「ヘッド取り外しのデザインエンジニアリングと安全評価」の版間の差分

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 この項目では、その概要をまとめる。
 この項目では、その概要をまとめる。
参考:圧力容器ヘッド取り外しの概要


== 作業安全性の評価と分析 ==
== 作業安全性の評価と分析 ==
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=== 臨界性評価 ===
=== 臨界性評価 ===


以下作成中、、、
 ヘッド取り外しに向けた最初の工程である、内部調査(Quick Look)前に、仮想的な体系での臨界までのマージンの計算が行われた[2]。ついで、Quick Look後に、実際の炉内の損傷状態と最初に設定した仮想体系を比較し、臨界までのマージン計算に用いた仮想体系の有効性が検討された[3]。ここでは、その概要を示す。最初の評価では、Quick Look調査での観察結果よりもひどい損傷状態を仮定しており、その分析には限界があると結論付けられた。
 [2,3]
 
 最初の解析では、保守的な体系として、ヘッド取り外しにおける最悪条件を以下のように仮定した(#圧力容器への重量物落下にともなう炉心形状の変化を除く)。仮定した静的な体系は、(i) 最も信頼できる体系として、50%の無傷の燃料集合体が切り株状に残留している上に50%のデブリが堆積しているというもの、および、(ii) 炉心が100%損傷しているというもの、であった。さらに、圧力容器内で炉心部分の外に堆積しているデブリについても解析が行われた。解析モデルは、(i) 圧力容器の底部に、装荷されていた最も富化度が高い燃料集合体の50%に相当する球(燃料集合体19体分に相当)を配置し、(ii) その周囲にの圧力容器下部に、炉心物質の残り50%からなる半球と、(iii) 炉心から崩落した燃料粒子の円筒、を配置したものであった。いずれの仮想体系でも、3500ppmのホウ酸水中では未臨界性が維持される結果が得られた[2,3]
 
 ヘッド取り外し時点では、圧力容器内の正確な物質配置は不明であった。そのため、ヘッドと支持構造物が落下して圧力容器にぶつかった際に起こりうる燃料再配置に起因する実効反応度(k<small><sub>eff</sub></small>)を正確に計算できなかった。しかし、いくつかの炉心損傷モデルを用いて保守的な計算が行われ、十分なホウ素濃度を提供することで、未臨界性が維持されることが確認された[3]。
 
 ヘッド取り外し作業を通じて、炉心部での燃料体系に形状変化が起きたケースに関する臨界解析は、すべての燃料棒の50%の被覆管が破損していたという仮想条件を基準として行われた。この解析は、なんらかの作業中に、炉心部でさらに12%の燃料が損傷し崩落すると仮定し、さらに、炉心の反応度に影響するすべての因子を最適化する条件で行われた。合計で62%の燃料損傷度は、信頼できる最大の損傷程度である。この解析モデルは、これらの仮定のより十分に保守的とされた。この解析モデルでは、燃料はもっとも反応性が高い体系で追加で損傷し崩落すると仮定した(#つまり、最も富化度が高い燃料からなるバッチ3が、損傷していない下部の切り株燃料バッチ1と、上部の損傷燃料からなるバッチ2に挟まれて堆積)。このバッチ分類により、すべての炉心物質が均質に破損したよりも高い反応度状態を作ることができる。この保守的な体系においても、冷却水中のホウ素濃度が3500ppmであれば、未臨界度が維持されるという解析結果が得られた(k<sub><small>eff</small></sub>=0.988)。しかし、ヘッドやプレナム構造物などの重量物落下事故により、12%を上回る燃料損傷と崩落があったケースについては、このモデルでは対応できない。
 
 さらに、より現実的な体系変化について解析された。このケースでは、追加損傷・崩落するバッチ3は、バッチ1,2の上に堆積されると仮定した。これは、周辺部に残留している無傷の燃料集合体が、ルースデブリベッドの上に倒れる状況を想定している。さらに、上のモデルで仮定した均質サイズのデブリ粒子のかわりに、ランダムなサイズのデブリ粒子がランダムに混合しているというデブリベッドが仮定された。デブリベッドに混入している構造物の効果も考慮された。ここでは、ホウ素濃度を3700ppmとおいた。この、より現実的な体系変化ケースでの実効反応度は、k<sub><small>eff</small></sub>=0.944だった。
 
(ここに模式図を挿入)
 
=== 崩壊熱除去 ===
 Quick Look調査、さらに、ヘッド取り外し作業では、RCS系の水位を下げる必要があった。ヘッド取り外しでは、プレナム構造物のカバープレートの下30cmまで水位を下げる必要があった。圧力容器内の冷却水量が減ると、崩壊熱の除熱性能が低下する可能性があった。規定では、自然冷却条件で、RCS系の水温を制限値である75℃以下に維持する必要があった。
 
 Quick Look調査の前に、熱バランス解析が行われた[4]。
 
 
ここから、、、
 
 
ここでは追加解析を実施。RCS水位をさらに2フィート下げた条件、および、圧力容器ノズルの底部のレベルまで下げた条件で(参考文献)。超保守的な条件でも、水温は制限値以下にとどまる。
 
 解析レポートは、保守的解析に加えて、現実的な条件での解析結果も示している。保守的解析は、カメラ調査前の条件。解析結果は、70℃と85℃。それぞれ、321.6条件と314条件で。1983年1月の崩壊熱解析値を利用。ベストエスティメートでは、カメラ調査の時に実施された水位低下の時の水温変化をベンチマークに利用。その結果は、50℃と65℃。
 
(ここに水位変化の模式図を挿入)
 
 
 
参考:Quick Look


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==

2025年1月15日 (水) 14:10時点における版

 TMI-2炉での圧力容器ヘッドの取り外しは、燃料・デブリ取り出しを進める上での重要ステップである。ヘッド取り外し工程に係るプラント側設備の整備と取り外し手法・ツールに関するデザインエンジニアリングと安全評価は、ヘッド取り外しの2年以上前に着手された。ヘッド取り外しに向けて、一次系冷却水(RCS: Reactor Coolant System)の圧力バウンダリーを開放するには、圧力容器周囲を除染し遮蔽物を設置するだけでなく、事故炉に固有の条件を考慮しつつ様々な準備作業が必要とされた[1]。未臨界度の評価、冷却水中のホウ素濃度の評価、カバーガス中に含まれるKr-85の放出方法の検討、放射線分解で発生が継続している水素の対策、デブリの自然発火可能性の評価、ヘッドやプレナム構造物などの重量物の取り扱い、作業員被ばくの抑制、などについて解析・評価が行われた。また、ヘッド取り外し作業で用いられる設備やツールの作業信頼性と運転性を向上すること、さらに、作業中の安全性や被ばく線量の評価も必要だった。これらのエンジニアリング設計の結果を受けて、既設の機器について現状調査と改修、あるいは新たな機器の設計製作が行われた。具体的には、Tripodのとりつけ方法の改良、Canal Plateのシール性の改良、圧力容器固定鋲(Studs)を緩める治具と方法の改良、等が行われた。作業員の被ばく低策として、ヘッドを移動して貯蔵した後ただちに、圧力容器上部にIIFと遮蔽プラットフォームを設置し、上部プレナム構造物を水没させる工法が採用された。通常燃料の交換時に用いるIIFを改良し、ガスケットと締めつけ治具を取り付けて、圧力容器上に設置後にその内部に水位が形成され、さらに、次段階のプレナム構造物取り外し時には固定されるように設計された。

 デザインエンジニアリングは3個のグループに分かれて行われた。

(1)作業安全性の評価と分析、許認可対応の文書作成を含む

(2)プラント側の設備・機器の改良あるいは新設・調達

(3)ヘッド吊り上げ・貯蔵用のツールおよびサポート機器の機器・ツールの改良あるいは新規設計、機能確認

 この項目では、その概要をまとめる。

参考:圧力容器ヘッド取り外しの概要

作業安全性の評価と分析

臨界性評価

 ヘッド取り外しに向けた最初の工程である、内部調査(Quick Look)前に、仮想的な体系での臨界までのマージンの計算が行われた[2]。ついで、Quick Look後に、実際の炉内の損傷状態と最初に設定した仮想体系を比較し、臨界までのマージン計算に用いた仮想体系の有効性が検討された[3]。ここでは、その概要を示す。最初の評価では、Quick Look調査での観察結果よりもひどい損傷状態を仮定しており、その分析には限界があると結論付けられた。

 最初の解析では、保守的な体系として、ヘッド取り外しにおける最悪条件を以下のように仮定した(#圧力容器への重量物落下にともなう炉心形状の変化を除く)。仮定した静的な体系は、(i) 最も信頼できる体系として、50%の無傷の燃料集合体が切り株状に残留している上に50%のデブリが堆積しているというもの、および、(ii) 炉心が100%損傷しているというもの、であった。さらに、圧力容器内で炉心部分の外に堆積しているデブリについても解析が行われた。解析モデルは、(i) 圧力容器の底部に、装荷されていた最も富化度が高い燃料集合体の50%に相当する球(燃料集合体19体分に相当)を配置し、(ii) その周囲にの圧力容器下部に、炉心物質の残り50%からなる半球と、(iii) 炉心から崩落した燃料粒子の円筒、を配置したものであった。いずれの仮想体系でも、3500ppmのホウ酸水中では未臨界性が維持される結果が得られた[2,3]。

 ヘッド取り外し時点では、圧力容器内の正確な物質配置は不明であった。そのため、ヘッドと支持構造物が落下して圧力容器にぶつかった際に起こりうる燃料再配置に起因する実効反応度(keff)を正確に計算できなかった。しかし、いくつかの炉心損傷モデルを用いて保守的な計算が行われ、十分なホウ素濃度を提供することで、未臨界性が維持されることが確認された[3]。

 ヘッド取り外し作業を通じて、炉心部での燃料体系に形状変化が起きたケースに関する臨界解析は、すべての燃料棒の50%の被覆管が破損していたという仮想条件を基準として行われた。この解析は、なんらかの作業中に、炉心部でさらに12%の燃料が損傷し崩落すると仮定し、さらに、炉心の反応度に影響するすべての因子を最適化する条件で行われた。合計で62%の燃料損傷度は、信頼できる最大の損傷程度である。この解析モデルは、これらの仮定のより十分に保守的とされた。この解析モデルでは、燃料はもっとも反応性が高い体系で追加で損傷し崩落すると仮定した(#つまり、最も富化度が高い燃料からなるバッチ3が、損傷していない下部の切り株燃料バッチ1と、上部の損傷燃料からなるバッチ2に挟まれて堆積)。このバッチ分類により、すべての炉心物質が均質に破損したよりも高い反応度状態を作ることができる。この保守的な体系においても、冷却水中のホウ素濃度が3500ppmであれば、未臨界度が維持されるという解析結果が得られた(keff=0.988)。しかし、ヘッドやプレナム構造物などの重量物落下事故により、12%を上回る燃料損傷と崩落があったケースについては、このモデルでは対応できない。

 さらに、より現実的な体系変化について解析された。このケースでは、追加損傷・崩落するバッチ3は、バッチ1,2の上に堆積されると仮定した。これは、周辺部に残留している無傷の燃料集合体が、ルースデブリベッドの上に倒れる状況を想定している。さらに、上のモデルで仮定した均質サイズのデブリ粒子のかわりに、ランダムなサイズのデブリ粒子がランダムに混合しているというデブリベッドが仮定された。デブリベッドに混入している構造物の効果も考慮された。ここでは、ホウ素濃度を3700ppmとおいた。この、より現実的な体系変化ケースでの実効反応度は、keff=0.944だった。

(ここに模式図を挿入)

崩壊熱除去

 Quick Look調査、さらに、ヘッド取り外し作業では、RCS系の水位を下げる必要があった。ヘッド取り外しでは、プレナム構造物のカバープレートの下30cmまで水位を下げる必要があった。圧力容器内の冷却水量が減ると、崩壊熱の除熱性能が低下する可能性があった。規定では、自然冷却条件で、RCS系の水温を制限値である75℃以下に維持する必要があった。

 Quick Look調査の前に、熱バランス解析が行われた[4]。


ここから、、、


ここでは追加解析を実施。RCS水位をさらに2フィート下げた条件、および、圧力容器ノズルの底部のレベルまで下げた条件で(参考文献)。超保守的な条件でも、水温は制限値以下にとどまる。

 解析レポートは、保守的解析に加えて、現実的な条件での解析結果も示している。保守的解析は、カメラ調査前の条件。解析結果は、70℃と85℃。それぞれ、321.6条件と314条件で。1983年1月の崩壊熱解析値を利用。ベストエスティメートでは、カメラ調査の時に実施された水位低下の時の水温変化をベンチマークに利用。その結果は、50℃と65℃。

(ここに水位変化の模式図を挿入)


参考:Quick Look

参考文献

[1] P.R. Bengel, M.D. Smith, G.A. Estabrook, Appendix-A, Design Engineering Reactor vessel head Removal Activities, TMI-2 Reactor Vessel Head Removal, GEND-044, 1985.

[2] J.R. Worsham III, Appendix-A, Methods and Procedures of Analysis for TMI-2 Criticality Calculations to Support Recovery Activities Through Head Removal, BAW-1738, 1982.

[3] J.R. Worsham III, Addendum 1, Verification of Criticality Calculations for TMI-2 Recovery Operations through Head Removal, 1982.