「一部形状を残していた燃料集合体の詳細分析データ」の版間の差分
Kurata Masaki (トーク | 投稿記録) (→微細組織観察) |
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=== 分析手順・方法 === | === 分析手順・方法 === | ||
==== 全長γ分光分析 ==== | |||
採集した燃料棒と制御棒を、個別にアルミナ管に装荷し、サンプルの全長について、γ分光分析が行われた。また、3cm間隔で、特定のγ線源について定量分析が行われた。 | |||
==== 微細組織観察 ==== | ==== 微細組織観察 ==== | ||
燃料ペレットと燃料被覆管の酸化程度、結晶粒のサイズ、空孔の状態、Zry案内管とSS製の制御棒被覆管などの炉心構成材料間の反応、などを調査し、事故時のピーク温度を推定するために、微細組織観察が行われた。上述したサンプル部位を切り出し、断面が研磨された。また、結晶サイズを調べるために、いくつかのサンプルでは研磨断面のエッチングを行われた。光学顕微鏡の倍率としては、500Xを多用されている。 | |||
研磨手順: | |||
# SiC潤滑剤利用、120グリッドのペーパーで、粗く回転研磨(grinding) | |||
# 240~400グリッドのペーパーでさらに研磨(ペーパーのサイズを変えるたびに、表面を水洗) | |||
# 600グリッドの ペーパーで仕上げ研磨 | |||
# 6μmのオイルタイプのダイアモンドペーストで粗磨き(polishing)、回転研磨機の固いペーパー上で | |||
# 3μmのダイアモンドペーストで仕上げ磨き。起毛ナイロン上で | |||
エッチング溶液: | |||
* 酸化物用:85%過酸化水素+15%硫酸(酸化物相の主成分がUO<sub><small>2</small></sub>であることから選定) | |||
* 金属用:酪酸55%、硝酸19%、水19%、フッ酸7%(金属相の主成分がZryかAg-In-Cdであることから選定) | |||
==== 化学・放射化学分析 ==== | |||
全長γ分光分析の後に、注目箇所13個の被覆管サンプルを分取し、内外表面への、FPと主要な炉心構成物質の付着分布が定量分析された。燃料ペレットについては、回収された領域では、あまり高温に達しておらず、ほとんど事故前の状態を維持していると推定されたため、放射化学分析、化学分析は行われなかった。 | |||
溶液調製と分光分析の手順: | |||
# 燃料棒サンプルから、燃料ペレットを取り外し、一部を、閉鎖系で5M硝酸で溶融。これによりI-129を水酸化ナトリウムトラップで回収。トレーサーとしてI-131とSr-93を添加することで、溶融処理時の溶液中への残留とトラップへの移行の割合を評価。 | |||
# 被覆管サンプルは、片側が封じられていることを利用し、被覆管外面と内面で別々に溶解処理を実施。空いている方の端に、ガラス製のキャップをつけエポキシ樹脂で隙間を封入し、まず、被覆管の外表面を6M塩酸で浸出処理。次に、ガラス管を外し、被覆管の内面を浸出処理。いくつかのサンプルでは、被覆管が封じ切れていなかったため、内外表面を同時に浸出処理。 | |||
# 回収した溶液にI-131とSr-93をトレーサーとして添加。 | |||
# 溶液を60mlにメスアップし、分析Aliquotとした。 | |||
# γ線分光分析では、ゲルマ検出器で定量分析。測定誤差はおよそ20%。Eu-155などのγ線エネルギーの弱い核種では30%。 | |||
# 核物質分析では、Aliquotから一部を分取してATRで照射し、アクティブ中性子/遅発中性子の分析。サンプル中に中性子吸収物質(B,Ag,In,Cd)が存在しない場合、測定誤差10%。中性子吸収物質が存在する場合には、別途ICP分析を実施。 | |||
# Sr-90分析では、液体シンチレーターを使用。分析前にSr-90をトレーサーとともに沈殿させて分析。分析誤差10-20%。 | |||
# I-129分析では、I-131をトレーサーとして添加し、溶融処理中の蒸発量を評価。有機分離法で、調製した溶液と水酸化ナトリウムトラップ溶液から、I-129とI-131を回収。ATRで照射し、I-129が放射化して形成されるI-130を定量。測定誤差10-15%。 | |||
# ICP分析では、主要な17個の炉心構成物質(Ag,Al,B,Cd,Co,Cr,Fe,Gd,In,Mn,Mo,Ni,Nb,Si,Sn,U,Zr)の定量分析を行った。測定誤差約10%。 | |||
== 参考文献 == | == 参考文献 == | ||
[1] S.M. Jensen, D.W. Akers, E.W. garner, G.S. Roybal, Examination of the TMI-2 core distinct components, GEND-INF-082, 1987. | [1] S.M. Jensen, D.W. Akers, E.W. garner, G.S. Roybal, Examination of the TMI-2 core distinct components, GEND-INF-082, 1987. |
2024年11月1日 (金) 14:12時点における版
サンプル採集位置
図1に、INELのホットセルで分析された、燃料集合体上部サンプルのうち、詳しく分析されたD-141-3の見取り図と、詳細分析に供された燃料棒・制御棒のサンプル番号を示す[1]。図2には、採集した燃料棒・制御棒サンプルの破壊分析用の切り出し部位を示す[1]。D-141-3サンプルは、炉心外周から2層めにあったC7燃料集合体の上部が、上部格子に固着していた部分を回収した(参考:C7集合体の位置)。
- 3-30:燃料棒サンプル。燃料バンドルの外周側から採集、制御棒に隣接。全長は約40cm。
- 3-42:燃料棒サンプル。燃料バンドルの中央近くから採集、制御棒に隣接していない。全長約28cm。
- 3-1C:制御棒サンプル。3-30燃料棒に隣接。案内管と分離して回収。全長約40cm。
- 3-1G:案内管サンプル。3-30燃料棒に隣接。制御棒と分離して回収。全長約40cm。
- 3-14C/G:制御棒と案内管の固着サンプル。全長約25cm。
破壊分析サンプルのうち、Mでナンバリングされたサンプルは、断面を研磨後に、微細組織観察(光学顕微鏡、断面金相、など)に供され、SEでナンバリングされたサンプルは、溶融処理後に化学・放射化学分析(ICP、γ分光、など)に供された。また、サンプルの全長について、中性子計測とγ分光分析が行われた。
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分析手順・方法
全長γ分光分析
採集した燃料棒と制御棒を、個別にアルミナ管に装荷し、サンプルの全長について、γ分光分析が行われた。また、3cm間隔で、特定のγ線源について定量分析が行われた。
微細組織観察
燃料ペレットと燃料被覆管の酸化程度、結晶粒のサイズ、空孔の状態、Zry案内管とSS製の制御棒被覆管などの炉心構成材料間の反応、などを調査し、事故時のピーク温度を推定するために、微細組織観察が行われた。上述したサンプル部位を切り出し、断面が研磨された。また、結晶サイズを調べるために、いくつかのサンプルでは研磨断面のエッチングを行われた。光学顕微鏡の倍率としては、500Xを多用されている。
研磨手順:
- SiC潤滑剤利用、120グリッドのペーパーで、粗く回転研磨(grinding)
- 240~400グリッドのペーパーでさらに研磨(ペーパーのサイズを変えるたびに、表面を水洗)
- 600グリッドの ペーパーで仕上げ研磨
- 6μmのオイルタイプのダイアモンドペーストで粗磨き(polishing)、回転研磨機の固いペーパー上で
- 3μmのダイアモンドペーストで仕上げ磨き。起毛ナイロン上で
エッチング溶液:
- 酸化物用:85%過酸化水素+15%硫酸(酸化物相の主成分がUO2であることから選定)
- 金属用:酪酸55%、硝酸19%、水19%、フッ酸7%(金属相の主成分がZryかAg-In-Cdであることから選定)
化学・放射化学分析
全長γ分光分析の後に、注目箇所13個の被覆管サンプルを分取し、内外表面への、FPと主要な炉心構成物質の付着分布が定量分析された。燃料ペレットについては、回収された領域では、あまり高温に達しておらず、ほとんど事故前の状態を維持していると推定されたため、放射化学分析、化学分析は行われなかった。
溶液調製と分光分析の手順:
- 燃料棒サンプルから、燃料ペレットを取り外し、一部を、閉鎖系で5M硝酸で溶融。これによりI-129を水酸化ナトリウムトラップで回収。トレーサーとしてI-131とSr-93を添加することで、溶融処理時の溶液中への残留とトラップへの移行の割合を評価。
- 被覆管サンプルは、片側が封じられていることを利用し、被覆管外面と内面で別々に溶解処理を実施。空いている方の端に、ガラス製のキャップをつけエポキシ樹脂で隙間を封入し、まず、被覆管の外表面を6M塩酸で浸出処理。次に、ガラス管を外し、被覆管の内面を浸出処理。いくつかのサンプルでは、被覆管が封じ切れていなかったため、内外表面を同時に浸出処理。
- 回収した溶液にI-131とSr-93をトレーサーとして添加。
- 溶液を60mlにメスアップし、分析Aliquotとした。
- γ線分光分析では、ゲルマ検出器で定量分析。測定誤差はおよそ20%。Eu-155などのγ線エネルギーの弱い核種では30%。
- 核物質分析では、Aliquotから一部を分取してATRで照射し、アクティブ中性子/遅発中性子の分析。サンプル中に中性子吸収物質(B,Ag,In,Cd)が存在しない場合、測定誤差10%。中性子吸収物質が存在する場合には、別途ICP分析を実施。
- Sr-90分析では、液体シンチレーターを使用。分析前にSr-90をトレーサーとともに沈殿させて分析。分析誤差10-20%。
- I-129分析では、I-131をトレーサーとして添加し、溶融処理中の蒸発量を評価。有機分離法で、調製した溶液と水酸化ナトリウムトラップ溶液から、I-129とI-131を回収。ATRで照射し、I-129が放射化して形成されるI-130を定量。測定誤差10-15%。
- ICP分析では、主要な17個の炉心構成物質(Ag,Al,B,Cd,Co,Cr,Fe,Gd,In,Mn,Mo,Ni,Nb,Si,Sn,U,Zr)の定量分析を行った。測定誤差約10%。
参考文献
[1] S.M. Jensen, D.W. Akers, E.W. garner, G.S. Roybal, Examination of the TMI-2 core distinct components, GEND-INF-082, 1987.