「下部プレナムデブリサンプルの分析データ」の版間の差分

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(ページの作成:「 炉心中央(H8集合体部位)と炉心中間(E9集合体部位)位置で、それぞれ2タイプのサンプラーを用いて、異なる深さから上部ルースデブリのサンプリングが行われた[1,2]。1983年9~10月に6個、1984年3月に5個のサンプルが回収された。サンプル重量はそれぞれ約17~170gであった。そのうち10個はINELに輸送され分析された。1個はB&W社で分析が行われた…」)
 
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 炉心中央(H8集合体部位)と炉心中間(E9集合体部位)位置で、それぞれ2タイプのサンプラーを用いて、異なる深さから上部ルースデブリのサンプリングが行われた[1,2]。1983年9~10月に6個、1984年3月に5個のサンプルが回収された。サンプル重量はそれぞれ約17~170gであった。そのうち10個はINELに輸送され分析された。1個はB&W社で分析が行われた(Sample-2)。デブリ粒子の一部が分取され、ロックウェルハンフォード(RH)社で熱分析が行われた。事故時の反応の痕跡を残すデブリ粒子が29個分取され、INELで微細組織分析が行われた。うち、22個はANLに移送され、さらに詳細な組織分析が行われた。分析結果については、1984年内に速報[3]が、さらに1985年にドラフト版[4-7]が報告された。1986年に、分析結果の総合報告が刊行された[1,2]。サンプル重量(合計で1.37kg)は、デブリ総重量に対しおよそ0.001%であり、サンプル代表性に課題があるため、分析結果は定性的な傾向を示すものとしてまとめられている。
 1985年7月に実施された下部プレナム周辺部の調査において、熱遮蔽の外側で容器槽との間の円環状の領域を通じて圧力容器上部から長尺ツールを挿入し、ビデオ調査とサンプリングが行われた[1]。'''図1'''に、下部プレナム調査の概要を示す[1]。開口部7と11を通じて、その周辺の粒子デブリ16個が採集され、INELとANL-Eにおいて分析が行われた[2]。粒子の重量は、最小0.4gから最大で553.9gであり、サイズは粉末状から最大で6.3cmであった。断面形状はおよそ均質で、密度は6.57~8.25g/cc(平均7.07g/cc)、閉空孔率は8~30%(平均25%)であった。マトリックス相の主成分は(U,Zr)O<sub><small>2</small></sub>であり、その内部にわずかにUO<sub><small>2</small></sub>が残留していた。(U,Zr)O<sub><small>2</small></sub>相には溶融凝固の痕跡が見られ、UO<sub><small>2</small></sub>相は融点近傍まで温度上昇した形跡が見られたことから、デブリの最高温度は3120K近くに到達していたと推定された。結晶粒界には、Fe-Cr-Al等を主成分とする酸化物の第二相が析出していた。また、空孔や結晶粒界に、わずかに、金属粒子が析出しており、その成分はNi-Sn-Ru、Mo-In-Agなどであった。U:Zr比は、60~70wt%:10~15wt%であり、炉心平均より、ややZrの割合が小さかった。高揮発性、中揮発性FPの保持率としては、サンプル平均として、Cs-137が13%、I-129が3%、Sb-125が2.5%、Ru-106が6%と評価された。Cs-137については、炉心部から回収された溶融凝固層中の保持率より大きく、空孔内に多く閉じ込められていた。低揮発性FPの保持率、および、U富化度の分析値から、下部プレナムデブリの平均的な組成は、事故前に炉心中央に装荷されていた燃料集合体(U富化度1.98%)と炉心中間に装荷されていた燃料集合体(U富化度2.64%)の平均値と整合していた。このことから、炉心外周に装荷されていた燃料集合体(U富化度2.96%)由来の成分は、あまり混合していないと評価された。
 
 この項目では、下部プレナムデブリの分析結果の詳細をまとめる。
 
'''<big>参考:下部プレナム調査</big>'''
 
'''<big>参考:分析調査のニーズ</big>'''
 
== 分析計画と分析方法 ==
 下部プレナムデブリの採集と分析は、圧力容器内部調査の進展を受けて改定されたCore Examination Planの一環として実施された[3]。事故シナリオの解明と、圧力容器内からのデブリ取り出し工法への知見反映を目的として、デブリの物理的な特性(重量、密度、形状、形態、空孔率)、化学的な特性(組成、微細組織、事故時ピーク温度)、FP残留割合、機械的な特性(破砕性、切断性、掘削性)の調査が行われた。分析技術、手順は、ホットラボでの未知サンプル分析で用いられる一般的な手順を元に選定された。
 
== 分析結果 ==
 
=== 物理的な特性 ===
 
== 参考文献 ==
[1] J.P. Adams and R.P. Smith, TMI-2 Lower Plenum Video Data Summary, EGG-TMI-7429, 1987.
 
[2] C.S. Olsen et al., Examination of Debris from the Lower Head of the TMI-2 Reactor, GEND-INF-084, 1988.
 
[3] M.L. Russel et al., TMI-2 Accident Evaluation Program Sample Acquisition and Examination Plan for FY 1987 and Beyond, EGG-TMI-7521, 1987.

2025年7月1日 (火) 13:02時点における版

 1985年7月に実施された下部プレナム周辺部の調査において、熱遮蔽の外側で容器槽との間の円環状の領域を通じて圧力容器上部から長尺ツールを挿入し、ビデオ調査とサンプリングが行われた[1]。図1に、下部プレナム調査の概要を示す[1]。開口部7と11を通じて、その周辺の粒子デブリ16個が採集され、INELとANL-Eにおいて分析が行われた[2]。粒子の重量は、最小0.4gから最大で553.9gであり、サイズは粉末状から最大で6.3cmであった。断面形状はおよそ均質で、密度は6.57~8.25g/cc(平均7.07g/cc)、閉空孔率は8~30%(平均25%)であった。マトリックス相の主成分は(U,Zr)O2であり、その内部にわずかにUO2が残留していた。(U,Zr)O2相には溶融凝固の痕跡が見られ、UO2相は融点近傍まで温度上昇した形跡が見られたことから、デブリの最高温度は3120K近くに到達していたと推定された。結晶粒界には、Fe-Cr-Al等を主成分とする酸化物の第二相が析出していた。また、空孔や結晶粒界に、わずかに、金属粒子が析出しており、その成分はNi-Sn-Ru、Mo-In-Agなどであった。U:Zr比は、60~70wt%:10~15wt%であり、炉心平均より、ややZrの割合が小さかった。高揮発性、中揮発性FPの保持率としては、サンプル平均として、Cs-137が13%、I-129が3%、Sb-125が2.5%、Ru-106が6%と評価された。Cs-137については、炉心部から回収された溶融凝固層中の保持率より大きく、空孔内に多く閉じ込められていた。低揮発性FPの保持率、および、U富化度の分析値から、下部プレナムデブリの平均的な組成は、事故前に炉心中央に装荷されていた燃料集合体(U富化度1.98%)と炉心中間に装荷されていた燃料集合体(U富化度2.64%)の平均値と整合していた。このことから、炉心外周に装荷されていた燃料集合体(U富化度2.96%)由来の成分は、あまり混合していないと評価された。

 この項目では、下部プレナムデブリの分析結果の詳細をまとめる。

参考:下部プレナム調査

参考:分析調査のニーズ

分析計画と分析方法

 下部プレナムデブリの採集と分析は、圧力容器内部調査の進展を受けて改定されたCore Examination Planの一環として実施された[3]。事故シナリオの解明と、圧力容器内からのデブリ取り出し工法への知見反映を目的として、デブリの物理的な特性(重量、密度、形状、形態、空孔率)、化学的な特性(組成、微細組織、事故時ピーク温度)、FP残留割合、機械的な特性(破砕性、切断性、掘削性)の調査が行われた。分析技術、手順は、ホットラボでの未知サンプル分析で用いられる一般的な手順を元に選定された。

分析結果

物理的な特性

参考文献

[1] J.P. Adams and R.P. Smith, TMI-2 Lower Plenum Video Data Summary, EGG-TMI-7429, 1987.

[2] C.S. Olsen et al., Examination of Debris from the Lower Head of the TMI-2 Reactor, GEND-INF-084, 1988.

[3] M.L. Russel et al., TMI-2 Accident Evaluation Program Sample Acquisition and Examination Plan for FY 1987 and Beyond, EGG-TMI-7521, 1987.