「2PEN2103-TEM-Region14」の版間の差分

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!width="200pt"|備考
!width="200pt"|備考
!width="100pt"|記載者
|-
|-
|1
|1
|2022/05/16
|2025/3/6
|新規
|新規
|2PEN2103 TEM分析結果(領域14)の登録
|TEM/EDX分析結果の掲載(出典<ref name="JAEA23a">令和3年度福島第一原子力発電所の炉内付着物サンプル等の分析,日本原子力研究開発機構,JAEA-Data/Code 2023-005.</ref>)
|IRID報告書(付録-4)の内容を転記。'''分析機関での精査を終えていない生データの段階であるため、wordファイルの原本へのリンクを作成するに留めた。'''
|旧ページは [[Gr1:2PEN2103-TEM-領域14|こちら(アクセス限定:Gr1)]]
|原稿作成:鈴木(NFD)<br>wiki転記:池内(JAEA)
|-
|2
|2022/08/25
|改訂
|図(HAADF像、EDS元素マッピング、EDS線分析、EDS点分析、電子線回折)を分析機関での精査後のバージョンに差し替えた(リンク先wordファイルを更新)。
|
|鈴木(NFD)<br>wiki転記:池内(JAEA)
|-
|3
|2023/3/23
|改訂
|本文(仮)の追記
|
|図面精査:鈴木(NFD)<br>wiki原稿(仮)作成:池内(JAEA)
|-
|4
|2023/03/29
|承認
|分析データへの掲載承認
|
|池内(JAEA)
|}
|}


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===TEM観察用試料の採取箇所及びHAADF-STEM像===
===TEM観察用試料の採取箇所及びHAADF-STEM像===
 図1に、2PEN2103着目領域14のTEM観察用試料の採取位置及び観察方向を、SEM画像上に重ねて示す。<br>
 図1に、2PEN2103着目領域14のTEM観察用試料の採取位置及び観察方向を、SEM画像上に重ねて示す。<br>
 TEM観察用試料断面のミクロ組織のHAADF-STEM像を図2に示す。当該領域を構成する粒子は、約20 μmの幅を有した不定形粒子であった。粒子の大部分は、HAADF-STEM像において明灰色を呈するほぼ均一な組織を有していた。以後、本分析結果の説明において、「均相部分」という。この均相部分の下側には、明灰色の相と暗灰色の相が微細に混ざり合った領域を形成していた。以後、本分析結果の説明において、「混相部分」という。均相部分と混相部分は複雑な形状の境界で接していることから、以後、両部分を合わせて一つの粒子と見做し、本分析結果の説明において、この粒子を「主粒子」という。<br>
 TEM観察用試料断面のミクロ組織のHAADF-STEM像を図2に示す。当該領域を構成する粒子は、約20 μmの幅を有した不定形粒子であった。粒子の大部分は、HAADF-STEM像において明灰色を呈するほぼ均一な組織を有していた。以後、本分析結果の説明において、「連続相部分」という。この連続相部分の下側には、明灰色の相と暗灰色の相が微細に混ざり合った領域を形成していた。以後、本分析結果の説明において、「混相部分」という。連続相部分と混相部分は複雑な形状の境界で接していることから、以後、両部分を合わせて一つの粒子と見做し、本分析結果の説明において、この粒子を「主粒子」という。<br>
 主粒子の下側には、大きさ数十 [nm] から数 [μm]の微粒子が密集していた。以後、本分析結果の説明において、この領域を単に「下部領域」という。
 主粒子の下側には、大きさ数十 [nm] から数 [μm]の微粒子が密集していた。以後、本分析結果の説明において、この領域を単に「主粒子下部」という。


 
<gallery mode="packed" heights=500px caption="">
<gallery mode="packed" heights=250px caption="">
Image:2PEN2103_TEM-Region14-1.jpg|'''図1 SEM画像上に示したTEM観察用試料の採取箇所及び分析・観察方向'''
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-01.jpg|図1 SEM画像上に示したTEM観察用試料の採取箇所及び分析・観察方向
Image:2PEN2103_TEM-Region14-2.jpg|'''図2 ミクロ組織のHAADF-STEM像'''
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-02.jpg|図2 ミクロ組織のHAADF-STEM像
</gallery>
</gallery>


===STEM-EDX元素マッピング===
===STEM-EDX元素マッピング===
 断面のSTEM-EDX面分析により取得した元素マップを、図3(主粒子左側)及び図4(主粒子右側)に示す。試料由来として検出された元素の分布には、概ね以下の傾向が認められた。
 断面のSTEM-EDX面分析により取得した元素マップを、図3(主粒子左側)及び図4(主粒子右側)に示す。<br/>
*主粒子の均相部分では、U及びZrが同位置に検出された。ただし、Zr濃度がやや高い箇所が認められた。
 試料由来として検出された元素の分布には、概ね以下の傾向が認められた。
*主粒子の混相部分では、U及びZrを含む部分と、Cr及びFeを含む部分が混合していた。
*主粒子の連続相部分では、U及びZrが同位置に検出された。ただし、連続相部分と混相部分の境界近傍において、Zr濃度が若干高い箇所が認められた。
*下部領域では、大部分をFeが占めていたが、その一部においてMg、Al、Si、S、Ca、Ti、Ni、Pbのスポットが認められた。
*主粒子の混相部分では、U及びZrを含む部分と、Cr及びFeを含む部分が混在していた。
*主粒子下部では、大部分をFeが占めていたが、その一部においてMg、Al、Si、S、Ca、Ti、Ni、Pbのスポットが認められた。
*酸素(O)は、断面全体に分布していた。
*酸素(O)は、断面全体に分布していた。


<gallery mode="packed" heights=300px caption="図3 STEM-EDXマップ(主粒子左側)">
<gallery mode="packed" heights=300px>
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-03-1.jpg|
Image:2PEN2103 TEM-Region14-3-1.jpg
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-03-2.jpg|
Image:2PEN2103 TEM-Region14-3-2.jpg
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-03-3.jpg|
Image:2PEN2103 TEM-Region14-3-3.jpg
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-03-4.jpg|
Image:2PEN2103 TEM-Region14-3-4.jpg
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-03-5.jpg|
Image:2PEN2103 TEM-Region14-3-5.jpg
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-03-6.jpg|
Image:2PEN2103 TEM-Region14-3-6.jpg
</gallery>
</gallery>
<p style="text-align:center">
'''図3 STEM-EDXマップ(主粒子左側)'''
</p>
(注)※は主な輝点がすべて他の元素や試料外からの偽信号であることを示す。<br>
(注)※は主な輝点がすべて他の元素や試料外からの偽信号であることを示す。<br>
   黄色破線は当該元素が存在する位置を示す。
   黄色破線は当該元素が存在する位置を示す。


<gallery mode="packed" heights=300px caption="図4 STEM-EDXマップ(主粒子右側)">
'''SEI''':明視野像/
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-04-1.jpg|
'''C'''(スミア繊維)(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-04-2.jpg|
'''O'''(Crの影響が含まれる)/
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-04-3.jpg|
'''(Na※)'''(高輝度部分はU,W,Gaの影響)/
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-04-4.jpg|
'''(Mg※)'''(高輝度部分はU,Wの影響)/
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-04-5.jpg|
'''Al'''(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-04-6.jpg|
'''Si'''(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/
'''S'''(U,Pbと重複する部分はそれらの影響)/
'''(Cl※)'''(高輝度部分はU,Wの影響)/
'''Ca'''(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/
'''(Ti※)'''(高輝度部分はU,Wの影響)/
'''Cr'''/
'''(Mn※)'''(高輝度部分はU,W,Crの影響)/
'''Fe'''/
'''Ni'''(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/
'''(Cu※)'''(高輝度部分はU,Wの影響)/
'''(Zn※)'''(高輝度部分はU,Wの影響)/
'''(Se※)'''(高輝度部分はU,Wの影響)/
'''Zr'''/
'''(Mo※)'''(高輝度部分はUの影響)/
'''(Tc※)'''(高輝度部分はU,W,S,Pbの影響)/
'''(Ru※)'''(高輝度部分はU,Wの影響)/
'''(Rh※)'''(高輝度部分はU,Wの影響)/
'''(Pd※)'''(高輝度部分はU,Wの影響)/
'''(Ag※)'''(高輝度部分はU,Wの影響)/
'''(Cd※)'''(高輝度部分はUの影響)/
'''(Sn※)'''(高輝度部分はUの影響)/
'''(Sb※)'''(高輝度部分はU,W,Caの影響)/
'''(Te※)'''(高輝度部分はU,W,Caの影響)/
'''(I※)'''(高輝度部分はU,W,Caの影響)/
'''(Cs※)'''(高輝度部分はU,Wの影響)/
'''(Ba※)'''(高輝度部分はU,Wの影響)/
'''(Sm※)'''(高輝度部分はU,W,Crの影響)/
'''W'''(観察片作製用W保護膜)(Uと重複する部分はその影響)/
'''Pb'''(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/
'''U'''
 
<gallery mode="packed" heights=300px>
Image:2PEN2103 TEM-Region14-4-1.jpg|
Image:2PEN2103 TEM-Region14-4-2.jpg|
Image:2PEN2103 TEM-Region14-4-3.jpg|
Image:2PEN2103 TEM-Region14-4-4.jpg|
Image:2PEN2103 TEM-Region14-4-5.jpg|
Image:2PEN2103 TEM-Region14-4-6.jpg|
</gallery>
</gallery>
<p style="text-align:center">
'''図4 STEM-EDXマップ(主粒子右側)'''
</p>
(注)※は主な輝点がすべて他の元素や試料外からの偽信号であることを示す。<br>
(注)※は主な輝点がすべて他の元素や試料外からの偽信号であることを示す。<br>
   黄色破線は当該元素が存在する位置を示す。
   黄色破線は当該元素が存在する位置を示す。
'''SEI''':明視野像/
'''C'''(スミア繊維)(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/
'''O'''(Crの影響が含まれる)/
'''(Na※)'''(高輝度部分はU,Wの影響)/
'''Mg'''(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/
'''Al'''(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/
'''Si'''(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/
'''S'''(U,W,Pbと重複する部分はそれらの影響)/
'''(Cl※)'''(高輝度部分はU,Wの影響)/
'''Ca'''(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/
'''Ti'''(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/
'''Cr'''/
'''(Mn※)'''(高輝度部分はCrの影響)/
'''Fe'''/
'''Ni'''(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/
'''(Cu※)'''(高輝度部分はU,Wの影響)/
'''(Zn※)'''(高輝度部分はU,Wの影響)/
'''(Se※)'''(高輝度部分はU,W,Mg,Alの影響)/
'''Zr'''/
'''(Mo※)'''(高輝度部分はU,Wの影響)/
'''(Tc※)'''(高輝度部分はU,W,Pb,Sの影響)/
'''(Ru※)'''(高輝度部分はU,Wの影響)/
'''(Rh※)'''(高輝度部分はU,Wの影響)/
'''(Pd※)'''(高輝度部分はU,Wの影響)/
'''(Ag※)'''(高輝度部分はU,Wの影響)/
'''(Cd※)'''(高輝度部分はUの影響)/
'''(Sn※)'''(高輝度部分はU,Kの影響)/
'''(Sb※)'''(高輝度部分はU,Caの影響)/
'''(Te※)'''(高輝度部分はU,W,Caの影響)/
'''(I※)'''(高輝度部分はU,W,Caの影響)/
'''(Cs※)'''(高輝度部分はU,Wの影響)/
'''(Ba※)'''(高輝度部分はU,W,Tiの影響)/
'''(Sm※)'''(高輝度部分はCrの影響)/
'''W'''(観察片作製用W保護膜)(Uと重複する部分はUの影響)/
'''Pb'''(高輝度部分はU,Wの影響)/
'''U'''


===STEM-EDX線分析データ===
===STEM-EDX線分析データ===
 主粒子の均相部分と混相部分、及び下部領域を横切る位置でSTEM-EDXによる線分析を実施した。線分析の位置及び線分析データを図5に示す。
 主粒子の連続相部分と混相部分、及び主粒子下部を横切る位置でSTEM-EDXによる線分析を実施した。線分析の位置及び測定対象元素(U、Zr、Fe、Cr、O)の線分析データを図5に示す。<br/>
 主粒子の均相部分の位置(左端からの距離が約0.8 μmから約5.8 μmの箇所)では、U及びZrのカウント数は概ね一定であった。主粒子の混相部分の位置(左端からの距離が約5.8 μmから約8.2 μmの箇所)では、Fe及びCrのカウント数が増加する位置と、U及びZrのカウント数が増加する位置が、相補的に出現した。下部領域(左端からの距離が約8.2 μm以上の箇所)では、微粒子の位置において、Feのカウント数が他の元素よりも高い傾向が認められた。
 主粒子の連続相部分の位置(左端からの距離が約0.8 μmから約5.8 μmの箇所)では、主粒子上では、線分析箇所の左から右にかけてUとZrのカウント数の緩やかな増加(膜厚変化による)が認められたものの、UとZrとのカウント比は概ね一定であった。主粒子の混相部分の位置(左端からの距離が約5.8 μmから約8.2 μmの箇所)では、Fe及びCrのカウント数が増加する位置と、U及びZrのカウント数が増加する位置が、相補的に出現した。主粒子下部(左端からの距離が約8.2 μm以上の箇所)では、微粒子が存在する位置において、測定対象元素の中でも特にFe及びOのカウント数の増加が認められた。


<gallery mode="packed" heights=600px caption="図5 STEM-EDX線分析データ">
<gallery mode="packed" heights=700px>
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-05.jpg|
Image:2PEN2103_TEM-Region14-5.jpg|'''図5 STEM-EDX線分析データ'''
</gallery>
</gallery>


==各相組成の半定量分析結果==
==各相組成の半定量分析結果==
===点分析位置===
===点分析位置===
 元素分布の情報をもとに、STEM-EDX点分析の位置を、図6~7に示す通り計11箇所設定した。主粒子の均相部分から3箇所(位置①~③)、主粒子の混相部分のうちUとZrが多い箇所から1箇所(位置④)、同じく混相部分のうちFeとCrが多い箇所から2箇所(位置⑤⑥)、下部領域のうちFeの多い粒子とその周辺から3箇所(位置⑧~⑩)、同じく下部領域のうち特徴元素としてSi(位置⑦)及びCa(位置⑪)を含む箇所を1箇所ずつ設定した。
 元素分布の情報をもとに、STEM-EDX点分析の位置として、図6に示す通り計11箇所設定した。主粒子の連続相部分から3箇所(位置①~③)、主粒子の混相部分のうちUとZrが多い箇所から1箇所(位置④)、同じく混相部分のうちFeとCrが多い箇所から2箇所(位置⑤⑥)、主粒子下部のうちFeの多い粒子とその周辺から3箇所(位置⑧~⑩)、同じく下部領域のうち特徴元素としてSi(位置⑦)及びCa(位置⑪)を含む箇所を1箇所ずつ設定した。
<gallery mode="packed" heights=200px caption="図6 STEM-EDX点分析位置及び半定量取得データ">
 
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-06-0.jpg|点分析位置 位置①~⑪
<gallery mode="packed" heights=300px>
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-06-1.jpg|点分析位置(拡大図) 位置①~④
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-06-0.jpg|点分析位置 位置①~⑪
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-06-2.jpg|点分析位置(拡大図) 位置⑤~⑥
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-06-1.jpg|点分析位置(拡大図) 位置①~④
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-07-1.jpg|点分析位置(拡大図) 位置⑦
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-06-2.jpg|点分析位置(拡大図) 位置⑤~⑥
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-07-2.jpg|点分析位置(拡大図) 位置⑧
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-07-1.jpg|点分析位置(拡大図) 位置⑦
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-07-3.jpg|点分析位置(拡大図) 位置⑨~⑩
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-07-2.jpg|点分析位置(拡大図) 位置⑧
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-07-4.jpg|点分析位置(拡大図) 位置⑪
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-07-3.jpg|点分析位置(拡大図) 位置⑨~⑩
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-06-3.jpg|半定量取得データ
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-07-4.jpg|点分析位置(拡大図) 位置⑪
</gallery>
</gallery>
<p style="text-align:center">
'''図6 STEM-EDX点分析位置及び半定量取得データ'''
</p>


===各測定点での同定元素===
===各測定点での同定元素===
 各位置(①~⑪)での点分析で取得したスペクトルを図8~18に示す。ソフトウェアの解析により出力された半定量取得データは、図6~7に示す。各点分析位置において試料由来のピークとして検出された元素は、以下の通りである。
 各位置(①~⑪)での点分析で取得したスペクトルを図8に示す。ソフトウェアの解析により出力された一次データを表1に示す。各点分析位置において試料由来のピークとして検出された元素は、以下の通りである。
*位置①~③では、O、Cr、Zr、及びUのピークが検出された。
*位置①では、O、Cr、Zr、及びUのピークが検出された。
*位置②では、O、Cr、Zr、及びUのピークが検出された。
*位置③では、O、Cr、Zr、及びUのピークが検出された。
*位置④では、O、Cr、Fe、Zr、及びUのピークが検出された。
*位置④では、O、Cr、Fe、Zr、及びUのピークが検出された。
*位置⑤では、O、Cr、Fe、及びごく小さい強度のMg、Zrのピークが検出された。
*位置⑤では、O、Cr、Fe、及びごく小さい強度のMgのピークが検出された。Zrのピークもわずかな強度で認められた。
*位置⑥では、O、Cr、Fe、、及びごく小さい強度のZrのピークが検出された。
*位置⑥では、O、Cr、Fe、及びごく小さい強度のZrのピークが検出された。
*位置⑦では、O、Mg、Al、Si、K、Fe、及びごく小さい強度のTiのピークが検出された。
*位置⑦では、O、Mg、Al、Si、K、Fe、及びごく小さい強度のTiのピークが検出された。
*位置⑧では、O、Fe、及びごく小さい強度のNiのピークが検出された。
*位置⑧では、O、Fe、及びごく小さい強度のNiのピークが検出された。
*位置⑨では、O、Fe、Ni、及びごく小さい強度のSi、Mnのピークが検出された。
*位置⑨では、O、Fe、Ni、及びごく小さい強度のSiのピークが検出された。Mnのピークもわずかな強度で認められた。
*位置⑩では、O、S、Ca、Fe、及びごく小さい強度のSiのピークが検出された。
*位置⑩では、O、S、Ca、Fe、及びごく小さい強度のSiのピークが検出された。
*位置⑪では、O、Ca、Fe、及びごく小さい強度のZr、Uのピークが検出された。
*位置⑪では、O、Ca、Cr、及びFeのピークが検出された。U及びZrのピークもわずかな強度で認められた。


<gallery mode="packed" heights=200px caption="図7~16 STEM-EDX点分析スペクトル">
<gallery mode="packed" heights=300px>
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-08(位置1).jpg|位置①
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-08(位置1).jpg|位置①<br/>矢印:定量に用いたピーク<br/>括弧で示した元素:分析系材料や保護膜材として使用されている元素等(Cu:メッシュ材、Fe, Co:計測システム構成材料、C:加工時蒸着元素)からのEDX信号
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-09(位置2).jpg|位置②
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-09(位置2).jpg|位置②<br/>矢印:定量に用いたピーク<br/>括弧で示した元素:分析系材料や保護膜材として使用されている元素等(Cu:メッシュ材、Fe, Co:計測システム構成材料、C:加工時蒸着元素)からのEDX信号
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-10(位置3).jpg|位置③
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-10(位置3).jpg|位置③<br/>矢印:定量に用いたピーク<br/>括弧で示した元素:分析系材料や保護膜材として使用されている元素等(Cu:メッシュ材、Fe, Co:計測システム構成材料、C:加工時蒸着元素)からのEDX信号
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-11(位置4).jpg|位置④
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-11(位置4).jpg|位置④<br/>矢印:定量に用いたピーク<br/>括弧で示した元素:分析系材料や保護膜材として使用されている元素等(Cu:メッシュ材、C:加工時蒸着元素)からのEDX信号
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-12(位置5).jpg|位置⑤
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-12(位置5).jpg|位置⑤<br/>矢印:定量に用いたピーク<br/>括弧で示した元素:分析系材料や保護膜材として使用されている元素等(Cu:メッシュ材、C:加工時蒸着元素)からのEDX信号
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-13(位置6).jpg|位置⑥
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-13(位置6).jpg|位置⑥<br/>矢印:定量に用いたピーク<br/>括弧で示した元素:分析系材料や保護膜材として使用されている元素等(Cu:メッシュ材、C:加工時蒸着元素)からのEDX信号
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-14(位置7).jpg|位置⑦
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-14(位置7).jpg|位置⑦<br/>矢印:定量に用いたピーク<br/>括弧で示した元素:分析系材料や保護膜材として使用されている元素等(Cu:メッシュ材)からのEDX信号
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-15(位置8).jpg|位置⑧
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-15(位置8).jpg|位置⑧<br/>矢印:定量に用いたピーク<br/>括弧で示した元素:分析系材料や保護膜材として使用されている元素等(Cu:メッシュ材)からのEDX信号
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-16(位置9).jpg|位置⑨
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-16(位置9).jpg|位置⑨<br/>矢印:定量に用いたピーク<br/>括弧で示した元素:分析系材料や保護膜材として使用されている元素等(Cu:メッシュ材、C:加工時蒸着元素)からのEDX信号
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-17(位置10).jpg|位置⑩
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-17(位置10).jpg|位置⑩<br/>矢印:定量に用いたピーク<br/>括弧で示した元素:分析系材料や保護膜材として使用されている元素等(Cu:メッシュ材、C:加工時蒸着元素)からのEDX信号
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-18(位置11).jpg|位置⑩
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-18(位置11).jpg|位置⑪<br/>矢印:定量に用いたピーク<br/>括弧で示した元素:分析系材料や保護膜材として使用されている元素等(Cu:メッシュ材、C:加工時蒸着元素)からのEDX信号
</gallery>
</gallery>
<p style="text-align:center">
'''図8 STEM-EDX点分析スペクトル'''
</p>


{| class="wikitable"| style="margin:0 auto"
{| class="wikitable"| style="margin:0 auto"
449行目: 515行目:


===各測定点での半定量分析結果===
===各測定点での半定量分析結果===
 半定量取得データから、試料由来のピークとして同定された元素の合計を100 at%として再計算した結果を半定量分析結果として、点分析位置とともに以下に示す。
 一次データから、試料由来のピークとして同定された元素の合計を100 at%として再計算した結果を半定量分析結果として、点分析位置とともに表2に示す。なお、測定位置によっては主要な存在元素が異なる別の相や粒子が近接する箇所(位置④⑤⑥⑩⑪)があり、これらの測定位置では周辺の隣接粒子や隣接相に含まれる元素からの信号を検出している可能性がある。半定量分析結果のうち、このような周辺の隣接粒子や隣接相からの寄与を含む可能性のある元素については、半定量値に “*” を付して示した。


<gallery mode="packed" heights=200px caption="">
{| class="wikitable"| style="margin:0 auto"
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-06-4.jpg|半定量分析結果(位置①~⑥)
|+表2 半定量分析結果
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-07-6.jpg|半定量分析結果(位置⑦~⑪)
! 位置
</gallery>
! O
! Na
! Mg
! Al
! Si
! S
! K
! Ca
! Ti
! Cr
! Mn
! Fe
! Ni
! Zn
! Zr
! Mo
! Ru
! Sn
! Sb
! Te
! Cs
! Ba
! Pb
! U
|-
| ①
| 77
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| /
| n.d.
| n.d.
| 1
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| 8
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| 14
|-
| ②
| 77
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| /
| n.d.
| n.d.
| 1
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| 8
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| 14
|-
| ③
| 77
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| /
| n.d.
| n.d.
| 1
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| 8
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| 14
|-
| ④
| 77
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| /
| n.d.
| n.d.
| 1*
| n.d.
| 5*
| n.d.
| n.d.
| 7
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| 10
|-
| ⑤
| 60
| n.d.
| 1
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| /
| n.d.
| n.d.
| 28
| n.d.
| 11
| n.d.
| n.d.
| L.O.Q*
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
|-
| ⑥
| 62
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| /
| n.d.
| n.d.
| 27
| n.d.
| 10
| n.d.
| n.d.
| 1*
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
|-
| ⑦
| 66
| n.d.
| 3
| 4
| 19
| n.d.
| 2
| n.d.
| 1
| n.d.
| n.d.
| 5
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
|-
| ⑧
| 60
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| /
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| 39
| 1
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
|-
| ⑨
| 57
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| 1
| n.d.
| /
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| L.O.Q
| 38
| 4
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
|-
| ⑩
| 51
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| 1
| 6
| /
| 8
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| 34*
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
|-
| ⑪
| 65
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| /
| 32
| n.d.
| L.O.Q
| n.d.
| 3*
| n.d.
| n.d.
| L.O.Q
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| L.O.Q
|-
|}
<p style="text-align:center">
(注意事項) <br/>
・ “n.d.”は、EDX信号のエネルギースペクトルにピークが確認されず、検出限界以下と判断した元素である。<br/>
・ “L.O.Q”.は、スペクトルにピークが確認できるものの、本表に示す元素を100%とした場合に0.5at%未満となり、定量下限以下と判断した元素である。<br/>
・ 本表の数値は、“n.d.”及び“L.O.Q.”を除いた半定量性を持つデータを示していると判断した元素を100%として規格化して表示した。<br/>
・ “ * ” を付した数値は、周辺の隣接相や隣接粒子からの影響を含む可能性がある。
</p>


==TEM回折図形の取得と構造解析及び主要化学組成の推定結果==
==TEM回折図形の取得と構造解析及び主要化学組成の推定結果==
 電子線回折の測定位置、各位置で取得した回折図形、及び結晶構造の同定結果を図19に示す。さらに、同位置または近傍のEDX点分析での半定量分析結果を参照しつつ、結晶構造を含めた主要化学組成を推定した結果を同図に示す。<br>
 電子線回折の測定位置を図9に、各位置で取得した回折図形を図10に、結晶構造の同定結果を表3に示す。さらに、同位置または近傍のEDX点分析での半定量分析結果を参照しつつ、結晶構造を含めた主要化学組成を推定した結果を同図に示す。<br/>
 主粒子の均相部分である位置⑫では、構造解析の結果c-UO<sub>2</sub>のパターンと一致しており、近傍のEDX点分析(位置①~③)においてUと同程度の濃度でZrが含まれていたことから、当該箇所はc-(U,Zr)O<sub>2</sub>と推定された。<br>
 主粒子の連続相部分である位置⑫では、構造解析の結果c-UO<sub>2</sub>のパターンと一致しており、近傍のEDX点分析(位置①~③)においてUと同程度の濃度でZrが含まれていたことから、当該箇所はc-(U, Zr)O<sub>2</sub>と推定された。<br/>
 主粒子の混相部分である位置⑬では、構造解析の結果c-FeCr<sub>2</sub>O<sub>4</sub>のパターンと一致しており、近傍(位置⑤)のEDX点分析におけるCr/Fe原子比(約2~3)とも整合していることから、当該箇所はc-FeCr<sub>2</sub>O<sub>4</sub>と推定された。<br>
 主粒子の混相部分である位置⑬では、構造解析の結果c-FeO<sub>3</sub>O<sub>4</sub>のパターンと一致しており、近傍(位置⑤)のEDX点分析におけるCr/Fe原子比が約2~3の範囲にあったことから、当該箇所はc-FeCr2O4と推定された。<br/>
 下部領域に密集する微粒子のひとつである位置⑭では、構造解析の結果c-Fe<sub>3</sub>O<sub>4</sub>のパターンと一致した。近傍(位置⑧)のEDX点分析では主要元素としてO及びFeが認められたことから、当該箇所はc-Fe<sub>3</sub>O<sub>4</sub>と推定された。<br>
 主粒子下部に密集する微粒子のひとつである位置⑭では、構造解析の結果c-FeO<sub>3</sub>O<sub>4</sub>のパターンと一致した。近傍(位置⑧)のEDX点分析では主要元素としてO及びFeが認められたことから、当該箇所はc-FeO<sub>3</sub>O<sub>4</sub>と推定された。<br/>
 下部領域に密集する微粒子のひとつである位置⑮では、構造解析において該当する結晶構造を特定できなかった。近傍(位置⑦)のEDX点分析では主要元素としてO、Si及びFeが認められたことから、SiO<sub>2</sub>とFe<sub>3</sub>O<sub>4</sub>の混合物、またはSi-Fe-O系の酸化物であることが推定された。<br>
 下部領域に密集する微粒子のひとつである位置⑮では、構造解析において回折図形に合致する標準化合物が無く、結晶構造の同定には至らなかった。このため、EDXの結果のみから推定した。近傍(位置⑦)のEDX点分析では主要元素としてO、Si及びFeが認められたことから、SiOO<sub>2</sub>とFeO<sub>3</sub>O<sub>4</sub>の混合物、またはSi-Fe-O系の酸化物と推定した。<br/>
 下部領域に密集する微粒子のひとつである位置⑯では、構造解析において該当する結晶構造を特定できなかった。近傍(位置⑪)のEDX点分析では主要元素としてO及びCaが認められ、また、OとCaとの原子比(約2)がCaOを想定した場合(1)よりも高いことから、Ca(OH)<sub>2</sub>またはCaCO<sub>3</sub>と推定された。
 下部領域に密集する微粒子のひとつである位置⑯では、構造解析において該当する回折図形に合致する標準化合物が無く、結晶構造の同定には至らなかった。このため、EDXの結果のみから推定した。近傍(位置⑪)のEDX点分析では主要元素としてO及びCaが認められ、また、OとCaとの原子比(約2)がCaOを想定した場合(1)よりも高いことから、Ca(OH)<sub>2</sub>またはCaCO<sub>3</sub>と推定した。


<gallery mode="packed" heights=400px>
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-19-1.jpg|TEM回折図形取得位置 位置⑫~⑭
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-19-2.jpg|TEM回折図形取得位置 位置⑮~⑯
</gallery>
<p style="text-align:center">
'''図9 電子線回折の測定位置'''
</p>


<gallery mode="packed" heights=200px caption="図19 TEM回折図形及び主要化学組成の推定結果">
<gallery mode="packed" heights=400px>
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-19-1.jpg|TEM回折図形取得位置 位置⑫~⑭
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-19-3.jpg
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-19-2.jpg|TEM回折図形取得位置 位置⑮~⑯
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-19-3.jpg|TEM回折図形
</gallery>
<gallery mode="packed" heights=200px caption="TEM構造解析結果及び主要化学組成の推定結果">
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域14-19-4.jpg|
</gallery>
</gallery>
<p style="text-align:center">
'''図10 TEM回折図形'''
</p>
{| class="wikitable"| style="margin:0 auto"
|+表3 TEM構造解析結果及び主要化学組成の推定結果
|-
!位置
!TEM構造解析結果
!TEM構造解析所見※2
!EDX結果を含めた主要化学組成の推定
|-
|⑫
|c-UO<sub>2</sub>
|方位[<math>101</math>],[<math>31\bar{2}</math>],[<math>03 \bar{1}</math>]
|c-(U,Zr)O<sub>2</sub>(①②③※1)
|-
|⑬
|c-FeCr<sub>2</sub>O<sub>4</sub>
|方位[<math>10\bar{1}</math>],[<math>11\bar{2}</math>]
|c-FeCr<sub>2</sub>O<sub>4</sub>(⑤※1)
|-
|⑭
|c-Fe<sub>3</sub>O<sub>4</sub>
|方位[<math>011</math>],[<math>\bar{1}41</math>]
|c-Fe<sub>3</sub>O<sub>4</sub>(⑧※1)
|-
|⑮
|不明
|ー
|SiO<sub>2</sub>及びFe<sub>3</sub>O<sub>4</sub>/Si-Fe-O(⑦※1)
|-
|⑯
|不明
|ー
|Ca(OH)<sub>2</sub>/CaCO<sub>3</sub>(⑪※1)
|}
<p style="text-align:center">
(注)※1 参考としたEDX点分析位置<br/>
※2 方位の並び順は回折図形の並び順に同じ
</p>


 2PEN2103領域14は、組成がほぼ一様で約20 μmの大きなc-(U,Zr)O<sub>2</sub>粒子であった。その一面にはFeとCrをまだらに含んだ層が密着するように接しており、その一部においてFe<sub>3</sub>O<sub>4</sub>が同定された。また、粒子の周囲では、FeCr<sub>2</sub>O<sub>4</sub>相が存在することが同定された。c-(U,Zr)O<sub>2</sub>粒子とFeとCrをまだらに含んだ層の密着面は複雑な構造をしており、冷却時の相分離により形成された可能性が考えられる。
==分析結果のまとめ==
 2PEN2103領域14で観察されたU含有粒子は、約20 μmの幅を持つ不定形粒子(主粒子)であった。主粒子の大部分(連続相部分)はc-(U,Zr)O<sub>2</sub>相(U : Zrの原子比が約6 : 4)であり、その一部で若干Zr濃度の高い領域が認められた。主粒子の一部(混相部分)では、Cr及びFeを含む部分がU及びZrを含む部分と混在し、連続相部分と密着するように接していた。その一部においてc- FeCr<sub>2</sub>O<sub>4</sub>が同定された。また、粒子の周囲(主粒子下部)では、大きさ数十 [nm] から数 [μm]の微粒子が密集しており、その中にc-Fe<sub>3</sub>O<sub>4</sub>、Si-Feの酸化物、Caの化合物(水酸化物または炭酸塩と推定)が存在した。




----
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[[メディア:21NFD図-TEM(2PEN2103-R14).docx|図データ]]
[[メディア:Gr1:21NFD図-TEM(2PEN2103-R14).docx|図データ]]
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2025年3月6日 (木) 15:08時点における最新版

更新履歴
No 日付 分類 内容 備考
1 2025/3/6 新規 TEM/EDX分析結果の掲載(出典[1] 旧ページは こちら(アクセス限定:Gr1)

断面の微細構造及び元素分布

TEM観察用試料の採取箇所及びHAADF-STEM像

 図1に、2PEN2103着目領域14のTEM観察用試料の採取位置及び観察方向を、SEM画像上に重ねて示す。
 TEM観察用試料断面のミクロ組織のHAADF-STEM像を図2に示す。当該領域を構成する粒子は、約20 μmの幅を有した不定形粒子であった。粒子の大部分は、HAADF-STEM像において明灰色を呈するほぼ均一な組織を有していた。以後、本分析結果の説明において、「連続相部分」という。この連続相部分の下側には、明灰色の相と暗灰色の相が微細に混ざり合った領域を形成していた。以後、本分析結果の説明において、「混相部分」という。連続相部分と混相部分は複雑な形状の境界で接していることから、以後、両部分を合わせて一つの粒子と見做し、本分析結果の説明において、この粒子を「主粒子」という。
 主粒子の下側には、大きさ数十 [nm] から数 [μm]の微粒子が密集していた。以後、本分析結果の説明において、この領域を単に「主粒子下部」という。

STEM-EDX元素マッピング

 断面のSTEM-EDX面分析により取得した元素マップを、図3(主粒子左側)及び図4(主粒子右側)に示す。
 試料由来として検出された元素の分布には、概ね以下の傾向が認められた。

  • 主粒子の連続相部分では、U及びZrが同位置に検出された。ただし、連続相部分と混相部分の境界近傍において、Zr濃度が若干高い箇所が認められた。
  • 主粒子の混相部分では、U及びZrを含む部分と、Cr及びFeを含む部分が混在していた。
  • 主粒子下部では、大部分をFeが占めていたが、その一部においてMg、Al、Si、S、Ca、Ti、Ni、Pbのスポットが認められた。
  • 酸素(O)は、断面全体に分布していた。

図3 STEM-EDXマップ(主粒子左側)

(注)※は主な輝点がすべて他の元素や試料外からの偽信号であることを示す。
   黄色破線は当該元素が存在する位置を示す。

SEI:明視野像/ C(スミア繊維)(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/ O(Crの影響が含まれる)/ (Na※)(高輝度部分はU,W,Gaの影響)/ (Mg※)(高輝度部分はU,Wの影響)/ Al(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/ Si(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/ S(U,Pbと重複する部分はそれらの影響)/ (Cl※)(高輝度部分はU,Wの影響)/ Ca(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/ (Ti※)(高輝度部分はU,Wの影響)/ Cr(Mn※)(高輝度部分はU,W,Crの影響)/ FeNi(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/ (Cu※)(高輝度部分はU,Wの影響)/ (Zn※)(高輝度部分はU,Wの影響)/ (Se※)(高輝度部分はU,Wの影響)/ Zr(Mo※)(高輝度部分はUの影響)/ (Tc※)(高輝度部分はU,W,S,Pbの影響)/ (Ru※)(高輝度部分はU,Wの影響)/ (Rh※)(高輝度部分はU,Wの影響)/ (Pd※)(高輝度部分はU,Wの影響)/ (Ag※)(高輝度部分はU,Wの影響)/ (Cd※)(高輝度部分はUの影響)/ (Sn※)(高輝度部分はUの影響)/ (Sb※)(高輝度部分はU,W,Caの影響)/ (Te※)(高輝度部分はU,W,Caの影響)/ (I※)(高輝度部分はU,W,Caの影響)/ (Cs※)(高輝度部分はU,Wの影響)/ (Ba※)(高輝度部分はU,Wの影響)/ (Sm※)(高輝度部分はU,W,Crの影響)/ W(観察片作製用W保護膜)(Uと重複する部分はその影響)/ Pb(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/ U

図4 STEM-EDXマップ(主粒子右側)

(注)※は主な輝点がすべて他の元素や試料外からの偽信号であることを示す。
   黄色破線は当該元素が存在する位置を示す。

SEI:明視野像/ C(スミア繊維)(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/ O(Crの影響が含まれる)/ (Na※)(高輝度部分はU,Wの影響)/ Mg(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/ Al(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/ Si(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/ S(U,W,Pbと重複する部分はそれらの影響)/ (Cl※)(高輝度部分はU,Wの影響)/ Ca(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/ Ti(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/ Cr(Mn※)(高輝度部分はCrの影響)/ FeNi(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/ (Cu※)(高輝度部分はU,Wの影響)/ (Zn※)(高輝度部分はU,Wの影響)/ (Se※)(高輝度部分はU,W,Mg,Alの影響)/ Zr(Mo※)(高輝度部分はU,Wの影響)/ (Tc※)(高輝度部分はU,W,Pb,Sの影響)/ (Ru※)(高輝度部分はU,Wの影響)/ (Rh※)(高輝度部分はU,Wの影響)/ (Pd※)(高輝度部分はU,Wの影響)/ (Ag※)(高輝度部分はU,Wの影響)/ (Cd※)(高輝度部分はUの影響)/ (Sn※)(高輝度部分はU,Kの影響)/ (Sb※)(高輝度部分はU,Caの影響)/ (Te※)(高輝度部分はU,W,Caの影響)/ (I※)(高輝度部分はU,W,Caの影響)/ (Cs※)(高輝度部分はU,Wの影響)/ (Ba※)(高輝度部分はU,W,Tiの影響)/ (Sm※)(高輝度部分はCrの影響)/ W(観察片作製用W保護膜)(Uと重複する部分はUの影響)/ Pb(高輝度部分はU,Wの影響)/ U

STEM-EDX線分析データ

 主粒子の連続相部分と混相部分、及び主粒子下部を横切る位置でSTEM-EDXによる線分析を実施した。線分析の位置及び測定対象元素(U、Zr、Fe、Cr、O)の線分析データを図5に示す。
 主粒子の連続相部分の位置(左端からの距離が約0.8 μmから約5.8 μmの箇所)では、主粒子上では、線分析箇所の左から右にかけてUとZrのカウント数の緩やかな増加(膜厚変化による)が認められたものの、UとZrとのカウント比は概ね一定であった。主粒子の混相部分の位置(左端からの距離が約5.8 μmから約8.2 μmの箇所)では、Fe及びCrのカウント数が増加する位置と、U及びZrのカウント数が増加する位置が、相補的に出現した。主粒子下部(左端からの距離が約8.2 μm以上の箇所)では、微粒子が存在する位置において、測定対象元素の中でも特にFe及びOのカウント数の増加が認められた。

各相組成の半定量分析結果

点分析位置

 元素分布の情報をもとに、STEM-EDX点分析の位置として、図6に示す通り計11箇所設定した。主粒子の連続相部分から3箇所(位置①~③)、主粒子の混相部分のうちUとZrが多い箇所から1箇所(位置④)、同じく混相部分のうちFeとCrが多い箇所から2箇所(位置⑤⑥)、主粒子下部のうちFeの多い粒子とその周辺から3箇所(位置⑧~⑩)、同じく下部領域のうち特徴元素としてSi(位置⑦)及びCa(位置⑪)を含む箇所を1箇所ずつ設定した。

図6 STEM-EDX点分析位置及び半定量取得データ

各測定点での同定元素

 各位置(①~⑪)での点分析で取得したスペクトルを図8に示す。ソフトウェアの解析により出力された一次データを表1に示す。各点分析位置において試料由来のピークとして検出された元素は、以下の通りである。

  • 位置①では、O、Cr、Zr、及びUのピークが検出された。
  • 位置②では、O、Cr、Zr、及びUのピークが検出された。
  • 位置③では、O、Cr、Zr、及びUのピークが検出された。
  • 位置④では、O、Cr、Fe、Zr、及びUのピークが検出された。
  • 位置⑤では、O、Cr、Fe、及びごく小さい強度のMgのピークが検出された。Zrのピークもわずかな強度で認められた。
  • 位置⑥では、O、Cr、Fe、及びごく小さい強度のZrのピークが検出された。
  • 位置⑦では、O、Mg、Al、Si、K、Fe、及びごく小さい強度のTiのピークが検出された。
  • 位置⑧では、O、Fe、及びごく小さい強度のNiのピークが検出された。
  • 位置⑨では、O、Fe、Ni、及びごく小さい強度のSiのピークが検出された。Mnのピークもわずかな強度で認められた。
  • 位置⑩では、O、S、Ca、Fe、及びごく小さい強度のSiのピークが検出された。
  • 位置⑪では、O、Ca、Cr、及びFeのピークが検出された。U及びZrのピークもわずかな強度で認められた。

図8 STEM-EDX点分析スペクトル

表1 一次データ
位置 OK NaK MbK AlK SiK SK CaK TiK Cr K MnK FeK NiK ZnK ZrK Mo K RuL SnL SbL TeL CsL BaL Pb L UM KK
77.2 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.8 0.0 0.2 0.0 0.0 8.3 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 13.5 /
77.5 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.8 0.0 0.1 0.0 0.0 7.9 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 13.7 /
77.9 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.1 0.8 0.0 0.1 0.0 0.0 7.5 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 13.7 /
76.8 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.1 1.0 0.0 5.4 0.0 0.0 7.2 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 9.7 /
60.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 27.8 0.0 11.2 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 /
61.8 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 26.8 0.0 10.1 0.0 0.0 1.2 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 /
67.5 0.0 2.8 4.2 18.8 0.0 0.0 0.7 0.0 0.1 5.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.1 2.3
60.4 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 38.7 0.9 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 /
56.1 0.0 0.0 0.0 0.8 0.0 0.0 0.0 0.0 0.4 38.5 4.2 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 /
51.2 0.0 0.0 0.0 1.4 5.6 7.7 0.0 0.0 0.0 34.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 /
64.6 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 31.9 0.0 0.4 0.0 2.7 0.0 0.0 0.4 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 /

(注意事項)このデータは、TEMに付属したソフトウェアによる出力値をそのまま表示したものであり、疑似信号や有効数字の評価を行っていない取得データである。

各測定点での半定量分析結果

 一次データから、試料由来のピークとして同定された元素の合計を100 at%として再計算した結果を半定量分析結果として、点分析位置とともに表2に示す。なお、測定位置によっては主要な存在元素が異なる別の相や粒子が近接する箇所(位置④⑤⑥⑩⑪)があり、これらの測定位置では周辺の隣接粒子や隣接相に含まれる元素からの信号を検出している可能性がある。半定量分析結果のうち、このような周辺の隣接粒子や隣接相からの寄与を含む可能性のある元素については、半定量値に “*” を付して示した。

表2 半定量分析結果
位置 O Na Mg Al Si S K Ca Ti Cr Mn Fe Ni Zn Zr Mo Ru Sn Sb Te Cs Ba Pb U
77 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. / n.d. n.d. 1 n.d. n.d. n.d. n.d. 8 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 14
77 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. / n.d. n.d. 1 n.d. n.d. n.d. n.d. 8 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 14
77 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. / n.d. n.d. 1 n.d. n.d. n.d. n.d. 8 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 14
77 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. / n.d. n.d. 1* n.d. 5* n.d. n.d. 7 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 10
60 n.d. 1 n.d. n.d. n.d. / n.d. n.d. 28 n.d. 11 n.d. n.d. L.O.Q* n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d.
62 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. / n.d. n.d. 27 n.d. 10 n.d. n.d. 1* n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d.
66 n.d. 3 4 19 n.d. 2 n.d. 1 n.d. n.d. 5 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d.
60 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. / n.d. n.d. n.d. n.d. 39 1 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d.
57 n.d. n.d. n.d. 1 n.d. / n.d. n.d. n.d. L.O.Q 38 4 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d.
51 n.d. n.d. n.d. 1 6 / 8 n.d. n.d. n.d. 34* n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d.
65 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. / 32 n.d. L.O.Q n.d. 3* n.d. n.d. L.O.Q n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. L.O.Q

(注意事項)
・ “n.d.”は、EDX信号のエネルギースペクトルにピークが確認されず、検出限界以下と判断した元素である。
・ “L.O.Q”.は、スペクトルにピークが確認できるものの、本表に示す元素を100%とした場合に0.5at%未満となり、定量下限以下と判断した元素である。
・ 本表の数値は、“n.d.”及び“L.O.Q.”を除いた半定量性を持つデータを示していると判断した元素を100%として規格化して表示した。
・ “ * ” を付した数値は、周辺の隣接相や隣接粒子からの影響を含む可能性がある。

TEM回折図形の取得と構造解析及び主要化学組成の推定結果

 電子線回折の測定位置を図9に、各位置で取得した回折図形を図10に、結晶構造の同定結果を表3に示す。さらに、同位置または近傍のEDX点分析での半定量分析結果を参照しつつ、結晶構造を含めた主要化学組成を推定した結果を同図に示す。
 主粒子の連続相部分である位置⑫では、構造解析の結果c-UO2のパターンと一致しており、近傍のEDX点分析(位置①~③)においてUと同程度の濃度でZrが含まれていたことから、当該箇所はc-(U, Zr)O2と推定された。
 主粒子の混相部分である位置⑬では、構造解析の結果c-FeO3O4のパターンと一致しており、近傍(位置⑤)のEDX点分析におけるCr/Fe原子比が約2~3の範囲にあったことから、当該箇所はc-FeCr2O4と推定された。
 主粒子下部に密集する微粒子のひとつである位置⑭では、構造解析の結果c-FeO3O4のパターンと一致した。近傍(位置⑧)のEDX点分析では主要元素としてO及びFeが認められたことから、当該箇所はc-FeO3O4と推定された。
 下部領域に密集する微粒子のひとつである位置⑮では、構造解析において回折図形に合致する標準化合物が無く、結晶構造の同定には至らなかった。このため、EDXの結果のみから推定した。近傍(位置⑦)のEDX点分析では主要元素としてO、Si及びFeが認められたことから、SiOO2とFeO3O4の混合物、またはSi-Fe-O系の酸化物と推定した。
 下部領域に密集する微粒子のひとつである位置⑯では、構造解析において該当する回折図形に合致する標準化合物が無く、結晶構造の同定には至らなかった。このため、EDXの結果のみから推定した。近傍(位置⑪)のEDX点分析では主要元素としてO及びCaが認められ、また、OとCaとの原子比(約2)がCaOを想定した場合(1)よりも高いことから、Ca(OH)2またはCaCO3と推定した。

図9 電子線回折の測定位置

図10 TEM回折図形

表3 TEM構造解析結果及び主要化学組成の推定結果
位置 TEM構造解析結果 TEM構造解析所見※2 EDX結果を含めた主要化学組成の推定
c-UO2 方位[],[],[] c-(U,Zr)O2(①②③※1)
c-FeCr2O4 方位[],[] c-FeCr2O4(⑤※1)
c-Fe3O4 方位[],[] c-Fe3O4(⑧※1)
不明 SiO2及びFe3O4/Si-Fe-O(⑦※1)
不明 Ca(OH)2/CaCO3(⑪※1)

(注)※1 参考としたEDX点分析位置
※2 方位の並び順は回折図形の並び順に同じ

分析結果のまとめ

 2PEN2103領域14で観察されたU含有粒子は、約20 μmの幅を持つ不定形粒子(主粒子)であった。主粒子の大部分(連続相部分)はc-(U,Zr)O2相(U : Zrの原子比が約6 : 4)であり、その一部で若干Zr濃度の高い領域が認められた。主粒子の一部(混相部分)では、Cr及びFeを含む部分がU及びZrを含む部分と混在し、連続相部分と密着するように接していた。その一部においてc- FeCr2O4が同定された。また、粒子の周囲(主粒子下部)では、大きさ数十 [nm] から数 [μm]の微粒子が密集しており、その中にc-Fe3O4、Si-Feの酸化物、Caの化合物(水酸化物または炭酸塩と推定)が存在した。



図データ


  1. 令和3年度福島第一原子力発電所の炉内付着物サンプル等の分析,日本原子力研究開発機構,JAEA-Data/Code 2023-005.