「上部ルースデブリの詳細分析データ」の版間の差分

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 これらのことから、この粒子では、組成の異なるデブリメルトあるいはデブリ固相が接触し、相互作用した痕跡が残されていると推定される。この粒子のピーク温度は>2800Kと推定される。Region-1は、事故時の昇温過程では亜酸化のU-Zr-Oであったが、冷却過程で酸化度が増加したと推定されている。構造材成分が混入することで、融点が低下した可能性がある。
 これらのことから、この粒子では、組成の異なるデブリメルトあるいはデブリ固相が接触し、相互作用した痕跡が残されていると推定される。この粒子のピーク温度は>2800Kと推定される。Region-1は、事故時の昇温過程では亜酸化のU-Zr-Oであったが、冷却過程で酸化度が増加したと推定されている。構造材成分が混入することで、融点が低下した可能性がある。
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ファイル:ルースデブリ 87.png|'''図31(a) 8A粒子の断面金相(研磨後)'''
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ファイル:ルースデブリ 63.png|'''図31(b) 粒子中央部(Location-G)と外周部(Location-E)の拡大金相'''
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=== 8C粒子(炉心中央H8、表面から70cm深さから採集) ===
=== 8C粒子(炉心中央H8、表面から70cm深さから採集) ===

2025年3月31日 (月) 15:36時点における版

図1 上部ルースデブリのサンプリング位置[1]
図2 上部ルースデブリのサンプラー [4]
図3 ルースデブリの分析フロー [1,2]

上部ルースデブリのサンプリング

 炉心中央(H8集合体部位)と炉心中間(E9集合体部位)位置で、それぞれ2タイプのサンプラーを用いて、異なる深さから上部ルースデブリのサンプリングが行われた[1,2]。1983年9~10月に6個、1984年3月に5個のサンプルが回収された。サンプル重量はそれぞれ約17~170gであった。そのうち10個はINELに輸送され分析された。1個はB&W社で分析が行われた(Sample-2)。デブリ粒子の一部が分取され、ロックウェルハンフォード(RH)社で熱分析が行われた。事故時の反応の痕跡を残すデブリ粒子が29個分取され、INELで微細組織分析が行われた。うち、22個はANLに移送され、さらに詳細な組織分析が行われた。分析結果については、1984年内に速報[3]が、さらに1985年にドラフト版[4-7]が報告された。1986年に、分析結果の総合報告が刊行された[1,2]。サンプル重量(合計で1.37kg)は、デブリ総重量に対しおよそ0.001%であり、サンプル代表性に課題があるため、分析結果は定性的な傾向を示すものとしてまとめられている。

サンプル採集

 図1に、サンプリング位置を示す[1,2]。初回に、Sample-1,2,4,5が表層近くから、Sample-3,6がクラスト層の少し上あたりから回収された。2回目に、ドリルタイプサンプラーをより深くまで押し込めるように改良してから、Sample-7がH8位置の比較的上層から、Sample-8~11がクラスト層に近い位置から回収された。図2にサンプラーの写真を示す[4]。表層に近いサンプルは、クラムシェル型のサンプラーでつまみあげて回収された。バルクサンプルは、ドリルタイプサンプラーの側面に開閉機構をとりつけ、所定位置まで侵入させてから、シャッターを開いて回転させることで回収された。2回目のサンプリングでは、ドリルタイプサンプラーをハードストップする位置まで侵入させた。H8位置では表層から77cm深さ、E9位置では表層から94cm深さであり、それ以上侵入させることができなかった。

サンプル分析計画

 あらかじめ検討されていたサンプル分析計画[8]に基づき、デブリ取り出し方法の検討と、事故シナリオ推定の双方の観点で、以下の項目が抽出された。

  • デブリ粒子の粒度分布:微粒子が多いと冷却水が濁る可能性に係る基礎知見、Knockout型(遠心分離方式)とFilter型(Filter方式)のデブリ収納缶を用いた真空吸引型のデブリ回収システム設計に反映
  • デブリ形状、固着状態:機械的なデブリ回収ツールの設計に反映
  • 自然発火可能性:安全評価項目、デブリ粒子が自然発火性をもたないことを検証
  • デブリの物理・化学的な特性:炉心上部でのデブリのマクロな組成の推定、事故時のデブリふるまいの推定、さらに、炉心下部以下のデブリ堆積状態の推定精度向上
  • デブリ中のFP保持、FP分布:安全評価項目、デブリを回収した収納缶の潜在毒性評価
  • デブリ浸出データ:デブリ取り出し中のFP溶出量の評価、冷却水処理系のイオン交換システムの設計に反映

 また、サンプル取り扱いの観点では、高線量のため、できるだけ少ない物量でサンプルを取り扱いたいのに対し、サンプルサイズが小さくなるとサンプル代表性の課題が一層大きくなるという矛盾が発生する。そこで、事故時のふるまいの痕跡を残すデブリ粒子(単体、あるいは、微粒子群(Aliquot))の分析と、バルクサンプル平均としての分析が行えるように、分析フローが工夫された。図3に、分析フロー図を示す[1,2]。物理分析、微細組織分析、化学分析、放射化学分析に大別される。

 物理分析では、まず外観の写真撮影と100℃で乾燥させた後の重量測定が行われた。次に、ビーカーにデブリ粒子を入れて振動充填させ、かさ密度(バルクタップ密度)が測定された。さらに、4mm以上から20μm以下までの9段階でふるい分けが行われた。各粒度のデブリ粒子について写真撮影、重量測定された後、磁性が見られたSample-6については、ビーカー内に磁石を入れてデブリ粒子内に挿入し、磁性物質の分取が行われた。磁性物質については、γスキャンによる線量測定が行われた。その後に、Sample-1,3と6から、自然発火性確認試験用のサンプルがそれぞれ分取された。また、微細組織分析を行う粒子(合計29個)と、酸溶解して化学・放射化学分析を行うサンプル(1mm以上の粒子についてはSampleごとに3~5個ずつ、1mm以下の粒子については粒子群(Aliquot))が分取された。これらとは別に、バルクサンプルの平均組成について分析値を得るため、ふるいわけされたSampleを再度混合して、1/3量が分取・液調製された。微細組織分析では、金相、SEM/EDX、オージェ電子分光(SAS)が用いられた。化学・放射化学分析では、γ線分光(γ核種)、液体シンチレータ(Sr-90)、中性子活性化(I-129)、ICP発光(測定可能な元素全体)が用いられた。さらに、Sample-6の1/3量は、冷却水中でのCs放出と沈降試験に用いられた[7]。

分析方法

外観観察・写真撮影・乾燥・秤量

 移送容器の梱包時、開封時、さらに、分析に係る取り扱いの途中途中で写真撮影と秤量が細かく実施された。乾燥処理は、100℃にヒーター加温することで行われた。

図4 デブリ粒子のふるい分け(Sample-7、H8位置、深さ36cm、粒子サイズ:1680~4000μm)[1,2]

バルクタップ密度(みかけの充填密度)

 粒子サンプルをビーカーに入れ、タップして充填し、かさ密度が測定された。充填誤差は±40%と評価された。誤差は大きいが、粒子状サンプルの最初の分析方法として有用であると記載されている[1]。

粒度分布

 コンタミ防止のため、毎回新品のふるいを使用して粒子を分類した。Sample-4と5(炉心中間位置の表層)では、クラムシェルサンプラーにより比較的大きな粒子デブリしか回収されなかったため、ふるいわけは行われなかった。>1mm以上の粒子は、それぞれ容器を分けて収納された。<1mm以下の粒子はフロンで洗浄してから容器に収納された。Sample-6では一部で磁性が見られたため、磁性粒子だけ別に回収された。図4に、ふるい分けの例を示す(Sample-7、H8位置、深さ36cm、1680~4000μmサイズ)[1,2]。図5には、磁性粒子の例を示す(6F粒子)。SSやInconel構造材の酸化によって、Crが選択的に酸化除去され、マグネタイト(Fe3O4)が形成されたために磁性が観測されたと推定された[1,2]。

図5 磁性粒子の例(Sample-6、E9位置、深さ56cm、粒子サイズ:1680~4000μm)[1,2]

自然発火性確認試験サンプルの分取

 INELでは、Sample-3,6(それぞれ、炉心中央と炉心中間のバルクサンプル、微粒子デブリを多く含む)のふるい分けされた粒子から、自然発火確認試験のサンプルが分取された。RH社では、Sample-1,6(炉心中央表層と炉心中間バルク)からサンプルが分取され、熱分析試験が行われた。これらの自然発火性の確認試験は、GPU社からの要請により、大気中でのプレナム構造物撤去の最終確認に向けて行われた。

詳細分析用の粒子サンプルの選定、液調製

 大きな粒子(>1mm)は、ふるい分け群ごとに分取され、微細組織分析と、酸溶融処理してからの化学・放射化学分析に使用された。小さな粒子(<1mm)は、できるだけ均質に混合してから、一部が化学・放射化学分析用に分取され、酸溶解処理が行われた。これをAliquotという。微細組織分析用の粒子は、平均的な特徴を有するという観点ではなく、化学反応進展や溶融・凝固の痕跡が見られる特徴的なものが分取された。

微細組織分析

 採取した29個のデブリ粒子は、外観上の特徴と分析結果により、5群に類型化された。

  • Type-I: 破損した燃料ペレット
  • Type-II: 破損した燃料被覆管
  • Type-III: 多孔質の溶融凝固物(U,Zr)O2
  • Type-IV: 金属成分(SS,インコネルなど)が溶融凝固した粒子
  • Type-V: 燃料棒成分の酸化物と構造材成分(SS,インコネル等の酸化物、可燃性毒物棒成分Al2O3)の酸化物の溶融混合物

 粒子はそれぞれ樹脂埋め・研磨され、金相観察が行われた。一部のサンプルでは、結晶成長や空孔の状態を調べるためにエッチングが行われた。エッチング溶液としては、INELでUO2用とZry用にそれぞれ用いられていた溶液が使用された。デブリ粒子中でUO2が残留している領域はオーバーエッチングで消失しやすく、逆に(U,Zr)O2が存在する領域は残留しやすい傾向が観測された。27個の粒子は、さらにSEM/EDX分析に供され、およその元素分布が測定された。そこからさらに14個の粒子が選定され、オージェ分光分析が行われた。#オージェ分光分析では、得られる情報はごく表面層に限定されるが、BやOなどの軽元素についても比較的定量性があるということで、TMI-2デブリの分析で多用されている。

化学・放射化学分析

 >1mm以上の大きな粒子、微粒子を混合させたAliquotを、それぞれγ分光分析と遅発中性子測定し、含まれるγ核種の同定と、核物質の組成(fissile/fertile比)が評価された。

 次に、分取されたサンプルごとに、グロブボックス内で溶解処理が行われた。硝酸+フッ酸では十分に溶融させることができなかったため、硫酸系化合物を用いたアルカリ溶融法が採用された。

 アルカリ溶融処理時に蒸発する可能性のあるI-129とTeについては、I-130とTe-125をトレーサーとして添加し、溶融処理を閉鎖系で実施することで、処理時の蒸発割合が評価された。Teについては、約20%の蒸発にとどまったため、以降の分析では、トレーサーは添加されていない。

 Sr-90については、アルカリ溶融後の溶液中で、Srを沈殿させ、シンチレータで分析された。

 それ以外の元素については、ICP発光分析が用いられた。測定対象元素は、Ag,Al,B,Cd,Cr,Cu,Fe,Gd,In,Mn,Mo,Ni,Nb,Si,Sn,Te,U,Zrであった。

 1/3量を再混合させたサンプルについては、それぞれ約50gくらいの物量になったが、この量のデブリを酸溶融・液調製するのはかなり困難であった。上述の分取サンプルは、グロブボックス中でアルカリ溶融されたが、50g規模になるとホットセルでの取り扱いが必要になり、他方、ホットセル内でのアルカリ溶融処理は認可されていなかった。そこで、6規定硝酸、3規定硝酸+フッ酸、王水+塩酸、等を用いて溶解処理が行われたが、ほぼ溶解させるのに数日かかったサンプルもあった。

 溶解後の溶液は、300cc~1000ccにメスアップされ、そこから10ccが分取されて、分析に供された。

密度・外観分析の結果

 図6に回収された粒子デブリの外観写真の例を示す[1,2]。様々なサイズの粒子デブリが混合されていることがわかる。H8、E9位置共に、表層サンプルに比べてバルクサンプル中に微粒子デブリがより多く存在している傾向がわかる。かさ密度は、Sample-1,3,6,9,10,11について測定された。堆積深さにより、大きく2つのグループに分類された。サンプル-1,3,6(堆積物の表層から中間層)では、3.5-3.8g/cm3であり、サンプル-9,10,11(堆積物の下層)では、5.0-5.5g/cm3であった。

図7 H8、E9位置での堆積深さごとの粒子サイズの重量割合 [1,2]

 図7に、粒度分布データに基づいて整理された、炉心中央(H8)と炉心中間(E9)での、堆積深さごとの粒子サイズの重量割合を示す[1,2]。炉心中間位置(E9)では、デブリベッドが深くなるにつれて、微粒子デブリが増加する傾向が確認できる。これに対し、炉心中央(H8)では、Sample-3あたりの深さに比較的大きなデブリ粒子が堆積していることがわかる。ハードストップの近くには、微粒子デブリが多く存在していた。これらのことから、Sample-9,10,11では、粒度の異なる粒子が混在することで、かさ密度が高くなったと推定された。試料全体としては、1mmを超えるようなデブリ粒子が多く存在していた(デブリ重量の約80~90%)。Sample-6でのみ磁性がある金属の溶融凝固粒子が検出された。磁性粒子の割合は、Sample-6で回収されたデブリ重量の約0.9%であった。

 図8(a)~(e)に、5タイプに類型化されたデブリ粒子(サイズ>1mm)の外観写真の例を示す[1,2]。1B粒子(Type-I)は、H8位置の表面から回収され、破砕されたペレットの一部と推定された。6E粒子(Type-II)は、E9位置のバルクから回収され、破砕された被覆管の一部と推定された。1H粒子(Type-III)は、H8位置の表面から回収され、多孔質で、燃料棒の溶融凝固物と推定された、9G粒子(Type-IV)は、H8位置のハードストップ近くから回収され、主に金属成分の溶融凝固物からなると推定された。8C粒子(Type-V)は、H8位置のハードストップ近くから回収され、燃料棒由来と、構造材や制御材由来の酸化物が混合して形成されたと推定された。この5類型の粒子のうち、破砕被覆管(Type-II)と金属成分の溶融凝固物(Type-IV)以外は、全てのサンプル中で検出された。ただし、その存在割合に相違が見られた。表1に、Sample-1~11中での1mm以上の粒子について、目視で分別された粒子タイプの割合を示す[1,2]。

表1 上部ルースデブリ粒子の5類型の割合(%)、<1%の物量は0%として記載
Sample 採集位置 破砕ペレット

Type-I

破砕被覆管

Type-II

溶融凝固物

Type-III

金属成分の

溶融凝固物 Type-IV

燃料成分と構造材成分の

混合酸化物の溶融凝固物 Type-V

1 H8、表層 15 0 20 0 65
2 H8、8cm深さ B&W社で別途分析したため、データが存在しない
3 H8、56cm深さ 15 0 10 0 75
4 E9、表層 30 0 15 0 55
5 E9、8cm深さ 30 0 15 0 55
6 E9、56cm深さ 50 20 10 10 10
7 H8、36cm深さ 15 0 64 0 21
8 H8、70cm深さ 12 2 27 0 59
9 H8、77cm深さ 18 0 0 9 73
10 E9、74cm深さ 54 0 0 0 46
11 E9、94cm深さ 48 0 7 0 45
図9 ルースデブリサンプルのパイロット点火試験の様子、(左)テスラコイル、(右)プロパントーチ [1,2]

 Sample-1,7,8(H8部位)では、破損被覆管の大きな粒子(Type-II)はほとんど存在せず、デブリ粒子の15%は燃料ペレット(Type-I)、残りは溶融凝固物(Type-III)と混合酸化物の溶融凝固物(Type-V)であった。Sample-7では、特にType-IIIの割合が多かった。Sample-3では、デブリ粒子の15%はType-Iで、Type-Vの割合が多かった。Sample-9では、ユニークな金属粒子が検出された(後述)。Sample-4,5(E9)では、デブリ粒子の約30%がType-I、15%がType-III、55%がType-Vであった。Sample-6には、破砕被覆管(Type-II)が多く含まれていた。Sample-6は、ドリルサンプラーの先端形状を変えることで固い層を突き破って採集されたサンプルであり、他と違う物質が堆積していた可能性があると推定された。

 磁性粒子については、Sample-6中で1.178g(0.9%)が磁性を持っており、その95%が300~4000μmのサイズだった。

 自然発火性については、Sample-3とSample-6の、<20μmから>4mmサイズまでの粒子群からデブリ粒子がそれぞれ分取され、乾燥条件と湿潤条件で、テスラコイルとプロパントーチを用いたパイロット点火試験が行われた。いずれの条件でも、自然発火性は見られなかった。

 Sample-1とSample-6の一部(デブリ粒子7個)は、RH社で熱分析試験に供された。6個は発熱反応が見られなかった。1個は、約550℃から1000°の範囲で大きな発熱を計測した。その理由として、未酸化のZrが表面酸化膜に覆われて残留しており、昇温によって酸化したと推定された。図9に、自然発火試験の様子を示す[1,2]。

微細組織分析用サンプルの選定

 表2に、微細組織分析に供されたデブリ粒子の一覧を示す[1,2]。これらについてて、INELで金相観察やSEM/EDX分析が行われた後、22個はEGG社とANLの共同で、オージェ分光などを用いてさらに詳細な分析が行われた。残りの7個は、EGG者とWH社の共同で分析が行われた。

表2 分取されたデブリ粒子(29個)の分析結果の概要 [1,2]
粒子番号

(ID)

UO2の面積分率# UO2の結晶サイズ(μm) (U,Zr)Oxの面積分率# ZrO2の面積分率# その他酸化物相の面積分率# 酸化物相中の析出相の主要成分 金属相の面積分率# 酸化物母相へのFeの混入 SAS分析による

酸化物母相中の酸素濃度(at%)

事故時ピーク温度の推定(K) ピーク温度の推定根拠
1A 0.5 10 0.3

(U-Zr-O金属)

Tr -- -- 0.2 (Zr金属) -- -- 2170~2245 ・UO2溶融の痕跡なし

・α-Zr(O)のバルーニング

・Zry/UO2の界面反応の痕跡あり

1B 1.0 12 Tr Tr -- -- -- -- -- 2170~2600 ・UO2溶融の痕跡なし

・Zry/UO2の界面反応の痕跡あり

・若干の結晶成長

1E 0.1 同定できず 0.1 0.2 -- -- 0.6 (Zr金属) -- ~67 (付着(U,Zr)O2) 2810~2960 ・ZrO2溶融の痕跡なし

・α-Zr(O)溶融の痕跡あり

・(U,Zr)O2溶融の痕跡あり

1H -- -- 0.8 -- 0.2 (Al,Cr,Fe,Ni,U,Zr) -- -- -- -- >2810 ・(U,Zr)O2溶融の痕跡あり

・U-Zr-Oメルトの非均質凝固相

3L -- -- 1.0 -- -- -- -- -- 65~72 >2850 ・(U,Zr)O2溶融の痕跡あり
3M 0.4 11 0.6 -- -- -- -- -- -- >2850 ・(U,Zr)O2溶融の痕跡あり

・酸化物相に微量のCr,Ni,Fe固溶

4A 0.3 >18 0.5 -- 0.2 (Al,Cr,Fe,Ni,U,Zr) Ni-Sn, Ru-Ti -- あり -- ~2810 ・(U,Zr)O2溶融の痕跡わずかにあり

・(U,Zr)O2溶融凝固相(多孔質)が未溶融UO2相に接触

4B 0.3 >18 0.7 -- Tr

(Al,Cr,Fe,Ni,U,Zr)

Ni-Sn, Ru-Tc -- -- 64~70 ~2810 ・(U,Zr)O2溶融の痕跡わずかにあり

・(U,Zr)O2溶融凝固相(多孔質)が未溶融UO2相に接触

・構造材不純物との相互作用により融点低下の可能性

4D -- -- 1.0 -- -- Cr-Fe-Ni-Sn -- -- -- >2850 ・(U,Zr)O2溶融の痕跡

・稠密相

5E 0.1 ~12 (明瞭でない) 0.9 -- Tr

(Cr,Fe,Ni,U,Zr)

Ru-Ni-Tc-Rh -- あり 68~74 ~2810 ・(U,Zr)O2溶融凝固相(多孔質)が未溶融UO2相に接触
6B -- -- -- -- -- -- 1.0 (Zr金属) -- -- <2245 ・α-Zr(O)溶融の痕跡なし
6C -- -- 0.5 0.3 0.2

(Al,U,Zr + Tr-Fe,Cr)

Ni-Sn-Zr-Al-U -- -- 63~69 2170~2960 ・ZrO2溶融の痕跡なし

・UO2とAl2O3の共晶溶融の痕跡あり

6D 0.9 10 0.1 -- -- -- -- -- ~70 2170~2810 ・燃料溶融の痕跡なし

・金属U-Zr-OメルトがUO2から酸素吸収して酸化・凝固した痕跡

・UO2側は還元の痕跡

6E -- -- -- 0.2 -- -- 0.8 (Zr金属) -- -- ~2000 ・酸化した被覆管破砕物

・溶融の痕跡なし

6F -- -- 0.8 -- Tr

(Al,Cr,Fe,Ni,U,Zr)

-- 0.2 (Ni-Fe合金) -- -- 2170~2810 ・金属U-Zr-Oメルト(多孔質)が(U,Zr)O2に付着し凝固した痕跡

・磁性粒子混在

7A -- -- 0.6 -- 0.4

(Al,Cr,Fe,Ni,U,Zr)

Ni-Fe -- あり -- ~2810 ・(U,Zr)O2溶融凝固相(多孔質)

・構造材不純物との相互作用により融点低下の可能性

7B 0.3 ~10 (明瞭でない) 0.2

(U-Zr-O金属)

0.2 -- -- 0.3 (Zr金属) -- -- 2170~2245 ・UO2やα-Zr(O)の溶融の痕跡なし

・UO2/Zry相互作用の痕跡

7E 0.3 28 0.6 -- Tr

(Al,Cr,Fe,Ni,U,Zr)

(Cr-Fe相とNi-Fe相分離)

Ni-Sn-Fe 0.1 (Ni-Fe合金) -- 65~70 ~2810 ・(U,Zr)O2溶融凝固相(多孔質)
8A -- -- 1.0 -- Tr

(Al,Cr,Fe,Ni,U,Zr)

Mo-Sn -- -- 66~70 ~2810 ・(U,Zr)O2溶融凝固相(多孔質)
8C -- -- 0.6 0.2

(Cr,Ni,Fe混入)

0.2

(Al,Cr,Fe,Ni,U,Zr)

Ag -- あり 62~66 >2170 ・U-Zr-Oメルトの酸化、凝固の痕跡
8E -- -- 0.7 -- 0.1

(Cr,Fe,Ni,U,Zr)

0.2

(U,Zr比が異なるU,Zr相)

Ni-Sn -- あり 70~72 ~2810 ・(U,Zr)O2溶融凝固相(多孔質)

・凝固後に、さらに溶融Zr金属と接触した痕跡

8H -- -- 0.8 -- Tr

(Cr,Fe,Ni,U,Zr)

Ni-Sn 0.2 (Ag) あり -- >2850 ・(U,Zr)O2溶融凝固相(稠密相)

・微量なFe含有

9D -- -- 0.1 -- 0.2

(Ni,Sn,Ag,Fe金属相)

Ni-Sn 0.7 (Ag) あり -- ~2810 ・(U,Zr)O2溶融凝固相(多孔質)
9G -- -- -- -- 0.2

(Ni,Sn,Ag,Fe金属相)

Ni-Sn 0.8 (Ag) -- -- >1233 ・溶融したAg
10A 0.2 28 0.8 -- -- Ni-Sn-Tc-Ru -- -- 65~69 ~3120 ・(U,Zr)O2溶融凝固相(稠密相)

・ZrO2濃度5%

10E 0.9 10 0.1 Tr Tr

(Cr,Fe,Ni,U,Zr)

Ni-Sn -- -- 63~71 >2810 ・U-Zr-OメルトがUO2ペレット上に凝固
10F -- -- 0.9 -- 0.1

(Cr,Fe,Ni,U,Zr)

Ni-Ru-Fe -- あり 68~71 >2850 ・(U,Zr)O2溶融凝固相(多孔質 or 稠密相)
11B -- -- 0.5 -- 0.1

(Al,Cr,Fe,Ni,U,Zr)

(Cr-Fe相とNi-Fe相分離)

0.1

(同定できず)

Ni-Fe-Sn-Ag-Mo 0.3 (Ni-Fe合金) -- -- ~2810 ・(U,Zr)O2溶融凝固相(多孔質)
11G 1.0 10 Tr Tr -- -- -- -- -- 2170~3120 ・UO2溶融の痕跡なし

・わずかに、(U,Zr)O2相の溶融開始の痕跡

# 相の面積分率は、金相写真やSEM写真から目視で判定

# Tr:トレース量

事故時ピーク温度の評価法

 デブリのふるまい評価においては、FP放出の推定などにも利用できる、事故時に経験した温度の推定が重要である。デブリ粒子の微細組織観察により、温度履歴を推定することは難しいが、事故時ピーク温度については、ある程度推定が可能である。ピーク温度の推定には、以下の知見・データが利用できる。

  • UO2結晶粒の結晶成長、空孔の連結の痕跡
  • UO2相や(U,Zr)O2相の溶融・凝固の痕跡(マトリクス相の稠密度、空孔の形状)
  • Zry残留相の相変態、溶融の痕跡
  • 燃料成分とその他構造材成分との相互作用の痕跡、形成相の組成
  • 形成相や析出相の同定、平衡状態図との比較
  • 先行溶融物の同定(構造材、制御材成分)

推定されたピーク温度を解析コードの境界条件に用いることで、デブリふるまい予測を精緻化することも可能となる。

結晶成長と溶融の痕跡について

 UO2結晶粒が残留しているデブリ粒子については、燃焼度依存での結晶成長と温度との関係に関する評価式に基づいて、ピーク温度をある程度推定できる(図10[8])。しかし、複数回の温度上昇が発生していたケースでは評価が難しくなることに留意が必要である。通常運転中の結晶粒のサイズは、およそ10μnであるのに対し、TMI-2の上部ルースデブリの分析では、結晶サイズは10μmから最大で28μmであった(表2)。このことから、UO2結晶粒が残留していたほとんどの粒子で、ピーク温度は<2000~2200Kと推定された。あるいは、それ以上の高温を経験していたとしても、極めて短い時間であったと推定された。

 一方で、使用済み燃料の炉外での昇温試験から、温度が2000Kを超えると、空孔が連結して結晶粒界に移行しはじめ、UO2融点(3120K)に近づくと、結晶粒内部は次第に空孔フリーな状態に向かうことが知られている。また、結晶粒自体の形状も角が取れて丸くなってくることが知られている。逆に、溶融開始した移行では、メルト中に細かな気泡や大きな空孔が形成される。このような、空孔の連結具合から、デブリ粒子のピーク温度をおよそ推定することができる。

Zry相の状態変化

 デブリ粒子の一部に、破砕したZry被覆管が残留している場合には、その相状態の変化がピーク温度推定の指標として利用できる。図11に、Zr-O状態図を示す[9]。製造時のZryは、燃料棒の円周方向に結晶方位が揃ったα-Zr相からなっている。これが920K以上に昇温されると、α相の再結晶化が起こり、等軸晶に相変態する。さらに1105Kで、α相からβ相への相変態が起こる。Zry中に酸素が固溶している場合、この相変態温度は、酸素濃度と共に上昇する。β相に相変態したZryが冷却されるとα相に再度変態するが、その微細組織は、本来のα相と大きく異なるため、これをprior-β相(#β相への高温変態を経験したα相組織)という。図11で、1105~1245Kの温度を経験したZryの微細組織中にはα相とprior-β相が混在することが知られている。一方で、酸素固溶により、より高温で安定に存在するα相をα-Zr(O)といい、最大約30at%の酸素を固溶することができる。これに対し、β相の酸素溶解度は最大約10at%である。つまり、もし酸素をほとんど固溶していないα相が検出されれば、事故時のピーク温度は<1105K、酸素を最大数at%固溶するprior-β相が検出されれば、ピーク温度は>1245Kと、それぞれ推定できる。さらに、α-Zr(O)の融点極大値は約2245Kであることから、溶融凝固の痕跡のないα-Zr(O)が検出されれば、ピーク温度は<2245Kと推定される。1245~2245Kの間では、Zry被覆管外周部での水蒸気酸化により、ZrO2相とα-Zr(O)相が放物線則で成長する。デブリ粒子の外周部にこれらの相が残留している場合、温度推定の根拠として利用できる。

 他方、被覆管とペレットが接触している場合には、Zry/UO2界面において、UO2側からZry側に酸素が拡散し、α-Zr(O)とZrO2が形成される。U-Zr-O三元系状態図に基づいて、界面層の状態から事故時ピーク温度が推定できる。(Zr,U)O2は高温では立方晶(cubic)であるが、1760Kまで温度低下すると正方晶(tetragonal)に相変態すると考えられる。さらに低温では、単斜晶(monoclinic)が安定化する。このような(Zr,U)O2相の結晶構造も温度推定の根拠として利用できる。正方晶から単斜晶への相変態は固相拡散を伴うため、酸化したZry被覆管の冷却過程で単斜晶が観測されることはほぼないとされている。しかし、1F事故条件では、デブリ中の酸素ポテンシャルが低かった可能性があり、単斜晶が出現する可能性を考慮しておく必要がある(参考12:溶融デブリの凝固)(参考7:燃料棒の溶融・破損メカニズム)。また、Zry相の酸化過程では、α-Zr(O)が共存しているため、酸化度は若干hypo側(<2.0)になっていることに留意が必要である。

 Zry/UO2界面で相互作用が進む場合、量はわずかであるが、Zr金属によってUO2が還元されるため、>1425KでU-Zr合金相が形成され溶融開始する。顕著に溶融が進むのは>1775Kと考えられている。一方で、UO2側バルク相は酸素を失って、UO2-xに変化する。UO2-xは、冷却すると、UO2とU金属に解離する。Zry/UO2界面やUO2ペレット内部に、これらの相互作用の痕跡が見られた場合、特にU-Zr合金の溶融の痕跡が見られた場合、ピーク温度>1775Kと推定される。

 #元文献[1,2]では、α-Zr(O)とUO2の間で、2170Kで共晶溶融が発生するため、ピーク温度の指標となるとされているが、厳密には、α-Zr(O)とUO2の間で共晶反応は発生せず、酸素濃度に応じて、2170K近傍で、急速に液相化が進む現象であることに留意が必要である(参考7:燃料棒の溶融・破損メカニズム)。従って、ここで導入されている指標2170Kは、数10Kの温度を持った値であり、実際には、もう少し高い温度であったと示唆される。

UO2とZrO2の反応

 二酸化物については、ZrO2とUO2の融点が、それぞれ2960K、3120Kであり、ピーク温度推定の指標に利用できる。また、ZrO2とUO2のモル比1:1の組成で、(U,Zr)O2の混合二酸化物の融点が極小化する(2810K)。融点以下では、(U,Zr)O2は全率で固溶する固溶体相を形成する。

 #この文献[1,2]では、混合二酸化物中で若干U:Zr比が変化しても、二酸化物のsolidus(溶融開始温度)はほとんど変化しないため、(U,Zr)O2相の溶融の痕跡が温度の指標として利用できるとされている。しかし、最近の報告では、組成に応じてsolidusが変化するとされているため、推定精度に課題がある。この文献での評価結果より、やや高温に到達していた可能性が示唆される。図12に、この文献で参照されたUO2-ZrO2系状態図を示す[10]。

U-Zr-O状態図

 高温で燃料棒が溶融した直後には、溶融物は亜酸化状態のU-Zr-Oメルトを形成すると考えられる(参考7:燃料棒の溶融・破損メカニズム)。したがって、溶融行固相中のU:Zr:O比を調べることで、ピーク温度を推定することが理論的には可能である。おそらく、約<1773Kでは固相拡散が相互作用を支配するため反応速度が低下し、現実的にはデブリふるまいへの影響は小さいと推定される。そこで、U-Zr-Oメルトの組成と1773Kの平衡状態図を照らし合わせることで、デブリの凝固パスを推定することができる(参考12:溶融デブリの凝固参考14:Fe-U-Zr-O状態図の展開図)。U-Zr-Oメルトからは、α-Zr(O)、U-Zr合金、(U,Zr)O2-xが形成されると予想される。

 しかし、TMI-2では、燃料デブリは、常に高圧水蒸気にさらされていたと考えられている。このため、いったん形成されたα-Zr(O)やU-Zr合金が、冷却過程でZrO2や(U,Zr)O2の酸化されたと推定されている。このようなメルトの凝固過程での水蒸気酸化では、多孔質な(泡状:Foamy)微細組織が形成される。オージェ分光分析では、一部のサンプルで、かなり高い酸化度が検出されており、平衡状態図と整合していない。高酸化度状態の形成メカニズムは不明とされている。

その他構成物質の相互作用

 燃料棒成分以外の炉心構成物質についても、様々な相互作用が発生すると考えられ、事故時の温度推定の根拠に利用できる可能性がある。しかし、成分数が多いため、状態図が整備されていないことが多い。また、燃料棒成分に比べて物量も少ない。表3に、炉心物質の成分表を示す。

表3 TMI-2炉の炉心物質の重量と組成
炉心物質 重量(t) 主要成分 組成(wt%) 炉心物質 重量(t) 主要成分 組成(wt%)
UO2ペレット 93.05 U-235 2.265 ZrO2 0.331 Zr 74
U-238 85.882 O 26
O 11.853 Ag-In-Cd 2.749 Ag 80.0
Zry-4 23.029 Zr 97.907 In 15.0
Sn 1.60 Cd 5.0
Fe 0.225 B4C-Al2O3 0.626 Al 34.33
Cr 0.125 O 30.53
O 0.095 B 27.50
その他 C,N,Hf,S,Al,Ti,V,Mo,Ni,

Cu,W,H,Co,B,Cd,U

C 7.64
SS 4.636 Fe 68.635 Gd2O3-UO2 0.1315 Gd 10.27
Cr 19.000 U 77.22
Ni 9.000 O 12.01
Mn 2.000
Si 1.000
その他 N,C,Co,P,S
Inconel-718 1.211 Ni 51.900
Cr 19.000
Fe 18.000
Nb 5.553
Mo 3.000
その他 Tl,Al,Co,Si,Mn,N,Cu,C,S

 表4に、ここでまとめた、ピーク温度推定の指標をまとめて示す。これを参考に29個のデブリ粒子の事故時ピーク温度が推定された(表2)。最近の研究成果とは、いくつかの温度指標が異なっている場合がある。

表4 ピーク温度推定の指標(K)
現象 温度(K)
UO2.0の融点 3120
ZrO2の融点 2960
UO2+xの融点 >2900
(U,Zr)O2固溶体の溶融温度(極小値) 2810
UO2-xの融点 >2750
U/UO2の偏晶溶融(monotectics) 2670
α-Zr(O)の融点(極大値)

(#最近の推奨値は、これより約100K高い)

2245
α-Zr(O)/UO2の共晶溶融

(#厳密には、α-Zr(O)とUO2の間で、2173Kで共晶溶融は発生しない)

2173
Zry-4の融点 2030
SSの融点 1720
インコネルの融点 1650
インコネル/Zryの液相化進展 1500
Zry/UO2界面での液相形成開始、金属U相の出現

(#U-Zr合金が顕著に溶融する温度は1775K)

1425
Fe/Zr、Ni/Zr共晶溶融の開始 1220

ここに図10-12を挿入、、、、

微細組織分析の結果

 上部ルースデブリ中のデブリ粒子の構成成分は、上述の5類型におよそ分類でき、本来炉心を構成していたUO2ペレット、ジルカロイ、インコネル等の物質(およびその破砕物)とは異なっていることが明らかになった。一方で、デブリ全体量に対するデブリサンプル量の少なさから、分析結果の代表性に関する議論がおこなわれた[1,2]。上部ルースデブリの平均的な特徴を示すデブリ粒子は存在せず、異なるタイプのデブリ粒子が凝集・混合していた。そこで、溶融凝固や物質間の相互作用の痕跡を明らかに残しているデブリ粒子をが29個選定され、その微細組織が詳しく分析された。得られた分析データに基づいて、事故時にそのデブリ粒子が経験した化学環境(ピーク温度、酸化度、相互作用)が推定された。これらにより、上部ルースデブリ全体として、事故時にどのようなふるまいをしたのか、また、現在どのような特性を有するのかが検討された。(#ここで、29個というのは現場作業の結果としての数字であり、微細組織観察の点数は29個で必要十分であったということではない。)

 図13に、詳細分析に供された29個のデブリ粒子の外観写真を、サンプル採集場所、粒子番号、粒子サイズ、Type-I~Vの分類とあわせて示す。なお、3L,3M粒子については、元の文献に外観写真が掲載されていないため、金相写真を示す。粒子タイプについては、多くの粒子が5個のTypeの混合・凝集物となっていた。微細組織観察による事故時ピーク温度の推定結果は、表2(上述)に記載した。

 以下に、主な観測結果を示す。

燃料棒破損に関する知見

  • UO2粒子の結晶成長はほとんどなし or 軽微(本来のサイズ10μmに対し、最大で29μm) ⇒事故時ピーク温度は<2000~2200Kと推定(高温を経験したとしても、短時間)
  • 他方、一部の粒子で、(U,Zr)O2相やUO2相の溶融の痕跡、(U,Zr)O2相については多孔質相と稠密相が存在し、溶融・凝固条件の違いを示唆 ⇒それぞれ>2810K、>3120Kと推定

以上のことから、デブリの平均的なピーク温度は2200K程度と推定

  • 7A粒子は、(U,Zr)O2メルトからの凝固と推定される多孔質相を含む
  • 10F粒子は、一部が液相線温度をこえていた痕跡
  • 3L粒子は、UO2-ZrO2メルトからの凝固の痕跡(デンドライト構造)
  • 10A粒子は、(U,Zr)O2溶融凝固相中のZr濃度が2wt%程度、微細組織はガラス化 ⇒液相線温度が上昇し、急冷した可能性
  • いくつかのデブリ粒子中(典型例:6F粒子)で、U-Zr-O相の溶融・凝固の痕跡(>2170K)、バルーニングした被覆管が残留した痕跡(<2245K、α-Zr(O)融点以下) ⇒燃料棒上部で溶融した物質が下方に移行し、温度の低い物質の隙間に侵入・凝固と推定、溶融物から熱を奪うヒートシンクのメカニズムがあった可能性、また、(U,Zr)O2相とUO2相の分布から、燃料溶融初期に形成されるU-Zr-OメルトによりUO2が溶融・浸食されるメカニズムを推定
  • 6D粒子は、U-Zr-Oメルトが凝固時に酸化したと推定、おそらく徐冷条件。高酸化度(酸素濃度71at%)に到達 ⇒酸素供給減が同定できていない

制御棒やその他構造材との相互作用に関する知見

  • デブリ粒子の約92%が燃料棒成分、約8%がそれ以外
  • ほとんどのデブリ粒子で、SS成分を検出、特に4A、6C、7A、8C粒子で多く検出。主に粒界に析出、時に第二相を形成。いくつかのデブリ粒子では構造材酸化物が主成分 ⇒構造材との相互作用で、燃料棒破損が促進されると推定
  • 6C粒子では、Al2O3とUO2やZrO2との反応の痕跡、平衡状態図では2170Kで酸化物三相のメルトが形成されると推定。一方でZrO2相が残留(融点2960K) ⇒このデブリ粒子の事故時ピーク温度を2170~2960Kと推定
  • 11B粒子は、Niを多く含む、SnやRu,Tc金属相も検出 ⇒NiがFe,Crより金属として残留しやすい傾向を示唆(7E粒子)
  • Ag-In-Cdは、U-Zr-O相中や(U,Zr)O2相中にほとんど存在しない。炉心インベントリに比べ、>90%が喪失
  • 8H、9D、9E粒子中には、わずかにAgを含む相を検出

これらのことから、制御棒案内管やスペーサーグリッド、あるいは一部に装荷されていた可燃性毒物棒(Al2O3-B4C)や制御棒被覆管などの溶融が燃料棒溶融進展のトリガーになっている可能性が推定された。さらに、

  • 複数回の燃料棒昇温過程が発生していた可能性
  • ZrのUに対する相対濃度が、本来の炉心インベントリの<50% ⇒Zrが先行崩落しデブリベッド中での存在割合が少なくなった可能性
  • Gdの均質化、U富化度の均質性 ⇒デブリ崩落時に、炉心抗生物質が均質混合したと推定
図13(C) 11C粒子の外観








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デブリ粒子の微細組織の分析結果(詳細)

微細組織分析方法の特徴

 TMI-2事故炉から回収されたデブリサンプルの微細組織の分析方法としては、外観写真、金相写真、SEM/EDX分析、オージェ分光分析、が主に用いられた。いずれも一般的な微細組織の分析手法であるが、燃料デブリ分析の観点では、以下が特筆される。

#金相写真(Metallograph)は、研磨後(as-polished)、エッチング後(after atching)などの条件で撮影されている。エッチングすることで、結晶粒界などが選択的に消失するため、結晶粒のサイズや分布などの微細構造がより明らかに示される。一方で、金属系の析出物や、高次の酸化物などは、エッチングにより消失する。したがって、研磨後とエッチング後の金相組織を比較することが重要である。また、故意に強くエッチングすることで(オーバーエッチング)、酸溶融しにくい部分だけが取り残され、デブリ粒子中の元素分布が観察しやすくなる場合がある。TMI-2の燃料デブリサンプル分析では、UO2と(U,Zr)O2の混合状態を、オーバーエッチングによって分析している。酸溶融しにくい(U,Zr)O2は、オーバーエッチングでも残留しやすいのに対し、UO2領域は選択的に消失する。

#SEM(Scaning Electron Microscope)分析では、試料の研磨断面に対する、BSI(Back-Scattered Electron Image)が多く用いられている。BSIでは、重元素の存在部位が相対的に明るく示されるため、デブリ粒子内部でUが濃化している部位を把握するのに便利である。また、同じ元素であっても酸化物相と金属相では(例:ZrとZrO2)、あるいは、同じ二酸化物であってもUO2と(U,Zr)O2では、BSIでの明度が異なって見えるため、酸化進展の状態などを把握するのにも有用である。

#EDX(Energy Dispersed X-ray Spectroscopy)分析では、試料表面近傍に存在する元素から放出される特性X線を検出することで、試料中のそれぞれの元素の存在部位をマッピングして同定したり、検出された元素ごとの特性X線の強度を比較して半定量的な濃度分析を行うことができる。一般的に、酸素、炭素などの軽元素の検出感度、分析精度は高くない。TMI-2サンプルの分析では、それぞれの元素がサンプル内に検出されたかどうかの調査、および、試料内での元素どうしの混合性がよい場合には、金属成分(酸化物ではカチオン成分)の重量濃度の評価(酸素や炭素の存在を無視し、U,Zr,Feなどの濃度を重量比で評価)、に利用されている。

#オージェ分光分析では、酸素検出感度がよく、空間分解能が高いという特徴が利用されている。燃料デブリの分析では、UやZrの酸化度が重要な測定項目の一つになるが、SEM/EDXでは酸素の分析精度が低く、定量評価を行うことが困難である。オージェ分光分析では、モル濃度(誤差2~3at%)で酸素を定量できるため、TMI-2燃料デブリの分析でしばしば用いられている。燃料デブリ粒子内部の酸化物中での酸素欠損状態や、逆に、表面近傍での高次酸化物の形成などが同定されている。

1A粒子(H8、表面)

 図14(a)に、1A粒子の断面金相写真を示す。写真上部にZry被覆管の一部が、下部に燃料ペレットの残差が確認できる。両者の間には、U-Zr-Oメルトの凝固層が存在しており、さらに、その内部に断面が楕円形形状のボイド2個が形成されていた。また、Zry被覆管の外表面には酸化皮膜が形成されていた。図14(b)に、ボイド周辺を拡大したBSIを示す。Zry被覆管の外周に軽元素が付着していること、Zry被覆管とUO2ペレットとの間の物質は、Zryより明るく示され、Uが多く含有していること、ボイド周辺には、暗く見える層が存在し、おそらく選択的に酸化したZrが濃化していること、などがわかる。EDX点分析により、Zry外表面の付着物はSiとCaをわずかに含むFeが主成分であることが示された。また、図3(b)の領域6の面分析により、U-Zr-Oメルト領域はZrリッチで、Zrを約87wt%、Uを約11wt%含むこと、約2wt%のNiと微量のCr,Feが含有されていることが示された。図14(c)(d)に、図3(b)の領域7周辺の拡大金相と拡大BSIをそれぞれ示す。金相からは、2種類の合金相が析出していることがわかる。コントラストを変えて撮影したBSIでは、Uリッチの明相(U,Zr合金相と推定)とα-Zr(O)相が、凝固時に析出していること、ボイド周辺でZr酸化物が濃化していることが確認できる。さらに、ボイド周辺の酸化物層は2相に成層化しており、ボイドに近い部分では主にZrO2から、中間層は主に(U,Zr)O2からなっていた。わずかにSnが検出された。また、残留していたUO2ペレット内には、わずかにFe-Zrからなる金属相が侵入していた。ペレット内の結晶粒サイズは10ミクロン程度であり、ほとんど結晶成長は見られなかった。さらに、Zry被覆管の歪み程度とペレットと被覆管のギャップ幅が約1mmほどに拡大していたことから、Zry被覆管は事故時の内圧上昇によりバルーニングしていたと推定された。U-Zr-Oメルトと燃料ペレットおよびZry内面はよく濡れていたが、ほとんど相互作用は見られなかった。

 これらのことから、この粒子では、約973-1073Kで発生するZry被覆管のバルーニングで拡大した燃料ペレットとZry被覆管のギャップに、燃料棒の上部で溶融したU-Zr-Oメルト(#燃料/被覆管界面で形成されるため、形成時は亜酸化状態、参考7:燃料棒の溶融・破損メカニズム)が溶落して堆積・凝固したと推定された。メルトがさらに下方に溶落して形成されたボイド中に水蒸気が侵入して、U-Zr-Oメルト中のZrを選択的に酸化することで、ボイド周辺のZr濃化層が成層化して形成されたと推定された。U-Zr-Oメルトは凝固時に相分離するが、亜酸化状態のメルトは、α-Zr(O)、U-Zr合金、Ni-Fe-Cr(-Zr)合金に相分離したと推定された。これは、U-Zr-Fe-O系の平衡状態図からの推定と整合していた。相分離が観察されたことから、1A粒子は徐冷されたと推定された。

 さらに、残留していたZry被覆管の外周部の酸化皮膜の膜厚が限定されていること、U-Zr-Oメルトとペレットとの相互作用がほとんど見られないこと、β-Zrが形成されていること、などから、1A粒子中の被覆管部分のピーク温度は、1400-1500Kと推定された。溶融凝固物については、U-Zr-O状態図から2170~2245Kと推定された。粒子表面にFeが付着していることで、粒子が赤褐色に見えていた。U-Zr-Oメルト相中にわずかにSS成分の酸化物が混入されていたことから、事故初期に形成されると考えられる燃料集合体部材相互の共晶溶融反応(例:Zry/インコネル)が、燃料溶融のトリガーになっていた可能性が示唆された。1A粒子は、Type-I,II,IIIの凝集物と考えられる。Type-Vの成分もわずかに存在している。

図14(a) 1A流離の断面金相(研磨後)











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1B粒子(H8、表面)

 図15(a)に、1B粒子の断面金相写真を示す。燃料ペレットのおよそ1/4断面が確認できる。また一部(図中のLocation-H)に溶融凝固物が付着していることがわかる。ペレット内部(Location-F)と、付着物がある領域(Location-H)の拡大金相写真を、図15(b)(c)にそれぞれ示す。ペレット内部では、結晶粒のサイズが最大でも12ミクロンで、ほとんど結晶成長していないことが確認された。一方、付着物はペレットに比べて稠密であり、わずかにペレットの結晶粒界面に侵入していた。EDX分析により、付着物はU-Zr-Oの溶融凝固相と評価された。また、付着物相内に濃度勾配があり、ペレット側に近づくにつれて、U濃度が増加した。

 これらのことから、1B粒子は、Zry被覆管が破損して、破砕した燃料ペレットが放出されたものと推定された。結晶粒がほとんど成長していないこと、および、U-Zr-Oメルトが付着していたことから、ピーク温度は<2200Kと推定された。U-Zr-O相はより高温に到達していた可能性がある。さらに、U-Zr-O相が相分離していないことから、1B粒子は急冷したと推定された。1B粒子は、Type-I,IIIの凝集物と考えられる。

1E粒子(H8、表面)

 図16(a)に、1E粒子の断面金相写真を示す。粒子の中央には、溶融凝固したZry被覆管が存在し、図中で下の方には、燃料ペレットがわずかに残留していた。両者の界面には、反応層が形成されており、その内部には、還元されたU金属がわずかに存在していた。図中上の方には、ZrO2酸化皮膜層が見られ、さらにその外表面には(U,Zr)O2の溶融凝固層が付着していた。これらのことから、1E粒子は、破損したZry被覆管が主成分であり、その内表面に燃料ペレットが、外表面には、上方から溶落してきた二酸化物デブリが付着して形成されたと考えられた。図16(b)に、燃料ペレットとZry被覆管の界面の拡大BSIを示す。燃料/被覆管界面では、事故時に成分が相互拡散し、複雑な拡散経路を構成することが知られているが[参考7:燃料棒の溶融・破損メカニズム)、1E粒子で形成された拡散経路が確認できる。Point-1~11について、EDX点分析が行われており、Uが界面を通じてZry側に拡散し、様々な反応層が形成されたことがわかる(U-Zr合金相、(Zr,U)O2相、α-Zr(O)相)。さらに、特筆すべきこととして、界面層の一部(おそらく金属相中)にFe,Crが検出された(Point-7)。ペレット内の結晶粒は平均30ミクロン程度に成長していた。Zry被覆管のバルク部分は、酸素固溶したα相(α-Zr(O))とβ相(β'-Zr)から形成されており、いずれも溶融凝固した痕跡が見られた。

 図16(c)には、Zry被覆管とZrO2皮膜の界面の拡大BSIを示す。Zry被覆管側は、主にα-Zr(O)とZrO2に相分離していた。他方、ZrO2皮膜側では、バルクはZrO2相だったが、成分拡散の痕跡を示す、ひも状の構造が観測された。この構造はZr金属を主成分とし、わずかにUを含有していた。これは、外周部に付着した(U,Zr)O2溶融凝固物から、ZrO2皮膜内部を還元されたUが拡散してきたことを示唆している。また、Zry/ZrO2界面には、Al,Fe,Crを多く含む層が存在していた。Alは、可燃性毒物棒(Al2O3-B4C)由来と推定された。図16(d)には、(U,Zr)O2とZrO2の界面の拡大BSIを示す。(U,Zr)O2領域では、比較的均質にUとZrが分布しているのに対し、ZrO2領域では、Uがひも状に濃化している様子がわかる。Point-1~4および、その周辺の面領域について、EDX分析が行われた。付着物のバルクでは、平均で11wt%U-89wt%Zrという組成であったが、ZrO2層内のひも状領域では、39.9wt%U-60.1wt%Zrという値が得られた。また、界面には、Al,Fe,Cr,Snなどを含むZr相(酸化物と推定)が存在していた。図16(e)には、付着物から、ZrO2皮膜にかけてのBSI像に、オージェ分光分析での元素濃度点分析部位を重ねて示す。界面からの距離によって、U,Zrに濃度勾配があること、また、酸素濃度が二酸化物の値である66.6at%に対して、外周部でやや高く、界面近傍でやや低いことがわかる。

 これらのことから、1E粒子は、Zryの溶融温度(~2245K)以上の温度に到達し、内側ではペレットとZry被覆管の相互作用、外側では、付着した(U,Zr)O2メルトとZrO2皮膜の相互作用が発生していたと推定された。また、図16(d)(e)で確認されるように、(U,Zr)O2付着物中の組成は比較的均質であり、この部分が>2800Kで一時溶融していたと推定された(おそらく、燃料棒上部で>2800Kで溶融し、この部位に移行して付着)。付着物の外表面で、酸素濃度が66.6at%を超えていたことから、外周部では、凝固時に水蒸気と反応して酸化度が上昇したと推定された(#温度上昇局面では、相当量の水素が発生するため、66.6at%を大きく超えるような酸化度には到達しにくい。参考7:燃料棒の溶融・破損メカニズム参考10:デブリ溶融プールの形成・拡大と酸化度上昇)。また、Zry被覆管が溶融すると、そこに向かって、付着物から酸素が内包拡散したと推定された。このため、ZrO2酸化皮膜内で酸素が欠損し、ひも状の金属相が形成されたと推定された。それぞれの拡散層内でUやZrに濃度勾配があることから、1E粒子は徐冷されたと推定された。また、界面近傍にAl,Fe,Crなどを含む相が形成されていたことから、可燃性毒物棒が比較的初期に溶融開始し、燃料溶融のトリガーになっている可能性が示唆された。1E粒子は、Type-I,II,IIIの凝集物と考えられる。Type-Vの成分もわずかに存在していた。

 表5(a)~(d)に、EDXとSASの点分析結果を示す。

表5(a) 図16(b)部位での、燃料ペレット/Zry被覆管の界面のEDX点分析結果(wt%)
測定点 U Zr Fe Cr
1 100 - - -
2 25.8 72.4 - -
3 - 100 - -
4 19.6 80.4 - -
5 37.0 63.0 - -
6 67.4 32.6 - -
7 3.8 71.7 14.0 10.6
8 32.0 68.0 - -
9 84.6 15.4 - -
10 32.3 67.8 - -
11 7.8 92.3 tr tr
表5(b) 図16(c)部位での、ZrO2/Zry被覆管の界面のEDX点分析結果(wt%)
測定点 U Zr Fe Cr Al
1 - 27.2 3.0 2.8 67.0
2 - 100 - - -
3 - 100 - - -
表5(c) 図16(d)部位での、炉心構成物質のEDX点分析結果(wt%)
測定点 U Zr Fe Cr Al Sn
1 11.0 89.0 - - - -
2 - 71.3 13.6 11.4 3.8 -
3 - 80.9 4.0 0.6 4.2 10.3
4 39.9 60.1 - - - -
面分析 10.6 86.0 2.0 1.1 0.4 tr
表5(d) 図16(e)部位での、ZrO2皮膜とU-Zr-O溶融凝固物の界面 -オージェ分光分析(at%)
測定点 U Zr O trace
1 16.7 12.6 70.7 C, Cs
2 18.0 13.8 68.2 Sb, Fe
3 21.0 12.9 66.1 -
4 20.9 12.8 66.3 Cr, Al
5 7.1 28.0 64.9 C
6 10.9 23.8 65.3 C, Cr
7 3.2 33.0 63.8 C
8 2.8 33.0 64.2 Fe
9 2.9 35.3 61.8 Fe, C
10 20.2 13.0 66.8 Cr
11 19.0 14.3 66.7 Cr, Fe, C
12 14.1 19.5 66.4 Cr, Fe, C
13 6.7 27.3 66.0 Cr
14 4.7 29.3 66.0 C

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1H粒子(H8、表面)

 図17(a)に、1E粒子の断面BSIを示す。この粒子の内部には、稠密な粒子と多孔質領域が混在していた。また、試料全体のコントラストが小さく、元素分布がほぼ均質であると考えられる。稠密粒子の周辺領域A、多孔質領域B、多孔質領域と稠密粒子の境界領域Cについて、それぞれ詳細分析が行われている。図17(b)(c)に、領域Aの拡大金相写真(エッチング後)と、境界部分の拡大BSIを示す。さらに、図17(d)(e)に、BSI中で四角で囲って示した領域をさらに拡大したBSIと、EDX点分析の測定位置を示す。表6には、それぞれのEDX測定点で検出された元素の濃度比を示す。図17(b)では、Feを主成分とする酸化物相が、稠密粒子の結晶粒界に侵入している様子が確認できる。図17(c)では、稠密粒子の表面が多孔質相で侵食されている様子が見える。稠密粒子部位のEDX点分析では、UとZrのみが検出され、濃度比は59:41(wt%)であった。また、粒子が凝固時に凝縮した痕跡も見られなかった。多孔質領域からは、U,Zrの他に、Fe,Ni,Cr,Alが検出された。また、多孔質領域には、明度の異なる相が存在しており、検出された元素に大きな分布差があると推定された。

 図17(f)(g)には、領域Bと領域Cの拡大BSIをそれぞれ示す。領域BのEDX面分析結果、領域Cの稠密粒子のEDX点分析結果を、表6に示す。面分析の結果、多孔質領域の平均組成(酸素を除く)は、68U-28Zr-4Fe-traceNi,Cr,Al(wt%)と同定された。領域Cについては、稠密粒子と多孔質領域の組成は、領域AとBに類似していた。稠密粒子中のU:Zr比は67:33(wt%)であった。さらに、大きな粒子と接触している小さな粒子が溶融し吸収されようとしている様子が確認された。

 これらのことから、稠密粒子は、組成巾のある(U,Zr)O2固溶体で構成されていると推定された。また、固溶体の融点極小値に比べてUリッチであるため、その融点は2800Kより数10K以上高いと推定された。一方で、酸素濃度は同定できていないため、この粒子が亜酸化状態であった可能性は残されている。また、結晶粒界でFeリッチ相が見られたことから、高温メルト中で少量のFeが溶融していた可能性も考えられる。一方、多孔質相側では、SS成分やAlを含有する酸化物メルトが、凝固時に相分離したと推定された。SS成分の由来は、スペーサーグリッドや制御棒被覆管と推定された。Alの由来は、いくつかの燃料集合体内に装荷されていた可燃性毒物棒(Al2O3-B4C含有)と推定された。微細組織の構造から、まず、稠密粒子が高温(>2800K)で析出し、次に、U-Zr-SS-Al-Oメルトが相分離しつつ凝固し、ボイドを形成したと考えられた。また、多孔質相中にSSやAlが検出されたことから、構造材や可燃性毒物棒との反応で、燃料溶融が促進された可能性が示唆された。また、多孔質相による稠密粒子の浸食の様子が観察されたことから、稠密粒子と多孔質相の形成タイミングが異なっていたと推定された。すなわち、燃料/Zry被覆管の界面でいったん形成されたU-Zr-Oメルトが溶落して凝固した後に、U-Zr-SS-Al-のより低い融点を持つメルトが溶落して、いったん凝固した粒子をアタックした可能性が考えられた。このようなことから、高温で形成されていたと考えられる酸化物メルト相が均質であったのか、非均質であったのかは、この試料の分析だけでは判定できないとされた。おそらく、U-Zr-Fe-O系での複雑な凝固パスで析出が起きていると推定された。1H粒子は、Type-III,Vの凝集物と考えられる。

表6 1H粒子中のEDX分析結果(wt%) tr: trace量を検出
測定点 U Zr Fe Ni Cr Al
領域A、視野I
1 24.6 11.1 25.7 12.5 17.4 8.7
2 70.1 26.0 3.9 - - -
3 53.6 40.5 5.9 - - -
面分析 68 28 4 tr tr tr
領域A、視野II
1 53.6 42.2 4.2 - - -
2 58.7 41.3 - - - -
3 43.6 18.4 22.4 7.3 3.9 4.4
4 64.8 31.1 4.1 - - -
5 50.9 38.4 8.0 1.7 1.0 -
6 66.1 29.5 4.4 - - -
領域B
面分析 68 28 4 tr tr tr
領域C
1 67.0 33.0 - - - -
2 67.3 32.7 - - - -

3L粒子(H8、56cm深さ)

 図18(a)に、3L粒子の断面金相を示す。図18(b)(c)に、Location-Aの拡大金相写真とLocation-Cの拡大BSIをそれぞれ示す。断面は、複数の酸化物相の凝集物からなっており、内部に200~300ミクロンの丸い形状の大きなボイドと、数ミクロンサイズの小さいボイドが分散していた。ボイドの一部は楕円形の構造をしており、その周辺には微細なデンドライト組織が観察された。これらから、その周囲が高温で溶融した状態であったと推定される。オージェ分光分析では、主にU,Zrが検出され、そのモル比はZr/U=2.2~2.4とZrリッチであった。また、trace量のSS成分とAlが検出された。一部のボイド中には、Al-Cr-Fe-Ni相が検出された。典型的なものを図18(d)に示す。

 これらの観察結果から、この粒子は、燃料棒溶融初期に形成されたZrリッチのU-Zr-Oメルトが、酸化して凝固したと推定された。3L粒子は、Type-IIIと考えられる。わずかにType-Vの成分も検出されている。

図18(a) 3L粒子の断面金相(研磨後)













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3M粒子(H8、56cm深さ)

 図19(a)に、3L粒子の断面金相を示す。この粒子では、比較的中央部分にUO2が残留し、周辺部分に(U,Zr)O2の溶融凝固物が存在していた。図19(b)(c)に、UO2領域(Location-C)と(U,Zr)O2領域(Location-E)の拡大金相写真(研磨後)をそれぞれ示す。UO2領域では、ほとんど結晶成長が見られず、粒子サイズは約11ミクロンであった。また、多くのボイドが見られた。(U,Zr)O2領域では、EDX分析でわずかにFeを検出した。Feは結晶粒界に濃化していた。また、2つの領域の界面あたりでは、Zrの濃度勾配が観測された。

 これらの観察結果から、この粒子は、U-Zr-Oメルトにより、破砕されたUO2が溶融された途中段階であり、ピーク温度は<2273Kと推定された。一方、(U,Zr)O2形成部分では、その組成から>2800Kを数10K超える温度に到達していたと考えられる。(U,Zr)O2領域で、Feが検出されたことから、構造材成分の酸化物が混入することで、U-Zr-Oメルトの融点が低下していた可能性が推定された。3M粒子は、Type-I,IIIの凝集物と考えられる。わずかにType-Vの成分が検出されている。

図19(a) 3L粒子の断面金相(研磨後)












図19(b)(c) Location-CとLocation-Eの拡大断面金相
















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4A粒子(E9、表面)

 図20(a)(b)に、4A粒子の断面金相を、研磨後、オーバーエッチング後で比較して示す。オーバーエッチングにより、粒子中央下側のUO2領域が選択的に消失し、外周上側の(U,Zr)O2領域が残留していることがわかる。図20(c)(d)に、UO2領域(Location-F)と(U,Zr)O2領域(Location-G)の拡大BSIをそれぞれ示す。UO2領域では、若干結晶成長が見られ、粒子サイズは約18ミクロンであった。また、ボイドが観察された。これに対して、(U,Zr)O2領域では、EDX分析で、UとZrの他にSS-Al成分を検出した。図20(e)に、結晶粒界付近の拡大BSIを示す。SS-Al成分のおそらく酸化物が、粒界に濃化していることがわかる。

 これらの観察結果から、この粒子は、U-Zr-Oメルトにより、破砕されたUO2が溶融された途中段階であり、UO2側のピーク温度は2273-2573Kと推定された(3M粒子よりはややピーク温度が高いと推定)。一方、(U,Zr)O2側は2800Kに到達していた。(U,Zr)O2領域で、SS-Alが検出されたことから、構造材成分の酸化物が混入することで、U-Zr-Oメルトの融点が低下していた可能性が推定された。4A粒子は、Type-I,IIIの凝集物と考えられる。わずかにType-Vの成分が検出されている。

図20 4A粒子の断面金相











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4B粒子(E9、表面)

 図21(a)(b)に、4B粒子の断面金相を、研磨後、オーバーエッチング後で比較して示す。オーバーエッチングにより、粒子中央のUO2領域が選択的に消失し、外周の(U,Zr)O2領域が残留していることがわかる。図21(c)(d)に、UO2領域(Location-B)と(U,Zr)O2領域(Location-A)の拡大金相(研磨後)をそれぞれ示す。UO2領域では、若干結晶成長が見られ、粒子サイズは約18ミクロンであった。また、ボイドが観察された。これに対して、(U,Zr)O2領域では、EDX分析で、UとZrの他にSS-Al成分を検出した。オージェ分光分析で、(U,Zr)O2領域のZr濃度が、0.9~8at%であることが示された。

 これらの観察結果から、この粒子は、U-Zr-Oメルトにより、破砕されたUO2が溶融された途中段階であり、ピーク温度は2273-2573Kと推定された(3M粒子よりはややピーク温度が高いと推定)。一方、(U,Zr)O2形成部分では、その組成から>2800Kを数10K超える温度に到達していたと考えられる。(U,Zr)O2領域で、SS-Alが検出されたことから、構造材成分の酸化物が混入することで、U-Zr-Oメルトの融点が低下していた可能性が推定された。4B粒子は、Type-I,IIIの凝集物と考えられる。わずかにType-Vの成分が検出されている。

4D粒子(E9、表面)

 図22(a)に、4D粒子の断面金相を示す。図22(b)に、粒子の中央(Location-D)の拡大金相を示す。この粒子は、UO2を主成分としているが、結晶粒界が明確に見えていない。図22(c)に、粒子外周部(Location-M)の拡大BSIを示す。この粒子では、(U,Zr)O2メルトによる溶融の痕跡は見られず、外周部でSS-Al酸化物が第2相を形成している様子が確認された。これらの観察結果から、この粒子は燃料棒破損時に放出された燃料ペレットが、構造材の酸化物と相互作用した状態と推定された。第2相が形成されていること、結晶粒界が見えないことから、この粒子は事故時に溶融していたと推定される。ピーク温度は>3100Kと推定される。4D粒子は、Type-I,Vの凝集物と考えられる。

5E粒子(E9、8cm深さ)

 図23(a)(b)に、5E粒子の断面金相を、研磨後、オーバーエッチング後で比較して示す。EDX分析では、この粒子全体から、UとZrが検出されたが、オーバーエッチングで消失した試料の下部では、比較的Zr濃度が低かった。試料下部についてオージェ分光分析した領域を、図23(c)に示す。Region-1~4では、Zr濃度は約2~9at%であり、試料上部に比べて低い値であった。Region-5では、Zr濃度は<1at%であり、Region-6では、trace量のZrを検出しただけであった。一方で、試料下部では酸素濃度が高く、領域-6では、U4O9が形成されていた可能性が示唆された。結晶粒界には、SS酸化物相が濃化していた。また、Ru-Ni合金相が検出された。

 これらの観察結果から、この粒子は、(U,Zr)O2メルトが凝固する際に酸化度が上昇した状態と推定された。燃料棒の昇温・溶融過程では、Zrの酸化により水素が多く発生するため、熱力学的にU4O9が形成されることは考えにくい。したがって、降温過程で水蒸気と比較的長時間反応する際に、酸化度が上昇したのではないかと推定された。ピーク温度は>2800Kと推定される。5E粒子は、Type-IIIと考えられる。わずかにType-Vの成分が検出された。

6B粒子(E9、56cm深さ)

 前述の図13(k)に6B粒子の外観写真を示す。この粒子は、酸化したジルカロイ被覆管の一部と同定され、詳細な分析データは報告されていない。Type-IIに分類される。

6C粒子(E9、56cm深さ)

 図24(a)に、6C粒子の断面金相(研磨後)を示す。この粒子は、酸化したジルカロイ被覆管の外表面に、ZrリッチのU-Zr-Oメルトがいったん付着し、酸化したものと推定された。図24(b)に、酸化した被覆管部位(Location-B)の拡大金相を示す。オージェ分析により、バルク相の主成分はZrの二酸化物であり、わずかに炭素が含まれていることが示された(Position-638:30.4at%Zr-64.6at%O-4.9at%C)。被覆管の外表面から内表面に向けて、被覆管を径方向に横断する形状で、結晶粒界が見えている。また、U-Zr-O溶融凝固物と考えられる付着物中の結晶粒界には、SS-Al-Snの酸化物が濃化していた。図24(c)に、U-Zr-O溶融凝固物領域(Location-A)の拡大金相を示す。Position-650と662のオージェ点分析により、この相はZrを主成分とし、trace~3at%程度のUを含有していたことが示された(Position-650:28.9at%Zr-65.6at%O-5.3at%C-trU、Position-662:29.6at%Zr-3.2at%U-67.1at%O)。酸化度は、二酸化物よりやや高次であり、一部で炭素が検出された。図24(d)に、溶融凝固領域で観測された析出物(Location-B)の拡大BSIを示す。析出物内に微細なデンドライト構造が確認され、Ni-Sn系の合金相と酸化物相に相分離していることが確認された。この丸い析出物の組成は、Position-625:4.4at%Zr-21.6at%O-16.4at%Ni-18.9at%Sn-38.5at%Cであり、遷移金属の酸化物と炭化物の混合状態と推定された。

 ジルカロイ被覆管の曲がり具合から、この部位の被覆管は、約30%ほどバルーニングで膨張していたと推定された。また、付着物がZrリッチであることから、上部で溶融したジルカロイが溶落、いったん付着した後で、冷却中に酸化度が上昇したと推定された。付着物とジルカロイ被覆管の間で成分拡散した様子が見えること、ジルカロイ中や凝固物中に炭素が検出されたことから、ジルカロイの溶融が、可燃性毒物棒成分(B4C)により促進された可能性が示唆された。また、デブリの酸化度が上昇する過程では、U,ZrについでFe,Crが酸化し、Ni-Snが金属として残留する可能性が考えられた。この粒子からはAlが多く検出されており、UO2-Al2O3共晶溶融反応により、>2173Kで溶融が進んだ可能性がある。6C粒子は、Type-II,IIIと考えられる。わずかに、Type-IV,Vの成分が検出された。

6D粒子(E9、56cm深さ)

 図25(a)に、6D粒子の断面金相(研磨後)を示す。この粒子はUO2ペレットの破砕物にU-Zr-O溶融凝固物が一部付着して形成されたと推定された。図25(b)に、UO2領域の拡大金相を示す。空孔が若干連結している様子がわかる。また、オージェ分光分析で、UO2領域での平均的な酸化度が70.5~71.3at%に達していたと評価された。図25(c)(d)に、U-Zr-Oが付着している部分の拡大金相を研磨後、エッチング後でそれぞれ示す。U-Zr-O付着物側は比較的稠密で、UO2側では空孔が連結している様子がわかる。また、エッチング後の写真から、両者の反応界面に溶融しにくい層が形成されていることがわかる。図25(e)(f)に、界面領域のオージェ電子像と元素プロファイルをそれぞれ示す。U-Zr-O付着物側からUO2領域に向かって、U:Zr比に勾配があること、U-Zr-O側では酸化度がやや低いこと、界面近傍(Point-4)で酸化度が上昇しているのに対し、そこと接触しているUO2側で酸化度が減少していること、などがわかる。図25(g)に、U-Zr-O付着物内のEDX分析点を示す。付着物の平均としては、U濃度が66.3~67.3wt%、Zr濃度が32.7~33.8wt%であったが、界面に向かうにつれて、Zr濃度が減少していた。また、SS-Al-Snなどは検出されなかった。表7にSASとEDX点分析結果を示す。

 UO2領域で空孔が連結していた様子から、この粒子が事故進展時に2173K程度を経験していたと推定された。また、冷却過程でのUO2と水蒸気との反応により、高酸化度(ウランの酸化状態はU4O9)に到達したと推定された。UO2とU-Zr-O溶融凝固物の界面では、亜酸化状態のU-Zr-O側に、UO2側から酸素が移行している途中過程が検出されたと推定された。6D粒子は、Type-I,IIIに分類される。

図25(a) 6D粒子の断面金相(研磨後)















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表7(a) 図14(e)部位のオージェ電子点分析(at%)
測定点 U Zr O 備考
1 15.4 18.0 66.5 hypo-stoichimetric
2 16.0 19.4 64.6 hypo-stoichiometric
3 18.9 15.5 65.6 hypo-stoichiometric
4 27.6 5.3 67.2 hyper-stoichiometric
5 32.1 4.1 63.8 hypo-stoichiometric
6 31.1 3.0 65.9 hypo-stoichiometric
表7(b) 図14(g)部位のEDX点分析(wt%)
測定点 U Zr 備考
1~8 66.3~67.3 32.7~33.8 U:Zr比は、ほぼ一定
9 75.3 24.8 測定点9~15にかけて、濃度勾配がみられる
10 65.7 34.3
11 71.1 29.0
12 88.8 11.3
13 92.5 7.5
14 91.0 9.1
15 100 -

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6E粒子(炉心中間E9、表面から56cm深さから採集)

 図26(a)に、6E粒子の断面金相(研磨後)を示す。この粒子は破砕したZry被覆管であり、内外表面が酸化していたと推定された。Type-IIに分類される。

図26(a) 6E粒子の断面金相(研磨後)












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6F粒子(E9、56cm深さ)

 図27(a)に、6F粒子の断面金相(研磨後)を示す。この粒子は磁性を持っていた。3種類の異なるタイプの領域が凝集している様子が確認できる。図の右側中央から上にかけて、3個の稠密な領域が存在している。これは、Niを主成分とする合金相であった。EDX分析で、平均組成が、96wt%Ni-4wt%Feであり、わずかにAl,Snを検出した。また、金相写真から、この合金相が周囲の酸化物相の結晶粒界を侵食していないことが確認された。酸化物相については、図27(a)の比較的上に存在している稠密な領域と、比較的下に存在している多孔質の領域に分類される。このうち、稠密な領域の拡大BSIを、図27(b)に示す。粒子の明度が一定で、酸化物の組成がおよそ一定であると考えられる。EDX面分析で、平均組成は31.7wt%U-68.3wt%Zrと評価された。SS-Al等の別成分は検出されなかった。他方、稠密領域と多孔質領域の境界の拡大BSIを、EDX点分析の測定点と共に、図27(c)に示す。界面領域では、元素濃度勾配が見られ、多孔質領域では、SS成分が検出された。図27(d)に、多孔質領域の拡大金相(研磨後)を示す。多孔質領域には空孔が多く存在し、また、合金相の析出物が観察された。また、多孔質領域はエッチングで消失しやすく、高次の酸化物になっている可能性が考えられた。図27(e)(f)に、多孔質領域の拡大BSIを示す。図16(d)とほぼ重なった領域の分析を実施している。多孔質領域のマトリックス組成は、57wt%U-38wt%Zr-4wt%Fe-1wt%Niであった。まだら状に遷移金属が濃化している部位が観測され、その組成は34wt%Cr-33wt%Fe-17wt%Al-16wt%Niであった。

 多孔質領域は、エッチングで消失しやすかったことから、高酸化度になっている可能性が推定された。また、Niの由来はインコネルと考えられるが、インコネル中のNi濃度はおよそ52wt%であり、6F粒子内で検出された金属粒子中のNi濃度は、それよりかなり高いことから、インコネル中のFe,Crが選択的に酸化され、NI金属が残留したと推定された。金属粒子の融点は約1725Kと推定され、金属領域と酸化物領域の界面状態から、その温度では、酸化物相はすでに凝固していたと考えられる。稠密な酸化物領域は、U-Zr-Oメルトの凝固時に収縮して形成された可能性が考えられる。その組成から融点が高いことが推定され(>2800K)、したがって、U-Zr-Oメルトの稠密領域がいったん凝固した後に、多孔質相を形成した物質のメルトと接触して、新たに相互作用が発生したと推定された。最初に凝固した稠密領域は、ほとんど不純物を含んでおらず、そこに不純物を多く含む、比較的低融点のメルトが接触した可能性が考えられる。後者のメルトは、おそらく高温では亜酸化状態であったと推定される。

 1H粒子も、6F粒子と類似した複雑な構造を持っているが、その微細組織の特徴から、1H粒子では、凝固物とメルトの接触は>2800Kで発生したと考えられるのに対し、6F粒子では、それよりかなり低い温度で凝固物とメルトが接触したと推定された。6F粒子は、Type-III,IV,Vの凝集物と考えられる。

図27(a) 6F粒子の断面金相(研磨後)














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7A粒子(H8、36cm深さ)

 図28(a)に、7A粒子の断面金相(研磨後)を示す。図28(b)にLocation-Aでの拡大金相を示す。この粒子内では、300ミクロンサイズの大きな丸い空孔と、10ミクロンサイズの微細な空孔が比較的均質に分布していた。図28(c)に、Location-Gでの拡大BSIを示す。結晶粒のマトリックスは、Uリッチの(U,Zr)O2相の溶融凝固物であり、trace量のFeを検出した。結晶粒界には、SS-Alの酸化物が、第2相を形成していた。わずかに金属相と考えられる析出物が見られた。

 構造材の酸化物の混入により、(U,Zr)O2の溶融が促進された可能性が考えられる。また、SS-Al相が結晶粒界に酸化物として存在していたことから、(U,Zr)O2相の酸化度が高かった可能性が示唆される。この粒子は、Type-III,Vの凝集物と考えられる。

7B粒子(H8、36cm深さ)

 図29(a)に、7B粒子の断面金相(研磨後)を示す。この粒子は、外周側表面が酸化したZry被覆管に、U-Zr-Oの溶融凝固物とUO2ペレットの残差が付着した状態であった。図29(b)に、断面BSIを示す。明度の違いから、被覆管部分の外周側にα-Zr(O)層が、その内側の本来ギャップだった領域にU-Zr-Oの溶融凝固層が、さらに内側に燃料ペレットの残差が存在していることがわかる。ギャップ幅は約0.35mmに拡大していた。図29(c)(d)に、Location-Fの拡大金相と拡大BSIをそれぞれ示す。ペレットとU-Zr-Oの溶融凝固物の間にほとんど相互作用が見られないことがわかる。U-Zr-O溶融凝固物中にわずかにSS成分を検出した。

 これらのことから、7B粒子では、バルーニングで拡大したギャップに、燃料棒の上部で溶融したZrリッチのU-Zr-Oが溶落し、いったん堆積・凝固した状態と推定される。おそらく1A粒子と類似した状態であり、この粒子のピーク温度は1000-1500Kと推定される。この粒子は、Type-I,II,IIIの凝集物と考えられる。Type-Vの成分もわずかに存在している。

7E粒子(H8、36cm深さ)

 図30(a)に、7E粒子の断面金相(研磨後)を示す。この粒子の中央部分はほとんどUO2であり、ボイド成長と結晶粒成長が見られる。結晶サイズは約28ミクロンである。外周部は(U,Zr)O2の主相と、SS-Al酸化物の第2相で形成されている。図30(b)(c)に、外周部と中央部の拡大金相(エッチング後)を示す。エッチングにより、中央部で溶融が進んでいることがわかる。オージェ分析により、中央部では。U濃度が34.5~35.7at%、酸素濃度が、64.2~65.6at%と評価された。酸化度が低いことが特徴である。一方、外周部では、U濃度が25.9~26.8at%、Zr濃度が3.7~4.6at%、酸素濃度が68.0~69.4at%と評価され、中央部と異なり高酸化度であった。図30(d)に外周部の拡大金相(研磨後)を示す。明度の高い第2相が存在していることがわかる。また、一部にNi-Sn合金が析出していた。

 これらのことから、この粒子では、破砕されたUO2ペレットが外周部から、U-Zr-Oメルトによって溶融されている途中段階と推定される。従って、ピーク温度は2273~2573K程度と推定される。構造材成分の酸化物が混入することで、メルトの融点が降下し、溶融促進された可能性が考えられる。この粒子は、Type-I,III,Vの凝集物と考えられる。

図30(a) 7E粒子の断面金相(研磨後)
















8A粒子(H8、70cm深さ)

 図31(a)に、8A粒子の断面金相(研磨後)を示す。この粒子は、ほぼ(U,Zr)O2相からなっていたが、空孔の形状、マトリックス相の稠密度、およびU:Zr比により、2つの領域に分類された。図31(a)の左下のPosition-003やPosition-Gを含む馬蹄形状の領域-1は、ややZr濃度が高く、やや低酸化度で(Position-003: 24.8at%U-4.9at%Zr-65.7at%O)、マトリックスが稠密、丸い形状の空孔が分散していた。領域-1を取り囲むように存在する領域-2と領域-3は、ややZr濃度が低く、やや高酸化度で(Position-020: 27.7at%U-3.7at%Zr-68.5at%O、Position-044: 28.4at%U-4.0at%Zr-67.5at%O)、空孔がやや不規則な形状をしていた。図31(b)(c)に、Location-GとLocation-Eでの拡大金相をそれぞれ示す。また、領域-1では、SS-Alを多く含む第2相が検出された。

 これらのことから、この粒子では、組成の異なるデブリメルトあるいはデブリ固相が接触し、相互作用した痕跡が残されていると推定される。この粒子のピーク温度は>2800Kと推定される。Region-1は、事故時の昇温過程では亜酸化のU-Zr-Oであったが、冷却過程で酸化度が増加したと推定されている。構造材成分が混入することで、融点が低下した可能性がある。

8C粒子(炉心中央H8、表面から70cm深さから採集)

 図21(a)に、8C粒子の断面金相(研磨後)を示す。前述の図2(t)に粒子の外観写真を示す。空孔の形状とサイズ、マトリックスの稠密度、元素の分布、の違いにより、大きく3個の領域に区分される。図20(b)(c)に、領域-1内のLocation-Aの拡大BSIを示す。図20(c)ではコントラストを強調している。領域-1は、コントラストの強調により、マトリックス相がUリッチ相とZrリッチ相に相分離していることが示された。図20(d)に、領域-2のLocation-Gの拡大BSIを示す。領域-2には丸く大きい空孔が存在し、マトリックスは稠密であった。空孔の周辺に、SS-Al酸化物を多く含む第2相が形成されていた。図20(e)に、領域-3のLocation-Mでの拡大金相を示す。領域-3では、さらに、空孔が連結した痕跡が確認された。オージェ分析により、いずれの領域もマトリックス相は(U,Zr)O2であり、若干亜酸化状態であった。領域-2,3では、領域-1に比べて、亜酸化度がさらに低かった。

 これらのことから、この粒子は、組成の異なるデブリメルト、あるいはデブリ粒子とデブリメルトが接触し、相互作用した状態と推定された。領域-2,3は、空孔の形状やマトリックスの稠密性から接触時にメルトだった可能性が高いと考えられる。ピーク温度は>2800Kと推定される。構造材の酸化物が混入することで、メルトの融点が降下し、溶融が促進されている可能性が示唆される。また、この粒子の特徴は、酸化度が亜酸化であることである。高温溶融状態でのデブリは亜酸化であると推定されており(参考10:デブリ溶融プールの形成・拡大と酸化度上昇)、この粒子は、高温状態をそのまま維持している可能性がある。あるいは、金属メルトと接触し亜酸化になった可能性がある。この粒子は、Type-III,Vの凝集物と考えられる。

図21(a) 8C粒子の断面金相(研磨後)
















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8E粒子(炉心中央H8、表面から70cm深さから採集)

 図22(a)に、8E粒子の断面金相(研磨後)を示す。前述の図2(u)に粒子の外観写真を示す。空孔の形状とサイズ、マトリックスの稠密度、UとZrの分布、の違いにより、大きく5個の領域に区分される。図22(b)に、領域3~5の境界部分の拡大金相を示す。領域-4は、幅が狭く、内部に小さい空孔が多く存在し、領域-3と領域-5の境界を形成しているように見える。いずれの領域でも、結晶粒界にSS-Al酸化物が濃化していた。図22(c)(d)に、領域-1のLocation-Aの拡大金相(エッチング後)と拡大BSIを示す。SS-Al相(酸化物)が粒界に濃化していることがわかる。また、領域-1では、Ni-Sn、Cr-Fe、Cr-Fe-Niの析出物を検出した。オージェ分析では、U:Zr比が領域によってやや異なること、いずれの領域も高酸化度であることが示された。

 これらのことから、この粒子は、組成の異なるデブリメルト、あるいはデブリ粒子とデブリメルトが接触し、相互作用した状態と推定された。領域-1や領域-3は接触時にメルトだったと考えられる。領域-5は固液混合状態であったと考えられる。ピーク温度は>2800Kと推定される。構造材の酸化物が混入することで融点が降下し、溶融促進されていた可能性が考えられる。この粒子は、Type-III,Vの凝集物と考えられる。

図22(a) 8E粒子の断面金相(研磨後)

8H粒子(炉心中央H8、表面から70cm深さから採集)

 図23(a)に、8H粒子の断面金相(研磨後)を示す。前述の図2(v)に粒子の外観写真を示す。この粒子では、酸化物相に金属相が固着していた。また、酸化物相は、空孔の形状とサイズ、マトリックスの稠密度、UとZrの分布、の違いにより、大きく3個の領域に区分される。酸化物相は、粒子の中央でZr濃度が低く、外周部でZr濃度が高くなった。結晶粒内で微量のFeを検出し、結晶粒界では、SS酸化物が濃化していた。図23(b)に、粒子中央のLocation-Eの拡大金相を示す。結晶粒界では、結晶バルクに比べてZr濃度が高かった。一方、図23(a)で粒子に右側に固着している金属相はAgが主成分で稠密な状態であった。図23(c)に、電解エッチングした後の金属相周辺の拡大金相を示す。電解エッチングではAgが選択的に溶出し、酸化物相との境界近くに、丸い形状のNi-Sn合金が残留し析出していた。

 これらのことから、この粒子は、組成の異なるデブリメルト、あるいはデブリ粒子とデブリメルトが接触し、相互作用した状態に、さらに金属メルトが凝固し付着した状態と推定された。Agは、本来はAg-In-Cd合金として存在していることから、In-Cdは選択的に蒸発などにより除去され、残留したAgが、SS-Zry中で比較的酸化しにくいNi-Snと合金化したと考えられる。金属メルトの溶融凝固時の相互溶解度の違いにより、AgマトリックスからNi-Snが析出したと推定される。この粒子は、Type-III,IVの凝集物であり、Type-Vの成分がわずかに存在している。

図23(a) 8H粒子の断面金相(研磨後)


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9D粒子(炉心中央H8、表面から77cm深さから採集)

 図24(a)に、9D粒子の断面金相(研磨後)を示す。前述の図2(w)に粒子の外観写真を示す。この粒子は、いくつかの小片で構成されていた。小片は、(U,Zr)O2の溶融凝固物(例:小片-1、小片-3)と金属Ag粒子(例:小片-4)からなっていた。(U,Zr)O2粒子中では、U:Zr比に幅があり、固溶体相であると推定された。若干のSS成分が検出された。一方、金属相中では、Agのバルク中に、Ni-Sn-trFeからなる丸い析出物が見られた。図24(b)に、小片-1と小片-4の界面部分の拡大BSIを示す。酸化物粒子と金属粒子は機械的に固着しており、化学的な相互作用の痕跡は見られなかった。なお、拡大BSIで、Agマトリックス相中に見える構造は、Ag相が柔らかいために形成された研磨跡である。

 これらのことから、この粒子は、制御棒メルトと燃料棒メルトの相互作用で形成されたと推定された。Ag-In-Cdのうち、In-Cdは蒸発などで除去され、残ったAgが、SS-Zry中のNi-Snと混合して金属メルトを形成し、酸化物デブリの凝固時に相分離したと考えられる。この粒子は、Type-III,IVの凝集物と判定される。

図24(a) 9D粒子の断面金相(研磨後)
図24(b) 酸化物/金属界面の拡大BSI(Location-A)




























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9G粒子(炉心中央H8、表面から77cm深さから採集)

 図25(a)に、9G粒子の断面金相(研磨後)を示す。前述の図2(x)に粒子の外観写真を示す。図25(b)に、Location-Dの拡大金相を示す。この粒子は、Agのマトリックスと丸い形状のNi-Sn合金粒子で形成されていた。8H粒子や9D粒子で見られた金属相と同様の物質と考えられる。Type-IVに分類される。

図25(a) 9G粒子の断面金相(研磨後)
図25(b) 9G粒子の拡大金相(Location-D)




























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10A粒子(炉心中間E9、表面から74cm深さから採集)

 図26(a)に、10A粒子の断面金相(研磨後、エッチング後)を示す。前述の図2(y)に粒子の外観写真を示す。粒子の中央部の領域-2部分がエッチングにより選択的に消失したことがわかる。領域-2には、微細な空孔が多く存在し、その周囲に微細な結晶粒が多く存在していたが、エッチングにより、微細な結晶粒が消失していた。エッチング後に再研磨したところ、図25(a)で見られている中央の大きな空孔は消失した。9G粒子は、全体的に(U,Zr)O2の固溶体相で構成されており、結晶粒界や第2相はほとんど見られない。図26(b)(c)に、領域-1と領域-2の拡大BSIをそれぞれ示す。領域-1については、Position-272とPosition-273でのオージェ分析により、Zrと酸素濃度の異なる相が存在していることが示された。Position-272は、Zrが比較的高濃度で、酸化度が高かった。Position-273は、Zrが低濃度で、酸化度が低かった。Position-272のようなZr高濃度相は、クラックや空孔の周辺で検出された。Position-273のような相は、領域-1全体で検出され、そこには多くの空孔(<10ミクロン)が存在していた。領域-2では、Zr濃度が低く、酸化度に幅があった(Position-291)。領域-2には、約28ミクロンの大きな結晶が存在していた。

 これらのことから、この粒子は、中央部分にわずかにUO2ペレットが残留し結晶成長していたこと、外周部にU-Zr-O溶融凝固物が見られることから、U-Zr-Oメルト中にペレットが溶解する途中過程、あるいは、デブリメルトの溶融凝固過程での相分離と推定された。ピーク温度は>2800Kと考えられる。粒子中に見られるZrと酸素の濃度分布は、溶融・凝固過程で出現したと考えられる。この粒子は、Type-IIIと考えられる。Type-Iがわずかに残留している。

図26(a) 10A粒子の拡大金相(研磨後、および、エッチング後)
10A粒子のオージェ分光分析での点分析結果(at&)
測定場所 U Zr O 備考
領域-1: Position-272 23.7~25.6 6.3~7.6 67.8~69.6 稠密部位、高Zr濃度、高酸化度
領域-1: Position-273 32.2~32.7 1.2~1.9 65.8~66.0 多孔質部位、低Zr濃度、低酸化度
領域-2: Position-291 30.4~35.2 0.0~0.7 64.7~69.2 多孔質部位、さらに低Zr濃度、低酸化度(一部に高酸化度)

10E粒子(炉心中間E9、表面から74cm深さから採集)

 図27(a)に、10E粒子の断面金相(研磨後、エッチング後)を示す。前述の図2(z)に粒子の外観写真を示す。10E粒子では、破砕したUO2粒子の一部に、U-Zr-O溶融凝固物が付着していた。UO2領域は、若干亜酸化(UO2-x)であり、結晶成長は見られなかった。U-Zr-O溶融凝固物領域は、逆に、若干高酸化度で(U,Zr)O2+xをマトリックスとしており、わずかにNi-Sn-Ag合金相の析出物が見られた。内部で、U:Zr比の濃度勾配が見られた。これらのことから、UO2ぺレットが高温の燃料棒中で若干亜酸化状態となり、そのまま急冷したものと考えられる。その表面には、おそらく、高温ではギャップ中に存在していたU-Zr-Oが付着していたが、冷却過程での水蒸気との反応により、酸化度が上昇した可能性がある。

図27(a) 10E粒子の断面金相(全体像とLocation-Hの拡大)















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10E粒子のオージェ分光点分析の結果(at%)
測定部位 U Zr O Fe 備考
Position-H: UO2領域 33.1~37.6 - 62.3~66.8 - hypo-stoichiometry
Position-H: (U,Zr)O2領域 16.0~16.5 13.3~15.1 68.2~70.6 - hyper-stoichiometry, Ni-Sn-Ag析出
Position-B 35.0~37.0 - 63.0~65.0 - hypo-stoichiometry
Position-C 33.2~34.7 - 65.2~66.7 1.6 hypo-stoichiometry
Position-C中に、1点のみ 23.7 6.7 69.4 tr hyper-stoichiometry
Position-F: Uリッチ領域 32.1~32.2 1.9~3.5 64.2~65.7 - hypo-stoichiometry
Position-F: (U,Zr)O2領域 11.8~12.4 15.6~16.1 71.3~72.4 tr hyper-stoichiometry. Fe-Ni-Sn-Ag析出

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10F粒子(炉心中間E9、表面から74cm深さから採集)

 図28(a)に、10F粒子の断面金相(研磨後、エッチング後)を示す。図28(b)に、同倍率のBSIを示す。前述の図2(A)に粒子の外観写真を示す。空孔のサイズと形状、マトリックス相の稠密度、U:Zr比などにより、大きく2つの領域に区分される。領域-1には、多くの微細な空孔が存在し、主成分は(U,Zr)O2+xで、trace量のFeを検出した。結晶粒界はほとんど見えなかった。領域-2には、丸く大きな空孔が存在し、領域-1よりさらに酸化度が高く、わずかにZr濃度が高かった。さらに、領域-2では、結晶粒界にSS成分を含む相が濃化し、Fe,Zrリッチな第2相を形成していた。これらのことから、この粒子は、溶融凝固過程での相分離、あるいは、凝固したデブリの再溶融などの過程で形成された可能性が考えられる。Type-I,IIIに相当する。

図28(a)(b) 10F粒子の断面金相とBSI










10F粒子のオージェ分光点分析の結果(at%)
測定部位 U Zr O Fe
領域-1: Position-911 23.9 3.3 70.8 tr
領域-1: Position-894 23.6 5.9 70.4 tr
領域-1: Position-908 25.9 4.7 69.2 tr
領域-2: Position-901 19.2 7.7 71.3 1.6

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11B粒子(炉心中間E9、表面から94cm深さから採集)

 図29(a)に、11B粒子の断面金相(研磨後、エッチング後)を示す。前述の図2(B)に粒子の外観写真を示す。11B粒子は、上半分の酸化物粒子と下半分の金属粒子が固着して形成されていた。金属粒子部分のLocation-Hの拡大BSIを、図29(b)に示す。粒子の凝固時に形成されたと考えられるデンドライト組織が観察される。デンドライトのマトリクス相はNi-Fe-Ag-trSnであり、第2相は、Ni-Sn-trFeであった。また、金属粒子内に、Agを主成分としMo,Ni,Fe,Crなどを含有する析出相が分布していた。図29(c)に、Location-Aで見られた長方形の析出相のBSIを示す。一方、酸化物粒子は、全体に多孔質で、丸い微小な空孔が分布していた。マトリックスは(U,Zr)O2の固溶体相で、Uリッチであった。結晶粒界に、SS-Al(酸化物)が析出していた。図29(d)に酸化物領域のLocation-Bの拡大BSIを示す。粒界に、SS-Al相が析出していることがわかる。

 これらのことから、11B粒子は、制御棒や可燃性毒物棒と燃料棒との相互作用で形成されと推定される。ピーク温度は>2800Kと考えられる。SS-Al相の混入により、酸化物相の融点が低下した可能性がある。この粒子は、Type-III,IVに分類され、Type-Vの成分も混入されていた。

図29(a) 11B粒子の断面金相(研磨後)

















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11C粒子(炉心中間E9、表面から94cm深さから採集)

 図30(a)に、11C粒子の断面金相(研磨後、エッチング後)を示す。前述の図2(C)に粒子の外観写真を示す。この粒子は、もともとペレットが軸方向に半分割れたような形状をしていたが、分析の準備作業をしている最中にさらに半分に割れ、1/4断面のような形状となっている。図30(b)に、拡大金相を示す。UO2ペレット部分には、結晶成長は見られなかった。図の左側のペレット表面に、白色の薄い付着層が見られる。これはU-Zr-Oの溶融凝固物であった。この粒子は、Type-IにわずかにType-IIIが付着していると考えられる。

図30(a) 11C粒子の断面金相(研磨後)
図30(b) 11C粒子の拡大金相(研磨後)

























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化学・放射化学分析

 さらに、デブリ粒子の一部は酸溶解され、ICPによる化学分析が行われた。化学分析では、物質の由来に着目し、以下の5グループに分類して、分析結果が評価された。

  1. 燃料ペレット+ジルカロイ被覆管
  2. 中性子吸収剤Ag-In-Cd
  3. 可燃性毒物棒(B,Gd,Al含有)
  4. 構造材(SS、インコネル)
  5. Te含有物質

 化学分析では、すべてのサンプルから、UとZrが検出され、事故進展中に、燃料棒成分が溶融混合したことが確認された。また、本来炉心でのU:Zr組成に比べ、ルースデブリ中ではZrの割合が50%以下に減少している分析結果が得られた。このことから、燃料溶融初期にZry被覆管が選択的に溶融し、炉心のさらに下方に移行したと推定された。中性子吸収材については、Agの割合が初期組成に比べて90%以上減少していた。In,Cdはほとんど検出されなかった。可燃性毒物については、AlとGdは、ほぼすべてのサンプル中に存在していた。特に、Gdは初期炉心中にわずか13kgしか装荷されていなかったが、上部ルースデブリサンプル中に広く分布していた。Alはデブリベッドの表面近くに多く存在していた。揮発性FPもデブリベッドの表面近くで比較的多く検出された。これらのことから、デブリベッドの上部は、揮発性物質のトラップとなっていた可能性が示唆された。また、Gdの広い範囲での分布については、事故進展中の溶融の広がり、あるいは、事故終息後の冷却水中での二次的な再分布の可能性が示唆された。構造材は、デブリベッド全体で均質に検出され、Fe.Ni.Cr相互の組成は、炉心本来組成に近かった。しかし、Uに対する相対的な濃度は低下していた。Teは、Alと同様にデブリベッドの表面近くに濃化していた。

 さらに、酸溶融したサンプルを用いて放射線分析が行われた。U-235/U-238比、高揮発性FP(I-129,Cs-137)、中揮発性FP(Ru-106,Sb-125)、低揮発性FP(Sr-90,Ce-144)の分布、などが評価された。Ceの検出濃度が高いことから、Ce分布が非均質であった可能性が示唆された。また、NiによるSb-125やRu-106のスカベンジ効果があることが推定された。I-129はサンプル表面に濃化していた。

参考文献

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[2] D.W. Akers, E.R. Carlson, B.A. Cook, S.A. Ploger and J.O. Carlson, Draft Report, TMI-2 Core Debris Grab Samples -Examination and Analysis, EGG-TMI-6853-PT1 and EGG-TMI-6853-PT2, 1985.

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