事故前後での炉心物質とFPインベントリ

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 TMI-2事故前後での炉心物質とFP分布の評価は、事故炉のクリーンアップ作業、デブリ取り出し、事故進展解析等に向けた重要知見となる。炉心物質については、事故前の設計情報に基づいて初期インベントリが評価され、内部調査、サンプル分析、デブリ取り出しなどの作業の進捗に伴って、事故後の分布が評価された[1,2]。FPについては、事故時の炉心をU富化度によって3領域(炉心中央、炉心中間、炉心外周)に分割し、ORIGEN-II等の解析コードを用いて、事故直前のインベントリとその経時変化が評価された[3]。サンプル分析や内部調査、放射線計測の結果に基づいて、燃料デブリや破損燃料中のFP残留率、また、圧力容器内外の主要うな領域への移行率が評価された[1,2]。この項目では、初期インベントリと物質分布の評価についてまとめる。

炉心物質インベントリ

事故前の炉心物質インベントリ

 表1(a)に、炉心物質のインベントリ評価に用いられた事故前の主要な炉心物質の重量を示す[1]。表1(b)には、マイナー成分も含めたより正確な重量を示す[4]。表1(b)は、デブリ分析の基準に用いられた。主要な炉心物質としては、燃料棒、制御材、構造材(制御棒被覆管、スペーサグリッド、上下端栓、など)があり、その他に、反射体として用いられていたZrO2、可燃性毒物のAl2O3-B4C、ガドリニア含有燃料、などが存在していた。燃料棒は、燃料ペレット約94トン、ジルカロイ被覆管約24トンで構成され、ジルカロイ中の主な副成分としてSnが約370kg装荷されていた。Ag-In-Cd合金からなる制御材は約3トン装荷されていた。構造材は、SS材とインコネル材からなり、事故前の炉心部での重量は約6トンであった。

 また、事故の過程で上部格子の底部が一部溶融して崩落したため、約229kgの構造材がデブリ中に混入したと推定された[1]。また、溶融デブリの一部は、バッフル版とコアフォーマ領域を破損して下部プレナムに移行したが、その際に、構造材約182kgが炉心物質に混入したと推定された[1]。事故進展時に、ジルカロイ被覆管は水蒸気によって酸化され、ZrO2が形成されるが、事故シナリオ解析で推定された水素発生量約459kgから逆算して、ジルカロイ酸化に寄与した酸素重量が約

3,300kgと評価された[1]。これは、単純計算で、Zrの約43%が酸化していたことに相当している。実際には、水素発生量の推定値に不確かさがあること、ジルカロイだけでなく構造材の一部も酸化していたこと、等により、酸素重量増加の推定にはある程度の不確かさが存在している。これらの合計として、事故後の炉心物質の総重量は133,250kgと見積もられた[1]。

表1(a) TMI-2炉の主要な炉心物質の初期インベントリ [1]
炉心物質 成分 重量(kg) 炉心物質 成分 重量(kg) 炉心物質 成分 重量(kg) 炉心物質、など 成分 重量(kg)
燃料棒 U 82,810 制御材 Ag 2,199 構造材

(SS, インコネル)

Fe 3,400 その他 ZrO2, Al2O3-B4C, Gd2O3、など 3,600
Zr 23,200 In 412 Cr 1,110 上部格子の崩落 構造材 229
Sn 370 Cd 137 Ni 1,046 バッフル板などの破損 構造材 182
O 11,300 Mo 36 ジルカロイの酸化 酸素量の増加 3,300
表1(b) TMI-2炉の炉心物質の重量と組成 [4]
炉心物質 重量(t) 主要成分 組成(wt%) 炉心物質 重量(t) 主要成分 組成(wt%)
UO2ペレット 93.05 U-235 2.265 ZrO2 0.331 Zr 74
U-238 85.882 O 26
O 11.853 Ag-In-Cd 2.749 Ag 80.0
Zry-4 23.029 Zr 97.907 In 15.0
Sn 1.60 Cd 5.0
Fe 0.225 B4C-Al2O3 0.626 Al 34.33
Cr 0.125 O 30.53
O 0.095 B 27.50
その他 C,N,Hf,S,Al,Ti,V,Mo,Ni,

Cu,W,H,Co,B,Cd,U

C 7.64
SS 4.636 Fe 68.635 Gd2O3-UO2 0.1315 Gd 10.27
Cr 19.000 U 77.22
Ni 9.000 O 12.01
Mn 2.000
Si 1.000
その他 N,C,Co,P,S
Inconel-718 1.211 Ni 51.900
Cr 19.000
Fe 18.000
Nb 5.553
Mo 3.000
その他 Tl,Al,Co,Si,Mn,N,Cu,C,S

事故後の炉心物質分布

 表2に、事故後の破損燃料とデブリの分布の評価結果をまとめて示す[1]。燃料棒の約33%は、炉心周辺、及び、炉心下部に、本来形状を維持して残留していた。事故シナリオ解析の結果、これらの燃料棒の事故時ピーク温度は、ほぼ<1100Kであり、炉心物質の初期組成がほぼ維持されていると評価された。周辺燃料棒と切り株燃料棒の割合は、周辺燃料棒約22.7%、切り株燃料棒約10.7%と見積もられた。これらの値については、デブリ取り出し時の画像データ解析により、不確かさは5%以内と評価された。炉心中央に堆積していた溶融凝固層については、上下クラストで挟まれた構造を持っていた。ボーリングサンプルの分析と画像解析により、上部クラストは、比重8.3g/cm3、重量2,450kg、下部クラストは、比重7.3g/cm3、重量8,760kgと評価された。クラスト層の厚みが非均質なことから、その重量評価誤差は30~40%と見積もられた。溶融凝固層の重量は、回収されたデブリと上下クラスト層重量の差し引きで、25,990kgと評価された。上部ルースデブリベッドは、比重3~5g/cm3の範囲で(上層が小さく、下層が大きい)、初期インベントリの約20%を占めていた。下部プレナムデブリについては、取り出し時の重量が19,100kgであり、主成分はUとZrの二酸化物で、構造材成分をわずかに含んでいた。残り約10,000kgは、この評価の段階では正確に見積もられていない。下部プレナムデブリや溶融凝固層と、LCSAやUCSAの堆積デブリの組成や比重はほぼ等しいと仮定し、画像データで見積もったデブリ堆積から、残りの10,000kgが、LCSAとUCSAの堆積デブリに割り付けられている。

表2 事故後の炉心物質の重量分布 [1]
主要な領域 重量推定値(kg) 不確かさ(%) 事故直後のインベントリに対する割合(%)
形状を維持した燃料棒

(炉心周辺燃料、切り株燃料)

44,500

 周辺燃料棒:30,200  切り株燃料棒:14,300

5 33.4
溶融凝固層

(クラスト層を含む)

32,700

 溶融凝固層:25,990  上部クラスト層:2,450  下部クラスト層:8,760

5 24.5
上部ルースデブリ

(デブリベッド)

26,600 5 19.9
下部プレナムデブリ 19,100 20 14.3
LCSA内堆積デブリ 5,800 40 4.3
UCSA内堆積デブリ 4,200 40 3.2
圧力容器外 60~100# - 0.2~0.3

#圧力容器外の炉心物質量は、原子炉建屋と補助建屋内の各種機器や配管の線量計測の結果に基づいて推定された。後日、GPU社による詳細評価がなされ、450kgに修正されている

LCSA: Lower Core Support Assembly

UCSA: Upper Core Support Assembly

 表3に、燃料棒主要成分(U,Zr,Sn)の、圧力容器内デブリ中の捕捉率を示す[1]。

 それぞれの領域から採集されたデブリサンプルの分析値の積み上げで、核物質の97%以上が捕捉されたとされた。形状を維持した燃料棒は、初期インベントリをそのまま維持していたとされた。上部ルースデブリは、>90%が約1~5mmサイズの粒子デブリであり、その平均組成は、初期インベントリに比べてUリッチであった(66%に対し75%)。下部プレナムデブリは、Uの平均濃度65%で、初期インベントリに近い値であった。これに対し、溶融凝固層や上部クラスト層中の金属相や下部クラスト層はUの相対濃度が低く、逆にZr濃度が高い傾向が示された。上部クラスト、溶融凝固層、下部クラストの平均的なU濃度は、それぞれ、49、54、34%であった。しかし、これらの層のうち酸化物相中の平均U組成は、炉心平均に近い値であった。

参考:事故シナリオとデブリふるまい

参考文献

[1] D.W. Akers et al., TMI-2 Core materials and Fission Product Inventory, Nucl. Eng. and Design 118 (1990) 451-461.

[2] D.W. Akers and R.K. McCardell, Core Materials Inventory and Behavior, Nucl. Technol., 87 (1989) 214-223.

[3] B.G. Schnitzler and J.B. Briggs, TMI-2 Isotopic Inventory Calculations, EGG-PBS-6798, 1985.

[4] Akers