「圧力容器ヘッド取り外し計画の概要」の版間の差分
Kurata Masaki (トーク | 投稿記録) |
Kurata Masaki (トーク | 投稿記録) |
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===== (5) ヘッドブーツ ===== | ===== (5) ヘッドブーツ ===== | ||
ヘッドブーツは、ヘッドを取り外し貯蔵スタンドに移送する間に、ヘッドの下から落ちる、汚染粒子や汚染水への対策として設計された。ヘッド吊り上げ後の下側のカメラ観察では、ルースデブリの付着は見られなかった。しかし、ヘッドブーツが防護用に取り付けられた('''図15''' | ヘッドブーツは、ヘッドを取り外し貯蔵スタンドに移送する間に、ヘッドの下から落ちる、汚染粒子や汚染水への対策として設計された。ヘッド吊り上げ後の下側のカメラ観察では、ルースデブリの付着は見られなかった。しかし、ヘッドブーツが防護用に取り付けられた('''図15''')。ヘッドブーツは強化プラスチックシート製で、ヘッドを約100cm吊り上げたところで、CRGTをクリアしつつ、ヘッドの下に広げられた。その後でヘッド下を覆うように引き上げられ、円筒状支持構造物の側面に固定された。 | ||
===== (6) 遮蔽作業スペース ===== | ===== (6) 遮蔽作業スペース ===== | ||
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== 圧力容器ヘッドの取り外し == | == 圧力容器ヘッドの取り外し == | ||
'''表1'''に、圧力容器ヘッド取り外し作業の概略経過を示す。最初のステップは、ヘッド吊り上げと圧力容器上での保持であり、24日に開始された。最終イベントは、作業プラットフォームをIIFの上に吊り降ろすことであり、27日に完了した。前後のパージ作業以外のフルシークエンスは54時間で完遂された。建屋内で作業するクルーの人員は3~4人チームであった(12時間シフト、各シフトでクルー2チーム)。述べ作業時間は341人時間であった。全クルーメンバーは、すべての作業が実施できるように訓練されていた。機器制御の技術員は、故障した機器のメンテナンスとトロブルシューティングに対応した。ヘッドリフトに関する書類を審査し承認した担当者が、リフトアップ作業を通じて、作業指示の変更を迅速に対応するため、指揮センターに常駐した。 | |||
'''図20'''に、ヘッド吊り上げの模式図を示す。ポーラークレーンから、ロードセル、伸縮ロッド(Internal Handling Extension)、Tripod、TurnbucklesmCheek Plate、Pendantなどを吊り上げ具を吊り降ろし、圧力容器ヘッドとその上の円筒状の支持構造物に取り付けられた。 | |||
(ここに表1、図20を挿入) | |||
=== ヘッド取り外し作業の概要 === | |||
(ここに表1の説明、直訳を参考にしつつ) | |||
パージ | |||
Tripodをポーラークレーンのロードセルに、吊り上げリグで取り付け | |||
Tripodを圧力容器ヘッドに、吊り上げリグで取り付け | |||
4番カメラ交換、Canal給水系のフラッシング | |||
ヘッド吊り上げとレベリング開始 | |||
ヘッドの吊り位置決め | |||
90cm吊り上げ、ヘッドブーツ挿入(#おむつと称している) | |||
ヘッドを保管スタンドの上まで移動 | |||
Sleeveとcome-along計画実施?? | |||
ヘッドが保管スタンドに着座 | |||
パージ開始 | |||
ポーラークレーン故障、ペンダントスイッチ交換 | |||
ポーラークレーンの吊りあげリグを、ヘッドから取り外し | |||
パージ | |||
=== IIF据え付け作業の概要 === | |||
(同上) | |||
IIFに吊り上げリグ取り付け、移送開始 | |||
IIFを圧力容器上に移動 | |||
IIF着座 | |||
パージ | |||
IIFに注水、圧力容器ヘッドフランジの上1.5mまで | |||
パージ、作業プラットフォーム取り付け開始 | |||
IIFプラットフォームが設置位置の2.5cm上 | |||
IIFプラットフォーム着座 | |||
パージ | |||
== ヘッド取り外し後の評価 == | |||
=== 線量評価 === | |||
工数と被ばく線量の予測。建屋の線量レベル。除染とヘッドの移動でどのように線量分布が変化したのかを記述。 | |||
〇ヘッド取り外しでの被ばく予測 | |||
2個のドキュメントで予測結果をとりまとめ | |||
NUREG-0683, The Head Remove Safety Evaluation Report (SER) and the Environmental Impact Statement, 1981 | |||
予測工数は、2560人時間、平均線量191mR/h環境で。è488rem | |||
さらに準備作業で20%追加被ばく。合計で586rem(誤差30%) | |||
さらに、1100~11700人時間、平均線量10mR/h環境で。è11~117rem。を仮定した。 | |||
実測値はTable-2。ここでの人時間は、立ち入り準備作業も含むので、実際の建屋内作業時間はこれより短い(約60%)。 | |||
サポート活動時間も表にまとめられており、放射線管理サポート、前室、エアロック要員も含まれる。サポート要員の被ばくの大半は、放射線管理だった。一方で、人時間の大半は、下請け業者の前室とエアロック要員だった。下請け要因も緊急事態の退避方法について訓練を受けた。 | |||
〇ヘッド取り外しでの被ばく量評価 | |||
複雑な線量源(強度、配置)がある。被ばく線量低減プログラムに基づいて実施された。 | |||
線量サーベイは、短期間での効率的なひばく線量低減に有効。しかし、長期間では、線量低減のマネージメントが必要。キーワードは、作業による平均的な被ばく/人時間。表参照。 | |||
歴史的に、一般的なルーチン作業では、305フィート位置での作業が5%、347フィート位置での作業が95%であった。これらを加味することで、建屋全体作業の平均被ばく/人時間を評価することができる。 | |||
ヘッドリフト吊り上げ作業が行われた7月は、その前の半年間の月ごとの平均被ばく/人時間より若干小さい値、これは、ヘッドリフト吊り上げ作業がほぼ遮蔽された区域で行われたためである。ヘッド取り外し以降の値にもほぼ変動はなかった。 | |||
〇ヘッド取り外し、IIF設置、プラットフォーム設置での線量変化 | |||
原則、作業前後で、線量レベルに変化なし。燃料移送Canalの端と貯蔵スタンドのすぐ近くでのみ変化。全体として線量は予想を下回った。リードスクリューと上部プレナム構造物の線量が予想より小さかったため。建屋内の雰囲気線量にも影響なし。 | |||
作業を通じて、13個のγモニターで計測。大きな変動は見られていない。ヘッドが近くに来た時だけ線量増加。 | |||
=== 教訓 === | |||
== 参考文献 == | == 参考文献 == |
2025年1月1日 (水) 13:02時点における版
TMI-2炉の廃炉工程では、燃料デブリ取り出しについて、圧力容器ヘッドを取り外して、圧力容器の上部から長尺ツールをおろし、圧力容器内の冷却水中で収納缶内に燃料デブリを格納し、収納缶を上部につりあげて燃料輸送用のCanal、あるいは、別建屋の燃料プール内に移送し、一時貯蔵する方式が提案された(dirty-lift工法、1982.7月から具体的な工法検討を開始 [1])。この工法で燃料デブリ取り出しを行うには、圧力容器ヘッドの取り外しと一時貯蔵が必要であった。ヘッド取り外しは、一般的な吊り上げ・移送方法を基本としつつ、事故で発生した様々な課題を解決していく必要があった。ここでは、圧力容器ヘッド取り外しに向けて実施された内部調査、プラント側の準備、ヘッド取り外し作業、作業を通じて得られた教訓についてまとめる。
作業手順の概要
1982.6月に圧力容器ヘッド取り外しタスクフォースが設置され、事故炉に固有の課題(高線量、放射性の粉じん、汚染されたプレナム構造物やそこに付着したデブリの取り出し、など)を考慮しつつ、一般的な圧力容器ヘッドの取り外し工法に改良がくわえられた[2]。
基本工程
まず、以下の7段階からなる基本工程が定められた。
(1) 圧力容器ヘッド内部のビデオ調査、線量測定。 ==> 作業スペースとなる燃料移送Canalに注水することなしで(ドライ工法で)、ヘッド取り外しと移送が可能かどうかを確認するため
(2) Canalの注水・排水系の設置、長期的な気密性を確保する改良型Canalシールプレート(CSP: Canal Seal Plate)の設置。 ==> 放射線遮蔽や放射性粉塵による汚染制御をおこなうシステムとして設置し、これを原子炉建屋の外側から操作できるようにするため
(3) 圧力容器ヘッド貯蔵スタンドの設置、閉じ込め設備の設置 ==> ヘッドの長期貯蔵のため
(4) 改良型IIF(Internal Indexing Fixture)の設計と設置、給水 ==> 既存のIIFを改良して設置し、圧力容器内の水位かさあげ、プレナム構造物の放射線遮蔽(水没)のため
(5) IIF中に循環ポンプ装荷 ==> RCS(Reactor Coolant System)系の冷却水の処理、RI除去のため
(6) IIF中に遠隔水位計設置 ==> 燃料デブリ取り出し中の冷却水水位の制御のため
(7) SWP(Shielded Working Platform、遮蔽付き回転作業台)設置 ==> 燃料デブリ取り出し作業、各種ツール取り付けのため(取り外し可能なステージとして)
作業工程表
図1に、取り外し工程の時系列を示す[1]。図2に、取り外し作業のシークエンスを示す[2]。いくつかの作業が並列で進められていることがわかる。これらの作業は、のべ162回の格納容器内立ち入り(のべ工数:341時間人)で行われた。
〇 内部調査について
およそ以下の時系列で、圧力容器ヘッドと炉心上部の内部調査が行われた。まず、圧力容器上部にとりつけられていた制御棒駆動機構(CRDM: Control Rod Drive Mechanism)のリードスクリューを取り外し、小型テレビカメラを吊り降ろして、Quick Look調査が行われた。つづいて、線量計や中性子計測器を挿入して、Quick Scan調査が行われた。さらに、圧力容器ヘッド内部の状態調査(Underhead Characterization)と、内部調査で明らかになった炉心上部空洞の超音波調査(Core Topography)、さらに、上部ルースデブリのサンプリングと分析が行われた。
- 1982年第3四半期 Quick Look調査(第1,2,3回)
- 1982年第4四半期 Quick Scan調査(第1回)
- 1983年第3四半期 Quick Scan調査(第2回)、Underhead Characterization、Core Topography、Core debrisサンプリング
参考:Quick Look計画
〇 圧力容器ヘッド上部での作業について
圧力容器ヘッドの上部には、圧力容器を貫通しているCRDMの上に作業用のプラットフォームが設けられていた。また、プラットフォームは円筒状の支持構造物(Service Structure)で支えられていた。圧力容器の内部調査と圧力容器ヘッドの取り外しのために、以下の作業が行われた。まず、CRDM内に装荷されていたリードスクリューとその下部に取り付けられていた制御棒スパイダーや軸方向出力平坦化棒(APSR: Axial Power-Shaping Rod)スパイダーの接続を外す作業が行われた。次に、APSRの挿入および吊り上げと、制御棒リードスクリュー5本の試験的吊り上げ、および中間位置での保持が行われた(#圧力容器の上部の空間が約6mしかなく、約7mあるリードスクリューを一度にすべて引き抜くことができなかった)。内部調査が終了した後に、CRDMのケーブルや各種接続の撤去、作業スペース上の不要な機器の撤去が行われた。その後、すべてのリードスクリューが吊り上げられた。
- 1982年第3四半期 リードスクリューとスパイダーの接続外し
- 1982年第4四半期 APSRの吊り上げ、リードスクリュー接続外れ状態の確認
- 1983年第3四半期 リードスクリュー(5本)の試験的吊り上げと一時保持
- 1984年第2四半期 CRDMケーブルと接続部の撤去、モニタリングビデオシステムの吊り上げ
- 1984年第3四半期 リードスクリューの吊り上げ、一時保持
参考:APSR挿入試験
〇 圧力容器周辺での作業について
圧力容器周辺では、圧力容器ヘッド取り外しに向けて、周囲の設備・機器の撤去や移動と除染が行われた。周囲の環境が整備された後で、圧力容器を固定していた鋲(Studs)が二段階で緩められ、最終的に取り外された。また、タービン建屋でIIFが組み立てられモックアップ試験が行われた。いったん解体された原子炉建屋に搬入され、組み立てられた。圧力容器ヘッド取り外し後ただちに、IIFが設置できるように準備が行われた。IIF設置後には、モニタリングカメラや冷却水浄化系の設備や配管の取り付けが行われ、圧力容器内の冷却水が水処理系を通じて循環されるようになった。
- 1982年第4四半期 作業プラットフォーム上のファン撤去、反射体・絶縁体の撤去
- 1983年第1四半期 中性子遮蔽タンクの撤去、圧力容器ヘッドの固定鋲(stud)のフラッシング
- 1983年第2四半期 圧力容器ヘッドの固定鋲(Studs)のフラッシング、中性子源検出器の較正
- 1983年第4四半期 冷却水系の糸巻き浄水機(Spool)撤去
- 1984年第1四半期~1984年第2四半期 ヘッド固定鋲緩め作業(2段階で実施)
- 1984年第2四半期 作業プラットフォームのキャットウォーク取り付け、IIFの貯蔵庫からの搬出、ヘッド貯蔵スタンド雰囲気の閉じ込め系統、IIFの組み立て
- 1984年第3四半期 ヘッド固定鋲の撤去、作業プラットフォーム遮蔽の装荷、線量モニターの装荷、IIFの吊り上げ準備、IIFガスケットの装荷、IIFレベル制御器の装荷、モニタリングカメラの装荷
〇 RCS系での作業について
RCS系については、まず、Quick Look調査にむけて、水位計の設置と、冷却水水位と圧力の低下作業が行われた。さらに、既設の冷却水系に敷設されていた不要な機器・設備が撤去された。圧力容器ヘッド取り外しの時点では、デブリ取り出しにおけるホウ酸水濃度の管理値が定まっていなかったため、暫定的にホウ酸濃度5000ppmに調製された。圧力容器ヘッド取り外し後に、IIF水処理系の接続が行われた。また、実際には使用されなかったが、ヘッドを移動している際に発生する可能性があった放射性粉塵の対策として、霧吹きシステム(misting system)が設置された。
- 1982年第3四半期 RCS水位計の設置、一次系/二次系冷却水の圧力低下、同水位低下
- 1984年第2四半期 冷却水水質(ホウ酸濃度:5000ppm)の調製
- 1984年第3四半期 misting系の設置、RCS系サンプルの採集、IIF内の冷却水処理系の接続完成
〇 ヘッド吊り上げ作業について
圧力容器ヘッド吊り上げに用いるトライポッド(Tripod:3脚型の吊り上げ具)とポーラークレーンの現状調査と負荷試験が行われた。次にヘッド移動の障害となる補助燃料取り扱いブリッジ(AFHB: Auxiliary Fuel Handling Bridge)などの移動や取り外しが行われた。ヘッド取り外し作業の最終確認会合と最終承認の後、遠隔作業で、ヘッドが吊り上げられ、貯蔵スタンドに移動された。移動中にポーラークレーンが2回故障し、部品交換などが手作業で行われた(後述)。圧力容器ヘッド取り外し後すぐに、空いたスペースに、冷却水の水位を高めて燃料デブリ取り出し作業を水中で行うようにするための改良型IIFが設置され、さらにその上に作業用プラットフォームSWPが設置された。
- 1983年第3四半期 ヘッドリフト用のTripodの調査
- 1983年第4四半期 ポーラークレーン負荷試験
- 1984年第2四半期 AFHBの移動、ジブクレーンの再稼働、ヘッド取り外し作業レビュー会合
- 1984年第3四半期 ヘッド吊り上げペンダントの装荷、ヘッド取り外しの承認、ヘッド吊り上げ作業実施、IIF取り付け、SWP取り付け
〇 Canalでの作業について
圧力容器ヘッド内の上部プレナム構造物や燃料デブリ収納缶は、いったん、燃料移送用Canal内に貯蔵される計画であった。貯蔵期間の見通しが十分にたたなかったため、Canalの保水や遮蔽の対策、および、給水排水系の敷設が行われた。一方で、ヘッド取り外し作業中は、ヘッドに接続している部分のCanalはドライな状態に維持されていた。
- 1983年第4四半期~1984年第2四半期 Canalシールプレートの設置
- 1984年第2四半期 南側とDリングのキャットウォーク撤去
- 1984年第3四半期 Canal冷却水の給水と排水
#当初計画では、1983年6月にヘッド取り外しの予定であった。ポーラークレーンの再稼働試験や性能確認試験は、その7か月前に予定されていた。しかし、ポーラークレーンの準備作業が、予算不足もあって約14か月遅延した。このため、圧力容器ヘッド取り外しは、1984年7月に実施された。取り外したヘッドは貯蔵スタンド内に保管された。
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準備作業、準備工程
重要ドキュメント
ヘッド吊り上げ計画書[2]、原子炉解体・燃料取り出し計画書[3]、ヘッドルチア下スケジュールと修正案[4]に、関連作業の方法、安全評価、エンジニアリングメモがそれぞれ記載されている。TMI-2廃炉作業にかかわる組織体として、NRC(Nuclear Regulatory Commssion)、SAB(Safety Advisory Board)、TAAG(Technical Advisory and Assistance Group)、GORB(General Operations Review)、および、Readiness Review Committee for Reactor Vessel Head Removalが置かれ、重要ドキュメントのレビューが行われた。
運営・管理マネージメント
あらかじめ、GPU社が圧力容器ヘッド吊り上げの技術的な前提条件リストを作成し、技術成熟度レビュー委員会(Readiness Review Committee)において作業安全性の観点でレビュー(メンバーは、GPU社のexecutiveレベル、議長はGPU社副社長)がなされた。前提条件リストは毎週更新され、委員会で報告された。委員会では、必要な作業や課題の抽出のサポートも行われた。特に重要な課題については、以下の外部専門家を含む委員会でレビューが行われた。
〇 SAB(Safety Advisory Board)
GPU社社長が立ち上げ、公衆への情報提供、作業員の健康管理、安全管理についてのマネージメントを、GPU社とは独立して実施する会議体である。GPU社と外部の組織とのコミュニケーションのサポートも担当していた。広いバックグラウンドをもつ有識者で構成されていた。圧力容器ヘッド取り外しについては、取り外しの数か月前に、取り外し作業の概要計画の報告を受けた(四半期ごとの報告として)。
〇 TAAG(Technical Advisory and Assistance Group)
GPU社社長が立ち上げ、GPU社とは独立した技術レビューにより、作業安全性のクロスチェックが行われた。約10人の委員と、重要課題ごとに臨時委員で構成された。GPU社、NRC、DOEから提示された現場作業に対するリクエストに対応した。TAAGとSABはヘッド取り外しについては連携してレビューを進めた。
〇 GORB(General Operations Review)
GPU社の執行役員が議長を担当した。GORBのメンバーは、GPU社職員と独立したコンサルタントからなっていた。核物質取り扱い、放射線取扱の安全性、およびその現場マネージメントに関する個別の重要課題について、承認を与えた。GORBのメンバーは、いつでも、上級執行役員、取締役会、関連会社の取締役会、および、そこに所属する個々のメンバーに、それぞれが責任をもつ用件について、意見具申することができた。
トレーニング
現場作業での作業員の被ばくを最小化するために、トレーニングが重視された。トレーニングレベルは、単純なブリーフィングからフルスケールモックアップまで、作業の難易度と被ばく線量低下の見込みによって定められた。モックアップ試験については、以下の項目で行われている。図3に圧力容器周辺の模式図を示す。
(図3を作成挿入)
〇 CRDMとヘッド上部構造物のモックアップ
Quick Look計画、およびひきつづいて実施されたUnderhead data acquisition計画では、ビデオ撮影、Topography調査、デブリサンプリング、リードスクリュー接続外しと引き上げ、CRDM開口部支持管の設置、などの現場作業が圧力容器上部の作業スペースで行われた。それらの作業のフルスケールモックアップ試験を行うための設備(Service Structure Mockup)が、タービン建屋1階に設置された。実寸大のCRDM1機(実際の内部構造物を有する)と外観だけのCRDM案内管のプラスチックレプリカが作業プラットフォーム上に設置された。CRDM取り外しやCRDMベント、リードスクリューの一時待機位置への引き上げ、など、圧力容器ヘッド内の調査にかかわる多くの作業のトレーニングが行われた。
〇 プレナムカバーとヘッドインターフェースのモックアップ
プレナムカバーとプレナムヘッドのインターフェースのモックアップは、上下に分割して準備された。下部は、CRDMの下方で上部プレナム構造物の内部に取り付けられている制御棒案内管(CRGT: Control Rod Guide Tube)のうち外周部の1本と圧力容器フランジのガイド鋲2本を模擬した体系が、プラスチック製の配管と円形の合板で模擬されていた。上部は、木製でヘッドフランジを模擬しており、タービン建屋のクレーンでモックアップ下部パーツの上に吊り下げられていた。実機では、ヘッドを約1m吊り上げた直後に、ヘッド下部からの汚染物質の落下を防止するために、シート状のヘッドブーツが取り付けられた(#ダイパー(おむつ)と記載されている)。その取り付けとシール作業のモックアップ試験が行われた。また、ヘッド移動時の監視カメラの位置決め、ヘッド吊上げモニタリング設備の確認が行われた。ヘッド吊り上げと設置の遠隔監視性能が、このモックアップ装置で行われた。
〇 IIFと作業プラットフォームのモックアップ
IIFモックアップは、他のモックアップよりも正確に、原子炉建屋内の状況を再現していた。実寸大の鉄製のシリンダーによるIIF模擬体がタービン建屋に設置された(図4)[1]。IIFを圧力容器上部に設置した後で、ただちにIIFに接続する必要がある冷却水処理系などの配管取り付けや、漏水を防止するガスケット取り付けなどのモックアップ試験が行われた。上述のプレナム構造物のモックアップと連携して、ヘッド吊り上げやIIF設置のモニタリングのモックアップ試験が、原子炉建屋と同じ配置のカメラで行われた。遠隔での接続取り外しデバイスのモックアップ試験も行われた。
作業プラットフォームモックアップは、まず、タービン建屋で組み立てられ、IIFモックアップ装置の上に設置された。この際に、装置間の据え付け性や吊り上げ作業性が確認された。作業プラットフォームをIIFの上に載せるために用いる、ガイドピンや受け側のファンネルの開発も行われた。
また、IIFモックアップは、IIF内での冷却水処理や水位確認の機器のモックアップ試験にも用いられた。多くの現場作業のモックアップ試験が行われ、現場作業時間の短縮につながった。モックアップ試験終了後に、作業プラットフォーム、冷却水処理系設備、RCS水サンプリング設備、水位モニターなどは解体され、原子炉建屋内に移送され、再組立てされた。
〇 圧力容器ヘッド固定鋲の緩め操作用モックアップ
圧力容器ヘッド固定鋲の緩め作業モックアップは、実寸大の鋲1本と受け側の構造物、および、2本の部分的な構造(鋲取り外しの実際の作業スペースの上下を模擬)からなっていた。鋲を緩めるための機器がモックアップ上に装荷され、固定鋲を緩める作業の訓練が行われた。このモックアップを用いて、鋲のクリーニングツール、固定鋲緩め技術(液体窒素使用)、などのモックアップ試験も実施された。改良型の固定鋲ゆるめ工具の承認試験も行われた。
〇 補助燃料取り扱いブリッジのモックアップ
フルサイズの補助燃料取り扱いブリッジ(AFHB)のモックアップがタービン建屋に設置された。このモックアップ装置を用いて、原子炉建屋上階での、AFHBからのマストやトロリーの取り外しや移動の訓練が行われた(図5)。
〇 トレーニングのまとめ
モックアップトレーニングは、圧力容器ヘッド取り外し作業の安全で効率的な作業に極めて有効であった。モックアップトレーニングにより、効率的な時間配分や手順が工夫された。作業員の被ばく量を想定より大きく低減できた。
圧力容器内部のデータ採集
1982-1983年にかけて、Underhead data acquisition計画(圧力容器ヘッド内の調査、リードスクリュー5本の一時保持位置への試験的に吊り上げ、等)により、ヘッド吊り上げに必要な多くの知見が取得され、ヘッド取り外し計画の方針が定められた。さらに、ヘッド取り外し作業と並行して実施された、Quick Lookでのビデオ調査、APSR挿入試験と吊り上げ、Core Topography調査、ルースデブリサンプル採集と分析、により、重要な知見が追加された。
〇 Quick Look 1,2,3
上部ヘッド取り出しの準備工程(PHLE: Pre-Head-Lift Examination)の一環として、圧力容器上部からCRDMを取り外し、その貫通孔からヘッド内にカメラを吊り降ろして観察する方法が検討された。しかし、圧力容器上部の複雑な構造物とミサイルシールドまでの距離の短さのため、CRDMのリードスクリューのみを取り外し、その貫通孔から小サイズのビデオカメラを吊り下げる工法に変更された。炉心中央のH8集合体、炉心外周のB8集合体、炉心中間のE9集合体の3か所で、ミサイルシールドの上から吊り上げ用のhoistでリードスクリューが吊り上げられた(#これらの集合体位置では、他の列に比べ作業スペースに余裕があった)。回収されたリードスクリューの一部は分析に回され、他は廃棄物として保管された。
1982年7月19日 Quick Look 1(H8位置、炉心中央)
1982年8月5-6日 Quick Look 2(B8、E9位置、炉心周辺と炉心中間)
1982年8月12日 Quick Look 3(E9再調査、ルースデブリの探針調査)
調査の結果、炉心上部は大きく損傷していたが、上部プレナム構造物はほぼ無傷であることが確認された。また、いくつかの上部端栓が上部格子からぶらさがっていた。上部空洞の深さは約1.5mで、探針の侵入深さは約35cmであった。
参考:Quick Look計画
〇 Underhead data acquisition
Quick Lookの後で、画像データの拡充と、ヘッド内の線量に関する知見を取得する必要性が指摘された。Quick Scan 1では、すでにリードスクリューが取り外されていたH8,E9位置から電離箱線量計を挿入し、ヘッド内とプレナム上部の線量が事故後始めて測定された。Quick Scan 2は、CRDMを取り外した後に、Underhead data acquisition計画の一環として実施された[1,5]。
Underhead data acquisitionでは、H8位置のCRDMのモーターとリードスクリュー支持管(#上部ヘッドの貫通部)がとりはずされた。リードスクリュー支持管は、INELに輸送され分析が行われた。改良型のhoistでH8位置のCRDM全体が取り外された後に、CRDMノズルフランジに遠隔マニピュレータ作業をサポートする新たな案内管が取り付けられた。これにより、ヘッド内にアクセス可能な貫通孔のサイズが拡大した。上部ヘッド内のビデオ観察とプレナムカバー付着デブリのサンプリング、TLD線量計と電離箱線量計による線量測定などが行われた。
Quick Scan 2での最初の2回のビデオ調査は、プレナムがまだ水没している状態で行われた(#この時点では、付着デブリの自然発火性がまだ懸念されていたため)。微粒子デブリがプレナムカバーの上に堆積していることが観測された。このサンプルが一部回収され、自然発火性確認試験により、自然発火性がないことが確認された。第3回目のビデオ調査は、自然発火性がないことが確認された後で、水位がプレナムカバープレートの下まで下げられた後に行われた。
一方で、自然発火試験の結果が出る前に、付着デブリのフラッシングシステムが設計・調達された。しかし、付着デブリの状態(大した量がない)と、自然発火確認試験の結果を受けて、付着デブリフラッシング計画はキャンセルされた。
TLD線量計の測定結果は、6Sv/h(B8,E9位置)、10Sv/h(H8位置)であった。ヘッド取り外し時の線量評価がコンピュータ解析(ISOSHLD、Grace-1,2コード)で実施された。燃料交換用Canalエリアを対象に、取り外した圧力容器ヘッドの線量評価が行われた。実工程での線量推定値は予備的に評価された値の1/4~1/6であった。このことから、上部ヘッドの取り外しは、Canalを水没させなくてもできると結論づけられた[5]。
1982年12月 Underhead data acquisition計画開始
1982年12月 Qucik Scan 1
1983年8月 Quick Scan 2
〇 APSR挿入試験
事故時には、APSRは25%引き抜き位置にあった。炉心損傷状態の調査の一環として、APSR挿入試験が行われた(#CRDMモーター、APSR、CRGT、可能であれば炉心部の知見取得が期待された)。この試験により、CRDMの状態と、リードスクリューとCRGTなどとの干渉の状態が明らかになった。APSR挿入試験の後、リードスクリューの接続をはずし、一時保持ポジションまで引き上げられた。
1982年6月 APSR挿入試験
1982年11月 APSRリードスクリューの引き上げと一時保持
参考:APSR挿入試験
〇 Core Topography
Quick Lookで発見された、炉心上部空洞の定量的なデータ取得のために、超音波探査が行われた。超音波探査プローブは、H8位置から吊り降ろされ、上部空洞内の構造に関する約50万点の点群データが取得された。コンピューター解析により、上部空洞内の損傷・デブリ堆積状態が3D図としてモデル化された。上部空洞は約1.5mの深さがあり、上部格子から集合体上部が数10cm以下の長さでぶらさがっていることが確認された。また、上部空洞はおよそ炉心中心から円柱状に広がり、炉心周辺部の約40体の燃料集合体は部分的に無傷で残留していることが確認された。
1983年8月31日~9月1日 上部空洞の超音波探査
その後、画像解析により、上部空洞内を3Dモデル化
〇 上部ルースデブリのサンプリング
圧力容器上部から、デブリサンプリングツール(ピックアップタイプ、かきとりタイプ)を吊り降ろし、炉心中央位置(H8)と炉心中間位置(E9)の上部ルースデブリが深さ方向に何か所かサンプリングされた。採集された粒子状デブリは、分析施設に輸送され、粒度分布、組成、FP含有、放射能量、線量、密度、自然発火性物質の存在、外観、等について分析が行われた。
1983年9~10月 ルースデブリサンプル採集(6か所、炉心中央と炉心中間)と構外輸送
1984年5月 追加サンプリング(5か所)
〇 リードスクリューの試験的吊り上げと保持
リードスクリューのうち5本を試験的に吊り上げ、一時保持位置にCワッシャーで固定した。しかし、1本は固定できなかった。この作業中の作業プラットフォーム上での線量増加の程度が測定された。あらかじめ実施された予備評価では、リードスクリューをすべて吊り上げた場合の予測線量は210mSv/h(接触線量として)であり、2cm厚の鉛遮蔽を作業プラットフォームの周りに配置することが計画された。しかし、試験的つり上げでの線量増加に基づいて再評価された線量は80mSv/h(鉛遮蔽なしの接触線量)であったことから、鉛遮蔽を置いた時の作業スペースの予測線量が8mSv/hに変更された。すべてのリードスクリューを吊り上げる実作業中の線量は、予測値をさらに下回った[6]。
1983年9月 リードスクリューの試験的に吊り上げ
圧力容器ヘッド取り外しの準備工程
圧力容器ヘッドの取り外しには、多くの準備工程が必要であった。作業スペース付近の線源の撤去と作業スペースの拡大のため、周囲の反射体、断熱材、CRDMケーブルなどが撤去された。また、一次系/二次系冷却水の水位調整、作業スペース構造物と上部ヘッド突起物のフラッシングによる除染、キャットウォークやAFHBの配置換え、なども行われた。
〇 一次系/二次系冷却水の準備工程
一次系と二次系の冷却水についての準備工程は、(a)圧力容器内部調査とヘッド取り外しで必要となるRCS系水位の調整に係る作業、(b)臨界性制御、作業員被ばく低減に必要な作業、に大別される。
(1) RCS水位レベル表示
Quick Look調査のために、2個の遠隔水位表示計がDecay Heat Lineに設置された。既存ケーブルを利用して圧力信号の伝達器が設置され、作業現場でのSPC(Standby Pressure Control)パネルと指揮室でのSPCパネルの上に、デジタル信号が表示されるようになった。この信号ラインのバックアップとして、Barton圧力ゲージが設置され、燃料取り扱い建屋のバルブ室に圧力指示値が表示されるようになった。2系統の水位表示計が較正され、ゼロ位置は、ホットレグノズルのセンターで315フィート6インチの高さに設定された。そこから600インチの水位変化が表示された。
圧力容器ヘッド外しのために、別の水位計と圧力計が設置された。これは、ヘッド取り外しの時にDecay Heat Outletバルブが閉じられる可能性があったための対策であった。Tygon Tubeが2A系の冷却水ポンプ排水ラインに取り付けられた。これにより、3個の系統で水位表示が可能となった。
RCS排水計画では、RCS系の窒素カバーガスが、ヘッド内が排気されるまで維持される必要があった。カバーガスを提供する窒素系が設置された。
(2) 一次系/二次系の圧力低下
Quick Look前に、RCS系の排水を適切に行うには、2系統のホットレグと加圧器の水位を同じ位置にする必要があった。そこで、冷却水の排水前にまずホットレグと加圧器のカバーガスが排気された。RCS系から排気されたガスは建屋内に放出される際に希釈された。Quick Look前に、水素ガスの希釈のためのブロワーが設置された。
減圧は、SPC系を切り離し、圧力容器冷却水排出タンク(RCBT: Reactor Coolant Bleed Tank)を水位低下することで行われた。この作業は、ホットレグが真空状態になるまで継続された(#コンパウンド圧力ゲージの指示値)。減圧後に、窒素ガスが加圧機とホットレグ内に封入され、RCBT水位低下作業が完了した。この圧力低下手順は、圧力容器ヘッド取り外しの際には若干修正されて実施された。
(3) 一次系/二次系の水位調整
Quick Look前に、水位の調整(ヘッドのフランジレベルまで低下)と、冷却水の水質の分析・管理が必要とされた。二次系は、一次系へのコンタミを避けるため、一次系より水位を下げる必要があった。水位変化のレベルを図6に模式的に示す。また、一次系と二次系の圧力差を維持する必要があった。Quick Lookの準備段階では、二次系の水位調整は容易であった。これは、必要とされる二次系の水位(床面から330フィート)が、蒸気発生器(OTSG: Once-Through Steam Generator)給水ヘッダー(床面から323フィート)より上にあったためである。二次系の冷却水は、OTSGのヘッダーから、一次系(RCS系)の最低レベルのさらに下まで下がるように排水された。しかし、ヘッド吊り上げ作業の準備段階では、一次系の水位を床面から322フィート以下に下げる必要があった。このため、二次系は、床面から313フィート以下、すなわちOTSGの給水ヘッダーよりさらに10フィート下まで水位を下げる必要があった。この水位調整には時間を要し、その間、2器のOTSG水位を長期間この水位に維持することも必要だった。
Quick Look前に、2器のOTSGの二次系は、以下の手順で冷却水で満水にされ、水質管理され、循環され、そして排水された。
A系OTSGは、OTSG循環系(GR系)を使ってイオン交換水で満水にされた。GR系により、原子炉建屋と外部の冷却水循環が可能となった。水質は、wet layup conditionのために調製された(内表面が濡れたまま保持される条件)。二次系は、上部のOTSG配管シートが貯蔵用に調製された水質の冷却水で濡れを維持するようにされた。A系OTSGは、GR系を使って、給水ヘッダーの下まで排水された。この排水は1cm径の配管を使って、2週間で5000ガロン排水して行われた。
B系OTSGの冷却水は、タービン建屋のイオン交換樹脂をとおして、低レベルの汚染を除去し循環された。GR系が、OTSG内を満水にし、水質調製し、上部配管シートを濡らすために使われた。
GR系は、排水にも用いられた。しかし、A系と同じ排水手順は使えなかった。これは、高線量のバルブがアクセスしにくいところにあったためである。排水ホースを遠隔で取り付け、異なるルートで排水が行われた。
ヘッド取り外し前の水位調整は、Quick Look前とおよそ同じ手順であった。SPCを分離し、2個のホットレグを真空状態にして、窒素ブランケットの位置まで、水位低下された(RCS系水位:322フィート6インチ)。この位置で。窒素の陽圧調整がなされ(16psi)、CRDMを通じてヘッド内が排気された。その後、RCS水位はさらに321フィート6インチまで、Standpipe sample lineを通じて排水された。これは通常の方法と異なる方法であり、放射性物質の放出を防ぐための方策であった。
(図6として水位変化の模式図を挿入)
(4) RCS系の水質調製
圧力容器ヘッド取り外しとデブリ取り出しの際の臨界制御のために冷却水の水質調製が行われた。併せて、ヘッド取り外し作業中の作業員の被ばくを抑制するため、冷却水中の可溶性RI濃度の低下処理も行われた。この段階では、ホウ素濃度は、まだ最終的に確定されておらず、暫定値として>5000ppmで調製された。
1982年春 RCS系水位表示計の設置決定(Quick Look実施が決定された以降)
1982年第3四半期 RCS水位計の設置、一次系/二次系冷却水の圧力低下、同水位低下
1984年第2四半期 冷却水水質(ホウ酸濃度:5000ppm)の調製
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〇 圧力容器周辺設備の撤去
(1) 反射絶縁体
圧力容器固定鋲へのアクセスルートを整備するため、圧力容器ヘッドフランジの上の反射絶縁体が撤去され、Canal内に一時貯蔵された(図7)。さらに、切断して廃棄物として処分された。
1983年2月 反射絶縁体の撤去
1983年8月 廃棄物として処理
(2) 作業プラットフォームの排風機
圧力容器上の作業プラットフォームの排風機は、建屋雰囲気を循環していたため、事故進展中にかなり汚染していた。作業プラットフォームは、フラッシングして除染されたが、排風機は十分に除染できなかった。12個のファンが撤去され放射性廃棄物として廃棄された(図7)。
(3) D-ringキャットウォーク
燃料交換Canalの北側にあるD-ringキャットウォークは、AFHBの移動とヘッドリフトの移動のために、位置を変える必要があった。ミサイルシールドの上に運ばれ、一時保管された。南側のキャットウォークはポーラークレーンで吊り上げ、ミサイルシールドの上に仮置きされた。
(4) 糸巻浄化器
2個のCRDM冷却水の浄化器(作業スペースの上とB系のD-ring壁の間)が撤去された(図8)。これはヘッド取り外しの一般的な工程のひとつでもあった。接続ボルトを外し、ミサイルシールドの下から吊り上げて撤去された。放射性廃棄物として廃棄された。併せて、冷却水配管サポート(A系のD-ringの壁についていた)も撤去された。これは、AFHBを作業スペースの北側を通過させるための対策であった。
(5) CRDMのケーブルと接続具
圧力容器上部の作業スペースから、CRDMのケーブル類と接続ブリッジが撤去された(図9)。作業プラットフォーム北側のケーブルブリッジは、AFHBを通過させるために撤去された(AFHBをCanalの南から北に移動させるため)。第二のケーブルブリッジは、ヘッドリフト後にリードスクリューにアクセスする必要が発生した時のために撤去された。これらは解体され、原子炉建屋から搬出され、廃棄物として処分された。
(6) AFHB
AFHBは、取り外したヘッドをできるだけ低い位置で釣り上げたまま貯蔵スタンドに運ぶために、Canalの南側から北側に移動された。これは、安全評価で指摘された、ヘッド移動時の落下事象のハザードを抑制するためであった。安全評価では、ヘッド移動中に1.4m以上高い位置に行かないこととされた(図5)。(# 安全評価については、項目を分けてまとめる。)
AFHB移動の前に、建屋内でいくつかの予備作業が必要だった。水中テレビシステムと燃料交換用のマストがAFHBから撤去された。ブリッジトロリーも撤去された。ブリッジトラックの上に作業プラットフォームが据え付けられた。このプラットフォームは、もともと、上部プレナム構造物の撤去作業用に設計据え付ける予定だったが、AFHBの移動作業の前にとりつけるのが効率的だった。AFHBから取り外したパーツは、アセチレントーチやプラズマトーチで切断し、廃棄された。
1982年第4四半期 排風機撤去、反射体・絶縁体の撤去
1983年第1四半期 中性子遮蔽タンク撤去、圧力容器ヘッド固定鋲のフラッシング
1983年第2四半期 圧力容器ヘッドの固定鋲のフラッシング、中性子源検出器の較正
1983年第4四半期 冷却水系の糸巻き浄水機(spool)撤去
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〇 燃料交換Canalの給水と排水
燃料交換Canalへの既設の給水排水系は、バルブが高線量域にあり、使用不可であった。そこで、新たな給水系が設計設置された。これは、圧力ヘッド取り外し以降に、追加の遮蔽や除染が必要となった時に使用されることとなった。新たな排水系は、ヘッド取り外し作業では、圧力容器とのインターフェーズ部分でCanal内を空にする必要があり、そのために設計設置された。給水排水系の設置には、既設の中性子遮蔽の撤去と、CSP(Canal Seal Plate)の設置が必要であった。さらに、CSP設置でアクセスが困難となる中性子源検出器の較正が必要となった。
(1) Canal Seal Plate (CSP)
CSPの設計強度の要件は、燃料取り出しの期間中(#この時点では、取り出し期間の長さは決まっていない)、Canalを満水に維持できることであった。同型式のCSPの過去の経験により、満水にすると、わずかなリークが発生する可能性があった(#これは、通常燃料の移送の際に、短時間であれば許容されていた)。しかし、TMI-2事故炉では、Canalの使用期間が不明、リークの修理が困難、水質浄化系:SDS(Submerged Deminelizer System)の能力に制限があること、などから、リークは許容できなかった。2台のCSPが設計製作された。水平シール表面に加えて垂直フランジにガスケットとシールを有する必要があった。さらに、貯蔵位置からCanalフロアのデッキまで約80cm吊り上げる必要があった。
一方で、CSP取り付けとシール剤注入のモックアップ試験が実施された。モックアップ試験では、シーラントを3mm以下のクラックに注入する作業などが行われ、さらに、シーラントを調合してから注入するまでの乾燥時間が試行錯誤的に検討された(#1時間から4日までテストし、2日間がベストと判定)。
現場作業では、CSPを所定位置まで吊り上げ、垂直フランジやガスケットとスペーサーを取り付けた。次に、シーラントバリアを配置し、シーラントが注入された。最後に、Canal作業用のプラットフォームが、CSPの上に設置された(#ヘッドの吊り上げ作業と、CSPの保護のため)。
中性子遮蔽タンクの撤去
CSP設置の準備工程として、また、圧力容器フランジ周辺の絶縁・反射体の撤去の準備工程として、Canal床の上で圧力容器を囲んでいた12個の中性子遮蔽タンクが撤去された(図11)。これは空間線量の低減にも効果があった。
中性子源レンジ検出器の較正
CSP設置の前に、損傷炉心の中性子束を監視するための2器の中性子源検出器(NI-1,NI-2)の較正が必要であった。
1983年1月 中性子遮蔽タンクの撤去
1983年5月 中性子源検出器の較正
1983年10月 CSPの試験的な設置(#圧力容器とCanal床の開口部の間にフィットするように調整が必要なことが判明)
1984年1月 第二回めの据え付けに成功(図10)
1984年4月中旬 シール設備を設置、シーラントを注入
(2) Canalの給水排水系
遮蔽のため、燃料移送Canalを短時間で満水にできるように改良された注水系が新たに設置された(#オリジナル系統は、バルブが高線量域にあって使用不可)。ホウ酸水を、ホウ酸水タンク(BWST: Borated water storage tank)から建屋貫通孔を通じて、使用済み燃料冷却ポンプから、新設のダイアフラムポンプでCanalに注水する方式であった。
一方、排水系は、高線量域でのバルブ作業をしなくてすむように、経路をかえて設置された。10cm径の浸水ポンプをCanal床に置き、SDSまで排水する方式であった。途中の分岐管には、建屋地下階サンプポンプと、IIF内の処理ポンプも接続された。
1983年7月 給水排水系の設置
〇 リードスクリューの接続外し、外れ状態の確認、一時保持
最初は、軽量タイプの吊り上げツール(図12)で、リードスクリューとスパイダーとの接続部を外して吊り上げる作業が行われた。試験的引き抜きで5本のリードスクリューが引き抜かれ、燃料集合体や制御棒スパイダーがスクリューに接続していないことが確認された。しかし、うち1本は、中間保持位置で固定できなかった。すべてのリードスクリューの引き上げ作業前に、リードスクリューの動作状態と接続外れ状態について、4つのカテゴリーに分類された。これにより、引き抜き作業を区分けし、効率的な引き抜きができるように工夫された。
4つのカテゴリー:
- 制御棒スパイダーがリードスクリューに接続していない(# 接続外し作業中にスパイダーが5cm以上落下)、23本
- 制御棒スパイダーが部分的に接続している(# 同、スパイダーの落下が5cm以内)、4本
- 制御棒スパイダーが完全に接続し落下せず、30本
- 試験的取り出しのういち1本は、中間保持位置で固定できず、リードスクリューやトルク受けがトルクチューブ内に残留、1本
4カテゴリー(58本)のリードスクリューが最終的に中間保持位置まで引き上げられた。リードスクリューをスパイダーから接続外す作業中に、さらに9本が完全にスパイダーから分離できた。元々はずれていた23本とこの9本は、計画通り軽量吊り上げツールで引き上げられた。残りのリードスクリューは、高耐久性リフトツールで引き抜きが行われた。リードスクリューの一時保持は、CRDMの上部までリードスクリューを引き上げ、一時保持ツール(C-washer)で固定という作業であった。これらの作業により、すべてのリードスクリューを圧力容器ヘッドのフランジレベルより上まで引き上げ、ヘッドが水平方向に移動できるように調整された。
1982年8月~11月 リードスクリューの試験的接続外し
1982年12月 絶族外れ状態の確認
1984年7月19-21日 全リードスクリューの接続外し、一時保持位置まで吊り上げ
(ここに図12、吊り具の模式図を挿入)
〇 ヘッド吊り上げ治具
圧力容器ヘッドの取り外しには、ポーラークレーンの再稼働が必要であった。またヘッド吊り上げ治具(Tripod, Turnbuckleなど)とジブクレーンの点検が行われた。ヘッド貯蔵スタンドの壁に取り付けられたジブクレーンも再調整、再稼働された。
(1) ヘッド吊り上げ用治具の点検
三脚型の吊り上げ治具Tripodのクリーニングと点検が行われた。点検方法には、微粉探傷試験(#対象物の近くに電磁石をあてて表面の傷を調査する方法)が用いられた。目視点検で、溶接長さの不足が確認されていたため、徹底的な探傷試験が行われた。これにより、応力がかかる溶接部3か所が検出された(#しかし、許容範囲内であったと記述されている)。点検の結果、既設のTripodはヘッド吊り上げに使用可能と判定された。Turnbuckle(圧力容器ヘッドの支持構造物(service structure)とTripodやPendantとの接続部)の点検も行われた。ヘッド吊り上げ時に、クラックが入る可能性が懸念され、溶接部についての検査が徹底された。微粉探傷試験で、Turnbuckle内部まで進むクラックが検出された。そこで、TMI-1の同種部品と交換された。その他のヘッド吊り上げ用治具についても、Pendant以外は点検された、Pendantは、ポーラークレーン負荷試験の一環として点検された。
図13に、ポーラークレーンによるヘッド吊り上げを模式的に示す。Tripod,Turnbuckle,pendantの配置が確認できる。
1983年第4四半期~1984年第1四半期 Tripodなどの点検
(ここに図13、吊り上げ模式図を挿入)
(2) ポーラークレーン負荷試験
ポーラークレーン負荷試験により、170トンの負荷で使用可能(# 設計上限は500トン)であると判定された。ヘッド吊り上げには、まだ14トンのマージンがあった。
1984年3月 ポーラークレーン負荷試験
(3) ジブクレーンの改修
ヘッド貯蔵スタンドの上に取り付けられていたジブクレーンの改修が行われた。オリジナルの吊り具(hoist)は損傷しており、2トン用のチェーンhoistに交換された。負荷試験が行われ、1.5トンの負荷を許容することがわかった。このジブクレーンは、砂遮蔽をヘッド貯蔵スタンドの周りに設置するのに用いられた(後述)。
1984年5月 ジブクレーンの改修
(4) 圧力容器吊り上げPendantの取り付け
事故後に新たなペンダントが購入された。Pendant負荷試験には時間を要し、ポーラークレーン負荷試験と同時に実施できなかった。新たなPendantの検証試験と古いPendantとの交換が行われた。古いものは、原子炉建屋の外に搬出され、放射性廃棄物として貯蔵された。
1984年5月 Pendant交換作業
〇 圧力容器固定鋲(Studs)
(1) クリーニング
圧力容器ヘッドをフランジに固定しているヘッド固定鋲については、まず、錆やホウ素付着物をとりのぞくために、表面の加水分解処理が行われた。次に、残留水を除去するために吸引処理が行われた。その後で、ウィンターグリーンオイル(植物油)が、ねじ表面の保護とナットと鋲の固着部に保護材を侵入させるために塗布された。固定鋲の緩め作業の前に、ブラシ磨きと、Molycoat潤滑剤の注入が行われた。図14にクリーニング前後での固定鋲の外観を示す。
1983年5月 圧力容器固定鋲の除染と潤滑剤注入
(ここに図14、固定鋲)
(2) 固定鋲ゆるめ作業 -第1段階
ヘッド固定鋲は、2段階でゆるめる必要があった。通常は、第1段階で、数ヶ月かけてナットが固着していないかどうかを確認した後に、第2段階を行う。第1段階に時間がかかるため、圧力容器ヘッド取り外し工程のクリティカルパスとなっていた。固定鋲取り外し時間短縮のため、固定鋲回し治具(MEND: Motorized Engaging Nut Driver)を取り付けた、固定鋲取り外し装置が燃料取り出しCanalの上に設置された。次に、空圧式のロータリーワイヤーブラシで固定鋲のクリーニングが行われ、潤滑オイルがネジ部分に注入された。固定鋲の伸長測定により、ネジのトップとショルダーの長さが計測された。
最初の緩め作業では、試した12個すべてがスタックしていたため、スラッギングツール(#潤滑オイルを中にしみこませるために固定鋲をたたくツール)が用いられ、第1段階での所定の緩め位置まで、60個のナットすべてを緩めることに成功した。固定鋲のうち、2個(15番と45番)は完全に緩められた。固定鋲を取り外した穴に錆止めが注入され、穴を覆うカバーが取り付けられた。オリジナルより短いガイド鋲が取り付けられた。これは、ヘッド吊り上げの時に、最低限の上方向への吊り上げですむようにする措置であった。新たなガイド鋲は、ヘッド取り外し後にIIFを据え付けるために用いられた(後述)。
1984年3月 固定鋲回し治具の設置、緩め作業開始
1984年5月 15番と45番を完全に取り外し
1984年6月 15番と45番に新たなガイド鋲を取り付け
(3) 固定鋲ゆるめ作業 -第2段階
第2段階は、最初は第1段階と同じ装置を使用して行われたが、36番を緩めるのに失敗したため、あらかじめ打撃で弛緩させる手順に変更された。固定鋲上部にプロテクターを取り付け、スレッジハンマーですべてのナットをたたいた(#クリーニングツールが入らない場所の錆や付着物をはがすため)。ゆるめには、通常より大きな力が必要だったが、第1段階で予想された範囲だった。取り外した固定鋲の、長さ測定が実施された。最後に残った6番鋲については、あらかじめ実施されたモックアップ試験の手順に基づき、固定鋲中央の穴に液体窒素を注入して冷却が行われた。十分冷やしてから打撃処理することで外すことができた。固定鋲のネジ表面には錆があったが、機械的な損傷は見られなかった。固定鋲の穴をクリーニング、錆止め注入、シールプラグとプラスチックカバーが取り付けられた。
1984年6月27日 固定鋲ゆるめ作業、第2段階開始
1984年6月28日 作業終了
〇 除染と線量低減
ヘッド取り外し作業スペース周辺の除染と線量低減は、重要課題であった。作業プラットフォームの支持構造物の遮蔽、貯蔵スタンドの覆いと遮蔽、移動時にヘッドの下部を覆うヘッドブーツ、作業スペースの遮蔽、プレナムmisting系の準備が行われた。
(1) 支持構造物(圧力容器上部の作業スペースまでの垂直円筒状部分)の遮蔽
5本のリードスクリューを試験的に吊り上げ、支持構造物の内側で一時保持された(#うち1本は固定できず)。作業中の線量増加の実測値から、全リードスクリュー引き上げ時の支持構造物周辺での線量増加の予測値が検証された。吊り上げたリードスクリューからの線量を遮蔽するため、2cm厚さの鉛ブランケットが設置された(図15)。これにより、ヘッド取り外し重量が13トン増加した。一方で、圧力容器固定鋲60個を取り外すことで20トン減少した。
1983年10月 リードスクリューの試験的吊り上げと一時保持
(ここに図15を挿入)
(2) 貯蔵用スタンドの覆い(エンクロージャー)
ヘッドを貯蔵するスタンドには、2種類のバリアが取り付けられた。これは、ヘッド下から建屋へのコンタミを防止するためであった。1つめは、強化プラスチック製の防水シート(ヘッドブーツ)であり、貯蔵用スタンドの中に設置された(図16)。2つめは、垂直スカートであり、貯蔵スタンドの外周部に設置された(図17)。
(ここに図16,17を挿入)
(3) 貯蔵用スタンドの遮蔽
貯蔵スタンドの上に設置したヘッドの下部からの線量を抑制する目的で、遮蔽体が設置された(図16)。主要な線源は、円筒状の支持構造物中に一時保持されているリードスクリュー由来であった。遮蔽壁は、49個の2.5m長さファイバーグラスシリンダーと43個の1.2m長さシリンダー(それぞれ0.6m径)からなっており、3.6m高さまで積み上げられた。シリンダーは上下に凹凸構造をもち、組み合わせることで遮蔽が効率化できるように工夫された。しかし、シリンダーには最初水をはったがリークが起きたため、後で砂に交換する作業が発生した(後述)。この、遮蔽壁の設置とトラブル対策にのべ23回の立ち入りが必要だった(当初計画では9回)。結果として、砂遮蔽の方が2倍効果的であることがわかった。
(4) プレナムmisting系
ヘッドをとりはずし、IIFを据え付けるまでの間は、プレナム上部が直接大気にさらされることになる。プレナム上部が乾燥すると、飛散粒子による線量増加が懸念された。対策としてプレナムミスト径が設置された(図18)。線量モニターがプレナム汚染に由来する線量増加を検出した場合に、スプレーノズルによりプレナム上部にホウ酸水を霧吹きする仕組みであった。ヘッド移動中にほとんど線量変化がなかったため、結局使われなかった。IIF据え付け後に撤去された。
1984年7月18日 misting系設置(#使用せず、のちに取り外し)
(ここに図18を挿入)
(5) ヘッドブーツ
ヘッドブーツは、ヘッドを取り外し貯蔵スタンドに移送する間に、ヘッドの下から落ちる、汚染粒子や汚染水への対策として設計された。ヘッド吊り上げ後の下側のカメラ観察では、ルースデブリの付着は見られなかった。しかし、ヘッドブーツが防護用に取り付けられた(図15)。ヘッドブーツは強化プラスチックシート製で、ヘッドを約100cm吊り上げたところで、CRGTをクリアしつつ、ヘッドの下に広げられた。その後でヘッド下を覆うように引き上げられ、円筒状支持構造物の側面に固定された。
(6) 遮蔽作業スペース
ヘッド吊り上げ作業のクルーは、2~9名体制で、線量測定員、クレーン運転員、吊り上げ治具取り付け作業員、などからなっていた。TV監視、遠隔操作、待機時間など、現場での手作業以外は遮蔽作業スペース内で実施された。遮蔽作業スペースは、D-ringの上の加圧器スラブの上に設置され、2m高さ、2.5cm厚さの遮蔽体に覆われていた。その内側では、線量を<50mR/hrまで低減できた。
〇 カメラの設置、モニタリング系
ヘッド吊り上げ作業を遠隔で行うためのモニタリングカメラは10台設置された(うち4台はバックアップ)。制御系やモニター系は、遮蔽スペースの中に設置された。カメラのうち、3台とバックアップ2台は、Canal床面の上に設置され、ヘッド吊り上げの位置決め(レベリング)と、ヘッドブーツを取りつける前にヘッド下部の状態(付着デブリの様子など)を観察用することに用いられた。他の2台は、ヘッドフランジの上に取り付けられ、吊り上げ時のヘッドの高さ位置(固定鋲の上)と貯蔵スタンドまでの移動経路のモニター用に用いられた。ヘッド貯蔵後には、IIFに取り付けなおし、IIF取り付け時の監視に用いられた。残り3台は、ヘッドを貯蔵スタンドに据え付ける際の監視用に用いられた。2台は貯蔵スタンドの上に配置され、1台はポーラークレーンの上に配置された。これは、トロリーの相対的な位置決め、ブリッジと建屋壁の相対的な位置決めに用いられた。
正確な吊り上げ時の位置決めは、ポーラークレーンのセンターラインから6cm以内の誤差で、横方向の荷重が、IIF設置に用いるために新たに取り付けた固定鋲にかからないようにするのがカギであった。実作業でのヘッド移動中に、ポーラークレーン上のカメラが故障し、基盤交換が行われた。また、線量モニターへの接続ケーブル(マーキングしてなかった)が何回か外れた。接続部を覆うように固くラップする方法で解決された。実作業での教訓は、後の項目でまとめた(後述)。
〇 IIFの準備
IIFは、通常は、圧力容器にプレナム構造物を装荷したり取り外したりするときのガイドに用いられる。既存のIIFがを用いて、圧力容器上部をに水位を形成し、その上に作業プラットフォームを設置できるように改良された。この改良には、冷却水のサンプリング系や水循環処理系の取り付けも含まれる。このために付加した設備は、リークタイトなガスケット、遠隔操作できる吊り上げ装置、プラットフォームの遮蔽などであった。タービン建屋でIIFとプラットフォームはモックアップ試験に用いられた。いったん解体し、建屋内で再組立てされた(図4)。
(1) IIFの改造
リークタイトなガスケット系と圧力容器フランジに固定する治具が付加された。設置前にメタノールでクリーニングされた。燃料取り扱いCanalは高線量であると予想されており、IIF設置は遠隔で行う必要があった。そこで、クリアランスがIIF と圧力容器フランジの熱膨張の差に対応できるように、接続受けの構造が工夫された。圧力容器フランジに新たに取り付けたガイド鋲にも工夫がされた。取り外した本来の鋲の後には、細径で、長さが短いガイド鋲が取り付けられた。上に向かってややとがった構造も採用された。オリジナルの固定鋲はフランジから100cmの長さであったが、改良品は35cmであった。これはヘッドの吊り上げ高さをできるだけ低くするためであった。
(2) 遠隔操作
高線量が予想されたため、IIFをtripodから遠隔で取り外すように計画された。遠隔取り外し系は、現場で設計製作され、建屋内でIIFに取り付けテストが実施された。モックアップ試験の結果、接続部を改良する必要があった。これは、設計図にあった本来構造と実物が違っていたためであった。遠隔での接続治具は、まず、吊り上げ用のペンダントと接続され、次にIIFに接続された。ペンダントをIIFから取り外すために、tripodをいったん吊り降ろした。すべての接続を外した後、吊り上げ具をポーラークレーンで引き上げた。
(3) 作業プラットフォーム、水循環処理系、サンプリング系、水位制御系
IIF上の作業プラットフォームは、鉄製の遮蔽付き、可動式のデッキ構造であった(図19)。IIFとのタイトな接続はされなかった。このプラットフォームから、水処理系やサンプリング系が吊り降ろされた。デッキは遮蔽されており、圧力容器内部へのアクセス起点の役割を持っていた。
水循環処理系は、RCS系が加圧されていた時と同じ処理速度で圧力容器内の冷却水の処理ができるように設計された。吸引ポンプ、流量ポンプ、排水ラインからなっていた。吸引系は、IIFの上部フランジに接続された。排水ラインは、SDS系に接続された。これにより、IIF設置以降は、RCS系の冷却水を連続的にSDSで処理できるようになった(#それまでは、ある程度の量を排水してから、処理するバッチ式だった)。処理速度は毎秒1Lであった。
サンプリング系は、水循環処理系とは独立に、作業プラットフォームの上に置かれた。建屋外からの遠隔操作で水サンプリングができるようになった。
水位制御系は、バブラータイプであった。IIF水位が許容範囲を超えた場合に指揮室で警報発令する仕組みであった。
(ここに図19を挿入)
圧力容器ヘッドの取り外し
表1に、圧力容器ヘッド取り外し作業の概略経過を示す。最初のステップは、ヘッド吊り上げと圧力容器上での保持であり、24日に開始された。最終イベントは、作業プラットフォームをIIFの上に吊り降ろすことであり、27日に完了した。前後のパージ作業以外のフルシークエンスは54時間で完遂された。建屋内で作業するクルーの人員は3~4人チームであった(12時間シフト、各シフトでクルー2チーム)。述べ作業時間は341人時間であった。全クルーメンバーは、すべての作業が実施できるように訓練されていた。機器制御の技術員は、故障した機器のメンテナンスとトロブルシューティングに対応した。ヘッドリフトに関する書類を審査し承認した担当者が、リフトアップ作業を通じて、作業指示の変更を迅速に対応するため、指揮センターに常駐した。
図20に、ヘッド吊り上げの模式図を示す。ポーラークレーンから、ロードセル、伸縮ロッド(Internal Handling Extension)、Tripod、TurnbucklesmCheek Plate、Pendantなどを吊り上げ具を吊り降ろし、圧力容器ヘッドとその上の円筒状の支持構造物に取り付けられた。
(ここに表1、図20を挿入)
ヘッド取り外し作業の概要
(ここに表1の説明、直訳を参考にしつつ)
パージ
Tripodをポーラークレーンのロードセルに、吊り上げリグで取り付け
Tripodを圧力容器ヘッドに、吊り上げリグで取り付け
4番カメラ交換、Canal給水系のフラッシング
ヘッド吊り上げとレベリング開始
ヘッドの吊り位置決め
90cm吊り上げ、ヘッドブーツ挿入(#おむつと称している)
ヘッドを保管スタンドの上まで移動
Sleeveとcome-along計画実施??
ヘッドが保管スタンドに着座
パージ開始
ポーラークレーン故障、ペンダントスイッチ交換
ポーラークレーンの吊りあげリグを、ヘッドから取り外し
パージ
IIF据え付け作業の概要
(同上)
IIFに吊り上げリグ取り付け、移送開始
IIFを圧力容器上に移動
IIF着座
パージ
IIFに注水、圧力容器ヘッドフランジの上1.5mまで
パージ、作業プラットフォーム取り付け開始
IIFプラットフォームが設置位置の2.5cm上
IIFプラットフォーム着座
パージ
ヘッド取り外し後の評価
線量評価
工数と被ばく線量の予測。建屋の線量レベル。除染とヘッドの移動でどのように線量分布が変化したのかを記述。
〇ヘッド取り外しでの被ばく予測
2個のドキュメントで予測結果をとりまとめ
NUREG-0683, The Head Remove Safety Evaluation Report (SER) and the Environmental Impact Statement, 1981
予測工数は、2560人時間、平均線量191mR/h環境で。è488rem
さらに準備作業で20%追加被ばく。合計で586rem(誤差30%)
さらに、1100~11700人時間、平均線量10mR/h環境で。è11~117rem。を仮定した。
実測値はTable-2。ここでの人時間は、立ち入り準備作業も含むので、実際の建屋内作業時間はこれより短い(約60%)。
サポート活動時間も表にまとめられており、放射線管理サポート、前室、エアロック要員も含まれる。サポート要員の被ばくの大半は、放射線管理だった。一方で、人時間の大半は、下請け業者の前室とエアロック要員だった。下請け要因も緊急事態の退避方法について訓練を受けた。
〇ヘッド取り外しでの被ばく量評価
複雑な線量源(強度、配置)がある。被ばく線量低減プログラムに基づいて実施された。
線量サーベイは、短期間での効率的なひばく線量低減に有効。しかし、長期間では、線量低減のマネージメントが必要。キーワードは、作業による平均的な被ばく/人時間。表参照。
歴史的に、一般的なルーチン作業では、305フィート位置での作業が5%、347フィート位置での作業が95%であった。これらを加味することで、建屋全体作業の平均被ばく/人時間を評価することができる。
ヘッドリフト吊り上げ作業が行われた7月は、その前の半年間の月ごとの平均被ばく/人時間より若干小さい値、これは、ヘッドリフト吊り上げ作業がほぼ遮蔽された区域で行われたためである。ヘッド取り外し以降の値にもほぼ変動はなかった。
〇ヘッド取り外し、IIF設置、プラットフォーム設置での線量変化
原則、作業前後で、線量レベルに変化なし。燃料移送Canalの端と貯蔵スタンドのすぐ近くでのみ変化。全体として線量は予想を下回った。リードスクリューと上部プレナム構造物の線量が予想より小さかったため。建屋内の雰囲気線量にも影響なし。
作業を通じて、13個のγモニターで計測。大きな変動は見られていない。ヘッドが近くに来た時だけ線量増加。
教訓
参考文献
[1] P.R. Bengel, M.D. Smith, G.A. Estabrook, TMI-2 Reactor Vessel Head Removal, GEND-044, 1985.
[2] The planning Study for Reactor Vessel Head Removal, TPO/TMI-022, 1982.
[3] The Technical Plan for Reactor Disassembly and Defueling, TPO/TMI-005, 1982.
[4] Detailed Head Lift Schedule, IDS-100.
[5] Underhead Data Acquisition Program, TPO/TMI-110, 1984.
[6] Disposition of Leadscrew During Reactor Vessel Head Removal, TPO/TMI-101, 1984.