2PEN2103 TEM 領域06

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更新履歴 

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No 日付 分類 内容 備考 記載者
1 2022/05/16 新規 2PEN2103 TEM分析結果(領域06)の登録 IRID報告書(付録-4)の内容を転記。分析機関での精査を終えていない生データの段階であるため、wordファイルの原本へのリンクを作成するに留めた。 原稿作成:鈴木(NFD)
wiki転記:池内(JAEA)
2 2022/10/06 改訂 図(HAADF像、EDS元素マッピング、EDS線分析、EDS点分析、電子線回折)を分析機関での精査後のバージョンに差し替えた(リンク先wordファイルを更新)。 原稿作成:鈴木(NFD)
wiki転記:池内(JAEA)
3 2023/3/23 改訂 本文(仮)の追記 図面精査:鈴木(NFD)
wiki原稿(仮)作成:池内(JAEA)
4 2023/03/29 承認 分析データへの掲載承認 池内(JAEA)

断面の微細構造及び元素分布

TEM観察用試料の採取箇所及びHAADF-STEM像

 図1に、2PEN2103着目領域06のTEM観察用試料の採取位置及び観察方向を、SEM画像上に重ねて示す。
 TEM観察用試料断面のミクロ組織のHAADF-STEM像を図2に示す。当該領域は、断面上では幅約20 μm、厚さ約10 μmの大きさをもつ不定形粒子が占めており、粒子の内部はほぼ均一な組織を有していた。以後、本分析結果の説明において、この粒子を「主粒子」という。
 主粒子の周辺(上側、左側、及び左下)には、数百 [nm] から数 [μm] の大きさの粒子が密集していた。

STEM-EDX元素マッピング

 断面のSTEM-EDX面分析により取得した元素マップを、図3(主粒子左側)及び図4(主粒子右側)に示す。試料由来として検出された元素の分布には、概ね以下の傾向が認められた。

  • 主粒子の内部ではUとZrが検出され、それぞれ均一に分布していた。
  • 主粒子周辺において微粒子が密集している領域には、Feが広く分布していた。また、Si、Cr、Niを含むスポットが認められた。
  • 酸素(O)は、断面全体に分布していた。

 断面のSTEM-EDX面分析により取得した元素マップを、図3(主粒子左側)及び図4(主粒子右側)に示す。なお、図4のCuのマップから示されるように、主粒子の右下部では、FIB加工時にメッシュ材由来のCuが再堆積し、局所的に厚い層(Cu再堆積層)が形成されている。この影響で、比較的低エネルギーの特性X線を用いて取得されたO K線のマップ、U M線のマップやZr L線のマップでは、右下部において特性X線強度が局所的に弱い領域が表れている。ここで、U及びZrについては、Cu再堆積層の影響を受けにくい比較的高エネルギーの特性X線として、それぞれU L線及びZr K線を用いて元素マップを確認した。その結果、いずれも概ね均一な分布を示したことから、主粒子上のCu再堆積層においてUとZrは均一に分布しているものと判断された。O K線のマップについても、Cu再堆積層の位置(主粒子上の右下部)において、特性X線の吸収効果により見かけ上濃度の低い領域として表れていると考えられる。  以上のCu再堆積層の影響の検討結果を踏まえ、試料由来として検出された元素の分布には、概ね以下の傾向が認められた。

  • 主粒子の内部ではUとZrが検出され、それぞれ均一に分布していた。
  • 主粒子周辺において微粒子が密集している領域には、Feが広く分布していた。また、Si、Cr、Niを含むスポットが認められた。
  • 酸素(O)は、断面全体に分布していた。

図3 STEM-EDXマップ(粒子左側)

(注)※は主な輝点がすべて他の元素や試料外からの偽信号であることを示す。
   黄色破線は当該元素が存在する位置を示す。


図4 STEM-EDXマップ(粒子右側)

(注)※は主な輝点がすべて他の元素や試料外からの偽信号であることを示す。
   黄色破線は当該元素が存在する位置を示す。

STEM-EDX線分析データ

 主粒子を横切る位置で、STEM-EDXによる線分析を実施した。線分析の位置及び線分析データを図5に示す。同図の主粒子上に相当する線分析位置(グラフ横軸の約3~12 μm)では、U、Zr、及びOの信号強度が、位置とともに緩やかに変化した。なお、同位置では右に向かうほどCuの再堆積の影響が強く表れ(STEM-EDX元素マッピング参照)、各元素からの信号強度が過小評価されていると考えられる。このため元素分布の厳密な評価は困難であるものの、主粒子上の測定位置では、異なる相の存在を示すような信号強度の急峻な変化は認められなかった。

各相組成の半定量分析結果

点分析位置

 元素分布の情報をもとに、STEM-EDX点分析の位置を、図6に示す通り設定した。UとZrがほぼ均一に分布していると考えられる主粒子上の箇所から7箇所(位置①~⑦)、主粒子周辺のFeとCrを含む箇所から3箇所(位置⑧~⑩)の計10箇所を設定した。

各測定点での同定元素

 各位置(①~⑩)での点分析で取得したスペクトルを図7に示す。ソフトウェアの解析により出力された一次データを表1に示す。各点分析位置において試料由来のピークとして検出された元素は、以下の通りである。

  • 位置①では、O、U、及びZrのピークが検出された。Crのピークもわずかな強度で認められた。
  • 位置②では、O、U、及びZrのピークが検出された。Crのピークもわずかな強度で認められた。
  • 位置③では、O、Cr、Zr、及びUのピークが検出された。
  • 位置④では、O、Cr、U、及びZrのピークが検出された。
  • 位置⑤では、O、U、及びZrのピークが検出された。Crのピークもわずかな強度で認められた。
  • 位置⑥では、O、U、及びZrのピークが検出された。Crのピークもわずかな強度で認められた。
  • 位置⑦では、O、U、及びZrのピークが検出されたCrのピークもわずかな強度で認められた。
  • 位置⑧では、O、及びFeのピークが検出された。
  • 位置⑨では、O、及びFeのピークが検出された。Siのピークもわずかな強度で認められた。
  • 位置⑩では、O、Cr、Fe、Zr、及びUのピークが検出された。


各測定点での半定量分析結果

 一次データから、試料由来のピークとして同定された元素の合計を100 at%として再計算した結果を半定量分析結果として、点分析位置とともに表2に示す。なお、位置③については、メッシュ材として用いていたCuが厚く堆積しており(図4のCuのマップを参照)定量評価ができなかったため、半定量分析結果は記載していない。

TEM回折図形の取得と構造解析及び主要化学組成の推定結果

 電子線回折の測定位置、各位置で取得した回折図形、及び結晶構造の同定結果を図8に示す。さらに、同位置または近傍のEDX点分析での半定量分析結果を参照しつつ、結晶構造を含めた主要化学組成を推定した結果を同図に示す。
 主粒子上の位置⑪~⑬では、構造解析の結果c-UO2のパターンと一致していた。近傍のEDX点分析(点①~③)ではUと同程度の濃度でZrが検出されたことから、当該箇所はc-(U,Zr)O2と推定された。
 主粒子周辺の位置⑭では、構造解析の結果c-FeOのパターンと一致し、近傍のEDX点分析(位置⑧)において主にOとFeが検出されたことから、当該箇所はc-FeOと推定された。
 主粒子周辺の位置⑮では、構造解析の結c-FeCr2O4のパターンと一致しており、近傍のEDX点分析(位置⑩)におけるCr/Fe原子比が約2であったことから、当該箇所はc-FeCr2O4と推定された。


 2PEN2103領域06は、組成がほぼ一様で幅20μm以上の大きなc-(U,Zr)O2粒子であった。また、粒子の周囲では、c-FeO及びc-FeCr2O4が同定された。


図データ