「DOE年次レポートの概要」の版間の差分
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TMI-2事故炉の廃炉に向けて、<span style="color:blue">'''GPU社、EPRI、NRC、DOE(GEND)'''</span>が協議を行い、廃炉(特に炉心部からの燃料取り出し)に必要となる知見の効果的、効率的な取得と実作業への反映のために、マネージメントおよびサポート体制の整備と必要なタスクの整理が行われた。また、TMI-2の廃炉過程で得られる知見・データは、実機サイズでのシビアアクシデントの理解や事故で発生した放射性廃棄物の取り扱い・処理技術の開発にも極めて有用であることから、GPU社が主担当する廃炉作業を遅延させない範囲において、これらに係る内部調査やサンプル採集と分析などが進められることとなった[1]。''' | TMI-2事故炉の廃炉に向けて、<span style="color:blue">'''GPU社、EPRI、NRC、DOE(GEND)'''</span>が協議を行い、廃炉(特に炉心部からの燃料取り出し)に必要となる知見の効果的、効率的な取得と実作業への反映のために、マネージメントおよびサポート体制の整備と必要なタスクの整理が行われた。また、TMI-2の廃炉過程で得られる知見・データは、実機サイズでのシビアアクシデントの理解や事故で発生した放射性廃棄物の取り扱い・処理技術の開発にも極めて有用であることから、GPU社が主担当する廃炉作業を遅延させない範囲において、これらに係る内部調査やサンプル採集と分析などが進められることとなった[1]。<span style="color:blue">'''原子炉建屋や燃料取り扱い建屋の内部調査'''</span>、さらに、<span style="color:blue">'''圧力容器内や冷却水系(RCS: Reactor Coolant System)'''</span>の廃炉・調査作業は、1980年から本格的に進められた。このうち、DOEは、以下の分野を主担当した[1]。 | ||
* '''安全機器や設備のサバイバル状態''' | * '''安全機器や設備のサバイバル状態''' | ||
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== 安全機器や設備のサバイバル状態 == | == 安全機器や設備のサバイバル状態 == | ||
事故時の安全設備の適切な制御と運転はアクシデントマネージメントの鍵であり、TMI-2事故進展中の稼働状況に係る知見を得ることは重要である。'''Instrumentation and Electrical Equipment Survivability Planning Group(IEPG)'''が設置され、破損モードの同定、設計時の動作標準条件と実動作の比較、クラス1E設備の脆弱性の分析、品質管理、規制基準、設計などへの修正点の提案、TMI-2事故進展理解の向上、等のために、 | 事故時の安全設備の適切な制御と運転はアクシデントマネージメントの鍵であり、TMI-2事故進展中の稼働状況に係る知見を得ることは重要である。<span style="color:blue">'''Instrumentation and Electrical Equipment Survivability Planning Group(IEPG)'''</span>が設置され、破損モードの同定、設計時の動作標準条件と実動作の比較、クラス1E設備の脆弱性の分析、品質管理、規制基準、設計などへの修正点の提案、TMI-2事故進展理解の向上、等のために、 | ||
* 安全機器や設備の現地調査と動作試験 | * 安全機器や設備の現地調査と動作試験 | ||
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が実施されることとなった。 | が実施されることとなった。 | ||
1980年には、約200個の機器デバイスのサーベイ計画が立案され、初期に調査されるべき安全設備12個を同定し、そののサーベイが実施された。また、コンポネントの撤去、防護、動作試験(例:線量計HP-RT-211を撤去し、SNLに送付)が進められた。さらに、付属するケーブル類、ソースレンジアンプ(N1-AMP-2)、チャージアンプ(YM-AMP-7023)などが回収予定とされた。建屋内の画像調査については、CCTVシステムが原子炉建屋内に導入され、ポータブルTVカメラやポータブル暗視カメラが準備された。安全システムのレビューが進められ、初期にデータ分析が必要な安全・モニタリング設備として、'''自己発電型中性子検出器(SPND:self-Powered Neutron Detector)'''が重要であることが同定された。 | 1980年には、約200個の機器デバイスのサーベイ計画が立案され、初期に調査されるべき安全設備12個を同定し、そののサーベイが実施された。また、コンポネントの撤去、防護、動作試験(例:線量計HP-RT-211を撤去し、SNLに送付)が進められた。さらに、付属するケーブル類、ソースレンジアンプ(N1-AMP-2)、チャージアンプ(YM-AMP-7023)などが回収予定とされた。建屋内の画像調査については、CCTVシステムが原子炉建屋内に導入され、ポータブルTVカメラやポータブル暗視カメラが準備された。安全システムのレビューが進められ、初期にデータ分析が必要な安全・モニタリング設備として、<span style="color:blue">'''自己発電型中性子検出器(SPND:self-Powered Neutron Detector)'''</span>が重要であることが同定された。 | ||
== 参考文献 == | == 参考文献 == |
2025年5月28日 (水) 10:16時点における版
TMI-2事故炉の廃炉に向けて、GPU社、EPRI、NRC、DOE(GEND)が協議を行い、廃炉(特に炉心部からの燃料取り出し)に必要となる知見の効果的、効率的な取得と実作業への反映のために、マネージメントおよびサポート体制の整備と必要なタスクの整理が行われた。また、TMI-2の廃炉過程で得られる知見・データは、実機サイズでのシビアアクシデントの理解や事故で発生した放射性廃棄物の取り扱い・処理技術の開発にも極めて有用であることから、GPU社が主担当する廃炉作業を遅延させない範囲において、これらに係る内部調査やサンプル採集と分析などが進められることとなった[1]。原子炉建屋や燃料取り扱い建屋の内部調査、さらに、圧力容器内や冷却水系(RCS: Reactor Coolant System)の廃炉・調査作業は、1980年から本格的に進められた。このうち、DOEは、以下の分野を主担当した[1]。
- 安全機器や設備のサバイバル状態
- 建屋内の線量分布、環境影響、線量低減
- 建屋内の状態、廃棄物、データアーカイブ
- 炉心と燃料の状態
年度ごとの進捗にともなって、これらの分野の区分が改定され、年度ごとの進捗が年次レポートとして刊行された[1-10]。本項目では、年次レポートの概要をまとめる。
年度ごとの進捗概要
1980年
- TMI-2廃炉と関連作業、調査、データ取得にかかわる総合計画がとりまとめられた[11]。
- 総合計画の実行プランを策定する専門家グループとして、EG&G社の専従スタッフ12名と、パシフィックノースウェスト国立研究所(PNL)、サンディア国立研究所(SNL)、エクソン社などから派遣された専門家により、Technical Integration Office(TIO)が設置された。(TMI-TIO Progaram Management Plan, 1980)
- 安全機器や設備のサバイバル状態については、建屋内線量計の回収、内部調査用のポータブルビデオカメラシステムの調達、建屋内の固定監視カメラの調達、12個の安全機器の再稼働試験が行われた。
- 建屋内の線量分布調査と線量低減については、廃炉作業にともなって事故時の情報を持ったサンプルが失われる前に、建屋内のサンプル採集(圧力容器内冷却水、RCBT(Reactor Coolant Bleed Tank)、原子炉建屋内の雰囲気、水素再結合設備の配管、など)が進められた。また、公衆用のモニタリングシステムが開発され、建屋から5マイル以内に居住している住民が訓練され、放射性微粒子を自分たちで測定できるようになった。
- 建屋内の状態、廃棄物、データアーカイブについては、原子炉建屋内の換気作業が1980年7月に開始され、関連知見がレポートにとりまとめられた。また、事故由来水を処理するEPICOR IIに装荷されていた、高線量の樹脂やライナー特性評価が開始された。さらに、事故対応に係る知見が、1980年9月までに、全米の原子力技術者3000人で共有された。
- 炉心と燃料の状態については、ヘッドから圧力容器内にカメラを挿入する調査の基本計画が立案され、また、燃料やデブリの収納缶の概念設計と、燃料やデブリの回収ツール・手法の検討が開始された。
安全機器や設備のサバイバル状態
事故時の安全設備の適切な制御と運転はアクシデントマネージメントの鍵であり、TMI-2事故進展中の稼働状況に係る知見を得ることは重要である。Instrumentation and Electrical Equipment Survivability Planning Group(IEPG)が設置され、破損モードの同定、設計時の動作標準条件と実動作の比較、クラス1E設備の脆弱性の分析、品質管理、規制基準、設計などへの修正点の提案、TMI-2事故進展理解の向上、等のために、
- 安全機器や設備の現地調査と動作試験
- コンポネントのテスト目的と方法の決定
- アーカイブとして保管するコンポネントやサンプルの決定
が実施されることとなった。
1980年には、約200個の機器デバイスのサーベイ計画が立案され、初期に調査されるべき安全設備12個を同定し、そののサーベイが実施された。また、コンポネントの撤去、防護、動作試験(例:線量計HP-RT-211を撤去し、SNLに送付)が進められた。さらに、付属するケーブル類、ソースレンジアンプ(N1-AMP-2)、チャージアンプ(YM-AMP-7023)などが回収予定とされた。建屋内の画像調査については、CCTVシステムが原子炉建屋内に導入され、ポータブルTVカメラやポータブル暗視カメラが準備された。安全システムのレビューが進められ、初期にデータ分析が必要な安全・モニタリング設備として、自己発電型中性子検出器(SPND:self-Powered Neutron Detector)が重要であることが同定された。
参考文献
[1] Technical Integration Office, TMI-2 Information and Examination Program Technical Integration Office Annual Report, GEND-003, 1981.
[11] GEND Planning Report, GEND-001, 1980.