「燃料デブリ経年変化特性の推定技術開発 準備中」の版間の差分

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[https://fdada-plus.info/wiki/nsfr_img_auth.php/e/e9/20211117ToshibaESS.pdf 燃料デブリの経年変化特性の推定技術の開発(東芝エネルギーシステムズ株式会社提案のプロジェクト、2019-2020年度実施)]<br>
 
[https://fdada-plus.info/wiki/nsfr_img_auth.php/e/e9/20211117ToshibaESS.pdf 燃料デブリの経年変化特性の推定技術の開発(東芝エネルギーシステムズ株式会社提案のプロジェクト、2019-2020年度実施)]<br>
[https://fdada-plus.info/wiki/nsfr_img_auth.php/e/e9/20211117ToshibaESS.pdf Development of Estimation Technology of Aging Properties of Fuel Debris (ROSATOM/TENEX社提案のプロジェクト、2019-2020年度実施)]<br>
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[https://fdada-plus.info/wiki/nsfr_img_auth.php/0/05/20211026tenex.pdf Development of Estimation Technology of Aging Properties of Fuel Debris (ROSATOM/TENEX社提案のプロジェクト、2019-2020年度実施)]<br>
 
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2022年4月26日 (火) 09:40時点における版

燃料デブリの経年変化特性の推定技術の開発

    研究開発の目的、事業の概要
    東京電力福島第一原子力発電所(1F)では、原子炉圧力容器(RPV: Reactor Pressure Vessel)及び原子炉格納容器(PCV: Primary Containment Vessel)内に燃料デブリが存在していると考えられる。燃料デブリの取出しに向けて、取出し作業中及び取出し後の保管中におけるその性状や長期間の安定性を把握しておくことが重要である。
    チェルノブイリ原子力発電所4号機の事故においては、溶融炉心がコンクリート等の構造物を取りこんで、溶融炉心-コンクリート反応(MCCI: Molten Core Concrete Interaction)が起こり、様々な燃料デブリが発生した。これらの燃料デブリの一部は、時間の経過とともに放射線や酸化などによる自己崩壊が進行し、事故から30年以上経過した現時点では、そこから微粒子が発生していることが報告されている。このため、チェルノブイリプラントでは、微粒子が気中に飛散、液中に流出して拡散することで、汚染や被ばくが拡大することが懸念されている。

    他方、スリーマイルアイランド原子力発電所2号機(TMI-2)の事故で発生した燃料デブリは、事故から40年以上経過した現在でも顕著な経年変化を生じず、塊状を維持している。また、事故後に採集したサンプルを分析する際に、酸による液調製が課題であったことが報告されており、TMI-2事故の燃料デブリは化学的に高い安定性を有していると推定されている。
    このような、実際の原子力発電所の過酷事故で発生した燃料デブリの経年変化現象の違いは、どのような原因やメカニズムによって引き起こされているのかは明らかになっていない。
    1F事故プラントからの燃料デブリ取出し時の汚染や被ばくの低減や閉じ込め性能の維持、取出した後の収納・移送・保管方法を検討するために、燃料デブリに経年変化が起きた場合の影響を把握し、その状態変化の重要度に応じて適切な対策を予め講じておくことが必要である。そのために、燃料デブリの経年変化に起因する微粒子化や形態変化、水中への移行挙動等に関する知見を取得することで、1F燃料デブリの経年変化現象を予測しておことが重要となる。
    本研究開発事業では、1F燃料デブリが長期間置かれると考えられる環境下での経年変化の有無を明らかにし、経年劣化が生じる場合には、その様態の経時変化を予測し、それらの基礎知見に基づいて、燃料デブリ取出しや収納・移送・保管等への経年変化現象の影響の有無や程度の推定を行った。

    なお、燃料デブリの経年変化特性の推定技術の開発は、廃炉・汚染水対策事業補助金により、2019-2020年度に、燃料デブリ性状把握のための分析・推定技術の開発事業の一環として公募され、東芝エネルギーシステムズ株式会社、および、ROSATOM/TENEX社の研究提案(合せて2件)が採択され実施された。その成果の概要を以下に示すと共に、公開されている成果説明資料を掲載する。
    燃料デブリ経年変化の要因としては、主に、放射線損傷などによる物理的要因、酸化や腐食などの化学的要因、微生物などによる生物学的要因が考えられる。下記の廃炉汚染水対策事業では、このうち主に物理的要因、化学的要因について検討した。これらとは別に英知事業において、化学的要因(東北大英知事業)と生物学的要因(東工大英知事業)について検討が進められている。

    燃料デブリの経年変化特性の推定技術の開発(東芝エネルギーシステムズ株式会社提案のプロジェクト、2019-2020年度実施)
    Development of Estimation Technology of Aging Properties of Fuel Debris (ROSATOM/TENEX社提案のプロジェクト、2019-2020年度実施)
    東北大事業
    東工大事業

  1. 研究成果の概要
    1. 燃料デブリの経年劣化特性の推定技術の開発(東芝エネルギーシステムズ株式会社実施事業)※以下では、本事業の成果の概要を、公開されている事業成果資料の該当ページと対応させて説明する。
      1. 研究項目、目的、進め方、スケジュール
        東芝エネルギーシステムズ株式会社の提案は、以下の2個の実施項目((1) 燃料デブリの経年変化の要因として考えられる現象を確認するための試験方法立案及び実施、(2) 1F燃料デブリの化学的経年変化予測)からなる。
        事業は2019年7月から2021年2月に実施された。
        得られた知見は・データは、関連研究プロジェクト(燃料デブリの性状把握のための分析・推定技術の開発、燃料デブリ・炉内構造物の取出し規模の更なる拡大に向けた技術の開発、燃料デブリ収納・移送・保管技術の開発、燃料デブリ臨界管理技術の開発、固体廃棄物の処理・処分に関する研究開発)に提供された。
        東芝ESS事業の概要(資料3-6ページ)
      2. 実施内容
        (1)燃料デブリの経年変化の要因として考えられる現象を確認するための試験方法立案及び実施
        1)1F燃料デブリの経年変化要因の設定および評価方法立案
        チェルノブイリ原発事故で発生した燃料デブリで見られた微粒子化及び自己崩壊の知見から、1F燃料デブリの経年変化を引き起こす可能性が考えられる要因を設定し、そこで着目したメカニズムに応じた模擬燃料デブリの酸化・溶出試験方法を立案した。
        チェルノブイリ燃料デブリの特徴と微粒子化要因の推定(資料12-14ページ)
        1F燃料デブリの特徴(資料15ページ debrisWikiの炉内状況推定図)
        廃炉作業に影響を与える経年変化現象、要因の設定(資料16-19ページ)
        2)燃料デブリの経年変化評価試験
        1F事故の模擬燃料デブリを複数作製し、酸化・溶出による経年変化の予測が可能となる試験データを取得した。
        調製した模擬燃料デブリ、気中・水中試験項目、1F燃料デブリとの対応(資料20-22ページ)
        試験条件、試験方法(資料23-26ページ)
        試験結果(資料27-48ページ)
        (2)1F燃料デブリの化学的経年変化予測
        1)経年変化が発生する条件評価(気中)
        酸化・溶出による経年変化が生じる燃料デブリの組成条件、雰囲気条件を明確にした。
        気中試験で得られた酸素濃度依存性について、窒素雰囲気(現状で燃料デブリが堆積しているPCV内部を模擬)では微粒子発生は観測されなかった。他方、気中の酸素濃度の増加にともない微粒子発生量が増加した。このことから、燃料デブリ取出し前や取出し中に、燃料デブリ表面が冷却水に覆われている状態であれば(空気と直接接触しない条件であれば)、微粒子化は進行しにくいと推定された。さらに、燃料デブリの保管を、窒素ガスなどの低酸素分圧雰囲気で実施すれば、微粒子化を抑制できる可能性があると推定された。窒素雰囲気でなく、空気雰囲気中に長時間、燃料デブリが曝された場合の、詳細な微粒子形成については、環境温度50℃での、模擬燃料デブリからの微粒子発生量評価式を推定した。経過時間約1.5年を想定した模擬試験では、微粒子発生を抑制するメカニズムは推定されなかった。経過時間14年を想定した模擬試験では、微粒子発生が若干緩和される傾向が見られた。さらに、燃料デブリ中のU:Zr比が大きい場合、及び、燃料デブリ凝固時に微細構造(相状態)が形成される場合には、微粒子発生が減少する傾向が観測された。これらの微粒子発生メカニズムを考慮すると、微粒子中にはPuやAm, Cmなどのマイナーアクチニドが混入されると推定された。空気雰囲気中に燃料デブリが長時間曝される条件(保守的条件)での、微粒子発生のモデル式を試算した。
        燃料デブリ経年変化の発生条件の推定(資料41-54ページ)