2号機 PCV内部調査装置付着物(カメラ部スミア)No.② (2PCV1802)/FE-SEM/EDX分析結果
試料採取
図1にFE-SEM観察台への試料採取の状況写真を示す。1F より輸送された2uPCV サンプルは、片側の面にやや黒色に汚れのついたスミア片であり、図1 に示すように、スミア片の汚れている部分の一部をハサミで切りFE-SEM 観察用サンプルを採取した。採取したサンプルをカーボンテープ上に貼り付けた上でFE-SEM サンプル台に貼り付け、Pt 蒸着を行ってFE-SEM 観察を行った。
SEM像と詳細観察位置
図2にFE-SEM 像と詳細観察箇所の位置を示す。スミアの糸状物質上に他の物質が比較的多く観察された2視野を詳細観察領域①及び②とし、その位置を図2 に示した。
詳細観察
図3に詳細観察①のFE-SEM/EDX観察結果、図4に詳細観察②のFE-SEM/EDX観察結果を示す。同定した元素は図中の黄色の丸、偽信号と考えたものは白丸で示した。
EDXマッピングは、各位置から得られた各元素のEDX信号のカウント数の大小を色の濃さで示したものである。しかし、そのカウント数の大小は、基本的にEDX信号を発した試料表面の元素の量を示しているが、周囲の元素種や試料の形状・密度に影響を受ける。従って、EDXマッピングの色の濃さは、原則的に電子線照射位置の当該元素の量を示しているが、必ずしも各元素濃度の定量比に対応しているわけではない。また、発生するEDX信号のカウント数は元素の種類によって異なるため、各元素のマッピング間で色の濃さを比較することはできない。さらに、各元素からのEDX信号には、他の元素のEDX信号が重なっているケースがあり、明るい部分に必ずしも当該元素が存在するわけではない。電子数の多い対象元素以外の元素の存在する位置では相対的にそのEDX信号(バックグラウンド)が大きくなる傾向がある。これらの影響を受けていることを考慮した上で同定した元素をキャプションに示した。
U含有領域の探索
U含有領域の探索及び分類を行うと共に、U含有領域について、STEM/EDX及びTEMによる詳細観察を実施するU含有領域を設定した。
U含有領域の中央付近のFE-SEM/EDXによる点分析結果を用いてU含有領域の分類を行った。なお、U含有領域は、FE-SEM/EDXのU元素のEDSマッピングにより設定するので、1つのU含有領域内には、1つのU含有粒子が含まれるのか、U を含有した微粒子の集合体であるのかの見分けはつかない。また、U含有領域の中央付近のFE-SEM/EDXによる点分析結果は、点分析中心位置から約2μm の広がりを持った領域に存在する元素からの信号を示すため、U含有粒子もしくはUを含有した微粒子の集合体に含まれる元素の情報のほか、粒子周辺に存在する元素の情報も含まれることとなる。FE-SEM/EDX点分析によるU 含有領域の分類指標を以下に示す。
- Crタイプ:Cr/Uが5以上であり、角張った形状をもつと想定されるもの
- Feタイプ:Fe/Uが5以上であり、真球形の構造を持つと想定されるもの
- 混在タイプ:(Fe+Cr)/(U+Zr)が1以上、U/(U+Zr)が0.9以下であり、やや球状に近い微粒子集合体の構造をもち、U-Zr-O相を含有すると想定されるもの
- Fe-Uタイプ:(Fe+Cr)/(U+Zr)が1以上、U/(U+Zr)が0.9以下であり、やや球状に近い微粒子集合体の構造をもち、Zr を含まないU 含有相を有すると想定されるもの
- Zr>Uタイプ:U/(Zr+U)比が0.4以下であり、t-(Zr, U)O2と想定されるもの
- Zr~Uタイプ:U/(Zr+U)比が0.4~0.7であり、十分に相分離を発生しなかったc-(U, Zr)O2 もしくは、c-(U, Zr)O2とt-(Zr, U)O2の集合体と想定されるもの
- U>Zr タイプ:U/(Zr+U)比が0.7~0.9であり、c-(U, Zr)O2と想定されるもの
- U タイプ:U/(Zr+U)比が0.9 以上であり、UO2と想定されるもの
U含有領域の探索ではU含有領域に番号を付しており、詳細観察領域①に観測されたU 含有領域は02及び03、詳細観察領域②に観測されたU含有領域は05に対応している。
2uPCVサンプルにおいて発見したU含有領域についてU含有領域に含まれる可能性の高いU、Fe、ZrのEDX マッピングを図5~図7に示す。また、それぞれのU含有領域中央付近のFE-SEM/EDX による点分析を実施した結果を表1に示し、表2にFESEM/EDX 点分析によるU含有領域の分類結果を示す。ここでSTEM/EDX及びTEM による詳細観察を実施するU含有領域も示した。また、U 含有領域のFE-SEM/EDX 点分析データについて、そのU:Zr 比のみに着目したプロットを図8に、U:Zr:(Fe+Cr)比に着目したプロットを図9に示した。なお、FE-SEM観察時の電子ビームによる繊維状スミアの損傷が非
常に激しいため、EDSマッピング像取得の際に電子線のエネルギーを減少させる必要があり、通常ZrのEDXマッピングにおいては、蒸着材からの信号の重複を避けるためにZr のK 軌道からの二次電子像(ZrK)を用いるが、ここでは、励起エネルギーの低いZr のL 軌道からの二次電子像(ZrL)を用いた。なお、測定視野には蒸着材が濃縮していると予想される箇所は形状等から確認されなかった。
領域 No | O | Na+Zn | Mg | Al | Si | Mo+S | Cl | U | Sn | Ca | Cs | Ti+Ba | Cr | Mn | Fe | Zn | Zr |
01 | 76 | BLQ | BLQ | 2.0 | 1.6 | BLQ | BLQ | 6.8 | BLQ | BLQ | BLQ | BLQ | 0.9 | - | 2.2 | BLQ | 9.5 |
02 | 68 | BLQ | BLQ | 2.5 | 2.7 | BLQ | BLQ | 24 | BLQ | BLQ | BLQ | BLQ | BLQ | BLQ | 2.2 | BLQ | BLQ |
03 | 79 | BLQ | BLQ | 2.2 | 2.4 | BLQ | BLQ | 4.4 | BLQ | 0.7 | BLQ | BLQ | 1.1 | - | 4.6 | BLQ | 4.8 |
04 | 78 | BLQ | BLQ | 2.0 | 1.5 | BLQ | BLQ | 9.4 | BLQ | BLQ | BLQ | BLQ | 0.5 | BLQ | 0.7 | BLQ | 7.1 |
05 | 62 | BLQ | BLQ | 1.0 | 2.2 | BLQ | BLQ | 8.4 | BLQ | BLQ | BLQ | BLQ | 3.6 | - | 10 | BLQ | 11 |
06 | 84 | BLQ | BLQ | 0.7 | 2.2 | BLQ | BLQ | 7.5 | BLQ | 1.0 | BLQ | BLQ | BLQ | BLQ | 1.6 | BLQ | 2.5 |
07 | 81 | BLQ | BLQ | 2.1 | 2.5 | BLQ | BLQ | 6.1 | BLQ | BLQ | BLQ | BLQ | 0.7 | - | 1.1 | BLQ | 5.7 |
08 | 37 | BLQ | BLQ | 2.1 | 3.6 | BLQ | BLQ | 11 | BLQ | 1.6 | BLQ | BLQ | 13 | - | 11 | BLQ | 19 |
BLQ: 定量限界以下(below the limit of quantification)
-: EDS信号は確認できるが定量はできない。
領域No. | U | Cr | Fe | Zr | Crタイプ | Feタイプ | Fe(Cr)タイプ | 混在タイプ | Fe-Uタイプ | Zr>Uタイプ | U~Zrタイプ | U>Zrタイプ | Uタイプ | STEM/EDX及びTEM観察対象領域 |
Cr/U>5 | Fe/U>5 | (Fe+Cr)/U>5 | (Fe+Cr)/(U+Zr)>1 | U/(U+Zr) | ||||||||||
U/(U+Zr)<0.9 | U/(U+Zr)>0.9 | <0.4 | 0.4~0.7 | 0.7~0.9 | >0.9 | |||||||||
01 | 6.8 | 0.9 | 2.2 | 9.5 | ○ | ○ | ||||||||
02 | 24 | BLQ | 2.2 | BLQ | ○ | |||||||||
03 | 4.4 | 1.1 | 4.6 | 4.8 | ○ | |||||||||
04 | 9.4 | 0.5 | 0.7 | 7.1 | ○ | |||||||||
05 | 8.4 | 3.6 | 10 | 11 | ○ | |||||||||
06 | 7.5 | BLQ | 1.6 | 2.5 | ○ | ○ | ||||||||
07 | 6.1 | 0.7 | 1.1 | 5.7 | ○ | |||||||||
08 | 11 | 13 | 11 | 19 | ○ | |||||||||
各タイプ存在割合(%) | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 12.5 | 62.5 | 12.5 | 12.5 |
BLQ: 定量限界以下(below the limit of quantification)
公開報告書[1]へのリンク先を表示した。
- SEM/EDS点分析結果(表)
- 表 4.2.3.3-1 2uPCV サンプル中のU 含有領域のFE-SEM/EDS 点分析結果
- 表 4.2.3.3-2 2uPCV サンプル中のU 含有領域の分類とSTEM/EDS 及びTEM 観察領域
- SEM/EDS観察結果(図)
- 図 4.2.1.1-1 2uPCV サンプルからのFE-SEM 観察用サンプル採取
- 図 4.2.1.1-2 2uPCV サンプルのFE-SEM 観察用サンプル全体のFE-SEM 像
- 図 4.2.1.1-3 2uPCV サンプルのFE-SEM/EDS 観察(詳細観察①)
- 図 4.2.1.1-4 2uPCV サンプルのFE-SEM/EDS 観察(詳細観察②)
- 各領域のSEM/EDS観察結果 2018年度測定分(図)
- 図 4.2.3.3-1 2uPCV サンプル中のU 含有領域(領域01,領域02,03)
- 図 4.2.3.3-2 2uPCV サンプル中のU 含有領域(領域04,領域05)
- 図 4.2.3.3-3 2uPCV サンプル中のU 含有領域(領域06,領域07,08)
- 図 4.2.3.3-4 2uPCV サンプル中のU 含有領域の点分析結果の2 成分表示
- 図 4.2.3.3-5 2uPCV サンプル中のU 含有領域の点分析結果の3 成分表示
- ↑ 仲吉 彬,三次 岳志,佐々木 新治,前田 宏治.“平成29, 30年度福島第一原子力発電所の炉内付着物の分析; 平成28年度補正予算「廃炉・汚染水対策事業費補助金」(燃料デブリの性状把握・分析技術の開発)”,JAEA-Data/Code 2021-011. https://jopss.jaea.go.jp/search/servlet/search?5068839