「事故進展中の炉心物質の相互反応と温度の推定」の版間の差分
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Kurata Masaki (トーク | 投稿記録) (ページの作成:「== 概要 == TMI-2の事故炉から採集されたデブリサンプルの分析結果から、事故時に発生していた炉心物質間での相互作用とそれが発生する温度が推定されている[1]。事故時のピーク温度は、炉心の損傷程度やFPふるまいの推定に重要な因子である。ピーク温度と反応メカニズムをが、サンプル中の相・組成状態や微細構造の分析結果と既報の状態図を…」) |
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TMI-2の事故炉から採集されたデブリサンプルの分析結果から、事故時に発生していた炉心物質間での相互作用とそれが発生する温度が推定されている[1]。事故時のピーク温度は、炉心の損傷程度やFPふるまいの推定に重要な因子である。ピーク温度と反応メカニズムをが、サンプル中の相・組成状態や微細構造の分析結果と既報の状態図を紐づけることで推定されている。実際に発生した炉心物質相互の反応は非常に複雑であるため、すべての反応に対応した状態図は完備されていない。そこで、起こりうる主要な反応に単純化して理解を進める必要があったと指摘されている。また、このような単純化モデルは、シビアアクシデント時のデブリふるまいモデルにおいても利用できると指摘されている。 | TMI-2の事故炉から採集されたデブリサンプルの分析結果から、事故時に発生していた炉心物質間での相互作用とそれが発生する温度が推定されている[1]。事故時のピーク温度は、炉心の損傷程度やFPふるまいの推定に重要な因子である。ピーク温度と反応メカニズムをが、サンプル中の相・組成状態や微細構造の分析結果と既報の状態図を紐づけることで推定されている。実際に発生した炉心物質相互の反応は非常に複雑であるため、すべての反応に対応した状態図は完備されていない。そこで、起こりうる主要な反応に単純化して理解を進める必要があったと指摘されている。また、このような単純化モデルは、シビアアクシデント時のデブリふるまいモデルにおいても利用できると指摘されている。 | ||
== デブリサンプル分析の概要 == | |||
(1) 炉心上部のサンプル(炉心周辺に残留していた燃料集合体の上部を切り出し) | |||
* サンプルの概要: 炉心上部(燃料棒上端、制御棒と可燃性毒物棒のスパイダー、上部スペーサーグリッド、等)('''図1''') | |||
* 主な分析結果: Inconel-718製のスペーサーグリッド、および304-SS製の上部タイプレートとエプロンに部分溶融の痕跡。燃料棒の損傷状態は、ほぼ無傷から全溶融まで分布。 | |||
* 主な推定: 炉心周辺部上端でのピーク温度>1700K。軸方向・径方向に大きな温度勾配が発生していた。 | |||
(2) 上部ルースデブリ(内部調査および上部ルースデブリ取出し時に採集)(参考:) | |||
* サンプルの概要: 炉心上部の空洞下に堆積していた上部ルースデブリを6か所からサンプリング。'''<u># 採集したサンプルは必ずしも上部ルースデブリ全体を代表しているわけではないが、分析により、上部ルースデブリで発生した高温反応を例示することができる。</u>''' | |||
* 主な分析結果: 5種類の粒子を同定。(1) 未溶融の破損UO<sub><small>2</small></sub>ペレット、(2) 破損した燃料被覆管、(3) いったん溶融していた金属粒、(4) いったん溶融していた構造材の酸化物、(5) (U,Zr)O<sub><small>2</small></sub>の溶融凝固物 | |||
* 主な推定: UO<sub><small>2</small></sub>粒子の一部に溶融凝固の痕跡⇒溶融崩落時の局所ピーク温度>3100K。 (U,Zr)O<sub><small>2</small></sub>の溶融凝固物を多く検出⇒溶融崩落時のピーク温度>2800K。上部ルースデブリの大部分で未溶融UO<sub><small>2</small></sub>残留し堆積後の再溶融の痕跡が見られない⇒堆積後の上部ルースデブリの温度は<2000K。 | |||
(3) 上部クラストから切り株燃料集合体にかけてのボーリングサンプル | |||
* ボーリングの方法: 水圧ドリル、先端にダイアモンドチップ、ボーリング先端にジャミングカラー(先端の覆いのことか?) | |||
* ボーリング孔の観察: ボーリングサンプル中の溶融凝固層はもろく、ボーリング中に80%が冷却水側に流出、また、下部に残留していた無傷の燃料棒がボーリング時に損傷。そこで、ボーリング孔にテレビカメラを挿入し、深さ方向の変化を観察。 | |||
* サンプルの概要: ボーリングを10か所実施、うち9本のボーリングサンプルを分析。'''<u># そのうち5本が溶融凝固領域を貫通していた。</u>''' | |||
* 主な分析結果(切り株燃料集合体): 炉心中央部で下から約60cm、炉心周辺で約120cmがほぼ無傷で残留。ほとんど酸化しておらず、延性を維持。炉心周辺のボーリングサンプルでは、上の方で、制御棒が一部溶融した痕跡(# この部分は冷却水水位より上にあったのでは?)。 | |||
* 主な分析結果(クラスト層): 炉心中央のボーリングサンプル5本中にクラスト層が存在(硬い物質の塊としては、合計8個)。すなわち、炉心中央の3本のボーリングサンプルでは、上下に分かれたクラスト層を検出。他の2本のボーリングでは、クラストは一体化。上部クラストと周辺クラスト中の酸化物相は、ほぼ溶融凝固層中の酸化物相と同様の物質。クラスト層中では金属相の割合が大きい。一方、下部クラストはほぼ無傷なUO<sub><small>2</small></sub>ペレットのスタックの周を、溶融金属が埋め尽くして閉塞した状態を形成。 | |||
* 主な推定: 初期に溶け落ちた金属メルト(SS, Inconelや、これらとZryの共晶溶融物)が、冷却水の水位あたりで、いったん堆積。さらに、燃料被覆管を溶融して下部クラストを形成。下部クラスト内では燃料ペレットは溶融していないことから、ピーク温度<2200Kと推定。下部クラストの上でいったん堆積したルースデブリの中心部で再溶融が発生し、デブリ溶融プールを形成。周辺との温度差により、溶融プール周囲はクラスト層で覆われた。酸化物相の分析結果から、ピーク温度は>2800K、局所的には>3100Kと推定。 | |||
(4) 下部プレナムデブリ | |||
* サンプリングの方法: バッフル板と圧力容器槽の隙間の25cm幅の円環状領域(コアフォーマ領域)を通じて、接続ジョイント付きの長尺治具(>4m)で下部プレナムデブリをつかんで回収。11個のサンプルを回収し、うち7個(1~6cmmサイズ)を分析。 | |||
* 内部調査: ボーリング孔を通過したテレビカメラによる下部プレナム調査で、炉心物質の約10-20%(最大20t)が、下部プレナムに移行したと推定。 | |||
* 主な分析結果: 溶融凝固セラミック相、金属相、混合相が存在。微細構造から、溶融凝固時に、Zr-Fe-Si-Al酸化物が結晶粒界に濃化と推定。ピーク温度は>2800K。(参考:) | |||
* 主な推定: 濃縮度分析から、下部プレナムデブリは炉心中央の燃料集合体由来と推定。酸化物は、広い温度範囲で固液混合状態を形成していたと推定され、このために圧力容器壁との接触・伝熱状態が良好でなかったと推定。 | |||
== 分析方法・材料反応の指標 == | |||
ここから、、上の参考にリンクをつける。 | |||
(1) 分析方法 | |||
(2) 材料反応の判定指標 | |||
== 参考文献 == | == 参考文献 == | ||
[1] C.S. Olsen, S.M. Jensen, and E.R. Carlson, Materials Interactions and Temperatures in the Three Mile Island Unit 2 Core, Nucl. Technol. 87 (1989) 57-94. | [1] C.S. Olsen, S.M. Jensen, and E.R. Carlson, Materials Interactions and Temperatures in the Three Mile Island Unit 2 Core, Nucl. Technol. 87 (1989) 57-94. |
2024年5月16日 (木) 17:49時点における最新版
概要
TMI-2の事故炉から採集されたデブリサンプルの分析結果から、事故時に発生していた炉心物質間での相互作用とそれが発生する温度が推定されている[1]。事故時のピーク温度は、炉心の損傷程度やFPふるまいの推定に重要な因子である。ピーク温度と反応メカニズムをが、サンプル中の相・組成状態や微細構造の分析結果と既報の状態図を紐づけることで推定されている。実際に発生した炉心物質相互の反応は非常に複雑であるため、すべての反応に対応した状態図は完備されていない。そこで、起こりうる主要な反応に単純化して理解を進める必要があったと指摘されている。また、このような単純化モデルは、シビアアクシデント時のデブリふるまいモデルにおいても利用できると指摘されている。
デブリサンプル分析の概要
(1) 炉心上部のサンプル(炉心周辺に残留していた燃料集合体の上部を切り出し)
- サンプルの概要: 炉心上部(燃料棒上端、制御棒と可燃性毒物棒のスパイダー、上部スペーサーグリッド、等)(図1)
- 主な分析結果: Inconel-718製のスペーサーグリッド、および304-SS製の上部タイプレートとエプロンに部分溶融の痕跡。燃料棒の損傷状態は、ほぼ無傷から全溶融まで分布。
- 主な推定: 炉心周辺部上端でのピーク温度>1700K。軸方向・径方向に大きな温度勾配が発生していた。
(2) 上部ルースデブリ(内部調査および上部ルースデブリ取出し時に採集)(参考:)
- サンプルの概要: 炉心上部の空洞下に堆積していた上部ルースデブリを6か所からサンプリング。# 採集したサンプルは必ずしも上部ルースデブリ全体を代表しているわけではないが、分析により、上部ルースデブリで発生した高温反応を例示することができる。
- 主な分析結果: 5種類の粒子を同定。(1) 未溶融の破損UO2ペレット、(2) 破損した燃料被覆管、(3) いったん溶融していた金属粒、(4) いったん溶融していた構造材の酸化物、(5) (U,Zr)O2の溶融凝固物
- 主な推定: UO2粒子の一部に溶融凝固の痕跡⇒溶融崩落時の局所ピーク温度>3100K。 (U,Zr)O2の溶融凝固物を多く検出⇒溶融崩落時のピーク温度>2800K。上部ルースデブリの大部分で未溶融UO2残留し堆積後の再溶融の痕跡が見られない⇒堆積後の上部ルースデブリの温度は<2000K。
(3) 上部クラストから切り株燃料集合体にかけてのボーリングサンプル
- ボーリングの方法: 水圧ドリル、先端にダイアモンドチップ、ボーリング先端にジャミングカラー(先端の覆いのことか?)
- ボーリング孔の観察: ボーリングサンプル中の溶融凝固層はもろく、ボーリング中に80%が冷却水側に流出、また、下部に残留していた無傷の燃料棒がボーリング時に損傷。そこで、ボーリング孔にテレビカメラを挿入し、深さ方向の変化を観察。
- サンプルの概要: ボーリングを10か所実施、うち9本のボーリングサンプルを分析。# そのうち5本が溶融凝固領域を貫通していた。
- 主な分析結果(切り株燃料集合体): 炉心中央部で下から約60cm、炉心周辺で約120cmがほぼ無傷で残留。ほとんど酸化しておらず、延性を維持。炉心周辺のボーリングサンプルでは、上の方で、制御棒が一部溶融した痕跡(# この部分は冷却水水位より上にあったのでは?)。
- 主な分析結果(クラスト層): 炉心中央のボーリングサンプル5本中にクラスト層が存在(硬い物質の塊としては、合計8個)。すなわち、炉心中央の3本のボーリングサンプルでは、上下に分かれたクラスト層を検出。他の2本のボーリングでは、クラストは一体化。上部クラストと周辺クラスト中の酸化物相は、ほぼ溶融凝固層中の酸化物相と同様の物質。クラスト層中では金属相の割合が大きい。一方、下部クラストはほぼ無傷なUO2ペレットのスタックの周を、溶融金属が埋め尽くして閉塞した状態を形成。
- 主な推定: 初期に溶け落ちた金属メルト(SS, Inconelや、これらとZryの共晶溶融物)が、冷却水の水位あたりで、いったん堆積。さらに、燃料被覆管を溶融して下部クラストを形成。下部クラスト内では燃料ペレットは溶融していないことから、ピーク温度<2200Kと推定。下部クラストの上でいったん堆積したルースデブリの中心部で再溶融が発生し、デブリ溶融プールを形成。周辺との温度差により、溶融プール周囲はクラスト層で覆われた。酸化物相の分析結果から、ピーク温度は>2800K、局所的には>3100Kと推定。
(4) 下部プレナムデブリ
- サンプリングの方法: バッフル板と圧力容器槽の隙間の25cm幅の円環状領域(コアフォーマ領域)を通じて、接続ジョイント付きの長尺治具(>4m)で下部プレナムデブリをつかんで回収。11個のサンプルを回収し、うち7個(1~6cmmサイズ)を分析。
- 内部調査: ボーリング孔を通過したテレビカメラによる下部プレナム調査で、炉心物質の約10-20%(最大20t)が、下部プレナムに移行したと推定。
- 主な分析結果: 溶融凝固セラミック相、金属相、混合相が存在。微細構造から、溶融凝固時に、Zr-Fe-Si-Al酸化物が結晶粒界に濃化と推定。ピーク温度は>2800K。(参考:)
- 主な推定: 濃縮度分析から、下部プレナムデブリは炉心中央の燃料集合体由来と推定。酸化物は、広い温度範囲で固液混合状態を形成していたと推定され、このために圧力容器壁との接触・伝熱状態が良好でなかったと推定。
分析方法・材料反応の指標
ここから、、上の参考にリンクをつける。
(1) 分析方法
(2) 材料反応の判定指標
参考文献
[1] C.S. Olsen, S.M. Jensen, and E.R. Carlson, Materials Interactions and Temperatures in the Three Mile Island Unit 2 Core, Nucl. Technol. 87 (1989) 57-94.