「炉心下部構造物(LCSA)の切断解体」の版間の差分

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 1984年5月に、原子炉圧力容器内からの燃料・炉心デブリ取り出し工法が決定された(燃料移送Canalは水没させず、RPV上のプラットフォームからの長尺ツールによるマニュアル作業)[1」。ここでは、それ以降に進められた炉心下部構造物('''LCSA''': Lower Core Support Assembly)の解体撤去の計画検討の経緯、整備されたツール、解体手順などについてまとめる。
== LCSAの状態調査と切断解体工法の検討 ==
=== LCSAの状態調査 ===
 1984年5月時点では、まだ、圧力容器ヘッドや上部プレナム構造物は撤去されておらず、'''Quick Look調査'''により、炉心上部の燃料集合体が崩落し、デブリベッドが形成されていることが明らかになっていた[2]
 1984年10月に、炉心部の'''探針調査'''が行われ、デブリはすべて粒子状ではなく、炉心中央あたりに'''溶融凝固層'''と考えられるハードストップがあることが確認された[1]。さらに、1985年2月に、下部プレナム周辺領域のビデオ調査が行われ、溶融凝固物の一部が下部プレナムに移行していることが明らかになった[3]。また、周辺部ではLCSAの5層構造物に大きな損傷は観測されなかった。一方で、炉心内に装荷されていたインコアモニターの損傷状態の調査が遠隔での信号確認で行われ、熱電対が炉心全体で大きく損傷していることが確認された[4]。これらのことから、デブリは炉心中央下部を破って下部プレナムに移行したと推定された[5]。デブリ取り出し方法の検討に向けて、下部プレナムデブリの分析が行われ、破砕性や強度が分析された[6]。
 1986年7月に、炉心部のボーリング調査が行われ、開口部からビデオカメラが挿されて、LCSA内部(主に、第1~3層)や下部プレナム中央部の状態が観測された[7]。それまでに考えられていた炉心中央下部でのデブリ移行パスは観察されず、デブリは炉心周辺部あるいは'''バッフル板'''を突き破って'''コアフォーマ領域'''を通過して、下部プレナムに移行したと推定された。LCSAの中央部の水平プレート上にはほとんどデブリが堆積しておらず、支持ポスト内に一部デブリが堆積していた。LCSAの主に周辺部に約2~3トンのデブリが堆積していると推定された。下部プレナムに堆積しているデブリは機械的に破砕可能と判定された。
 '''図1'''に、これらの調査からとりまとめられた、圧力容器内部の様子(ボーリング調査の直前、1986年7月時点)を示す[8]。圧力容器ヘッドと上部プレナム構造物は撤去され、また、炉心上部にあったルースデブリベッドもほぼ回収されている。炉心周縁部には燃料集合体が残留し、炉心中央にはハードストップが存在し、その下には溶融凝固層と切り株燃料集合体が存在していると推定された。また、炉心下部には下部プレナムデブリが堆積しているが、LCSAはほとんど損傷していない。
 コアボーリング調査後に、コアボーリング装置の先端ビットを交換して、溶融凝固層の破砕作業が行われた[9]。破砕されたデブリとその下に切り株状に残留していた燃料集合体は、様々な長尺ツールにより回収された。並行して、ビデオ調査も行われ、1987年2月の調査では、炉心南東側のバッフル板に開口部が見られ、コアフォーマ領域にデブリが堆積していることが明らかになった。また、炉心部での燃料・炉心デブリ回収作業中に崩落したデブリや破砕燃料棒がLCSA内に移行し堆積していた。
=== LCSAの切断解体工法の検討 ===
 1984年6月に、'''LCSA解体撤去の検討タスクフォース'''が設置された[10]。このため、検討開始当初は、デブリベッドが炉心の下のほうまで形成され、LCSA部分にもルースデブリが移行していると推定されていた。まず、水中での真空吸引方式あるいはフラッシングによるデブリ回収が検討された。LCSA解体については、フローホールなどの既設の開口部を利用して堆積デブリを除去・回収しながら、1層1層切断していく工法が検討された。切断方法としては、すでに、St. Lucie原発で熱遮蔽体の切断実績のあるプラズマアーク法が第一案として提案された。
''' 図2'''に、LCSA構造物の模式図を示す[8]。ここに、LCSA構造の説明、、、、
 しかし、1985年の下部プレナムプレナム調査で、相当量の溶融凝固デブリが下部プレナムに移行していることが明らかになり、LCSA切断解体方法の方針変更が行われ、基本プランがとりまとめられた。図3に、基本プランの概念図を示す。下部プレナムデブリの取り出しについては、内部調査やサンプル分析の進捗を見つつ、別途検討することとされた。1985年時点で行われた、LCSA切断解体方法の検討における仮定は以下である[10]。
# LCSAの一部は溶融デブリにより大きく損傷
# LCSAの薄肉部分は、最大10cm程度歪み
# 上部格子板底部で観測されたような、溶融損傷による形状変化発生
# フローホールの多くが溶融凝固した金属により閉塞
# デブリがLCSA表面に固着し、セラミックのため電気伝導性がない
# デブリ瓦礫が多く堆積しており、炉心部で行われたようなコアボーリングは困難、打撃チゼルでのデブリ破砕も困難
# 最大9トンのデブリがLCSA内に堆積
 これに基づいて、LCSA切断解体に使用する各種候補ツールの星取表が整理された('''表1''')。また、下部プレナムデブリを回収するために、LCSA中央部分を約2m径で切断撤去する必要があるとされた('''図3''')[11]。星取表では、この方針に基づいて、デブリを除去しながら、LCSAを1層ずつ切断解体する方法が検討された。
# 利用可能なアクセスを使って、堆積デブリを回収・除去。固着しているデブリもできるだけ破砕・除去
# デブリが回収できない範囲のLCSAを切断し、アクセス孔を形成
# オプションとして、アクセス孔を使って、デブリを下部プレナムに落下
# 1層ずつ撤去しながら、上記のシークエンスを繰り返し
 この検討では、LCSAの切断作業の回数(切断か所の数)をできるだけ減らすことが重視された。また、切断ツールの第一案として、プラズマトーチの代わりに、'''Thermic Rod'''が提案された(#棒の先端でのサーメット反応熱を利用して、金属プレートを溶融切断)。その理由として、プラズマトーチでは平坦な面が必要で、デブリの堆積のために平坦面が得にくいと考えられた。その後、LCSAの損傷が比較的軽微で、'''CAVIJETシステム'''により、付着デブリがかなり効果的に除去できることが明らかになったため、'''プラズマトーチが有力オプションに復帰'''した。
切断方法の予備試験から、、、、
1987年年報
1987年年報


LCSA解体と下部プレナムからのデブリ取り出し
炉心部でのデブリ掘削作業により、LCSAの5層構造のプレート間にかなりのデブリが堆積していた。
当初は、アークプラズマでの切断回数が約2000回と予想された。これだけの回数では、LCSAの強度に影響する可能性が懸念された。
当初は、アークプラズマでの切断回数が約2000回と予想された。これだけの回数では、LCSAの強度に影響する可能性が懸念された。
そこで、代替案として、ボーリング装置を併用した改良案が検討された(#プラズマアークでの直線切断と、ボーリング装置での円形切断の組合せ)。
そこで、代替案として、ボーリング装置を併用した改良案が検討された(#プラズマアークでの直線切断と、ボーリング装置での円形切断の組合せ)。
5層構造のLCSAは、一枚ずつ解体される計画となった。
 
層構造のLCSAは、一枚ずつ解体される計画となった。
 
下部プレナム堆積デブリの物量予測が行われ、真空吸引可能な11トン、瓦礫状だが真空吸引不可なサイズが9トン、大きな瓦礫状が5トン、と推定された。また、炉心部からの移行が約500kgと推定された。
下部プレナム堆積デブリの物量予測が行われ、真空吸引可能な11トン、瓦礫状だが真空吸引不可なサイズが9トン、大きな瓦礫状が5トン、と推定された。また、炉心部からの移行が約500kgと推定された。
これらに基づきPick-and-place方式と真空吸引方式が併用されることとなった。また、比較的大きな粒子デブリをまきあげるための、エアリフトが導入された。
これらに基づきPick-and-place方式と真空吸引方式が併用されることとなった。また、比較的大きな粒子デブリをまきあげるための、エアリフトが導入された。
下部プレナムからのデブリ回収は、新たなツールを投入して、1988年から開始されることとなった。
下部プレナムからのデブリ回収は、新たなツールを投入して、1988年から開始されることとなった。


1988年年報
1988年年報
=====LCSAの解体=====
[[ファイル:年報45.png|サムネイル|600x600ピクセル|'''<big>図43 LCSAの5層構造模式図 [9]</big>''']]
[[ファイル:年報45.png|サムネイル|600x600ピクセル|'''<big>図43 LCSAの5層構造模式図 [9]</big>''']]
======LCSA解体準備======
======LCSA解体準備======
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*ACESを再投入、中央部を4枚に切り分け、Core Flood Tankに移送('''図44(c)'''に、第4層の切断パターンを示す[9])
*ACESを再投入、中央部を4枚に切り分け、Core Flood Tankに移送('''図44(c)'''に、第4層の切断パターンを示す[9])
'''<u>#これらの作業により、1988年末までに、218体の収納缶が満載となった。回収重量は94.575kgであり、予想されるデブリ総重量134.675kgの約70%が回収された。</u>'''
'''<u>#これらの作業により、1988年末までに、218体の収納缶が満載となった。回収重量は94.575kgであり、予想されるデブリ総重量134.675kgの約70%が回収された。</u>'''
== 参考文献 ==
[1] C.J. Hess, TMI-2 Technical Information and Examination Program 1984 Annual Report, GEND-049, 1985.
[2] GEND-030, vol. 1, Quick Look Inspection: Report on the Insertion of a Camera into the TMI-2 Reactor Vessel through a Leadscrew Opening, 1983.
[3] J.P. Adams and R.P. Smith, TMI-2 Lower Plenum Video Data Summary, EGG-TMI-7429, 1987.
[4] M.E. Yancey et al., TMI-2 In-core Instrument Damage -an Update, GEND-INF-031, vol. 2, 1984.
[5] G.R. Brown, USDOE Three Mile Island Research and Development Program 1985 Annual Report, GEND-055, 1986.
[6] C.S. Olsen et al., Examination of Debris from the Lower Head of the TMI-2 Reactor, GEND-INF-084, 1988.
[7] E.L. Tolman et al., TMI-2 Core Bore Acqusition Summry Report, EGG-TMI-7385, rev. 1, 1987.
[8] H.W. Kirkland et al., Drilling Operations to Remove the Lower Core Support Assembly at Three Mile Island Unit 2, Nucl. Technol. 87 (1989) 932-945.
[9] GEND-060, USDOE Three Mile Island Research and Development Program 1986 Annual Report, 1987.
[10] L.H. Porter and W.E. Austin, Disassembly and Defueling of the Three Mile Island Unit 2 Reactor Vessel Lower Core Support Assembly, Nucl. Technol. 87 (1989) 595-608.
[11] R.F. Ryan and R. Blumberg, Lower Core Support Assembly Defueling Planing and Tools, GEND-INF-093, 1988.

2025年8月21日 (木) 16:00時点における最新版

 1984年5月に、原子炉圧力容器内からの燃料・炉心デブリ取り出し工法が決定された(燃料移送Canalは水没させず、RPV上のプラットフォームからの長尺ツールによるマニュアル作業)[1」。ここでは、それ以降に進められた炉心下部構造物(LCSA: Lower Core Support Assembly)の解体撤去の計画検討の経緯、整備されたツール、解体手順などについてまとめる。

LCSAの状態調査と切断解体工法の検討

LCSAの状態調査

 1984年5月時点では、まだ、圧力容器ヘッドや上部プレナム構造物は撤去されておらず、Quick Look調査により、炉心上部の燃料集合体が崩落し、デブリベッドが形成されていることが明らかになっていた[2]

 1984年10月に、炉心部の探針調査が行われ、デブリはすべて粒子状ではなく、炉心中央あたりに溶融凝固層と考えられるハードストップがあることが確認された[1]。さらに、1985年2月に、下部プレナム周辺領域のビデオ調査が行われ、溶融凝固物の一部が下部プレナムに移行していることが明らかになった[3]。また、周辺部ではLCSAの5層構造物に大きな損傷は観測されなかった。一方で、炉心内に装荷されていたインコアモニターの損傷状態の調査が遠隔での信号確認で行われ、熱電対が炉心全体で大きく損傷していることが確認された[4]。これらのことから、デブリは炉心中央下部を破って下部プレナムに移行したと推定された[5]。デブリ取り出し方法の検討に向けて、下部プレナムデブリの分析が行われ、破砕性や強度が分析された[6]。

 1986年7月に、炉心部のボーリング調査が行われ、開口部からビデオカメラが挿されて、LCSA内部(主に、第1~3層)や下部プレナム中央部の状態が観測された[7]。それまでに考えられていた炉心中央下部でのデブリ移行パスは観察されず、デブリは炉心周辺部あるいはバッフル板を突き破ってコアフォーマ領域を通過して、下部プレナムに移行したと推定された。LCSAの中央部の水平プレート上にはほとんどデブリが堆積しておらず、支持ポスト内に一部デブリが堆積していた。LCSAの主に周辺部に約2~3トンのデブリが堆積していると推定された。下部プレナムに堆積しているデブリは機械的に破砕可能と判定された。

 図1に、これらの調査からとりまとめられた、圧力容器内部の様子(ボーリング調査の直前、1986年7月時点)を示す[8]。圧力容器ヘッドと上部プレナム構造物は撤去され、また、炉心上部にあったルースデブリベッドもほぼ回収されている。炉心周縁部には燃料集合体が残留し、炉心中央にはハードストップが存在し、その下には溶融凝固層と切り株燃料集合体が存在していると推定された。また、炉心下部には下部プレナムデブリが堆積しているが、LCSAはほとんど損傷していない。

 コアボーリング調査後に、コアボーリング装置の先端ビットを交換して、溶融凝固層の破砕作業が行われた[9]。破砕されたデブリとその下に切り株状に残留していた燃料集合体は、様々な長尺ツールにより回収された。並行して、ビデオ調査も行われ、1987年2月の調査では、炉心南東側のバッフル板に開口部が見られ、コアフォーマ領域にデブリが堆積していることが明らかになった。また、炉心部での燃料・炉心デブリ回収作業中に崩落したデブリや破砕燃料棒がLCSA内に移行し堆積していた。

LCSAの切断解体工法の検討

 1984年6月に、LCSA解体撤去の検討タスクフォースが設置された[10]。このため、検討開始当初は、デブリベッドが炉心の下のほうまで形成され、LCSA部分にもルースデブリが移行していると推定されていた。まず、水中での真空吸引方式あるいはフラッシングによるデブリ回収が検討された。LCSA解体については、フローホールなどの既設の開口部を利用して堆積デブリを除去・回収しながら、1層1層切断していく工法が検討された。切断方法としては、すでに、St. Lucie原発で熱遮蔽体の切断実績のあるプラズマアーク法が第一案として提案された。

 図2に、LCSA構造物の模式図を示す[8]。ここに、LCSA構造の説明、、、、

 しかし、1985年の下部プレナムプレナム調査で、相当量の溶融凝固デブリが下部プレナムに移行していることが明らかになり、LCSA切断解体方法の方針変更が行われ、基本プランがとりまとめられた。図3に、基本プランの概念図を示す。下部プレナムデブリの取り出しについては、内部調査やサンプル分析の進捗を見つつ、別途検討することとされた。1985年時点で行われた、LCSA切断解体方法の検討における仮定は以下である[10]。

  1. LCSAの一部は溶融デブリにより大きく損傷
  2. LCSAの薄肉部分は、最大10cm程度歪み
  3. 上部格子板底部で観測されたような、溶融損傷による形状変化発生
  4. フローホールの多くが溶融凝固した金属により閉塞
  5. デブリがLCSA表面に固着し、セラミックのため電気伝導性がない
  6. デブリ瓦礫が多く堆積しており、炉心部で行われたようなコアボーリングは困難、打撃チゼルでのデブリ破砕も困難
  7. 最大9トンのデブリがLCSA内に堆積

 これに基づいて、LCSA切断解体に使用する各種候補ツールの星取表が整理された(表1)。また、下部プレナムデブリを回収するために、LCSA中央部分を約2m径で切断撤去する必要があるとされた(図3)[11]。星取表では、この方針に基づいて、デブリを除去しながら、LCSAを1層ずつ切断解体する方法が検討された。

  1. 利用可能なアクセスを使って、堆積デブリを回収・除去。固着しているデブリもできるだけ破砕・除去
  2. デブリが回収できない範囲のLCSAを切断し、アクセス孔を形成
  3. オプションとして、アクセス孔を使って、デブリを下部プレナムに落下
  4. 1層ずつ撤去しながら、上記のシークエンスを繰り返し

 この検討では、LCSAの切断作業の回数(切断か所の数)をできるだけ減らすことが重視された。また、切断ツールの第一案として、プラズマトーチの代わりに、Thermic Rodが提案された(#棒の先端でのサーメット反応熱を利用して、金属プレートを溶融切断)。その理由として、プラズマトーチでは平坦な面が必要で、デブリの堆積のために平坦面が得にくいと考えられた。その後、LCSAの損傷が比較的軽微で、CAVIJETシステムにより、付着デブリがかなり効果的に除去できることが明らかになったため、プラズマトーチが有力オプションに復帰した。

切断方法の予備試験から、、、、

1987年年報

当初は、アークプラズマでの切断回数が約2000回と予想された。これだけの回数では、LCSAの強度に影響する可能性が懸念された。

そこで、代替案として、ボーリング装置を併用した改良案が検討された(#プラズマアークでの直線切断と、ボーリング装置での円形切断の組合せ)。

層構造のLCSAは、一枚ずつ解体される計画となった。

下部プレナム堆積デブリの物量予測が行われ、真空吸引可能な11トン、瓦礫状だが真空吸引不可なサイズが9トン、大きな瓦礫状が5トン、と推定された。また、炉心部からの移行が約500kgと推定された。

これらに基づきPick-and-place方式と真空吸引方式が併用されることとなった。また、比較的大きな粒子デブリをまきあげるための、エアリフトが導入された。

下部プレナムからのデブリ回収は、新たなツールを投入して、1988年から開始されることとなった。

1988年年報

図43 LCSAの5層構造模式図 [9]
LCSA解体準備
  • LCSA解体作業は、1988年1月から12月まで継続した。図43に、LCSAの5層構造を示す[9]。下部プレナムに堆積しているデブリにアクセスするために、これら5層が1層ずつ解体撤去された。解体には、アークプラズマ装置とコアボーリング装置が用いられたが、炉心周辺部のLCSAは、これらの装置が届かないために、円環状に残留した(詳細は後述)。5層構造は、上から
  1. Lower Grid Top Rib Section: 燃料集合体下部端栓を固定する
  2. Lower Grid Distributor Plate: 下部端栓から、燃料集合体内に均質に冷却水を流入させる
  3. Grid Forging: 上部の第1、第2層と下部の第3、第4層を保持し支える、ポストやインコアモニター案内管などを支える(#最も分厚い構造物)
  4. In-core Guide Support Plate: インコアモニターの案内管を固定する
  5. Flow Distributor: 冷却水を流入する
  • 初期案では、ACESを使って、LCSA中央に116cm角の開口部を形成し、下部プレナムデブリにアクセスする計画であった。しかし、ビデオ調査により、LCSAに大きな損傷はないが、層構造の間、および、軸方向にあいているホール、等に、デブリや破砕された燃料棒等が堆積していることが明らかになった。このため、より大きな開口部を形成する必要があることが明らかになった。
  • そこで、CBMによる円柱状の切断と、ACESでの軸方向の切断を組合せ、より広い範囲のでLCSAを切断・撤去することに計画変更された[9]。
  • LCSA解体のため、燃料取り出し作業がいったん中断され、CBMが作業プラットフォームに再度設置された。
  • 1987年に、CBMによるLCSA切断模擬試験が行われた。その結果、上から3層までボーリングすると、ボーリング操作1回ごとに約85Lの金属チップが発生することが明らかになった。それを下部プレナムに落とす開口を設けておくことが確認された。
  • 作業安全性評価や作業員の被ばく予測が行われた。切断されるLCSAピースは大型で高線量のため、圧力容器から貯蔵庫までの移送作業中の被ばくがもっとも重要であることが示された。移動操作は、原則遠隔で行われるが、ポーラークレーンが故障した場合に作業員が現場修理に向かう想定で、被ばく評価が行われた。これにより、現場に向かうための最適ルートが整備された。
  • 切断されたLCSAの貯蔵には、Core Flood Tank-Aを改良して用いられることとなった。選定の大きな理由は、燃料取り出し作業場所と離れていること、水没させてLCSAを遮蔽できること、であった。
  • CBMとACESの適切な組み合わせ方法が検討された。まず、CBMで、縦方向の構造物(支持ポスト、インコアモニター案内管)を掘削・切断し、次に、ACESにより、プレートを1層ごとに、水平方向に切断して分割することとなあった。
CBMでの掘削作業、第1フェーズ(1月)
  • インコアモニター案内管52本を、第2相の上まで掘削し、第2層の上に堆積していたデブリを下部プレナムに落とした。#この時点で、CBMのドリルジョイントの不具合発生し、交換作業が課題となった
  • 掘削チップやデブリを下部プレナムに落とすルートをLCSA周辺部に形成(Junkmillビットを利用して、第4層まで貫通)
CBMでの掘削作業、第2フェーズ(2月)
  • 周辺部に残留していた15本のインコアモニター案内管の掘削(第3層の上まで)
  • 15本の内、R7位置の1本は、周囲に堆積していた溶融凝固デブリに妨害されて掘削できず。これを除去した後に貫通に成功
  • 15本の内、13本では、さらに第4層まで貫通
  • インコアモニター案内管の掘削孔の上には、はめ殺しナット取り付け

#CBMでの貫通作業での課題は、最初にクリーンな掘削表面を露出させることであった。

LCSAポストの掘削(3~4月)
  • 第3層に、48本の支持ポストが取り付けられていた。その掘削準備のため、CBMをいったん取り外し、ミニエアリフトを設置して、粒子状デブリの除去作業を実施、約160kgのデブリがFuel収納缶に回収された。
  • CBMを再度取り付けて、支持ポストの掘削作業開始、中央の32か所のポストをまず掘削、つづいて周辺部のポストを掘削
  • 掘削作業中にLCSA中央部がたわむのを防止するため、ブロックを3個投入
  • CBMで、第1層を13個のピースに分割後、CBMを撤去してビデオ調査

#CBMのガイドプレートが作業後に高線量になっており、一時撤去・貯蔵作業の課題となった。

#ブラインドでの位置決めは困難であり、以降は、近くにビデオを設置して掘削開始の位置決めを行うことになった

図44 LCSA第3層と第4層の切断・撤去 [9]
第1層の撤去(4月)
  • 切断した第1層13枚を、Core Flood Tankに移送、貯蔵
  • Tankの上部を受け入れ用に切断、開口
  • 13枚の形状は、H型4枚、三角8枚、大型(1.5m角)1枚
  • 撤去前に、ビデオ観察と線量測定、フラッシング
第2層の切断、第1層周辺部のトリミング(5~6月)
  • LCSAの上に、遠隔自動制御のブリッジとトロリーを設置し、ACESの位置決め
  • トーチのオンオフ制御にトラブル、チップの寿命も安定せず、いったんACESを撤去し、再調整
  • ACESの再調整中に、LCSAの隙間に堆積しているデブリを、Pick-and-Placeで回収、Fuel収納缶3体分。
  • 併行して、UCSAのバッフル板取付ボルトの予備的な撤去作業実施、打撃レンチ使用
  • ACESを再度投入し、第1層の炉心周辺部の残留部のトリミングを実施
  • 一方で、モックアップ装置を使って、模擬LCSAや模擬下部ヘッドデブリを装荷、炉心下部からのデブリ回収作業のトレーニング開始
図45 切断した第3層の取り出しの様子 [71]
第2層の切断・回収(7~8月)
  • トリミングされたLCSAピース(18cm厚さ、数cm角)をFuel収納缶に回収
  • ACESを再投入し、第2層の切断再開、85回の切断作業により、炉心中央部分を4枚のπ型に切り出し
  • 切断されたピースは、ブラシ掛け、フラッシング後に、Core Flood Tankに移送
  • ACESとX-Yブリッジをいったん撤去
第3層の切断・回収(9~11月)
  • Grid Forging内に詰まっていたデブリを、Vise Grip Plierエアリフトを使って除去、デブリ回収容器(デブリ用ごみ箱と呼称)とデブリバケツにいったん回収
  • ACESを再投入し、インコアモニター案内管33個を切断し、Fuel収納缶へ回収。さらに、19個のポストを切断し、Fuel収納缶へ回収
  • さらに、38+21か所で、Forgingを予備的に切断(図44(a)(b)に、Forgingの切断パターンを示す。中央部分が4分割されていることがわかる[9])
  • また、34個のインコアモニター案内管、28個のポストの切断を終了、Fuel収納缶に回収
  • 4体の切断されたForgingごとに、吊り上げ用のクランプを3個ずつ取り付け、インコアモニター貫通部に崩落しないように注意しつつ取り出し(図45[71])
  • 取り出し前に、ブラシとフラッシングで付着デブリ除去
第4層の切断・回収、マップ作成(11~12月)
  • ミニエアリフトで、表面mの堆積デブリを回収、第4層の表面のクリーニング実施、Fuel収納缶2個使用
  • 真空吸引システムにより、第4層と第5層の間に堆積していたデブリを回収、Knockout収納缶の有効利用を兼ねていた。#しかし、Knockout収納缶のつまりが何度も発生し、回収量は68kgにとどまった
  • 油圧式のソーで、インコアモニター案内管のスタッド(第3層から第4層にとりつけ)を切断
  • フリーになった案内管をFuel収納缶に回収
  • ACESでの第4層切断作業を並ACES
  • 炉心南東部での溶融凝固デブリをウォータージェットで破砕除去
  • LCSA残留状態のビデオ調査、3Dマップ作成
  • 第4層の解体・取り出し用の油圧回転ブラシを投入
  • ACESを再投入、中央部を4枚に切り分け、Core Flood Tankに移送(図44(c)に、第4層の切断パターンを示す[9])

#これらの作業により、1988年末までに、218体の収納缶が満載となった。回収重量は94.575kgであり、予想されるデブリ総重量134.675kgの約70%が回収された。

参考文献

[1] C.J. Hess, TMI-2 Technical Information and Examination Program 1984 Annual Report, GEND-049, 1985.

[2] GEND-030, vol. 1, Quick Look Inspection: Report on the Insertion of a Camera into the TMI-2 Reactor Vessel through a Leadscrew Opening, 1983.

[3] J.P. Adams and R.P. Smith, TMI-2 Lower Plenum Video Data Summary, EGG-TMI-7429, 1987.

[4] M.E. Yancey et al., TMI-2 In-core Instrument Damage -an Update, GEND-INF-031, vol. 2, 1984.

[5] G.R. Brown, USDOE Three Mile Island Research and Development Program 1985 Annual Report, GEND-055, 1986.

[6] C.S. Olsen et al., Examination of Debris from the Lower Head of the TMI-2 Reactor, GEND-INF-084, 1988.

[7] E.L. Tolman et al., TMI-2 Core Bore Acqusition Summry Report, EGG-TMI-7385, rev. 1, 1987.

[8] H.W. Kirkland et al., Drilling Operations to Remove the Lower Core Support Assembly at Three Mile Island Unit 2, Nucl. Technol. 87 (1989) 932-945.

[9] GEND-060, USDOE Three Mile Island Research and Development Program 1986 Annual Report, 1987.

[10] L.H. Porter and W.E. Austin, Disassembly and Defueling of the Three Mile Island Unit 2 Reactor Vessel Lower Core Support Assembly, Nucl. Technol. 87 (1989) 595-608.

[11] R.F. Ryan and R. Blumberg, Lower Core Support Assembly Defueling Planing and Tools, GEND-INF-093, 1988.