「2PEN2103-TEM-Region12」の版間の差分

提供:debrisWiki
ナビゲーションに移動 検索に移動
104行目: 104行目:
</gallery>
</gallery>
<p style="text-align:center">
<p style="text-align:center">
'''図6 STEM-EDX点分析位置及び半定量取得データ'''
'''図7 STEM-EDX点分析位置及び半定量取得データ'''
</p>
</p>



2024年3月13日 (水) 11:18時点における版


更新履歴 

更新履歴
No 日付 分類 内容 備考 記載者
1 2022/05/16 新規 2PEN2103 TEM分析結果(領域12)の登録 IRID報告書(付録-4)の内容を転記。分析機関での精査を終えていない生データの段階であるため、wordファイルの原本へのリンクを作成するに留めた。 原稿作成:鈴木(NFD)
wiki転記:池内(JAEA)
2 2022/08/25 改訂 図(HAADF像、EDS元素マッピング、EDS線分析、EDS点分析、電子線回折)を分析機関での精査後のバージョンに差し替えた(リンク先wordファイルを更新)。 原稿作成:鈴木(NFD)
wiki転記:池内(JAEA)
3 2023/3/23 改訂 本文(仮)の追記 図面精査:鈴木(NFD)
wiki原稿(仮)作成:池内(JAEA)
4 2023/03/29 承認 分析データへの掲載承認 池内(JAEA)

断面の微細構造及び元素分布

TEM観察用試料の採取箇所及びHAADF-STEM像

 図1に、2PEN2103着目領域12のTEM観察用試料の採取位置及び観察方向を、SEM画像上に重ねて示す。
 TEM観察用試料断面のミクロ組織のHAADF-STEM像を図に示す。当該領域の断面中央には、幅約10 μmのほぼ均一な構造を持った台形状の粒子が存在した。以後、本分析結果の説明において、この粒子を「主粒子」という。
 主粒子右下には、サブミクロンの大きさを持つ粒子が複数集まった領域が認められた(視野A)。
 主粒子、及び視野Aの周囲には、大きさ数十 [nm]から1 μmの大きさを持つ微粒子が密集していた。

STEM-EDX元素マッピング

 断面のSTEM-EDX面分析により取得した元素マップを、図3(主粒子を含む断面全体)及び図4(右下拡大部:視野Aとその近傍)に示す。
 試料由来として検出された元素の分布には、概ね以下の傾向が認められた。
<断面全体の傾向>(図3)

  •  主粒子上ではUとZrが検出され、それぞれ均一に分布していた。
  •  主粒子及び視野Aの周囲に広がる微粒子が密集する領域では、Feが広く分布していた。その領域の一部では、Mg、Al、Si、S、Cr、Ni、Sn、Pbが検出された。
  •  酸素(O)は、断面全体に分布していた。

<右下拡大部の傾向>(図4)

  •  視野Aを構成する複数粒子の領域では、数十 [nm] から数百 [nm] の大きさの粒子(サブミクロン粒子)上に、UとZrが検出された。これらのサブミクロン粒子の間には、Cr濃度の高い箇所が存在し、Crと同じ位置にFeも検出された。
  •  視野Aを構成する複数粒子の周辺には、主にFeが広く分布していた。Feが広く分布する領域の一部では、Mg、Si、Ca、Cr、Ni、Zn、Sb、Pbが検出された。


(注)※は主な輝点がすべて他の元素や試料外からの偽信号であることを示す。
   黄色破線は当該元素が存在する位置を示す。

(注)※は主な輝点がすべて他の元素や試料外からの偽信号であることを示す。
   黄色破線は当該元素が存在する位置を示す。

STEM-EDX線分析データ

 主粒子を横切る位置で取得した線分析データを図5に示す。主粒子上では、線分析箇所の左から右にかけてUとZrのカウント数の緩やかな減少(膜厚変化による)が認められたものの、UとZrとのカウント比はほぼ一定であった。主粒子の周辺では、Feのカウント数の増加が認められた(左端から約1.2 μmまで、及び約5.3 μm以上の位置)。また、主粒子と周辺との境界付近の位置(左端から約1.0~1.2 μmの位置)では、Crのカウント数の増加が認められた。
 視野Aを横切る位置で取得した線分析データを図6に示す。大きさ数百 [nm] の粒子の位置では、UとZrのカウント数の増加が認められた。また、画面左端付近に位置する大きさ約100 nmの粒子上では(左端から約0.1~0.2 μm の位置)、Uのカウント数は増加せず、Zrのカウント数が増加した。線分析位置の左端付近と右端付近ではFeのカウント数の増加が認められた。

各相組成の半定量分析結果

点分析位置

 元素分布の情報をもとに、STEM-EDX点分析の位置として、図7に示す通り設定した。主粒子上で3箇所(位置①~③)、主粒子近傍にあるUとZrを含む粒子から1箇所(位置④)、視野AにおいてUとZrを含む粒子から2箇所(位置⑦⑨)、同視野のうちZrを含む粒子から1箇所(位置⑥)、同領域のこれら粒子間に存在するFeとCrを含む箇所から1箇所(位置⑧)、Feを含む箇所から1箇所(位置⑩)、及び主粒子周辺に密集する微粒子から1箇所(位置⑤)の計10箇所を設定した。

図7 STEM-EDX点分析位置及び半定量取得データ

各測定点での同定元素

各位置(①~⑩)での点分析で取得したスペクトルを図8に示す。ソフトウェアの解析により出力された一次データを表1に示す。各点分析位置において試料由来のピークとして検出された元素は、以下の通りである。

  • 位置①では、O、Cr、U、及びZrのピークが検出された。
  • 位置②では、O、Cr、U、及びZrのピークが検出された。
  • 位置③では、O、Cr、U、及びZrのピークが検出された。
  • 位置④では、O、U、及びZrのピークが検出された。Crのピークもわずかな強度で認められた。
  • 位置⑤では、O、及びFeのピークが検出された。
  • 位置⑥では、O、Fe、及びZrのピークが検出された。
  • 位置⑦では、O、Cr、Fe、Zr、及びUのピークが検出された。
  • 位置⑧では、O、Cr、Fe、及びごく小さい強度のZrのピークが検出された。
  • 位置⑨では、O、Cr、Fe、Zr、及びUのピークが検出された。
  • 位置⑩では、O、Mg、及びFeのピークが検出された。
表1 一次データ
位置 OK NaK MbK AlK SiK SK CaK TiK Cr K MnK FeK NiK ZnK ZrK Mo K RuL SnL SbL TeL CsL BaL Pb L UM
72.0 0.0 0.1 0.4 0.4 0.0 0.0 0.0 0.7 0.1 1.8 0.0 0.0 8.9 0.0 0.2 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 15.5
72.0 0.0 0.0 0.2 0.2 0.0 0.0 0.0 0.8 0.1 1.6 0.0 0.1 9.6 0.0 0.2 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 15.2
72.7 0.0 0.0 0.2 0.3 0.0 0.0 0.1 0.9 0.1 1.6 0.0 0.1 9.6 0.0 0.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 14.2
80.9 0.0 0.0 0.3 0.2 0.0 0.0 0.1 0.4 0.2 1.6 0.0 0.1 4.1 0.0 0.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 12.2
55.3 0.0 0.0 0.0 0.3 0.0 0.0 0.0 0.1 0.1 43.5 0.1 0.0 0.1 0.1 0.0 0.0 0.1 0.0 0.0 0.0 0.1 0.1
78.5 0.0 0.3 0.1 0.6 0.0 0.0 0.0 0.1 0.0 5.0 0.3 0.0 14.8 0.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.1
78.6 0.0 0.0 0.2 0.2 0.0 0.0 0.0 0.6 0.1 1.5 0.0 0.0 6.7 0.0 0.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 11.9
56.1 0.0 0.4 0.1 0.1 0.0 0.0 0.0 28.0 1.3 13.1 0.0 0.0 0.7 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.1
72.6 0.0 0.2 0.2 0.2 0.0 0.0 0.0 5.5 0.3 3.6 0.0 0.0 7.8 0.0 0.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 9.3
56.9 0.0 1.5 0.0 0.1 0.0 0.0 0.0 0.1 0.1 41.3 0.0 0.0 0.0 0.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

(注意事項)このデータは、TEMに付属したソフトウェアによる出力値をそのまま表示したものであり、疑似信号や有効数字の評価を行っていない取得データである。

各測定点での半定量分析結果

 一次データから、試料由来のピークとして同定された元素の合計を100 at%として再計算した結果を半定量分析結果として、点分析位置とともに表2に示す。なお、測定位置によっては、周囲をFe濃度の高い相に取り囲まれた幅約100 nmの粒子(位置⑥)や、UとZr濃度の高い別の粒子が近接する箇所(位置⑧)があり、これらの測定位置では周辺の隣接粒子や隣接相に含まれる元素からの信号を検出している可能性がある。半定量分析結果のうち、このような周辺の隣接粒子や隣接相からの寄与を含む可能性のある元素については、半定量値に “*” を付して示した。

表2 半定量分析結果
位置 O Na Mg Al Si S K Ca Ti Cr Mn Fe Ni Zn Zr Mo Ru Sn Sb Te Cs Ba Pb U
74 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 1 n.d. n.d. n.d. n.d. 9 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 16
74 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 1 n.d. n.d. n.d. n.d. 10 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 16
75 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 1 n.d. n.d. n.d. n.d. 10 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 15
83 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. L.O.Q. n.d. n.d. n.d. n.d. 4 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 13
56 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 44 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d.
80 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 5* n.d. n.d. 15 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d.
79 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 1 n.d. 2 n.d. n.d. 7 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 12
57 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 29 n.d. 13 n.d. n.d. 1* n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d.
73 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 6 n.d. 4 n.d. n.d. 8 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 9
57 n.d. 2 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 41 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d.

(注意事項)
・ “n.d.”は、EDX信号のエネルギースペクトルにピークが確認されず、検出限界以下と判断した元素である。
・ “L.O.Q”.は、スペクトルにピークが確認できるものの、本表に示す元素を100%とした場合に0.5at%未満となり、定量下限以下と判断した元素である。
・ 本表の数値は、“n.d.”及び“L.O.Q.”を除いた半定量性を持つデータを示していると判断した元素を100%として規格化して表示した。
・ “ * ” を付した数値は、周辺の隣接相や隣接粒子からの影響を含む可能性がある。

TEM回折図形の取得と構造解析及び主要化学組成の推定結果

 電子線回折の測定位置を図9に、各位置で取得した回折図形を図10に、結晶構造の同定結果を表3に示す。さらに、同位置または近傍のEDX点分析での半定量分析結果を参照しつつ、結晶構造を含めた主要化学組成を推定した結果を同表に示す。
 主粒子の位置⑪では、構造解析の結果c-UO2のパターンと一致し、近傍のEDX点分析(位置①②③)ではUと同程度の濃度でZrが検出されたことから、当該箇所はc-(U, Zr)O2と推定された。
 視野Aを構成する粒子上の位置⑦は、構造解析の結果c-UO2のパターンと一致し、同位置のEDX点分析ではUと同程度の濃度でZrが検出されたことから、当該箇所はc-(U, Zr)O2と推定された。
 同じく視野Aの構成粒子のひとつである位置⑥は、構造解析の結果m-ZrO2のパターンと一致した。同位置のEDX点分析では、Zrの他にFeも検出されていた。一方で、この粒子の大きさは高々100 nm程度であり、周辺をFeとOからなる連続相によって取り囲まれている。このため、点分析で検出されたFeは、周辺(断面のみならず、深さ方向からの寄与も含む)からの影響を拾っていると考えられる。以上より、当該箇所はm-ZrO2と推定された。
 視野Aの粒子間の位置を占める位置⑫は、構造解析の結果c-Fe3O4のパターンと一致しており、近傍のEDX点分析(位置⑧)におけるCr/Fe原子比が約2であったことから、当該箇所はc-FeCr2O4と推定された。
 位置⑬では、構造解析の結果c-Fe3O4のパターンと一致し、近傍の点分析(位置⑩)において主にFeが検出されたことから、当該箇所はc-Fe3O4と推定された。

分析結果のまとめ

 2PEN2103領域12は、組成がほぼ一様で約10 μmの大きさを持ったc-(U, Zr)O2粒子が存在し、その近傍にもサブミクロンの大きさのc-(U, Zr)O2粒子が複数存在した。これらのc-(U, Zr)O2粒子は、ほぼ同等のU/Zr比を有していた(U : Zrの原子比が約6 : 4)。また、約100 nmの大きさを持ったUを含まないm-ZrO2の微粒子も存在した。
 これらの粒子の近傍及び粒子間にて、c-FeCr2O4及びc-Fe3O4が同定された。



図データ