TMI-2での事故進展に伴うデブリ移行挙動
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TMI-2事故後の炉心形状、事故時の計測データ、種々のメカニズム解析に基づく炉心物質移行の時系列の推定結果は、参考文献[1][2]でとりまとめられている。図1に、TMI-2事故でのスクラム後約4時間のRPV内圧力変化と主なイベントを示す。TMI-2事故では、蒸気発生器への主冷却ポンプ停止により、一次冷却系の圧力が上昇し、スクラムに至った。スクラム後100分で冷却水供給が停止し、炉心水位が低下、炉心上部から次第に燃料が露出し、燃料溶融開始した。以降のデブリふるまいは、大きく3つのフェーズに分けて理解されている。 • 0~100分:一次冷却水の部分的な喪失。炉心冷却自体は継続。 【初期フェーズ、図2、3】 • 100~174分:一次冷却水ポンプの停止、冷却水の沸騰と炉心の露出開始、炉心の過熱、Zry酸化、初期の炉心下部の閉塞。 【トランジエント、図3,4】 • 174~180分:一次冷却水B系ループの起動・注水、周辺部の燃料集合体の冷却、RPV内圧上昇。これらがきっかけで注水後数分間以内で炉心上部の崩落・炉心形状の喪失、初期の炉心下部閉塞物の上にデブリベッドの形成。炉心崩落により、Zry酸化はいったんほぼ停止。 • 180~200分:デブリベッド内の温度はいったん低下、デブリベッド内に冷却ガス侵入できず、デブリ再昇温・再溶融開始。 【後期フェーズ前半、図5,6】 • 200~224分:炉心下部で溶融デブリプール形成・成長。高圧注水系起動による冷却水水位の回復。しかし、デブリベッド内への冷却水侵入に20分くらい時間を要した可能性(#不確かさが大きい推定)。溶融デブリプール周辺の水没。この時発生した高温水蒸気+水素ガスにより、上部格子が一部溶融したと推定(図7)。 【後期フェーズ後半、図8,9】 • 224~226分:上部ルースデブリへの冷却水侵入により、上部クラストの上下で圧力差発生。溶融デブリプールが加圧。一方で、下部クラストは冷却継続され、強度を維持。このため、側部クラストが破れ溶融プールの一部がシュラウドに到達、これを破損して短時間でRPV下部ヘッドに移行。冷却水により移行したデブリ凝固。移行したデブリとRPV壁の隙間に水層形成。 • 226分~15.5時間:RPV底部にホットスポット形成。ホットスポットでのデブリ温度>2773K、鋼材ピーク温度<1373K、加熱時間約30分と評価。下部ヘッドにおけるデブリベッドの冷却、一次冷却系の循環冷却の確立。 燃料デブリ・堆積物の生成プロセスの検討に資する情報(参考:) • TMI-2の場合、低融点の構造物(Zry、SUS、Ag-In-Cdなど)が先に流下し、炉心下部の水位面近傍で凝固することによりクラストが形成され、これが坩堝の役割を果たすことで溶融プール形成の起点となったと考えられている。1F2号機の場合、有効燃料部に水位を形成していなかった可能性があり、大規模な溶融プールの形成には至らず、金属系のデブリが先行して流下した可能性がある。