「事故前後での炉心物質とFPインベントリ」の版間の差分
Kurata Masaki (トーク | 投稿記録) |
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Zrについては、捕捉率が91%であった。上部ルースデブリベッド中のUに対する分析値の相対値から、約50%のZrは炉心下部に先行的に移行したと推定された。炉心下部に移行したZrは、溶融凝固層中の金属相や下部クラスト層に濃化していた。Snは、ジルカロイの酸化・溶融過程でZrから分離され、金属デブリ側に移行していた。ZrとSnの捕捉率がUに比べて低いため、サンプル分析されていない領域に金属デブリが存在していた可能性が示唆された。可能性の一つとして、事故初期に発生した炉心上部での燃料崩落イベント(スクラム後174分)の際に形成された金属微粒子デブリが、下部プレナムに沈降して堆積し、下部プレナムデブリの最下層に金属層を形成していたシナリオが推定された。しかし、下部プレナムデブリ底部のサンプル分析は行われておらず、この仮説は検証されていない。 | Zrについては、捕捉率が91%であった。上部ルースデブリベッド中のUに対する分析値の相対値から、約50%のZrは炉心下部に先行的に移行したと推定された。炉心下部に移行したZrは、溶融凝固層中の金属相や下部クラスト層に濃化していた。Snは、ジルカロイの酸化・溶融過程でZrから分離され、金属デブリ側に移行していた。ZrとSnの捕捉率がUに比べて低いため、サンプル分析されていない領域に金属デブリが存在していた可能性が示唆された。可能性の一つとして、事故初期に発生した炉心上部での燃料崩落イベント(スクラム後174分)の際に形成された金属微粒子デブリが、下部プレナムに沈降して堆積し、下部プレナムデブリの最下層に金属層を形成していたシナリオが推定された。しかし、下部プレナムデブリ底部のサンプル分析は行われておらず、この仮説は検証されていない。 | ||
{| class="wikitable" | {| class="wikitable" | ||
|+'''<big>表3(a) | |+'''<big>表3(a) 圧力容器内の各種成分の分布(初期インベントリに対する捕捉率、%) [1]</big>''' | ||
!主要な領域 | ! rowspan="2" |主要な領域 | ||
! colspan="3" |燃料棒成分 | |||
! colspan="3" |制御材成分 | |||
|- | |||
!U | !U | ||
!Zr | !Zr | ||
!Sn | !Sn | ||
!Ag | |||
!In | |||
!Cd | |||
|- | |- | ||
|上部プレナム付着デブリ | |上部プレナム付着デブリ | ||
|<0.1 | |<0.1 | ||
|<0.1 | |||
|<0.1 | |||
|1.0 | |||
|<0.1 | |<0.1 | ||
|<0.1 | |<0.1 | ||
| 301行目: | 310行目: | ||
|24 | |24 | ||
|13 | |13 | ||
|<0.1 | |||
|1.8 | |||
|<0.1 | |||
|<0.1 | |<0.1 | ||
|- | |- | ||
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|2.3 | |2.3 | ||
6.1 | 6.1 | ||
|1.2 | |||
2.4 | |||
|3.6 | |||
3.3 | |||
|0.65 | |||
0.39 | |||
|- | |- | ||
|溶融凝固層 | |溶融凝固層 | ||
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| - | | - | ||
5.8 | 5.8 | ||
|10 | |||
1.6 | |||
|27 | |||
2.1 | |||
|6.1 | |||
1.1 | |||
|- | |- | ||
|下部クラスト層 | |下部クラスト層 | ||
| 332行目: | 356行目: | ||
|9.3 | |9.3 | ||
26 | 26 | ||
|7.3 | |||
11 | |||
|7.2 | |||
16 | |||
|1.4 | |||
2.9 | |||
|- | |- | ||
|形状を維持した燃料棒 | |形状を維持した燃料棒 | ||
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|33 | |33 | ||
|33 | |33 | ||
|11 | |||
|11 | |||
|11 | |||
|- | |- | ||
|下部プレナムデブリ | |下部プレナムデブリ | ||
|15 | |15 | ||
|11 | |11 | ||
|<0.1 | |||
|<0.1 | |||
|<0.1 | |||
|<0.1 | |<0.1 | ||
|- | |- | ||
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|4.6 | |4.6 | ||
|3.3 | |3.3 | ||
|<0.1 | |||
|<0.1 | |||
|<0.1 | |||
|<0.1 | |<0.1 | ||
|- | |- | ||
| 351行目: | 390行目: | ||
|3.3 | |3.3 | ||
|2.4 | |2.4 | ||
|<0.1 | |||
|<0.1 | |||
|<0.1 | |||
|<0.1 | |<0.1 | ||
|- | |- | ||
| 357行目: | 399行目: | ||
|91% | |91% | ||
|82% | |82% | ||
|47% | |||
|70% | |||
|23% | |||
|} | |} | ||
2026年1月28日 (水) 18:16時点における版
TMI-2事故前後での炉心物質とFP分布の評価は、事故炉のクリーンアップ作業、デブリ取り出し、事故進展解析等に向けた重要知見となる。炉心物質については、事故前の設計情報に基づいて初期インベントリが評価され、内部調査、サンプル分析、デブリ取り出しなどの作業の進捗に伴って、事故後の分布が評価された[1,2]。FPについては、事故時の炉心をU富化度によって3領域(炉心中央、炉心中間、炉心外周)に分割し、ORIGEN-II等の解析コードを用いて、事故直前のインベントリとその経時変化が評価された[3]。サンプル分析や内部調査、放射線計測の結果に基づいて、燃料デブリや破損燃料中のFP残留率、また、圧力容器内外の主要うな領域への移行率が評価された[1,2]。この項目では、初期インベントリと物質分布の評価についてまとめる。
炉心物質インベントリ
事故前の炉心物質インベントリ
表1(a)に、炉心物質のインベントリ評価に用いられた事故前の主要な炉心物質の重量を示す[1]。表1(b)には、マイナー成分も含めたより正確な重量を示す[4]。表1(b)は、デブリ分析の基準に用いられた。主要な炉心物質としては、燃料棒、制御材、構造材(制御棒被覆管、スペーサグリッド、上下端栓、など)があり、その他に、反射体として用いられていたZrO2、可燃性毒物のAl2O3-B4C、ガドリニア含有燃料、などが存在していた。燃料棒は、燃料ペレット約94トン、ジルカロイ被覆管約24トンで構成され、ジルカロイ中の主な副成分としてSnが約370kg装荷されていた。Ag-In-Cd合金からなる制御材は約3トン装荷されていた。構造材は、SS材とインコネル材からなり、事故前の炉心部での重量は約6トンであった。表1(b)に記載されている物質のうち、SnとMo以外のマイナー成分は、インベントリ評価では考慮されていない。
また、事故の過程で上部格子の底部が一部溶融して崩落したため、約229kgの構造材がデブリ中に混入したと推定された[1]。また、溶融デブリの一部は、バッフル版とコアフォーマ領域を破損して下部プレナムに移行したが、その際に、構造材約182kgが炉心物質に混入したと推定された[1]。事故進展時に、ジルカロイ被覆管は水蒸気によって酸化され、ZrO2が形成されるが、事故シナリオ解析で推定された水素発生量約459kgから逆算して、ジルカロイ酸化に寄与した酸素重量が約
3,300kgと評価された[1]。これは、単純計算で、Zrの約43%が酸化していたことに相当している。実際には、水素発生量の推定値に不確かさがあること、ジルカロイだけでなく構造材の一部も酸化していたこと、等により、酸素重量増加の推定にはある程度の不確かさが存在している。これらの合計として、事故後の炉心物質の総重量は133,250kgと見積もられた[1]。
| 炉心物質 | 成分 | 重量(kg) | 炉心物質 | 成分 | 重量(kg) | 炉心物質 | 成分 | 重量(kg) | 炉心物質、など | 成分 | 重量(kg) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 燃料棒 | U | 82,810 | 制御材 | Ag | 2,199 | 構造材
(SS, インコネル) |
Fe | 3,400 | その他 | ZrO2, Al2O3-B4C, Gd2O3、など | 3,600 |
| Zr | 23,200 | In | 412 | Cr | 1,110 | 上部格子の崩落 | 構造材 | 229 | |||
| Sn | 370 | Cd | 137 | Ni | 1,046 | バッフル板などの破損 | 構造材 | 182 | |||
| O | 11,300 | Mo | 36 | ジルカロイの酸化 | 酸素量の増加 | 3,300 |
| 炉心物質 | 重量(t) | 主要成分 | 組成(wt%) | 炉心物質 | 重量(t) | 主要成分 | 組成(wt%) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| UO2ペレット | 93.05 | U-235 | 2.265 | ZrO2 | 0.331 | Zr | 74 |
| U-238 | 85.882 | O | 26 | ||||
| O | 11.853 | Ag-In-Cd | 2.749 | Ag | 80.0 | ||
| Zry-4 | 23.029 | Zr | 97.907 | In | 15.0 | ||
| Sn | 1.60 | Cd | 5.0 | ||||
| Fe | 0.225 | B4C-Al2O3 | 0.626 | Al | 34.33 | ||
| Cr | 0.125 | O | 30.53 | ||||
| O | 0.095 | B | 27.50 | ||||
| その他 | C,N,Hf,S,Al,Ti,V,Mo,Ni,
Cu,W,H,Co,B,Cd,U |
C | 7.64 | ||||
| SS | 4.636 | Fe | 68.635 | Gd2O3-UO2 | 0.1315 | Gd | 10.27 |
| Cr | 19.000 | U | 77.22 | ||||
| Ni | 9.000 | O | 12.01 | ||||
| Mn | 2.000 | ||||||
| Si | 1.000 | ||||||
| その他 | N,C,Co,P,S | ||||||
| Inconel-718 | 1.211 | Ni | 51.900 | ||||
| Cr | 19.000 | ||||||
| Fe | 18.000 | ||||||
| Nb | 5.553 | ||||||
| Mo | 3.000 | ||||||
| その他 | Tl,Al,Co,Si,Mn,N,Cu,C,S |
事故後の炉心物質分布
表2に、事故後の破損燃料とデブリの分布の評価結果をまとめて示す[1]。燃料棒の約33%は、炉心周辺、及び、炉心下部に、本来形状を維持して残留していた。事故シナリオ解析の結果、これらの燃料棒の事故時ピーク温度は、ほぼ<1100Kであり、炉心物質の初期組成がほぼ維持されていると評価された。周辺燃料棒と切り株燃料棒の割合は、周辺燃料棒約22.7%、切り株燃料棒約10.7%と見積もられた。これらの値については、デブリ取り出し時の画像データ解析により、不確かさは5%以内と評価された。炉心中央に堆積していた溶融凝固層については、上下クラストで挟まれた構造を持っていた。ボーリングサンプルの分析と画像解析により、上部クラストは、比重8.3g/cm3、重量2,450kg、下部クラストは、比重7.3g/cm3、重量8,760kgと評価された。クラスト層の厚みが非均質なことから、その重量評価誤差は30~40%と見積もられた。溶融凝固層の重量は、回収されたデブリと上下クラスト層重量の差し引きで、25,990kgと評価された。上部ルースデブリベッドは、比重3~5g/cm3の範囲で(上層が小さく、下層が大きい)、初期インベントリの約20%を占めていた。下部プレナムデブリについては、取り出し時の重量が19,100kgであり、主成分はUとZrの二酸化物で、構造材成分をわずかに含んでいた。残り約10,000kgは、この評価の段階では正確に見積もられていない。下部プレナムデブリや溶融凝固層と、LCSAやUCSAの堆積デブリの組成や比重はほぼ等しいと仮定し、画像データで見積もったデブリ堆積から、残りの10,000kgが、LCSAとUCSAの堆積デブリに割り付けられている。
| 主要な領域 | 重量推定値(kg) | 不確かさ(%) | 事故直後のインベントリに対する割合(%) |
|---|---|---|---|
| 形状を維持した燃料棒
(炉心周辺燃料、切り株燃料) |
44,500
周辺燃料棒:30,200 切り株燃料棒:14,300 |
5 | 33.4 |
| 溶融凝固層
(クラスト層を含む) |
32,700
溶融凝固層:25,990 上部クラスト層:2,450 下部クラスト層:8,760 |
5 | 24.5 |
| 上部ルースデブリ
(デブリベッド) |
26,600 | 5 | 19.9 |
| 下部プレナムデブリ | 19,100 | 20 | 14.3 |
| LCSA内堆積デブリ | 5,800 | 40 | 4.3 |
| UCSA内堆積デブリ | 4,200 | 40 | 3.2 |
| 圧力容器外 | 60~100# | - | 0.2~0.3 |
#圧力容器外の炉心物質量は、原子炉建屋と補助建屋内の各種機器や配管の線量計測の結果に基づいて推定された。後日、GPU社による詳細評価がなされ、450kgに修正されている。
LCSA: Lower Core Support Assembly
UCSA: Upper Core Support Assembly
燃料棒成分について
表3(a)に、燃料棒主要成分(U,Zr,Sn)の、圧力容器内デブリ中の捕捉率を示す[1]。それぞれの領域から採集されたデブリサンプルの分析値の積み上げで、Uの97%が捕捉されたと評価された。形状を維持した燃料棒は、初期インベントリをそのまま維持していたとされた。上部ルースデブリは、>90%が約1~5mmサイズの粒子デブリであり、その平均組成は、初期インベントリに比べてUリッチであった(66%に対し75%)。下部プレナムデブリは、Uの平均濃度65%で、初期インベントリに近い値であった。これに対し、溶融凝固層や上部クラスト層中の金属相や下部クラスト層はUの相対濃度が低く、逆にZr濃度が高い傾向が示された。上部クラスト、溶融凝固層、下部クラストの平均的なU濃度は、それぞれ、49、54、34%であった。しかし、これらの層のうち酸化物相中の平均U組成は、炉心平均に近い値であった。上部プレナム構造物の付着デブリの分析結果から、この領域へのU移行物量は、初期インベントリの<0.1%と評価された。
Zrについては、捕捉率が91%であった。上部ルースデブリベッド中のUに対する分析値の相対値から、約50%のZrは炉心下部に先行的に移行したと推定された。炉心下部に移行したZrは、溶融凝固層中の金属相や下部クラスト層に濃化していた。Snは、ジルカロイの酸化・溶融過程でZrから分離され、金属デブリ側に移行していた。ZrとSnの捕捉率がUに比べて低いため、サンプル分析されていない領域に金属デブリが存在していた可能性が示唆された。可能性の一つとして、事故初期に発生した炉心上部での燃料崩落イベント(スクラム後174分)の際に形成された金属微粒子デブリが、下部プレナムに沈降して堆積し、下部プレナムデブリの最下層に金属層を形成していたシナリオが推定された。しかし、下部プレナムデブリ底部のサンプル分析は行われておらず、この仮説は検証されていない。
| 主要な領域 | 燃料棒成分 | 制御材成分 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| U | Zr | Sn | Ag | In | Cd | |
| 上部プレナム付着デブリ | <0.1 | <0.1 | <0.1 | 1.0 | <0.1 | <0.1 |
| 上部ルースデブリ
(デブリベッド) |
24 | 13 | <0.1 | 1.8 | <0.1 | <0.1 |
| 上部クラスト層
酸化物相 金属相 |
1.3
- |
1.2
0.3 |
2.3
6.1 |
1.2
2.4 |
3.6
3.3 |
0.65
0.39 |
| 溶融凝固層
酸化物相 金属相 |
12
- |
18
0.2 |
-
5.8 |
10
1.6 |
27
2.1 |
6.1
1.1 |
| 下部クラスト層
酸化物相 金属相 |
3.6
- |
2.8
5.6 |
9.3
26 |
7.3
11 |
7.2
16 |
1.4
2.9 |
| 形状を維持した燃料棒 | 33 | 33 | 33 | 11 | 11 | 11 |
| 下部プレナムデブリ | 15 | 11 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 |
| LCSA内堆積デブリ | 4.6 | 3.3 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 |
| UCSA内堆積デブリ | 3.3 | 2.4 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 |
| 捕捉率の合計 | 97% | 91% | 82% | 47% | 70% | 23% |
制御材成分について
参考文献
[1] D.W. Akers et al., TMI-2 Core materials and Fission Product Inventory, Nucl. Eng. and Design 118 (1990) 451-461.
[2] D.W. Akers and R.K. McCardell, Core Materials Inventory and Behavior, Nucl. Technol., 87 (1989) 214-223.
[3] B.G. Schnitzler and J.B. Briggs, TMI-2 Isotopic Inventory Calculations, EGG-PBS-6798, 1985.
[4] D.W. Akers et al., TMI-2 Core Debris Grab Samples -Examination and Analysis, GEND-INF-075, part 1, 1986.