「Reactor Core Topography計画」の版間の差分

提供:debrisWiki
ナビゲーションに移動 検索に移動
3行目: 3行目:


== プローブの設計 ==
== プローブの設計 ==
 '''CTDAシステム(Core Topology Data Acquisition)'''の設計要件は以下の項目であった。
* 38mm径のCRDM(Control Rod Drive Mechanism)を撤去した配管内を通過できること
* 建屋内の作業プラットフォームから遠隔操作プローブまで同軸ケーブル一本でデータ転送できること
* プローブの姿勢制御には建屋に既設のワイヤーなどを利用すること
* 建屋内の環境に耐えること(温度、線量)
* 圧力容器内での測定中に10<sup><small>6</small></sup> R/hrの線量に耐性があること
* 圧力容器内での測定中に15-60℃の水中で使用できること
* 作業プラットフォームから12m下まで吊り降ろし作動できること
* 測定データは、横方向に40mm、範囲として12mmの解像度をもつこと
* 建屋内で作業する技術者に対し、ALARAのポリシーで被ばく量の抑制をすること
* 空洞のサイズ、形状、表面状態を測定すること(プローブが、プローブ自身の位置を確定した上で、軸方向に稼働、径方向に回転)
 この要件を満たすように、圧力容器内で位置がわかっているプローブから、パルスエコー型の指向性の超音波を照射し、反射面までの距離を測定するシステムが設計された。
 '''図1'''に、プローブの挿入図面を示す。
プローブのサイズは35mm径で全長約0.7mであり、送受信機(以下、'''transducer'''という)のうち、10個(周波数の異なる5組)はプローブの側面に送受信の角度を変えて取り付けられ、2個はプローブの下端から真下を向いている。圧力容器上部の作業プラットフォームから、'''boom'''と呼ばれる中空のアームの先端にプローブを取り付けて、CRDM配管内を通過して、上部空洞に挿入される方式であった。正確な距離の測定には、冷却水中での実効的な安息の補正が必要であり、この値は、水温、溶質濃度、浮遊粒子などに影響を受けるため、in situで実測する必要があった。そこで、波長の異なる(10MHz、2.25MHz)transducerをペアで装荷し、in situで補正を行った。
== 測定データの処理 ==
 測定データは、3段階で処理された。
=== 実測データの取得と調整 ===
 実測値(5 x 10<sup><small>5</small></sup>個の点群データ)をメインコンピューターで読み取り、エコーが反射された位置を計算した。次に、空洞を51mm巾で3軸方向(x,y,z)に輪切りして、表面位置をマッピングした。さらに、π方向で、角度2°ごとにスライスしたデータを重ね合わせた。角度方向の図は、プローブからの位置によりコンターをつけて画像化した('''図2''')。
=== 手作業による調整 ===
 4個の反射表面マップを重ね合わせ、手作業で疑信号を除去、陰になっている部分を補完した。次に、堆積状態に高さ方向のコンターをつけてマップを作成した。これをCADの入力データとした。
=== CADデータの整備とマップ作成 ===
 CADにより、空洞の床面近く、中央部、上部格子の下付近の3段階の物理モデルを作成し、マップとアクリル模型を作成した。


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==

2024年11月15日 (金) 13:52時点における版

概要

 Reactor Core Topography計画[1]では、Quick Look調査 [2]で存在が確認された上部空洞内に、超音波探査プローブを挿入し、空洞の形状やデブリ堆積物の状態を確認した。プローブの設計製作、機能確認試験、運用方法の整備、運転員の訓練、現場組み立て、測定、撤去を5か月弱で達成した。観測の結果結果、上部空洞の容積が約9.3m3(本来炉心容積の約26%)であること、燃料集合体のうち42体で燃料棒の一部がほぼ全長にわたって残留し、そのうち2体は>95%の燃料棒が無傷で残留していたが、それ以外の燃料集合体は崩落し、本来位置から失われていたこと、空洞深さは平均で1.5m、最深部で2mであること、などが明らかになった。また、上部格子に、最長で約30cmの燃料集合体上部が残留していた。軸方向出力調整棒のうち5体が、ななりの長さを残して上部格子からぶら下がっていた。空洞の床面には、破損した燃料棒や、上部端栓とスパイダーの固着物などが崩落して堆積しており、平たんではなかった。

プローブの設計

 CTDAシステム(Core Topology Data Acquisition)の設計要件は以下の項目であった。

  • 38mm径のCRDM(Control Rod Drive Mechanism)を撤去した配管内を通過できること
  • 建屋内の作業プラットフォームから遠隔操作プローブまで同軸ケーブル一本でデータ転送できること
  • プローブの姿勢制御には建屋に既設のワイヤーなどを利用すること
  • 建屋内の環境に耐えること(温度、線量)
  • 圧力容器内での測定中に106 R/hrの線量に耐性があること
  • 圧力容器内での測定中に15-60℃の水中で使用できること
  • 作業プラットフォームから12m下まで吊り降ろし作動できること
  • 測定データは、横方向に40mm、範囲として12mmの解像度をもつこと
  • 建屋内で作業する技術者に対し、ALARAのポリシーで被ばく量の抑制をすること
  • 空洞のサイズ、形状、表面状態を測定すること(プローブが、プローブ自身の位置を確定した上で、軸方向に稼働、径方向に回転)

 この要件を満たすように、圧力容器内で位置がわかっているプローブから、パルスエコー型の指向性の超音波を照射し、反射面までの距離を測定するシステムが設計された。

 図1に、プローブの挿入図面を示す。

プローブのサイズは35mm径で全長約0.7mであり、送受信機(以下、transducerという)のうち、10個(周波数の異なる5組)はプローブの側面に送受信の角度を変えて取り付けられ、2個はプローブの下端から真下を向いている。圧力容器上部の作業プラットフォームから、boomと呼ばれる中空のアームの先端にプローブを取り付けて、CRDM配管内を通過して、上部空洞に挿入される方式であった。正確な距離の測定には、冷却水中での実効的な安息の補正が必要であり、この値は、水温、溶質濃度、浮遊粒子などに影響を受けるため、in situで実測する必要があった。そこで、波長の異なる(10MHz、2.25MHz)transducerをペアで装荷し、in situで補正を行った。

測定データの処理

 測定データは、3段階で処理された。

実測データの取得と調整

 実測値(5 x 105個の点群データ)をメインコンピューターで読み取り、エコーが反射された位置を計算した。次に、空洞を51mm巾で3軸方向(x,y,z)に輪切りして、表面位置をマッピングした。さらに、π方向で、角度2°ごとにスライスしたデータを重ね合わせた。角度方向の図は、プローブからの位置によりコンターをつけて画像化した(図2)。

手作業による調整

 4個の反射表面マップを重ね合わせ、手作業で疑信号を除去、陰になっている部分を補完した。次に、堆積状態に高さ方向のコンターをつけてマップを作成した。これをCADの入力データとした。

CADデータの整備とマップ作成

 CADにより、空洞の床面近く、中央部、上部格子の下付近の3段階の物理モデルを作成し、マップとアクリル模型を作成した。

参考文献

[1] L.S. Beller and H.L. Brown, Design and Operation of the Core Topography Data Acquisition System for TMI-2, GEND-INF-012, 1984.

[2] Quick look inspection: Report on the insertion of a camera into the TMI-2 reactor vessel through a leadscrew opening, GEND-030, vol.1, 1983.