「Quick Look計画の概要」の版間の差分
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== | == 調査の概要 == | ||
Quick Look調査では、CRDM中のリードスクリュー(図2)を取り外し放射線耐性ビデオカメラを吊り降ろすことで、圧力容器上部ヘッド内の制御棒案内管などの構造物、その下の上部格子、さらに燃料集合体上部の様子を観察することが目的とされた。さらに、燃料集合体の破損が大きかったり、上部端栓が損傷していたりした場合には、カメラを炉心部に吊り降ろして炉心上部の破損状態を調査することが目的とされた。Quick Look調査では、4つのキーミッションがあった(詳細後述)。 | |||
* 安全性評価、許認可 | |||
* 冷却水系('''RCS''': Reactor Coolant System)の水位低下 | |||
* リードスクリューの切断、取り外し | |||
* 圧力容器内のビデオ撮影 | |||
Quick Look調査は、3回に分けて行われた[1]。 | Quick Look調査は、3回に分けて行われた[1]。 | ||
=== Quick Look I (1982, Jul. 21~) === | === Quick Look I (1982, Jul. 21~) === | ||
'''図5'''に示す'''H8集合体(炉心中央)''' | '''図5'''に示す'''H8集合体(炉心中央)'''のリードスクリューをとりはずし、H8集合体部位の真上からCCTVを挿入、ルースデブリベッドにぶつかるまで吊り降ろされた。ルースデブリベッドにぶつかるまで、本来燃料集合体があった位置に何も観察できなかった。CCTVをいったん吊り上げて上部格子周辺を炉心側から観察、さらに再度吊り降ろしてルースデブリベッドの直上で360°周辺を観察した。H8位置の上部格子には付着物がほとんどなく、上部格子に顕著な損傷が見られないこと、上部空洞部分では、H8集合体だけでなく、その周辺の集合体も存在していないことが確認された。ただし、照明の光量不足で、それより広い範囲は観察できなかった。 | ||
=== Quick Look II (1982, Aug. 6~) === | === Quick Look II (1982, Aug. 6~) === | ||
'''B8集合体(炉心外周)とE9集合体(炉心中間)'''のリードスクリューを取り外し、H8集合体部位には補助照明を挿入してから、CCTVが吊り降ろされた。CCTVは、まず、炉心周辺部のB8集合体部位から挿入された。炉心周辺部ではスパイダーが残留していることが確認された。カメラのライトが破損したため取り換えを行った後に、再度可燃性毒物集合体の位置に吊り下げ、その残留が確認された。B8位置では燃料集合体がかなり本来形状を維持し、CCTVを空洞の内部まで挿入できなかったため、E9集合体部位からCCTVが再度挿入された。炉心中間部部では、ルースデブリベッドの上に何も存在しておらず、上部空洞の底部にはルースデブリベッドが広範囲に広がっていることが確認された。また、破損した燃料集合体部材が識別可能な状態でルースデブリベッドの上に堆積していた。上部格子を下から観察し、E9周辺の4個の燃料集合が、ほとんど残留していないことが確認された。 | |||
=== Quick Look III (1982, Aug. 12~) === | === Quick Look III (1982, Aug. 12~) === | ||
'''E9集合体(炉心中間)''' | '''E9集合体(炉心中間)'''位置からCCTVが再挿入された。CRGTの内側も観測された。さらに、SS製の棒を用いて、H8とE9部位のルースデブリをつつく'''探針調査'''が実施された。その結果、約30cm内部に侵入できた。あわせて、上部空洞の'''パノラマ撮影'''が行われた。 | ||
== | == 調査の方法 == | ||
Quick Look調査、および、圧力容器ヘッドの取り外し作業に係る、(1) | Quick Look調査、および、圧力容器ヘッドの取り外し作業に係る、(1)臨界評価、(2)崩壊熱の除去体系の解析、(3)RCS系ガスの放出解析、(4)安全性評価、が行われた[1]。 | ||
=== 臨界性評価 === | === 臨界性評価 === | ||
作業(プローブが圧力容器を貫通、圧力容器ヘッドの取り外し)中のサブクリティカリティに影響する可能性のある、RCS(Reactor Coolant System)内体系での仮想事象を抽出(減速材、反射材、燃料の配置); | |||
-軸方向出力平坦化ロッドの挿入(Axial Power Shaping Rods) | |||
-CRDMの取り外し | |||
-調査、サンプル採集装置の、上部ヘッド貫通部を通じた挿入 | |||
-上部ヘッドの取り外し | |||
これらの作業において、燃料体系のいかなるクレジット状況を考慮しても、また、燃料の仮想的な燃料扱いの妨害事象や物理的体系の変化を考慮しても、十分に安全にシャットダウンできる状況にあること、特に: | |||
-TMI-2の現状を仮定した体系での反応度評価 | |||
-炉心の外領域への燃料堆積によって引き起こされる可能性のある反応度評価 | |||
-検討されている作業中に発生する可能性のある種々の妨害事象により引き起こされる可能性のある反応度評価 | |||
-すべての反応度に関する仮想体系において、3500ppmのホウ酸水を注入することによるサブクリティカリティマージンの評価 | |||
=== 崩壊熱の除去解析 === | === 崩壊熱の除去解析 === |
2024年12月17日 (火) 12:24時点における版
炉心上部を調査したQuick Look計画については、参考文献[1]に概要がまとめられている。制御棒駆動機構(Control Rod Drive Mechanism: CRDM)の取り外しとアクセスルート確保に向けた検討事項がとりまとめられ、さらに、プローブの挿入作業、データ採集、カメラ画像の取得の過程が示されている。Quick Lookにより、2つの重要事象が明らかになったとされている。(a) 上部プレナム内部の構造物には大きな歪みや溶融などの損傷が見られない。(b) 炉心上部に空洞が存在し、その下にルースデブリが堆積している。
炉心上部の形状
Quick Look計画では当初、原子炉圧力容器の上部にある、制御棒案内管(Control Rod Guide Tube: CRGT)、上部格子、燃料集合体の上部(端栓など)、さらに、上部端栓が破損していた場合には、炉心部の調査を目的としていた。これは、事故直後には、燃料集合体の形状はほぼ維持されているという推定が主流だったためである。
調査では、上部ヘッドのリードスクリューホールを通じて、上部プレナム内に放射線耐性のCCTVを挿入した。図1に上部プレナム内の構造物の概略を示す[1]。シリンダー形状の構造の外壁の内部に、制御棒や出力調整棒の案内管が、燃料集合体ごとに設置されている。下の方で、上部格子や支持リングと接続している。図2に取り外したCRDMの模式図を示す[1]。筒状の圧力容器内に制御棒を吊り下げ回転させるメカニズムが装荷されていることがわかる。図3には、TMI-2で使用されていた燃料集合体の模式図を示す[2]。15x15の燃料集合体内に、燃料棒(ジルカロイ被覆管)、および、制御棒案内管と計装管(ジルカロイ-4製)が配置されている。燃料棒の軸方向には、数か所でスペーサーグリッド(インコネル製)が配置され、上端と下端は、ステンレス製の金具で束ねられている。上端下端金具内にはインコネル製のスプリングが装着されている。さらに、各燃料集合体内には、可燃性毒物棒スパイダー、制御棒スパイダー、軸方向出力平坦化棒スパイダー(Ax1al Power Shaping Rod:APSR)の3タイプのスパイダーのうちひとつが燃料集合体内の案内管を通じて上部から挿入される構造になっている(図4)[2]。外周部の2体の集合体では、オリフィスタイプのスパイダーが挿入される構造になっている。図5には、それぞれの燃料集合体中にどのタイプのスパイダーが装荷されていたかを、炉心上部からの見取り図として示す[1]。炉心最外周の燃料集合体にはスパイダーが装荷されていない。3タイプのスパイダーが均質に装荷されていることが確認できる。
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調査の概要
Quick Look調査では、CRDM中のリードスクリュー(図2)を取り外し放射線耐性ビデオカメラを吊り降ろすことで、圧力容器上部ヘッド内の制御棒案内管などの構造物、その下の上部格子、さらに燃料集合体上部の様子を観察することが目的とされた。さらに、燃料集合体の破損が大きかったり、上部端栓が損傷していたりした場合には、カメラを炉心部に吊り降ろして炉心上部の破損状態を調査することが目的とされた。Quick Look調査では、4つのキーミッションがあった(詳細後述)。
- 安全性評価、許認可
- 冷却水系(RCS: Reactor Coolant System)の水位低下
- リードスクリューの切断、取り外し
- 圧力容器内のビデオ撮影
Quick Look調査は、3回に分けて行われた[1]。
Quick Look I (1982, Jul. 21~)
図5に示すH8集合体(炉心中央)のリードスクリューをとりはずし、H8集合体部位の真上からCCTVを挿入、ルースデブリベッドにぶつかるまで吊り降ろされた。ルースデブリベッドにぶつかるまで、本来燃料集合体があった位置に何も観察できなかった。CCTVをいったん吊り上げて上部格子周辺を炉心側から観察、さらに再度吊り降ろしてルースデブリベッドの直上で360°周辺を観察した。H8位置の上部格子には付着物がほとんどなく、上部格子に顕著な損傷が見られないこと、上部空洞部分では、H8集合体だけでなく、その周辺の集合体も存在していないことが確認された。ただし、照明の光量不足で、それより広い範囲は観察できなかった。
Quick Look II (1982, Aug. 6~)
B8集合体(炉心外周)とE9集合体(炉心中間)のリードスクリューを取り外し、H8集合体部位には補助照明を挿入してから、CCTVが吊り降ろされた。CCTVは、まず、炉心周辺部のB8集合体部位から挿入された。炉心周辺部ではスパイダーが残留していることが確認された。カメラのライトが破損したため取り換えを行った後に、再度可燃性毒物集合体の位置に吊り下げ、その残留が確認された。B8位置では燃料集合体がかなり本来形状を維持し、CCTVを空洞の内部まで挿入できなかったため、E9集合体部位からCCTVが再度挿入された。炉心中間部部では、ルースデブリベッドの上に何も存在しておらず、上部空洞の底部にはルースデブリベッドが広範囲に広がっていることが確認された。また、破損した燃料集合体部材が識別可能な状態でルースデブリベッドの上に堆積していた。上部格子を下から観察し、E9周辺の4個の燃料集合が、ほとんど残留していないことが確認された。
Quick Look III (1982, Aug. 12~)
E9集合体(炉心中間)位置からCCTVが再挿入された。CRGTの内側も観測された。さらに、SS製の棒を用いて、H8とE9部位のルースデブリをつつく探針調査が実施された。その結果、約30cm内部に侵入できた。あわせて、上部空洞のパノラマ撮影が行われた。
調査の方法
Quick Look調査、および、圧力容器ヘッドの取り外し作業に係る、(1)臨界評価、(2)崩壊熱の除去体系の解析、(3)RCS系ガスの放出解析、(4)安全性評価、が行われた[1]。
臨界性評価
作業(プローブが圧力容器を貫通、圧力容器ヘッドの取り外し)中のサブクリティカリティに影響する可能性のある、RCS(Reactor Coolant System)内体系での仮想事象を抽出(減速材、反射材、燃料の配置);
-軸方向出力平坦化ロッドの挿入(Axial Power Shaping Rods)
-CRDMの取り外し
-調査、サンプル採集装置の、上部ヘッド貫通部を通じた挿入
-上部ヘッドの取り外し
これらの作業において、燃料体系のいかなるクレジット状況を考慮しても、また、燃料の仮想的な燃料扱いの妨害事象や物理的体系の変化を考慮しても、十分に安全にシャットダウンできる状況にあること、特に:
-TMI-2の現状を仮定した体系での反応度評価
-炉心の外領域への燃料堆積によって引き起こされる可能性のある反応度評価
-検討されている作業中に発生する可能性のある種々の妨害事象により引き起こされる可能性のある反応度評価
-すべての反応度に関する仮想体系において、3500ppmのホウ酸水を注入することによるサブクリティカリティマージンの評価
崩壊熱の除去解析
ガス成分の放出解析
CCTVカメラ挿入時の安全性評価
リードスクリューと支持管サンプルの分析
Quick Look調査の一環として、制御棒駆動用のリードスクリューとその支持管を一部切り出し、その付着物について詳細な分析が行われた[3,4,5]。その詳細は別項目にまとめた。
参考文献
[1] Quick look inspection: Report on the insertion of a camera into the TMI-2 reactor vessel through a leadscrew opening, GEND-030, vol.1, 1983.
[2] S.M. Jensen, D.W. Akers, R.W. Garner, G.S. Roybal, Examination of the TMI-2 core distinct components, GEND-INF-082, 1987.
[3] K. Vinjamuri, D.W. Akers, R.R. Hobbins, PRELIMINARY REPORT: EXAMINATION OF H8 AND B8 LEADSCREWS FROM THREE MILE ISLAND UNIT 2 (TMI-2), EGG-TMI-6685,1985.
[4] K. Vinjamuri, D.W. Akers, R.R. Hobbins, EXAMINATION OF H8 AND B8 LEADSCREWS FROM THREE MILE ISLAND UNIT 2 (TMI-2), GEND-INF-052,1985.
[5] M.P. Failey, V. Pasupathi, M.P. Landow, M.J. Stenhouse, J. Ogden, R.S. Denning, Examination of the Leadscrew Support Tube from Three Mile Island Reactor Unit 2, GEND-INF-067, 1986.