「リードスクリューサンプルの分析と自然発火性試験」の版間の差分

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== リードスクリューサンプルの分析 ==
== リードスクリューサンプルの分析 ==
記載予定
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== リードスクリュー支持管の分析 ==
== リードスクリュー支持管の分析 ==

2024年12月5日 (木) 15:07時点における版

 Quick Look調査[1]の一環として、上部プレナム内の構造物の外観を観察した。その結果、上部プレナム構造物や、制御棒駆動機構のリードスクリューや案内管・支持管の表面に広範囲に最大で数10μm厚さの付着物(付着デブリ)が存在していた(一部は固く固着)。一方で、TMI-2のデブリ取り出し基本計画[2]では、空気中で、上部ヘッドと上部プレナム構造物を取り外して貯蔵プールに移送し、その後に、圧力容器の上部に円環状の構造物(IIF: )を取り付け、その内部を冷却水で満たしてデブリ取り出し作業の作業スペースとすること、また、IIFの上に回転式の作業台を設け、そこからデブリ取り出し用の各種ツールを圧力容器内に挿入すること、となっていた。PEISレポート[3]で指摘されたように、炉心物質の一部は、事故時に自然発火性の物質を形成する可能性があり、上部ヘッドや上部プレナム構造物の取り外しの前に、安全検討が必要とされた。そこで、制御棒駆動用のリードスクリューとその支持管を一部切り出し、その付着物について詳細な分析が実施された[4-7]。また、サンプルの一部を分離し、自然発火性に関する基礎試験が行われた[8]。

参考:Quick Look計画の概要

参考:内部調査、デブリ取り出しの概要

リードスクリューサンプルの分析

記載予定

リードスクリュー支持管の分析

 炉心中央のH8集合体用にとりつけられていた制御棒駆動機構のリードスクリュー支持管の一部(約9cm長さ)を切り出し(図6)、バッテル研究所において付着物の分析が行われた[7]。その分析結果は、リードスクリューの分析結果(上述)とおよそ整合していた。付着物ははがれやすいルース付着物LAD: Loosely Adherent Deposit)とその下の固着した付着物AD: Tightly Adherent Deposit)に分類された。AD中には金属粒状の粒子が含まれていた。付着物は、Fe,Ni,Crが主成分で、わずかにU,Zr,Snなどの炉心構成物質由来の成分と、Cs-134,Cs-137,Co-60,Sb-125,Ce-144,Sr-90などの核分裂生成物が含まれていた。金属粒状の物質はAg-In-Cdが主成分であった。これは、溶融・蒸発・凝縮プロセスで輸送されたと推定された。母材の微細組織観察では、結晶粒界に炭化物相の析出を観測し、事故時に510~732℃を経験したと推定された。

 分析項目としては、約9cm長のサンプル全体について、目視観察、写真撮影、軸方向γ線プロファイル、がそれぞれ実施された後に、サンプルが7個に輪切りされ、付着物の元素分析と微細組織分析、酸洗浄による除染係数評価、放射化学分析、母材の微細組織分析、が、それぞれ行われた。

参考:TMI-2サンプル分析で用いられた分析技術(リンク先)

目視観察・写真撮影・線量測定

 図7に、付着物の全体像を示す。付着物はおよそ黒色で全体的に薄く分布していた。一部に黄色/オレンジ色の付着物があり、炉心に近い側では1mmサイズの金属粒状の物質が付着していた。βγ線量計の計測値は、接触で35R/hr、1m距離で70mR/hrであった。γ線分光では、主にCs-134とCs-137が検出された。また、微量のCo-60,Sb-125,Ce-144が検出された。

除染係数の評価

 5つの異なった溶液を調製し、輪切りにしたリードスクリュー支持管サンプル7個のうち5個について、浸漬試験が行われた。浸漬前後での線量変化から除染係数が評価された。

  • 浸出溶液1:イオン交換水
  • 浸出溶液2:ホウ酸水(2500ppm-B)、pH:7.5(水酸化ナトリウムと界面活性剤で調製)
  • 浸出溶液3:5wt%炭酸ナトリウム + 1wt%過酸化水素
  • 浸出溶液4(2段階処理):Aステップでは、10%水酸化ナトリウム+3%硝酸カリウム溶液。Bステップでは、25g/Lシュウ酸と50g/Lクエン酸アンモニウムの溶液
  • 浸出溶液5:10wt%硝酸 ; 0.1Mフッ酸

 図8に、浸出溶液中のCs線量の時間変化を示す。浸出溶液1,2,3では、Csはほとんど溶出しなかった。浸出溶液4では、Aステップで水酸化ナトリウム+硝酸カリウム溶液中に3時間浸漬し、Bステップでシュウ酸+クエン酸アンモニウム溶液に浸漬させた。Aステップのデータの傾向から、もう少し浸漬時間をのばせば浸出量が増えたと推測される。Bステップでは、最初溶解度が増加するが、途中でサチる傾向が見える。浸出溶液4については、Aステップ単独試験、Bステップ単独試験、A/Bステップで浸漬時間を増やした試験が追加で実施されている。A、Bステップの単独試験では、いずれも溶出量がサチってくるが、2段階試験として行うことで、Csの約90%が除染された。浸出溶液5では、母材も一部溶融することで、25分以内に、Csのほぼ全量が溶出された。Csの溶出量をCsの残留量で割り、除染係数を評価すると、溶液1,2,3では約1,溶液4(2ステップ)では約8.8、溶液5では残留量は検出限界以下(除染係数∞)と計算された。

付着物の回収と溶解処理

 付着物は、実機運転中に形成される表面酸化膜層の上に、およそLAD(ルース付着物)とAD(ハード付着物)として、層状に存在していた。この層状構造はリードスクリューサンプルでも観測された。LADは、輸送や取り扱い中に一部が剥がれ落ち、残りは、ステンレス製のブラシではぎ取った。ADはさらにかなやすりで削り取った。これらの操作により、リードスクリュー支持管の付着物を、OD-LAD(支持管外側のルース付着物)、ID-AD(同ハード付着物)、ID-LAD(支持管内側のルース付着物)、ID-AD(同ハード付着物)に4分割した。はぎ取ったサンプルは、硝酸+フッ酸にはほとんど溶解せず、ついで、炭酸ナトリウムによるアルカリ溶融を試みたが、これもうまくいかなかったので、溶融媒体をピロ硫酸カリウム(K2S2O7)に変えてアルカリ溶融が行われた。

参考:TMI-2サンプル分析で用いられた分析技術(リンク先)

化学分析

 化学分析としては、ICP-AES、XRD、ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis), SIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy)が用いられた。

(1) ICP-AES分析

参考文献

[1] Quick look inspection: Report on the insertion of a camera into the TMI-2 reactor vessel through a leadscrew opening, GEND-030, vol.1, 1983.

[2] The Cleanup of Three Mile Island Unit 2 A Technical History 1979 to 1990, EPRI NP-6931.

[3] PEIS-Decontamination and Disposal of Radioactive Wastes Resulting from TMI-2, NUREG-0683, Vol. 1, 1981.

[4] G.M. Bain and G.O. Hayner, Initial Examination of the Surface Layer of a 9-inch Leadscrew Section Removed from TMI-2, Final Report, EPRI RP2056-2, Task 1, 1983.

[5] K. Vinjamuri, D.W. Akers, R.R. Hobbins, PRELIMINARY REPORT: EXAMINATION OF H8 AND B8 LEADSCREWS FROM THREE MILE ISLAND UNIT 2 (TMI-2), EGG-TMI-6685,1985.

[6] K. Vinjamuri, D.W. Akers, R.R. Hobbins, EXAMINATION OF H8 AND B8 LEADSCREWS FROM THREE MILE ISLAND UNIT 2 (TMI-2), GEND-INF-052,1985.

[7] M.P. Failey, V. Pasupathi, M.P. Landow, M.J. Stenhouse, J. Ogden, R.S. Denning, Examination of the Leadscrew Support Tube from Three Mile Island Reactor Unit 2, GEND-INF-067, 1986.

[8] R.L. Clark, R.P. Allen, M.W. McCoy, TMI-2 Leadscrew Debris Pyrophoricity Study, GEND-INF-044, 1984.