す[1]。筒状の圧力容器内に制御棒を吊り下げ回転させるメカニズムが装荷されていることがわかる。'''図3'''には、TMI-2で使用されていた燃料集合体の模式図を示す[2]。15x15の燃料集合体内に、燃料棒(ジルカロイ被覆管)、および、制御棒案内管と計装管(ジルカロイ-4製)が配置されている。燃料棒の軸方向には、数か所でスペーサーグリッド(インコネル製)が配置され、上端と下端は、ステンレス製の金具で束ねられている。上端下端金具内にはインコネル製のスプリングが装着されている。さらに、各燃料集合体内には、可燃性毒物棒スパイダー、制御棒スパイダー、軸方向出力平坦化棒スパイダー(Ax1al Power Shaping Rod:'''APSR''')の3タイプのスパイダーのうちひとつが燃料集合体内の案内管を通じて上部から挿入される構造になっている('''図4''')[2]。外周部の2体の集合体では、オリフィスタイプのスパイダーが挿入される構造になっている。'''図5'''には、それぞれの燃料集合体中にどのタイプのスパイダーが装荷されていたかを、炉心上部からの見取り図として示す[1]。炉心最外周の燃料集合体にはスパイダーが装荷されていない。3タイプのスパイダーが均質に装荷されていることが確認できる。<gallery widths="450" heights="450"> | |||
ファイル:QuickLook 37.png|'''<big>図1 上部ヘッドの内部 [1]</big>''' | |||
ファイル:QuickLook 38.png|'''<big>図2 CRDM [1]</big>''' | |||
ファイル:分析 1.png|'''<big>図3 燃料集合体 [1]</big>''' | |||
</gallery><gallery widths="350" heights="350"> | |||
ファイル:QuickLook 42.png|'''<big>図4(a) 可燃性毒物棒スパイダー [2]</big>''' | |||
ファイル:QuickLook 43.png|'''<big>図4(b) 制御棒スパイダー [2]</big>''' | |||
ファイル:QuickLook 44.png|'''<big>図4(c) 軸方向出力調整棒スパイダー [2]</big>''' | |||
ファイル:QuickLook 41.png|'''<big>図4(d) オリフィススパイダー [2]</big>''' | |||
</gallery> | |||
[[ファイル:QuickLook 40.png|左|サムネイル|466x466px|'''<big>図5 燃料集合体とスパイダーの組み合わせ [1]</big>''']] | |||
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== 調査の進捗 == | |||
Quick Look調査は、3回に分けて行われた[1]。 | |||
=== Quick Look I (1982, Jul. 21~) === | |||
'''図5'''に示す'''H8集合体'''のリードスクリューをとりはずし、H8集合体部位の真上からCCTVを挿入、ルースデブリベッドにぶつかるまで、本来燃料集合体があった位置に何も観察できず。CCTVをいったん吊り上げて上部格子周辺を炉心側から観察、さらに再度吊り降ろしてルースデブリベッドの直上で360°周辺を観察した。H8位置の上部格子に付着物がなく損傷が見られないこと、空洞部分にはH8集合体だけでなく、その周辺の集合体も存在していないことを確認した。ただし、光量不足で、それ以上の範囲は観察できなかった。 | |||
=== Quick Look II (1982, Aug. 6~) === | |||
さらに、'''B8とE9集合体'''のリードスクリューを取り外し、H8集合体部位には補助照明を挿入した。CCTVは炉心周辺部のB8集合体部位から挿入した。炉心周辺部ではスパイダーが残留していることを確認した。カメラのライトが破損したため取り換えを行った後に、再度可燃性毒物集合体の位置に吊り下げ、その残留を確認した。次に、E9集合体部位からCCTVを再度挿入したが、ルースデブリベッドの上に何も存在しておらず、ルースデブリベッドが広範囲に広がっていたことが確認された。また、破損した堆積物が識別可能な状態でルースデブリベッドの上に堆積していた。上部格子を下から観察し、E9周辺の4個の燃料集合体は、残留していないことを確認した。 | |||
=== Quick Look III (1982, Aug. 12~) === | |||
'''E9集合体部'''位からCCTVを再挿入した。CRGTの内側も観測した。さらに、SS製の棒を用いて、H8とE9部位のルースデブリをつつく調査を実施した。その結果、約30cm内部に侵入できた。あわせて、上部空洞のパノラマスキャンを実施した。 | |||
== 許認可と準備作業 == | |||
ここから。。。 | |||
== 参考文献 == | |||
[1] Quick look inspection: Report on the insertion of a camera into the TMI-2 reactor vessel through a leadscrew opening, GEND-030, vol.1, 1983. | |||
[2] S.M. Jensen, D.W. Akers, R.W. Garner, G.S. Roybal, Examination of the TMI-2 core distinct components, GEND-INF-082, 1987. | |||
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2024年10月29日 (火) 13:22時点における最新版
炉心上部を調査したQuick Look計画については、参考文献[1]に概要がまとめられている。制御棒駆動機構(Control Rod Drive Mechanism: CRDM)の取り外しとアクセスルート確保に向けた検討事項がとりまとめられ、さらに、プローブの挿入作業、データ採集、カメラ画像の取得の過程が示されている。Quick Lookにより、2つの重要事象が明らかになったとされている。(a) 上部プレナム内部には歪や損傷が見られない。(b) 炉心上部に空洞が存在し、その下にルースデブリが堆積している。
炉心上部の形状
Quick Look計画では当初、原子炉圧力容器の上部にある、制御棒案内管(Control Rod Guide Tube: CRGT)、上部格子、燃料集合体の上部(端栓など)、さらに、上部端栓が破損していた場合には、炉心部の調査を目的としていた。これは、事故直後には、燃料集合体の形状はほぼ維持されているという推定が主流だったためである。
調査では、上部ヘッドのリードスクリューホールを通じて、上部プレナム内に放射線耐性のCCTVを挿入した。図1に上部プレナム内の概略を示す[1]。シリンダー形状の構造の外壁の内部に、制御棒や出力調整棒の案内管が、燃料集合体ごとに設置されている。下の方で、上部格子や支持リングと接続している。図2に取り外したCRDMの模式図を示す[1]。筒状の圧力容器内に制御棒を吊り下げ回転させるメカニズムが装荷されていることがわかる。図3には、TMI-2で使用されていた燃料集合体の模式図を示す[2]。15x15の燃料集合体内に、燃料棒(ジルカロイ被覆管)、および、制御棒案内管と計装管(ジルカロイ-4製)が配置されている。燃料棒の軸方向には、数か所でスペーサーグリッド(インコネル製)が配置され、上端と下端は、ステンレス製の金具で束ねられている。上端下端金具内にはインコネル製のスプリングが装着されている。さらに、各燃料集合体内には、可燃性毒物棒スパイダー、制御棒スパイダー、軸方向出力平坦化棒スパイダー(Ax1al Power Shaping Rod:APSR)の3タイプのスパイダーのうちひとつが燃料集合体内の案内管を通じて上部から挿入される構造になっている(図4)[2]。外周部の2体の集合体では、オリフィスタイプのスパイダーが挿入される構造になっている。図5には、それぞれの燃料集合体中にどのタイプのスパイダーが装荷されていたかを、炉心上部からの見取り図として示す[1]。炉心最外周の燃料集合体にはスパイダーが装荷されていない。3タイプのスパイダーが均質に装荷されていることが確認できる。
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調査の進捗
Quick Look調査は、3回に分けて行われた[1]。
Quick Look I (1982, Jul. 21~)
図5に示すH8集合体のリードスクリューをとりはずし、H8集合体部位の真上からCCTVを挿入、ルースデブリベッドにぶつかるまで、本来燃料集合体があった位置に何も観察できず。CCTVをいったん吊り上げて上部格子周辺を炉心側から観察、さらに再度吊り降ろしてルースデブリベッドの直上で360°周辺を観察した。H8位置の上部格子に付着物がなく損傷が見られないこと、空洞部分にはH8集合体だけでなく、その周辺の集合体も存在していないことを確認した。ただし、光量不足で、それ以上の範囲は観察できなかった。
Quick Look II (1982, Aug. 6~)
さらに、B8とE9集合体のリードスクリューを取り外し、H8集合体部位には補助照明を挿入した。CCTVは炉心周辺部のB8集合体部位から挿入した。炉心周辺部ではスパイダーが残留していることを確認した。カメラのライトが破損したため取り換えを行った後に、再度可燃性毒物集合体の位置に吊り下げ、その残留を確認した。次に、E9集合体部位からCCTVを再度挿入したが、ルースデブリベッドの上に何も存在しておらず、ルースデブリベッドが広範囲に広がっていたことが確認された。また、破損した堆積物が識別可能な状態でルースデブリベッドの上に堆積していた。上部格子を下から観察し、E9周辺の4個の燃料集合体は、残留していないことを確認した。
Quick Look III (1982, Aug. 12~)
E9集合体部位からCCTVを再挿入した。CRGTの内側も観測した。さらに、SS製の棒を用いて、H8とE9部位のルースデブリをつつく調査を実施した。その結果、約30cm内部に侵入できた。あわせて、上部空洞のパノラマスキャンを実施した。
許認可と準備作業
ここから。。。
参考文献
[1] Quick look inspection: Report on the insertion of a camera into the TMI-2 reactor vessel through a leadscrew opening, GEND-030, vol.1, 1983.
[2] S.M. Jensen, D.W. Akers, R.W. Garner, G.S. Roybal, Examination of the TMI-2 core distinct components, GEND-INF-082, 1987.