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2025年3月12日 (水) 11:17時点における版

更新履歴
No 日付 分類 内容 備考 記載者
1 2022/05/13 新規 2WEL2103B分析結果の登録 IRID報告書(付録-4)より転記。 原稿作成:鈴木(NFD)

wiki転記:池内(JAEA)

2 2022/07/27 修正 2WEL2103B 領域05 Mgについての記載を見直した。
  • 「領域05のMn含有領域は約5ミクロンの丸みを帯びた形状であり、O、Mg、Al、Si、Clの形状とほぼ一致した。」→「領域05のMn含有領域は約5ミクロンの丸みを帯びた形状であり、O、Al、Si、Clの形状とほぼ一致した。粒子上にはMgが点在する部分も認められた。
修正案作成:鈴木(NFD)、仲吉(JAEA)

wiki転記:池内(JAEA)

3 2022/11/22 承認 池内(JAEA)

SEM観察用試料の分取

 図1に示すように、NFDに受け入れた汚染物試料2WEL2103Bから、SEM観察用試料2WEL2103B-1~3を採取した。
 SEM観察用試料採取前の2WEL2103Bは、柔らかく軽い白色の物質の片面に、硬く脆い、黒色で扁平の物質が密着しており、そのような物質が大小2つ存在した((a))。これらは白い物質上に黒色の堆積層が形成したものと考えられたことから、まず、黒色部分を観察対象とした。白色物質は変形しやすくSEM試料台への固定が難しいことから、変形しやすい白色物質から黒色の扁平層を剥がしてSEM試料台に採取することとした。大きな方の物質の片面には密着した黒色物質の上に、少し盛り上がったように別の黒色で扁平の物質が載っているように見え((a)の点線枠部分)、この部分をピンセットで触ったところ、表層に載っていた黒色で扁平の物質のみ剥がれた((b)の点線枠部分)。剥離後も白色物質上には密着した黒色物質が残っていたことから((b)に実線で表示)、この容易に剥離した黒色扁平物質は、もともと別の部分から剥離した黒色物質であり、大きな方の物質の表面に引っかかっていただけという可能性もある。この剥離した黒色扁平物質((c))を、適切なサイズになるように、同図(c)に示す緑線の位置で切り取って2WEL2103B-1とし、SEM試料台に張り付けた((d))。後述するように2WEL2103B-1にはUやCsの濃縮領域が発見できなかったため、次に、その白色面と黒色面をそのまま観察するべく、同図(a)に示す大小2つの物質のうち小さい方の物質を((e))に示すように切り取って、そのままSEM試料台に張り付けた。白色面が多く見えているものを2WEL2103B-2((f))、黒色面が多く見えているものを2WEL2103B-3((g))とした。これらの試料は表面へのPtとPdの蒸着工程においても容易に変形し、SEM試料台への密着が大きく損なわれるため、導電テープで縛り付けることでSEM試料台に固定した。

着目領域の位置

 図2に、SEM観察用試料の全体SEM像と各着目領域の位置を示す。着目領域の番号は、2WEL2103B-1~3を通じて、通し番号として付した。2WEL2103B-1~3 表面のU及びCs濃縮部分の探索を、それぞれ約1 mm四方に相当する面積まで行ったが、U濃縮部分もCs濃縮部分も見つからなかった。

図2 SEM観察用試料の全体SEM像と各着目領域の位置

各着目領域の概要

(Below, the Japanese word "領域" in figures means "Region" in English.)

領域01

 図3に示すように、着目領域01は、2WEL2103B-1表面の特異元素の濃縮部分として、Caの濃縮部分を設定した。
 図4に示すように、領域01の近傍は、大量のFe及びOに覆われており、わずかにC、S、Cl、K、Ca、Mn、Ni、Znの濃縮箇所も見られた。このうち、SとCaの濃縮箇所は明確に相関していた。
 図5から図6に示すように、領域01のCa含有領域は、幅が数 [μm]の角張った形状を有し、SやOと形状が同等であった。その中央部分を中心とした点分析スペクトルからは、蒸着材料であるPtやPdを除いて、主にO、Fe、S、Caが見られた。

領域02

 図7に示すように、着目領域02は、2WEL2103B-1表面の特異元素の濃縮部分として、Znの濃縮部分を設定した。
 図8に示すように、領域02の近傍は、大量のFe及びOに覆われており、わずかにNa及びZnの濃縮箇所が見られた。なお、EDX信号のうち、Na KとZn Lは重複するため、Zn KのマッピングによりZnの存在する位置を確認した後、Na KのマッピングにZnの位置とは異なる位置に輝点があることを確認することで、両方の元素の濃縮箇所が別の位置に存在することを確認した。
 図9から図10に示すように、領域02のZn含有領域は、長径約2 μm未満の微粒子が凝集し、全体として幅が約20 μmの領域を形成していた。その中央部分を中心とした点分析スペクトルからは、蒸着材料であるPtやPdを除いて、主にO、Fe、Znが見られた。

領域03

 図11に示すように、着目領域03は、2WEL2103B-2表面の特異元素の濃縮部分として、Cdの濃縮部分を設定した。
 図12に示すように、領域03の近傍は、大量のFe及びOが存在し、C、Al、Si、Kの濃縮箇所が存在し、わずかにNa、Mg、Cl、Ca、Ti、Cr、Zn、Cdの濃縮箇所が見られた。なお、EDX信号のうち、K K、Ca K、Ag L、Cd L、Sn L、Te L、U Mは強い信号があると重複するため、Ca KとTe Lのエネルギー差、CdのLα、Lβ1、Lβ2の比、U L信号等を参考にそれぞれの元素の有無を判定した。また、Cl KとRu LやRh Lが重複するため、EDX信号のわずかなエネルギー差や、高エネルギー側におけるRu KやRh Kのピークの有無を参考に、各元素の有無を判定した。
 図13から図14に示すように、領域03のCd含有領域は、幅が数 [μm]の不定形粒子であり、その中央部分を中心とした点分析スペクトルからは、蒸着材料であるPtを除いて、主にO、Fe、Cdが見られた。

領域04~05

 図15に示すように、着目領域04は、2WEL2103B-2表面の特異元素の濃縮部分としてCrの濃縮部分を設定し、着目領域05は、同視野に存在する特異元素の濃縮部分としてMnの濃縮部分を設定した。
 図16に示すように、領域04~05の近傍は、大量のFe、O、Cが存在し、Al、Si、Cl、Kの濃縮箇所が存在し、わずかにNa、Mg、S、Ca、Ti、Cr、Mnの濃縮箇所が見られた。
 図17から図18に示すように、領域04のCr含有領域は、幅が約5 μm の領域であり、ごく近傍の重なった位置にMg、Al、Si、Clが存在した。その中央部分を中心とした点分析スペクトルからは、蒸着材料であるPtを除いて、主にO、Fe、Cr、Al、Mgが見られた。
 図19から図20に示すように、領域05のMn含有領域は、微粒子が凝集して幅が約5 μm の領域を形成しており、O、Al、Si、Clの形状とほぼ一致した。粒子上にはMgが点在する部分も認められた。その中央部分を中心とした点分析スペクトルからは、蒸着材料であるPtを除いて、主にMn、O、Feが見られた。

領域06

 図21に示すように、着目領域06は、2WEL2103B-3表面の特異元素の濃縮部分としてCrの濃縮部分を設定した。
 図22に示すように、領域06の近傍は、大量のFe、O、Cが存在し、Si、Tiの濃縮箇所が存在し、わずかにNa、Mg、Al、Cl、Ca、Cr、Ni、Znの濃縮箇所が見られた。
 図23から図24に示すように、領域06のCr含有領域は、幅が約15 μm の領域であり、Niの形状とほぼ一致しており、近傍にTiが存在した。その中央部分を中心とした点分析スペクトルからは、蒸着材料であるPtを除いて、主にFe、O、Cr、Al、Si、Niが見られた。

各着目領域のEDX点分析による半定量分析結果

  各着目領域の中心部付近でのEDX点分析において、EDX付属のソフトウェアによる各元素の半定量値の出力結果を、一次データとして表1に示す。このデータは、疑似信号や有効数字の評価を行っておらず、表に示す元素の合計を100%として表示している。C及び蒸着膜材の元素(Pt、Pd)については、それらのEDX信号が有意に見られる場合も含めて表示していないが、各点分析位置のスペクトルにおいて、これらの元素及び表に示した元素以外の元素からのEDXピークは有意に存在しなかった。
 この一次データをもとに、スペクトルの精査を経て、定量可能な元素の合計を100 at%として元素組成比を再計算した結果を、半定量分析結果として表2に示す。なお、Cは有意に見られるが表示していない。

表1 2WEL2103B FE-SEM/EDX点分析(領域01~06)の一次出力データ
(単位:at%)
領域No. 着目元素 O K Na K Mg K Al K Si K S K Cl K Ag L Cd L U M Sn L Ca K Te L Cs L Ba L Ti K Cr K Mn K Fe K Ni K Zn K Pb L Zr K Mo K Total
01 Ca 63.0 0.0 0.2 0.3 0.1 11.4 0.1 0.0 0.0 0.0 0.0 9.3 0.4 0.0 0.0 0.0 0.0 - 15.2 0.1 0.1 0.0 0.0 0.0 100
02 Zn 43.3 10.7 0.0 0.4 0.1 0.0 0.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.1 - 38.6 0.2 6.3 0.0 0.1 0.1 100
03 Cd 41.0 0.0 0.0 1.3 0.6 0.2 1.4 0.3 18.6 2.7 1.0 0.0 0.2 0.0 0.0 0.0 0.5 - 32.1 0.1 0.0 0.0 0.0 0.1 100
04 Cr 31.4 0.3 6.5 9.6 2.3 0.1 0.5 0.1 0.0 0.0 0.0 0.2 0.0 0.0 0.0 0.1 13.5 - 35.2 0.1 0.2 0.0 0.0 0.1 100
05 Mn 36.0 0.4 0.3 1.8 2.6 0.1 0.4 0.1 0.0 0.0 0.0 0.3 0.0 0.0 0.0 0.0 0.1 37.2 20.4 0.0 0.3 0.0 0.0 0.1 100
06 Cr 34.6 1.0 0.5 3.0 3.0 0.2 0.1 0.1 0.0 0.0 0.0 0.1 0.0 0.0 0.0 0.1 5.9 - 48.1 2.6 0.9 0.0 0.0 0.1 100

(注意事項)
・このデータは、SEM-EDX装置に付属したソフトウェアによる各元素の半定量比の出力値をそのまま表示したものであり、疑似信号や有効数字の評価を行っていない取得データである。
・本表は、本表に示す元素の合計を100%として表示したものであり、Cや蒸着膜材の元素(Pt, Pd)については、それらのEDX信号が有意に見られる場合も含めていない。
・元素記号横のK,L,Mは、定量に用いた特性X線の種別を示す。


表2 2PEN2103 着目領域のSEM/EDX点分析による半定量分析結果
(単位:at%)
領域No. 着目元素 O Na Mg Al Si S Cl Ag Cd U Sn Ca Te Cs Ba Ti Cr Mn Fe Ni Zn Pb Zr Mo Total 分類
1 Ca 64 n.d. n.d. n.d. n.d. 12 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 9 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. L.O.Q. 15 L.O.Q. L.O.Q. n.d. n.d. n.d. 100 Ca
2 Zn 49 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 44 L.O.Q. 7 n.d. n.d. n.d. 100 Zn
3 Cd 43 n.d. n.d. n.d. 1 n.d. 1 n.d. 20 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 1 n.d. 34 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 100 Cd
4 Cr 32 n.d. 7 10 2 n.d. L.O.Q. n.d. n.d. n.d. n.d. L.O.Q. n.d. n.d. n.d. n.d. 14 n.d. 35 n.d. L.O.Q. n.d. n.d. n.d. 100 Cr
5 Mn 37 n.d. n.d. 2 3 n.d. L.O.Q. n.d. n.d. n.d. n.d. L.O.Q. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 37 21 n.d. L.O.Q. n.d. n.d. n.d. 100 Mn
6 Cr 35 n.d. n.d. 3 3 n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. n.d. 6 n.d. 49 3 1 n.d. n.d. n.d. 100 Cr

(注意事項)
・“n.d.”は、EDX信号のエネルギースペクトルにピークが確認されず、検出限界以下と判断した元素である。
・“L.O.Q”.は、スペクトルにピークが確認できるものの、本表に示す元素を100%とした場合に0.5at%未満となり、定量下限以下と判断した元素である。
・本表の数値は、“n.d.”及び“L.O.Q.”を除いた半定量性を持つデータを示していると判断した元素を100%として規格化して表示した。ただし、C、及び蒸着膜材の元素(Pt, Pd)については、それらのEDX信号が有意に見られる場合も含めていない。
・本表の数値は、着目元素を含む粒子の平均組成を表すものではなく、粒子とその近傍の構成元素やその多寡といった傾向を概略把握するための概数値である。

各領域からのTEM観察対象試料の選定

 各着目領域中心部のEDX点分析による半定量分析結果に基づき、各領域を次のように分類した(表2の最右列参照)。なお、試料自体にFe及びOが大量に含まれており、各領域の半定量分析結果に影響を与えていると考えられることから、下記分類においては、Fe及びOは考慮していない。
・ 種別 “Ca”:Caを含む領域として、1領域(領域01)が該当。
・ 種別 “Zn”:Znを含む領域として、1領域(領域02)が該当。
・ 種別 “Cd”:Cdを含む領域として、1領域(領域03)が該当。
・ 種別 “Cr”:Crを含む領域として、2領域(領域04、06)が該当。
・ 種別 “Mn”:Mnを含む領域として、1領域(領域05)が該当。
 2WEL2103Bは、いずれの着目領域も燃料やFP特有の元素では無く、炉外からの元素で形成された可能性があり、事故時及びその後の当該箇所の状況や環境について知見が得られる可能性はあるが、RPV内の状況を直接推定できる期待は低いと考えられる。このため、2WEL2103BではTEM観察領域を設定しなかった。

SEM観察結果のまとめ

 2WEL2103B-1の表面には、大量のFe及びOが存在し、わずかにC、Na、S、Cl、K、Ca、Mn、Ni、Znの濃縮箇所も見られた。このうち、SとCaの濃縮箇所は明確に相関していた。2WEL2103B-2の表面には、大量のFe及びOが存在し、C、Al、Si、Kの濃縮箇所が存在し、わずかにNa、Mg、S、Cl、Ca、Ti、Cr、Mn、Zn、Cdの濃縮箇所が見られた。このうち、Si、Al、Mgに検出位置の相関が見られた。2WEL2103B-3の表面には、大量のFe、O、Cが存在し、Si、Tiの濃縮箇所が存在し、わずかにNa、Mg、Al、Cl、Ca、Cr、Ni、Znの濃縮箇所が見られた。以上のように、2WEL2103Bは主にFe、Oでできており、鉄の酸化物は黒色もしくは褐色を示すため、黒色部分の特徴となっていると見られる。一方、白色部分の比較的多い面からは、CやKが比較的多く見つかっておりこれが白色物質を形成していると見られる。その他、福島第一原子力発電所での採取位置が近く、黒色扁平であった2WEL2101B-1と2WEL2103Bの黒色扁平部分は同じような特徴を有すると考えると、2WEL2101B-1ではあまり多く見られず2WEL2103Bで比較的多く見られたCl、Si-Mg-Al、Caなどが白色部分の特徴である可能性がある。
 着目領域は6箇所設定した。特異元素の濃縮部分として、Caに着目して1箇所、Znに着目して1箇所、Cdに着目して1箇所、Crに着目して2箇所、Mnに着目して1箇所設定した。各点分析位置の半定量分析結果から、Caが多い領域でSが多く、CrやMnの多い領域ではSi、Al、Mgが多い傾向が見られた。また、NiはCrが多い領域の1つで検出された。2WEL2103Bの各領域には、燃料やFP特有の元素が含まれておらず、TEM観察領域を設定しないこととした。