ウラン含有粒子の特性のまとめ

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2024年1月24日 (水) 15:03時点におけるKurata Masaki (トーク | 投稿記録)による版 (文章推敲)
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(==>大津さん、他の項目と同様に、ここに目次をつけ、クリックすると該当箇所に飛ぶようにしてください)

 ここでは、1F建屋内から採集した各種サンプルの分析データから推定される、ウラン含有粒子の特性をまとめる。

サンプリング位置と時期、サンプル番号

 図1に、令和4年度までに、国内のホットラボで分析した各種サンプルの採集位置と、このまとめで用いるサンプル番号を示す。

 1号機では、エアロック室堆積物(2015.12採集:1u-1)、PCV底部堆積物(2017.4採集:1u-2)、X-2ペネ堆積物(2019.5採集:1u-3)、ウェルプラグ調査スミア(2019.7/8採集:1u-4)を分析した。さらに、X-2ペネアクセスルート構築関連としてガス管理設備とAWJ装置のスミアサンプルを追加分析した(1-u3)。PCV底部堆積物については、再分析を実施した(1u-2)。さらに、SGTS室調査時のサンプル(1u-5)を分析した。1u-1以外からウラン含有粒子が検出された。

 2号機では、オペフロ養生シート(2014.3採集:2u-1)、TIP配管内閉塞物(2013.7採集:2u-2)、PCV内部調査装置の通過したX-6ペネ内堆積物、カメラ、シールリングスミア(2017.1/2、2018.1、2019.2採集:2u-3/4/5)、トーラス室滞留水ろ過物 (2019.3採集:2u-6)、X-6ペネ調査装置付着物(2020.12採集:2u-7)、原子炉ウェル内調査でのウェル差圧調整ライン堆積物、ダクト劣化部、点検港表面部(2021.4採集:2u-8/9/10)、X-53ペネPCV貫通部(2021.9/10採:2u-11)、シールドプラグ穿孔内堆積物(2021.8採集:2u-12)、FHM遠隔操作室スミア(2022.8採集:2u-13)、SGTS室調査サンプル(2021.1採集:2u-14)を分析した。

 3号機では、PCV内部調査装置スミア(2017.7採集:3u-1)、トーラス室滞留水ろ過物(2019.3採集:3u-2)、RHR熱交換器残留水(2021.12採集:3u-3)を分析した。

 さらに、1/2号機共用のSGTS配管内部スミア(2020.5採集:1u2u-1)を分析した。

(==>大津さん、ここに図1を挿入してください。)

ウラン含有粒子の特徴と分布

 検出されたウラン含有粒子の外観形状・相・結晶状態を、図2にまとめて示す。

 検出された主な相・結晶構造について(参考12:デブリ溶融プールの凝固、参考15:高酸化度デブリの特性)# 参考資料作成後にリンクする。: 

     Uリッチ立方晶(Fe含有)  → 高酸化度デブリメルト由来の可能性、デブリメルトからUとFeが選択的に蒸発し、凝縮した可能性 

     U:Zr=約1:1立方晶デブリメルトが急冷した際に、高温安定固相が形成され、そのまま維持された可能性 

     Uリッチ立方晶       → デブリメルトが徐冷した際に、低温安定固相が形成され、析出した可能性 

     Zrリッチ正方晶        → デブリメルトが徐冷した際に、低温安定固相が形成され、析出した可能性 

     Zrリッチ単斜晶       → デブリメルトが徐冷した際に、低温安定固相が形成され、析出した可能性 

     α-Zr(O)  → 亜酸化状態のデブリメルト(U-Zr-O)からの凝固時に析出した可能性 

     Spinel(FeCr2O4、Fe3O4鋼材成分由来、ウラン含有相の近傍に存在する場合にデブリメルトとの相互作用を示唆。金属デブリメルトの酸化過程で形成される場合には、Crが選択的に酸化される可能性

   # デブリメルトが徐冷した場合には、Uリッチ相とZrリッチ相が近くに存在すると考えられる。

    # 鋼材や未酸化Zrを主成分とし、UやBを少量含有する金属デブリメルトが酸化される過程では、まず、U,Zrが酸化され、次にCrが酸化されると考えられる。

 粒子の外観・形状について: 

     角張った形状     → 固体状物質の破砕・飛散、あるいは、メルトからの凝固・析出の可能性(背景   ) 

     丸みを帯びた形状      → 液滴の飛散・凝縮、あるいは、気体からの凝縮の可能性(背景   )

     両者が混在あるいは判定できない(背景   )

(==>大津さん、ここに図2を挿入してください。)

ウラン含有粒子の特徴に基づく、事故時のデブリふるまいの逆推定

 分析点数が少ないため、不確かさが大きいが、これまでの分析結果から、以下のような推論が提示できる。

1号機

 D/Wでは、溶融デブリの徐冷由来と推定されるU粒子を検出(●▲)。下部プレナムからペデスタルに崩落した燃料デブリは長時間高温状態を維持し、ゆっくり凝固したと推定。

PCV周辺(ウェルプラグ、X-2ペネ)では、いったん蒸発して凝縮したと推定される、高酸化度のU粒子を検出(〇)。コンクリートとの溶融混合を示唆するU粒子は検出されていない。 U粒子の周辺には、鋼材由来と考えられるFeが多く存在しており、燃料デブリと鋼材の相互作用があったことが考えられる(下部プレナム?崩落後?)。一部で、α-Zr(O)が検出され(◆)、崩落時の燃料デブリが亜酸化状態であった可能性が示唆される。(# 昨年度調査で取得された、ペデスタル開口部に近い部位のサンプルの分析で、燃料デブリと鋼材との反応由来の物質が検出されるか、あるいはコンクリートとの反応由来の物質が検出されるかが注目される。)

p2号機・・ほとんどの領域で、溶融デブリの急冷由来と推定されるU粒子を検出(◎)。RPV由来の物質が付着していた内部調査カメラのスミアからのみ、溶融デブリの徐冷由来と推定されるU粒子を検出、ただしUリッチ側の粒子は見つかっていない(▲)。溶融デブリが崩落した痕跡とみられるグレーチング開口部の下(UTPが見つかったあたり)の対面にある、X-6ペネ、X-53ペネのみで、飛来した鋼材成分と燃料デブリ成分が再凝集したような大粒径の粒子(数10~100ミクロン)を検出、ペネ内がかなりの高温状態になっていた可能性を示唆(1500℃以下)。また、Uリッチ領域の周辺にCrの酸化物が濃化しており、溶融デブリと溶融鋼材の間で化学的な相互作用があったことを示唆。Uを含有する金属デブリメルトの再酸化が有力なメカニズム。他方、下部プレナムで主に金属デブリが溶融状態であった時に、冷却水がかかることで、一部が酸化され、U含有粒子が形成された可能性。(# 事故進展解析では、下部プレナムで金属リッチデブリが溶融・崩落(おそらく急冷・凝固)し、デブリ本体の酸化物は固体のまま残留したと推定される(RPV内は徐冷)。溶融した金属リッチデブリ中には、Uが最大で10 mol%溶融すると推定される(おそらくホウ素も多く含有)。これまでに検出されたU粒子は、これらの推定と整合している。試験的取り出しデブリサンプルの分析結果待ち。)

p3号機・・様々な化学状態のU粒子(徐冷で形成と推定)が混在し、その周辺に鋼材由来と考えられるFeが多く存在していることから、下部プレナムでのデブリ再溶融~ペデスタル内での堆積・再凝固の過程で、鋼材と燃料デブリの複雑な化学反応があったことを示唆。α-Zr(O)が検出(◆)されていることから、事故進展途中の燃料デブリは金属リッチデブリを多く含み、これが、ペデスタル堆積物中に混入、あるいは、底部で成層化している可能性を示唆。(# ペデスタル開口部周辺を調査できれば、1号機のような状態が起きていたかどうか、また、ペデスタル堆積物の深さ方向の状態に関する情報が得られる可能性。また、原子炉ウェル上部(ウェルプラグ)からサンプルを取得できれば、3号機のデブリ崩落初期に2号機のような金属溶融デブリの先行崩落があったかどうかに係る情報が得られる可能性。金属デブリの急冷に由来するU粒子(◎)が検出されるかどうか。)