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{{DISPLAYTITLE:2PEN2103 TEM 領域12}}
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!width="500pt"|内容
!width="200pt"|備考
!width="200pt"|備考
!width="100pt"|記載者
|-
|-
|1
|1
|2022/05/16
|2025/3/6
|新規
|新規
|2PEN2103 TEM分析結果(領域12)の登録
|TEM/EDX分析結果の掲載(出典<ref name="JAEA23a">令和3年度福島第一原子力発電所の炉内付着物サンプル等の分析,日本原子力研究開発機構,JAEA-Data/Code 2023-005.</ref>)
|IRID報告書(付録-4)の内容を転記。'''分析機関での精査を終えていない生データの段階であるため、wordファイルの原本へのリンクを作成するに留めた。'''
|旧ページは [[Gr1:2PEN2103-TEM-領域12|こちら(アクセス限定:Gr1)]]
|原稿作成:鈴木(NFD)<br>wiki転記:池内(JAEA)
|-
|2
|2022/08/25
|改訂
|図(HAADF像、EDS元素マッピング、EDS線分析、EDS点分析、電子線回折)を分析機関での精査後のバージョンに差し替えた(リンク先wordファイルを更新)。
|
|原稿作成:鈴木(NFD)<br>wiki転記:池内(JAEA)
|-
|3
|2023/3/23
|改訂
|本文(仮)の追記
|
|図面精査:鈴木(NFD)<br>wiki原稿(仮)作成:池内(JAEA)
|-
|4
|2023/03/29
|承認
|分析データへの掲載承認
|
|池内(JAEA)
|}
|}


43行目: 18行目:
===TEM観察用試料の採取箇所及びHAADF-STEM像===
===TEM観察用試料の採取箇所及びHAADF-STEM像===
 図1に、2PEN2103着目領域12のTEM観察用試料の採取位置及び観察方向を、SEM画像上に重ねて示す。<br>
 図1に、2PEN2103着目領域12のTEM観察用試料の採取位置及び観察方向を、SEM画像上に重ねて示す。<br>
 TEM観察用試料断面のミクロ組織のHAADF-STEM像を図2に示す。当該領域の断面中央には、幅約10 μmのほぼ均一な構造を持った台形状の粒子が存在した。以後、本分析結果の説明において、この粒子を「台形状粒子」という。<br>
 TEM観察用試料断面のミクロ組織のHAADF-STEM像を図に示す。当該領域の断面中央には、幅約10 μmのほぼ均一な構造を持った台形状の粒子が存在した。以後、本分析結果の説明において、この粒子を「主粒子」という。<br>
 台形状粒子の周囲には、大きさ数十[nm]から1 μmの大きさを持つ微粒子が密集していた。
 主粒子右下には、サブミクロンの大きさを持つ粒子が複数集まった領域が認められた(視野A)。<br>
 主粒子、及び視野Aの周囲には、大きさ数十 [nm]から1 μmの大きさを持つ微粒子が密集していた。


<gallery mode="packed" heights=250px caption="">
<gallery mode="packed" heights=500px caption="">
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-01.jpg|図1 SEM画像上に示したTEM観察用試料の採取箇所及び分析・観察方向
Image:2PEN2103_TEM-Region12-1.jpg|'''図1 SEM画像上に示したTEM観察用試料の採取箇所及び分析・観察方向'''
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-02.jpg|図2 ミクロ組織のHAADF-STEM像
Image:2PEN2103_TEM-Region12-2.jpg|'''図2 ミクロ組織のHAADF-STEM像'''
</gallery>
</gallery>


===STEM-EDX元素マッピング===
===STEM-EDX元素マッピング===
 領域12の断面全体のSTEM-EDX面分析により取得した元素マップを、図3に示す。試料由来として検出された元素の分布には、概ね以下の傾向が認められた。
 断面のSTEM-EDX面分析により取得した元素マップを、図3(主粒子を含む断面全体)及び図4(右下拡大部:視野Aとその近傍)に示す。<br/>
*台形状粒子の内部ではU及びZrが検出され、それぞれ均一に分布していた。U及びZrを含む領域は、台形状粒子の右下部にも存在した。
 試料由来として検出された元素の分布には、概ね以下の傾向が認められた。<br/>
*台形状粒子の周囲には、主にFeが広く分布していた。さらに、Mg、Al、Si、S、Cr、Ni、Sn、Pbを含む領域が存在した。
<断面全体の傾向>(図3)<br/>
* 主粒子上ではUとZrが検出され、それぞれ均一に分布していた。<br/>
* 主粒子及び視野Aの周囲に広がる微粒子が密集する領域では、Feが広く分布していた。その領域の一部では、Mg、Al、Si、S、Cr、Ni、Sn、Pbが検出された。<br/>
* 酸素(O)は、断面全体に分布していた。
<右下拡大部の傾向>(図4)<br/>
* 視野Aを構成する複数粒子の領域では、数十 [nm] から数百 [nm] の大きさの粒子(サブミクロン粒子)上に、UとZrが検出された。これらのサブミクロン粒子の間には、Cr濃度の高い箇所が存在し、Crと同じ位置にFeも検出された。<br/>
* 視野Aを構成する複数粒子の周辺には、主にFeが広く分布していた。Feが広く分布する領域の一部では、Mg、Si、Ca、Cr、Ni、Zn、Sb、Pbが検出された。<br/>


 台形状粒子の右下部(U及びZrを含む領域)を拡大した視野(視野Aという)に対して取得した元素マップを、図4に示す。試料由来として検出された元素の分布には、概ね以下の傾向が認められた。
*視野Aでは、数十 [nm] から数百 [nm] の大きさの粒子において、UとZrが検出された。これらの粒子間にはFeとCrが検出された。
*視野AのUとZrを含む粒子の周囲には、Feが広く分布していた。さらに、Mg、Si、Ca、Cr、Ni、Zn、Sb、Pbを含む領域が存在した。




<gallery mode="packed" heights=300px caption="図3 断面全体のSTEM-EDXマップ">
<gallery mode="packed" heights=300px caption="図3 断面全体のSTEM-EDXマップ">
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-03-1.jpg|
Image:2PEN2103 TEM-Region12-3-1.jpg|
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-03-2.jpg|
Image:2PEN2103 TEM-Region12-3-2.jpg|
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-03-3.jpg|
Image:2PEN2103 TEM-Region12-3-3.jpg|
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-03-4.jpg|
Image:2PEN2103 TEM-Region12-3-4.jpg|
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-03-5.jpg|
Image:2PEN2103 TEM-Region12-3-5.jpg|
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-03-6.jpg|
Image:2PEN2103 TEM-Region12-3-6.jpg|
</gallery>
</gallery>
(注)※は主な輝点がすべて他の元素や試料外からの偽信号であることを示す。<br>
(注)※は主な輝点がすべて他の元素や試料外からの偽信号であることを示す。<br>
   黄色破線は当該元素が存在する位置を示す。
   黄色破線は当該元素が存在する位置を示す。
'''SEI''':明視野像/
'''C'''スミア繊維(Uと重複する部分はその影響)/
'''O'''/
'''(Na※)'''(高輝度部分はGaの影響)/
'''Mg'''(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/
'''Al'''(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/
'''Si'''(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/
'''S'''(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/
'''(Cl※)'''(高輝度部分はU,W,Pbの影響)/
'''(Ca※)'''(高輝度部分はU,W,Snの影響)/
'''(Ti※)'''(高輝度部分はU,Wの影響)/
'''Cr'''(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/
'''(Mn※)'''(高輝度部分はU,Crの影響)/
'''Fe'''/
'''Ni'''(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/
'''(Cu※)'''(高輝度部分はU,Wの影響)/
'''(Zn※)'''(高輝度部分はU,Wの影響)/
'''(Se※)'''(高輝度部分はU,W,Mgの影響)/
'''Zr'''/
'''(Mo※)'''(高輝度部分はU,Wの影響)/
'''(Tc※)'''(高輝度部分はU,W,Pbの影響)/
'''(Ru※)'''(高輝度部分はU,W,Pbの影響)/
'''(Rh※)'''(高輝度部分はU,W,Pbの影響)/
'''(Pd※)'''(高輝度部分はU,W,Pbの影響)/
'''(Ag※)'''(高輝度部分はU,Wの影響)/
'''(Cd※)'''(高輝度部分はUの影響)/
'''Sn'''(Uと重複する部分はその影響)/
'''(Sb※)'''(高輝度部分はU,W,Snの影響)/
'''(Te※)'''(高輝度部分はU,W,Snの影響)/
'''(I※)'''(高輝度部分はU,W,Snの影響)/
'''(Cs※)'''(高輝度部分はU,Wの影響)/
'''(Ba※)'''(高輝度部分はU,Wの影響)/
'''(Sm※)'''(高輝度部分はU,W,Crの影響)/
'''W'''(観察片作製用W保護膜)(U,Niと重複する部分はその影響)/
'''Pb'''(高輝度部分はU,Wの影響)/
'''U'''


<gallery mode="packed" heights=300px caption="図4 視野A(台形状粒子の右下拡大部)のSTEM-EDXマップ">
<gallery mode="packed" heights=300px caption="図4 視野A(台形状粒子の右下拡大部)のSTEM-EDXマップ">
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-04-1.jpg|
Image:2PEN2103 TEM-Region12-4-1.jpg|
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-04-2.jpg|
Image:2PEN2103 TEM-Region12-4-2.jpg|
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-04-3.jpg|
Image:2PEN2103 TEM-Region12-4-3.jpg|
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-04-4.jpg|
Image:2PEN2103 TEM-Region12-4-4.jpg|
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-04-5.jpg|
Image:2PEN2103 TEM-Region12-4-5.jpg|
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-04-6.jpg|
Image:2PEN2103 TEM-Region12-4-6.jpg|
</gallery>
</gallery>
(注)※は主な輝点がすべて他の元素や試料外からの偽信号であることを示す。<br>
(注)※は主な輝点がすべて他の元素や試料外からの偽信号であることを示す。<br>
   黄色破線は当該元素が存在する位置を示す。
   黄色破線は当該元素が存在する位置を示す。
'''SEI''':明視野像/
'''C'''(スミア繊維もしくは再堆積)(Uと重複する部分はその影響)/
'''O'''/
'''(Na※)'''(高輝度部分はGa,Uの影響)/
'''Mg'''(Uと重複する部分はその影響、左下端部及び右下端部はGaの影響)/
'''(Al※)'''(高輝度部分はUの影響)/
'''Si'''(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/
'''(S※)'''(高輝度部分はU,Pbの影響)/
'''(Cl※)'''(高輝度部分はU,Pbの影響)/
'''Ca'''(U,Sbと重複する部分はそれらの影響)/
'''(Ti※)'''(高輝度部分はU,Mgの影響)/
'''Cr'''/
'''(Mn※)'''(高輝度部分はCr,Uの影響) /
'''Fe'''/
'''Ni'''/
'''Cu'''(メッシュ材の再堆積)(Uと重複する部分はUの影響)/
'''Zn'''(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/
'''(Se※)'''(高輝度部分はU,Mgの影響)/
'''Zr'''/
'''(Mo※)'''(高輝度部分はUの影響)/
'''(Tc※)'''(高輝度部分はU,Pbの影響)/
'''(Ru※)'''(高輝度部分はU,Pbの影響)/
'''(Rh※)'''(高輝度部分はU,Pbの影響)/
'''(Pd※)'''(高輝度部分はUの影響)/
'''(Ag※)'''(高輝度部分はUの影響)/
'''(Cd※)'''(高輝度部分はUの影響)/
'''(Sn※)'''(高輝度部分はUの影響)/
'''Sb'''(U,Caと重複する部分はそれらの影響)/
'''(Te※)'''(高輝度部分はU,Ca,Sbの影響)/
'''(I※)'''(高輝度部分はU,Sbの影響)/
'''(Cs※)'''(高輝度部分はUの影響)/
'''(Ba※)'''(高輝度部分はUの影響)/
'''(Sm※)'''(高輝度部分はCr,Uの影響)/
'''(W※)'''(高輝度部分はUの影響)/
'''Pb'''(Uと重複する部分はその影響)/
'''U'''


===STEM-EDX線分析データ===
===STEM-EDX線分析データ===
 台形状粒子を横切る位置で取得した線分析データを図5に示す。台形状粒子の内部では、UとZrがほぼ均一に分布していた。台形状粒子の周辺(左端から約1.2 μmまでの位置、及び約5.3 μm以上の位置)では、Feのカウント数の増加が認められた。左端から約1.0~1.2 μmの位置では、Crのカウント数の増加が認められた。
 主粒子を横切る位置で取得した線分析データを図5に示す。主粒子上では、線分析箇所の左から右にかけてUとZrのカウント数の緩やかな減少(膜厚変化による)が認められたものの、UとZrとのカウント比はほぼ一定であった。主粒子の周辺では、Feのカウント数の増加が認められた(左端から約1.2 μmまで、及び約5.3 μm以上の位置)。また、主粒子と周辺との境界付近の位置(左端から約1.0~1.2 μmの位置)では、Crのカウント数の増加が認められた。<br/>
 視野Aを横切る位置で取得した線分析データを図6に示す。大きさ数百 [nm] の粒子の位置では、UとZrのカウント数の増加が認められた。また、画面左端から約0.1~0.2 μm に位置する大きさ約100 nmの粒子では、Uのカウント数は増加せず、Zrのカウント数が増加した。線分析位置の左端付近と右端付近ではFeのカウント数の増加が認められた。
 視野Aを横切る位置で取得した線分析データを図6に示す。大きさ数百 [nm] の粒子の位置では、UとZrのカウント数の増加が認められた。また、画面左端付近に位置する大きさ約100 nmの粒子上では(左端から約0.1~0.2 μm の位置)、Uのカウント数は増加せず、Zrのカウント数が増加した。線分析位置の左端付近と右端付近ではFeのカウント数の増加が認められた。


<gallery mode="packed" heights=600px caption="図5~6 STEM-EDX線分析データ">
<gallery mode="packed" heights=700px>
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-05.jpg|図5 断面全体
Image:2PEN2103_TEM-Region12-5.jpg|'''図5 STEM-EDX線分析データ(断面全体)'''
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-06.jpg|図6 視野A(台形状粒子の右下拡大部)
Image:2PEN2103_TEM-Region12-6.jpg|'''図6 STEM-EDX線分析データ(視野A)'''
</gallery>
</gallery>


==各相組成の半定量分析結果==
==各相組成の半定量分析結果==
===点分析位置===
===点分析位置===
 元素分布の情報をもとに、STEM-EDX点分析の位置を、図7に示す通り設定した。台形状粒子から3箇所(位置①~③)、台形状粒子の近傍でUとZrを含む粒子から1箇所(位置④)、視野AにおいてUとZrを含む粒子から2箇所(位置⑦⑨)、同視野のZrを含む粒子から1箇所(位置⑥)、同視野のこれら粒子間に存在するFeとCrを含む箇所から1箇所(位置⑧)、同視野の外周部から1箇所(位置⑩)、及び台形状粒子の周辺に密集する微粒子から1箇所(位置⑤)の計10箇所を設定した。
 元素分布の情報をもとに、STEM-EDX点分析の位置として、図7に示す通り設定した。主粒子上で3箇所(位置①~③)、主粒子近傍にあるUとZrを含む粒子から1箇所(位置④)、視野AにおいてUとZrを含む粒子から2箇所(位置⑦⑨)、同視野のうちZrを含む粒子から1箇所(位置⑥)、同領域のこれら粒子間に存在するFeとCrを含む箇所から1箇所(位置⑧)、Feを含む箇所から1箇所(位置⑩)、及び主粒子周辺に密集する微粒子から1箇所(位置⑤)の計10箇所を設定した。
<gallery mode="packed" heights=200px caption="図6 STEM-EDX点分析位置及び半定量取得データ">
<gallery mode="packed" heights=300px>
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-07-1.jpg|点分析位置 位置①~⑤
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-07-1.jpg|点分析位置 位置①~⑤
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-07-2.jpg|点分析位置 位置⑥~⑩(視野A)
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-07-2.jpg|点分析位置 位置⑥~⑩(視野A)
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-07-3.jpg|半定量取得データ
</gallery>
</gallery>
<p style="text-align:center">
'''図7 STEM-EDX点分析位置及び半定量取得データ'''
</p>


===各測定点での同定元素===
===各測定点での同定元素===
 各位置(①~⑩)での点分析で取得したスペクトルを図8~17に示す。ソフトウェアの解析により出力された半定量取得データは、図7に示す。各点分析位置において試料由来のピークとして検出された元素は、以下の通りである。
各位置(①~⑩)での点分析で取得したスペクトルを図8に示す。ソフトウェアの解析により出力された一次データを表1に示す。各点分析位置において試料由来のピークとして検出された元素は、以下の通りである。
*位置①~④では、O、U、Zr、及びごく小さい強度のCrのピークが検出された。
*位置①では、O、Cr、U、及びZrのピークが検出された。
*位置②では、O、Cr、U、及びZrのピークが検出された。
*位置③では、O、Cr、U、及びZrのピークが検出された。
*位置④では、O、U、及びZrのピークが検出された。Crのピークもわずかな強度で認められた。
*位置⑤では、O、及びFeのピークが検出された。
*位置⑤では、O、及びFeのピークが検出された。
*位置⑥では、O、Fe、及びZrのピークが検出された。
*位置⑥では、O、Fe、及びZrのピークが検出された。
111行目: 171行目:
*位置⑩では、O、Mg、及びFeのピークが検出された。
*位置⑩では、O、Mg、及びFeのピークが検出された。


<gallery mode="packed" heights=300px>
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-08(位置1).jpg|位置①<br/>矢印:定量に用いたピーク<br/>括弧で示した元素:分析系材料や保護膜材として使用されている元素等(Cu:メッシュ材、Fe, Co:計測システム構成材料、C:加工時蒸着元素)からのEDX信号
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-09(位置2).jpg|位置②<br/>矢印:定量に用いたピーク<br/>括弧で示した元素:分析系材料や保護膜材として使用されている元素等(Cu:メッシュ材、Fe, Co:計測システム構成材料、C:加工時蒸着元素)からのEDX信号
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-10(位置3).jpg|位置③<br/>矢印:定量に用いたピーク<br/>括弧で示した元素:分析系材料や保護膜材として使用されている元素等(Cu:メッシュ材、Fe, Co:計測システム構成材料、C:加工時蒸着元素)からのEDX信号
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-11(位置4).jpg|位置④<br/>矢印:定量に用いたピーク<br/>括弧で示した元素:分析系材料や保護膜材として使用されている元素等(Cu:メッシュ材、Fe, Co:計測システム構成材料、C:加工時蒸着元素)からのEDX信号
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-12(位置5).jpg|位置⑤<br/>矢印:定量に用いたピーク<br/>括弧で示した元素:分析系材料や保護膜材として使用されている元素等(Cu:メッシュ材、C:加工時蒸着元素)からのEDX信号
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-13(位置6).jpg|位置⑥<br/>矢印:定量に用いたピーク<br/>括弧で示した元素:分析系材料や保護膜材として使用されている元素等(Cu:メッシュ材、C:加工時蒸着元素)からのEDX信号
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-14(位置7).jpg|位置⑦<br/>矢印:定量に用いたピーク<br/>括弧で示した元素:分析系材料や保護膜材として使用されている元素等(Cu:メッシュ材、Co:計測システム構成材料、C:加工時蒸着元素)からのEDX信号
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-15(位置8)-2.jpg|位置⑧<br/>矢印:定量に用いたピーク<br/>括弧で示した元素:分析系材料や保護膜材として使用されている元素等(Cu:メッシュ材、C:加工時蒸着元素)からのEDX信号
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-16(位置9).jpg|位置⑨<br/>矢印:定量に用いたピーク<br/>括弧で示した元素:分析系材料や保護膜材として使用されている元素等(Cu:メッシュ材、Fe, Co:計測システム構成材料、C:加工時蒸着元素)からのEDX信号
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-17(位置10)-2.jpg|位置⑩<br/>矢印:定量に用いたピーク<br/>括弧で示した元素:分析系材料や保護膜材として使用されている元素等(Cu:メッシュ材、C:加工時蒸着元素)からのEDX信号
</gallery>
<p style="text-align:center">
'''図8 STEM-EDX点分析スペクトル'''
</p>


<gallery mode="packed" heights=200px caption="図7~16 STEM-EDX点分析スペクトル">
{| class="wikitable"| style="margin:0 auto"
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-08(位置1).jpg|位置①
|+ 表1 一次データ
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-09(位置2).jpg|位置②
! 位置
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-10(位置3).jpg|位置③
! OK
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-11(位置4).jpg|位置④
! NaK
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-12(位置5).jpg|位置⑤
! MbK
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-13(位置6).jpg|位置⑥
! AlK
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-14(位置7).jpg|位置⑦
! SiK
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-15(位置8).jpg|位置⑧
! SK
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-16(位置9).jpg|位置⑨
! CaK
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-17(位置10).jpg|位置⑩
! TiK
</gallery>
! Cr K
! MnK
! FeK
! NiK
! ZnK
! ZrK
! Mo K
! RuL
! SnL
! SbL
! TeL
! CsL
! BaL
! Pb L
! UM
|-
| ①
| 72.0
| 0.0
| 0.1
| 0.4
| 0.4
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.7
| 0.1
| 1.8
| 0.0
| 0.0
| 8.9
| 0.0
| 0.2
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 15.5
|-
| ②
| 72.0
| 0.0
| 0.0
| 0.2
| 0.2
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.8
| 0.1
| 1.6
| 0.0
| 0.1
| 9.6
| 0.0
| 0.2
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 15.2
|-
| ③
| 72.7
| 0.0
| 0.0
| 0.2
| 0.3
| 0.0
| 0.0
| 0.1
| 0.9
| 0.1
| 1.6
| 0.0
| 0.1
| 9.6
| 0.0
| 0.1
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 14.2
|-
| ④
| 80.9
| 0.0
| 0.0
| 0.3
| 0.2
| 0.0
| 0.0
| 0.1
| 0.4
| 0.2
| 1.6
| 0.0
| 0.1
| 4.1
| 0.0
| 0.1
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 12.2
|-
| ⑤
| 55.3
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.3
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.1
| 0.1
| 43.5
| 0.1
| 0.0
| 0.1
| 0.1
| 0.0
| 0.0
| 0.1
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.1
| 0.1
|-
| ⑥
| 78.5
| 0.0
| 0.3
| 0.1
| 0.6
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.1
| 0.0
| 5.0
| 0.3
| 0.0
| 14.8
| 0.1
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.1
|-
| ⑦
| 78.6
| 0.0
| 0.0
| 0.2
| 0.2
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.6
| 0.1
| 1.5
| 0.0
| 0.0
| 6.7
| 0.0
| 0.1
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 11.9
|-
| ⑧
| 56.1
| 0.0
| 0.4
| 0.1
| 0.1
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 28.0
| 1.3
| 13.1
| 0.0
| 0.0
| 0.7
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.1
|-
| ⑨
| 72.6
| 0.0
| 0.2
| 0.2
| 0.2
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 5.5
| 0.3
| 3.6
| 0.0
| 0.0
| 7.8
| 0.0
| 0.1
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 9.3
|-
| ⑩
| 56.9
| 0.0
| 1.5
| 0.0
| 0.1
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.1
| 0.1
| 41.3
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.1
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.0
| 0.0
|-
|}
<p style="text-align:center">
(注意事項)このデータは、TEMに付属したソフトウェアによる出力値をそのまま表示したものであり、疑似信号や有効数字の評価を行っていない取得データである。
</p>


===各測定点での半定量分析結果===
===各測定点での半定量分析結果===
 半定量取得データから、試料由来のピークとして同定された元素の合計を100 at%として再計算した結果を半定量分析結果として、点分析位置とともに以下に示す。
 一次データから、試料由来のピークとして同定された元素の合計を100 at%として再計算した結果を半定量分析結果として、点分析位置とともに表2に示す。なお、測定位置によっては、周囲をFe濃度の高い相に取り囲まれた幅約100 nmの粒子(位置⑥)や、UとZr濃度の高い別の粒子が近接する箇所(位置⑧)があり、これらの測定位置では周辺の隣接粒子や隣接相に含まれる元素からの信号を検出している可能性がある。半定量分析結果のうち、このような周辺の隣接粒子や隣接相からの寄与を含む可能性のある元素については、半定量値に “*” を付して示した。


<gallery mode="packed" heights=200px caption="">
{| class="wikitable"| style="margin:0 auto"
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-07-4.jpg|半定量分析結果(位置①~⑩)
|+表2 半定量分析結果
</gallery>
! 位置
! O
! Na
! Mg
! Al
! Si
! S
! K
! Ca
! Ti
! Cr
! Mn
! Fe
! Ni
! Zn
! Zr
! Mo
! Ru
! Sn
! Sb
! Te
! Cs
! Ba
! Pb
! U
|-
| ①
| 74
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| 1
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| 9
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| 16
|-
| ②
| 74
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| 1
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| 10
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| 16
|-
| ③
| 75
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| 1
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| 10
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| 15
|-
| ④
| 83
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| L.O.Q.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| 4
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| 13
|-
| ⑤
| 56
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| 44
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
|-
| ⑥
| 80
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| 5*
| n.d.
| n.d.
| 15
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
|-
| ⑦
| 79
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| 1
| n.d.
| 2
| n.d.
| n.d.
| 7
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| 12
|-
| ⑧
| 57
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| 29
| n.d.
| 13
| n.d.
| n.d.
| 1*
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
|-
| ⑨
| 73
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| 6
| n.d.
| 4
| n.d.
| n.d.
| 8
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| 9
|-
| ⑩
| 57
| n.d.
| 2
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| 41
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
| n.d.
|-
|}
<p style="text-align:center">
(注意事項) <br/>
・ “n.d.”は、EDX信号のエネルギースペクトルにピークが確認されず、検出限界以下と判断した元素である。<br/>
・ “L.O.Q”.は、スペクトルにピークが確認できるものの、本表に示す元素を100%とした場合に0.5at%未満となり、定量下限以下と判断した元素である。<br/>
・ 本表の数値は、“n.d.”及び“L.O.Q.”を除いた半定量性を持つデータを示していると判断した元素を100%として規格化して表示した。<br/>
・ “ * ” を付した数値は、周辺の隣接相や隣接粒子からの影響を含む可能性がある。
</p>


==TEM回折図形の取得と構造解析及び主要化学組成の推定結果==
==TEM回折図形の取得と構造解析及び主要化学組成の推定結果==
 電子線回折の測定位置、各位置で取得した回折図形、及び結晶構造の同定結果を図18に示す。さらに、同位置または近傍のEDX点分析での半定量分析結果を参照しつつ、結晶構造を含めた主要化学組成を推定した結果を同図に示す。<br>
 電子線回折の測定位置を図9に、各位置で取得した回折図形を図10に、結晶構造の同定結果を表3に示す。さらに、同位置または近傍のEDX点分析での半定量分析結果を参照しつつ、結晶構造を含めた主要化学組成を推定した結果を同表に示す。<br/>
 台形状粒子の位置⑪では、構造解析の結果c-UO<sub>2</sub>のパターンと一致し、近傍のEDX点分析(位置①②③)ではUと同程度の濃度でZrが検出されたことから、当該箇所はc-(U, Zr)O2と推定された。<br>
 主粒子の位置⑪では、構造解析の結果c-UO2のパターンと一致し、近傍のEDX点分析(位置①②③)ではUと同程度の濃度でZrが検出されたことから、当該箇所はc-(U, Zr)O<sub>2</sub>と推定された。<br/>
 視野AにおいてUとZrを含む粒子である位置⑦は、構造解析の結果c-UO<sub>2</sub>のパターンと一致し、同位置のEDX点分析ではUと同程度の濃度でZrが検出されたことから、当該箇所はc-(U,Zr)O<sub>2</sub>と推定された。<br>
 視野Aを構成する粒子上の位置⑦は、構造解析の結果c-UO<sub>2</sub>のパターンと一致し、同位置のEDX点分析ではUと同程度の濃度でZrが検出されたことから、当該箇所はc-(U, Zr)O<sub>2</sub>と推定された。<br/>
 同じく視野AにおいてZrを含む粒子である位置⑥は、構造解析の結果m-ZrO<sub>2</sub>のパターンと一致した。同位置のEDX点分析では、Zrの他にFeも検出されていた。一方で、この粒子の大きさは高々100 nm程度であり、周辺をFeとOからなる連続相によって取り囲まれている。このため、点分析で検出されたFeは、周辺(断面のみならず、深さ方向からの寄与も含む)からの影響を拾っていると考えられる。以上より、当該箇所はm-ZrO<sub>2</sub>と推定された。<br>
 同じく視野Aの構成粒子のひとつである位置⑥は、構造解析の結果m-ZrO<sub>2</sub>のパターンと一致した。同位置のEDX点分析では、Zrの他にFeも検出されていた。一方で、この粒子の大きさは高々100 nm程度であり、周辺をFeとOからなる連続相によって取り囲まれている。このため、点分析で検出されたFeは、周辺(断面のみならず、深さ方向からの寄与も含む)からの影響を拾っていると考えられる。以上より、当該箇所はm-ZrO<sub>2</sub>と推定された。<br/>
 視野Aにおいて粒子間の位置を占める位置⑫は、構造解析の結果c-FeCr<sub>2</sub>O<sub>4</sub>のパターンと一致しており、近傍のEDX点分析(位置⑧)におけるCr/Fe原子比(約2)とも整合していることから、当該箇所はc-FeCr<sub>2</sub>O<sub>4</sub>と推定された。<br>
 視野Aの粒子間の位置を占める位置⑫は、構造解析の結果c-Fe<sub>3</sub>O<sub>4</sub>のパターンと一致しており、近傍のEDX点分析(位置⑧)におけるCr/Fe原子比が約2であったことから、当該箇所はc-FeCr<sub>2</sub>O<sub>4</sub>と推定された。<br/>
 視野Aの外周部である位置⑬では、構造解析の結果c-Fe<sub>3</sub>O<sub>4</sub>のパターンと一致し、近傍の点分析(位置⑩)において主にFeが検出されたことから、当該箇所はc-Fe<sub>3</sub>O<sub>4</sub>と推定された。
 位置⑬では、構造解析の結果c-Fe<sub>3</sub>O<sub>4</sub>のパターンと一致し、近傍の点分析(位置⑩)において主にFeが検出されたことから、当該箇所はc-Fe<sub>3</sub>O<sub>4</sub>と推定された。


<gallery mode="packed" heights=200px caption="図18 TEM回折図形及び主要化学組成の推定結果">
<gallery mode="packed" heights=400px>
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-18-1.jpg|TEM回折図形取得位置 位置⑪(台形状粒子上)
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-18-1.jpg|TEM回折図形取得位置 位置⑪(台形状粒子上)
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-18-2.jpg|TEM回折図形取得位置 位置⑥⑦⑫⑬(視野A)
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-18-2.jpg|TEM回折図形取得位置 位置⑥⑦⑫⑬(視野A)
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-18-3.jpg|TEM回折図形
</gallery>
</gallery>
<gallery mode="packed" heights=200px caption="TEM構造解析結果及び主要化学組成の推定結果">
<p style="text-align:center">
Image:Gr1:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-18-4.jpg|
'''図9 電子線回折の測定位置'''
</p>
 
<gallery mode="packed" heights=400px>
Image:21NFD図-TEM-2PEN2103領域12-18-3.jpg
</gallery>
</gallery>
<p style="text-align:center">
'''図10 TEM回折図形'''
</p>


 2PEN2103領域12は、組成がほぼ一様で約10 μmの大きさを持ったc-(U,Zr)O<sub>2</sub>粒子であり、その近傍にもサブミクロンのc-(U,Zr)O<sub>2</sub>粒子が複数存在した。これらのc-(U,Zr)O<sub>2</sub>粒子は、ほぼ同等のU/Zr比を有していた(U : Zrの原子比が約6 : 4)。また、約100 nmの大きさを持ったm-ZrO<sub>2</sub>の微粒子も存在した。
{| class="wikitable"| style="margin:0 auto"
|+表3 TEM構造解析結果及び主要化学組成の推定結果
|-
!位置
!TEM構造解析結果
!TEM構造解析所見※1
!EDX結果を含めた主要化学組成の推定
|-
|⑥
|m-ZrO<sub>2</sub>
|方位[<math>\bar{2}</math> 0 13],[13 <math>\bar{7}</math> 5]
|m-ZrO<sub>2</sub>
|-
|⑦
|c-UO<sub>2</sub>
|方位[<math>100</math>],[<math>3\bar{1}0</math>]
|c-(U,Zr)O<sub>2</sub>
|-
|⑪
|c-UO<sub>2</sub>
|方位[<math>101</math>],[<math>031</math>],[<math>12\bar{1}</math>]
|c-(U,Zr)O<sub>2</sub>
|-
|⑫
|c-FeCr<sub>2</sub>O<sub>4</sub>
|c-FeCr<sub>2</sub>O<sub>4</sub>の方位[<math>312</math>],[<math>211</math>],[<math>11\bar{1}</math>]
|c-FeCr<sub>2</sub>O<sub>4</sub>
|-
|⑬
|c-Fe<sub>3</sub>O<sub>4</sub>
|方位[<math>\bar{1}\bar{4}1</math>].[<math>\bar{5}\bar{2}1</math>].[<math>\bar{2}\bar{1}1</math>].[<math>\bar{3}\bar{1}\bar{2}</math>]
|c-Fe<sub>3</sub>O<sub>4</sub>
|}
<p style="text-align:center">
(注) ※1 方位の並び順は回折図形の並び順に同じ
</p>
 
==分析結果のまとめ==
 2PEN2103領域12は、組成がほぼ一様で約10 μmの大きさを持ったc-(U, Zr)O<sub>2</sub>粒子が存在し、その近傍にもサブミクロンの大きさのc-(U, Zr)O<sub>2</sub>粒子が複数存在した。これらのc-(U, Zr)O<sub>2</sub>粒子は、ほぼ同等のU/Zr比を有していた(U : Zrの原子比が約6 : 4)。また、約100 nmの大きさを持ったUを含まないm-ZrO<sub>2</sub>の微粒子も存在した。<br/>
 これらの粒子の近傍及び粒子間にて、c-FeCr<sub>2</sub>O<sub>4</sub>及びc-Fe<sub>3</sub>O<sub>4</sub>が同定された。
 これらの粒子の近傍及び粒子間にて、c-FeCr<sub>2</sub>O<sub>4</sub>及びc-Fe<sub>3</sub>O<sub>4</sub>が同定された。




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[[メディア:21NFD図-TEM(2PEN2103-R12).docx|図データ]]
[[メディア:Gr1:21NFD図-TEM(2PEN2103-R12).docx|図データ]]
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2025年3月6日 (木) 14:11時点における最新版

更新履歴
No 日付 分類 内容 備考
1 2025/3/6 新規 TEM/EDX分析結果の掲載(出典[1] 旧ページは こちら(アクセス限定:Gr1)

断面の微細構造及び元素分布

TEM観察用試料の採取箇所及びHAADF-STEM像

 図1に、2PEN2103着目領域12のTEM観察用試料の採取位置及び観察方向を、SEM画像上に重ねて示す。
 TEM観察用試料断面のミクロ組織のHAADF-STEM像を図に示す。当該領域の断面中央には、幅約10 μmのほぼ均一な構造を持った台形状の粒子が存在した。以後、本分析結果の説明において、この粒子を「主粒子」という。
 主粒子右下には、サブミクロンの大きさを持つ粒子が複数集まった領域が認められた(視野A)。
 主粒子、及び視野Aの周囲には、大きさ数十 [nm]から1 μmの大きさを持つ微粒子が密集していた。

STEM-EDX元素マッピング

 断面のSTEM-EDX面分析により取得した元素マップを、図3(主粒子を含む断面全体)及び図4(右下拡大部:視野Aとその近傍)に示す。
 試料由来として検出された元素の分布には、概ね以下の傾向が認められた。
<断面全体の傾向>(図3)

  •  主粒子上ではUとZrが検出され、それぞれ均一に分布していた。
  •  主粒子及び視野Aの周囲に広がる微粒子が密集する領域では、Feが広く分布していた。その領域の一部では、Mg、Al、Si、S、Cr、Ni、Sn、Pbが検出された。
  •  酸素(O)は、断面全体に分布していた。

<右下拡大部の傾向>(図4)

  •  視野Aを構成する複数粒子の領域では、数十 [nm] から数百 [nm] の大きさの粒子(サブミクロン粒子)上に、UとZrが検出された。これらのサブミクロン粒子の間には、Cr濃度の高い箇所が存在し、Crと同じ位置にFeも検出された。
  •  視野Aを構成する複数粒子の周辺には、主にFeが広く分布していた。Feが広く分布する領域の一部では、Mg、Si、Ca、Cr、Ni、Zn、Sb、Pbが検出された。


(注)※は主な輝点がすべて他の元素や試料外からの偽信号であることを示す。
   黄色破線は当該元素が存在する位置を示す。

SEI:明視野像/ Cスミア繊維(Uと重複する部分はその影響)/ O(Na※)(高輝度部分はGaの影響)/ Mg(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/ Al(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/ Si(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/ S(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/ (Cl※)(高輝度部分はU,W,Pbの影響)/ (Ca※)(高輝度部分はU,W,Snの影響)/ (Ti※)(高輝度部分はU,Wの影響)/ Cr(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/ (Mn※)(高輝度部分はU,Crの影響)/ FeNi(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/ (Cu※)(高輝度部分はU,Wの影響)/ (Zn※)(高輝度部分はU,Wの影響)/ (Se※)(高輝度部分はU,W,Mgの影響)/ Zr(Mo※)(高輝度部分はU,Wの影響)/ (Tc※)(高輝度部分はU,W,Pbの影響)/ (Ru※)(高輝度部分はU,W,Pbの影響)/ (Rh※)(高輝度部分はU,W,Pbの影響)/ (Pd※)(高輝度部分はU,W,Pbの影響)/ (Ag※)(高輝度部分はU,Wの影響)/ (Cd※)(高輝度部分はUの影響)/ Sn(Uと重複する部分はその影響)/ (Sb※)(高輝度部分はU,W,Snの影響)/ (Te※)(高輝度部分はU,W,Snの影響)/ (I※)(高輝度部分はU,W,Snの影響)/ (Cs※)(高輝度部分はU,Wの影響)/ (Ba※)(高輝度部分はU,Wの影響)/ (Sm※)(高輝度部分はU,W,Crの影響)/ W(観察片作製用W保護膜)(U,Niと重複する部分はその影響)/ Pb(高輝度部分はU,Wの影響)/ U


(注)※は主な輝点がすべて他の元素や試料外からの偽信号であることを示す。
   黄色破線は当該元素が存在する位置を示す。

SEI:明視野像/ C(スミア繊維もしくは再堆積)(Uと重複する部分はその影響)/ O(Na※)(高輝度部分はGa,Uの影響)/ Mg(Uと重複する部分はその影響、左下端部及び右下端部はGaの影響)/ (Al※)(高輝度部分はUの影響)/ Si(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/ (S※)(高輝度部分はU,Pbの影響)/ (Cl※)(高輝度部分はU,Pbの影響)/ Ca(U,Sbと重複する部分はそれらの影響)/ (Ti※)(高輝度部分はU,Mgの影響)/ Cr(Mn※)(高輝度部分はCr,Uの影響) / FeNiCu(メッシュ材の再堆積)(Uと重複する部分はUの影響)/ Zn(U,Wと重複する部分はそれらの影響)/ (Se※)(高輝度部分はU,Mgの影響)/ Zr(Mo※)(高輝度部分はUの影響)/ (Tc※)(高輝度部分はU,Pbの影響)/ (Ru※)(高輝度部分はU,Pbの影響)/ (Rh※)(高輝度部分はU,Pbの影響)/ (Pd※)(高輝度部分はUの影響)/ (Ag※)(高輝度部分はUの影響)/ (Cd※)(高輝度部分はUの影響)/ (Sn※)(高輝度部分はUの影響)/ Sb(U,Caと重複する部分はそれらの影響)/ (Te※)(高輝度部分はU,Ca,Sbの影響)/ (I※)(高輝度部分はU,Sbの影響)/ (Cs※)(高輝度部分はUの影響)/ (Ba※)(高輝度部分はUの影響)/ (Sm※)(高輝度部分はCr,Uの影響)/ (W※)(高輝度部分はUの影響)/ Pb(Uと重複する部分はその影響)/ U

STEM-EDX線分析データ

 主粒子を横切る位置で取得した線分析データを図5に示す。主粒子上では、線分析箇所の左から右にかけてUとZrのカウント数の緩やかな減少(膜厚変化による)が認められたものの、UとZrとのカウント比はほぼ一定であった。主粒子の周辺では、Feのカウント数の増加が認められた(左端から約1.2 μmまで、及び約5.3 μm以上の位置)。また、主粒子と周辺との境界付近の位置(左端から約1.0~1.2 μmの位置)では、Crのカウント数の増加が認められた。
 視野Aを横切る位置で取得した線分析データを図6に示す。大きさ数百 [nm] の粒子の位置では、UとZrのカウント数の増加が認められた。また、画面左端付近に位置する大きさ約100 nmの粒子上では(左端から約0.1~0.2 μm の位置)、Uのカウント数は増加せず、Zrのカウント数が増加した。線分析位置の左端付近と右端付近ではFeのカウント数の増加が認められた。

各相組成の半定量分析結果

点分析位置

 元素分布の情報をもとに、STEM-EDX点分析の位置として、図7に示す通り設定した。主粒子上で3箇所(位置①~③)、主粒子近傍にあるUとZrを含む粒子から1箇所(位置④)、視野AにおいてUとZrを含む粒子から2箇所(位置⑦⑨)、同視野のうちZrを含む粒子から1箇所(位置⑥)、同領域のこれら粒子間に存在するFeとCrを含む箇所から1箇所(位置⑧)、Feを含む箇所から1箇所(位置⑩)、及び主粒子周辺に密集する微粒子から1箇所(位置⑤)の計10箇所を設定した。

図7 STEM-EDX点分析位置及び半定量取得データ

各測定点での同定元素

各位置(①~⑩)での点分析で取得したスペクトルを図8に示す。ソフトウェアの解析により出力された一次データを表1に示す。各点分析位置において試料由来のピークとして検出された元素は、以下の通りである。

  • 位置①では、O、Cr、U、及びZrのピークが検出された。
  • 位置②では、O、Cr、U、及びZrのピークが検出された。
  • 位置③では、O、Cr、U、及びZrのピークが検出された。
  • 位置④では、O、U、及びZrのピークが検出された。Crのピークもわずかな強度で認められた。
  • 位置⑤では、O、及びFeのピークが検出された。
  • 位置⑥では、O、Fe、及びZrのピークが検出された。
  • 位置⑦では、O、Cr、Fe、Zr、及びUのピークが検出された。
  • 位置⑧では、O、Cr、Fe、及びごく小さい強度のZrのピークが検出された。
  • 位置⑨では、O、Cr、Fe、Zr、及びUのピークが検出された。
  • 位置⑩では、O、Mg、及びFeのピークが検出された。

図8 STEM-EDX点分析スペクトル

表1 一次データ
位置 OK NaK MbK AlK SiK SK CaK TiK Cr K MnK FeK NiK ZnK ZrK Mo K RuL SnL SbL TeL CsL BaL Pb L UM
72.0 0.0 0.1 0.4 0.4 0.0 0.0 0.0 0.7 0.1 1.8 0.0 0.0 8.9 0.0 0.2 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 15.5
72.0 0.0 0.0 0.2 0.2 0.0 0.0 0.0 0.8 0.1 1.6 0.0 0.1 9.6 0.0 0.2 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 15.2
72.7 0.0 0.0 0.2 0.3 0.0 0.0 0.1 0.9 0.1 1.6 0.0 0.1 9.6 0.0 0.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 14.2
80.9 0.0 0.0 0.3 0.2 0.0 0.0 0.1 0.4 0.2 1.6 0.0 0.1 4.1 0.0 0.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 12.2
55.3 0.0 0.0 0.0 0.3 0.0 0.0 0.0 0.1 0.1 43.5 0.1 0.0 0.1 0.1 0.0 0.0 0.1 0.0 0.0 0.0 0.1 0.1
78.5 0.0 0.3 0.1 0.6 0.0 0.0 0.0 0.1 0.0 5.0 0.3 0.0 14.8 0.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.1
78.6 0.0 0.0 0.2 0.2 0.0 0.0 0.0 0.6 0.1 1.5 0.0 0.0 6.7 0.0 0.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 11.9
56.1 0.0 0.4 0.1 0.1 0.0 0.0 0.0 28.0 1.3 13.1 0.0 0.0 0.7 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.1
72.6 0.0 0.2 0.2 0.2 0.0 0.0 0.0 5.5 0.3 3.6 0.0 0.0 7.8 0.0 0.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 9.3
56.9 0.0 1.5 0.0 0.1 0.0 0.0 0.0 0.1 0.1 41.3 0.0 0.0 0.0 0.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

(注意事項)このデータは、TEMに付属したソフトウェアによる出力値をそのまま表示したものであり、疑似信号や有効数字の評価を行っていない取得データである。

各測定点での半定量分析結果

 一次データから、試料由来のピークとして同定された元素の合計を100 at%として再計算した結果を半定量分析結果として、点分析位置とともに表2に示す。なお、測定位置によっては、周囲をFe濃度の高い相に取り囲まれた幅約100 nmの粒子(位置⑥)や、UとZr濃度の高い別の粒子が近接する箇所(位置⑧)があり、これらの測定位置では周辺の隣接粒子や隣接相に含まれる元素からの信号を検出している可能性がある。半定量分析結果のうち、このような周辺の隣接粒子や隣接相からの寄与を含む可能性のある元素については、半定量値に “*” を付して示した。

表2 半定量分析結果
位置 O Na Mg Al Si S K Ca Ti Cr Mn Fe Ni Zn Zr Mo Ru Sn Sb Te Cs Ba Pb U
74 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 1 n.d. n.d. n.d. n.d. 9 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 16
74 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 1 n.d. n.d. n.d. n.d. 10 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 16
75 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 1 n.d. n.d. n.d. n.d. 10 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 15
83 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. L.O.Q. n.d. n.d. n.d. n.d. 4 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 13
56 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 44 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d.
80 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 5* n.d. n.d. 15 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d.
79 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 1 n.d. 2 n.d. n.d. 7 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 12
57 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 29 n.d. 13 n.d. n.d. 1* n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d.
73 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 6 n.d. 4 n.d. n.d. 8 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 9
57 n.d. 2 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 41 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d.

(注意事項)
・ “n.d.”は、EDX信号のエネルギースペクトルにピークが確認されず、検出限界以下と判断した元素である。
・ “L.O.Q”.は、スペクトルにピークが確認できるものの、本表に示す元素を100%とした場合に0.5at%未満となり、定量下限以下と判断した元素である。
・ 本表の数値は、“n.d.”及び“L.O.Q.”を除いた半定量性を持つデータを示していると判断した元素を100%として規格化して表示した。
・ “ * ” を付した数値は、周辺の隣接相や隣接粒子からの影響を含む可能性がある。

TEM回折図形の取得と構造解析及び主要化学組成の推定結果

 電子線回折の測定位置を図9に、各位置で取得した回折図形を図10に、結晶構造の同定結果を表3に示す。さらに、同位置または近傍のEDX点分析での半定量分析結果を参照しつつ、結晶構造を含めた主要化学組成を推定した結果を同表に示す。
 主粒子の位置⑪では、構造解析の結果c-UO2のパターンと一致し、近傍のEDX点分析(位置①②③)ではUと同程度の濃度でZrが検出されたことから、当該箇所はc-(U, Zr)O2と推定された。
 視野Aを構成する粒子上の位置⑦は、構造解析の結果c-UO2のパターンと一致し、同位置のEDX点分析ではUと同程度の濃度でZrが検出されたことから、当該箇所はc-(U, Zr)O2と推定された。
 同じく視野Aの構成粒子のひとつである位置⑥は、構造解析の結果m-ZrO2のパターンと一致した。同位置のEDX点分析では、Zrの他にFeも検出されていた。一方で、この粒子の大きさは高々100 nm程度であり、周辺をFeとOからなる連続相によって取り囲まれている。このため、点分析で検出されたFeは、周辺(断面のみならず、深さ方向からの寄与も含む)からの影響を拾っていると考えられる。以上より、当該箇所はm-ZrO2と推定された。
 視野Aの粒子間の位置を占める位置⑫は、構造解析の結果c-Fe3O4のパターンと一致しており、近傍のEDX点分析(位置⑧)におけるCr/Fe原子比が約2であったことから、当該箇所はc-FeCr2O4と推定された。
 位置⑬では、構造解析の結果c-Fe3O4のパターンと一致し、近傍の点分析(位置⑩)において主にFeが検出されたことから、当該箇所はc-Fe3O4と推定された。

図9 電子線回折の測定位置

図10 TEM回折図形

表3 TEM構造解析結果及び主要化学組成の推定結果
位置 TEM構造解析結果 TEM構造解析所見※1 EDX結果を含めた主要化学組成の推定
m-ZrO2 方位[ 0 13],[13 5] m-ZrO2
c-UO2 方位[],[] c-(U,Zr)O2
c-UO2 方位[],[],[] c-(U,Zr)O2
c-FeCr2O4 c-FeCr2O4の方位[],[],[] c-FeCr2O4
c-Fe3O4 方位[].[].[].[] c-Fe3O4

(注) ※1 方位の並び順は回折図形の並び順に同じ

分析結果のまとめ

 2PEN2103領域12は、組成がほぼ一様で約10 μmの大きさを持ったc-(U, Zr)O2粒子が存在し、その近傍にもサブミクロンの大きさのc-(U, Zr)O2粒子が複数存在した。これらのc-(U, Zr)O2粒子は、ほぼ同等のU/Zr比を有していた(U : Zrの原子比が約6 : 4)。また、約100 nmの大きさを持ったUを含まないm-ZrO2の微粒子も存在した。
 これらの粒子の近傍及び粒子間にて、c-FeCr2O4及びc-Fe3O4が同定された。



図データ


  1. 令和3年度福島第一原子力発電所の炉内付着物サンプル等の分析,日本原子力研究開発機構,JAEA-Data/Code 2023-005.