「Quick Look計画の概要」の版間の差分

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 第3回調査では、ステンレス棒製のロッドを用いて瓦礫層の<span style="color:blue">'''探針調査'''</span>が行われた(<u>#あらかじめ、探査方法のオプションとして準備されていた</u>)。探針調査は、炉心中間領域でまず実施され、わずかな加重で約35cm押し込むことができた。このことから、堆積物の上層はルースな状態であったと判断された。次に、炉心中央でも探針調査が行われ、同様に約35cm押し込むことができた。
 第3回調査では、ステンレス棒製のロッドを用いて瓦礫層の<span style="color:blue">'''探針調査'''</span>が行われた(<u>#あらかじめ、探査方法のオプションとして準備されていた</u>)。探針調査は、炉心中間領域でまず実施され、わずかな加重で約35cm押し込むことができた。このことから、堆積物の上層はルースな状態であったと判断された。次に、炉心中央でも探針調査が行われ、同様に約35cm押し込むことができた。
[[ファイル:QuickLook 108.png|左|サムネイル|700x700px|'''<big>図8 Quick Look調査でのビデオカメラ挿入前後での冷却水水位の変化 [1]</big>''']]
[[ファイル:QuickLook 108.png|左|サムネイル|700x700px|'''<big>図8 Quick Look調査でのビデオカメラ挿入前後での冷却水水位の変化 [1]</big>''']]





2024年12月21日 (土) 10:02時点における版

 炉心上部を調査したQuick Look計画については、参考文献[1]に概要がまとめられている。制御棒駆動機構(Control Rod Drive Mechanism: CRDM)の取り外しとアクセスルート確保に向けた検討事項がとりまとめられ、さらに、プローブの挿入作業、データ採集、カメラ画像の取得の過程が示されている。Quick Lookにより、2つの重要事象が明らかになったとされている。(a) 上部プレナム内部の構造物には大きな歪みや溶融などの損傷が見られない。(b) 炉心上部に空洞が存在し、その下にルースデブリが堆積している。

炉心上部の形状

 Quick Look計画では当初、原子炉圧力容器の上部にある、制御棒案内管(Control Rod Guide Tube: CRGT)、上部格子、燃料集合体の上部(端栓など)、さらに、上部端栓が破損していた場合には、炉心部の調査を目的としていた。これは、事故直後には、燃料集合体の形状はほぼ維持されているという推定が主流だったためである。

 調査では、上部ヘッドのリードスクリューホールを通じて、上部プレナム内に放射線耐性のCCTVを挿入した。図1に上部プレナム内の構造物の概略を示す[1]。シリンダー形状の構造の外壁の内部に、制御棒や出力調整棒の案内管が、燃料集合体ごとに設置されている。下の方で、上部格子や支持リングと接続している。図2に取り外したCRDMの模式図を示す[1]。筒状の圧力容器内に制御棒を吊り下げ回転させるメカニズムが装荷されていることがわかる。図3には、TMI-2で使用されていた燃料集合体の模式図を示す[2]。15x15の燃料集合体内に、燃料棒(ジルカロイ被覆管)、および、制御棒案内管と計装管(ジルカロイ-4製)が配置されている。燃料棒の軸方向には、数か所でスペーサーグリッド(インコネル製)が配置され、上端と下端は、ステンレス製の金具で束ねられている。上端下端金具内にはインコネル製のスプリングが装着されている。さらに、各燃料集合体内には、可燃性毒物棒スパイダー、制御棒スパイダー、軸方向出力平坦化棒スパイダー(Axial Power Shaping Rod:APSR)の3タイプのスパイダーのうちひとつが燃料集合体内の案内管を通じて上部から挿入される構造になっている(図4)[2]。外周部の2体の集合体では、オリフィスタイプのスパイダーが挿入される構造になっている。図5には、それぞれの燃料集合体中にどのタイプのスパイダーが装荷されていたかを、炉心上部からの見取り図として示す[1]。炉心最外周の燃料集合体にはスパイダーが装荷されていない。3タイプのスパイダーが均質に装荷されていることが確認できる。

図5 燃料集合体とスパイダーの組み合わせ [1]


















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調査の概要

 Quick Look調査では、CRDM中のリードスクリュー図2)を取り外し、その内部に放射線耐性ビデオカメラを吊り降ろすことで、圧力容器上部ヘッド内の制御棒案内管などの構造物、その下の上部格子、さらに燃料集合体上部の様子を観察することが目的とされた。さらに、燃料集合体の破損が大きかったり、上部端栓が損傷していたりした場合には、カメラを炉心部に吊り降ろして炉心上部の破損状態を調査することが目的とされた。Quick Look調査では、4つのキーミッションがあった(詳細後述)。

  • 安全性評価、許認可
  • 冷却水系(RCS: Reactor Coolant System)の水位低下
  • リードスクリューの切断、取り外し
  • 圧力容器内のビデオ撮影

 Quick Look調査は、3回に分けて行われた[1]。

Quick Look I (1982, Jul. 21~)

 図5に示すH8集合体(炉心中央)のリードスクリューをとりはずし、H8集合体部位の真上からCCTVを挿入、ルースデブリベッドにぶつかるまで吊り降ろされた。ルースデブリベッドにぶつかるまで、本来燃料集合体があった位置に何も観察できなかった。CCTVをいったん吊り上げて上部格子周辺を炉心側から観察、さらに再度吊り降ろしてルースデブリベッドの直上で360°周辺を観察した。H8位置の上部格子には付着物がほとんどなく、上部格子に顕著な損傷が見られないこと、上部空洞部分では、H8集合体だけでなく、その周辺の集合体も存在していないことが確認された。ただし、照明の光量不足で、それより広い範囲は観察できなかった。

Quick Look II (1982, Aug. 6~)

 B8集合体(炉心外周)とE9集合体(炉心中間)のリードスクリューを取り外し、H8集合体部位には補助照明を挿入してから、CCTVが吊り降ろされた。CCTVは、まず、炉心周辺部のB8集合体部位から挿入された。炉心周辺部ではスパイダーが残留していることが確認された。カメラのライトが破損したため取り換えを行った後に、再度可燃性毒物集合体の位置に吊り下げ、その残留が確認された。B8位置では燃料集合体がかなり本来形状を維持し、CCTVを空洞の内部まで挿入できなかったため、E9集合体部位からCCTVが再度挿入された。炉心中間部部では、ルースデブリベッドの上に何も存在しておらず、上部空洞の底部にはルースデブリベッドが広範囲に広がっていることが確認された。また、破損した燃料集合体部材が識別可能な状態でルースデブリベッドの上に堆積していた。上部格子を下から観察し、E9周辺の4個の燃料集合が、ほとんど残留していないことが確認された。

Quick Look III (1982, Aug. 12~)

 E9集合体(炉心中間)位置からCCTVが再挿入された。CRGTの内側も観測された。さらに、SS製の棒を用いて、H8とE9部位のルースデブリをつつく探針調査が実施された。その結果、約30cm内部に侵入できた。あわせて、上部空洞のパノラマ撮影が行われた。

安全評価、許認可に向けた準備

 Quick Look調査、および、圧力容器ヘッドの取り外し作業に係る安全評価として、(1)臨界評価、(2)崩壊熱の除去体系の解析、(3)RCS系ガスの放出解析、が行われた[1]。このうち、ビデオカメラの挿入作業については、以下の(4)に示す項目について評価された。

臨界評価

 臨界評価では、現場作業(探査プローブが圧力容器の開口部を貫通、圧力容器ヘッドの取り外し)中の未臨界度の維持に影響する可能性のある、RCS系内部での仮想事象を抽出し、それに対応した減速材、反射材、燃料の配置を仮定して解析が行われた[6]。具体的な作業としては、以下の4ケースが検討された・

  • 軸方向出力平坦化棒(APSR: Axial Power-Shaping Rod)の挿入(参考:APSR挿入試験
  • 制御棒駆動機構(CRDM: Control Rod Drive Mechanism)の取り外し
  • 圧力ヘッド内部の調査、調査プローブやサンプリング装置の上部ヘッド貫通部を通じた挿入
  • 上部ヘッドの取り外し(参考:圧力容器ヘッドの取り外し

 これらの作業において、燃料体系のいかなる反応度クレジット状況を考慮しても、また、仮想的な燃料取り扱い時の妨害事象や物理的体系の変化を考慮しても、十分に安全にシャットダウンできる状況にあること、特に、以下の4項目が重要であるとされた[6]。

  • TMI-2の現状を仮定した体系での反応度評価
  • 本来の炉心領域以外への燃料物質の移動や堆積によって、引き起こされる可能性のある反応度評価
  • 検討されている作業中に発生する可能性のある種々の妨害事象によって、引き起こされる可能性のある反応度評価
  • すべての反応度に関する仮想体系において、3500ppmのホウ酸水を注入することによるサブクリティカリティマージンの評価

崩壊熱の除去体系の解析

 崩壊熱の除去体系については、炉心部の熱的環境に対し、RCS冷却水の一部を排水することによる熱的条件の変化が解析された(#上部ヘッドの取り外しでは、あらかじめ、圧力容器の水位を下げる必要があった)。解析では、TMI-2の運転マニュアルに準拠した自然循環による冷却を基準とし、冷却水温度が77℃以下に抑制され、沸騰まで十分マージンがあることが確認された[7]。検討課題は、以下の2点であった。

  • RCS系の水位低下が冷却システムに与える影響
  • 炉心内の水位低下による水温変化

 以下の解析結果が得られている[7]。

  • 除熱体系が変わることで、RCSループを通じて水の若干の移行が起こる
  • 水位低下により、若干の水温上昇が発生し、熱的な平衡状態が変化する
  • 水温上昇の程度は、ヒートシンク(格納容器)側の温度に依存する
  • 水温上昇は一日あたり華氏5℃以内である(1982年夏の気温での格納容器温度:華氏100℃の条件)
  • 現状システムにより、追加の熱除去が可能である(RCSへの水の再供給など)

ガス成分の放出解析

 RCSからの排気前に、水素ガスとKr-85の残留量と、放出時の希釈量が解析された(#Quick Look計画では、CRDM内のガスを窒素でパージし、いったん格納容器内に排気された後、環境に放出される計画であった。)。

 Kr-85の放出については、RCS系内の残留Kr-85量は30Ciと推定された。解析では3つの仮定がおかれた。

  • RCS系の冷却水中に溶融およびフリー気体で存在するKr-85すべては1時間で放出される
  • Kr-85は格納容器の換気フロー(28.3L/分)で希釈される
  • 格納容器内での希釈の効果は無視する

 解析の結果、建屋の換気フローで希釈放出することで、最も近い民家でも線量増加は許容範囲におさまる(<2.1 x 10-1 μSv、全身被ばく線量)と評価された。さらに、Quick Look時の貫通口からのKr-85放出は、これを大きく下回ると評価された。

 水素については、RCS系の残留ガスを100%水素と仮定しても、25倍希釈すれば格納容器内に放出可能と評価された。また、放出する場所は、作業スペースから離れた場所とされた。リードスクリューの切り出しと取り外し作業中は、RCS系内は大気圧に減圧され、冷却水の表面は、26cm2断面のCRDM案内管から侵入する大気に曝される。作業中の開口部を通じた水素ガスの外部へのリークは、高々0.85L/minで十分に小さいと評価された。

CCTVカメラ挿入時の安全性評価

 Quick Look計画での作業全般の安全性評価は、以下の項目について実施された[8]。

  • 放射性物質の格納容器内への放出の可能性
  • 同、環境への放出の可能性
  • 燃料体系の変化の可能性にともなう反応度の影響
  • RCS系の水位低下による、崩壊熱の除去能力の変化
  • ホウ素水濃度の不注意による低下の影響
  • RCS系から格納容器へのガス放出
  • 作業員の被ばく予測
  • 冷却水系の圧力バウンダリ破損によるRCS系の水質変化の影響

リードスクリュー取り外し計画と治具の開発

 リードスクリュー取り外しは、通常のリードスクリューナットを外す方法と、それがうまくいかない場合の代替案としてトルクチューブ(図6(g))を使う方法が検討された[1]。リードスクリューの接続をを外した後に、リードスクリューを吊り上げて、一時保持ポジションでクランプし、リードスクリュー切断ツールを使って切断する計画であった。全長7.3mのリードスクリューに対し、圧力容器上部の作業プラットフォームから建屋のミサイルシールドまでの距離が6.1mしかなかったため、リードスクリューを2つに分割して、CRDMから取り外す必要があった。

リードスクリュー取り外し治具

設計の基本仕様

  • エアロックから作業エリアまで、それぞれのパーツが、一人の作業員が運べる重さであること。(#TMI-2では、エアロックが開放できたため、長尺ツールの搬入は大きな課題ではなかったと記述されている。
  • リードスクリューの接続部外し、吊り上げて一時保持などの作業が、作業プラットフォームの上で、CRDMの7,8,9列について実施できるようにすること(図5参照)。
  • リードスクリューの上下動作と、C配管にろう付けされているスパイダーの取り外しが、リードスクリュー接続外し作業の前に実施できること。
  • 作業時の炉心の振動ができるだけ少ないこと。
  • リードスクリューの吊り上げ、一時保持の時に、リードスクリューが40-55°回転できること、保持時に重量負荷レベルが表示されること(#リードスクリューの接続部を外すためには、45°回転させる必要があった。リードスクリューと吊り上げ治具の重量は170ポンドであり、建屋の管理上の吊り上げ重量の制限は350ポンドであった)。
  • 取り外しがうまくいかなかった場合、装置の改修とモーターチューブの閉塞を行うことで、工程が中断できること。
  • リードスクリューが想定よりも高線量だった場合、一時保持ポジションまで引き上げたままで、そのほかの作業を進めることが困難になる可能性があった。その場合は、リードスクリューをいったん下げられること。
  • リードスクリュー一時保持ツール(C-washer)を用い、CRDMの上部にリードスクリューを保持したところで、取り出し作業が完遂できること。


 さらに、特定の仕様基準が、新たに開発あるいは改良された各種治具に対して設定された。

  • リードスクリューの改良型軽量吊り上げツール(図6(a))・・・通常品の改良。より短くし、TMI-2のミサイルシールドの下のスペースで作業できるようにした。ナットランナーに対応可能となっている。
  • ナットランナー(ナットの締めつけ/取り外し工具、図6(b))・・・通常品と類似した構造。軽量吊り下げツールに対応している。
  • バンドソー(図6(c))・・・携帯用のバンドソー、スクリューから約1m離れた運転員が作業できる仕様となっている。
  • バンドソー取り付け器具・・・バンドソーの支持器具。リードスクリュー切断時に用いる。
  • リードスクリューの吊り上げクランプ(図6(d))・・・吊り上げたリードスクリューの下を切断する時に、上の方を保持する。
  • チップデフレクター(図6(e))・・・切断くずがモーターに入り込まないようにかわす治具。
  • 改良ジャンピングジャック(図6(f))・・・空気圧式の通常ジャンピングジャックを油圧式に改良。
  • リードスクリュークランプとサポートリング・・・切断したリードスクリューの仮止め治具。
  • モーター管仮閉塞治具・・・リードスクリューが仮止め位置でスタックしないように用いる治具。
  • ビデオカメラ・・・WH製 Model ETV 1250カメラから、スクリーンをとりはずし、関節つきのケーブルをとりつけたもの。

性能確認試験(Proof-of-principle test)

 すべてのツールについて、使用マニュアルに従って動作確認試験が行われた。適切に動くこと、仕様通りの性能が出ることが確認された。モックアップ試験では、作業員の着衣や作業プラットフォーム上での空間配置も含めて現場環境にできるだけあわせ、実際の作業手順どおりにテストが行われた。さらに、モックアップ試験において、作業に要する時間が一つ一つのツールについて確認され、作業員の被ばくが、ALARAに準拠していることが確認された。

プラント側の対策

 図7に建屋断面の見取り図を示す。プラント側では、(1)RCS系の排気・排水、(2)冷却水水位のモニタリング、(3)リードスクリューの取り扱い/移動システム、(4)作業員のコミュニケーションシステムの検討が行われた[1]。

RCS系の排気・排水

 RCS系雰囲気は原子炉建屋内に排気され、さらに環境に放出される。あらかじめ水素とKr-85の影響評価が行われた(前述)。さらに、排気位置近くでの水素ガスによる着火防止対策と、運転員の被ばく低減対策が講じられた。約80m3のRCS系の冷却水が排水された。さらに、腐食防止のため、RCS系は窒素ガスで封入された。排気・排水手順は以下である。

  • RCS系の減圧
  • ホットレグと加圧器の排気
  • SPC系を隔離
  • RCS系を若干陰圧に保持
  • 窒素封入
  • CRDMのH8(炉心中央)内を排気、ガスサンプリング
  • 圧力容器の水位低下によりRCS系の水位低下
  • 窒素圧のモニタリング

冷却水水位のモニタリング

 CRDMのとりはずし作業、RCS系冷却水のサンプリング、圧力容器内へのビデオ挿入では、高精度での冷却水水位の制御が必要となる。2つの高性能計測システムが整備された。Level-transmitter, RC-LT-100(水位の送信機)と、Level-indicator, RC-LT-101(水位の指示機)を、F9位置から挿入して計測が行われた。水位の評価精度は±5インチと記載されている。

リードスクリューの取り扱い/移動システム

 H8位置でリードスクリューを吊り上げて切断し、容器に収納する。吊り上げ作業は、チェーンタイプの吊り具(hoist、1トンまで対応)と、搬送用トロリーシステムをミサイルシールドの上に配置して、手動で行われた。作業プラットフォームの上には、500ポンドのバネ秤が設置された。リードスクリューは2分割して、それぞれ収納缶容器に回収された。収納容器は、4インチ径のポリ塩化ビニール管と端栓からなっており、両端にロープがとりつけられて吊り上げられるようになっていた。リードスクリューサンプルは、建屋内をCanalまで移送され、そこで一時貯蔵された。(図7

作業員のコミュニケーションシステム

 現場作業では、現場調査チーム内(3名)の意思疎通と、調査チームと指揮センターの意思疎通の、双方が必要となる。調査チームは、TV制御ユニット運転員、技術指導者、TVカメラ運転員で構成され、ヘッドセットを装着して、3名の間での通話音声とビデオテープレコーダーの作動音声が共有されるように計画された。調査チームと指揮センターの間では、two-way duplex radio systemが導入され、2か所に中継アンテナを配置し、作業員の音声だけでなく、各種の測定信号が採集される設計となっていた。

(図7を挿入)

作業員のトレーニング

 Diamond Power Specialty Companyの施設で、CRDM組み立て、CRDM排気、リードスクリューの接続外しと一時保持、リードスクリュー回収と切断、不測の事態の際にCRDMを閉鎖、等の作業について作業員一人一人のトレーニングが行われた。チームトレーニングは、TMI-1サイトとB&W社で実施された。TMI-1サイトでのモックアップ試験設備は、1982年7月2日に準備完了し、現場作業手順の最終確認と調整が行われた。現場を再現した、着衣と配置によるリハーサルが、GPUN Radiological EngineeringとNRCによって承認されている。

作業手順、指示書

 新たな運転マニュアル9個、危機対応3個、その他の課題4個、既存の運転マニュアルの改訂2個、同じく危機対応4個、がそれぞれ整備された。このうち、危機対応については、新たに、

  • RCS系の水位が、CRDMを通じたカメラ調査のため、通常の変動範囲を超えて変化した場合の対応
  • 蒸気発生器系(OTSG)の水位が、CRDMを通じたカメラ調査のため、通常の変動範囲を超えて変化した場合の対応
  • RCS系の水位表示が失われた場合の対応

が追加された。従来の危機対応については、

  • RCS系のリークによる小破断LOCAの対応
  • RCS系の圧力表示が失われた場合の対応
  • 想定外の反応度変化があった場合の対応
  • OTSG配管が破損した場合の対応

について、指示マニュアルが整備された。

 さらに、Quick Look調査をサポートする補助的な方法(TCN: Temporary Change Notices)として、

  • RCS系の水サンプルを採集するための代替案
  • ビデオ調査の代替案
  • 探針調査の方法
  • 聴診モニターの装荷
  • CRDM取り外しの代替案

がとりまとめられた。ガスサンプリング用の指示マニュアルとして、 2つのSpecial Operation Procedures(SOPs)が整備された。

  • H8位置からのガスサンプリング法
  • RCS系の高い位置からのガスサンプリング法

被ばく・線量評価

被ばく線量予測

 作業員の被ばく予測値として、およそ、作業員全員の合計値として0.50~1.50Sv(作業のべ時間:300時間、作業環境の線量:0.0015~0.3Sv/hr)と見積もられた。

 次に、リードスクリュー取り外し作業時に、リードスクリューから受ける追加線量が評価された(詳細は、参考文献[1]の2.6.1節を参照)。

ALARA規定

 ALARA規定にのっとり、以下の8要件で、リードスクリュー作業手順が策定された[1]。

  1. リードスクリューナットのとりはずしを最初に試みること・・・最初に、リードスクリューナットの回転を試みることで、リードスクリューが取り外せるかどうかが確認できる。もし、ナットが固着していた場合には、リードスクリュー接続部が外せて、固定位置まで引き上げられたとしても、リードスクリュー本体をCRDMから取り外すことができない。リードスクリュー取り外しは、Quick Lookの重要課題であり、作業員被ばく総量を減らすために、作業の初期に、ナットの状態を確認することが重要である。
  2. トルク受け(Torque Taker、図6(h))は、使用しないときは、常時、最低位置でそのままにしておくこと・・・リードスクリューナットをはずして、リードスクリューが約1cm下がった場合、トルク受けを引き上げることなしで、リードスクリューの接続取り外し、一時保持、取り外しが可能となる。一般炉では、トルク受けは、重要線源として扱われており(磁性を持つため、放射性の粉塵を吸着しやすい)、できるだけ使用しないことが望ましい。
  3. 干渉の兆候を早期に検出するため、リードスクリューの接続取り外し箇所の近くでモニターすること・・・重要作業(リードスクリューの吊り上げや取り外し)の際には、CRDM内でのリードスクリューのつまりを避けるため、近くでモニターする。仮に、負荷指示計の値が、リードスクリュー引き抜き時に上昇することに気づいた場合には、作業員は、そのCRDMについては、その引き抜き位置で作業を中断し、次のCRDMでの作業に移行する。この手順により、緊急時のCRDM開口部閉鎖作業が発生することを避けることができる。
  4. リードスクリューの偶発的な位置の低下への対応・・・リードスクリューが吊り上げられ、一時保持されている際には、線量レベルがモニターされる。もし、線量が想定限界を超えた場合、リードスクリューは、切断治具がセットアップされるまで、CRDM内に戻される。
  5. ポジション指示器ケーブルの取り外し・・・リードスクリューの接続取り外しと撤去作業の後、ポジション指示器のケーブルをポジション指示器からはずしてから、ポジション指示器を作業プラットフォームから撤去する。これは、ケーブルからの線量を減らし、作業員の操作性を向上させるためである。
  6. プラットフォーム・・・作業員のアクセスと各種機器の設置のため、作業プラットフォームを装荷する。
  7. ホウ酸水の準備・・・必要があった際に、汚染された危機を洗浄するためにホウ酸水を準備する。
  8. 電気駆動の油圧ポンプ・・・リードスクリュー接続部取り外しに用いられるジャンピングジャック(図6(f))は、電気駆動の油圧ポンプで動作する。カメラ撮影のためのリードスクリュー取り外しには、手動駆動の油圧ポンプが用いられる。これは、接続部取り外し時間の短縮のためである。

 治具の設計に関しては、以下の6要件が示された。

  1. 柄の長いクランプ・・・3フィート離れても、吊り上げ位置で固定可能
  2. ソースタンド・・・固定性、操作性、交換性、切断時に6フィート離れて作業が可能
  3. 良好な操作性、組み立て時間、輸送時間・・・パーツの最大重量(約14kg、一人で持ち運び可能)、14フィート長さの長尺ツール2個があったが、いずれも14kg以下の重量
  4. モックアップ試験・・・実際の着衣と配置でリハーサル
  5. チップデフレクター(図6(e))・・・プラスチックスリーブ、切断時のくずの回収
  6. ベータ線遮蔽・・・切断作業時、輸送時の遮蔽板設置

線量のコントロール

 一般には、放射線環境に大きな変化があった際の対応方法が指示書に記載されている。作業員が線量モニターを監視し、指揮センターに報告をあげる。想定を超える線量環境になった場合に、どのくらい現地にとどまるかに関する指示書が新たに記載された。これは、作業の自由度を上げるための措置とされた。作業員の頭部についているサーベイメーターで滞在可能時間を表示・判定する。ガンマ線量が1R/hrを超えた場合、チームはいったん業務を保留すべきとされた。リードスクリュー切断作業中に、β、γ線量については、1フィートの値で10R/hr(γ線)、300 rad/hr(β線)を超えた場合、作業を中断し、指揮センターの指示を待つこととされた。これらは、作業員の許容された線量を超える可能性があるためである。汚染コントロールは、リードスクリューを10インチ径のプラスチック容器中に引き上げる作業の際に実施された。この過程で、リードスクリューのルース付着物が飛散するのを防止するためである。リードスクリューの切断作業エリアは、布テープで密閉された。ベータ線遮蔽としては、Plexiglass(1/4インチ厚さ)が設置され、リードスクリュー吊り上げ時には防護眼鏡と防護服が着用された。

Quick Look作業

リードスクリュー取り外し前の気体、液体サンプルの採集

 リードスクリュー取り外し前に、H10位置のCRDM内から気体と液体のサンプルが回収された(気体2個、液体1個)[1]。CRDM上部に取り付けられているベントツールのバックアップバルブに、サンプリングbomb(150mlサイズ)を取り付けてガスサンプルが採集された(図6(l))。放射線測定の結果、γ線が150mR/h、ベータ線が400mrad/hであった。次に、CRDMの内側をベントした後に窒素封入を行い、液体サンプルが採集された。

 気体サンプル中では、Kr-85がおよそ1μCi/cm3、Cs137がおよそ3.5 x 10-5μCi/cm3検出された。また、ガス組成は、およそ水素約57~63%、窒素約14~21%、酸素2~4%、その他であった。

 液体サンプル中では、Sr-90,H-3,Cs-134,Cs-137,C0-58,Co-60,Ru-106,Sb-125,Ce-144,Mn-54が検出された。また、主要な溶質成分として、ホウ素3820ppm、塩素2.5ppm、ナトリウム780ppm、が検出された。さらに、CRDM開口部を通じて、サンプリングbombが圧力容器内に挿入された。CRDM内の液体サンプルとほぼ同様の分析結果が得られた。以降、週一回のペースで、圧力容器内の冷却水のサンプリングと分析が行われた。

 一方で、CRDMの開口作業の途中で、圧力容器ヘッドの内側で、何らかのメカニズムでガスが発生していることが明らかになった。CRDM開口前の気体の組成は、上述したように水素リッチでわずかに酸素が含有されていた。しかし、開口作業にともなって空気が侵入し、酸素と窒素の濃度が少しずつ上昇し、逆に水素濃度が低下した。

 すべてのCRDM取り外し作業(後述)が終了した後に、炉心中央のH8位置のCRDMベントツールに圧力計が取り付けられた(図6(k)(l))。圧力計取り付け前に、CRDMと圧力計の内部は窒素でパージされた。圧力計により、圧力容器ヘッド内で生成されているガスの発生量が計測された(生成速度は、およそ1.1~1.4L/日)。また、CRDM内のガス組成の変化が測定された(表1)。時間経過に伴い、上部ヘッド内で水素ガスが発生していることが確認された。

取り外したリードスクリューの観察結果

 カメラ調査の準備として取り外した3本のリードスクリューについて、外観上では、顕著な歪みや損傷は見られなかった。B8スクリューには黒色の付着物が観測された。表面線量としては、約30cm離れた位置で0.1~72 R/hrが測定された。上部プレナム構造物の上部に相当するリードスクリューの中央位置で、高い線量が計測された。リードスクリューとその付着物について、詳細な分析が行われた[3,4,5]。その詳細は別項目にまとめた。

参考:リードスクリューサンプルの分析と自然発火性試験

 B8部位のリードスクリュー取り外し作業中に、別の3種類のサンプルが回収された。CRDMの内側をかきとったサンプル、リードスクリューを取り外した後に作業台上に残っていた粉末サンプル、リードスクリューの削り屑、であった。これらのサンプルの線量は大きく異なっていた、CRDM内面サンプルでは、Cs-137,Sr-90の線量が低く、粉末サンプルでは高かった。

 このうち、削り屑サンプル100mgを使用して、自然発火性確認試験が行われた。

リードスクリュー付着サンプルの自然発火性確認試験

 以下の項目で実施され、いずれも、自然発火性がないと結論された。

  • ホットプレートで加温(空気中、150°、10分) ⇒自発発火性なし、変色あり
  • 鉄からのスパークに曝す試験  ⇒自然発火性なし
  • アルコールランプに数分曝す(約1000℃、10mgの付着物)  ⇒自然発火性なし

 さらに、ホットプレートで加温したサンプルとアルコールランプに曝したサンプルの一部をペトリ皿に入れて、加熱していないサンプルと、目視および顕微鏡で、それぞれの状態の違いが確認された。

リードスクリュー取り外しの作業記録(原文の直訳)

 炉心中央のH8リードスクリュー取り外し作業については、文献[1]中に、試行錯誤の過程が詳細に示されている。以下に直訳で記載する。

---ここから、直訳での引用[1] 

 CRDMトルクチューブとリードスクリューナットの模式図を図6(g)(i)にそれぞれ示す。

 H8部位のCRDMのリードスクリューを外す最初のトライでは、荷重読み取り値が350ポンドであり(本来の重量は170ポンド)、なんらかの干渉またはリードスクリューの損傷が原因と判断された。しかし、リードスクリューナットは自由に回転した。一方で、当初、リードスクリューは位置が下げられず、したがって、リードスクリューが取り外し位置まで回転できなかった。リードスクリューの改良型軽量吊り上げツール(図6(a))で軽く叩いたところ、リードスクリューが十分に下がり、45 °回転して接続が外せる位置に到達した。しかし、リードスクリューは、管理上の荷重制限である 350 ポンドの負荷での引き上げでは、1インチを超えて持ち上げられなかった。

 数分間かけて、リードスクリューを上げ下げしたり、回転させたりした後で、 別のCRDMでの作業に移行することが決定された。この動作の間に、H8リードスクリューは45°を超えて回転するようになった。後の分析では、この時点で制御棒スパイダーが崩落した可能性が高いと推定された。ただし、干渉がまだ存在しており、H8リードスクリューを取り外すことはできなかった。

 K7部位のCRDMでリードスクリューを外す試みが失敗した後(後述)、H8部位で2回目のトライが行われた。再トライの前に、CRDMドライブを元の位置に戻すため、リードスクリューナットを時計回りにハードストップまで回転させた。ナットは予想される4~7回ではなく、20回回転した。これは、リードスクリューとナットは結合されておらず、ナットはリードスクリュー係合ピンの底にあることを明示していた。しかし、リードスクリューに荷重をかけても、管理上の荷重制限である350ポンドでは、1インチ以上動かなかった。リードスクリューナットが確実に外れている兆候が見られていることを考慮して、リードスクリューが吊り上げられない問題の原因を判断するため、作業員は吊り上げツールを激しく揺さぶるよう指示された。この作業中に、リードスクリューが緩み、荷重の測定値が170ポンドに変わった(#何らかの干渉が解除された)。続いて実施された、リードスクリューの一時待機位置(パーキングポジション)への吊り上げ、および、取り外しプロセスでは、リードスクリュー表面に検出可能な損傷がないことが目視で確認された(#H8リードスクリューの取り外しに成功した)。

 前述のH8リードスクリュー接続解除の最初のトライが失敗した後、K7部位でリードスクリュー取り外しの試みがなされた。ここでも、リードスクリューの動作に対して、干渉または干渉がある兆候が見られた。吊り上げ時の荷重の読み取り値が350ポンドであったため、何らかの損傷があったと判定された。リードスクリューナットは自由に回転したが、リードスクリューは上下に動作しなかった。 ただし、H8と同様に、吊り上げツールで軽く叩いたところ、 リードスクリューが上下に移動し、回転するようになった。リードスクリューは45°回転させた後、吊り上げられたが、350ポンドの荷重制限では1インチ以上動かなかった。吊り上げツールを数回上下させ、数回回転(0°→45°→0°)させたところ、軽量吊り上げツールでは、リードスクリューを回転できない状態になった。そこで、吊り上げツールとナットランナーが取り外され、代替案として準備されていたアンカップリングツール (図6(j)) が試された。ジャンピングジャックと代替アンカップリングツールが接続されると、ジャックが作動し、トルクチューブが正常に上下した (図 6(f)(j)) 。しかし、この段階では、トルクチューブは30~35°しか回転しなかった。完全に45°回転させるため、トルクチューブを数回前後に回転させた。これらの回転中に、リバースハードストップが通常の非連結位置より約25°後方にあることが観察された。これらのK7部位での観察からは明確な結論は得られなかった。リードスクリュー接続を解除するため、45°回転させようとして何度か失敗した後、トルクチューブは結合位置に戻り、モーターチューブ内に再結合された。この時点で、K7位置の作業が終了した。

カメラ撮影の作業記録

 カメラ撮影作業の経緯について、文献[1]中に、試行錯誤の過程が示されている。以下に要約する。なお、ビデオカメラ挿入前に、冷却水水位を上げる操作が行われた(図8)。

 Quick Look計画でのカメラ調査は、1982年7月21日、8月6日、8月12日の3回実施された。第1回調査では、炉心中央のH8リードスクリューを取り外した位置からカメラが挿入された。上部ヘッド内のプレナム構造物には大きな損傷は観測されなかった。しかし、炉心位置までカメラを下したところ、燃料集合体や制御棒スパイダーが崩落していることが判明した。カメラをさらに約1.5m下し、堆積していた瓦礫層の上部を観察した。照明の光量不足と冷却水の水質のため、広い範囲は観測できなかった。

 炉心外周部と中間部にあるB8とE9リードスクリューを取り外した後、第2回調査が行われた。炉心外周のB8位置では、燃料集合体と制御棒スパイダーが本来位置に存在していることが確認された。一方、炉心中間部のE9位置では、燃料棒や制御棒が崩落し、瓦礫が堆積していた。瓦礫の堆積位置は、炉心中央とほぼ同じ高さであった。さらに、スプリングや無傷あるいは一部無傷なスパイダーがルースデブリの上に崩落していること、また、燃料集合体の上部が破損・残留して上部格子からぶら下がっていること、などが観測された。H8位置から補助照明を挿入したことで、画質「が鮮明になった。

 第3回調査では、ステンレス棒製のロッドを用いて瓦礫層の探針調査が行われた(#あらかじめ、探査方法のオプションとして準備されていた)。探針調査は、炉心中間領域でまず実施され、わずかな加重で約35cm押し込むことができた。このことから、堆積物の上層はルースな状態であったと判断された。次に、炉心中央でも探針調査が行われ、同様に約35cm押し込むことができた。

図8 Quick Look調査でのビデオカメラ挿入前後での冷却水水位の変化 [1]


















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探針調査の方法

 探針調査は、約1.3cm径のステンレス製の棒で行われた。H8とE9位置のCRDM配管から挿入し、デブリベッド表面に到達した後に、ステンレス棒の自重(約14kg)でデブリベッド内に侵入するように、ロッドを回転させた。ロッドは、容易に約35cm侵入した。そこで、障害物のため侵入できなくなった。

カメラ撮影から直接得られた結論

 カメラで撮影された範囲に限定されるが、Quick Look調査の直後に、以下の観察結果がまとめられている[1]。

  • 事故進展中に、燃料集合体のかなりの部分が激しく損傷し、その一部は瓦礫上のデブリベッドを形成した。
  • 炉心上部に、およそ1.5m深さの空洞が形成されていた。空洞は炉心中央から、炉心中間領域の先まで広がっていた。
  • 燃料ペレットが溶融した直接の痕跡は観測されなかった。しかし、この時点では、燃料ペレットが溶融したかどうかについては結論が得られなかった。
  • 炉心中央と炉心中間部位でのルースデブリベッドは、少なくとも、約35cm以上の堆積深さがあった。ルースデブリは溶融物の塊ではなかった。
  • 予想されていたように、燃料棒以外の燃料集合体部材(制御棒、スペーサーグリッド、スプリングなど)には溶融の痕跡が見られた。
  • 上部プレナム領域では、顕著な破損は観測されなかった。炉心中央と炉心周辺で、燃料集合体の一部が、炉心支持格子からぶら下がっていた。

 Quick Look観察結果の詳細な技術レビューは、参考文献[9]にまとめられている。以下に要約を示す。

上部プレナムの観測結果

 ビデオ観察のために取り外された3本のCRDM案内管の内面には付着物がほとんど存在せず、本来形状が維持されていた。取り外されたすべてのスクリュー側にも目立った損傷がなく、若干の付着物が存在していた。CRDM内の構造物にも、歪や損傷は見られず、若干の付着物が存在していた。上部プレナム構造物の支持板には溶融の痕跡はなかったが、分離配管の底部に若干の金属系の付着物があった。上部炉心支持構造の底部に溶融の痕跡が見られた。

 上部炉心支持板にはたわみがなく、分離配管、グリッド板、圧力パッドなどの構造物は、本来の位置に残留していた。一方で、炉心中間のE9とその近くのD8,E8,D9では、上部格子に破損した上部端栓がぶらさがっていた。E9では、上部端栓の覆い(Grillage)は完全に消失していた。D8,E8,D9では端栓の覆いが大きく損傷していた。ぶら下がり部分には、スペーサーグリッドや制御棒スパイダーの上部、燃料棒の上部などが見えていた。ぶら下がっていた上部端栓と上部格子のすきまに堆積物を検出し、これが、上部端栓がこの位置で保持される原因と推定された(#本来、上部端栓と上部格子は接続されていない)。

デブリの分布

 上部構造物の表層に付着・堆積していたルースデブリは、約3mmサイズ以下のフレーク状の物質として平面状に堆積していた。これはカメラの接触や移動により、巻き上がった。CRDM案内管の内部にも付着・堆積デブリが存在していた。付着・堆積デブリは、主に構造物の水平面の上に堆積しており、水平面の裏側や垂直面はクリーンであった。上部プレナムの上の方(#プレナム構造物がなく、CRDM案内管のみが存在するあたり)では、均質な付着デブリは見られなかったが、ところどころに付着物が見られた。比較的大きいサイズのデブリが、上部端栓のセンタリングタブと上部格子の間で検出された。金属チップや金属破砕物状だったが、燃料ペレットの破砕物のように見えるデブリ粒子がわずかに観察された。

 上部空洞の下に堆積していたルースデブリについては、カメラをぶつけたところ、微細デブリが雲のように巻き上がった。しかし、すぐに沈降した。1回目の調査では透明度が低かった(視認距離:約8cm)。第2回では、視認距離が約22cmまで改善した。これは、粒子の滞留というよりは光量の問題だった。3回目では、対象物は約30-50cmの距離で識別可能だったが不鮮明だった。

炉心損傷の範囲

 炉心中央では、少なくとも、H8を囲む9体の燃料集合体が、約1.5m下まで崩落していた。E9位置でも同様だった。E9位置では、ルースデブリの上に破砕された燃料棒が見えた。D8周辺にはから、燃料集合体の上部がぶらさがっていた。H8位置とその周辺では、上部端栓はすべて消失していた。E9,D9,E8,D8では、上部端栓が残留していた。B8では、制御棒スパイダーが本来位置に残留し、燃料集合体の損傷もひどくない状態であった。

リードスクリュー取り外しと作動状態の確認

 Quick Look計画でのビデオカメラ調査に続いて、1982年8月23,25日に、リードスクリュー全体の取り外しと作動状態の確認作業が行われた[1]。この計画では、3つの目的が示されている。

  • 現状の炉心状態の推定に利用できるデータを採集する(#リードスクリューが動かない部位では、炉心損傷の影響でなんらかの障害が発生していると推定される。一方で、リードスクリューが容易に動作する場合、燃料集合体が健全である可能性、あるいは、燃料集合体と制御棒スパイダーが崩落して消失している可能性が推定される)。
  • 上部ヘッド取り外しに向けて、リードスクリューをスパイダーから外し、吊り上げの準備を行う。
  • 効率的な引き上げ手順の計画に資するため、CRDMごとに現状を確認しする(#作業時間短縮のため)。

 この作業を通じて、リードスクリューの作動状態がいくつかのカテゴリーでグループ分けされた。これは、炉心損傷状態を推定する根拠の一つとして参照された。カテゴリーわけの詳細な評価結果は参考文献[9]に記載されている。ここでは、図9に一例として、制御棒スパイダーが全く動かなかった部位とスパイダーの下方への移動が2インチ以内だった部位を示す。炉心中間部から外周側にかけた領域がこのカテゴリーに分類されており、この領域で燃料集合体上部の損傷が進んでいたことが推察される。

QuickLook 110.png

参考文献

[1] Quick look inspection: Report on the insertion of a camera into the TMI-2 reactor vessel through a leadscrew opening, GEND-030, vol.1, 1983.

[2] S.M. Jensen, D.W. Akers, R.W. Garner, G.S. Roybal, Examination of the TMI-2 core distinct components, GEND-INF-082, 1987.

[3] K. Vinjamuri, D.W. Akers, R.R. Hobbins, PRELIMINARY REPORT: EXAMINATION OF H8 AND B8 LEADSCREWS FROM THREE MILE ISLAND UNIT 2 (TMI-2), EGG-TMI-6685,1985.

[4] K. Vinjamuri, D.W. Akers, R.R. Hobbins, EXAMINATION OF H8 AND B8 LEADSCREWS FROM THREE MILE ISLAND UNIT 2 (TMI-2), GEND-INF-052,1985.

[5] M.P. Failey, V. Pasupathi, M.P. Landow, M.J. Stenhouse, J. Ogden, R.S. Denning, Examination of the Leadscrew Support Tube from Three Mile Island Reactor Unit 2, GEND-INF-067, 1986.

[6] J.R. Worsham III et al., The Babcock and Wilcox report: Methods and Procedures of Analysis for TMI-2 Criticality Calculations to Support Recovery Activities Through Head Removal, BAW-1738, 1982. (Appendix A of ref. [8])

[7] The B&W report: TMI-2 Decay Heat Removal Analysis, 1982. (Appendix B of ref. [8])

[8] Safety Evaluation for Insertion of a Camera into the Reactor Vessel Through a Leadscrew Opening, rev.2, 1982, GPU Nuclear letter 4400-82-L-0110, 1982.

[9] Quick Look Inspection Results, GPU Nuclear, TPO/TMI-026, 1982.