「DOE年次レポートの概要」の版間の差分
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まず、'''<u>通常の燃料交換に準ずる方法での燃料取り出しが可能かどうかを確認するために</u>'''、初期の圧力容器内の調査方法として、圧力容器上部ヘッドに取り付けられている制御棒駆動メカニズム('''CRDM: Control Rod Drive Mechanism''') を撤去して、''' | まず、'''<u>通常の燃料交換に準ずる方法での燃料取り出しが可能かどうかを確認するために</u>'''、初期の圧力容器内の調査方法として、圧力容器上部ヘッドに取り付けられている制御棒駆動メカニズム(<span style="color:blue">'''CRDM: Control Rod Drive Mechanism'''</span>) を撤去して、<span style="color:blue">'''ヘッド開口部から小型CCTVカメラを挿入'''</span>し、制御棒案内管アッセンブリ(<span style="color:blue">'''CRGA: Control Rod Guide Assembly'''</span>)上部から燃料集合体の上部付近を調査する基本計画が整理された。併せて、CCTV挿入箇所の調査基本計画が立案された。 | ||
また、'''インコアモニターの現状調査'''により、圧力容器内の状態を推定する調査計画が立案され、生き残っているモニターからの信号取得方法や補正方法が検討された。 | また、<span style="color:blue">'''インコアモニターの現状調査'''</span>により、圧力容器内の状態を推定する調査計画が立案され、生き残っているモニターからの信号取得方法や補正方法が検討された。 | ||
'''核燃料物質の計量管理'''については、通常は燃料集合体ごとの管理が行われるが、事故炉で発生する破損燃料やデブリの計量についての計量方法の検討が開始された。この横目は、以下の3段階で行われることとなった。 | <span style="color:blue">'''核燃料物質の計量管理'''</span>については、通常は燃料集合体ごとの管理が行われるが、事故炉で発生する破損燃料やデブリの計量についての計量方法の検討が開始された。この横目は、以下の3段階で行われることとなった。 | ||
* Phase-I: 課題の同定、計量管理システムの定義 | * Phase-I: 課題の同定、計量管理システムの定義 | ||
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* Phase-III:機器システム製作、プログラミング | * Phase-III:機器システム製作、プログラミング | ||
'''破損燃料の回収・保管技術'''については、候補技術の抽出とスクリーニングと、破損燃料収納缶の概念設計が行われた。この項目は、以下の5段階で行われることとなった。 | <span style="color:blue">'''破損燃料の回収・保管技術'''</span>については、候補技術の抽出とスクリーニングと、破損燃料収納缶の概念設計が行われた。この項目は、以下の5段階で行われることとなった。 | ||
* Phase-I: 候補技術の抽出とスクリーニング | * Phase-I: 候補技術の抽出とスクリーニング | ||
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さらに、長期間にわたり、破損燃料や炉心物質がホウ酸水溶液中に保持されることの影響評価が行われ、鋼材の腐食増加などは起こらないと結論された。 | さらに、長期間にわたり、破損燃料や炉心物質がホウ酸水溶液中に保持されることの影響評価が行われ、鋼材の腐食増加などは起こらないと結論された。 | ||
<span style="color:blue">'''炉内状態の推定'''</span>については、最初のとりまとめレポートが1981年に発行されることとなった。 | |||
== 参考文献 == | == 参考文献 == |
2025年5月28日 (水) 11:37時点における版
TMI-2事故炉の廃炉に向けて、GPU社、EPRI、NRC、DOE(GEND)が協議を行い、廃炉(特に炉心部からの燃料取り出し)に必要となる知見の効果的、効率的な取得と実作業への反映のために、マネージメントおよびサポート体制の整備と必要なタスクの整理が行われた。また、TMI-2の廃炉過程で得られる知見・データは、実機サイズでのシビアアクシデントの理解や事故で発生した放射性廃棄物の取り扱い・処理技術の開発にも極めて有用であることから、GPU社が主担当する廃炉作業を遅延させない範囲において、これらに係る内部調査やサンプル採集と分析などが進められることとなった[1]。原子炉建屋や燃料取り扱い建屋の内部調査、さらに、圧力容器内や冷却水系(RCS: Reactor Coolant System)の廃炉・調査作業は、1980年から本格的に進められた。このうち、DOEは、以下の分野を主担当した[1]。
- 安全機器や設備のサバイバル状態
- 建屋内の線量分布、環境影響、線量低減、廃棄物
- 知見とデータのアーカイブ
- 炉心と燃料の状態
年度ごとの進捗にともなって、これらの分野の区分が改定され、年度ごとの進捗が年次レポートとして刊行された[1-10]。本項目では、年次レポートの概要をまとめる。
年度ごとの進捗概要
1980年
- TMI-2廃炉と関連作業、調査、データ取得にかかわる総合計画がとりまとめられた[11]。
- 総合計画の実行プランを策定する専門家グループとして、EG&G社の専従スタッフ12名と、パシフィックノースウェスト国立研究所(PNL)、サンディア国立研究所(SNL)、エクソン社などから派遣された専門家により、Technical Integration Office(TIO)が設置された。(TMI-TIO Progaram Management Plan, 1980)
- 安全機器や設備のサバイバル状態については、建屋内線量計の回収、内部調査用のポータブルビデオカメラシステムの調達、建屋内の固定監視カメラの調達、12個の安全機器の再稼働試験が行われた。
- 建屋内の線量分布調査と線量低減(環境改善)、廃棄物については、廃炉作業にともなって事故時の情報を持ったサンプルが失われる前に、建屋内のサンプル採集(圧力容器内冷却水、RCBT(Reactor Coolant Bleed Tank)、原子炉建屋内の雰囲気、水素再結合設備の配管、など)が進められた。また、公衆用のモニタリングシステムが開発され、建屋から5マイル以内に居住している住民が訓練され、放射性微粒子を自分たちで測定できるようになった。
- 知見とデータのアーカイブについては、原子炉建屋内の換気作業が1980年7月に開始され、関連知見がレポートにとりまとめられた。また、事故由来水を処理するEPICOR IIに装荷されていた、高線量の樹脂やライナー特性評価が開始された。さらに、事故対応に係る知見が、1980年9月までに、全米の原子力技術者3000人で共有された。
- 炉心と燃料の状態については、ヘッドから圧力容器内にカメラを挿入する調査の基本計画が立案され、また、燃料やデブリの収納缶の概念設計と、燃料やデブリの回収ツール・手法の検討が開始された。
安全機器や設備のサバイバル状態
事故時の安全設備の適切な制御と運転はアクシデントマネージメントの鍵であり、TMI-2事故進展中の稼働状況に係る知見を得ることは重要である。Instrumentation and Electrical Equipment Survivability Planning Group(IEPG)が設置され、破損モードの同定、設計時の動作標準条件と実動作の比較、クラス1E設備の脆弱性の分析、品質管理、規制基準、設計などへの修正点の提案、TMI-2事故進展理解の向上、等のために、
- 安全機器や設備の現地調査と動作試験
- コンポネントのテスト目的と方法の決定
- アーカイブとして保管するコンポネントやサンプルの決定
が実施されることとなった。
1980年
約200個の機器デバイスのサーベイ計画が立案され、初期に調査されるべき安全設備12個を同定し、そののサーベイが実施された。また、コンポネントの撤去、防護、動作試験(例:線量計HP-RT-211を撤去し、SNLに送付)が進められた。さらに、付属するケーブル類、ソースレンジアンプ(N1-AMP-2)、チャージアンプ(YM-AMP-7023)などが回収予定とされた。建屋内の画像調査については、CCTVシステムが原子炉建屋内に導入され、ポータブルTVカメラやポータブル暗視カメラが準備された。安全システムのレビューが進められ、初期にデータ分析が必要な安全・モニタリング設備として、自己発電型中性子検出器(SPND:self-Powered Neutron Detector)が重要であることが同定された。
建屋内の線量調査と線量低減(環境改善)、廃棄物
総合計画レポート[11]において、TIO専門家により、放射性物質の移行と堆積・分布状態にかかわるデータ取得計画(Recommended Data Acquisition Tasks at TMI-2 Relating to Fission Products Transport, Deposition, and Environments Characterization)と、除染と被ばく抑制に係るデータ取得計画(Recommended Data Acquisition Tasks at TMI-2 Relating to Decontamination and Personnel Exposure Control)におけるタスクが整理された。
1980年
原子炉一次系について、サンプリングの対象物が選定された(RCS系スラッジ、冷却水浄化フィルターと樹脂、RCS冷却水、RCBTサンプル、ドレインタンク底部のスラッジや粒子)。また、圧力容器内以外の一次系に堆積しているデブリの堆積位置や状態の測定に向けて、ガンマスキャン、中性子、超音波、赤外などの測定方法のレビューが行われた。原子炉建屋内については、エアクーラー、建屋地階サンプ、水素再結合器、建屋雰囲気、等のサンプリングの優先度が高いとされた。放射性物質の環境放出と建屋内コンクリートや設備表面の堆積については、原子炉建屋床面の線量マップ作成、設備表面サンプルの分析、さらに、初期の除染試験が行われた。作業員の被ばく線量の適切なコントロールが重視され、ALARAの考え方に基づくことが示された。環境への放射性物質放出評価について、TMI-2炉周辺のモニタリング計画が提示された。
放射性廃棄物の取り扱いについては、冷却水系や除染対象となる各種の溶液からの放射性物質除去、処理により汚染されるイオン交換樹脂やライナーなどの安定化、および、最終的な廃棄体の調製、移送、処分について、概要計画が示された。短期プロジェクトとして、18課題が整理され、それぞれについてワークスコープ、スケジュール、予算見積もりが行われた。同定された研究開発課題は、中間貯蔵の基準策定、イオン交換剤の安定化と線量や化学反応の影響調査、イオン交換剤やスラッジフィルターなどの固化処理技術、脱水したイオン交換剤の高強度の貯蔵・輸送・貯蔵コンテナの開発、放射性廃棄物の減容技術、イオン交換方式の高性能化、などに係るものであった。また、イオン交換樹脂や汚染水処理装置(EPICOR-II)のライナーの分析計画が策定された。
知見とデータのアーカイブ
1980年
TMI-2知見の産業界への効果的な共有、および、産業界側のニーズの整理の重要性が指摘され、公式に承認されたTMI-2事故情報としてGENDレポートが刊行されることとなった。また、GENDレポートに準ずる非公式レポートとしてGEND-INFレポートが刊行されることとなった。以下の項目の調査の重要性が共有された。
- 安全設備と電気系統のサバイバル状態
- FP移送と付着・体積
- 建屋の除染、廃棄物減容技術
- 圧力容器内へのアクセスとモニタリング
- 放射性廃棄物の取り扱い
- 原子炉建屋の損傷
- 原子炉建屋地階の排水溝デブリの同定
- 一次系圧力バウンダリ
- プラント運転にかかわる機器やコンポネントのサバイバル状態(ポンプ、バルブ、など)
- 臨界性制御
- 炉心損傷状態、燃料取り出し方法
- 破損燃料や炉心物質の格納と輸送
- 事故時の燃料ふるまい
炉心と燃料の状態
TIOにより、圧力容器内の調査計画として、廃炉工程5段階について、基本計画が立案され、内部調査や燃料取り出しの進捗に伴って修正されることとなった。(Recommendations on TMI-2 Core Damage Examinations, 1980)
- ヘッド撤去前
- 上部プレナム構造物撤去前
- 燃料取り出し開始前
- 燃料取り出しの進捗中
- 燃料取り出し完了後
また、GEND-001レポートにおいて、最初の取り出し方法や代替法などのとりまとめ(Scoping Studies of the Alternative Options for Defueling, Packaging, and Disposal of the TMI-2 Spent Fuel Core)と。事故シナリオの評価に向けた調査項目(TMI-2 Fuel and Core Components Examinations, 1980)が示された[11]。
1980年
まず、通常の燃料交換に準ずる方法での燃料取り出しが可能かどうかを確認するために、初期の圧力容器内の調査方法として、圧力容器上部ヘッドに取り付けられている制御棒駆動メカニズム(CRDM: Control Rod Drive Mechanism) を撤去して、ヘッド開口部から小型CCTVカメラを挿入し、制御棒案内管アッセンブリ(CRGA: Control Rod Guide Assembly)上部から燃料集合体の上部付近を調査する基本計画が整理された。併せて、CCTV挿入箇所の調査基本計画が立案された。
また、インコアモニターの現状調査により、圧力容器内の状態を推定する調査計画が立案され、生き残っているモニターからの信号取得方法や補正方法が検討された。
核燃料物質の計量管理については、通常は燃料集合体ごとの管理が行われるが、事故炉で発生する破損燃料やデブリの計量についての計量方法の検討が開始された。この横目は、以下の3段階で行われることとなった。
- Phase-I: 課題の同定、計量管理システムの定義
- Phase-II:詳細設計、機器、方法、コンピューター制御
- Phase-III:機器システム製作、プログラミング
破損燃料の回収・保管技術については、候補技術の抽出とスクリーニングと、破損燃料収納缶の概念設計が行われた。この項目は、以下の5段階で行われることとなった。
- Phase-I: 候補技術の抽出とスクリーニング
- Phase-II: 選定された技術の基礎試験と、破損燃料やデブリ取り出しに向けた概念設計
- Phase-III: Phase-IとIIの技術レポート
- Phase-IV: 装置・機器設計と製作、運転方法の開発
- Phase-V: 未照射材を用いたフルスケールモックアップ
さらに、長期間にわたり、破損燃料や炉心物質がホウ酸水溶液中に保持されることの影響評価が行われ、鋼材の腐食増加などは起こらないと結論された。
炉内状態の推定については、最初のとりまとめレポートが1981年に発行されることとなった。
参考文献
[1] Technical Integration Office, TMI-2 Information and Examination Program Technical Integration Office Annual Report, GEND-003, 1981.
[11] GEND Planning Report, GEND-001, 1980.