水素によるICの除熱劣化
号機:1号機
項目番号:1
概要
1号機においては、地震後、非常用復水器(ICを断続的に運転することで、原子炉圧力を制御している。津波により全電源を喪失する直前においては、ICは一時的に停止している状態であった。全電源喪失後、運転員は中央制御室にて格納容器外側のIC(A系)隔離弁(MO-2A、MO-3A 弁)の閉状態を示すランプが点灯していることを発見し、3 月 11 日 18 時 18分に、これらの弁を開操作し、蒸気発生音と建屋越しに発生した蒸気を確認している。しかし、このときの蒸気発生量は少なく、しばらくして蒸気の発生がなくなったことから、ICのタンクの水がなくなっていることを懸念し、11日18時25分に戻り配管の隔離弁(MO-3A 弁)を閉としている。
ICについては、原子炉水位が低下し、水-ジルコニウム反応により非凝縮性ガスである水素が発生した場合、冷却管に水素が混合することによって除熱性能が劣化すると考えられている。解析結果によると 18 時 18 分時点では、原子炉水位は有効燃料頂部(TAF)を若干下回った程度で、水素が大量に発生していた状況には無い可能性があるが、放射線分解による水素発生の影響等も考慮し、1号機において、実際にどの程度の除熱劣化があったかについて明らかにする必要がある。
検討状況・検討結果
全交流電源喪失後、18 時 18 分に IC を起動し、その後 18 時 25 分に ICを閉操作せず開維持した場合の事故進展挙動について検討を行った。その結果、IC が起動し続けていたとしても、水-ジルコニウム反応によって発生す る水素が IC の管内に滞留することにより IC は除熱能力を喪失することが 示唆された。IC 作動ケースでは、RPV 破損タイミングを遅らせる結果となったが、事故進展の大きな流れからすると現在の1号機の状況と比較して大きな差は生じなかったと考える。
詳細は、「1号機非常用復水器における除熱状況について」を参照。